説明

帯鋸切断機

【課題】帯鋸とバイスの直角方向の切断精度が悪化する対策として、より確実、簡敏な手法で高精度に調整できるようにした帯鋸切断機を提供する。
【解決手段】ベース12に主軸14を介して、所定角度傾斜させて基端部が回動自在に支持されたフレーム部15と、このフレーム部15に搭載された駆動機構16とこの駆動機構16によって駆動されるエンドレスの帯鋸17が所定範囲、露出して配設される。
主軸14は、フレーム部15の基端部を主軸両端部に軸受18を介して回動可能に軸着すると共に、ベース12上に斜断補正機構20の揺動中心部201を介し、所定角度範囲で揺動可能に取り付けられ、揺動操作部202により、主軸14を揺動させることでフレーム部15の傾斜角度を調整して、帯鋸17による被加工材Wに対する切断ずれを補正するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材の切断の際、斜め切断を補正する機能を備えた帯鋸切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯鋸切断機1は、例えば棒状部材やパイプ材等の被加工材Wを帯鋸2により切断するものとして、広範に用いられてきた。このような帯鋸切断機1のうち、可搬型の帯鋸切断機は台車3(ベース3)に搬送車輪4が配設され、施工現場に搬入して、被加工材の切断加工を行い、迅速な施工を可能なものとしている(図9参照)。
【0003】
かかる帯鋸切断機としては、例えば、搬送車輪4を備えたベース3上に、被加工材Wの載置台と、被加工材Wを固定する固定バイスB1と、被加工材を固定バイスとの間に挟持して保持する可動バイスB2とを備えている。そして、このベース3の先端部に支軸を介して、所定角度(略45度)傾斜させて基端部が回動自在に支持されたフレーム部5を設け、さらに、このフレーム部5に搭載されたモータMで、駆動機構によって駆動されるエンドレスの帯鋸2が所定範囲、露出して配設されている。
【0004】
以上のような帯鋸切断機1を使用するときには、帯鋸切断機1を施工現場まで搬送車輪4を使用して搬送し、フレーム部5を、支軸を中心に回動倒伏して、フレーム部5を先ず所定の角度(被加工材の載置台に対して45度)に、適宜な保持手段によりそれ以上倒れないように保持される。そして、ベース3の載置台の上に被加工材Wを置き、これを固定バイスBと可動バイスBで挟んで固定した後に、フレーム部5を支える保持手段を解除操作することで、フレーム部5をさらに倒し、帯鋸2を被加工材Wに押し当て、被加工材Wの切断を行うことができる。
【0005】
しかしながら、上述のような帯鋸切断機1においては、帯鋸2を支えるガイド部G、フレーム部5など、様々な機構部品の消耗、調整の問題から、被加工材Wを正確に切断することができず、斜め切れという不都合が生じることがある。
【0006】
そこで、このような不都合を克服するために、例えば特許文献1では、帯鋸のガイド手段に、帯鋸の鋸刃の角度、位置調整装置を備えることで、鋸刃の斜め切り現象を補正し、鋸刃の直角精度を確保することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−76423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような帯鋸のガイド手段に設けられる、帯鋸の鋸刃の角度、位置調整装置では、どの程度斜め切りが発生して、そのために鋸刃の角度、位置調整装置の調整度合いをどの程度行えばよいのか、甚だ煩雑であり、且つ困難であるといわざるを得ない。
【0009】
また、帯鋸切断機1における斜め切れの現象としては、被加工材Wの軸線方向、すなわち水平方向の斜め切れ、および被加工材Wの軸線方向と直交する方向、すなわち垂直方向の斜め切れが考えられる。 このうち、水平方向の斜め切れは、平バイス仕様の帯鋸切断機1では、バイスによる把持角度を変えることで、補正することはできるが、垂直方向の斜め切れに対する調整は不可能である。特に、可搬型帯鋸切断機1は使用していくうちに、帯鋸2の芯がずれ、帯鋸2とバイスの直角方向の切断精度が悪化する傾向にある。
【0010】
そこで、帯鋸2とバイスの直角方向の切断精度が悪化する対策として、フレーム部5を上下に動かす基準軸6を設け、この基準軸6両側に調整つまみ7を設けて、調整を行うことが提供されている(図10参照)。
【0011】
しかしながら、この場合のフレーム部5は、ベース3に対し、ベース3幅方向前後に、2ケ所で、互いに別々に基準軸6で軸止めされており、これら基準軸6をそれぞれ、調整つまみを操作して調整作業をせねばならず、煩雑さは否めず、高精度に調整するには、その調整機構の機能を熟知し、調整作業の慣れが必要である。
本発明は、以上のような各課題を改善し、克服するために提案されたものであって、特に、帯鋸とバイスの直角方向の切断精度が悪化する対策として、フレーム部の取付け角度を調整する際に、より確実、簡敏な手法で高精度に調整できるようにした、帯鋸切断機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、ベース上に載置される被加工材を固定する被加工材固定保持手段と、ベース上に配置される主軸と、該主軸に所定角度傾斜させて回動自在に支持されたフレーム部とを具備し、このフレーム部に搭載された駆動機構によって周回駆動される帯鋸で前記被加工材を切断する帯鋸切断機であって、主軸の長手方向の一端側寄りの位置に設けた揺動中心部と、主軸の長手方向の他端側寄りの位置に設けて、主軸の他端側寄りの部分を上下動させる揺動操作部と、を具備し、主軸を揺動操作部により、揺動中心部回りに揺動調節することでフレーム部の傾斜角度を調整して、帯鋸による被加工材に対する切断ずれを補正する斜断補正機構、を備えたことを特徴とする。
【0013】
これにより、帯鋸が被加工材に対して本来の切り進む方向からずれる場合、帯鋸が被加工材に対する刃先の切り進む方向は、フレーム部の傾斜支持角度とは一定の関係があることから、フレーム部の傾斜支持角度を調整すれば、帯鋸の切り進む方向を補正することができることがわかる。
そのために斜断補正機構の揺動操作部を操作して主軸を揺動させることで、主軸と一定の傾斜角度で支持されるフレーム部の傾斜角度を、実質的に増減調整し、切断ずれを補正することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、斜断補正機構における揺動操作部は、主軸の他端側寄りの位置において主軸が挿通される調節ゲート部材と、該調節ゲート部材に対応する位置において、ベースに植設された当たりボルトと、調節ゲート部材に挿通される主軸に直交すると共に、当たりボルトに軸方向に当接する調節ボルトと、を具備し、当たりボルトを基準として、調節ボルトを進退調節することで、主軸を、主軸の揺動中心部を中心に揺動調節してフレーム部の傾斜角度を調整せしめるようにしたことを特徴とする。
【0015】
これにより、作業者は、調節ゲート部材において、調節ボルトを適宜な操作工具により、進退調節操作を行うことで、主軸は、主軸の揺動中心部を中心に揺動変位し、これにより、フレーム部は、傾斜角度が調整され、帯鋸の被加工材に対する刃先の切り進む方向を補正することができる。
【0016】
なお、斜断補正機構は、帯鋸による被加工材の軸線方向と直交する方向の切断ずれを補正するものである。
また、被加工材固定保持手段は、固定バイスと可動バイスと、可動バイスをベース長手方向に進退移動せしめて、固定バイスと可動バイスとの間にセットした被加工材を締め付け固定、締め付け解除するための操作ハンドルと、被加工材を上方から締め付ける上部バイスとを備えた平バイスユニット部で構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、斜断補正機構は、揺動操作部における調節ゲート部材において、調節ボルトを適宜な操作工具により、一箇所のみ、螺進退調節操作を行うことで、主軸を揺動させて、主軸両端に支持されるフレーム部は、傾斜角度が調整され、既存の調整手法と比較して格段に調整作業が容易となり、且つ、高精度な補正が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る帯鋸切断機の一実施形態において、被加工材をセットした状態における、一面からの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す帯鋸切断機をA方向から見た図である。
【図3】図1に示す帯鋸切断機の、一面の背面側からの全体構成を示す図である。
【図4】図1に示す帯鋸切断機をB方向から見た図である。
【図5】被加工材の水平方向の斜め切れを説明するための平面図である。
【図6】被加工材の垂直方向の斜め切れを説明するための側面図である。
【図7】本発明に係る帯鋸切断機における斜断補正機構を拡大して示す、要部斜視説明図である。
【図8】図7に示す斜断補正機構を構成する主軸を、軸芯において鉛直方向に切断してみた、切断斜視説明図である。
【図9】従来の帯鋸切断機の一例を示す、概略的な斜視図である。
【図10】従来の帯鋸切断機において採用される、フレーム部の傾斜調整手段の一例を説明する、模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる帯鋸切断機の一実施形態について、添付の図面に基づき、詳細に説明する。
図1、図2、図3、図4に、本発明にかかる帯鋸切断機10を示す。
この帯鋸切断機10は、施工現場に搬入して、被加工材の切断加工を行い、迅速な施工が可能な可搬型帯鋸切断機である。すなわちこの帯鋸切断機10は、搬送車輪11を備えたベース12上に、被加工材Wを載置して、被加工材Wを所定の角度方向に位置決め固定する被加工材固定保持手段13と、ベース12に主軸14を介して、所定角度傾斜させて基端部が回動自在に支持されたフレーム部15とを具備する。
そして、このフレーム部15には駆動機構16が搭載され、この駆動機構16によって駆動されるエンドレスの帯鋸17が所定範囲、露出されるように配設された構成としている。
【0020】
ベース12には搬送車輪11が、ベース長手方向両端側に配設され、且つ、ベース12上には、ベース12一端側から、ベース長手方向に突出するように、被加工材固定保持手段13としての平バイスユニット部13が設けられている。勿論、被加工材固定保持手段13は、平バイスユニット部に限らず、周知のチェーンバイスも可能である。
【0021】
平バイスユニット部13は、ベース12一端側から、ベース長手方向に突出する被加工材載置架台131と、被加工材載置架台131に配設した固定バイス132aと可動バイス132bと、可動バイス132bをベース長手方向に進退移動せしめて、固定バイス132aと可動バイス132bとの間にセットした被加工材Wを締め付け固定、締め付け解除するための操作ハンドル133とを有する。さらに、固定バイス132aは、被加工材Wを上方から押さえ込むように締め付ける上部バイス132cを有する。
なお、平バイスユニット部13には、詳細は説明しないが、固定バイス132aと可動バイス132bとの間に被加工材Wをセットして締め付け固定した際に、被加工材Wの水平方向の支持方向を調整する手段を備えている(図5参照)。被加工材Wの、水平方向の支持方向を調整することで、後述する被加工材Wの水平方向の斜め切れを補正する構成である。
【0022】
次に、ベース12の長手他端側のベース上には、フレーム部15を回動可能に支持するための主軸14が、ベース幅方向に配置されている(図4、図5参照)。すなわち、主軸14には、フレーム部15の基端部が、主軸両端部に軸受18、18を介して、主軸14に対し略45度の傾斜角度で、回動可能に軸着されている。
かかる主軸14には斜断補正機構20が設けられ、主軸14の長手方向一端側寄りの適宜な軸止め箇所(後述)を揺動中心部として、ベース上に所定角度範囲で揺動可能に取り付けられている。
そして斜断補正機構20には、詳細は後述するが、主軸14の長手方向他端側に揺動操作部が設けられ、主軸14の一端側寄りの軸止め箇所を中心にして、揺動操作部によって主軸14を揺動させることでフレーム部15の傾斜角度を調整し、帯鋸17による被加工材Wに対する垂直方向の切断ずれを補正するようにしている。
【0023】
ここで、帯鋸17を搭載するフレーム部15について、概略説明する。尚、フレーム部15は実際は、安全上、カバー部材で、後述する構成要素が覆われる構成であるが、ここでは、構成要素を明示するために、カバー部材を省略してフレーム部15を示している。
フレーム部15は、中央に取り囲むような空間を形成するアーチ形状の枠体で構成されている。かかる枠体の双方の端部には、駆動機構16を構成する駆動プーリ161と、従動プーリ151とがそれぞれ配設されている。また、フレーム部15中間部にはフレーム部15に沿って複数のガイドローラ152が配設されている。
そして、フレーム部15には、駆動プーリ161、ガイドローラ152、従動プーリ151を介し、エンドレスの帯鋸17が掛け渡して構成されている。駆動プーリ161には、駆動モータ162が、ギア(図示省略)を介して動力的に結合され、駆動モータ162によって、帯鋸17を周回駆動する構成である。
【0024】
以上のようなフレーム部15において、枠体の双方の端部間は、帯鋸17が露出して、切断加工に供する加工領域としている。
枠体の双方の端部における駆動プーリ161と、従動プーリ151とには、それぞれガイド手段としてのセリヘッド153a、153bが配設されている。
これらセリヘッド153a、153bは、水平方向に載置固定された被加工材Wに帯鋸17が直交方向から切り込むことができるように、帯鋸17を、主軸14に対する略45度の傾斜角度で取り付けられたフレーム部15の基端部に対応して、略45度ひねって、帯鋸17を枠体の双方の端部間の加工領域にガイドするようにしている。
【0025】
次に、主軸14に設けられる、帯鋸17による被加工材Wに対する垂直方向の切断ずれを補正するための、斜断補正機構20について、図7、図8を参照しながら、詳細に説明する。
斜断補正機構20は、ベース12上に、主軸14の一端側寄りの軸止め箇所としての揺動中心部201を有する。この揺動中心部201は、主軸14の軸心に直交する方向の貫通穴201aと、この貫通穴201aに挿通されるピン201bとを有する。これにより主軸14は、揺動中心部201を介してベース12上に揺動可能に支持されている。
そして斜断補正機構20は、主軸14の他端側寄りの位置に揺動操作部202として、主軸14が挿通される調節ゲート部材203と、調節ゲート部材203の位置において、ベース12に植設された当たりボルト204と、この当たりボルト204に対して、調節ゲート部材203に挿通される主軸14に直交して螺入貫通し、当たりボルト204に軸方向に当接する調節ボルト205とを具備する。
この調節ボルト205は、当たりボルト204を基準として螺進退調節することで、主軸14を、主軸の一端側寄りの軸止め箇所におけるピン201bを中心に揺動せしめる構成である。
【0026】
調節ゲート部材203は、中心に余裕を以って主軸14を挿通可能とする挿通孔203hを設けた、略方形ブロック形状のもので、ベース12上に固設されている。
【0027】
当たりボルト204は、調節ゲート部材203における挿通孔203hの底部を介し、ベース12に、頭部204aを突出させた状態で垂直方向にねじ込まれている。
そして当たりボルト204には、頭部204aを基準高さとする機能を維持するために、当たりボルト204を固定するための止めねじ206が、当たりボルト204の軸心に直交するように貫通螺着されている。
【0028】
また、調節ゲート部材203の挿通孔203hに挿通される主軸14には、ねじ込まれた当たりボルト204の軸心に沿うように、主軸14の軸心に直交する貫通ねじ穴141が形成されている。かかる貫通ねじ穴141には調節ボルト205が螺入貫通している。
また、調節ゲート部材203には、貫通ねじ穴141に螺入される調節ボルト205の頭部205aが、挿通孔203hの上部内面に回動可能に嵌合している。さらに、調節ボルト205の頭部205aには、調節ボルト205を螺進退操作するための六角溝205mが刻設されている。
そして、調節ゲート部材203の外側上面には、挿通孔203hの上部内面に嵌合される調節ボルト205の頭部205aの六角溝205mに連通する、連通孔203aが形成されている。作業者は調節ゲート部材203の外側上面から、連通孔203aを介して六角レンチ(図示省略)等の工具を挿入して、調節ボルト205を螺進退操作する。
【0029】
本発明に係る可搬型帯鋸切断機10は以上のように構成されるものであり、次に可搬型帯鋸切断機10を用いた加工手順について、説明する。
先ずは、平バイスユニット部13の被加工材載置架台131に配設した可動バイス132bを、ベース長手方向に進退移動せしめて、固定バイス132aと可動バイス132bとの間に被加工材Wを載置する。
次いで、操作ハンドル133を操作して、被加工材Wを締め付け固定する。この際、上部バイス132cによって、被加工材Wを上方から押さえ込むように締め付けることで、被加工材Wのセットが完了する。
【0030】
次いで、駆動モータ162を起動してフレーム部15の帯鋸17を駆動させ、フレーム部15を、ベース12上の主軸14を中心に回動下降させて、切断加工を行う。フレーム部15は、主軸14に対して略45度の傾斜角度で取り付けられており、また、帯鋸17が露出する、フレーム部15の枠体の双方の端部間の加工領域においては、帯鋸17がセリヘッド153a、153bによって、略45度ひねって加工領域にガイドされる。従って、帯鋸17は被加工材Wに直交方向から当たって切り込むことができる。
【0031】
切断が終了し、実際に切断された面が切断線とずれが発生していないかどうかを例えば備えつけの曲尺等でチェックする。
もし、図5に示すように、被加工材Wの水平方向の斜め切れが発生しているのであれば、平バイスユニット部13に設けられた水平方向の支持方向を調整する手段によって、被加工材Wの、水平方向の支持方向を調整することで、被加工材Wの水平方向の斜め切れを補正することができる。
【0032】
一方、被加工材Wに対して、図6に示すような垂直方向の斜め切れが発生した場合は切り込む方向が切断線と一致していない。従って、帯鋸17が、被加工材Wに対して垂直方向から当たっていないことが、斜め切れが発生した一要因と考えることができる。
かかる垂直の斜め切れを補正するには、フレーム部15の傾斜支持角度を調整すればよい。これは、エンドレスの帯鋸17がフレーム部15から露出する箇所の刃先の切り進む方向は、フレーム部15の傾斜支持角度とは一定の関係があることから、フレーム部15の傾斜支持角度を調整すれば、帯鋸17の切り進む方向を補正できるためである。
そのために、斜断補正機構20によって、主軸14を揺動させることにより、フレーム部15の傾斜角度を補正する。
【0033】
主軸14を、一端側寄りの軸止め箇所におけるピン201bを中心に揺動させるために、主軸14の他端側寄りの揺動操作部202において、調節ゲート部材203の外側上面から、連通孔203aを介して六角レンチ等の工具を挿入して、調節ボルト205を螺進退操作する。すなわち、六角レンチが調節ボルト205の頭部205aにおける六角溝205mに嵌合することで、六角レンチにより、調節ボルト205を回動させて螺進退操作することができる。
【0034】
調節ボルト205を螺進退操作することで、調節ボルト205は、挿通孔203hに挿通される主軸14の軸心に直交する貫通ねじ穴141を螺進退する。しかしながら、調節ボルト205は、ベース12に植設された当たりボルト204の頭部204aに当たり、調節ボルト205は軸方向に昇降することはできないので、主軸14側が、揺動中心部201におけるピン201bを中心に揺動して、フレーム部15の実質的な傾斜角度を補正することができるのである。
【0035】
このようにして、フレーム部15の実質的な傾斜角度が補正されると、帯鋸17が、被加工材Wに対して垂直方向に当たるようになり、垂直方向の斜め切れを解消することができる。
【0036】
以上のように、本発明では、作業者は、斜断補正機構の揺動操作部における調節ゲート部材において、調節ボルトを適宜な操作工具により、螺進退調節操作を行うことで、主軸は、主軸の一端側寄りの揺動中心部を中心に揺動変位し、これにより、主軸両端に基端部が回動可能に支持されるフレーム部は、傾斜角度が調整され、フレーム部から露出する帯鋸の切り進む方向を補正することができる。
このように、フレームの傾斜角度を調整する際、斜断補正機構の揺動操作部における調節ゲート部材において、調節ボルトのみを適宜な操作工具により、螺進退調節操作を行うことで帯鋸の切り進む方向を補正することができるので、複数個所でねじ調節する方式に比較して、明らかに調整作業は簡単、確実であり、しかも高精度な切断ずれの補正が可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10 帯鋸切断機
11 搬送車輪
12 ベース
13 平バイスユニット部
131 被加工材載置架台
132a 固定バイス
132b 可動バイス
132c 上部バイス
133 操作ハンドル
14 主軸
141 貫通ねじ穴
15 フレーム部
151 従動プーリ
152 ガイドローラ
153a、153b セリヘッド
16 駆動機構
161 駆動プーリ
162 駆動モータ
17 帯鋸
18 軸受
20 斜断補正機構
201 揺動中心部
201a 貫通穴
201b ピン
202 揺動操作部
203 調節ゲート部材
203h 挿通孔
203a 連通孔
204 当たりボルト
204a 頭部
205 調節ボルト
205a 頭部
205m 六角溝
204 挿通孔
206 止めねじ
W 被加工材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に載置される被加工材を固定する被加工材固定保持手段と、前記ベース上に配置される主軸と、該主軸に所定角度傾斜させて回動自在に支持されたフレーム部とを具備し、このフレーム部に搭載された駆動機構によって周回駆動される帯鋸で前記被加工材を切断する帯鋸切断機であって、
前記主軸の長手方向の一端側寄りの位置に設けた揺動中心部と、前記主軸の長手方向の他端側寄りの位置に設けて、前記主軸の他端側寄りの部分を上下動させる揺動操作部と、を具備し、前記主軸を前記揺動操作部により、前記揺動中心部回りに揺動調節することで前記フレーム部の傾斜角度を調整して、前記帯鋸による被加工材に対する切断ずれを補正する斜断補正機構、
を備えたことを特徴とする帯鋸切断機。
【請求項2】
前記斜断補正機構における揺動操作部は、前記主軸の他端側寄りの位置において主軸が挿通される調節ゲート部材と、
該調節ゲート部材に対応する位置において、前記ベースに植設された当たりボルトと、
前記調節ゲート部材に挿通される主軸に直交すると共に、前記当たりボルトに軸方向に当接する調節ボルトと、を具備し、
前記当たりボルトを基準として、前記調節ボルトを進退調節することで、前記主軸を、前記主軸の揺動中心部を中心に揺動調節して前記フレーム部の傾斜角度を調整せしめるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の帯鋸切断機。
【請求項3】
前記斜断補正機構は、前記帯鋸による被加工材の軸線方向と直交する方向の切断ずれを補正するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の帯鋸切断機。
【請求項4】
前記被加工材固定保持手段は、固定バイスと可動バイスと、可動バイスをベース長手方向に進退移動せしめて、固定バイスと可動バイスとの間にセットした被加工材を締め付け固定、締め付け解除するための操作ハンドルと、前記被加工材を上方から締め付ける上部バイスとを備えた平バイスユニット部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の帯鋸切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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