説明

希土類金属窒化物の製造方法

【課題】蛍光体の製造に好適な希土類金属窒化物を、アンモニアを用いることなく、比較的簡単な設備で、効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】希土類金属を、窒素と水素の混合雰囲気中で、該金属の融点以上、該金属の窒化物の融点以下の温度で焼成する。この希土類金属窒化物を原料として用いることにより、黄緑色〜橙色の長波長領域に充分な発光強度を有し、また、発光スペクトルにおいて極めて半値幅の広い発光ピークを有する光を発する希土類金属窒化物蛍光体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類金属窒化物の製造方法、より詳しくは希土類金属窒化物蛍光体の製造に適した希土類金属窒化物の製造方法、該方法で製造された希土類金属窒化物、該窒化物を原料として製造された希土類金属窒化物蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから金属窒化物は、セラミック材料や磁性材料、構造材料として使用するために製造されている。一方、近年の窒化物蛍光体開発の著しい進歩を受け、希土類金属窒化物は、蛍光体原料としての役割も期待が高まっている。
【0003】
希土類金属窒化物の製法としては、非特許文献1によると、(1)800℃〜1000℃に加熱した金属に窒素を通じる方法、(2)500℃で金属と水素を直接反応させて水素化物を合成し、次にこれと窒素を900〜1000℃で反応させる方法等が知られている。一方、非特許文献2によると、上記の方法では完全な窒化物が得られにくく、窒素ガスを1000気圧まで加圧して反応させたり、窒素の代わりにアンモニアを用いて窒化する方法が好ましいとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】N.E.Topp箸、塩川二郎、足立吟也共訳、「希土類元素の化学」、第1版、株式会社化学同人、1974年6月、p.99〜100
【非特許文献2】足立吟也編著、「希土類の科学」、第1版、株式会社化学同人、1999年3月、p.449〜450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアンモニア法等で製造された希土類金属窒化物は、その生産性を向上させるために粉体として製造されるため、窒化物蛍光体の製造に使用しようとする場合、表面積が大きいことに起因する酸素の含有量が高くなる傾向があり、本来製造しようとする窒化物蛍光体の窒素の一部が酸素に置換されやすくなる。このため、他の構成元素の比が乱れたり、あるいは酸化物からなる別の物質の混入、あるいは固溶等を引き起こし、発光波長の不安定化、発光強度の不安定化の原因の一つになっている。このように、従来の方法で製造された希土類金属窒化物は、必ずしも蛍光体の製造に適してはいなかった。
【0006】
本発明の課題は、上記の問題が解決された蛍光体の製造に使用できる希土類金属窒化物を、アンモニアを用いることなく、比較的簡単な設備で、効率的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、希土類金属を原料として用い、これを窒素と水素の混合雰囲気下で焼成することにより、比較的低温で、かつ酸素含有量の少ない蛍光体の製造に適した希土類金属窒化物を製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、次の(1)〜(8)に存する。
(1)希土類金属を、窒素と水素の混合雰囲気中で、該金属の融点以上、該金属の窒化物の融点以下の温度で焼成すること特徴とする希土類金属窒化物の製造方法。
(2)希土類金属が、ランタン又はセリウムである(1)に記載の方法。
(3)希土類金属が、少なくともその最も短い大きさが1mm以上である(1)又は(2)に記載の方法。
(4)混合雰囲気中の水素の割合が、窒素量に対し2体積%以上10体積%以下である(1)乃至(3)の何れかに記載の方法。
(5)焼成が、1気圧以上1.2気圧以下で行われる(1)乃至(4)の何れかに記載の方法。
(6)(1)乃至(5)の何れかに記載の方法により製造されたことを特徴とする希土類金属窒化物。
(7)(6)に記載の希土類金属窒化物を原料として製造されたことを特徴とする希土類金属窒化物蛍光体。
(8)希土類金属窒化物蛍光体が、下記一般式(1):
(R,Ca,Ce)3+αSi11+β (1)
[式(1)中、RはLa、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示し、RとCaとCeのモル数の合計は1モルであり、Nはその一部が酸素に置換されていても良く、αは−0.1≦α≦1.5、βは−0.2≦β≦0.5の範囲を満たす数値である。]
で表される結晶相を含有するものである(7)に記載の蛍光体。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高圧、高温が不要で、アンモニア等の有害ガスを使用することなく、比較的容易に蛍光体の製造に使用できるレベルの希土類金属窒化物を得ることができる。この希土類金属窒化物を原料として用いることにより、黄緑色〜橙色の長波長領域に充分な発光強度を有し、また、発光スペクトルにおいて極めて半値幅の広い発光ピークを有する光を発する希土類金属窒化物蛍光体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で得られた窒化ランタンの粉末X線回折パターン(図1上段)と、それをピークリスト化し、JCPDSカードの金属ランタン及び窒化ランタンを比較した図(図1下段)である。
【図2】実施例2で得られた窒化セリウムの粉末X線回折パターン(図2上段)と、それをピークリスト化し、JCPDSカードの金属セリウム及び窒化セリウム、酸化セリウムを比較した図(図2下段)である。
【図3】実施例3で得られた(La,Ce)Si11蛍光体の粉末X線回折パターン(図3上段)と、JCPDSカードのLaSi11のピークリストの図(図3下段)である。
【図4】実施例3で得られた蛍光体の455nm励起における発光スペクトルである。
【図5】実施例4で得られた(La,Ce)Si11蛍光体の粉末X線回折パターン(図5上段)と、JCPDSカードのLaSi11のピークリストの図(図5下段)である。
【図6】実施例4で得られた蛍光体の455nm励起における発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。なお、本明細書中、物質の含有量(ppm、%等)は、特に明記しない限り、気体は「体積基準」、固体は「質量基準」の価として示す。
【0012】
本発明において、希土類金属とは、ランタノイド15元素[ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、Eu(ユウロピウム)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)]とスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)を含む17元素の金属を意味する。
【0013】
1.希土類金属窒化物の製造方法
本発明の希土類金属窒化物の製造方法(以下これを「本発明の方法」と略称することがある。)は、窒素と水素の混合雰囲気中で、該金属の融点以上、該金属の窒化物の融点以下の温度で焼成することに特徴を有するものである。以下、本発明に係る「希土類金属窒化物」を、単に「窒化物」と称することがある。
【0014】
本発明の方法において、原料として使用される希土類金属の純度は、好ましくは2N以上、より好ましくは3N以上である。製造した窒化物を蛍光体の製造原料として使用する場合、蛍光体の発光特性の点から、希土類金属はより不純物の少ない高純度のものを使用するのが好ましい。
【0015】
また、特に避けるべき不純物としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)が挙げられる。これら不純物の濃度は、通常500ppm以下、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。特に鉄(Fe)の濃度は200ppm以下が好ましい。更に、製造した窒化物を蛍光体の母体構成元素として使用する場合には、蛍光体中に、本発明に係わる希土類金属窒化物を大量に含むことになるので、鉄の濃度は100ppm以下が好ましい。
【0016】
本発明の方法は、上記した全ての希土類元素(17元素)の金属に適用可能であるが、後述するように、最適な加熱温度は金属によって異なる。本発明の方法が適用しやすい金属としては、比較的融点の低いユウロピウム、ランタン、セリウムが好ましく、特にランタンが好ましい。一方、融点が比較的高いガドリニウム、イットリウム等に対しても、加熱温度を上げることにより適用可能である。
【0017】
通常、アンモニア法等で金属窒化物を製造する場合には、その窒化の効率の点から、多くは粉体にして窒化される。しかしながら、本発明の好ましい態様としては、かかる希土類金属を粉体ではなく、ある程度の大きさを持つ顆粒状、より好ましくは少なくともその最短の厚さ方向が1mm以上であるようなある程度以上の大きさを持つ原料を窒化する。これは粉体であると、窒化自体には有利であるが、窒化物蛍光体原料として使用する場合には、表面積が広くなるため、表面と反応又は吸着する酸素の量が増え、最終的に得られる蛍光体の特性に悪影響を与える可能性が高いからである。
【0018】
希土類金属の大きさは、より好ましくは前述の最短の厚さ方向が3mm以上であり、上限としては、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下である。
【0019】
かかる大きさの条件は、サイズ調整等の際に、細かい粉状の希土類金属も生じてしまうことが多いため、100%がかかるサイズになっている必要はないが、窒化物の質量で、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上が上記サイズとなっていることが好ましい。
【0020】
上記の希土類金属は、希土類金属や窒化物と反応しにくい容器に入れたのち、ふたをして、後述の加熱処理(焼成)に供される。容器の形状に特に制限はなく、るつぼ、トレイ等が使用できる。容器の材質は、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル等の高融点金属や、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素等の非酸化物系セラミックスが好ましい。金属製容器としては、入手および加工の容易さからモリブデン容器が好ましく、セラミック製容器としては、希土類金属や窒化物と反応しにくいという点から窒化ホウ素容器が好ましい。
【0021】
本発明の方法において、希土類金属は、窒素と水素の混合雰囲気中で焼成される。この時の水素の割合は、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上であり、上限としては、好ましくは10体積%以下、より好ましくは8体積%以下である。水素の割合が低すぎると、充分な還元雰囲気を得られず、目的とする窒化物の品質が低下する虞がある。水素の割合が高すぎることはガス漏洩時などの危険性を増すことになるため避けたい。
【0022】
窒素と水素の混合雰囲気中の不純物としては、製造した金属窒化物を蛍光体の製造原料として使用する場合、特に酸素の混入を避けることが好ましい。混合雰囲気中の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
【0023】
また、焼成時は、水素と窒素の混合ガスを流通させることが好ましい。この流量については、炉の大きさや、処理する希土類金属の量によっても異なるが、好ましくは1リッター/分以上、より好ましくは2リッター/分以上である。上限としては、好ましくは10リッター/分以下、より好ましくは5リッター/分以下である。
【0024】
焼成時の圧力については、簡易でかつ外界からの酸素等の混入が起こりにくくなるように、1気圧以上が好ましく、高圧ガス保安法に関わる手続きが不要になるよう10気圧以下が好ましい。そして、より好ましい圧力は、1気圧以上1.2気圧以下である。
【0025】
焼成時間については、窒化する希土類金属の大きさ等によって異なるが、通常1時間以上24時間以下、好ましくは2時間以上15時間以下である。
【0026】
焼成温度は、原料金属の融点より高い(融点以上である)ことが好ましい。また上限は、製造される窒化物の融点以下の温度であることが好ましい。さらに、原料金属の融点より100℃以上高いことが好ましく、150℃以上高いことがより好ましい。また上限は、製造される窒化物の融点より100℃以上低いことが好ましく、200℃以上低いことがより好ましい。
【0027】
加熱温度が低すぎると、窒化反応に時間がかかりすぎることがある。一方、加熱温度が高すぎると、窒化される前に金属の溶融が支配的となり窒化反応が阻害される。具体的には、例えば、ランタン及び窒化ランタンの融点は、それぞれ921℃及び2450℃であり、セリウム及び窒化セリウムの融点は、それぞれ、799℃及び2560℃である。それ故、窒化ランタンや窒化セリウムを製造する際の焼成温度は、950℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましく、1050℃以上が特に好ましい。また上限は、1500℃以下が好ましく、1400℃以下がより好ましい。
【0028】
2.希土類金属窒化物
本発明の希土類金属窒化物は、上記方法で製造されたことに特徴を有するものである。本発明の希土類金属窒化物の用途は特に制限されないが、特に蛍光体原料として優れた特性を示すものであり、諸種の希土類金属窒化物蛍光体の製造原料として用いることができる。本発明の希土類金属窒化物は、希土類金属窒化物製造時の製造条件(充填量、ガス流通量、加熱時間、温度)によって、窒素含有率が変動し、希土類金属1モルあたりの窒素のモル数が1モル未満となりうる。このような窒素が不足した希土類金属窒化物も、希土類金属窒化物蛍光体の原料としては好適に使用できる。窒素の含有量は、希土類金属1モルあたり、0.9モル以上であれば蛍光体原料として使用可能であり、0.94モル以上であれば、更に好ましい。
【0029】
3.希土類金属窒化物蛍光体
本発明の希土類金属窒化物蛍光体(以下これを「本発明の蛍光体」と略称することがある。)は、上記した希土類金属窒化物を原料として製造されたことに特徴を有するものである。
【0030】
本発明の蛍光体は、上記した希土類金属窒化物を原料として製造されたものであれば如何なる方法で製造されたものでもよく、その製造方法に特に制限はなく、任意の方法を採用することができる。本発明の蛍光体は、例えば、上記した希土類金属窒化物を、必要に応じて、焼成するのに好ましいサイズに粉砕した後、目的とする蛍光体の母体構成元素の組成となるように他の原料と混合し、混合物を焼成すことにより製造できる。
【0031】
焼成時の温度、圧力、雰囲気、フラックスの使用とその量等は、目的とする蛍光体に応じて、適宜決定すればよい。さらに、焼成後、必要に応じて、粉砕、洗浄、分級、表面処理、乾燥等を行なってもよい。
【0032】
本発明の希土類金属窒化物蛍光体は、酸素含有量が少なく、このため構成元素のずれも少なく、不純物相等の生成も少ないものを得ることができる。
【0033】
さらに、本発明の希土類金属窒化物は、特開2008−285659号公報、特開2009−249445号公報、WO2008/132954、国際出願番号:PCT/JP2010/055934号明細書等に記載されている蛍光体、例えば、下記一般式(1)で表される結晶相を含有する蛍光体の製造原料として特に好適である。
【0034】
(R,Ca,Ce)3+αSi11+β (1)
[式(1)中、RはLa、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示し、RとCaとCeのモル数の合計は1モルであり、Nはその一部が酸素に置換されていても良く、αは−0.1≦α≦1.5、βは−0.2≦β≦0.5の範囲を満たす数値である。]
【0035】
上記式(1)において、Rは、La、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示すが、中でも、Rは、La、Gd、Lu及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素であることが好ましく、La及びGdからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素であることが好ましく、Laであることが特に好ましい。
【0036】
また、Rは、1種の希土類元素のみを用いてもよいが、2種以上の希土類元素を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。Rとして2種以上の希土類元素を使用することにより、本発明の蛍光体の励起波長や発光波長を変更して、CIE色度座標(x、y)を調節することができる。
【0037】
ただし、Rが2種以上の元素からなる場合には、La、又は、LaとGdの混合物のRに占める割合が、通常70モル%以上、中でも80モル%以上、特に95モル%以上使用することが好ましい。これにより、輝度や発光強度を向上させることができる。また、輝度や発光強度の点から、LaとGdの総量に対するLaの割合は、通常70モル%以上、中でも80モル%以上、特に95モル%以上使用することが好ましい。
【0038】
上記式(1)において、RとCaとCeのモル数の合計は1モルであるが、付活元素であるCeの量は、RとCaとCeの合計に対し、通常0モル%より大きく、好ましくは1%モル以上、より好ましくは2%モル以上、更に好ましくは4モル%以上であり、また、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。付活元素量が大きすぎると濃度消光により発光強度が低下する可能性がある。
【0039】
Caの量は、RとCaとCeの合計に対し、通常0モル%以上、好ましくは1%モル以上、より好ましくは2%モル以上であり、また、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。Caの量を増加させることにより、発光波長を長波長側に移動させることができる。しかしながら、Caの量が大きすぎると、発光強度が低下する傾向がある。
なお、Rの量は、CaとCeの量を差し引いた残りの量である。
【0040】
付活元素であるCeは、本発明の蛍光体中において、少なくともその一部が3価のカチオンとして存在することになる。この際、付活元素Ceは3価及び4価の価数を取りうるが、3価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。具体的には、全Ce量に対するCe3+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0041】
また、Ce以外の付活元素として、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbを共存させることができる。これらの元素の微量添加により増感効果が発現し、輝度が向上する場合がある。
【0042】
さらに、上記式(1)で表される結晶相の基本系においては、Siの一部をAlで置換することができる。このとき、NアニオンがOアニオンに置換されたり、Rが欠損したり、2価のCaが3価のRに置換される。
【0043】
上記式(1)において、N(窒素)の一部が酸素に置換されている場合、発光強度の観点から、窒素に置換される酸素のモル数は、好ましくは窒素のモル数の5%未満、より好ましくは2%未満、更に好ましくは1%未満である。また、製造しやすさの観点から、上記の酸素のモル数は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上である。
【0044】
さらに、上記式(1)において、αは、(R,Ca,Ce)の変動量の許容範囲を示すものであり、好ましくは−0.1≦α≦1.5、より好ましくは−0.1≦α≦1.0の範囲の数値である。特に輝度を向上させようとした場合、−0.1≦α≦0.1が特に好ましい。βは、Nの変動量の許容範囲を示すものであり、好ましくは−0.2≦β≦0.5、より好ましくは0≦β≦0.3、特に好ましくは0≦β≦0.1の範囲の数値である。以上の数値はSiのモル比を6にした場合の数値になる。
【0045】
上記式(1)の化学組成のうち、好ましいものの具体例を以下に挙げるが、本発明の蛍光体が有する結晶相の組成は以下の例示に限定されるものではない。
【0046】
式(1)の化学組成のうち酸素が混入していない組成としては、例えば、La2.8Ce0.2Si11、La2.7Ce0.3Si11、La1.37Ce0.03Ca2.40Si11、La2.15Ce0.10Ca1.23Si11、La2.57Ce0.03Ca0.60Si11等が挙げられる。また、酸素が存在する組成としては、例えば、La2.79Ce0.2Ca0.01Si0.0110.99、La2.75Ce0.2Ca0.05Si0.0110.95、La1.71Ce0.1Ca1.57Si0.4410.56、La1.17Ce0.03Ca2.20Si1.0010.00、La2.37Ce0.03Ca0.75Si0.3010.70、La2.68Ce0.3Ca0.02Si0.0210.98、La2.74Ce0.20Ca0.15Si0.0610.94、La2.5Ce0.3Ca0.2Si0.210.8等が挙げられる。
【0047】
なお、本発明の蛍光体は、その性能を損なわない限りにおいて、上記式(1)で表される結晶相の構成元素の一部が欠損又は他の原子で置換されていてもよい。その他の元素の例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0048】
例えば、式(1)において、(R,Ca,Ce)の位置に、Nd、Sm、Dy、Ho、Er及びTmからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素又は希土類元素が置換していてもよい。中でも、希土類元素であるSm及び/又はTmが置換していることが好ましい。
【0049】
また、例えば、式(1)において、Nの位置に、S、Cl及び/又はF等の陰イオンが置換していてもよい。
【0050】
さらに、式(1)において、Siの一部をGe及び/又はCに置換えることができる。その置換率は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、0モル%が更に好ましい。
【0051】
また、発光強度の大幅な減少を招かないという理由により、式(1)における(R,Ca,Ce)、Si、Nの各位置には、5モル%以下で元素が置換されていてもよいし、各位置に10モル%以下で欠損が起こっていてもよい。ただし、両者とも0モル%がより好ましい。
【0052】
上記式(1)で表される結晶相を含有する本発明の蛍光体は、黄色〜橙色蛍光体として用いられるものであり、波長455nmの光で励起した場合のその発光スペクトルの発光ピーク波長が、通常480nm以上、好ましくは500nm以上、さらに好ましくは510nm以上、より好ましくは520nm以上であり、また、通常640nm以下、好ましくは610nm以下、より好ましくは600nm以下の範囲にあるものである。
【0053】
上記式(1)で表される結晶相を含有する本発明の蛍光体は、上記特許文献に記載されている方法に準じて、例えば、少なくとも式(1)における(R,Ca,Ce)源、Si源を、目的とする蛍光体の母体構成元素の組成となるように混合し、混合物を焼成することにより製造することができる。
【0054】
ここで、R源、Ca源、Ce源、及びSi源としては、例えば、これらR、Ca、Ce、及びSiの、それぞれの窒化物、Si(NH)等の窒素含有化合物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫化物、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。これらの化合物の中から、窒素、水素含有窒素、アンモニア、アルゴン等の焼成雰囲気の種類に応じて、適宜選択すればよい。中でも、R源、Ce源としては、本発明の希土類金属窒化物を用いるのが好ましい。
【0055】
即ち、R源としては、本発明の方法で製造された窒化ランタン、窒化ガドリニウム、窒化ルテチウム、窒化イットリウム、窒化スカンジウムが挙がられる。また、必要に応じて、これら窒化物以外に、例えば、ランタン(金属)、フッ化ランタン、酸化ランタン、硝酸ランタン、水酸化ランタン、蓚酸ランタン、炭酸ランタン等のLa源;ガドリニウム(金属)、フッ化ガドリニウム、酸化ガドリニウム、硝酸ガドリニウム、水酸化ガドリニウム、蓚酸ガドリニウム、炭酸ガドリニウム等のGd源;ルテチウム(金属)、フッ化ルテチウム、酸化ルテチウム、硝酸ルテチウム、蓚酸ルテチウム等のLu源;イットリウム(金属)、フッ化イットリウム、酸化イットリウム、硝酸イットリウム、蓚酸イットリウム、炭酸イットリウム等のY源;スカンジウム(金属)、酸化スカンジウム、硝酸スカンジウム、蓚酸スカンジウム等のSc源等となる金属や化合物を混合して用いてもよい。
【0056】
Ce源としては、本発明の方法で製造された窒化セリウム(CeN)が挙がられる。また、必要に応じて、これら窒化物以外に、例えば、Ce(金属)、CeO、Ce(SO、Ce(C・水和物、CeCl、CeF、Ce(NO・水和物等を混合して用いてもよい。
【0057】
Ca源としては、例えば、Ca(金属)、CaF、CaSiN、Ca、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、蓚酸カルシウム等が挙げられる。これらの中で、Ca(金属)、CaF、Caが好ましい。
【0058】
Si源としては、例えば、Si、SiO、HSiO、Si(NH)、Si(OCOCH等が挙げられる。これらの中で、Siが好ましい。
【0059】
本蛍光体に含まれる窒素は、例えば、水素含有窒素雰囲気やアンモニア雰囲気下で各原料の混合物を焼成する場合は、雰囲気中から取り入れることができる。あるいは、R源、Ca源、Si源、及びCe源として含窒素化合物を用いることが好ましい。特に、本発明の希土類金属窒化物を用いることが好ましい。
【0060】
本蛍光体に酸素が含まれる場合は、上述したR源化合物、Ca源化合物、Si源化合物、及びCe源化合物のうちの含酸素化合物等を用いることができる。
【0061】
なお、Ca源、R源、Ce源、Si源は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、原料化合物が、母体構成元素のうち2つ以上を兼ねていてもよい。
【0062】
また、上記原料中に含まれる不純物のうち、Fe、Co、Cr及びNiについては、通常1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。
【0063】
各原料中の酸素濃度としては、通常1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。
【0064】
また、各原料の重量メジアン径(D50)は、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。このために、原料の種類によっては予めジェットミル等の乾式粉砕機で粉砕を行っても良い。これにより、各原料の混合物中での均一分散化を図り、かつ、各原料の表面積増大による混合物の固相反応性を高めることができ、不純物相の生成を抑えることが可能となる。特に、窒化物の場合には、反応性の観点から他の原料より小粒径のものを用いることが好ましい。
【0065】
また、原料化合物のうち潮解性のあるものについては、無水物を用いる方が好ましい。
【0066】
上記各原料を、目的の組成となるように秤量し、それを十分混合したのち、ルツボ等の耐熱性容器に充填し、所定温度、雰囲気下で焼成し、必要に応じて、焼成物を粉砕、洗浄等の後処理をすることにより、本発明の希土類金属窒化物蛍光体を得ることができる。
【0067】
各原料の粉砕、秤量、混合等は、窒化物原料が水分により劣化しないように、水分管理されたNグローブボックスで行うことが好ましい。
【0068】
焼成に用いる耐熱容器としては、窒化ホウ素製、アルミナ製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が好ましく、窒化ホウ素製及びモリブデン製のものがより好ましい。
【0069】
焼成時の温度(最高到達温度)は、通常1300℃以上、好ましくは1500℃以上、また、通常2300℃以下、好ましくは2200℃以下の範囲である。焼成温度が低過ぎても、高過ぎても、上記結晶相の生成が困難となる傾向にある。ただし、雰囲気ガス中の窒素を蛍光体のN源として用いる場合には、焼成時の温度は、通常1300℃以上、好ましくは1400℃以上、より好ましくは1450℃以上であり、また、通常2300℃以下、好ましくは2200℃以下の範囲である。
【0070】
焼成時の昇温過程においては、その一部で減圧条件下とすることが好ましい。具体的には、好ましくは室温以上であって、好ましくは1500℃以下、より好ましくは1200℃以下、更に好ましくは1000℃以下の温度となっているいずれかの時点において、減圧状態(具体的には通常10−2Pa以上0.1MPa未満の範囲)とすることが好ましい。中でも、減圧下で、後述する不活性ガス又は還元性ガスを系内に導入し、その状態で昇温を行うことが好ましい。このとき、必要に応じて、目的とする温度で1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上保持しても良い。保持時間の上限は通常5時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下である。
【0071】
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるが、簡便さの観点から、常圧で行なうことが好ましい。しかし、焼成雰囲気が窒素の場合、通常3気圧以上、好ましくは4気圧以上、より好ましくは8気圧以上である。上限は、高圧ガス保安法に関する手続が不要になるよう10気圧以下が好ましい。
【0072】
焼成時間(最高到達温度での保持時間)は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常10分以上、好ましくは1時間以上、通常24時間以下、好ましくは10時間以下の範囲である。加熱前に炉内を真空引きする必要性の有無は原料の特性を考慮して選択することが好ましい。
【0073】
焼成時の雰囲気は、本発明の蛍光体が得られる限り特に制限されないが、酸素濃度の低い雰囲気下で焼成することが好ましい。得られる蛍光体の酸素含有率を制御するためである。焼成時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは20ppm以下であり、理想的には、酸素が全く存在しないことが好ましい。焼成時の雰囲気の具体例としては、原料の種類に応じて、適宜変えることが望ましいが、窒素と水素の混合ガス、アンモニアガス、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素等の不活性ガス、及びそれらを2種以上混合した混合ガス等を使用することができる。中でも、窒素ガス、又は、窒素と水素の混合ガスが好ましい。
【0074】
上記窒素(N)ガスとしては、純度99.9%以上のものを使用することが好ましい。さらに、水素ガスを用いる場合には、雰囲気中の水素含有量は1体積%以上が好ましく、2体積%以上がさらに好ましく、また、5体積%以下が好ましい。雰囲気中の水素の含有量は、高すぎると安全性が低下する可能性があり、低すぎると十分な還元雰囲気を達成できない可能性があるからである。
【0075】
また、上記雰囲気ガスは昇温開始前に導入しても良いが、昇温途中に導入してもよいし、焼成温度到達時に導入を行っても良い。なかでも、昇温開始前又は昇温途中に導入するのが好ましい。また、これらの雰囲気ガスの流通下で焼成を行う場合には、通常、0.1リットル/分〜10リットル/分の流量の下、焼成が行われる。
【0076】
また、焼成に際し、必要に応じて、フラックスを原料に混合することもできる。さらに、焼成後、必要に応じて、上記のとおり、粉砕、洗浄、分級、表面処理、乾燥等を行ってもよい。これらの操作は、蛍光体の製造に通常用いられる方法で行えばよい。
【0077】
例えば、洗浄は、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液等で行うことができる。
【0078】
使用されたフラックスを除去する等、蛍光体の表面に付着した不純物相を除去し発光特性を改善する等の目的のために、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、王水、フッ化水素酸と硫酸との混合物等の無機酸;酢酸等の有機酸等を含有する酸性水溶液を使用することもできる。中でも、効率的に不純物相を除去でき、かつ、蛍光体への悪影響が少ないという観点で、塩酸の使用が好ましい。
【0079】
不純物相である非晶質分を除去する目的のためにフッ化水素酸、フッ化アンモニウム(NHF)、フッ化水素アンモニウム(NHHF)、フッ化水素ナトリウム、フッ化水素カリウム等を含有する酸性水溶液等が使用できる。
【0080】
また、アリカリ性水溶液や酸性水溶液中で洗浄処理した後に、水で更に洗浄することが好ましい。
【0081】
上記の洗浄により、蛍光体の輝度、発光強度、吸収効率、物体色を向上させることができる。
【0082】
かくして得られる本発明の蛍光体は、黄緑色〜橙色の長波長領域に充分な発光強度を有し、また、発光スペクトルにおいて極めて半値幅の広い発光ピークを有する光を発することができる。したがって、本発明の蛍光体を白色発光装置に適用した場合には、その白色発光装置は、ニーズに合わせて、様々な色味を持つ、高演色性の白色光を発することが可能となる。
【0083】
また、本発明の蛍光体は、通常、近紫外発光又は青色発光の半導体発光素子で特に効率よく励起され、黄緑色〜橙色の蛍光を発する蛍光体である。さらに、本発明の蛍光体は、通常、従来から白色発光装置に多く使用されているYAG:Ce蛍光体に比べて温度上昇に伴う発光効率の低下が少ない。
【0084】
本発明の蛍光体の用途に制限は無いが、上記の利点を利用して、例えば、照明、画像表示装置等の分野に好適に使用できる。中でも、一般照明用LEDの中でも特に高出力ランプ、とりわけ高輝度、高演色で比較的色温度の低い電球色用白色LEDを実現する目的に適している。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例にて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
5〜10mmの塊状のランタン金属(3N)12.777gをモリブデン容器に入れ、モリブデン箔で蓋をして、マッフル型電気炉内に置いた。電気炉内を真空排気したのち、4%H+Nガスを2L/分で流しながら、1100℃まで加熱し、その温度で10時間保持した。
【0087】
得られた生成物を速やかに窒素雰囲気のグローブボックスに収納した。得られた生成物の質量は14.088gだった。窒化反応による質量増加率は10.3%だった。ランタンの窒化に伴う質量増加率の計算値は10.1%である。
【0088】
得られた生成物の粉末X線回折パターン(測定装置:PANalytical社製X’Pert、X線源:CuKα線。実施例2以降についても同様。)とランタン金属と窒化ランタンの標準チャート(JCPDSカード)を図1に示す。図1のように、La金属と窒化ランタン(LaN)の粉末X線回折パターンはほぼ同じなので、生成物はこのいずれかであることがわかる。前述の通り、加熱による質量増加が観察されたことから、生成物は窒化ランタンであると言える。
【0089】
[実施例2]
5〜10mmの塊状のセリウム金属(3N)4.503gをモリブデン容器に入れ、モリブデン箔で蓋をして、マッフル型電気炉内に置いた。電気炉内を真空排気したのち、4%H+Nガスを2L/分で流しながら、1100℃まで加熱し、その温度で10時間保持した。
【0090】
得られた生成物を速やかに窒素雰囲気のグローブボックスに収納した。得られた生成物の質量は5.000gだった。窒化反応による質量増加率は11.0%だった。セリウムの窒化に伴う質量増加率の計算値は10.0%だった。
【0091】
得られた生成物の粉末X線回折パターン(X線源:CuKα線)とセリウム金属と窒化セリウムの標準チャート(JCPDSカード)を図2に示す。図2から、生成物の主成分は窒化セリウムであることがわかった。また、この生成物には、わずかではあるが酸化セリウムも含まれることがわかった。
【0092】
[実施例3]
実施例1で製造した窒化ランタンと実施例2で製造した窒化セリウムを、それぞれ乳鉢で粉砕し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させた。窒化ランタン(LaN)1.713gと窒化セリウム(CeN)0.123gとα窒化珪素(Si,宇部興産社製SN−E10)1.122gとフッ化ランタン0.157gを秤量し、これらを乳鉢で良く混合した。これをモリブデン製るつぼに入れ、モリブデン箔で蓋をした。ここまでの作業はすべて窒素雰囲気のグローブボックス中で行った。
【0093】
これをマッフル型電気炉に入れ、電気炉内を真空排気したのち、4%H+Nガスを2L/分で流しながら、1500℃まで加熱し、その温度で12時間保持した。得られた蛍光体を粉砕したのち、塩酸に入れて溶解する成分を除去することにより、(La,Ce)Si11蛍光体を得た。
【0094】
この蛍光体の粉末X線回折パターンを図3に、455nmの励起光を照射したときの発光スペクトルを図4にそれぞれ示す。粉末X線回折パターンより、(La,Ce)Si11相が主成分として生成していることが確認された。また、この蛍光体は青色の励起光の照射により、強い黄色の発光をした。
【0095】
[実施例4]
実施例1で製造した窒化ランタンを乳鉢で粉砕し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させた。窒化ランタン(LaN)1.835gとフッ化セリウム(CeF)0.158gとα窒化珪素(Si,宇部興産社製SN−E10)1.122gを秤量し、これらを乳鉢で良く混合した。これをモリブデン製るつぼに入れ、モリブデン箔で蓋をした。ここまでの作業はすべて窒素雰囲気のグローブボックス中で行った。
【0096】
これをマッフル型電気炉に入れ、電気炉内を真空排気したのち、4%H+Nガスを2L/分で流しながら、1500℃まで加熱し、その温度で12時間保持した。得られた蛍光体を粉砕したのち、塩酸に入れて溶解する成分を除去することにより、(La,Ce)Si11蛍光体を得た。
【0097】
この蛍光体の粉末X線回折パターンを図5、455nmの励起光を照射したときの発光スペクトルを図6にそれぞれ示す。粉末X線回折パターンより、(La,Ce)Si11相が主成分として生成していることが確認された。また、この蛍光体は青色の励起光の照射により、強い黄色の発光をした。
【0098】
[実施例5]
5〜10mmの塊状のランタン金属(3N)131.000gをモリブデン容器に入れ、モリブデン箔で蓋をして、マッフル型電気炉内に置いた。電気炉内を真空排気したのち、4%H+Nガスを2L/分で流しながら、1100℃まで加熱し、その温度で5時間保持した。
【0099】
得られた生成物を速やかに窒素雰囲気のグローブボックスに収納した。得られた生成物の質量は142.453gだった。窒化反応による質量増加率は9.6%だった。得られた窒化ランタンはランタン1モルあたり、窒素を0.96モル含む。
【0100】
[実施例6]
実施例5で製造した窒化ランタンとを乳鉢で粉砕し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させた。窒化ランタン(LaN)34.252gとα窒化珪素(Si,宇部興産社製SN−E10)20.571gとフッ化セリウム3.154gを秤量し、これらを乳鉢で良く混合した。このうち3gをモリブデン製るつぼに入れ、モリブデン箔で蓋をした。ここまでの作業はすべて窒素雰囲気のグローブボックス中で行った。
【0101】
これをマッフル型電気炉に入れ、電気炉内を真空排気したのち、4%H+Nガスを2L/分で流しながら、1525℃まで加熱し、その温度で12時間保持した。得られた蛍光体を粉砕したのち、塩酸に入れて溶解する成分を除去することにより、(La,Ce)Si11蛍光体を得た。得られた蛍光体は、455nmの青色光の照射により、実施例3,4とほぼ同じ発光強度の黄色発光を示し、粉末X線回折測定により(La,Ce)Si11が主成分であることが確認された。
【0102】
[比較例1]
実施例で使用したのと同じランタン金属約10gを、窒素雰囲気の電気炉で900℃に加熱し、7時間保持したところ、質量増加率は2.8%だった。このように、900℃の窒素雰囲気加熱では、塊状のランタン金属を十分窒化できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は産業上の任意の分野に使用可能であるが、例えば、照明、画像表示装置等に用いられる蛍光体の分野に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類金属を、窒素と水素の混合雰囲気中で、該金属の融点以上、該金属の窒化物の融点以下の温度で焼成すること特徴とする希土類金属窒化物の製造方法。
【請求項2】
希土類金属が、ランタン又はセリウムである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
希土類金属が、少なくともその最も短い大きさが1mm以上である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
混合雰囲気中の水素の割合が、窒素量に対し2体積%以上10体積%以下である請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
焼成が、1気圧以上1.2気圧以下で行われる請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の方法により製造されたことを特徴とする希土類金属窒化物。
【請求項7】
請求項6に記載の希土類金属窒化物を原料として製造されたことを特徴とする希土類金属窒化物蛍光体。
【請求項8】
希土類金属窒化物蛍光体が、下記一般式(1):
(R,Ca,Ce)3+αSi11+β (1)
[式(1)中、RはLa、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素を示し、RとCaとCeのモル数の合計は1モルであり、Nはその一部が酸素に置換されていても良く、αは−0.1≦α≦1.5、βは−0.2≦β≦0.5を満たす数値である。]
で表される結晶相を含有するものである請求項7に記載の蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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