帯域通過フィルタを用いて放射体の温度を測定するガス・センサ
本発明は、フィルタ構成と、フィルタ構成の下流側に配置された検出器構成と、検出器構成に接続された評価デバイスとを有するセンサに関し、フィルタ構成は、第1の所定の帯域すなわち被疑帯域の通過を許す帯域通過フィルタとして構成された、少なくとも1つの第1のフィルタすなわち被疑フィルタと、第2の所定の帯域(1つまたは複数)すなわち基準帯域(1つまたは複数)の通過を許す帯域通過フィルタとして構成された、少なくとも1つの第2のフィルタすなわち基準フィルタ(1つまたは複数)とを有し、検出器構成は、フィルタの少なくとも1つに関連付けられた少なくとも1つの検出器を有する。センサは、放出源の温度を測定するために帯域通過フィルタを用いる。センサは有利にはIR帯域内で利用することができ、有利にはCO2を検出するために用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ構成と、フィルタ構成の下流側に配置された検出器構成と、検出器構成に接続された評価デバイスとを有するセンサに関し、フィルタ構成は、第1の所定の帯域すなわち被疑帯域の通過を許す帯域通過フィルタとして構成された、少なくとも1つの第1のフィルタすなわち被疑フィルタと、第2の所定の帯域(1つまたは複数)すなわち基準帯域(1つまたは複数)の通過を許す帯域通過フィルタとして構成された、少なくとも1つの第2のフィルタすなわち基準フィルタ(1つまたは複数)とを有し、検出器構成は、フィルタの少なくとも1つに関連付けられた少なくとも1つの検出器を有する。センサは、放出源の温度を測定するために帯域通過フィルタを用いる。センサはIR帯域内で利用することが好ましく、またセンサはCO2を検出するために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ガス・センサとして構成されたこのようなセンサは、たとえば米国特許第5,081,998号により知られている。それには、フィルタ構成として合計4つの検出器に対して働く、IR放射源が示される。フィルタ構成は、異なる通過特性を有する2つのフィルタを有する。第1のフィルタは、CO2によって吸収されるIR放射に対する通過帯域を有する。したがってこのフィルタはまた、「CO2フィルタ」と呼ばれる。下流側に配置された検出器は、CO2検出器と呼ばれる。他のフィルタは、それと異なる通過帯域を有し、基準量を求める働きをする。その基準フィルタの下流側に配置された検出器は、基準検出器と呼ばれる。IR源と2つのフィルタの間には、ナチュラル・デンシティ・フィルタと呼ばれ、第1のフィルタの半分と第2のフィルタの半分に重なる第3のフィルタが配置される。したがって2つのCO2検出器の1つ、および基準検出器の1つは、ナチュラル・デンシティ・フィルタと、CO2フィルタまたは基準フィルタのいずれかとの両方を通過したIR放射のみを受け取る。評価デバイスでは、2つのCO2検出器の出力信号の差、および2つの基準検出器の差が形成される。これらの2つの差は、次いで互いに除算される。このようなCO2センサは、たとえば、麻酔時に患者をより良く監視できるようにするために、患者の呼気内のCO2を求めるために必要となる。
【0003】
このようなセンサの欠点は、それらが比較的大きな電力要件を有することであり、もう1つの欠点は必要な検出器の数である。米国特許第5,081,998号により知られる構成は、放射の発生源を必要とし、長期の使用の場合には、電池式の使用には不向きとなる。さらにこのようなIR源は一般に、一定の昇温期間を必要とし、ある程度の事前準備なしでは、必要なときに測定を行うことが常に可能ではない。
【0004】
本発明の基礎をなす問題は、米国特許出願公開第2008/0283753号に記載のセンサで紹介されるIRセンサの使用を簡単にすることであり、同明細書では、第1のフィルタの通過帯域は、第2のフィルタの通過帯域内に配置され、評価デバイスは、検出器の信号の差を形成し、それを検出器の信号に対して正規化する。
【0005】
この構成は、大幅により多くのIR放射を評価することを可能にする。したがってIR放射は、各検出器が1つの領域しか検出しない2つの別々の領域に分割されない。代わりに、一方の検出器は、たとえばここではCO2である求められるガスの吸収スペクトルも含む、予め設定されたスペクトル領域を有するIR放射を検出する。他方の検出器はその部分領域からIRスペクトルを検出し、これは求められるガスの吸収スペクトルを含まない。したがってセンサの感度は大幅に増加し、すなわちセンサへのIR放射の供給に対する要求は比較的低くなる。検出器の出力信号の差が形成されるので、たとえばバックグラウンドノイズなどの干渉信号は除去される。差を検出器の出力信号に対して正規化することにより、IR放射の強度の変動を補償することが可能となる。また、2つより多いセンサを用い、それに対応してフィルタの数を増やし、次いでそれにしたがって個々の通過幅を重ねることが可能である。このようなセンサを用いて、たとえば温度、室内の動き、室内の人数などに関係する他の情報を得ることも可能になる。大幅により多くの放射を検出することが可能であるので、電力消費を低減でき、それにより必要な電力を電池によって供給することもできる。それにより、構内の設置および使用の点から、より大きな自由度をもたらす。センサは、その信号を無線で送信することができる。
【0006】
第1のフィルタの通過帯域は、第2のフィルタの通過帯域より大きいことが好ましい。したがって第1のフィルタは、第2のフィルタによって通過が許されるスペクトル領域を含むのに加えて、IR放射が吸収されるスペクトル領域も含む。
【0007】
好ましくは、2つのフィルタは、共通の遮断波長を有する。それにより評価が簡単になる。その場合は、検出器の出力信号の間の差は、追加の計算ステップを必要とせずに容易に形成することができる。遮断波長は、通過帯域を規定する、すなわち制限する波長である。これらは、「下限波長」および「上限波長」と呼ばれる。
【0008】
いかに知られた状況であっても、放射体の放射の大きさおよびスペクトル分布は、放射体の温度に対する依存性を有する。これは、良く知られた放射のプランクの分布によって与えられる。放射体の温度が与えられると、プランク曲線は波長に対する放射の依存性を与え、プランク曲線はある波長にて最大放射を有し、最大放射値、および最大放射の波長は温度に依存する。
【0009】
たとえば、米国特許出願公開第2008/0283753号で述べられるもののように、センサ・システムにおいて自然源を用いると、フィルタの通過帯域が、波長の帯域にわたってエネルギー(換言すれば、放射強度密度)において変化することになる。このような自然源の温度は、通常は既知ではなく、さらには可制御性が低い。
【0010】
この構成は、光源の放射の強度の変化を補償することができるが、たとえば光源の温度変化に対応することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、発生源の温度を推定する方法を導入することにより、現在のセンサのこれらの問題点を解決する方法、およびその解決策を利用したセンサを導入することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って本発明の1つの目的は、放射体発生源の温度を少なくとも推定する方法を導入し、これを用いてセンサの測定値を補正または調整することである。
【0013】
本発明は、被疑フィルタおよび基準フィルタ(1つまたは複数)が異なる遮断波長を有するということを導入することにより、これらの問題を解決する。「下限波長」は、そこからはフィルタが放射の通過を許す最も低い波長であり、「上限波長」は、下限波長より高く、そこからはフィルタが放射の通過を遮断する最も高い波長である。
【0014】
被疑フィルタ(1つまたは複数)の許される波長の領域は、以下では「被疑帯域(1つまたは複数)」と呼ばれ、基準フィルタ(1つまたは複数)の許される波長は、以下では「基準帯域(1つまたは複数)」と呼ばれる。
【0015】
上記のように、本発明における被疑下限波長は、基準下限波長(1つまたは複数)とは異なり、被疑上限波長は、基準上限波長(1つまたは複数)とは異なる。これは、たとえば発生源の温度変動によって引き起こされる、到来放射の強度のスペクトル分布などの変化は、基準帯域(1つまたは複数)を被疑帯域の上および下に分布させることによって補償することができるという利点を有する。本発明の好ましい一実施形態では、この分布によって、温度の変化により、基準帯域にわたる放射強度(または強度密度、またはエネルギー)の増加が、被疑帯域にわたる放射強度(または強度密度、またはエネルギー)の増加におよそ等しくなる。
【0016】
1つの代替または追加の実施形態では、被疑帯域にわたる放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均は、基準帯域のそれぞれにわたる放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均におよそ等しい。
【0017】
1つの代替または追加の実施形態では、被疑帯域にわたる放射強度密度(または、エネルギー)は、すべてを含めた基準帯域の全体にわたる放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均におよそ等しい(「基準フィルタ・システム帯域」は、すべての基準フィルタのすべてを含めた基準帯域である)。
【0018】
他の代替または追加の実施形態では、被疑帯域にわたる放射強度密度(または、エネルギー)は、基準帯域の1つまたは基準帯域のそれぞれの放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均におよそ等しい。
【0019】
他の代替または追加の実施形態では、放射強度密度(または、エネルギー)は基準帯域のそれぞれに対しておよそ同じである。
【0020】
比較的狭い2つの波長の帯域にて平均放射を測定すれば、プランクの放射則により放射体の温度を推定することが可能になる。これはたとえば、言わば正しいプランク曲線を特定し、それにより温度を計算することによって行われる。
【0021】
これは本発明の主要な概念であり、被疑および基準フィルタ(1つまたは複数)で共働して、または基準フィルタのみで温度推定のためにこのような帯域を形成することができる。温度測定は、ガス測定における温度依存性を補償するために用いることができ、それによってガス濃度の測定において、より精度が得られる。
【0022】
本発明のフィルタは、直列のフィルタ素子によって、または被疑フィルタおよび基準フィルタ(1つまたは複数)として共に動作する単一のフィルタ素子によって形成することができる。2つ以上のフィルタが直列のフィルタ素子として構成されるときは、それらは放射方向に次々と、すなわち放射源(1つまたは複数)と検出器の間に配置される。
【0023】
有利にはセンサは、任意の放射波長内で動作することができ、発生源は任意の放射源とすることができる。
【0024】
以下の実施例では、IR源が好ましい光源となり得る環境でCO2含有量を求めるためのセンサについて述べるが、本発明にはCO2以外の任意の他の物質も当てはまり得ると共に、IR帯域内以外の任意の他の光源が当てはまり得る。
【0025】
本発明の他の実施形態では、少なくとも1つの基準フィルタ(第1の基準フィルタと呼ばれる)は、被疑帯域より広い波長の広がりを有する第1の基準帯域と呼ばれる基準帯域を有し、この第1の基準フィルタの第1の基準下限波長は、被疑下限波長より低い波長にあり、この第1の基準フィルタの第1の基準上限波長は、被疑上限波長より高い波長を有する。このようにして被疑帯域は、第1の基準帯域に重なる。
【0026】
この実施形態では、第1の基準帯域の中心波長(第1の中心基準波長)と、被疑帯域の中心波長は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0027】
温度の変化に対しては、温度依存性を打ち消すためには、被疑帯域と基準帯域での強度の相対的な変化が等しくなければならない。
【0028】
能動的に電力供給される放射源または自然の放射源を用いるときは、強度の相対的な変化は、帯域の範囲の波長に対して非線形的に依存する。したがって、温度ドリフトに対する安定性を改善するために、不一致の中心波長を導入することができる。
【0029】
この実施例では有利には、基準フィルタ(1つまたは複数)は、被疑フィルタの通過帯域より0.2から1μm大きい通過帯域を有する。基本的に被疑フィルタは、放射スペクトルの比較的狭い波長領域またはスペクトル領域、たとえばIR放射がCO2によって吸収される領域のみをカバーすることが望ましい。示される領域は、このためには十分である。他のガスによる吸収が測定結果に悪影響を及ぼし、結果がゆがめられるリスクは小さく保たれる。
【0030】
ここでは第1の基準フィルタは、4から4.5μmの領域の通過帯域を有し、被疑フィルタは、4.1から4.4μmの領域の通過帯域を有することが好ましい。もちろん検出されるガスまたは他の量に応じて、これらのスペクトル領域もシフトさせることができる。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態では、システムは、それぞれ第1および第2の基準帯域(合わせて、すべてを含めた基準帯域を構成する)を有する第1および第2の基準フィルタを備え、第1および第2の基準帯域は重ならず、すなわち共通の波長には広がらない。これは環境内に、被疑帯域の近傍に吸収帯域を有する、関心のあるガス(1つまたは複数)以外の他のガスがある場合は、基準帯域がこのような「汚染」帯域と重なるのを避けるのは難しいという点で、測定に影響を及ぼし得るので、有利となり得る。このような「汚染」吸収帯域によって影響を受ける基準帯域が多くても1つとなることを確実にすることにより、少なくともその他は影響を受けないことが分かることになる。
【0032】
この実施形態の1つの好ましいバージョンでは、第1または第2の基準帯域の少なくとも1つが被疑帯域と重なり、すなわち第1の基準上限波長は、被疑下限波長より高い波長にあり、かつ/または第2の基準下限波長は、被疑上限波長より低いが第1の基準上限波長より高い波長にあり、それにより第1および第2の基準帯域は、重なることなく被疑帯域の両側に延びるようになる。
【0033】
この実施形態の別の好ましいバージョンでは、第1の基準上限波長は、被疑下限波長より低い波長にあり、第2の基準下限波長は、被疑上限波長より高い波長にあり、それにより第1および第2の基準帯域は、被疑帯域の両側に延びるようになる。
【0034】
代替実施形態では、第1および第2の基準帯域は、少なくとも1つ共通の波長を有して重なる。
【0035】
特に好ましい構成では、センサは、環境からのIR放射などの自然放射を用いる。したがって別個の電源、およびそれにしたがって一定の電力要件を有する放射の発生源は必要ない。一般にIR放射は、入射太陽光がないときでも、どこにも存在する。原理的にあらゆる物体は、一定量の熱放射を放出する。その場合、IR放射源が無くとも測定が可能であるので、「測定範囲」も広くなり、すなわち問題のガスの含有量に対して部屋の比較的大きなエリアを監視することが可能になる。これにより「個人用室内環境」または室内空気の質を監視し、正しい環境の実現が容易になる。始めに室内の空気をセンサに導き、そこでIR放射源と、上流側フィルタを有する検出器との間に通す必要はない。センサを、監視すべき空気の容積を言わば「測量」することができる室内の点に配置すれば十分である。この場合、ガス・センサは、言わば平均のガス濃度を簡単に検出することができる。したがってこのセンサは、特に個人用室内環境に対して大幅に良好な測定結果となる平均値を求める。もちろん、このセンサを使用して、ランプまたは他の照明手段を用いて動作するセンサの技術を改善することも可能である。自然または周囲IR放射が用いられるときは、発光手段のエネルギーを低減することができる。その結果、より長い保守間隔、およびより長い耐用寿命が得られる。
【0036】
好ましくは、評価デバイスは、差を第1の検出器の信号に対して正規化する。言い換えれば正規化のために、たとえばCO2含有量を含んだ信号が用いられる。この手順により結果としてやや大きな動的性能が得られる。
【0037】
センサが発生源の温度の変化に反応できることは、正規化のために特に関連性があり、なぜなら正規化はある温度においてのみ正しく機能し、フィルタ設定は通常、ある温度範囲に対してのみ行われるからである。補償ルーチンは、放射体の温度を正確に得ることによって実施される。さらに、得られた情報は、自然光源を用いないときに、放射体または光源の寿命を超えたか、超えそうであるかを推定するためにセルフチェックアルゴリズムにおいて用いることができる。
【0038】
好ましくはフィルタは、CaF2、ゲルマニウム、またはシリコンを含む。フィルタおよびセンサ・デバイスの他の任意の部分は、意味がある場合は、透過を改善するために反射防止膜を有することが好ましい。
【0039】
本明細書において以下では、図面と共に好ましい例示的実施形態を参照して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1−2】プランク曲線上の帯域を示す図である。
【図3】本発明の動作原理を説明するための線図である。
【図4A−4E】示された放射強度の波長依存性のない、2つまたは3つのフィルタの通過帯域を線図の形で示す図である。
【図5】検出器によって検出することができるエネルギーの大きさを線図の形で示す図である。
【図6A−6D】センサの構造の異なる実施形態を説明するブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、波長λmaxにて最大放射を有し、波長がλmaxより上に増加すると共に連続して減少する放射を有し、それにより2つのこのような波長λ1とλ2の間の帯域Δλを用いる、一般のプランク曲線を示す。下限波長λ1での放射R1は、上限波長λ2での放射R2より大きい。
【0042】
これはこのような帯域Δλを測定に用いるときに問題となり、なぜならその帯域の強度の変化は、単に到来する光の強度の変化による場合もあれば、放射体の温度の変化による場合もあるからである。
【0043】
図2は、同じプランク曲線を示すが、2つの帯域Δλ1およびΔλ2が見られる。このような2つの帯域内の平均放射を知ることにより、検出器に到達する放射強度に影響を及ぼす吸収が起きないと仮定してこれら2つの帯域の信号の比を計算することにより、プランクの放射分布によって温度の推定を行うことが可能になる。
【0044】
図3は、測定領域(3)内のたとえばCO2含有量(二酸化炭素含有量)を求めるガス・センサ(1)の線図を示し、センサ(1)は検出部(2)を備える。測定領域は、たとえば、個人用室内環境が調節されるべき部屋または部屋の部分とすることができる。太陽の記号(4)は、たとえば自然IR源、受動的発生源、または任意の考えられ得る能動的発生源(太陽光、レーザ、光ダイオード、制御型熱源、その他)などの放射源を表す。太陽の記号(4)は、ここでは単に説明のためのものである。原理的にほとんどどの物体も熱を放射し、それによりIR放射線を発生するので、ガス・センサ(1)は太陽光がなくても動作する。
【0045】
この例では、測定領域(3)には多数のCO2分子が存在し、CO2分子はここでは小さな円で表される。ガス分子は、丸印(5)によって表されるように、特定のスペクトル領域においてIR放射線を吸収する。CO2の濃度が大きいほど、ガス・センサ(1)において検出できる特定のスペクトル領域内のエネルギーは低くなる。
【0046】
図6Aは線図の形で、ガス・センサ(1)の簡単な検出部(2)の構造を説明するためのブロック回路図を示す。検出部(2)は、フィルタ構成(6)、検出器構成(7)、および評価デバイス(8)を有する。本明細書ではハウジング、固定手段などの他の詳細は示されない。
【0047】
図示のフィルタ構成は、第1の基準フィルタ(10)および被疑フィルタ(9)を有し、2つのフィルタ(9)および(10)は異なる通過特性を有し、一実施形態は図4Aに示される。第1の基準フィルタ(10)は、第1の基準帯域RB1内の波長の通過を許し、被疑フィルタ(10)は、被疑帯域SB内の波長の通過を許す。以下の図では、波長の放射依存性は示されない。図4Bの実施形態は、被疑帯域SBよりも広く広がる第1の基準帯域RB1を示すが、被疑帯域SBは第1の基準帯域RB1に重なり、それにより第1の基準帯域RB1は被疑帯域SBと同じ波長を含む。したがって、第1の基準下限波長RLW1は、被疑下限波長SLWより低い波長にあり、第1の基準上限波長RUW1は、被疑上限波長SUWより高い波長を有する。第1の基準帯域RB1は第1の中心波長RCW1を有し、被疑帯域は被疑中心波長SCWを有する。図は、共通の中心波長RCW1およびSCWを有する2つの帯域を示す。
【0048】
図4Bは、図4Aのものに関連する実施形態を示し、この場合でのみ異なった中心波長RCWおよびRCW1を有する。温度の変化に対して、温度依存性を打ち消すためには、被疑帯域と基準帯域内の強度の相対的な変化が等しくなければならない。能動的に電力供給される放射源または自然の放射源を用いるときは、強度の相対的な変化は、帯域の範囲の波長に対して非線形的に依存する。したがって、温度ドリフトに対する安定性を改善するために、不一致の中心波長を導入することができる。
【0049】
図4Cは別の実施形態を示し、システムには、第2の基準下限波長RLW2から第2の基準上限波長RUW2まで延びる第2の基準帯域RB2にわたって広がる、第2の基準フィルタ(20)が導入されている。図示の実施形態はさらに、第1および第2の基準帯域RB1およびRB2の両方に部分的にのみ重なる被疑帯域SBを有し、それにより被疑下限波長SLWは、第1の基準下限波長RLW1と第1の基準上限波長RUW1の間にある。被疑上限波長SUWは、第2の基準下限波長RLW2と第2の基準上限波長RUW2の間にある。図示の実施形態は、第2の基準下限波長RLW2より高い第1の基準上限波長RUW1を有するが、他の実施形態では、第1および第2の基準帯域RB1およびRB2が重ならないようにすることができる、すなわち第1の基準上限波長RUW1が、第2の基準下限波長RLW2より低くなるようにすることができる。
【0050】
図4Dは、2つの基準フィルタ(10)および(20)を有する代替実施形態を示し、ここでは基準帯域RB1およびRB2のいずれも少なくとも実質的に被疑帯域SBに重なることはなく、少なくともその両側に延び、すなわち第1の基準上限波長RUW1は被疑下限波長SLWより高くないが任意選択で同じでもよく、第2の基準下限波長RLW2は被疑上限波長SUWより低くないが任意選択で同じでもよい。図は、波長の通過幅がほぼ同じである2つの基準帯域RB1およびRB2を示すが、図2Eに示すようにそうでなくてもよく、2つの基準帯域RB1およびRB2は波長の通過幅が非常に異なってもよい。
【0051】
帯域の相対位置および大きさは、フィルタの端部の許容度、被疑帯域通過の幅、被疑帯域の吸収線の分布、および交差感度を引き起こし得るあらゆる他のガスの分布など、いくつかの要因に依存する。
【0052】
CO2センサとして動作するセンサ(1)の実施例では、IR放射がCO2によって吸収されるスペクトル領域λ(CO2)がある。このスペクトル領域は、約4.2から4.3μmに位置する。したがって有利には、被疑帯域SBは、被疑下限波長SLWを約4.0μmに有し、被疑上限波長SUWを約4.5μmに有することができ、またはさらにより狭い4.1μmから4.4μmの被疑帯域の領域を有することができ、またはCO2のスペクトル領域をカバーする任意の他の帯域を有することができる。次いで基準開始および上限波長は、有利には、それぞれ被疑下限波長SLWおよび被疑上限波長SUWの上および下に約0.5μm延びることができる。
【0053】
図5は、図3に見られる本発明の第1の実施形態の、第1の基準帯域RB1および被疑帯域SBを示し、被疑帯域は参照文字Aで示される減少していないエネルギーを有する。このエネルギーは、たとえばCO2によって吸収される大きさCだけ減少する。被疑帯域の両側に延びる、第1の基準帯域RB1の2つの部分は、それぞれ参照文字Bで示されるエネルギーを有する。このエネルギーは、たとえばCO2によって影響されないので、実質的に一定である。
【0054】
次いで、検出器構成(7)によって、異なるエネルギーが検出される。検出器構成(7)は、被疑フィルタ(9)を通過するたとえばIR放射を検出する第1の検出器(15)と、第1の基準フィルタ(10)を通過するたとえばIR放射を検出する第2の検出器(16)とを有する。2つの検出器(15)、(16)は、「サーモパイル」としても知られる熱電素子の形とすることができる。現れるたとえばIR放射に応じて各検出器は、電圧または電流、すなわち電気量を発生し、これはより多くのIR放射が入射するほど大きくなる。それにしたがって、第1の検出器(15)は信号S1を発生し、第2の検出器(16)は信号S2を発生する。
【0055】
サーモパイル・センサは、たとえばドイツ、ヴィースバーデンD−65199、PerkinElmer Optoelectronics GmbHから入手可能である。
【0056】
図6Aは、フィルタ構成(6)の構造の1つの簡単な実施形態を示し、被疑フィルタ(9)は2つのフィルタ素子(11)および(12)を備え、第1の被疑フィルタ素子(11)は被疑上限波長SUWを規定し、被疑下限波長SLWより低い下限波長を有する。第2の被疑フィルタ素子(12)は、被疑下限波長SLWを規定し、被疑上限波長SUWより実質的に高い上限波長を有する。同様に、第1の基準フィルタ(10)は、それぞれ第1の基準上限波長RUW1および第1の基準下限波長RLW1を規定する2つのフィルタ素子(13)および(14)を備える。システムに導入される(9)および(10)のようなフィルタの数に応じて、任意の数のこのようなフィルタ素子(11)、(12)、(13)、および(14)の構造をフィルタ構成(6)に導入することができる。この実施形態および他のいずれの実施形態において、いくつかのフィルタ素子は、フィルタが同じ端部および/または下限波長を有するときは2つ以上のフィルタに共通とすることができ、これは図6Bに示され、そこでは2つの「上限」フィルタ素子(11)および(13)は、1つの共通のフィルタ素子である。
【0057】
図6Cは、追加の基準フィルタである第2の基準フィルタ(20)を有する同様なセンサを示し、各フィルタは、上限および下限波長の両方に対する所望の帯域通過特性を備える単一のフィルタ素子(21、22、23)のみを有し、したがって被疑フィルタ(21)は、被疑下限波長SLWおよび上限被疑波長SUWの両方を規定する。第1の基準フィルタ(22)は、第1の基準上限および下限波長RUW1およびRLW1の両方を規定し、第2の基準フィルタ(23)は、第2の基準上限および下限波長RUW2およびRLW2の両方を規定する。この図示の実施形態では、2つのフィルタ素子(22、23)は、同じ検出器(16)に接続されているが、実際に行われることは、それらの信号をたとえば2つの別々のサーモパイルによって取得された後に数学的に加算することである。
【0058】
図6Dは、図6Cの実施形態に関連する一実施形態を示し、この場合のみ第3の検出器(24)は、第2の基準フィルタ(20)に接続される。
【0059】
たとえば図5A〜5Dで開示されたようなフィルタ素子(11、12、13、14)の任意の組み合わせ、変形、個数、および配置が本発明に当てはまることが留意されるべきである。
【0060】
一般にセンサは、1つ以上のガスを測定するためにも用いることができ、その場合は当業者には分かるように、単に必要数のセンサ、検出器などが含められる。
サーモパイル・センサでは、通常は、(出力信号が温度と共に変化するため)温度測定が行われるので、センサの周囲の温度の測定はすでに組み込まれている。部屋の放射温度もセンサを用いて入手可能であると考えられるので、同時にこれら2つの測定に基づいて動作温度を直接得ることが可能であり、次いでこれは室温または全く異なる何かを制御するために用いることができる。
【0061】
IRに関連して、室内の動きの測定がセンサを用いて直接可能であることも考えられ、次いでたとえばこれは、たとえば室内に誰かがいることを示す動きの事象においてのみ作動する換気システムを制御するのに用いることができる。様々な動きの測定に基づいて、室内の人数を推定できることも考えられ、このような推定はまた、室温または換気が室内の人数に応じて制御/変更されるように、制御目的に用いることができる。
【0062】
図6Aに見られるものなどの本発明の基本的なセンサは、2つの信号S1、S2が評価デバイス(8)に印加されることによって動作する。したがってそれにより、
【0063】
【数1】
ただし、
【0064】
【数2】
は、IR吸収に関係する情報を含む電気量、たとえば電流または電圧であり、Irefは、IR吸収によって影響されない基準量である。S1とS2の差が形成されるとき(「実効基準」は基準帯域の、被疑帯域を含まない部分である)、そのために線図的に差分形成器(17)を示しており、以下の量が得られる。
【0065】
【数3】
【0066】
この差S1−S2は、第1の検出器(15)の出力信号S1に対して正規化され、それにより信号S3が得られる。
【0067】
【数4】
【0068】
本発明のセンサは、たとえば窒素、酸化窒素、酸素、またはCOなど、任意の種類のガスを測定するのに用いることができ、さらにはガスの測定に限定されず、液体および固体など他の形での被疑体を測定するためにも用いることもできる。被疑体をCO2から変更するときは、それにしたがって通過帯域をシフトする必要があり、たとえばH2Oの吸収帯域は約2.7μmである。
【0069】
放射体、または光源の温度が分かることにより、IrefおよびInなどの量、および/またはS1およびS2などの信号に波形をつける(corrugate)か、またはそれらを正規化することが可能になり、言わば温度を除去し、かつ/または正規化により被疑および基準帯域などの帯域の波長依存性を除去する。
【0070】
本発明のセンサはさらに、任意の考えられる他の光学構成要素、たとえば追加の帯域通過フィルタとして動作するサファイア窓、反射器、たとえばIR放射を集めるまたは焦点合わせをするデバイスである集光デバイス、たとえば、センサの上流側に配置されたコリメータなどを備えることができる。
【0071】
またこのようなセンサは、廃ガス監視のために直接用いることが可能である。そのためにはセンサは、煙突または排気管内に設置される。特に加熱システムの場合は、次いでセンサ(または複数のセンサ)の出力信号を用いて燃焼を制御することができる。
【0072】
本発明は上記の説明および図面に限定されず、被疑フィルタ(9)および基準フィルタ(10、20)などのフィルタ、フィルタ素子(21、22、23)、検出器(15、16、24)などの任意の数および変更を含む、上記の説明および図面の任意の変更も本発明に当てはまる。
【0073】
さらに本発明は、ガスの測定に限定されず、センサは、一般に媒体の一部である物質の測定においても実施することができ、媒体はガス自体に限定されず、たとえば液体とすることもできる。
【図1】
【図2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ構成と、フィルタ構成の下流側に配置された検出器構成と、検出器構成に接続された評価デバイスとを有するセンサに関し、フィルタ構成は、第1の所定の帯域すなわち被疑帯域の通過を許す帯域通過フィルタとして構成された、少なくとも1つの第1のフィルタすなわち被疑フィルタと、第2の所定の帯域(1つまたは複数)すなわち基準帯域(1つまたは複数)の通過を許す帯域通過フィルタとして構成された、少なくとも1つの第2のフィルタすなわち基準フィルタ(1つまたは複数)とを有し、検出器構成は、フィルタの少なくとも1つに関連付けられた少なくとも1つの検出器を有する。センサは、放出源の温度を測定するために帯域通過フィルタを用いる。センサはIR帯域内で利用することが好ましく、またセンサはCO2を検出するために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ガス・センサとして構成されたこのようなセンサは、たとえば米国特許第5,081,998号により知られている。それには、フィルタ構成として合計4つの検出器に対して働く、IR放射源が示される。フィルタ構成は、異なる通過特性を有する2つのフィルタを有する。第1のフィルタは、CO2によって吸収されるIR放射に対する通過帯域を有する。したがってこのフィルタはまた、「CO2フィルタ」と呼ばれる。下流側に配置された検出器は、CO2検出器と呼ばれる。他のフィルタは、それと異なる通過帯域を有し、基準量を求める働きをする。その基準フィルタの下流側に配置された検出器は、基準検出器と呼ばれる。IR源と2つのフィルタの間には、ナチュラル・デンシティ・フィルタと呼ばれ、第1のフィルタの半分と第2のフィルタの半分に重なる第3のフィルタが配置される。したがって2つのCO2検出器の1つ、および基準検出器の1つは、ナチュラル・デンシティ・フィルタと、CO2フィルタまたは基準フィルタのいずれかとの両方を通過したIR放射のみを受け取る。評価デバイスでは、2つのCO2検出器の出力信号の差、および2つの基準検出器の差が形成される。これらの2つの差は、次いで互いに除算される。このようなCO2センサは、たとえば、麻酔時に患者をより良く監視できるようにするために、患者の呼気内のCO2を求めるために必要となる。
【0003】
このようなセンサの欠点は、それらが比較的大きな電力要件を有することであり、もう1つの欠点は必要な検出器の数である。米国特許第5,081,998号により知られる構成は、放射の発生源を必要とし、長期の使用の場合には、電池式の使用には不向きとなる。さらにこのようなIR源は一般に、一定の昇温期間を必要とし、ある程度の事前準備なしでは、必要なときに測定を行うことが常に可能ではない。
【0004】
本発明の基礎をなす問題は、米国特許出願公開第2008/0283753号に記載のセンサで紹介されるIRセンサの使用を簡単にすることであり、同明細書では、第1のフィルタの通過帯域は、第2のフィルタの通過帯域内に配置され、評価デバイスは、検出器の信号の差を形成し、それを検出器の信号に対して正規化する。
【0005】
この構成は、大幅により多くのIR放射を評価することを可能にする。したがってIR放射は、各検出器が1つの領域しか検出しない2つの別々の領域に分割されない。代わりに、一方の検出器は、たとえばここではCO2である求められるガスの吸収スペクトルも含む、予め設定されたスペクトル領域を有するIR放射を検出する。他方の検出器はその部分領域からIRスペクトルを検出し、これは求められるガスの吸収スペクトルを含まない。したがってセンサの感度は大幅に増加し、すなわちセンサへのIR放射の供給に対する要求は比較的低くなる。検出器の出力信号の差が形成されるので、たとえばバックグラウンドノイズなどの干渉信号は除去される。差を検出器の出力信号に対して正規化することにより、IR放射の強度の変動を補償することが可能となる。また、2つより多いセンサを用い、それに対応してフィルタの数を増やし、次いでそれにしたがって個々の通過幅を重ねることが可能である。このようなセンサを用いて、たとえば温度、室内の動き、室内の人数などに関係する他の情報を得ることも可能になる。大幅により多くの放射を検出することが可能であるので、電力消費を低減でき、それにより必要な電力を電池によって供給することもできる。それにより、構内の設置および使用の点から、より大きな自由度をもたらす。センサは、その信号を無線で送信することができる。
【0006】
第1のフィルタの通過帯域は、第2のフィルタの通過帯域より大きいことが好ましい。したがって第1のフィルタは、第2のフィルタによって通過が許されるスペクトル領域を含むのに加えて、IR放射が吸収されるスペクトル領域も含む。
【0007】
好ましくは、2つのフィルタは、共通の遮断波長を有する。それにより評価が簡単になる。その場合は、検出器の出力信号の間の差は、追加の計算ステップを必要とせずに容易に形成することができる。遮断波長は、通過帯域を規定する、すなわち制限する波長である。これらは、「下限波長」および「上限波長」と呼ばれる。
【0008】
いかに知られた状況であっても、放射体の放射の大きさおよびスペクトル分布は、放射体の温度に対する依存性を有する。これは、良く知られた放射のプランクの分布によって与えられる。放射体の温度が与えられると、プランク曲線は波長に対する放射の依存性を与え、プランク曲線はある波長にて最大放射を有し、最大放射値、および最大放射の波長は温度に依存する。
【0009】
たとえば、米国特許出願公開第2008/0283753号で述べられるもののように、センサ・システムにおいて自然源を用いると、フィルタの通過帯域が、波長の帯域にわたってエネルギー(換言すれば、放射強度密度)において変化することになる。このような自然源の温度は、通常は既知ではなく、さらには可制御性が低い。
【0010】
この構成は、光源の放射の強度の変化を補償することができるが、たとえば光源の温度変化に対応することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、発生源の温度を推定する方法を導入することにより、現在のセンサのこれらの問題点を解決する方法、およびその解決策を利用したセンサを導入することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って本発明の1つの目的は、放射体発生源の温度を少なくとも推定する方法を導入し、これを用いてセンサの測定値を補正または調整することである。
【0013】
本発明は、被疑フィルタおよび基準フィルタ(1つまたは複数)が異なる遮断波長を有するということを導入することにより、これらの問題を解決する。「下限波長」は、そこからはフィルタが放射の通過を許す最も低い波長であり、「上限波長」は、下限波長より高く、そこからはフィルタが放射の通過を遮断する最も高い波長である。
【0014】
被疑フィルタ(1つまたは複数)の許される波長の領域は、以下では「被疑帯域(1つまたは複数)」と呼ばれ、基準フィルタ(1つまたは複数)の許される波長は、以下では「基準帯域(1つまたは複数)」と呼ばれる。
【0015】
上記のように、本発明における被疑下限波長は、基準下限波長(1つまたは複数)とは異なり、被疑上限波長は、基準上限波長(1つまたは複数)とは異なる。これは、たとえば発生源の温度変動によって引き起こされる、到来放射の強度のスペクトル分布などの変化は、基準帯域(1つまたは複数)を被疑帯域の上および下に分布させることによって補償することができるという利点を有する。本発明の好ましい一実施形態では、この分布によって、温度の変化により、基準帯域にわたる放射強度(または強度密度、またはエネルギー)の増加が、被疑帯域にわたる放射強度(または強度密度、またはエネルギー)の増加におよそ等しくなる。
【0016】
1つの代替または追加の実施形態では、被疑帯域にわたる放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均は、基準帯域のそれぞれにわたる放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均におよそ等しい。
【0017】
1つの代替または追加の実施形態では、被疑帯域にわたる放射強度密度(または、エネルギー)は、すべてを含めた基準帯域の全体にわたる放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均におよそ等しい(「基準フィルタ・システム帯域」は、すべての基準フィルタのすべてを含めた基準帯域である)。
【0018】
他の代替または追加の実施形態では、被疑帯域にわたる放射強度密度(または、エネルギー)は、基準帯域の1つまたは基準帯域のそれぞれの放射強度密度(または、エネルギー)の中間値、または平均におよそ等しい。
【0019】
他の代替または追加の実施形態では、放射強度密度(または、エネルギー)は基準帯域のそれぞれに対しておよそ同じである。
【0020】
比較的狭い2つの波長の帯域にて平均放射を測定すれば、プランクの放射則により放射体の温度を推定することが可能になる。これはたとえば、言わば正しいプランク曲線を特定し、それにより温度を計算することによって行われる。
【0021】
これは本発明の主要な概念であり、被疑および基準フィルタ(1つまたは複数)で共働して、または基準フィルタのみで温度推定のためにこのような帯域を形成することができる。温度測定は、ガス測定における温度依存性を補償するために用いることができ、それによってガス濃度の測定において、より精度が得られる。
【0022】
本発明のフィルタは、直列のフィルタ素子によって、または被疑フィルタおよび基準フィルタ(1つまたは複数)として共に動作する単一のフィルタ素子によって形成することができる。2つ以上のフィルタが直列のフィルタ素子として構成されるときは、それらは放射方向に次々と、すなわち放射源(1つまたは複数)と検出器の間に配置される。
【0023】
有利にはセンサは、任意の放射波長内で動作することができ、発生源は任意の放射源とすることができる。
【0024】
以下の実施例では、IR源が好ましい光源となり得る環境でCO2含有量を求めるためのセンサについて述べるが、本発明にはCO2以外の任意の他の物質も当てはまり得ると共に、IR帯域内以外の任意の他の光源が当てはまり得る。
【0025】
本発明の他の実施形態では、少なくとも1つの基準フィルタ(第1の基準フィルタと呼ばれる)は、被疑帯域より広い波長の広がりを有する第1の基準帯域と呼ばれる基準帯域を有し、この第1の基準フィルタの第1の基準下限波長は、被疑下限波長より低い波長にあり、この第1の基準フィルタの第1の基準上限波長は、被疑上限波長より高い波長を有する。このようにして被疑帯域は、第1の基準帯域に重なる。
【0026】
この実施形態では、第1の基準帯域の中心波長(第1の中心基準波長)と、被疑帯域の中心波長は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0027】
温度の変化に対しては、温度依存性を打ち消すためには、被疑帯域と基準帯域での強度の相対的な変化が等しくなければならない。
【0028】
能動的に電力供給される放射源または自然の放射源を用いるときは、強度の相対的な変化は、帯域の範囲の波長に対して非線形的に依存する。したがって、温度ドリフトに対する安定性を改善するために、不一致の中心波長を導入することができる。
【0029】
この実施例では有利には、基準フィルタ(1つまたは複数)は、被疑フィルタの通過帯域より0.2から1μm大きい通過帯域を有する。基本的に被疑フィルタは、放射スペクトルの比較的狭い波長領域またはスペクトル領域、たとえばIR放射がCO2によって吸収される領域のみをカバーすることが望ましい。示される領域は、このためには十分である。他のガスによる吸収が測定結果に悪影響を及ぼし、結果がゆがめられるリスクは小さく保たれる。
【0030】
ここでは第1の基準フィルタは、4から4.5μmの領域の通過帯域を有し、被疑フィルタは、4.1から4.4μmの領域の通過帯域を有することが好ましい。もちろん検出されるガスまたは他の量に応じて、これらのスペクトル領域もシフトさせることができる。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態では、システムは、それぞれ第1および第2の基準帯域(合わせて、すべてを含めた基準帯域を構成する)を有する第1および第2の基準フィルタを備え、第1および第2の基準帯域は重ならず、すなわち共通の波長には広がらない。これは環境内に、被疑帯域の近傍に吸収帯域を有する、関心のあるガス(1つまたは複数)以外の他のガスがある場合は、基準帯域がこのような「汚染」帯域と重なるのを避けるのは難しいという点で、測定に影響を及ぼし得るので、有利となり得る。このような「汚染」吸収帯域によって影響を受ける基準帯域が多くても1つとなることを確実にすることにより、少なくともその他は影響を受けないことが分かることになる。
【0032】
この実施形態の1つの好ましいバージョンでは、第1または第2の基準帯域の少なくとも1つが被疑帯域と重なり、すなわち第1の基準上限波長は、被疑下限波長より高い波長にあり、かつ/または第2の基準下限波長は、被疑上限波長より低いが第1の基準上限波長より高い波長にあり、それにより第1および第2の基準帯域は、重なることなく被疑帯域の両側に延びるようになる。
【0033】
この実施形態の別の好ましいバージョンでは、第1の基準上限波長は、被疑下限波長より低い波長にあり、第2の基準下限波長は、被疑上限波長より高い波長にあり、それにより第1および第2の基準帯域は、被疑帯域の両側に延びるようになる。
【0034】
代替実施形態では、第1および第2の基準帯域は、少なくとも1つ共通の波長を有して重なる。
【0035】
特に好ましい構成では、センサは、環境からのIR放射などの自然放射を用いる。したがって別個の電源、およびそれにしたがって一定の電力要件を有する放射の発生源は必要ない。一般にIR放射は、入射太陽光がないときでも、どこにも存在する。原理的にあらゆる物体は、一定量の熱放射を放出する。その場合、IR放射源が無くとも測定が可能であるので、「測定範囲」も広くなり、すなわち問題のガスの含有量に対して部屋の比較的大きなエリアを監視することが可能になる。これにより「個人用室内環境」または室内空気の質を監視し、正しい環境の実現が容易になる。始めに室内の空気をセンサに導き、そこでIR放射源と、上流側フィルタを有する検出器との間に通す必要はない。センサを、監視すべき空気の容積を言わば「測量」することができる室内の点に配置すれば十分である。この場合、ガス・センサは、言わば平均のガス濃度を簡単に検出することができる。したがってこのセンサは、特に個人用室内環境に対して大幅に良好な測定結果となる平均値を求める。もちろん、このセンサを使用して、ランプまたは他の照明手段を用いて動作するセンサの技術を改善することも可能である。自然または周囲IR放射が用いられるときは、発光手段のエネルギーを低減することができる。その結果、より長い保守間隔、およびより長い耐用寿命が得られる。
【0036】
好ましくは、評価デバイスは、差を第1の検出器の信号に対して正規化する。言い換えれば正規化のために、たとえばCO2含有量を含んだ信号が用いられる。この手順により結果としてやや大きな動的性能が得られる。
【0037】
センサが発生源の温度の変化に反応できることは、正規化のために特に関連性があり、なぜなら正規化はある温度においてのみ正しく機能し、フィルタ設定は通常、ある温度範囲に対してのみ行われるからである。補償ルーチンは、放射体の温度を正確に得ることによって実施される。さらに、得られた情報は、自然光源を用いないときに、放射体または光源の寿命を超えたか、超えそうであるかを推定するためにセルフチェックアルゴリズムにおいて用いることができる。
【0038】
好ましくはフィルタは、CaF2、ゲルマニウム、またはシリコンを含む。フィルタおよびセンサ・デバイスの他の任意の部分は、意味がある場合は、透過を改善するために反射防止膜を有することが好ましい。
【0039】
本明細書において以下では、図面と共に好ましい例示的実施形態を参照して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1−2】プランク曲線上の帯域を示す図である。
【図3】本発明の動作原理を説明するための線図である。
【図4A−4E】示された放射強度の波長依存性のない、2つまたは3つのフィルタの通過帯域を線図の形で示す図である。
【図5】検出器によって検出することができるエネルギーの大きさを線図の形で示す図である。
【図6A−6D】センサの構造の異なる実施形態を説明するブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、波長λmaxにて最大放射を有し、波長がλmaxより上に増加すると共に連続して減少する放射を有し、それにより2つのこのような波長λ1とλ2の間の帯域Δλを用いる、一般のプランク曲線を示す。下限波長λ1での放射R1は、上限波長λ2での放射R2より大きい。
【0042】
これはこのような帯域Δλを測定に用いるときに問題となり、なぜならその帯域の強度の変化は、単に到来する光の強度の変化による場合もあれば、放射体の温度の変化による場合もあるからである。
【0043】
図2は、同じプランク曲線を示すが、2つの帯域Δλ1およびΔλ2が見られる。このような2つの帯域内の平均放射を知ることにより、検出器に到達する放射強度に影響を及ぼす吸収が起きないと仮定してこれら2つの帯域の信号の比を計算することにより、プランクの放射分布によって温度の推定を行うことが可能になる。
【0044】
図3は、測定領域(3)内のたとえばCO2含有量(二酸化炭素含有量)を求めるガス・センサ(1)の線図を示し、センサ(1)は検出部(2)を備える。測定領域は、たとえば、個人用室内環境が調節されるべき部屋または部屋の部分とすることができる。太陽の記号(4)は、たとえば自然IR源、受動的発生源、または任意の考えられ得る能動的発生源(太陽光、レーザ、光ダイオード、制御型熱源、その他)などの放射源を表す。太陽の記号(4)は、ここでは単に説明のためのものである。原理的にほとんどどの物体も熱を放射し、それによりIR放射線を発生するので、ガス・センサ(1)は太陽光がなくても動作する。
【0045】
この例では、測定領域(3)には多数のCO2分子が存在し、CO2分子はここでは小さな円で表される。ガス分子は、丸印(5)によって表されるように、特定のスペクトル領域においてIR放射線を吸収する。CO2の濃度が大きいほど、ガス・センサ(1)において検出できる特定のスペクトル領域内のエネルギーは低くなる。
【0046】
図6Aは線図の形で、ガス・センサ(1)の簡単な検出部(2)の構造を説明するためのブロック回路図を示す。検出部(2)は、フィルタ構成(6)、検出器構成(7)、および評価デバイス(8)を有する。本明細書ではハウジング、固定手段などの他の詳細は示されない。
【0047】
図示のフィルタ構成は、第1の基準フィルタ(10)および被疑フィルタ(9)を有し、2つのフィルタ(9)および(10)は異なる通過特性を有し、一実施形態は図4Aに示される。第1の基準フィルタ(10)は、第1の基準帯域RB1内の波長の通過を許し、被疑フィルタ(10)は、被疑帯域SB内の波長の通過を許す。以下の図では、波長の放射依存性は示されない。図4Bの実施形態は、被疑帯域SBよりも広く広がる第1の基準帯域RB1を示すが、被疑帯域SBは第1の基準帯域RB1に重なり、それにより第1の基準帯域RB1は被疑帯域SBと同じ波長を含む。したがって、第1の基準下限波長RLW1は、被疑下限波長SLWより低い波長にあり、第1の基準上限波長RUW1は、被疑上限波長SUWより高い波長を有する。第1の基準帯域RB1は第1の中心波長RCW1を有し、被疑帯域は被疑中心波長SCWを有する。図は、共通の中心波長RCW1およびSCWを有する2つの帯域を示す。
【0048】
図4Bは、図4Aのものに関連する実施形態を示し、この場合でのみ異なった中心波長RCWおよびRCW1を有する。温度の変化に対して、温度依存性を打ち消すためには、被疑帯域と基準帯域内の強度の相対的な変化が等しくなければならない。能動的に電力供給される放射源または自然の放射源を用いるときは、強度の相対的な変化は、帯域の範囲の波長に対して非線形的に依存する。したがって、温度ドリフトに対する安定性を改善するために、不一致の中心波長を導入することができる。
【0049】
図4Cは別の実施形態を示し、システムには、第2の基準下限波長RLW2から第2の基準上限波長RUW2まで延びる第2の基準帯域RB2にわたって広がる、第2の基準フィルタ(20)が導入されている。図示の実施形態はさらに、第1および第2の基準帯域RB1およびRB2の両方に部分的にのみ重なる被疑帯域SBを有し、それにより被疑下限波長SLWは、第1の基準下限波長RLW1と第1の基準上限波長RUW1の間にある。被疑上限波長SUWは、第2の基準下限波長RLW2と第2の基準上限波長RUW2の間にある。図示の実施形態は、第2の基準下限波長RLW2より高い第1の基準上限波長RUW1を有するが、他の実施形態では、第1および第2の基準帯域RB1およびRB2が重ならないようにすることができる、すなわち第1の基準上限波長RUW1が、第2の基準下限波長RLW2より低くなるようにすることができる。
【0050】
図4Dは、2つの基準フィルタ(10)および(20)を有する代替実施形態を示し、ここでは基準帯域RB1およびRB2のいずれも少なくとも実質的に被疑帯域SBに重なることはなく、少なくともその両側に延び、すなわち第1の基準上限波長RUW1は被疑下限波長SLWより高くないが任意選択で同じでもよく、第2の基準下限波長RLW2は被疑上限波長SUWより低くないが任意選択で同じでもよい。図は、波長の通過幅がほぼ同じである2つの基準帯域RB1およびRB2を示すが、図2Eに示すようにそうでなくてもよく、2つの基準帯域RB1およびRB2は波長の通過幅が非常に異なってもよい。
【0051】
帯域の相対位置および大きさは、フィルタの端部の許容度、被疑帯域通過の幅、被疑帯域の吸収線の分布、および交差感度を引き起こし得るあらゆる他のガスの分布など、いくつかの要因に依存する。
【0052】
CO2センサとして動作するセンサ(1)の実施例では、IR放射がCO2によって吸収されるスペクトル領域λ(CO2)がある。このスペクトル領域は、約4.2から4.3μmに位置する。したがって有利には、被疑帯域SBは、被疑下限波長SLWを約4.0μmに有し、被疑上限波長SUWを約4.5μmに有することができ、またはさらにより狭い4.1μmから4.4μmの被疑帯域の領域を有することができ、またはCO2のスペクトル領域をカバーする任意の他の帯域を有することができる。次いで基準開始および上限波長は、有利には、それぞれ被疑下限波長SLWおよび被疑上限波長SUWの上および下に約0.5μm延びることができる。
【0053】
図5は、図3に見られる本発明の第1の実施形態の、第1の基準帯域RB1および被疑帯域SBを示し、被疑帯域は参照文字Aで示される減少していないエネルギーを有する。このエネルギーは、たとえばCO2によって吸収される大きさCだけ減少する。被疑帯域の両側に延びる、第1の基準帯域RB1の2つの部分は、それぞれ参照文字Bで示されるエネルギーを有する。このエネルギーは、たとえばCO2によって影響されないので、実質的に一定である。
【0054】
次いで、検出器構成(7)によって、異なるエネルギーが検出される。検出器構成(7)は、被疑フィルタ(9)を通過するたとえばIR放射を検出する第1の検出器(15)と、第1の基準フィルタ(10)を通過するたとえばIR放射を検出する第2の検出器(16)とを有する。2つの検出器(15)、(16)は、「サーモパイル」としても知られる熱電素子の形とすることができる。現れるたとえばIR放射に応じて各検出器は、電圧または電流、すなわち電気量を発生し、これはより多くのIR放射が入射するほど大きくなる。それにしたがって、第1の検出器(15)は信号S1を発生し、第2の検出器(16)は信号S2を発生する。
【0055】
サーモパイル・センサは、たとえばドイツ、ヴィースバーデンD−65199、PerkinElmer Optoelectronics GmbHから入手可能である。
【0056】
図6Aは、フィルタ構成(6)の構造の1つの簡単な実施形態を示し、被疑フィルタ(9)は2つのフィルタ素子(11)および(12)を備え、第1の被疑フィルタ素子(11)は被疑上限波長SUWを規定し、被疑下限波長SLWより低い下限波長を有する。第2の被疑フィルタ素子(12)は、被疑下限波長SLWを規定し、被疑上限波長SUWより実質的に高い上限波長を有する。同様に、第1の基準フィルタ(10)は、それぞれ第1の基準上限波長RUW1および第1の基準下限波長RLW1を規定する2つのフィルタ素子(13)および(14)を備える。システムに導入される(9)および(10)のようなフィルタの数に応じて、任意の数のこのようなフィルタ素子(11)、(12)、(13)、および(14)の構造をフィルタ構成(6)に導入することができる。この実施形態および他のいずれの実施形態において、いくつかのフィルタ素子は、フィルタが同じ端部および/または下限波長を有するときは2つ以上のフィルタに共通とすることができ、これは図6Bに示され、そこでは2つの「上限」フィルタ素子(11)および(13)は、1つの共通のフィルタ素子である。
【0057】
図6Cは、追加の基準フィルタである第2の基準フィルタ(20)を有する同様なセンサを示し、各フィルタは、上限および下限波長の両方に対する所望の帯域通過特性を備える単一のフィルタ素子(21、22、23)のみを有し、したがって被疑フィルタ(21)は、被疑下限波長SLWおよび上限被疑波長SUWの両方を規定する。第1の基準フィルタ(22)は、第1の基準上限および下限波長RUW1およびRLW1の両方を規定し、第2の基準フィルタ(23)は、第2の基準上限および下限波長RUW2およびRLW2の両方を規定する。この図示の実施形態では、2つのフィルタ素子(22、23)は、同じ検出器(16)に接続されているが、実際に行われることは、それらの信号をたとえば2つの別々のサーモパイルによって取得された後に数学的に加算することである。
【0058】
図6Dは、図6Cの実施形態に関連する一実施形態を示し、この場合のみ第3の検出器(24)は、第2の基準フィルタ(20)に接続される。
【0059】
たとえば図5A〜5Dで開示されたようなフィルタ素子(11、12、13、14)の任意の組み合わせ、変形、個数、および配置が本発明に当てはまることが留意されるべきである。
【0060】
一般にセンサは、1つ以上のガスを測定するためにも用いることができ、その場合は当業者には分かるように、単に必要数のセンサ、検出器などが含められる。
サーモパイル・センサでは、通常は、(出力信号が温度と共に変化するため)温度測定が行われるので、センサの周囲の温度の測定はすでに組み込まれている。部屋の放射温度もセンサを用いて入手可能であると考えられるので、同時にこれら2つの測定に基づいて動作温度を直接得ることが可能であり、次いでこれは室温または全く異なる何かを制御するために用いることができる。
【0061】
IRに関連して、室内の動きの測定がセンサを用いて直接可能であることも考えられ、次いでたとえばこれは、たとえば室内に誰かがいることを示す動きの事象においてのみ作動する換気システムを制御するのに用いることができる。様々な動きの測定に基づいて、室内の人数を推定できることも考えられ、このような推定はまた、室温または換気が室内の人数に応じて制御/変更されるように、制御目的に用いることができる。
【0062】
図6Aに見られるものなどの本発明の基本的なセンサは、2つの信号S1、S2が評価デバイス(8)に印加されることによって動作する。したがってそれにより、
【0063】
【数1】
ただし、
【0064】
【数2】
は、IR吸収に関係する情報を含む電気量、たとえば電流または電圧であり、Irefは、IR吸収によって影響されない基準量である。S1とS2の差が形成されるとき(「実効基準」は基準帯域の、被疑帯域を含まない部分である)、そのために線図的に差分形成器(17)を示しており、以下の量が得られる。
【0065】
【数3】
【0066】
この差S1−S2は、第1の検出器(15)の出力信号S1に対して正規化され、それにより信号S3が得られる。
【0067】
【数4】
【0068】
本発明のセンサは、たとえば窒素、酸化窒素、酸素、またはCOなど、任意の種類のガスを測定するのに用いることができ、さらにはガスの測定に限定されず、液体および固体など他の形での被疑体を測定するためにも用いることもできる。被疑体をCO2から変更するときは、それにしたがって通過帯域をシフトする必要があり、たとえばH2Oの吸収帯域は約2.7μmである。
【0069】
放射体、または光源の温度が分かることにより、IrefおよびInなどの量、および/またはS1およびS2などの信号に波形をつける(corrugate)か、またはそれらを正規化することが可能になり、言わば温度を除去し、かつ/または正規化により被疑および基準帯域などの帯域の波長依存性を除去する。
【0070】
本発明のセンサはさらに、任意の考えられる他の光学構成要素、たとえば追加の帯域通過フィルタとして動作するサファイア窓、反射器、たとえばIR放射を集めるまたは焦点合わせをするデバイスである集光デバイス、たとえば、センサの上流側に配置されたコリメータなどを備えることができる。
【0071】
またこのようなセンサは、廃ガス監視のために直接用いることが可能である。そのためにはセンサは、煙突または排気管内に設置される。特に加熱システムの場合は、次いでセンサ(または複数のセンサ)の出力信号を用いて燃焼を制御することができる。
【0072】
本発明は上記の説明および図面に限定されず、被疑フィルタ(9)および基準フィルタ(10、20)などのフィルタ、フィルタ素子(21、22、23)、検出器(15、16、24)などの任意の数および変更を含む、上記の説明および図面の任意の変更も本発明に当てはまる。
【0073】
さらに本発明は、ガスの測定に限定されず、センサは、一般に媒体の一部である物質の測定においても実施することができ、媒体はガス自体に限定されず、たとえば液体とすることもできる。
【図1】
【図2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ構成と、前記フィルタ構成の下流側に配置された検出器構成と、前記検出器構成に接続された評価デバイスとを有するセンサであって、前記フィルタ構成は第1の基準フィルタと第2の基準フィルタとを備え、前記2つのフィルタはそれぞれ第1の基準帯域および第2の基準帯域を有し、前記センサは、前記第1の基準帯域および第2の基準帯域での測定された強度密度が放射放出源の温度を推定するために用いられることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記センサは、少なくとも被疑帯域内の波長を有する放射を通過させる被疑帯域をさらに有する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
第1および第2の基準が基準システムを構成し、それらの基準帯域が基準帯域システムを構成し、前記基準帯域システムは前記被疑帯域の両側に分布する、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記被疑帯域は、前記基準システム帯域に少なくとも部分的に重なる、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記被疑帯域と前記第1の基準帯域は異なる中心波長を有する、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記被疑帯域は、前記第1の基準帯域および前記第2の基準帯域の両方に少なくとも部分的に重なる、請求項4に記載のセンサ。
【請求項7】
前記被疑帯域、前記第1の基準帯域、および前記第2の基準帯域のいずれも、共通の波長を含まない、請求項3に記載のセンサ。
【請求項8】
前記第1および前記第2の基準帯域の平均または中間強度密度(または、エネルギー)は同じである、前記請求項1〜7のいずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
前記被疑帯域の平均または中間強度密度(または、エネルギー)は、前記第1および第2の基準帯域の平均または中間強度密度と同じである、前記請求項1〜8のいずれかに記載のセンサ。
【請求項10】
前記センサは、任意の数の異なる物質の測定のために、それぞれ任意の数の被疑通過帯域を有する任意の数の被疑フィルタ、およびまたは、それぞれ任意の数の基準通過帯域を有する基準フィルタを備えることができる、前記請求項1〜9のいずれかに記載のセンサ。
【請求項1】
フィルタ構成と、前記フィルタ構成の下流側に配置された検出器構成と、前記検出器構成に接続された評価デバイスとを有するセンサであって、前記フィルタ構成は第1の基準フィルタと第2の基準フィルタとを備え、前記2つのフィルタはそれぞれ第1の基準帯域および第2の基準帯域を有し、前記センサは、前記第1の基準帯域および第2の基準帯域での測定された強度密度が放射放出源の温度を推定するために用いられることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記センサは、少なくとも被疑帯域内の波長を有する放射を通過させる被疑帯域をさらに有する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
第1および第2の基準が基準システムを構成し、それらの基準帯域が基準帯域システムを構成し、前記基準帯域システムは前記被疑帯域の両側に分布する、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記被疑帯域は、前記基準システム帯域に少なくとも部分的に重なる、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記被疑帯域と前記第1の基準帯域は異なる中心波長を有する、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記被疑帯域は、前記第1の基準帯域および前記第2の基準帯域の両方に少なくとも部分的に重なる、請求項4に記載のセンサ。
【請求項7】
前記被疑帯域、前記第1の基準帯域、および前記第2の基準帯域のいずれも、共通の波長を含まない、請求項3に記載のセンサ。
【請求項8】
前記第1および前記第2の基準帯域の平均または中間強度密度(または、エネルギー)は同じである、前記請求項1〜7のいずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
前記被疑帯域の平均または中間強度密度(または、エネルギー)は、前記第1および第2の基準帯域の平均または中間強度密度と同じである、前記請求項1〜8のいずれかに記載のセンサ。
【請求項10】
前記センサは、任意の数の異なる物質の測定のために、それぞれ任意の数の被疑通過帯域を有する任意の数の被疑フィルタ、およびまたは、それぞれ任意の数の基準通過帯域を有する基準フィルタを備えることができる、前記請求項1〜9のいずれかに記載のセンサ。
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【公表番号】特表2012−524245(P2012−524245A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505050(P2012−505050)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/DK2010/000047
【国際公開番号】WO2010/118750
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(510301286)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/DK2010/000047
【国際公開番号】WO2010/118750
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(510301286)
【Fターム(参考)】
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