説明

帯鋸盤

【課題】回避運動を効果的に避けることができる帯鋸盤を提供する。
【解決手段】帯鋸盤は、鋸引きする材料32を案内するようになされた走行方向28に沿って移動する帯鋸刃20を備えている。さらに、帯鋸刃20用のガイドが設けられている。ガイドは、その力が調整可能で、空間内におけるその位置に影響する力を帯鋸刃20に及ぼす複数の磁石ガイドエレメント4011,4012,4021,4022を有する。磁石ガイドエレメント4011,4012,4021,4022は、鋸引きする材料32の上流側または下流側に配置されており、走行方向28に沿ってみて互いに並んでいる少なくとも2つの磁石4211/4221,4212/4222を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行方向に沿って移動する帯鋸刃と、帯鋸刃に対して案内されるようになされた鋸引きする材料と、帯鋸刃用のガイドとを備え、前記ガイドは、その力が調整可能で、かつ空間内における帯鋸刃の位置に影響する力を帯鋸刃に及ぼす複数の磁石ガイドエレメントを有する帯鋸盤に関する。
【背景技術】
【0002】
上に明記した種類の帯鋸盤は、独国特許出願公開第10 2007 005 581号明細書により周知である。
帯鋸盤の操作中の帯鋸刃が、鋸引きする材料、たとえば丸太全部または角材または板を前方から帯鋸刃の歯側に対して案内するときに回避運動を生じることはよく知られている。これら回避運動は送り方向に対して側方に傾斜することがあり、または帯鋸刃がその走行方向に平行な軸に対して捻れることがある。回避運動は定期的に、すなわち1または複数の振動数をもつ振動として現れることもある。
【0003】
このような回避運動を避けるために、多種の帯鋸刃ガイドが提案されてきた。これらガイドは、ほとんどの場合、機械的ガイドとして構成されている。
冒頭に述べた文書独国特許出願公開第10 2007 005 581号明細書は、帯鋸刃を空間内に配置する帯鋸盤および方法を開示している。この先行技術の帯鋸盤は、磁気ガイドエレメントによって帯鋸刃に送り方向および走行方向に対して横方向に磁力を及ぼす磁気ガイドを利用する。1つの磁気ガイドエレメント内に別々の2つの磁石を設けてもよく、2つの磁石は送り方向に沿って並べて配置し、帯鋸刃の前領域に第1の力を及ぼし、後領域に第2の力を及ぼす。これら2つの力が不均衡なとき、帯鋸刃の走行方向に平行な軸を中心として帯鋸刃にトルクを及ぼす。そのため、帯鋸刃内の捻れが打ち消される。
【0004】
本発明がなされる過程において、前述したアプローチを使用すると帯鋸刃の所定の鋸引き方向の安定性および精度に実質的に寄与するであろうことは分かるが、加えて、より高次の運動成分が存在し、その運動成分は、帯鋸刃の走行速度とともに増大する帯鋸刃の不安定性にも寄与することが判明している。これら運動成分は、たとえば、帯鋸刃の走行方向における波状(波動)運動からなる。
【0005】
刊行物独国実用新案出願公開第201 05 845号明細書には、磁気帯鋸盤ポジショニング装置が記載されている。この装置は本質的に、U字形ガイドからなり、U字形ガイドの脚部は、配置されるべき帯鋸刃の両側に延びている。ガイド全体は、ばねを介して、鋸引きする材料の送り方向に固定基部に支持されている。明らかに永久磁石である2つの平行な列の相対する磁石は、それぞれガイドの2本の脚部に収容されており、当該列は帯鋸刃の長手方向に平行に延びている。1つの列は帯鋸刃の歯の歯底の横に配置されており、もう一方の列は、長手方向に沿って配置されている細長い鋸刃穴の後縁の後ろに配置されている。この刊行物において、磁石の極性およびその帯鋸刃との相互作用は何も触れられていない。ガイドの脚部は、脚部を相互接続するフランジから、帯鋸刃の背側がある距離を保つような長さの寸法にされ、ガイドはその帯鋸刃に対して相対的に配置されている。これにより、帯鋸刃は、高い送り力が発生したときの磁石の作用にもかかわらず、送り方向に多少ずれることがあり、最終的に限界として弾性支持が作用する。ガイドはもっぱら送り方向に対する帯鋸刃の支持をもたらし、そのためほんのわずかしか重大な回避運動を打ち消さない。帯鋸刃の側方の回避運動または捻れは、この先行技術のガイドによって防止されず、そのため寸法精度または表面品質に関して鋸引き切断の品質に寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 005 581号明細書
【特許文献2】独国実用新案出願公開第201 05 845号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、発明の根底にある目的は、前述の問題をなくすかまたは少なくともできる限り最小限にするよう、冒頭にて明記した種類の帯鋸盤を改良することである。具体的には、より高次の運動成分も効果的に吸収できるであろう帯鋸盤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
冒頭にて明記したタイプの帯鋸盤において、この目的は、鋸引きする材料の上流側または下流側に配置されている磁石ガイドエレメントが、走行方向に沿って互いに並んでいる少なくとも2つの磁石を有することで達成される。
こうして、本発明の根底にある目的は完全に解決される。
本発明の好適な実施形態において、ガイドは、それ自体公知の、帯鋸刃の両側に磁石ガイドエレメントを備えている。
【0009】
さらに、ガイドが、送り方向に並んで配置されている対になった磁石ガイドエレメントを備えていると好適である。
これらの手段は、先行技術の磁気ガイドの利点を前述の利点と組み合わせてもよいという利点を有する。
さらに別の利点は、説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【0010】
言うまでもなく、上で述べた特徴および以下に説明する特徴は、具体的に述べられたままの組み合わせで使用してもよいだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく他の組み合わせまたは単独で使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による帯鋸盤の一実施形態の模式的な前立面図である。
【図2】図1の帯鋸盤の帯鋸刃および本発明による磁石ガイドエレメントの側立面図を拡大して示すものである。
【図3】図2の線III-IIIに沿った上平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に図示し、以下の説明でさらに詳しく説明する。
図1において、参照番号10は、全体として、従来の設計の帯鋸盤を指す。帯鋸盤10は、上軸14を備えた上ホイール12と、下軸18を備えた下ホイールとを有する。帯鋸刃20は、ホイール12および16の周りに案内される。
図2に示すように、帯鋸刃20は、歯先側22と滑らかな背側24とを有する。ただし、本発明は同様に、両側に歯を有する帯鋸刃とともに使用してもよいことは言うまでもない。矢印26は、帯鋸刃20と鋸引きする材料との間の送り方向を示しており、矢印28は、帯鋸刃20の走行方向を示している。図示する実施形態の送り方向26は、水平かつ図1の平面に対して垂直に延びている。走行方向28は鉛直に延びている。またこの限りにおいて、本発明はこれらの方向に限定されるものではないことが理解される。
【0013】
鋸引きする材料32、たとえば板は、鋸引き台30に置かれている。従来の方法では、帯鋸刃20は鋸引き台30内の対応する開口部を通り、鋸引きする材料32は、帯鋸刃20の歯側22に対して、ある力で送り方向26に案内される。
帯鋸刃20が、鋸引きする材料32と噛み合うと、帯鋸刃20の回避運動が発生する可能性がある。このような回避運動は、連続的なこともあれば断続的なこともある。たとえば、鋸引きする材料32が何らかの原因によって帯鋸刃20に対して斜めの角度で案内されると、帯鋸刃20は連続的な回避運動で反応し、鋸引きは不正確となる。帯鋸刃20が、鋸引きする材料32内の不連続な部分、たとえば節に当たると、帯鋸刃20は不連続な回避運動を生じることになる。
【0014】
また、帯鋸刃20は、振動を始めること、とくに走行方向28に平行な軸を中心とした捻れ振動、またはこのような軸に沿った振動を始めることがある。このような振動は、とくに帯鋸刃20の高速な走行速度で発生する。帯鋸盤10および帯鋸刃20内の不連続性による断続的(周期的)な走行、たとえば固定ガイド上を走行する帯の継目との自然共振が、同じくこのような振動を誘発することがある。
【0015】
この複雑な運動作用を打ち消すために、図示する好適な実施形態は、まず、それ自体公知の4つの磁石ガイドエレメント、すなわち図1においては鋸引きする材料32に対して、第1の左上磁石ガイドエレメント4011と、第2の右上磁石ガイドエレメント4012と、第3の左下磁石ガイドエレメント4021と、第4の右下磁石ガイドエレメント4022とが設けられている。磁石ガイドエレメント4011,4012,4021,4022は帯鋸刃20の両側に、とくに同じ高さで配置されており、磁石ガイドエレメント4011/4012および4021/4022はそれぞれ、鋸引きする材料32のそれぞれ上と下とに位置する。
【0016】
この限りにおいて、代替例として、1対の磁石ガイドエレメント右/左および/または1対の磁石ガイドエレメント上/下だけを使用してもよく、その場合に欠落している磁石ガイドエレメントは、機械的ガイド、とくに固定ガイドブロックに置き換えてもよいことが理解される。帯鋸刃20は、図示するように、ホイール12および16の接線に沿って案内されてもよく、または代替例として、当該接線に対して側方距離を保って案内されてもよく、その場合、帯鋸刃20はその静止位置において機械的バイアス張力下にあるだろう。当該代替例に関する詳細は、すでに引用した独国特許出願公開第10 2007 005 581号明細書に記述されており、これを参照する。
【0017】
本発明によると、磁石ガイドエレメントの中に、好ましくは磁石ガイドエレメント4011に対して、図2で示すように、すべての磁石ガイドエレメント4011,4012,4021および4022に4つの磁石がそれぞれ設けられている。図2の図では、第1の左上磁石4211と、第2の右上磁石4212と、第3の左下磁石4221と、第4の右下磁石4222とを有する。そのため、磁石4211,4212,4221および4222は仮想上の長方形の角に配置されている。これらは個別に制御されるようになされている。したがって、磁石4211と4221、および磁石4212と4222とは走行方向28に並んで配置されており、磁石4211と4212、および磁石4221と4222とは送り方向26に並んで配置されている。そのため、図示する実施形態では、帯鋸刃20は、磁石ガイドエレメント4011〜4022のそれぞれによって走行しているとき、つねに4つの磁石によって走行する。好ましくは、磁石対4211/4212および4221/4222の磁石は、帯鋸刃20のそれぞれ前領域と後領域とに配置されている。磁石ガイドエレメント4011,4012および4021,4022はそれぞれ、好ましくは鋸引きする材料32のそれぞれ真上と真下とに配置されている。
【0018】
送り方向26に沿って並んで配置されている磁石4211/4212および4221/4222はそれぞれ、それ自体公知のように異なるように起動(通電)されると、図3に関連してより詳細に説明するが、走行方向28に平行に延びている図2に示す軸44を中心として帯鋸刃20にトルクを及ぼす。
これに対して、走行方向28に沿って並んで配置されている磁石4211/4221および4212/4222は、それぞれ走行方向28に沿った帯鋸刃20の不均一な動き、とくに走行方向28に沿って伝播する振動を打ち消す。
【0019】
言うまでもなく、送り方向26に沿って並んでそれぞれ配置されている磁石対4211/4212および4221/4222は有利で好適であるが、本発明に必須のものではない。代わりに、帯鋸刃20の片側のみに磁石を設けてもよい。
図3は、図2の線III−IIIに沿った図を示す。
磁石ガイドエレメント4011には、ハウジング54が設けられている。ハウジング54内には、帯鋸刃20の前領域58aおよび後領域58bのそれぞれに面して配置されている第1の前電磁石4211と第2の後電磁石4212とがある。「前」および「後」という用語は、鋸引きする材料32、たとえば木の板の送り方向26に関係している。下には、第3および第4の電磁石4221および4222が設けられている。
【0020】
電磁石4211〜4222は好ましくは同じ設計である。図3に示すU字形ヨークの設計は、当然ながら単なる一例として理解されるべきである。原則として、帯鋸刃20に接触せずに調整可能な力を及ぼせるものであれば、どのようなコンポーネントを使用してもよい。
4つの電磁石4211〜4222は、磁石ガイドエレメント4011〜4022のいずれでも使用されるため、2つの磁石ガイドエレメントが重なり合うアセンブリ全体(図1)は、全体として8個の当該電磁石を備え、または重ねて配置されている2対の磁石ガイドエレメント4011/4021および4012/4022それぞれを帯鋸刃20の両側に使用すると、16個の電磁石を備える。
【0021】
前センサ62aは前電磁石4211に関連付けられ、後センサ62bは後電磁石4212に関連付けられている。下電磁石4221および4222は対応して切り換わる。センサ62a,62bは距離を磁気的、容量的、光学的、音響的または他の何らかの方法で測定するようになされている。磁石ガイド内で、センサは磁石ガイドエレメント4011の右側(図3)表面64と、前領域58aおよび後領域58bそれぞれにおける帯鋸刃20の左側(図3)表面66との距離dを測定する。
【0022】
電磁石4211および4212を同じ電流強度で通電すると、つまり、領域58aおよび58bに同じ磁力を及ぼすと、図3の図の帯鋸刃は、両矢印70で示すように、その向きを維持しながら右または左に移動する。しかし、電磁石4211および4212の磁力を異なるように設定すると、帯鋸刃20は、対の矢印72で示すように、その中心軸を中心に捻れる。このようにして、鋸引きする材料32の送り方向26に対してある角度をもって傾斜している帯鋸刃20を調整することが可能である。このように、たとえば鋸引きする材料32が、自然に成長した樹幹またはその一部の場合のように、送り方向26に沿って円錐状または弓状の形をしている場合、鋸引きする材料32内の鋸切断を傾斜させるまたは弓状にすることができる。
【0023】
重なり合って配置されている磁石対4211/4221および4212/4222は、対応して帯鋸刃20に作用する。これらを異なるように通電することによって、走行方向28に沿って伝播する帯鋸刃20内の波動(波うち)はなくなるであろう。
そのため、電磁石4211〜4222を選択的に制御することによって、走行方向28に沿った波動の伝播と同じく効果的に、帯鋸刃20の側方の回避運動および捻れも補償できる。このことは、帯鋸刃20の歯側22に対して送り方向26に沿って鋸引きする材料32を高い力で案内した後に帯鋸刃20が撓む場合、または帯鋸刃20が鋸引きする材料32の不均一な領域、たとえば木の板内の節に当たる場合に、とくに有利である。
【0024】
図1の構成において、帯鋸刃20の側方位置の制御は、帯鋸刃20の両側にある磁石ガイド4011/4012および4021/4022をそれぞれ選択的に制御することによって行われる。この状況の帯鋸刃20は、図1に示すように、ホイール12とホイール14との間の共通接線に沿って延びている。
しかし、代替例として、磁石ガイドエレメントは帯鋸刃の片側だけに配置することもでき、反対側の帯鋸刃は、それ自体公知であるように、たとえば、独国特許出願公開第10 2007 005 581号明細書の図1で示されるように、その静止位置にあるとき固定(静止)ガイドブロックに載せておくことができるであろう。このように、静止位置、つまり磁力が存在しないとき、帯鋸刃は、100Nないし1,000N、たとえば600Nのある側方向きのバイアス張力の従来の機械的設定により、たとえば固定ガイドブロックに載せておく。帯鋸盤の始動の直前または始動時に、帯鋸刃は、たとえば600Nの機械的なバイアス力よりも高い、たとえば700Nの磁力を及ぼすことによって、ガイドブロックと磁石ガイドエレメントとの間の所望の位置になるまで、ガイドブロックから持ち上げられる。この所望の位置で、帯鋸刃は接触せずに案内される。さらに、この位置制御は、700Nの所望の磁力に関する調節、つまり磁力を弱めるまたは強めることによって行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行方向(28)に沿って移動する帯鋸刃(20)と、前記帯鋸刃(20)に対して案内されるようになされた鋸引きする材料(32)と、前記帯鋸刃(20)用のガイドとを備え、前記ガイドは、その力が調整可能で、空間内におけるその位置に影響を与える力を前記帯鋸刃(20)に及ぼす複数の磁石ガイドエレメント(4011,4012,4021,4022)を有する帯鋸盤であって、
前記鋸引きする材料(32)の上流側または下流側に配置されている前記磁石ガイドエレメント(4011,4012,4021,4022)は、前記走行方向(28)に沿ってみて互いに並んでいる少なくとも2つの磁石(4211/4221,4212/4222)を有することを特徴とする帯鋸盤。
【請求項2】
前記ガイドは、前記帯鋸刃(20)の両側に前記磁石ガイドエレメント(4011/4012,4021/4022)を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の帯鋸盤。
【請求項3】
前記ガイドは、前記送り方向(26)に並んで配置されている対の磁石ガイドエレメント(4011,4012,4021,4022)を備えたことを特徴とする、請求項1または2に記載の帯鋸盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−512038(P2012−512038A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541182(P2011−541182)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008926
【国際公開番号】WO2010/069530
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(510267960)エステラー ヴェーデー ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】