説明

帯電ナノ粒子製造方法及び帯電ナノ粒子製造システム並びに帯電ナノ粒子堆積システム

【課題】帯電ナノ粒子の製造方法及びその方法を利用したシステムを提供する。
【解決手段】帯電ナノ粒子の製造方法は、所定の物質からなる分子イオンをナノ粒子の表面に付着させて該ナノ粒子を帯電させる。また、この方法を利用したシステムは、ナノ粒子とイオン化装置10Aで生成された分子イオンとを混合する容器96を備え、容器96内でナノ粒子に分子イオンを付着させる。このシステムは、容器104内に配置された一対の電極106,108と、一対の電極106,108の間に所定の電圧を印加し、分子イオンが付着したナノ粒子を一対の電極106,108の間に配置された被沈着部材112に向かって付勢する電界を形成する電源110を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ナノ粒子の製造方法及びその方法を利用したシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイナスイオンは、人の健康・生理機能(例えば、ストレスの緩和、疲労回復、血行促進)や生活環境改善(例えば、抗菌、除虫、ダイオキシンの抑制)に優れた機能を発揮することが知られている。このマイナスイオン(巨大な水のクラスターイオン)は、自然界において、滝の付近や噴水などのように、水が岩や石などに当たるときに小さな分子に拡散して発生する(レナード効果)。一方、マイナスイオンを人工的に生成する装置として、例えばコロナ放電法や水滴破砕法を利用したイオン化装置が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、コロナ放電法は、イオンを大きくするために大量の水を蒸気にする必要があるため、大容量のボイラーを必要とし、また居室内の湿度が過度に高くなって快適性が低下するという問題がある。また、水滴破砕法は大量の水を板に当てるため、大容量の貯留槽を必要とするうえ、水を板に当てるときに大きな音を発生するという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、大量のクラスターイオンを効率良く提供できるイオン化装置、また小型で騒音の少ないイオン化装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このイオン化装置を利用したシステムを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的を達成するために、本発明に係るイオン化装置は、臨界オリフィス20を通じて外部空間14と連通する内部空間18を形成する容器12と、開口部20の近傍に配置された第1の電極16と、第1の電極16と所定の間隔をあけて対向するように内部空間18内に配置された第2の電極26と、内部空間18に所定の物質(例えば、水)の分子を含む気体を供給する気体供給部30と、第1の電極16と第2の電極26との間に所定の電圧を印加して放電させることで分子をイオン化する電源28と、臨界オリフィス20から外部空間14に向かって逆テーパ状に広がる拡大管24を形成する断熱部22で構成されている。
【発明の効果】
【0006】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るイオン化装置によれば、大量のクラスターイオン(例えば、マイナスイオン)を効率良く提供できる。
【0007】
また、イオン化装置で生成された分子イオンを一対の電極間に送るシステムによれば、イオンの動きを所定の方向に制御できる。そのため、高濃度の成膜が可能となる。
【0008】
さらに、イオン化装置で生成された分子イオンとナノ粒子とを混合する容器を備えたシステムによれば、容器内でナノ粒子に分子イオンを付着させて電荷を付与することができる。
【0009】
さらにまた、イオン化装置で生成された分子イオンとナノ粒子とを混合して分子イオンを前記ナノ粒子に付着させる容器と、この容器内に配置された一対の電極と、これら一対の電極の間に所定の電圧を印加し、分子イオンが付着したナノ粒子を一対の電極の間に配置された被沈着部材に向かって付勢する電界を形成する電源を備えたシステムによれば、ナノ粒子を効率良く捕集して目的の場所に堆積又は移送することができる。
【0010】
本発明のシステムは、一対の電極76,78と、一対の電極76,78の間に電圧を印加する電源82とを備え、イオン化装置10で生成された分子イオンが一対の電極76,78間に送られるものである。
【0011】
本発明の他の形態のシステムは、ナノ粒子とイオン化装置10Aで生成された分子イオンとを混合する容器96を備え、容器96内でナノ粒子に分子イオンを付着させるものである。
【0012】
本発明の他の形態のシステムは、ナノ粒子とイオン化装置10Aで生成された分子イオンとを混合して分子イオンをナノ粒子に付着させる容器104と、容器104内に配置された一対の電極106,108と、一対の電極106,108の間に所定の電圧を印加し、分子イオンが付着したナノ粒子を一対の電極106,108の間に配置された被沈着部材112に向かって付勢する電界を形成する電源110を有する。
【0013】
本発明の他の形態の方法は、所定の物質からなる分子イオンをナノ粒子の表面に付着させて帯電させるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(1)クラスターイオン発生器
図1は、本発明に係るイオン化装置の具体的実施形態であるクラスターイオン発生器10の概略構成を示す。このクラスターイオン発生器10は、筒状の容器又はハウジング12を有する。ハウジング12は、電気的に絶縁性を有する材料で形成されており、図面上左側の一端が閉鎖され、図面上右側の他端が外部空間14に開放されている。外部空間14に対して開放されたハウジング12の他端側は導電材料からなる隔壁(第1の電極)16によって閉鎖されており、これによりハウジング12の内側に内部空間18が形成されている。隔壁16は小径(例えば、内径が0.1〜0.4mm)の臨界オリフィス(孔)20を備えており、この臨界オリフィス20を通じて内部空間18と外部空間14が流体的に接続されている。臨界オリフィス20の外側には筒状の断熱部(断熱部材)22が配置されており、臨界オリフィス20から外部空間14に向けて逆テーパ状に広がる拡大管(断熱空間)24が形成されている。一方、臨界オリフィス20の内側には、臨界オリフィス20と所定の間隔をあけて、臨界オリフィス20に対向する針状電極(第2の電極)26が配置されている。本実施形態において、針状電極26は臨界オリフィス20の中心軸上に配置されて絶縁ハウジング12に支持されている。
【0015】
針状電極26は、高圧電源28と電気的に接続されている。一方、ハウジング12の内部空間18は加湿器(気体供給部)30に流体的に接続されている。加湿器30は、イオン化する分子である水を収容した貯留槽32と、この貯留槽32の底部に空気を供給する空気供給装置34を備えている。通常、空気供給装置34は、空気を供給するポンプと、一端がポンプの吐出口に接続されると共に他端が貯留槽32の底部に配置された空気供給管を有する。ハウジング12の内部空間18と空気加湿器30を接続する空気供給管は、その一端が貯留槽32の上部空間に連通し、他端が内部空間18に連通している。
【0016】
このような構成を備えたイオン発生器10によれば、空気供給装置34から供給された空気は、貯留槽32の底部から水中に放出される。水中に放出された空気は気泡となって上部空間に浮上し、その上部空間を加湿空気(湿度約30〜40%)で満たす。この加湿空気は、空気供給装置34から連続的に供給される空気によってハウジング12の内部空間18に所定の圧力(例えば、1〜2kg/cm)で送り込まれる。その結果、ハウジング12の内部空間18は加湿された圧力空気で満たされる。
【0017】
針状電極26には、直流又は交流の電圧(例えば、−6KV)が印加される。その結果、針状電極26とこれに対向する隔壁16との間の領域でコロナ放電が発生し、その領域に水分子のコロナ放電イオンが生成される。この水分子イオンは、加湿器30から内部空間18に供給される圧力空気により、高速ジェットとなって臨界オリフィス20から拡大管24に吐出する。拡大管24に吐出した高速ジェットの空気は、急激な圧力の低下によって断熱膨張し、過飽和雰囲気を形成する。その結果、雰囲気中の水分子がコロナ放電で発生した水分子イオンに凝集し、大きな水クラスターイオン36に成長する。
【0018】
ここで生成される水クラスターイオンは、図2に示すように、滝の近傍で発生するクラスターイオンと同程度の可動性(mobility)、即ち大きさを有し、それはハウジング12の内部空間18で発生したコロナ放電イオンよりも遥かに大きなものである。
【0019】
以上の説明では、加湿する気体として空気を用いたが、これは空気と他の気体との混合物、または空気以外の気体であってもよい。また、空気を加湿する液体として水を用いたが、これは水と他の液体との混合物、または水以外の液体であってもよい。さらに、針状電極26を高圧電源28に接続し、隔壁16を接地したが、逆に、隔壁16を高圧電源に接続し、針状電極を接地してもよい。さらにまた、以上の説明では隔壁16を導電部材で形成したが、臨界オリフィス20の周囲又はその近傍にのみ導電部材を配置し、この導電部材を第1の電極として利用してもよい。
【0020】
(2)ハウジング等の構成
上述したクラスターイオン発生器10において、ハウジング12等の具体的構成を図3に示す。この図に示すハウジング12は、円筒体40と、円筒体40の一端(図面上左側の端部)を閉鎖する基端部材42とからなる。これら円筒体40と基端部材42は、共に電気的に絶縁性の材料で形成されている。円筒体40の他端(図面上右側の端部)は、導電性の材料からなる電極板(隔壁)44で閉鎖されており、この電極板44の中央に約0.1〜0.4mmの貫通孔(臨界オリフィス)46が形成されている。一方、基端部材42の中央には貫通孔46の中心軸と同軸上に別の貫通孔48が形成されており、ハウジング12の内部(内部空間)50に配置されている導電性の針状電極支持部材52が当該別の貫通孔48にはめ込まれている。
【0021】
針状電極支持部材52は、図面上左側に、貫通孔48に連通する気体通路54と、この気体通路54とハウジング12の内部50とを連通する連通孔56が形成されており、図示しない加湿器(図1参照)から供給された加湿気体が貫通孔48、気体通路54から連通孔56を介してハウジング12の内部50に供給されるようにしてある。また、針状電極支持部材52の先端(電極板44に対向する端部)は針電極58を保持しており、この針電極58と電極板44との間に約2〜4mmの隙間があけてある。一方、基端部材42は、電源接続用電極収容孔60が形成されており、この電極収容孔60に電極62がその周囲を封止された状態で収容されている。そして、電極支持部材52と電極62が電線64によって電気的に接続されている。
【0022】
(3)実施の形態2
図4は、イオン発生器10Aと、このイオン発生器10Aで得られたイオンを利用するイオン化CVD成膜装置72を含むシステム70の構成を示す。システム70において、イオン発生器10Aは、実施の形態1で説明したイオン発生器10も使用可能であるが、このイオン発生器10から断熱部22を除いたイオン発生器であってもよい。イオン発生器10Aの内部空間は、CVD成膜法に利用される原料分子を供給するための原料分子供給部(気体供給部)74に接続されている。
【0023】
CVD原料は、気体・液体・固体のいずれかの形態を有する。例えば、固体原料としては金属カルボニル、金属錯体、金属βジケトン、金属塩化物(例えば、Ni(CO)4, (CH3COO)6Zn4O, Co[MeC(S)=CHCOMe]3, TiCl4)、液体原料としては有機金属・有機シリコン(例えば、Si(OC2H5)4 (TEOS;テトラエトキシシラン))、気体原料としてはSiH4(シラン)が挙げられるが、これらに限るものでない。これに対し、原料分子供給部74は、CVD原料の形態に応じた構成と機能を有する。例えば、CVD原料が液体又は固体の場合、原料分子供給部74は、蒸発器によって原料を蒸発し、この蒸発した原料ガスをキャリアガスと共にイオン発生器10Aに搬送する。一方、CVD原料が気体の場合、原料分子供給部74は、この原料ガスをキャリアガスと混合して所定濃度に調製した後、イオン発生器10Aに供給する。
【0024】
イオン発生器10Aの臨界オリフィスはイオン化CVD成膜装置72に接続されている。このイオン化CVD装置72は、一対の電極76,78と、一方の電極76の裏面(他方の電極78の反対側にある面で、図面上の下面)に設置されたヒータ80と、電極76,78の間に所定の電圧を印加する電源82を有する。そして、成膜の対象となる基板84は、上記一方の電極76の表面(他方の電極78に対向する面で、図面上の上面)に設置される。
【0025】
このような構成のシステム70において、イオン発生器10には、原料分子供給部74からCVDガス原料が供給される。このCVDガス原料は、針状電極と隔壁との対向領域(放電場)で発生したコロナ放電によりイオン化された後、高速ジェットとなって、一対の電極76、78間に噴射される。したがって、針状電極と隔壁との間の放電場で発生したCVD原料分子イオンは高い運動エネルギーを有し、針状電極又は隔壁に吸着されることなく、隔壁の貫通孔から効率良く噴射されて電極76,78の間に供給される。電極76,78の間に供給された原料分子イオンは、これら電極間に形成された電場に捕集された後、原料分子イオンと異なる極性の電圧が印加されている一方の電極76に向かって移動し、基板84上に堆積する。
【0026】
そのため、従来のCVD成膜装置では、膜や微粒子の素になる中間体やクラスターの反応容器内における運動がブラウン運動や対流に支配され、それらの運動を制御できず、高品質の薄膜やナノ粒子の合成ができなかったのに対し、上述のように、原料分子イオンの運動を目的の方向に制御できると共に、すべての又は殆どの原料分子イオンを成膜装置に供給することができるので高濃度の成膜が可能になる。
【0027】
なお、イオン発生器10Aの下流側にイオン化CVD成膜装置72を接続した場合を示したが、イオン化CVD成膜装置72に代えてヒーターにより壁面を所定の温度に加熱された反応管を接続してもよい。この場合、高品質のナノ粒子合成が可能となる。
【0028】
(4)実施の形態3
図5は、イオン発生器10Aと、このイオン発生器10Aで得られたイオンを利用する気流混合装置92を含むシステム90の構成を示す。イオン発生器10において、ハウジング内部はガス供給装置94に接続されており、このガス供給装置94からハウジング内部に所定の高圧ガスが供給されるようにしてある。気流混合装置92において、混合容器96は、イオン発生器10の臨界オリフィスと、ナノ粒子供給装置98に接続されている。
【0029】
このような構成において、イオン発生器10Aでは、ガス供給装置94からハウジング内部に供給された原料ガスはコロナ放電によりイオン化された後、高速ジェットとなって吐出する。吐出した高速ジェットの分子イオンは、混合容器96に供給され、そこでナノ粒子供給装置98から供給されたナノ粒子と混合されてその表面に付着し、ナノ粒子に電荷を与える。したがって、イオンが付着したナノ粒子は、後に電界を利用して分級、移送ができる。
【0030】
(5)実施の形態4
図6は、イオン発生器10Aと、このイオン発生器10Aで得られたイオンを利用するナノ粒子堆積装置102を含むシステム100の構成を示す。このシステム100において、イオン発生器10Aは、堆積装置102の容器104に接続され、イオン発生器10Aで生成されたイオンが容器104に供給されるようにしてある。堆積装置102の容器104には、その上部と下部にそれぞれ電極106,108が配置されている。電極106,108には直流電源110が接続され、これらの間に電界が形成されている。下部の電極108は、例えば金属又は非金属の電界ナノ粒子堆積基板112を支持している。容器104はまた、ナノ粒子供給装置114に接続されており、上部の電極106の下方領域にナノ粒子が供給されるようにしてある。
【0031】
このような構成において、イオン発生器10Aから容器104に供給された分子イオンは容器104に供給され、そこでナノ粒子供給装置114から供給されたナノ粒子と混合されてその表面に付着し、ナノ粒子に電荷を与える。電荷が付与されたナノ粒子は、電極間の電界によって下方の電極108に向かって吸引され、この電極108に支持された堆積基板(非沈着部材)112に沈着する。したがって、このシステム100によれば、ナノ粒子を効率良く捕集して目的の場所に堆積又は移送することができる。
【0032】
なお、イオンがマイナス電荷を持っている場合、図示するように上方の電極106にはマイナス極が接続され、下方の電極108にはプラス極が接続される。イオンがプラスの電荷を持っている場合、電極106,108は逆の極が接続される。
【0033】
以上の説明では下方の電極108に基板を配置したが、これに代えて他の液体又はスラリー若しくはゲルを収容した容器を配置し、この液体又はスラリー若しくはゲルの表面にナノ粒子を堆積してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るイオン発生器の概略構成を示す断面図。
【図2】クラスターイオンとコロナ放電イオン等の可動性を示すグラフを示す図。
【図3】図1に示すイオン発生器の部分断面図。
【図4】イオン発生器と該イオン発生器で生成したイオンを利用するイオン化CVD成膜装置を含むシステムの概略構成図。
【図5】イオン発生器と該イオン発生器で生成したイオンを利用する気流混合装置を含むシステムの概略構成図。
【図6】イオン発生器と該イオン発生器で生成したイオンを利用する堆積装置を含むシステムの概略構成図。
【符号の説明】
【0035】
10:クラスターイオン発生器
10A:イオン発生器
12:ハウジング(容器)
14:外部空間
16:隔壁(第1の電極)
18:内部空間
20:臨界オリフィス
22:断熱部(断熱部材)
24:拡大管
26:針状電極(第2の電極)
28:高圧電源
36:クラスターイオン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ナノ粒子製造方法及び帯電ナノ粒子製造システム並びに帯電ナノ粒子堆積システムに関する。
【発明の背景】
【0002】
本発明は、帯電ナノ粒子製造方法及び帯電ナノ粒子製造システム並びに帯電ナノ粒子堆積システムを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これらの目的を達成するために、本発明に係る帯電ナノ粒子製造方法は、所定の物質からなるイオンをナノ粒子の表面に付着させて該ナノ粒子を帯電させるものである。
【0004】
本発明の帯電ナノ粒子製造システムは、イオン化装置10Aと、ナノ粒子供給装置98と、前記イオン化装置10Aとナノ粒子供給装置98に接続された混合容器96を有し、前記混合容器96内で前記ナノ粒子供給装置98から供給されるナノ粒子に前記イオン化装置10Aから供給されるイオンを付着させて前記ナノ粒子に電荷を与えるものである。
【0005】
本発明の他の形態の帯電ナノ粒子堆積システム100は、混合容器104内に配置された一対の電極106,108と、前記一対の電極106,108の間に所定の電圧を印加し、前記帯電ナノ粒子製造システムで製造された帯電ナノ粒子を前記一対の電極106,108の間に配置された被沈着部材112に向かって付勢する電界を形成する電源110を有する。
【発明の効果】
【0006】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る帯電ナノ粒子の製造方法によれば、電荷が与えられたナノ粒子が得られる。
【0007】
また、イオン化装置で生成されたイオンとナノ粒子とを混合する容器を備えた帯電ナノ粒子製造システムによれば、混合容器内でナノ粒子にイオンを付着させて電荷を付与することができる。
【0008】
さらに、帯電ナノ粒子製造システムを利用した帯電ナノ粒子堆積システムは、混合容器内に配置された一対の電極と、前記一対の電極の間に所定の電圧を印加し、前記帯電ナノ粒子製造システムで製造された帯電ナノ粒子を前記一対の電極の間に配置された被沈着部材に向かって付勢する電界を形成する電源を備えたもので、ナノ粒子を効率良く捕集して目的の場所に堆積又は移送することができる。
【発明の実施の形態】
【0009】
(1)クラスターイオン発生器
図1は、本発明に係るイオン化装置の具体的実施形態であるクラスターイオン発生器10の概略構成を示す。このクラスターイオン発生器10は、筒状の容器又はハウジング12を有する。ハウジング12は、電気的に絶縁性を有する材料で形成されており、図面上左側の一端が閉鎖され、図面上右側の他端が外部空間14に開放されている。外部空間14に対して開放されたハウジング12の他端側は導電材料からなる隔壁(第1の電極)16によって閉鎖されており、これによりハウジング12の内側に内部空間18が形成されている。隔壁16は小径(例えば、内径が0.1〜0.4mm)の臨界オリフィス(孔)20を備えており、この臨界オリフィス20を通じて内部空間18と外部空間14が流体的に接続されている。臨界オリフィス20の外側には筒状の断熱部(断熱部材)22が配置されており、臨界オリフィス20から外部空間14に向けて逆テーパ状に広がる拡大管(断熱空間)24が形成されている。一方、臨界オリフィス20の内側には、臨界オリフィス20と所定の間隔をあけて、臨界オリフィス20に対向する針状電極(第2の電極)26が配置されている。本実施形態において、針状電極26は臨界オリフィス20の中心軸上に配置されて絶縁ハウジング12に支持されている。
【0010】
針状電極26は、高圧電源28と電気的に接続されている。一方、ハウジング12の内部空間18は加湿器(気体供給部)30に流体的に接続されている。加湿器30は、イオン化する分子である水を収容した貯留槽32と、この貯留槽32の底部に空気を供給する空気供給装置34を備えている。通常、空気供給装置34は、空気を供給するポンプと、一端がポンプの吐出口に接続されると共に他端が貯留槽32の底部に配置された空気供給管を有する。ハウジング12の内部空間18と空気加湿器30を接続する空気供給管は、その一端が貯留槽32の上部空間に連通し、他端が内部空間18に連通している。
【0011】
このような構成を備えたイオン発生器10によれば、空気供給装置34から供給された空気は、貯留槽32の底部から水中に放出される。水中に放出された空気は気泡となって上部空間に浮上し、その上部空間を加湿空気(湿度約30〜40%)で満たす。この加湿空気は、空気供給装置34から連続的に供給される空気によってハウジング12の内部空間18に所定の圧力(例えば、1〜2kg/cm)で送り込まれる。その結果、ハウジング12の内部空間18は加湿された圧力空気で満たされる。
【0012】
針状電極26には、直流又は交流の電圧(例えば、−6KV)が印加される。その結果、針状電極26とこれに対向する隔壁16との間の領域でコロナ放電が発生し、その領域に水分子のコロナ放電イオンが生成される。この水分子イオンは、加湿器30から内部空間18に供給される圧力空気により、高速ジェットとなって臨界オリフィス20から拡大管24に吐出する。拡大管24に吐出した高速ジェットの空気は、急激な圧力の低下によって断熱膨張し、過飽和雰囲気を形成する。その結果、雰囲気中の水分子がコロナ放電で発生した水分子イオンに凝集し、大きな水クラスターイオン36に成長する。
【0013】
ここで生成される水クラスターイオンは、図2に示すように、滝の近傍で発生するクラスターイオンと同程度の可動性(mobility)、即ち大きさを有し、それはハウジング12の内部空間18で発生したコロナ放電イオンよりも遥かに大きなものである。
【0014】
以上の説明では、加湿する気体として空気を用いたが、これは空気と他の気体との混合物、または空気以外の気体であってもよい。また、空気を加湿する液体として水を用いたが、これは水と他の液体との混合物、または水以外の液体であってもよい。さらに、針状電極26を高圧電源28に接続し、隔壁16を接地したが、逆に、隔壁16を高圧電源に接続し、針状電極を接地してもよい。さらにまた、以上の説明では隔壁16を導電部材で形成したが、臨界オリフィス20の周囲又はその近傍にのみ導電部材を配置し、この導電部材を第1の電極として利用してもよい。
【0015】
(2)ハウジング等の構成
上述したクラスターイオン発生器10において、ハウジング12等の具体的構成を図3に示す。この図に示すハウジング12は、円筒体40と、円筒体40の一端(図面上左側の端部)を閉鎖する基端部材42とからなる。これら円筒体40と基端部材42は、共に電気的に絶縁性の材料で形成されている。円筒体40の他端(図面上右側の端部)は、導電性の材料からなる電極板(隔壁)44で閉鎖されており、この電極板44の中央に約0.1〜0.4mmの貫通孔(臨界オリフィス)46が形成されている。一方、基端部材42の中央には貫通孔46の中心軸と同軸上に別の貫通孔48が形成されており、ハウジング12の内部(内部空間)50に配置されている導電性の針状電極支持部材52が当該別の貫通孔48にはめ込まれている。
【0016】
針状電極支持部材52は、図面上左側に、貫通孔48に連通する気体通路54と、この気体通路54とハウジング12の内部50とを連通する連通孔56が形成されており、図示しない加湿器(図1参照)から供給された加湿気体が貫通孔48、気体通路54から連通孔56を介してハウジング12の内部50に供給されるようにしてある。また、針状電極支持部材52の先端(電極板44に対向する端部)は針電極58を保持しており、この針電極58と電極板44との間に約2〜4mmの隙間があけてある。一方、基端部材42は、電源接続用電極収容孔60が形成されており、この電極収容孔60に電極62がその周囲を封止された状態で収容されている。そして、電極支持部材52と電極62が電線64によって電気的に接続されている。
【0017】
(3)実施の形態2
図4は、イオン発生器10Aと、このイオン発生器10Aで得られたイオンを利用するイオン化CVD成膜装置72を含むシステム70の構成を示す。システム70において、イオン発生器10Aは、実施の形態1で説明したイオン発生器10も使用可能であるが、このイオン発生器10から断熱部22を除いたイオン発生器であってもよい。イオン発生器10Aの内部空間は、CVD成膜法に利用される原料分子を供給するための原料分子供給部(気体供給部)74に接続されている。
【0018】
CVD原料は、気体・液体・固体のいずれかの形態を有する。例えば、固体原料としては金属カルボニル、金属錯体、金属βジケトン、金属塩化物(例えば、Ni(CO)4, (CH3COO)6Zn4O, Co[MeC(S)=CHCOMe]3, TiCl4)、液体原料としては有機金属・有機シリコン(例えば、Si(OC2H5)4 (TEOS;テトラエトキシシラン))、気体原料としてはSiH4(シラン)が挙げられるが、これらに限るものでない。これに対し、原料分子供給部74は、CVD原料の形態に応じた構成と機能を有する。例えば、CVD原料が液体又は固体の場合、原料分子供給部74は、蒸発器によって原料を蒸発し、この蒸発した原料ガスをキャリアガスと共にイオン発生器10Aに搬送する。一方、CVD原料が気体の場合、原料分子供給部74は、この原料ガスをキャリアガスと混合して所定濃度に調製した後、イオン発生器10Aに供給する。
【0019】
イオン発生器10Aの臨界オリフィスはイオン化CVD成膜装置72に接続されている。このイオン化CVD装置72は、一対の電極76,78と、一方の電極76の裏面(他方の電極78の反対側にある面で、図面上の下面)に設置されたヒータ80と、電極76,78の間に所定の電圧を印加する電源82を有する。そして、成膜の対象となる基板84は、上記一方の電極76の表面(他方の電極78に対向する面で、図面上の上面)に設置される。
【0020】
このような構成のシステム70において、イオン発生器10Aには、原料分子供給部74からCVDガス原料が供給される。このCVDガス原料は、針状電極と隔壁との対向領域(放電場)で発生したコロナ放電によりイオン化された後、高速ジェットとなって、一対の電極76、78間に噴射される。したがって、針状電極と隔壁との間の放電場で発生したCVD原料分子イオンは高い運動エネルギーを有し、針状電極又は隔壁に吸着されることなく、隔壁の貫通孔から効率良く噴射されて電極76,78の間に供給される。電極76,78の間に供給された原料分子イオンは、これら電極間に形成された電場に捕集された後、原料分子イオンと異なる極性の電圧が印加されている一方の電極76に向かって移動し、基板84上に堆積する。
【0021】
そのため、従来のCVD成膜装置では、膜や微粒子の素になる中間体やクラスターの反応容器内における運動がブラウン運動や対流に支配され、それらの運動を制御できず、高品質の薄膜やナノ粒子の合成ができなかったのに対し、上述のように、原料分子イオンの運動を目的の方向に制御できると共に、すべての又は殆どの原料分子イオンを成膜装置に供給することができるので高濃度の成膜が可能になる。
【0022】
なお、イオン発生器10Aの下流側にイオン化CVD成膜装置72を接続した場合を示したが、イオン化CVD成膜装置72に代えてヒーターにより壁面を所定の温度に加熱された反応管を接続してもよい。この場合、高品質のナノ粒子合成が可能となる。
【0023】
(4)実施の形態3
図5は、イオン発生器10Aと、このイオン発生器10Aで得られたイオンを利用する気流混合装置92を含む帯電ナノ粒子製造システム90の構成を示す。イオン発生器10Aにおいて、ハウジング内部はガス供給装置94に接続されており、このガス供給装置94からハウジング内部に所定の高圧ガスが供給されるようにしてある。気流混合装置92において、混合容器96は、イオン発生器10の臨界オリフィスと、ナノ粒子供給装置98に接続されている。
【0024】
このような構成において、イオン発生器10Aでは、ガス供給装置94からハウジング内部に供給された原料ガスはコロナ放電によりイオン化された後、高速ジェットとなって吐出する。吐出した高速ジェットの分子イオンは、混合容器96に供給され、そこでナノ粒子供給装置98から供給されたナノ粒子と混合されてその表面に付着し、ナノ粒子に電荷を与える。したがって、イオンが付着したナノ粒子は、後に電界を利用して分級、移送ができる。
【0025】
(5)実施の形態4
図6は、イオン発生器10Aと、このイオン発生器10Aで得られたイオンを利用するナノ粒子堆積装置102を含む帯電ナノ粒子堆積システム100の構成を示す。このシステム100において、イオン発生器10Aは、堆積装置102の容器104に接続され、イオン発生器10Aで生成されたイオンが容器104に供給されるようにしてある。堆積装置102の容器104には、その上部と下部にそれぞれ電極106,108が配置されている。電極106,108には直流電源110が接続され、これらの間に電界が形成されている。下部の電極108は、例えば金属又は非金属の電界ナノ粒子堆積基板112を支持している。容器104はまた、ナノ粒子供給装置114に接続されており、上部の電極106の下方領域にナノ粒子が供給されるようにしてある。
【0026】
このような構成において、イオン発生器10Aから容器104に供給された分子イオンは容器104に供給され、そこでナノ粒子供給装置114から供給されたナノ粒子と混合されてその表面に付着し、ナノ粒子に電荷を与える。電荷が付与されたナノ粒子は、電極間の電界によって下方の電極108に向かって吸引され、この電極108に支持された堆積基板(非沈着部材)112に沈着する。したがって、このシステム100によれば、ナノ粒子を効率良く捕集して目的の場所に堆積又は移送することができる。
【0027】
なお、イオンがマイナス電荷を持っている場合、図示するように上方の電極106にはマイナス極が接続され、下方の電極108にはプラス極が接続される。イオンがプラスの電荷を持っている場合、電極106,108は逆の極が接続される。
【0028】
以上の説明では下方の電極108に基板を配置したが、これに代えて他の液体又はスラリー若しくはゲルを収容した容器を配置し、この液体又はスラリー若しくはゲルの表面にナノ粒子を堆積してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るイオン発生器の概略構成を示す断面図。
【図2】クラスターイオンとコロナ放電イオン等の可動性を示すグラフを示す図。
【図3】図1に示すイオン発生器の部分断面図。
【図4】イオン発生器と該イオン発生器で生成したイオンを利用するイオン化CVD成膜装置を含むシステムの概略構成図。
【図5】イオン発生器と該イオン発生器で生成したイオンを利用する気流混合装置を含むシステムの概略構成図。
【図6】イオン発生器と該イオン発生器で生成したイオンを利用する堆積装置を含むシステムの概略構成図。
【符号の説明】
【0030】
10:クラスターイオン発生器
10A:イオン発生器
12:ハウジング(容器)
14:外部空間
16:隔壁(第1の電極)
18:内部空間
20:臨界オリフィス
22:断熱部(断熱部材)
24:拡大管
26:針状電極(第2の電極)
28:高圧電源
36:クラスターイオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物質からなる分子イオンをナノ粒子の表面に付着させて該ナノ粒子を帯電させて帯電ナノ粒子を得ることを特徴とする帯電ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
イオン化装置10Aと、ナノ粒子供給装置94と、前記イオン化装置10Aとナノ粒子供給装置94に接続された混合容器96を有し、前記混合容器96内で前記ナノ粒子供給装置94から供給されるナノ粒子に前記イオン化装置10Aから供給される分子イオンを付着させて前記ナノ粒子で電荷を与えるシステム。
【請求項3】
前記容器104内に配置された一対の電極106,108と、前記一対の電極106,108の間に所定の電圧を印加し、前記分子イオンが付着したナノ粒子を前記一対の電極106,108の間に配置された被沈着部材112に向かって付勢する電界を形成する電源110を備えたことを特徴とする請求項2のシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物質からなるイオンをナノ粒子の表面に付着させることにより該ナノ粒子を帯電させて帯電ナノ粒子を得ることを特徴とする帯電ナノ粒子製造方法。
【請求項2】
イオン化装置10Aと、ナノ粒子供給装置98と、前記イオン化装置10Aとナノ粒子供給装置98に接続された混合容器96を有し、前記混合容器96内で前記ナノ粒子供給装置98から供給されるナノ粒子に前記イオン化装置10Aから供給されるイオンを付着させて前記ナノ粒子に電荷を与える帯電ナノ粒子製造システム。
【請求項3】
混合容器104内に配置された一対の電極106,108と、前記一対の電極106,108の間に所定の電圧を印加し、請求項2の帯電ナノ粒子製造システムで製造された帯電ナノ粒子を前記一対の電極106,108の間に配置された被沈着部材112に向かって付勢する電界を形成する電源110を備えたことを特徴とする帯電ナノ粒子堆積システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−216538(P2006−216538A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7389(P2006−7389)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【分割の表示】特願2002−135763(P2002−135763)の分割
【原出願日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】