説明

帯電ロール

【課題】優れた帯電性能を備え、長期にわたって良好な画像を得ることのできる帯電ロールを提供する。
【解決手段】軸体1と、上記軸体1の外周に形成される抵抗調整層2と、その外周に形成される表層塗膜10とを備えた帯電ロールであって、上記抵抗調整層2の表面が凹凸粗面に形成され、粗面形成用粒子11が、その一部を上記抵抗調整層2の表面の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層2の表面から突出させた状態で、上記表層塗膜10を介して抵抗調整層2に固着されており、上記表層塗膜10の厚みが4μm以下で、上記粗面形成用粒子11の表層塗膜からの理論露出率が50%以上に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンタ,ファクシミリ等の電子写真装置に用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真複写機による複写は、つぎのようにして行われている。すなわち、まず、感光ドラムを帯電させ、その感光ドラム表面に原稿像を、光学系を介して投射し、光が投射された部分の帯電を打ち消すことにより、静電潜像を形成する。つぎに、上記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成した後、このトナー像を、複写紙に転写して、複写画像を得るのである。
【0003】
上記静電潜像の形成に先立って感光ドラム表面を帯電させる方式としては、近年、帯電ロールによる帯電方式が多く採用されている。そして、上記帯電方式に用いられる帯電ロールとしては、例えば、軸体の外周に、導電性弾性体からなる抵抗調整層が形成され、さらにその外周に、塗膜により保護層を形成したものが知られている。
【0004】
上記保護層は、通常、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を主成分とする材料に導電剤を配合したものを、有機溶剤に溶解もしくは分散してコーティング液とし、これを、上記抵抗調整層の外周に、薄く塗工することによって得られる。しかし、上記コーティング液塗工時に、導電剤が沈殿する等の理由から、塗膜に含有される導電剤に偏りが生じ、場所によっては、導電剤を殆ど含まないスキン層が形成される場合がある。
【0005】
このように、保護層に、部分的にスキン層が形成されると、帯電むらが生じたり、ロールへの印加をオフにしてもロール表面に電荷が残留したりするため、耐久劣化後に画像の不具合を招きやすいという問題がある。また、帯電性能が不充分であると、この帯電ロールを組み込んだ電子写真複写機等における電源コストが高くなり、経済的に好ましくないという問題もある。
【0006】
そこで、このようなスキン層の形成を防止し、保護層表面に適度な凹凸を形成して帯電性能を向上させることが検討されている。例えば、図4に示すように、保護層3に、大粒径の粒子4と小粒径の粒子5の2種類の粒子を添加して、その表面に凹凸を形成したものが提案されている(例えば特許文献1参照)。なお、2は抵抗調整層(弾性層)である。
【特許文献1】特開2003−316111公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、大小2種類の粒子4、5を保護層3に含有させるには、保護層3の膜厚を比較的厚くせざるを得ず、表面抵抗と体積抵抗の差が大きくなるため、帯電性能、耐久劣化後の画像評価において、要求されるような優れた特性のものは得られていないのが実情である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、優れた帯電性能を備え、長期にわたって良好な画像を得ることのできる帯電ロールの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸体と、上記軸体の外周に、直接もしくは他の層を介して形成される抵抗調整層と、上記抵抗調整層の外周に形成される表層塗膜とを備えた帯電ロールであって、上記抵抗調整層の表面が凹凸粗面に形成され、粗面形成用粒子が、その一部を上記抵抗調整層表面の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層表面から突出させた状態で、上記表層塗膜を介して抵抗調整層に固着されており、上記表層塗膜の厚みが4μm以下で、上記粗面形成用粒子の表層塗膜からの理論露出率が50%以上に設定されている帯電ロールを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記抵抗調整層の表面粗さ(Ra)が0.5〜1.0μmに設定され、上記粗面形成用粒子の平均粒径が3〜6μmに設定されている帯電ロールを第2の要旨とし、上記抵抗調整層の表面粗さ(Ra)が1.0μm〜2.0μmに設定され、上記粗面形成用粒子の平均粒径が5〜8μmに設定されている帯電ロールを第3の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ね、その過程で、帯電ロールの帯電性能および耐久劣化後の画像評価を向上させるには、最外層である保護層の厚みをできるだけ薄くするとともに、感光ドラムと帯電ロールの外周面との接触面積を減少させ、その隙間において一定の放電領域を確保することが必要であるとの知見を得た。そこで、保護層の厚みをごく薄く設定することができ、しかも感光ドラムとの接触面積を減少させることのできる帯電ロールの表面構造について、さらに研究を重ねた結果、抵抗調整層の表面を、凹凸粗面に形成し、その上に、4μm以下のごく薄い表層塗膜を形成するとともに、その表層塗膜を介して、粗面形成用粒子を、その一部を上記抵抗調整層表面の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層表面から突出させた状態で固着させ、このときの粗面形成用粒子の表層塗膜からの理論露出率が50%以上となるよう設定すると、粗面形成用粒子によって均一な凹凸粗面が形成され、また、上記粗面形成用粒子と抵抗調整層凹部の底部との間に空隙が形成され、その空隙によって、放電領域がより大きくなるため、非常に均一で安定した帯電性能を備えた帯電ロールが得られることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の帯電ロールは、内側に設けられる抵抗調整層の表面を、凹凸粗面に形成し、その上に、4μm以下のごく薄い表層塗膜を形成するとともに、その表層塗膜を介して、粗面形成用粒子を、その一部を上記抵抗調整層表面の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層表面から突出させた状態で固着させ、このときの粗面形成用粒子の表層塗膜からの理論露出率が50%以上となるよう設定したものである。この構成によれば、粗面形成用粒子によって均一な凹凸粗面が形成され、また、上記粗面形成用粒子と抵抗調整層凹部の底部との間に空隙が形成されて放電領域が増大している。したがって、従来のような帯電むらが生じず、非常に均一で安定した帯電性能を備えた帯電ロールとなる。
【0013】
そして、本発明の帯電ロールを用いて得られる画像は、長期にわたって画像不具合を発生することなく、良好である。さらに、優れた帯電性能を備えているため、これを組み込んだ装置において、電源コストの低減化を実現することができる。
【0014】
なお、本発明の帯電ロールのなかでも、特に、上記抵抗調整層の表面粗さ(Ra)が0.5〜1.0μmに設定され、上記粗面形成用粒子の平均粒径が3〜6μmに設定されているもの、あるいは、特に、上記抵抗調整層の表面粗さ(Ra)が1.0μm〜2.0μmに設定され、上記粗面形成用粒子の平均粒径が5〜8μmに設定されているものは、とりわけ優れた帯電性能を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0016】
本発明の帯電ロールは、例えば、図1に示すように、軸体1の外周面に沿って抵抗調整層2が形成され、さらに上記抵抗調整層2の外周面に、表層塗膜10が形成された構成になっている。
【0017】
より詳しく説明すると、上記抵抗調整層2の表面は、その模式的な拡大断面図である図2に示すように、凹凸粗面に形成されており、その凹凸に沿って、非常に薄い表層塗膜10が形成されている。そして、上記表層塗膜10を介して、粗面形成用粒子11が、その一部を上記抵抗調整層2表面の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層2表面から突出させた状態で、抵抗調整層2に固着されている。
【0018】
上記帯電ロールの軸体1としては、特に限定されるものではなく、中実体であっても、中空円筒体であってもよい。そして、その形成材料についても、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属材料等があげられる。なお、必要に応じ、軸体1の表面に接着剤、プライマー等を塗布してもよい。また、接着剤、プライマー等には、必要に応じて導電化を行ってもよい。
【0019】
上記軸体1の外周面に形成される抵抗調整層2の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ヒドリンゴム(ECO等)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等があげられ、単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0020】
そして、上記抵抗調整層2の形成材料には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート,ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウム等の構造電荷特異性陰イオン、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤が、適宜添加される。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加してもよい。
【0021】
上記抵抗調整層2の形成材料は、例えば、その各成分をニーダー等の混練機によって混練することにより、調製することができる。
【0022】
また、上記抵抗調整層2の外周面に形成される表層塗膜10の形成材料としては、特に限定されるものではなく、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリルフッ素系樹脂、シリコーン変性アクリル系樹脂、フッ素化オレフィン系樹脂等、従来から帯電ロールの最外層(保護層)として用いられているものであれば、どのような種類であっても差し支えない。そして、これらは単独で用いても、二種以上を併用してもよい。また、導電性付与のため、カーボンブラック、金属酸化物、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸リチウム等の導電剤が、上記材料中に適宜添加される。さらに、必要に応じて、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤、オイル等を適宜に配合することができる。
【0023】
さらに、上記表層塗膜10を介して前記抵抗調整層2の表面に固着される粗面形成用粒子11も、その材質は特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、尿素樹脂等があげられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ただし、抵抗調整層2の凹凸粗面に、図2に示すように固着させるには、上記抵抗調整層2の凹凸粗面の凹凸の大きさに対し、適度の粒径に設定されていることが好ましく、しかもできるだけ粒径の揃ったものを用いることが望ましい。
【0024】
なお、上記表層塗膜10の形成材料は、有機溶剤に溶解され、これに、上記粗面形成用粒子11を分散することによりコーティング液として調製されるようになっている。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0025】
本発明の帯電ロールは、これらの材料を用いて、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0026】
まず、芯金となる軸体1を用意し、その外周面に接着剤を塗布し、抵抗調整層2形成用の金型内に装着する。そして、ニーダー等の混練機で混練した抵抗調整層2形成材料を、金型内に注型した後、金型を閉じて加熱処理(130〜200℃×20〜90分)して、抵抗調整層2を架橋硬化させる。そして、上記金型から脱型することにより、軸体1の外周面に抵抗調整層2が形成されたロールを取り出す。
【0027】
つぎに、上記ロールにおける抵抗調整層2の外周面に凹凸形状を付与して粗面化する。粗面化の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、研磨処理、ブラスト処理、レーザーエッチング、プラズマエッチング等があげられる。また、このように、抵抗調整層2の成形後、その表面を粗面化する方法以外に、例えば、抵抗調整層2を金型成形する際、予めその金型の内周面を、研磨等により粗面化しておき、これを抵抗調整層2の成形面に転写することにより、成形と粗面化を一工程で行うようにしてもよい。さらに、抵抗調整層2の形成材料に、予め粗面形成用粒子を配合しておき、上記粗面形成用粒子に由来する凹凸が、抵抗調整層2の表面に形成されるようにしてもよい。
【0028】
上記粗面化によって得られる抵抗調整層2の表面粗さ(Ra)は、表層塗膜10を介して粗面形成用粒子11を固着させることと、帯電性能とを考慮して、0.5〜2.0μmに設定することが好適である。
【0029】
なお、上記表面粗さ(Ra)は、JIS B0601:1994に従って求められるもので、接触式表面粗さ計(サーフコム480A、東京精密社製)を用い、下記の測定条件で測定される9点の測定値を平均した値である。
〔測定条件〕
触針径 :2μm
押し付け圧 :0.7mN
測定速度 :0.3mm/sec
測定倍率 :5000倍
カットオフ波長:0.8mm
測定長さ :2.5mm
測定個所 :軸方向3点×周方向3点の9点
【0030】
つぎに、上記粗面化された抵抗調整層2の外周面に、表層塗膜10形成用のコーティング液(粗面形成用粒子11を分散させたもの)を塗工する。塗工方法は、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来の方法が適用できる。そして、塗工後、乾燥(40℃×30分程度)および加熱処理(加硫処理、100〜200℃×20〜90分)を行うことにより、表層塗膜10を形成する。このようにして、図2に示すような、粗面形成用粒子11が、その一部を上記抵抗調整層2の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層2の表面から突出させた状態で、上記表層塗膜10を介して抵抗調整層2に固着された、特殊な構造の帯電ロールを作製することができる。
【0031】
なお、上記表層塗膜10の膜厚は、4μm以下となるよう設定しなければならない。すなわち、膜厚が4μmを超えると、得られる帯電ロール表面への残留電荷量が増えて応答性が悪くなり、帯電性能が下がるからである。
【0032】
そして、上記表層塗膜10からの粗面形成用粒子11の理論露出率が50%以上になるように、粗面形成用粒子11を、表層塗膜10を介して抵抗調整層2に固着させなければならない。すなわち、上記理論露出率が50%未満では、表層塗膜10の表面(=帯電ロール表面)から上に突出する粗面形成用粒子11の高さが低くなり、この粗面形成用粒子11の根元部と、抵抗調整層2表面の凹部との間に形成される空隙が小さくなり、この部分を放電領域として利用する効果が小さくなるからである。
【0033】
なお、上記粗面形成用粒子11の理論露出率は、下記の式(1)で求めることができる。
【0034】
【数1】

【0035】
また、上記表層塗膜10からの粗面形成用粒子11の理論露出率を50%以上にするには、表層塗膜10形成用の塗膜材料と粗面形成用粒子11を用いてコーティング液を調製する際、その組成および粗面形成用粒子11の大きさを適宜調製する必要がある。特に、形成用粒子11の粒径は、抵抗調整層2の表面粗さ(Ra)の程度も考慮して選択することが望ましい。ちなみに、抵抗調整層2の表面粗さ(Ra)が0.5〜1.0μmの場合、粗面形成用粒子11は、平均粒径が3〜6μmのものを用いることが好ましく、抵抗調整層の表面粗さ(Ra)が1.0〜2.0μmの場合、平均粒径が5〜8μmのものを用いることが好ましい。
【0036】
なお、本発明において、上記粗面形成用粒子11の平均粒径は、母集団から任意に抽出される試料を用いて導出される値である。また、粒子形状が真球状ではなく楕円球状(断面が楕円の球)等のように一律に粒径が定まらない場合には、最長径と最短径との単純平均値をその粒子の粒径とする。
【0037】
このようにして得られる帯電ロールは、内側に設けられる抵抗調整層2の表面が、凹凸粗面に形成され、その上に、4μm以下のごく薄い表層塗膜10が形成されており、その表層塗膜10を介して、粗面形成用粒子11が、その一部を上記抵抗調整層2表面の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層2表面から突出させた状態で固着されて、粗面形成用粒子11の表層塗膜10からの理論露出率が50%以上となるよう設定されている。このため、上記粗面形成用粒子11によって帯電ロール表面に均一な凹凸粗面が形成され、また、上記粗面形成用粒子11と抵抗調整層2凹部の底部との間に形成される空隙によって、放電領域がより大きくなるため、非常に均一で安定した帯電性能を備えたものとなる。
【0038】
したがって、上記帯電ロールを用いて得られる画像は、長期にわたって画像不具合を発生することなく、良好である。さらに、優れた帯電性能を備えているため、これを組み込んだ装置において、電源コストの低減化を実現することができる。
【0039】
なお、上記抵抗調整層2の厚みは、特に限定されるものではなく、要求される形態、特性に応じて、適宜に設定される。
【0040】
そして、本発明の帯電ロールは、図1に示すような2層構造のものに限定されるものでなく、例えば、軸体1と抵抗調整層2の間に、導電性弾性体層や軟化剤移行防止層等を、必要に応じて適宜設けることができる。
【0041】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例】
【0042】
〔実施例1〕
まず、下記のとおり、抵抗調整層形成材料と表層塗膜形成材料(組成イ)と粗面形成用粒子aとを準備した。そして、それらを用いて、後記の方法にしたがって、帯電ロールを作製した。
【0043】
〔抵抗調整層形成材料の組成〕
ヒドリンゴム(ダイソー社製、エピクロマーCG102 ) 100 重量部
ステアリン酸(花王社製、ルナックS30) 1 〃
酸化亜鉛2種 5 〃
ハイドロタルサイト(協和化学社製、DHT−4A) 3 〃
粉末イオウ(鶴見化学社製) 1.5 〃
加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーDM) 1.5 〃
〃 (大内新興化学工業社製、ノクセラーTS) 0.5 〃
イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート)1 〃
【0044】
〔表層塗膜形成材料の組成イ〕
ポリアミド樹脂(ナガセケムテックス社製、トレジンEF30T) 100重量部
イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート) 1 〃
メタノール/蒸留水=3/1の混合溶剤(有効成分が5重量%となるよう調製)
【0045】
〔粗面形成用粒子a〕
平均粒径8μmのウレタン粒子(大日精化社製、ダイミックビーズUCN5070D)
【0046】
〔帯電ロールの作製〕
まず、前記抵抗調整層形成材料を、バンバリーミキサーにて混練りして、成型用のゴム材料を得た。また、上記表層塗膜形成材料によって調製された液に、上記粗面形成用粒子であるウレタンビーズを、ポリアミド樹脂100重量部に対し30重量部となる割合で配合して分散させることにより、コーティング液を得た。
【0047】
そして、直径6mmの芯金を用意し、その外周面に接着剤を塗布した後、所定の金型内に装填し、金型内の中空部に、前記抵抗調整層形成材料を注型した。そして、金型を閉じて、加熱処理(一次加硫150℃×30分、二次加硫160℃×60分)を行うことにより加硫硬化させ、上記金型から脱型することにより、芯金の外周面に抵抗調整層が形成されたロール中間体を取り出した。なお、この抵抗調整層の厚みは1.5mmであった。
【0048】
そして、上記抵抗調整層の表面に対し、その表面粗さ(Ra)が1.5μmとなるよう研磨処理を行った後、その外周面に、前記コーティング液を、乾燥後の表層塗膜の厚みが2.0μmとなるようロールコート法により塗工した。その後、乾燥(40℃×30分)および加熱処理(120℃×30分)を行うことにより、表層塗膜を形成して、図1に示す2層構造の帯電ロールを作製した。
【0049】
〔実施例2〜11、比較例1〜3〕
上記実施例1とは異なる、下記の3種類の組成ロ〜ニからなる表層塗膜形成材料を用意した。また、上記実施例1とは異なる、後記の4種類の粗面形成用粒子b〜eを用意した。
【0050】
〔表層塗膜形成材料の組成ロ〕
NBR(アクリロニトリル量34%:JSR社製、N231H) 50重量部
レゾール型フェノール樹脂(住友デュレズ社製,スミライトレジンPR−175)
50重量部
イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート) 1 〃
MEK(有効成分が3重量%となるよう調製)
【0051】
〔表層塗膜形成材料の組成ハ〕
フッ素変性アクリル樹脂(大日本インキ化学工業社製、ディフェンサTR230K)
100重量部
イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート) 1 〃
MEK(有効成分が3重量%となるよう調製)
【0052】
〔表層塗膜形成材料の組成ニ〕
エチレンオキサイド含有光重合性モノマー(ポリエチレングリコールジアクリレート: 新中村化学工業社製) 40重量部
環状不飽和化合物エチレンオキサイド含有光重合性モノマー(ビスフェノールA エチ レンオキサイド変性ジアクリレート、m+n≒20:新中村化学工業社製)
60重量部
イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート) 3 〃
光重合開始剤(千葉スペシャリティーケミカルズ社製) 1 〃
MEK(有効成分が3重量%となるよう調製)
【0053】
〔粗面形成用粒子b〕
平均粒径4μmの多孔質球形シリカ(富士シリシア社製、サイロスフィアC−1504 )
【0054】
〔粗面形成用粒子c〕
平均粒径3μmのPMMA粒子(綜研化学社製、ケミスノーMX300)
【0055】
〔粗面形成用粒子d〕
平均粒径1.5μmのPMMA粒子(綜研化学社製、ケミスノーMX150)
【0056】
〔粗面形成用粒子e〕
平均粒径10μmの多孔質球形シリカ(富士シリシア社製、サイロスフィアC−151 0)
【0057】
そして、各帯電ロールの抵抗調整層の表面粗さ、表層塗膜の形成材料組成、塗膜厚み、粗面形成用粒子の種類等を変えることにより、後記の表1〜表4に示す構成的特徴を備えた10種類の実施例品(2〜11)と、3種類の比較例品(1〜3)を得た。なお、実施例9における表層塗膜形成時の加熱処理条件は160℃×30分、実施例10、実施例11における表層塗膜形成時の加熱処理条件は100℃×30分である。それ以外は、特に明記する以外は、各例とも同一形成材料、同一条件で作製されている。また、前記実施例1についても、後記の表1に併せて示した。
【0058】
このようにして得られた各帯電ロールについて、下記の方法にしたがって、その帯電性能評価と、耐久後の画像評価と、粒子脱落性評価とを行い、その結果を後記の表1〜表4に併せて示した。
【0059】
〔帯電性能評価〕
図3に示すように、実際の感光ドラム20に帯電ロール21を組み付け、帯電ロール21に、高圧電源22からアンプ23を介して−1.2kVの電圧を印加した。そして、上記感光ドラム20を1/4周だけ回転させた後のドラム電位量を、軸方向に移動して連続的にその表面電位を測定する高圧プローブ24を備えた電位測定器(図示せず)を用いて測定した。そして、下記の式(2)によって、電位量のばらつき(V)を算出した。そして、ばらつきが、6V未満の場合…◎、6V以上10V未満の場合…○、10V以上15V未満の場合…△、15V以上の場合…×として評価した。
【0060】
【数2】

【0061】
〔耐久画像評価〕
帯電ロールを、市販のレーザープリンタに組み込み、実際に1.8万枚のプリントを行った。そして、そのプリント画像を目視により観察し、プリント画像に問題がなく、細線にいたるまで鮮明にプリントされたものを◎、かすれやかぶり等がごくわずかに発生しているが実用上問題ないものを○、かすれやかぶり等がわずかに発生しており実用上気になるものを△、かすれやかぶり等が明らかに発生しており実用的でないものを×とした。なお、かすれとは、細線がとぎれたものをいい、かぶりとは、イメージのないところにトナーが飛んでいるものをいう。
【0062】
〔粒子脱落性評価〕
帯電ロールの表面に、0.1Nの押付荷重でコットンを押し付け、ロール表面を10回空拭きした。そして、上記空拭き前後における粗面形成用粒子の脱落の有無を顕微鏡(×400倍)で観察し、全く脱落がないものを◎、10%未満の脱落があったものを○、10%以上の脱落があったものを△として評価した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
上記の結果から、表層塗膜の膜厚と粗面形成用粒子の表層塗膜からの理論露出率が、本発明の特定範囲を満たす実施例品は、優れた帯電性能を備えており、耐久画像評価も高いことがわかる。一方、本発明の特定範囲から外れる比較例品は、いずれも実施例品に比べて、帯電性能および耐久画像評価に問題があることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の帯電ロールの一実施例を示す断面図である。
【図2】上記実施例の模式的な部分拡大断面図である。
【図3】帯電ロールの帯電特性評価方法の説明図である。
【図4】従来の帯電ロールの一例を示す模式的な部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 軸体
2 抵抗調整層
10 表層塗膜
11 粗面形成用粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、上記軸体の外周に、直接もしくは他の層を介して形成される抵抗調整層と、上記抵抗調整層の外周に形成される表層塗膜とを備えた帯電ロールであって、上記抵抗調整層の表面が凹凸粗面に形成され、粗面形成用粒子が、その一部を上記抵抗調整層表面の凹部内に嵌入させ他の部分を上記抵抗調整層表面から突出させた状態で、上記表層塗膜を介して抵抗調整層に固着されており、上記表層塗膜の厚みが4μm以下で、上記粗面形成用粒子の表層塗膜からの理論露出率が50%以上に設定されていることを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
上記抵抗調整層の表面粗さ(Ra)が0.5〜1.0μmに設定され、上記粗面形成用粒子の平均粒径が3〜6μmに設定されている請求項1記載の帯電ロール。
【請求項3】
上記抵抗調整層の表面粗さ(Ra)が1.0μm〜2.0μmに設定され、上記粗面形成用粒子の平均粒径が5〜8μmに設定されている請求項1記載の帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−225914(P2007−225914A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47176(P2006−47176)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】