説明

希土類磁石素材回収システム

【課題】 コンプレッサなどに使用されているモータ部材の希土類磁石を有するロータから、希土類磁石素材の粉体を安全、かつ所定の粒径ごとに回収することが可能な希土類磁石素材回収システムを提案することを課題とする。
【解決手段】 脱磁処理されたロータ13が投入される筒体内に、回転軸3および回転軸3に一端部が固定されて破砕する線材4を設けるとともに、不活性ガスを供給する供給管6aが接続され、かつ第1排気管7が接続された破砕機5と、第1排気管7が接続されているとともに、底部に所定粒径以上の希土類磁石素材の粉体を回収する回収部8aが設けられ、かつ上部に所定粒径未満の希土類磁石素材の粉体を排気する第2排気管9が接続されたサイクロン8と、第2排気管9が接続されているとともに、第1および第2排気管7,9を介して吸引する吸引ファン14が設けられ、かつ所定粒径未満の希土類磁石素材の粉体を捕集して回収する湿式集塵機10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサなどに用いられるモータ部材から希土類磁石素材を回収する希土類磁石素材回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネやエコロジーの観点から、ハイブリッド車や電気自動車などの次世代環境対応車が所望され、自動車業界は各社が次々と次世代環境対応車の開発および販売を行っている。その進歩は目覚ましいものがあり、特にハイブリッド車や電気自動車の心臓部とも言えるモータやバッテリーにおいては、小型化および高性能化が図られ、今後更なる進化が問われている。またそれに伴い、レアメタルやレアアースなどの原材料は、モータに使用される希土類磁石に使用され、その価格が上昇傾向にあるとともに、資源保護の観点から再資源化が求められている。
【0003】
ところで、上記レアアース(希土類元素)を含有する希土類磁石は、ハイブリッド車など次世代環境対応車のモータだけでなく、先端技術を駆使するOA機器、家電製品にも使用されている。特に家電製品では、2000年以降に製造された比較的新しい形式のエアコンや冷蔵庫のコンプレッサ、または洗濯機のモータに希土類磁石が使用されている。
【0004】
また、家電製品の使用年数が、概ね10年程度であることを踏まえると、既存の家電リサイクルルートにおいて、既に希土類磁石を使用した家電製品、特にエアコンや洗濯機が回収されていると推測される。そこで、この家電リサイクルルートから希土類磁石を使用したエアコンや洗濯機などの家電製品を回収することにより、レアメタルやレアアースなどの再生資源を回収することが可能であると考えられる。
【0005】
そこで、使用済みの家電製品を回収し、リサイクルする過程において、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサ、または洗濯機のモータ部材を分解して、希土類磁石を有するロータから、当該希土類磁石を板状のまま回収する方法が検討されているものの、時間や手間が掛かるなどの問題があるため、事業化には至っていないのが現状である。
【0006】
また、希土類回収法として、希土類磁石を酸溶解させて、希土類元素を抽出するリサイクル方法がある。この方法では、前処理として、上記希土類磁石の破砕が必要となる。この上記希土類磁石を破砕する前処理として、例えば、下記特許文献1において、コンプレッサなどに用いられるモータ部材から分離したロータを脱磁処理し、脱磁された当該ロータを破砕機に投入して破砕し、破砕された破砕物を篩い機などを用いて、鉄および非鉄金属と、希土類磁石素材が含まれる粉体とに分別する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記従来の破砕方法では、上記ロータを上記破砕機により破砕、および上記破砕物を篩い機により分別する際に、大気雰囲気下において行われるため、破砕および選別によって得られた上記希土類磁石素材の粉体が酸化し易く、発火する危険性が高いという問題がある。特に、希土類磁石素材の粉体は、数百μm程度で発火するとされているため、上記ロータを上記破砕機により破砕する際、および上記破砕物を上記篩い機によって分別する際に、上記破砕機で破砕した上記破砕物が、発火してしまう危険性が極めて高いという問題もある。
【0008】
また、上記破砕機において破砕して得られた破砕物から、上記篩い機により選別分離させた上記希土類磁石素材の粉体を、上記希土類回収法である酸溶解させる次工程に搬送する際は、当該希土類磁石素材の粉体を水漬けにし、スラッジの状態にして、発火の危険性を低減させる必要があるため、搬送や保管に関して設備の追加や人員の増加などによりコストや手間が掛かるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−110636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、コンプレッサなどに使用されているモータ部材の希土類磁石を有するロータから、希土類磁石素材の粉体を安全、かつ所定の粒径ごとに回収することが可能な希土類磁石素材回収システムを提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、希土類磁石を有するロータが組み込まれたモータ部材から希土類磁石素材を回収する希土類磁石素材回収システムであって、上記モータ部材から分離させて脱磁処理された上記ロータが投入される筒体内に、回転駆動する回転軸およびこの回転軸に一端部が固定されて上記ロータを破砕する可撓性を有する線材を設けるとともに、不活性ガスを供給する供給管が接続され、かつ気体排気側に第1排気管が接続された破砕機と、上記第1排気管が気体導入側に接続されているとともに、底部に所定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体を回収する回収部が設けられ、かつ上部に所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を上記不活性ガスに同伴させて排気する第2排気管が接続されたサイクロンと、上記第2排気管が気体導入側に接続されているとともに、気体排気側に上記第1および第2排気管を介して上記不活性ガスを吸引する吸引ファンが設けられ、かつ上記不活性ガスに同伴された所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を捕集して回収する湿式集塵機とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記サイクロンは、遠心分離された所定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体が1〜2mmの粒径寸法であるとともに、所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体が1mm未満の粒径寸法であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜2に記載の本発明によれば、脱磁処理されたロータを破砕する破砕機と、希土類磁石素材の粉体を分離するサイクロン、および所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を捕集する湿式集塵機とが、第1および第2排気管により接続されているとともに、上記破砕機に接続された供給管により供給された不活性ガスを、上記湿式集塵機に設けられた吸引ファンにより、上記第1および第2排気管を介して吸引されるため、上記破砕機と上記サイクロンおよび湿式集塵機内を不活性ガス雰囲気にすることができ、冷却効果を増大させるとともに、粉体状の上記希土類磁石素材の発火の危険性を低減させることができる。これにより、酸化しやすく発火の危険性の高い上記希土類磁石素材の粉体を安全に取り扱うことができる。
【0014】
また、上記ロータを上記破砕機の筒体内に投入して、回転駆動する回転軸に一端部が固定されて回転する可撓性を有する線材の打撃の衝撃により、上記希土類磁石素材が粉体状に破砕されるとともに、当該希土類磁石素材の粉体が、上記筒体の気体排気側に接続された上記第1排気管を介して、上記不活性ガスに同伴されて、上記破砕機から排出されるため、上記破砕機により破砕された破砕物から、上記希土類磁石素材の粉体を迅速、かつ容易に取り出すことができる。
【0015】
そして、上記サイクロンによって、気体導入側に接続された上記第1排気管から上記不活性ガスに同伴された上記希土類磁石素材の粉体を分離して、所定粒径以上、例えば、1〜2mm程度の上記希土類磁石素材の粉体が、底部に設けられた回収部から回収されるとともに、所定粒径未満、例えば、1mm未満の上記希土類磁石素材の粉体が、上部に接続された上記第2排気管により上記不活性ガスに同伴されて排出されるため、上記吸引ファンにより吸引された上記不活性ガスによって、上記希土類磁石素材の粉末を容易に分離することができるとともに、所定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体のみを回収することができる。これにより、上記希土類磁石素材の粉体の粒径によって異なる次工程を効率的に行うことができる。
【0016】
また、上記湿式集塵機により、酸化し易く発火の危険性が最も高い、特定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体が捕集されるため、上記希土類磁石素材の粉体をスラッジの状態により回収することができる。この結果、回収した上記希土類磁石素材の粉体を安全に、かつ迅速に、次工程に搬送することができ、設備および人員のコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の希土類磁石素材回収システムの一連の工程を模した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の希土類磁石素材回収システム1の一実施形態は、モータ部材から分離させて脱磁処理されたロータ13が投入される筒体2に、回転駆動される回転軸3およびこの回転軸3に一端部が固定されてロータ13を破砕する可撓性を有する線材4を設けるとともに、窒素ガス(不活性ガス)の供給管6aが接続され、かつ気体排気側に第1排気管7が接続された破砕機5と、第1排気管7が気体導入側に接続されているとともに、底部に所定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体を回収する回収部8aが設けられ、かつ上部に所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を上記窒素ガスに同伴させて排気する第2排気管9が接続されたサイクロン8と、第2排気管9が気体導入側に接続されているとともに、気体排気側に第1および第2排気管7,9を介して上記窒素ガスを吸引する吸引ファン14が設けられ、かつ上記窒素ガスに同伴された所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を捕集して回収する湿式集塵機10とを備えて概略構成されている。
【0019】
ここで、破砕機5は、チェーン式破砕機5が用いられる。このチェーン式破砕機5は、有底筒状の筒体2内に、この筒体2の底部の中心部に立設するとともに、モータ11の駆動により回転する円柱状の回転軸3と、この回転軸3の外周面に一端部が接続され、他端部が自由端となっているとともに、回転軸3の円周方向の180℃離反した位置に、もう一方の一端部が接続され、他端部が自由端となっているチェーン(線材)4を備えている。また、チェーン4は、回転軸3の外周面の一方側に、少なくとも2本接続されている。
【0020】
また、筒体2は、供給管6aを介して窒素ガス発生装置6に接続されている。この窒素ガス発生装置6により、窒素ガスが筒体2内に供給されて、筒体2内が窒素ガス雰囲気に維持されている。そして、筒体2の気体排気側に第1排気管7の一方側が接続されているとともに、筒体2の下部に、ロータ13を破砕した破砕物の中の鉄および非鉄金属を回収する開閉式のシュート15が接続されている。
【0021】
そして、サイクロン8は、気体導入側に第1排気管7の他方側が接続されているとともに、底部に所定粒径以上、例えば、1〜2mm程度の上記希土類磁石素材の粉体を排出して回収する回収部8aが形成されている。また、サイクロン8の上部の気体排気側には、所定粒径未満、例えば、1mm未満の上記希土類磁石素材の粉体を上記窒素ガスに同伴させて排出する第2排気管9の一方側が接続されている。
【0022】
さらに、湿式集塵機10は、気体導入側に第2排気管9の他方側が接続されているとともに、気体排気側に吸引ファン14が設けられ、かつ気体排気側に上記窒素ガスを大気へ放出する排気管12が接続されている。また、湿式集塵機10は、例えば、電気集塵方式の湿式電気集塵装置を用いることができる。この湿式電気集塵装置は、集塵極表面に水を流して水膜を形成し、この水膜に煙霧体(ダスト・ミスト)が捕集されて、当該水膜とともに洗い流す方式、またはミストなど液滴の上記煙霧体を捕集して、集塵極表面を流下させる方式のものがある。さらに、粉塵を含んだガスを気液混合させることにより効率よく集塵する湿式スクラバーを用いることも可能である。この湿式スクラバーは、構造がシンプルであるため、メンテナンスが容易に行える。
【0023】
以上の構成からなる希土類磁石素材回収システム1を用いて、上記希土類磁石素材の粉体を回収するには、まず、コンプレッサのモータ部材からロータ13を機械および手作業によって分離させる。そして、前処理として、ロータ13を脱磁処理する。この脱磁処理は、常温脱磁(電気的な脱磁)でも対応可能であるが、最終的な回収物である上記希土類磁石素材の粉体に、樹脂粉体が混入されてしまうと、後処理が必要になるため、熱脱磁をして樹脂を除去することが好ましい。
【0024】
なお、上記熱脱磁を行う場合は、ロータ13を加熱炉に投入して、ロータ13に内包されている希土類磁石のキュリー温度以上に昇温し一定時間保持する。このときに、当該希土類磁石が、ネオジム磁石の場合には、ネオジム磁石のキュリー温度は、330〜380℃であるため、ロータ13を上記加熱炉により、380℃以上の温度で加熱し15分程度保持する。これにより、ロータ13に内包されている上記希土類磁石が完全に脱磁される。
【0025】
そして、15分経過後に、ロータ13を上記加熱炉から取り出して、冷却室に搬送する。この冷却室では、ロータ13に、例えば、空気を噴射して、ハンドリングに支障のない温度まで冷却する。この際に、焼却残渣が残っていることを考慮して、上記冷却室内の空気を吸引手段により、上記冷却室に接続された吸引管を介して吸引し、バグフィルタにより残渣やダストを取り除いた後に、排出管を介して、大気へ排出する。
【0026】
次に、チェーン式破砕機5の筒体2に、脱磁処理されたロータ13を投入して破砕する。この際に、筒体2内は、窒素ガス発生装置6から窒素ガスが供給管6aを介して供給されて、窒素ガス雰囲気に維持される。
【0027】
そして、筒体2内において、回転軸3に一方が接続され、他方が自由端の可撓性を有するチェーン4の打撃の衝撃により破砕されたロータ13は、鉄および非鉄金属が大きく変形することなく中片(3mm角以上の塊状)に裁断され、上記希土類磁石素材のみが選択的に粉体状に破砕される。これは、各素材が有する弾塑性の違いによるもので、可撓性を有するチェーン4の打撃の衝撃により、素材ごとに破砕形状に差が生じる。そして、上記鉄および非鉄金属は、筒体2の下方に設けられた開閉式のシュート15から排出されて回収される。
【0028】
また、上記希土類磁石素材の粉体は、湿式集塵機10に設けられた吸引ファン14により吸引された上記窒素ガスに同伴されて、筒体2の気体排気側に接続された第1排気管7から排出される。そして、排出された上記希土類磁石素材の粉体は、第1排気管7の他方側が接続されたサイクロン8に集塵される。
【0029】
そして、吸引ファン14により吸引された上記窒素ガスの流速により、サイクロン8内において、上記希土類磁石素材の粉体が遠心分離されて、特定粒径以上、例えば、1〜2mm程度の上記希土類磁石素材の粉体と、特定粒径未満、例えば、1mm未満の上記希土類磁石素材の粉体とに分離されるとともに、特定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体が、サイクロン8の底部に設けられた回収部8aから排出されて回収される。なお、サイクロン8の回収部8aから排出されて回収された特定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体は、この粒径で酸溶解させることが難しいため、次工程としてミルなどの機械によって粉砕する必要がある。
【0030】
さらに、サイクロン8の上部の気体排気側に接続された第2排気管9から、特定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体が、吸引ファン14により吸引された上記窒素ガスに同伴されて排出される。そして、排出された所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体は、第2排気管9の他方側が接続された湿式集塵機10により捕集されて回収される。この際、上記窒素ガスに同伴された特定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体は、例えば、湿式スクラバーなどの湿式集塵機10により捕集されて、スラッジの状態で回収される。
【0031】
また、上記窒素ガスは、湿式集塵機10の気体排気側に設けられた排気管12から大気へと放出される。そして、湿式集塵機10により捕集されて回収された特定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体は、スラッジの状態であるため、そのまま酸溶解処理を行う次工程に搬送される。
【0032】
上述の実施の形態による希土類磁石素材回収システム1によれば、脱磁処理されたロータ13を破砕するチェーン式破砕機5と、希土類磁石素材の粉体を遠心分離するサイクロン8、および所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を捕集する湿式集塵機10とが、第1および第2排気管7,9により接続されているとともに、チェーン式破砕機5に接続された供給管6aにより供給された窒素ガス(不活性ガス)が、湿式集塵機10に設けられた吸引ファン14により、第1および第2排気管7,9を介して吸引されるため、チェーン式破砕機5とサイクロン8および湿式集塵機10内を窒素ガス雰囲気にすることができ、冷却効果を増大させるとともに、粉体状の上記希土類磁石素材の発火の危険性を低減させることができる。これにより、酸化しやすく発火の危険性の高い上記希土類磁石素材の粉体を安全に取り扱うことができる。
【0033】
また、ロータ13をチェーン式破砕機5の筒体2内に投入して、回転駆動する回転軸3に一端部が固定されて回転する可撓性を有するチェーン4の打撃の衝撃により、上記希土類磁石素材が粉体状に破砕されるとともに、当該希土類磁石素材の粉体が、筒体2の気体排気側に接続された第1排気管7を介して、上記不活性ガスに同伴されて、チェーン式破砕機5から排出されるため、チェーン式破砕機5により破砕された破砕物から、上記希土類磁石素材の粉体を迅速、かつ容易に取り出すことができる。
【0034】
そして、サイクロン8によって、気体導入側に接続された第1排気管7から上記窒素ガスに同伴された上記希土類磁石素材の粉体を分離して、所定粒径以上、例えば、1〜2mm程度の上記希土類磁石素材の粉体が、底部に設けられた回収部8aから回収されるとともに、所定粒径未満、例えば、1mm未満の上記希土類磁石素材の粉体が、上部に接続された第2排気管9により上記窒素ガスに同伴されて排出されるため、吸引ファン14により吸引された上記窒素ガスによって、上記希土類磁石素材の粉末を容易に分離することができるとともに、所定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体のみを回収することができる。これにより、上記希土類磁石素材の粉体の粒径によって異なる次工程を効率的に行うことができる。
【0035】
また、湿式集塵機10により、酸化し易く発火の危険性が最も高い、特定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体が捕集されるため、上記希土類磁石素材の粉体をスラッジの状態により回収することができる。この結果、回収した上記希土類磁石素材の粉体を安全に、かつ迅速に、次工程に搬送することができ、設備および人員のコストを低減させることができる。
【0036】
なお、上記実施の形態において、破砕機5をチェーン式破砕機5を用いて、回転軸3にその一端部が接続され、他端部が自由端のチェーン4を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、チェーン4に変えて可撓性を有するワイヤを用いても対応可能である。
また、上記実施の形態において、ロータ1に内包されている希土類磁石が、ネオジム磁石の場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、サマリウムコバルト磁石を用いた場合でも対応可能である。その場合、サマリウムコバルト磁石のキュリー温度が、750〜800℃であるため、上記加熱炉の加熱温度は、800℃となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
コンプレッサなどに用いられるモータ部材から分離させたロータに利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 希土類磁石素材回収システム
2 筒体
3 回転軸
4 チェーン(線材)
5 チェーン式破砕機(破砕機)
6 窒素ガス発生装置
7 第1排気管
8 サイクロン
8a 回収部
9 第2排気管
10 湿式集塵機
11 モータ
12 排気管
13 ロータ
14 吸引ファン
15 シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石を有するロータが組み込まれたモータ部材から希土類磁石素材を回収する希土類磁石素材回収システムであって、
上記モータ部材から分離させて脱磁処理された上記ロータが投入される筒体内に、回転駆動する回転軸およびこの回転軸に一端部が固定されて上記ロータを破砕する可撓性を有する線材を設けるとともに、不活性ガスを供給する供給管が接続され、かつ気体排気側に第1排気管が接続された破砕機と、
上記第1排気管が気体導入側に接続されているとともに、底部に所定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体を回収する回収部が設けられ、かつ上部に所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を上記不活性ガスに同伴させて排気する第2排気管が接続されたサイクロンと、
上記第2排気管が気体導入側に接続されているとともに、気体排気側に上記第1および第2排気管を介して上記不活性ガスを吸引する吸引ファンが設けられ、かつ上記不活性ガスに同伴された所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体を捕集して回収する湿式集塵機とを備えていることを特徴とする希土類磁石素材回収システム。
【請求項2】
上記サイクロンは、遠心分離された所定粒径以上の上記希土類磁石素材の粉体が1〜2mmの粒径寸法であるとともに、所定粒径未満の上記希土類磁石素材の粉体が1mm未満の粒径寸法であることを特徴とする請求項1に記載の上記希土類磁石素材回収システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−46465(P2013−46465A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181722(P2011−181722)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】