説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】帯電部材と電子写真感光体を長期間当接放置した場合に、Cセット画像の発生を抑制し、かつ帯電音を抑制する。
【解決手段】導電性基体上に一層以上の弾性体層を有する帯電部材であって、該弾性体層は熱可塑性樹脂をシェルとする中空粒子を含有する多孔質体であって、該シェルは、ビニル基またはビニル重合体の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造を有する特定の化合物を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置(以下、「電子写真装置」という)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置の接触帯電用の帯電部材として、特許文献1および特許文献2には、弾性体層として多孔質体を備えた帯電ローラが開示されている。
【0003】
しかしながら、このような弾性体層に多孔質体を用いた帯電ローラは、以下に挙げるCセット画像が発生する場合があった。帯電ローラが電子写真感光体と当接した状態で長期間放置された場合、帯電ローラは、電子写真感光体との当接部で歪み、半永久的に変形するいわゆる圧縮永久歪み(以下、「Cセット」という)が生じる場合がある。放置された環境が高温高湿であると、歪み量はより顕著になる。このCセットが発生した帯電ローラを用いて画像の出力を行った場合、Cセット部に対応した位置において、長手方向の横黒スジ及び/又は横白スジといった画像濃度ムラが発生することがある。これがいわゆる「Cセット画像」と呼ばれるものである。
【0004】
また、弾性体層に多孔質体を用いた帯電ローラが電子写真感光体と当接した状態で長期間放置された場合、この帯電ローラを用いて画像の出力を行うと、帯電音が増大することがあった。ここで、帯電音とは、電圧の印加方式としてAC帯電方式を用いた場合に、帯電ローラと電子写真感光体との間で発生する振動に起因する音である。かかる課題に対して、特許文献3には、帯電ローラの弾性体層中にシリコーンゴムの球状中空粒子を使用することが開示されている。しかしながら従来のシリコーンゴムを使用したものではCセット画像の発生抑制効果、及び帯電音の抑制効果は十分ではなかった。
【0005】
近年、電子写真装置に対して、より一層の高寿命化、高機能化が要求されている。それに伴い、Cセット画像を改善すること、帯電音を抑制することは大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−258524号公報
【特許文献2】特開2004−240357号公報
【特許文献3】特開2001−64434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子写真装置の帯電部材において、帯電部材と感光体を長期間当接放置した際に、Cセット画像の発生を抑制でき、かつ、帯電音を抑制できる帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の帯電部材は、導電性基体および弾性体層を有する帯電部材であって、該弾性体層は、熱可塑性樹脂と下記式(1)で示される構成単位を有する化合物とを含むシェルを有する中空粒子を含有している多孔質体であることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは下記式(2)で表わされる構造を有する基である。
【0011】
【化2】

【0012】
式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。aは0または1である。E1、E2およびE3は、各々独立に下記式(3)で表わされる基である。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
式(6)〜式(8)中、R8、R9およびR11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。
【0017】
【化6】

【0018】
式(3)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。Z1は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。
【0019】
R3、R4、R6およびR7は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R5は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0020】
Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
式(15)〜式(17)中、R15、R16およびR17は、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは、0以上3以下の整数である。
【0025】
【化10】

【0026】
式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【0027】
【化11】

【0028】
式(19)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および上記式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。R19、R20、R22およびR23は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R21は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0029】
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、式(18)で表わされる基および式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0030】
式(3)においてXが式(19)で表わされる基である場合における式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または式(18)で示す基である。
【0031】
【化12】

【0032】
式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【0033】
【化13】

【0034】
式(21)中、R25、R26およびR27は、各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0035】
また本発明は、前記の帯電部材と該帯電部材により帯電可能なように配置された電子写真感光体とが一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジである。更に本発明は、前記の帯電部材と、該帯電部材によって帯電可能なように配置された電子写真感光体とを有することを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の帯電部材は、電子写真感光体と長期間当接放置後に発生する、帯電部材の歪み量(以下「Cセット量」という)を低減することが可能であり、これによりCセット画像の発生を抑制することができる。また、本発明の電子写真装置は、帯電部材が電子写真感光体と当接した状態で長期間放置されるような場合においても、画像出力時の帯電音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る帯電部材(ローラ形状)の断面図である。
【図2】本発明に係る帯電部材(平板形状)の断面図である。
【図3】本発明に係る帯電部材(ベルト形状)の断面図である。
【図4】帯電ローラの電気抵抗測定器の概略図であり、図4(a)は測定前の状態、 図4(b)測定時の状態を示す。
【図5】帯電ローラの表面層の膜厚の測定箇所を示す図であり、図5(a)は軸方向 から見た断面図、図5(b)は軸方向に垂直な方向から見た断面図である。
【図6】本発明に係る電子写真装置の一実施形態の概略断面図である。
【図7】本発明に係るプロセスカートリッジの一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の帯電部材は、導電性基体上に一層以上の弾性体層を有し、該弾性体層は、熱可塑性樹脂をシェルとする中空粒子を含有する多孔質体である。そして、該シェルは下記式(1)で表わされる構成単位を有する化合物を含むことを特徴としている。
【0039】
前述の弾性体層に多孔質体を用いた帯電ローラにおいてCセット画像が発生することについては、本発明者らは以下のように考察している。帯電ローラが電子写真感光体と当接した状態で長期間放置され、その後当接状態から開放された場合、弾性体層の復元力により変形から回復しようとする。しかし、化学発泡剤を用いて多孔質化した弾性体層を有する帯電部材は、弾性体層の発泡に由来する中空部が復元力を有していない。そのため、変形に対して不利であり、Cセットが発生し、その結果Cセット画像が発生するものと考える。また、弾性体層に熱可塑性樹脂をシェルとする発泡中空粒子を含有させた弾性体層を有する帯電部材は、熱可塑性樹脂の弾性により、弾性体層の発泡に由来する中空部がある程度の復元力を有している。しかし、それでも高温高湿下で電子写真感光体と当接した状態で長期間放置されることにより、熱可塑性樹脂のシェルが吸水する。そのため、中空部の復元力が低下して、Cセットが発生し、Cセット画像が発生するものと考える。
【0040】
また、帯電ローラが電子写真感光体と当接した状態で長期間放置されるような場合において、画像出力時の帯電音が増大することについては、本発明者らは以下のように考察している。前述したように、帯電音は帯電ローラと電子写真感光体との間で発生する振動に起因するものと考えられている。特許文献1または2に記載されている多孔質体を用いることで、多孔質部、すなわち弾性体層の中空部が振動を抑制し、帯電音の低減がなされるものと考えられる。しかし、高温高湿下で電子写真感光体と当接した状態で長期間放置されることにより、上述のCセット画像の発生理由と同様の理由により、弾性体層の中空部の復元力が低下する。すなわち、中空部の振動抑制効果が低減される。その結果、帯電音が増大するものと考えられる。
【0041】
これらの課題を解決するため、本発明者らは、熱可塑性樹脂をシェルとする中空粒子を、式(1)で表わされる構成単位を有する化合物で被覆させることにしたものである。式(1)で表わされる構成単位を有する化合物は、ビニル基、もしくは、ビニル化合物の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造(ポリシロキサン構造を核とし、シロキサン結合とシルアルキレン結合が交互に配列した高分岐構造)を有するバルキーな構造を持っている。この特異的な構造により、熱可塑性樹脂をシェルとする中空粒子の吸水が抑制され、復元力の低下を抑制することができる。これにより、Cセット量を減少させることが可能になる。その結果、Cセット画像の発生を抑制でき、帯電音を抑制することが可能になったと考察している。
【0042】
<帯電部材>
帯電部材はローラ形状だけでなく、平板形状、ベルト形状でも構わない。必要に応じて、弾性体層の上に表面層を有していても構わない。図1〜図3は本発明の帯電部材の一例である。図1の帯電部材は、導電性基体、弾性体層、表面層からなる帯電ローラである。図2の帯電部材は、導電性基体、弾性体層、表面層からなる平板形状の帯電部材である。図3の帯電部材は、導電性基体、弾性体層、表面層からなるベルト形状の帯電部材である。
【0043】
導電性基体と弾性体層は、接着剤を介して接着してもよい。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電材を含有させることができる。接着剤のバインダーとしては、公知の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用できる。また、接着剤に導電性を付与するための導電材としては、後述する導電材から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて、用いることができる。
【0044】
本発明の帯電ローラは、電子写真感光体の帯電を良好なものとするため、電気抵抗値が、23℃、50%RHの環境中において、1×102Ω以上、1×1010Ω以下であることがより好ましい。図4に帯電ローラの電気抵抗値の測定法を示す。導電性基体1の両端を、荷重のかかった軸受け33により、感光体と同じ曲率の金属製円柱32に平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により金属製円柱32を回転させ、当接した帯電ローラ5を従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加する。この時に流れる電流を電流計35で測定し、帯電ローラの電気抵抗値を計算する。本発明において、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secとされる。
【0045】
本発明の帯電ローラは、表面の十点平均粗さRz(μm)が2≦Rz≦80であり、表面の凹凸平均間隔Sm(μm)が15≦Sm≦200であることがより好ましい。帯電ローラの表面粗さRz、凹凸平均間隔Smをこの範囲とすることにより、帯電ローラと電子写真感光体との接触状態をより安定にすることができる。測定は、JIS B0601−1994表面粗さの規格に準じて、表面粗さ測定器「SE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。無作為に帯電部材の6箇所を選んで測定し、その平均値とする。尚、測定条件は以下の通りである。
カットオフ値:0.8mm、
フィルタ:ガウス、
予備長さ:カットオフ×2、
レベリング:直線(全域)、
評価長さ:8mm。
【0046】
<導電性基体>
本発明の帯電部材に用いられる導電性基体は、導電性を有し、その上に設けられる弾性体層等を支持する機能を有する。材質としては、金属や合金が挙げられる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理等を施してもよい。さらに、導電性基体として、樹脂製の基材の表面を金属等で被覆して表面導電性としたものや、導電性樹脂組成物から製造されたものも使用可能である。
【0047】
<弾性体層>
本発明の帯電部材に用いられる弾性体層は、熱可塑性樹脂をシェルとする中空粒子、添加剤、バインダー等からなる。弾性体層は、熱可塑性樹脂をシェルとする中空粒子を含有する多孔質体であり、シェルは式(1)で表わされる構成単位を有する化合物(以下「本発明の化合物」という場合がある)を含んでいる。シェルは本発明の化合物によって被覆されている構造であっても構わない。
【0048】
【化14】

【0049】
式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは式(2)で表わされる構造を有する基である。式(1)で表わされる構成単位を有する化合物は、ビニル基またはビニル重合体の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造を有する。式(1)で示すR1としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基等が例示される。
【0050】
【化15】

【0051】
式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。この中でも、下記式(6)、式(7)または式(8)で示される構造のうちの少なくとも1つであることが更に好ましい。aは0または1である。
【0052】
【化16】

【0053】
【化17】

【0054】
【化18】

【0055】
式(6)〜式(8)中、R8、R9およびR11は、各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基、またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。これらの構造とすることにより、化合物の安定性を高めることが可能となる。
【0056】
R8及びR9としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示され、この中でも、メチレン基、プロピレン基がより好ましい。R10としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示され、これらの中でもメチル基がより好ましい。R11としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が例示され、これらの中でもエチレン基がより好ましい。
【0057】
式(2)中、E1、E2およびE3は、各々独立に下記式(3)で表わされる基である。
【0058】
【化19】

【0059】
式(3)中、kは0または1である。また、hは0以上3以下の整数である。Z1は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基、および式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。この中でも、炭素原子数2以上6以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基、式(15)〜式(17)で示される基がより好ましい。エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基が例示される。これらの中でも、エチレン基、メチルエチレン基、ヘキシレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基が更に好ましい。
【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
式(15)〜式(17)中、R15、R16、およびR17は、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。
【0064】
式(3)においてR3、R4、R6およびR7は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。これらの中でもメチル基が更に好ましい。R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または式(21)で示される基である。
【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。式(21)中、R25、R26およびR27は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0068】
式(3)中、Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0069】
【化25】

【0070】
式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。具体例としては、以下のものが挙げられる。メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、tert−アミル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシルのようなアルキル基、フェニル基、ベンジル、メチルベンジルのようなアリールアルキル基、o−トルイル、m−トルイル、p−トルイル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、o−エチルフェニル、m−エチルフェニル、p−エチルフェニルのようなアルキルアリール基。また以下のものが挙げられる。エテニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1,3−ブタジニエル、1−ペンテニル、1−シクロペンテニル、2−シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、1−シクロヘキセニル、2,4−シクロヘキサジエニル、2,5−シクロヘキサジエニル、2,4,6−シクロヘプタトリエニル、5−ノルボルネン−2−イルのようなビニル基、アリル基。
【0071】
【化26】

【0072】
式(19)中、rは、0または1であり、sは、0以上3以下の整数である。Z2は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。R19、R20、R22およびR23は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R21は、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、式(20)または式(21)で示される基である。
【0073】
X2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、式(18)で表わされる基および式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0074】
式(3)においてXが式(19)で表わされる基である場合における式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または式(18)で示す基である。
【0075】
ここで、式(3)において、k=0であって、Xが式(19)であり、かつ、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1であるときの式(3)の構造の一例を下記式(22)に示す。また、当該繰り返しの数が3であるときの式(3)の構造の一例を下記式(23)に示す。
【0076】
【化27】

【0077】
【化28】

【0078】
前記式(3)、式(15)〜式(21)中の各々の基は、E1、E2およびE3において、前記定義を満たしていれば各々異なる基であってもよい。例えば、E1を構成する式(3)中のZ1と、E2を構成する式(3)中のZ1は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基、および式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基であれば、異なっていてもよい。
【0079】
式(3)において、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。kおよびhは、0であることが更に好ましい。また、hが0であり、Xが前記式(19)で表わされる基であって、式(19)中、rは0であり、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1以上3以下であることが更に好ましい。これらにより、前述した中空粒子の吸水抑制効果を更に発揮させることができる。
【0080】
本発明の化合物は、式(1)で示される構成単位を有すると共に、更に下記式(4)で示される構成単位を有していることがより好ましい。
【0081】
【化29】

【0082】
本発明の化合物が、式(4)に示されるようなビニル系単量体単位との共重合体の構造を有することにより、前述した中空粒子の吸水抑制効果を更に発揮させることができる。
【0083】
式(4)においてR2は、水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。R2としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基等が例示される。Jは、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、下記式(9)、式(10)、または式(11)で示される基である。この中でも、式(9)、式(10)または式(11)で示される構造であることがより好ましい。
【0084】
【化30】

【0085】
【化31】

【0086】
【化32】

【0087】
式(9)および式(10)中、R12及びR13は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、または前記式(11)で示される基である。式(11)中、R14は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。tは、1以上3以下の整数である。
【0088】
本発明の化合物の分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量で10000以上のものが好ましく、より好ましくは20000〜2000000の範囲である。分子量をこの範囲とすることで、前述した中空粒子の吸水抑制効果をより発揮させることができる。
【0089】
[本発明の化合物の製造方法]
本発明の化合物は、下記式(12)で示される化合物を重合することにより得ることができる。
【0090】
【化33】

【0091】
式(12)中、R1、A、a、E1、E2およびE3は、前記式(1)および式(2)において示したものと同じである。式(12)で示される構造の一例を、式(13)および式(14)に示す。
【0092】
【化34】

【0093】
【化35】

【0094】
更に、本発明の化合物は、式(12)で示される化合物と、下記のビニル基を有する化合物を重合反応させることにより得ることができる。
【0095】
ビニル基を有する化合物としては、ラジカル重合性のビニル基を有しており、以下のものが挙げられる。低級アルキル(メタ)アクリレート、高級アルキル(メタ)アクリレート、低級脂肪酸ビニルエステル、高級脂肪酸エステル、芳香族ビニル型単量体、アミド基含有ビニル型単量体、水酸基含有ビニル型単量体、フッ素含有ビニル型単量体、エポキシ基含有ビニル型単量体、カルボン酸含有ビニル型単量体、エーテル結合含有ビニル型単量体、不飽和基含有シリコ−ン化合物、ラジカル重合性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩、スルホン酸基を有するラジカル重合性不飽和単量体、およびそれらのアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸から誘導される4級アンモニウム塩、3級アミン基を有するアルコールのメタクリル酸エステル、およびそれらの4級アンモニウム塩等。この中でも、好ましくは低級ないし高級(メタ)アクリレートであり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、フッ素置換アルキル(メタ)アクリレート類、エポキシ基含有(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0096】
また多官能の化合物も使用可能である。例えば、(メタ)アクリロイル基含有単量体、不飽和基含有シリコ−ン化合物等が挙げられる。また、ラジカル重合性不飽和基とケイ素原子結合加水分解性基を有するシリコーン化合物を使用できる。ラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基含有有機基、(メタ)アクリルアミド基含有有機基、スチリル基含有有機基または炭素原子数2〜10のアルケニル基、ビニロキシ基やアリロキシ基などが挙げられる。ケイ素原子結合加水分解性基としては、ハロゲン基、アルコキシル基、アセトキシ基などが挙げられ、具体的にはオルガノシラン化合物が挙げられる。
【0097】
また、式(12)で示される化合物と、上記ビニル基を有する化合物との混合比率を調整することにより、本発明の化合物中における式(1)で示される繰り返し単位の含有量を調整することができる。
【0098】
本発明の化合物を得るための重合法としては、ラジカル重合法やイオン重合法が使用される。この中でも、ラジカル重合法がより好ましく、ラジカル重合法の中でも、溶液重合法が更に好ましい。溶液重合は、溶媒中で、式(12)で示される化合物のみ、あるいは、式(12)で示される化合物とビニル基を有する化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下、50℃から150℃の温度条件下で反応させることにより行われる。
【0099】
溶媒としては以下のものが用いられる。ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のオルガノシロキサンオリゴマー等。
【0100】
ラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル重合法に使用される従来公知の化合物が用いられ、具体的には以下のものが挙げられる。2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾビス系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等。このラジカル重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体の合計を100質量部とした時、0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0101】
また、重合に際しては連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤として具体的には以下のものが挙げられる。2−メルカプトエタノール、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピル基を有するポリジメチルシロキサン等のメルカプト化合物、塩化メチレン、クロロホルム、臭化ブチル、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化物等。好ましくは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。このような連鎖移動剤の配合量は、単量体の合計を100質量部とした時、好ましくは、0.001〜15質量部、さらに好ましくは、0.01〜10質量部である。なお、本発明の化合物を製造する場合、重合後、加熱下、減圧処理して、残存する未反応のビニル系化合物を除去することが好ましい。
【0102】
[中空粒子]
帯電部材の弾性体層は、熱可塑性樹脂をシェルとする中空粒子を含有する多孔質体である。多孔質体を形成するための中空粒子としては、粒子の内部に気泡を有する粒子を用いることができる。また、粒子の内部に内包物質を含み、熱を加えることにより内包物質が膨張し、中空粒子となるいわゆる熱膨張性マイクロカプセルを用いることができる。熱膨張性マイクロカプセルを用いた場合、弾性体層の加硫時の熱でシェルとなる熱可塑性樹脂が膨張する。成形時の温度条件を適切に制御することによって、カプセルが溶融したり破裂することなくシェル構造を維持した状態で中空粒子を製造することができる。内包物質としては、中空粒子のシェルの軟化点以下の温度でガスになって膨張するものとして飽和炭化水素を用いることができるが、これに限定されない。
【0103】
この熱膨張性マイクロカプセル用の熱可塑性樹脂としては、例えば以下の公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル酸樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、メタクリロニトリル樹脂、アクリル酸樹脂、アクリル酸エステル樹脂類、メタクリル酸エステル樹脂類等。これら熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上用いることができる。更に、これら熱可塑性樹脂の単量体を共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0104】
この中でも、熱可塑性樹脂のシェルの吸水による中空部の復元力の低下を抑制させるために、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル酸樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これらの熱可塑性樹脂も、単独または2種以上用いることができ、これら熱可塑性樹脂の単量体を共重合させた共重合体を用いることもできる。熱膨張性マイクロカプセルは、懸濁重合法、界面重合法、界面沈殿法、液中乾燥法といった公知の製法により製造することができる。
【0105】
弾性体層中の中空粒子の平均粒径は、特に限定はなく、好ましくは1〜1000μm、特に好ましくは20〜200μmである。また、この中空粒子のシェルの厚みは、特に限定はなく、好ましくは0.01〜10μm、特に好ましくは0.1〜10μmである。
【0106】
中空粒子の平均粒径の測定方法として、弾性体層の任意の点を500μmに亘って、20nmずつ集束イオンビーム(商品名:FB−2000C、日立製作所社製)にて切り出し、その断面画像を撮影する。そして同一の中空粒子を撮影した画像を組み合わせて立体像を算出する。中空粒子の立体像からゴム粒子の投影面積を求め、次に、この面積と等しい面積を持つ円の直径を中空粒子の粒径とする。同様に別の中空粒子の断面投影面積から、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求め、これらの円の直径の算術平均を平均粒径とする。このような作業を視野内の中空粒子10個について行う。そして、同様の測定を帯電部材の長手方向10箇所について行い、得られた合計100個の平均値を算出し、平均粒径とする。
【0107】
シェルの厚さの測定方法は、特に限定されないが、光学顕微鏡、電子顕微鏡等の観測装置で断面を観察し、中空粒子の粒径、及びシェルの厚さを測定して、その測定値の算術平均によって求めることができる。
【0108】
熱膨張性マイクロカプセルに、本発明の化合物を含有させる方法としては、湿式処理、乾式処理等公知の処理方法が使用できる。湿式処理を行う際には、熱膨張性マイクロカプセル100質量部に対し、本発明の化合物が10〜100質量部、更には5〜60質量部含有されている溶液を用いて処理を行うことが好ましい。本発明の化合物の含有量をこの範囲とすることで、本発明の効果を一層発揮させることができる。
【0109】
本発明の弾性体層には、導電性を発現させるため、公知の導電材を含有させてもよい。導電材としては、イオン導電材、電子導電材が挙げられる。イオン導電材としては、無機イオン物質、陽イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、第四級アンモニウム塩、有機酸リチウム塩等公知の材料が挙げられ、単独又は2種類以上を組み合わせて使用できる。電子導電材としては、金属微粒子、金属酸化物、あるいはこれらの表面を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子、カーボンブラック、及び、カーボン系微粒子等の公知の材料が挙げられる。これらの導電材も、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0110】
弾性体層に添加する導電材の添加量は、後述するバインダー100質量部に対して2〜200質量部、好ましくは5〜100質量部の範囲が妥当である。また、導電材は、必要に応じ公知の方法によりその表面を表面処理してもよい。
【0111】
本発明の弾性体層に用いるバインダーには、公知のゴムが使用できる。例えば、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴム等が挙げられる。合成ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム及びフッ素ゴム等が使用できる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0112】
本発明の弾性体層は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のフィラーを含有してもよい。フィラーは無機化合物及び有機化合物からなる粒子であり、前述した電子導電材、及び絶縁性粒子が挙げられる。絶縁性粒子としては、金属酸化物、複合金属酸化物、無機酸化物、複合無機酸化物、高分子化合物、有機金属化合物及び有機金属塩等の粒子が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
弾性体層の体積抵抗率は、23℃、50%RH環境下で測定して、102Ω・cm以上109Ω・cm以下であることが好ましい。また、体積抵抗率を調整するため、前記導電材を適宜添加することができる。
【0114】
また、弾性体層には、硬度等を調整するために、軟化油、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。可塑剤等の配合量は、弾性体層の材料100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは3〜20質量部である。可塑剤としては、高分子タイプのものを用いることがより好ましい。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。
【0115】
更に、弾性体層には、種々な機能を付与する材料を適宜含有させてもよい。これらの例として、老化防止剤、充填剤等を挙げることができる。
【0116】
弾性体層の硬度は、マイクロ硬度(MD−1型)で70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。マイクロ硬度(MD−1型)が70°を超えると、帯電部材と感光体との間のニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる場合がある。なお、「マイクロ硬度(MD−1型)」とは、アスカー マイクロゴム硬度計MD−1型(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した帯電部材の硬度である。具体的には、常温常湿(23℃、55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電部材に対して該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
【0117】
弾性体層の体積抵抗率は、弾性体層に使用するすべての材料を厚さ1mmのシートに成型し、両面に金属を蒸着して電極とガード電極を形成して得た体積抵抗率測定試料を用いて、後述する表面層の体積抵抗率の測定方法と同様にして測定できる。
【0118】
弾性体層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0119】
[弾性体層の形成]
弾性体層の形成方法としては、本発明の構成を満たす方法であれば、公知の方法を用いることができる。
【0120】
例えば、弾性体層の原料組成物を、導電性基体に接着又は被覆して帯電部材予備成形体を作製する。その後、この予備成形体を円筒状のキャビティを有する円筒型または割型内に設置して加熱発泡させ、所定の寸法を有する帯電部材を得る方法がある。また、前記円筒型内に、弾性体層用の原料組成物と導電性基体を設置してから加熱架橋させ、所定の外径寸法を有する帯電部材を得る方法がある。さらに、前記予備成形体を熱風炉などの高温雰囲気中にて自由発泡させた後に、研磨加工を施し所定の外径寸法を有する帯電部材を得る方法がある。研磨加工を行う円筒研磨機としては、トラバース方式のNC円筒研磨機、プランジカット方式のNC円筒研磨機等が挙げられる。
【0121】
帯電部材予備成形体を作製する方法としては、例えばクロスヘッドを備えた押出機を用いて、導電性基体と弾性体層用の原料組成物を一体的に押出して作製する方法が挙げられる。クロスヘッドとは、電線や針金の被覆層を構成するために用いられる、押出機のシリンダ先端に設置して使用する押出金型である。
【0122】
ゴム弾性材料に導電材、絶縁性粒子及び充填剤等を分散して原料組成物を調製する方法としては、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混合するなど、公知の方法が使用できる。
【0123】
<表面層>
本発明の帯電部材には、表面層を形成してもよい。表面層に用いるバインダー樹脂としては、公知のバインダー樹脂を採用できる。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が使用できる。例としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。またこれらの樹脂の単量体を共重合させた共重合体として用いても良い。
【0124】
表面層の体積抵抗率は、帯電部材の電気抵抗値を前記範囲とするために、23℃、50%RH環境において、1×103Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下であることが好ましい。表面層の体積抵抗率は、上述した導電材により調整できる。これら導電材の添加量は、バインダー100質量部に対して1〜200質量部、好ましくは2〜100質量部である。
【0125】
表面層の体積抵抗率は、以下のようにして求める。まず、ローラから表面層を剥がし、縦5mm、横5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し測定用サンプルを得る。あるいはアルミシートの上に塗布して表面層塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルについて微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加する。そして、30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
【0126】
表面層には、本発明の効果を損なわない範囲で他の粒子を含有させることができる。他の粒子としては、絶縁性粒子が挙げられる。絶縁性粒子は1種を使用しても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、表面処理、変性、官能基や分子鎖の導入、表面処理等を施してもよい。
【0127】
表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。なお、表面層の膜厚は、図5の(a)及び(b)に示す位置でローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0128】
また、表面層には、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、前述した表面加工処理や表面改質処理が挙げられる。
【0129】
[表面層の形成]
表面層は、静電スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法により形成することができる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆することにより形成することもできる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。
【0130】
塗布法によって層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダーを溶解することができる溶剤であればよい。具体的には、アルコール類、ケトン類、アミド類、エーテル類、エステル類、芳香族化合物等が挙げられる。塗布液に、バインダー、導電材及び絶縁性粒子等を分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等の公知の溶液分散手段が使用できる。
【0131】
<電子写真装置>
本発明に係る電子写真装置は、帯電部材と、該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とを有することを特徴とする電子写真装置であって、帯電部材が上記の帯電部材である。
【0132】
本発明の帯電部材を備える電子写真装置の一例の概略構成を図6に示す。この電子写真装置は、感光体、感光体を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置等から構成されている。
【0133】
感光体4は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置は、感光体4に帯電可能なように配置されている帯電ローラ5を有する。ここでは、帯電ローラ5は、所定の押圧力で感光体に当接させられることにより、感光体4が帯電可能にさせられている。帯電ローラ5は、感光体の回転に従い回転する従動回転を行い、帯電用電源19から所定の直流電圧、若しくは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。
【0134】
感光体4に静電潜像を形成する潜像形成装置11は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置は、感光体4に近接又は接触して配設される現像ローラ6を有する。感光体の帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0135】
転写装置は、接触式の転写ローラ8を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写材7に転写する。転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
【0136】
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。定着装置9は、加熱されたローラ等で構成され、転写されたトナー像を転写材7に定着し、機外に排出する。
【0137】
<プロセスカートリッジ>
本発明に係るプロセスカートリッジは、帯電部材と該帯電部材により帯電可能なように配置された電子写真感光体とが一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、該帯電部材が上記の帯電部材である。帯電可能なような配置の態様としては、例えば、帯電部材と電子写真感光体とが接触して配置された状態などが挙げられる。感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を一体化し、電子写真装置に着脱可能に設計されたプロセスカートリッジ(図7)を用いることもできる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0139】
<製造例>
製造例1〜25は、本発明の化合物1〜25の製造例である。製造例26〜34は、熱膨張性マイクロカプセル1〜9の製造例である。製造例35〜133は、上記熱膨張性マイクロカプセル1〜9を用いた、熱膨張性マイクロカプセル10〜108の製造例である。製造例134および135は、中空粒子を用いた、シリコーンゴム中空粒子2または3の製造例である。
【0140】
<製造例1> 化合物1の作製
攪拌機、冷却器および温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、溶媒として、エタノール300質量部を投入した。攪拌下、温度を80℃に保ち、窒素ガスを通しながら、平均分子式(A)で示す化合物90質量部、スチレン40質量部、メチルメタクリレート30質量部、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5量部の混合物を1時間かけて滴下した。さらに、80℃で50時間重合反応を行った。エタノールの一部を減圧除去した後、残った溶液を多量のメタノール中に投入して、攪拌、静置し沈殿物を得た。沈殿物を減圧乾燥し、化合物1を得た。
【0141】
29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、化合物1は、各単量体の炭素原子間の二重結合が開裂した構造である、式(A−1)、式(A−2)および式(A−3)で示されるユニットを有していた。また、化合物1は、化合物全体に対し、式(A−1)のユニットを8.79%有しており、前記式(1)中のnは約190、前記式(4)中のmは約1920、前記式(19)で示す構造の繰返し数は1であった。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は約450000であった。
【0142】
【化36】

【0143】
【化37】

【0144】
【化38】

【0145】
【化39】

【0146】
<製造例2〜25> 化合物2〜25の作製
Si含有化合物として、平均分子式(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)または(I)で示されるいずれかの化合物を用い、各単量体の種類と使用量、ラジカル重合開始剤(α,α’−アゾビスイソブチロニトリル)の使用量、および反応時間を表1に示す条件に変更したこと以外は、製造例1と同様に重合反応を行い化合物2〜25を得た。これらの各化合物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、Si含有化合物の炭素炭素間の二重結合が開裂したユニットの存在量(質量%)、式(1)中のn、式(4)中のmおよび、式(19)で表わされる基の繰返し数は、表1の値であった。また、ポリスチレン換算重量平均分子量は表1の値であった。
【0147】
【化40】

【0148】
【化41】

【0149】
【化42】

【0150】
【化43】

【0151】
【化44】

【0152】
【化45】

【0153】
【化46】

【0154】
【化47】

【0155】
<製造例26> 熱膨張性マイクロカプセル1の作製
反応容器に、イオン交換水800質量部、コロイダルシリカ20%水溶液100質量部及びポリビニルピロリドン0.2質量部、1M水酸化ナトリウム0.8質量部を添加し、水性混合液を調製した。次いで、原料モノマーとしてアクリロニトリル100質量部と、内包物質としてノルマルオクタン25質量部、重合開始剤としてジクミルパーオキシド1.5質量部、架橋物質としてメチルメタクリレート1.0質量部からなる油性混合液を調製し、上記水性混合液に添加した。この混合液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した反応容器に投入し、0.2MPaの圧力下で加圧しながら60℃で20時間重合反応させた。得られた反応生成物を、ろ過、洗浄し、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル1を得た。マイクロカプセル1の体積平均粒径は30μmであった。
【0156】
<製造例27> 熱膨張性マイクロカプセル2の作製
反応容器に、イオン交換水100質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1質量部を添加し、水性混合物を調製した。次に、融解させたパラフィンワックス(融点18℃)100質量部、塩化ビニル50質量部、n−ブチルアクリレート50質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート1質量部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル1質量部からなる油性混合液を調製し、反応容器に添加、攪拌して乳化させた。反応容器内を窒素置換した後、混合液を80℃まで加熱し、1時間重合反応させた。得られた反応生成物を、ろ過、洗浄し、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル2を得た。マイクロカプセル2の体積平均粒径は29μmであった。
【0157】
<製造例28> 熱膨張性マイクロカプセル3の作製
反応容器に、イオン交換水100質量部、1M−NaOH溶液5.5質量部、10%酢酸溶液10質量部、40%コロイド状珪酸6質量部、ジエタノールアミンとアジピン酸との縮合生成物0.5質量部及びジセチルペルオキシジカーボネート0.5質量部を添加し、水性混合液を調製した。次に、ジビニルベンゼン0.3質量部、メチルメタクリレート7質量部、アクリロニトリル32質量部、塩化ビニリデン32質量部、及び2H−ヘプタフルオロプロパン29質量部からなる油性混合物を調製し、上記水性混合液に添加した。この反応容器を密閉し、窒素置換した後に、混合液を60分間900rpmで攪拌した。混合液が均質化した後、回転速度を400rpmまで下げ、混合液を60℃まで加熱し、この温度で10時間重合反応させた。得られた反応生成物をろ過、洗浄し、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル3を得た。マイクロカプセル3の体積平均粒径は31μmであった。
【0158】
<製造例29> 熱膨張性マイクロカプセル4の作製
反応容器に、イオン交換水500質量部、1M−NaCl溶液150質量部、アジピン酸−ジエタノールアミン縮合物3.0質量部、及びコロイダルシリカ20%水溶液100質量部を添加し、水性混合液を調製した。次に、アクリロニトリル200質量部、メタクリル酸70質量部、メタクリル酸メチル5.0質量部、エチレングリコールジメタクリレート1.2質量部、アゾビスイソブチロニトリル2.0質量部、及びメチルパーフルオロブチルエーテル150質量部からなる油性混合液を調製し、上記水性混合液に添加した。この反応容器を密閉し、窒素置換した後に、混合液を1,000rpmにて60分間攪拌した。その後、混合物を60℃まで加熱し、この温度で20時間重合反応させた。得られた反応生成物をろ過、洗浄し、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル4を得た。マイクロカプセル4の体積平均粒径は34μmであった。
【0159】
<製造例30> 熱膨張性マイクロカプセル5の作製
反応容器に、イオン交換水600質量部、1M−NaCl200質量部、アジピン酸ジエタノールアミン縮合物1質量部、コロイダルシリカ20%水溶液100質量部を添加し、水性混合液を調製した。次に、メタクリル酸メチル50質量部、スチレン50質量部、ジエチレングリコールジメタクリレート1質量部、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1質量部、イソブタン25質量部、イソペンタン25質量部からなる油性混合液を調製し、上記水性混合液に添加した。この反応容器を密閉し、窒素置換した後に、混合液を900rpmにて60分間攪拌した。その後、混合物を60℃まで加熱し、この温度で20時間重合反応させた。得られた反応生成物をろ過、洗浄し、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル5を得た。マイクロカプセル5の体積平均粒径は25μmであった。
【0160】
<製造例31> 熱膨張性マイクロカプセル6の作製
反応容器に、イオン交換水1000質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステル36質量部、ポリエチレングリコール10質量部を添加し、水性混合液を調製した。次に、トリレンジイソシアネート3モル/トリメチロールプロパン1モル付加物15質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート75質量部からなる油性混合液を調製し、上記水性混合液に添加した。この混合液をホモジナイザーを用いて4000rpmで室温下で混合し、乳化させた後、60℃で3時間界面重合させた。得られた反応生成物をろ過、洗浄し、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル6を得た。マイクロカプセル6の体積平均粒径は28μmであった。
【0161】
<製造例32> 熱膨張性マイクロカプセル7の作製
反応容器に、イオン交換水800質量部、ジメタクリル酸エチレングリコール10質量部を添加し、水性混合液を調製した。次に、ペンタン100質量部、イソフタル酸クロリド90質量部、ヘキサメチレンジアミン80質量部、ジエチレントリアミン15質量部及びメチルエチルケトン120質量部からなる油性混合液を調製し、上記水性混合液に添加した。この混合液をホモジナイザーを用いて4000rpmで室温下で混合し、乳化させた後、60℃で5時間界面重合させた。得られた反応生成物をろ過、洗浄し、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル7を得た。マイクロカプセル7の体積平均粒径は25μmであった。
【0162】
<製造例33> 熱膨張性マイクロカプセル8の作製
製造例32において作製した熱膨張性マイクロカプセルを、分級機を用いて分級し、微粉側を採取し、体積平均粒径8μmの熱膨張性マイクロカプセル8を得た。
【0163】
<製造例34> 熱膨張性マイクロカプセル9の作製
製造例32において作製した熱膨張性マイクロカプセルを、分級機を用いて分級し、粗粉側を採取し、体積平均粒径55μmの熱膨張性マイクロカプセル9を得た。
【0164】
<製造例>35 熱膨張性マイクロカプセル10の作製
製造例26で得られた熱膨張性マイクロカプセル1(体積平均粒子径30μm)0.5kgと、メチルエチルケトンとイソドデカンが質量比1:1の溶媒に、製造例1で得られた化合物1を溶解させた溶液10.0kg(化合物1の10質量%溶液)を調製し、撹拌羽を備えた容量50Lのタンクに投入後、撹拌羽の回転数300rpmで1時間湿式処理を行うことで熱膨張性マイクロカプセル1の表面に化合物1を保持させた。その後、乾燥機を用いて60℃で60分間乾燥を行い、熱膨張性マイクロカプセル10を得た。
【0165】
<製造例36〜124> 熱膨張性マイクロカプセル11〜99の作製
製造例35において、被覆される熱膨張性マイクロカプセル及び化合物を表2または表3のものに変更した以外は、製造例35と同様にして熱膨張性マイクロカプセルを得た。
【0166】
<製造例125> 熱膨張性マイクロカプセル100の作製
製造例124において、湿式処理に用いる溶液を、化合物19の0.8質量%溶液に変更した以外は、製造例124と同様にして熱膨張性マイクロカプセル100を得た。
【0167】
<製造例126> 熱膨張性マイクロカプセル101の作製
製造例124において、湿式処理に用いる溶液を、化合物19の30質量%溶液に変更した以外は、製造例124と同様にして熱膨張性マイクロカプセル101を得た。
【0168】
<製造例127〜133> 熱膨張性マイクロカプセル102〜108の作製
製造例35において、被覆される熱膨張性マイクロカプセル及び化合物を表3のものに変更した以外は、製造例35と同様にして熱膨張性マイクロカプセルを作製した。
【0169】
<製造例134> シリコーンゴム中空粒子2の作製
平均粒子径が80μmのシリコーンゴム中空粒子(以下「中空粒子1」という)0.5kgと、メチルエチルケトンとイソドデカンが質量比1:1の溶媒に化合物24を溶解させた溶液10.0kg(化合物24の10質量%溶液)を調製した。そして、撹拌羽を備えた容量50Lのタンクに投入後、撹拌羽の回転数300rpmで1時間湿式処理を行うことで中空粒子1の表面に化合物24を保持させた。その後、乾燥機を用いて60℃で60分間乾燥を行い、シリコーンゴム中空粒子2を得た。
【0170】
<製造例135> シリコーンゴム中空粒子3の作製
製造例134において、使用する化合物を表3のように変更した以外は、製造例134と同様にしてシリコーンゴム中空粒子3を得た。
【0171】
<実施例1>
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製丸棒に、カーボンブラックを4質量%含有させた熱硬化性接着剤を塗布し、乾燥したものを導電性基体として使用した。ゴム弾性体層用のコンパウンドとしては、まず、50℃に調節した密閉型ミキサーにて下記6種類の材料を10分間混練し、ゴムコンパウンドAを調製した。
【0172】
【表1】

【0173】
次に、20℃に冷却した二本ローラ機にて下記5種類の材料を10分間混練して、ゴムコンパウンド1を調製した。
【0174】
【表2】

【0175】
上記導電性基体とともに、ゴムコンパウンド1をクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約10mmのローラ形状になるように成形し予備成形体を作製した。次に、予備成形体のゴムコンパウンド端部を除去して、導電性基体の端部を露出させた予備成形体を、内径が12mmの円筒形キャビティを有する金型内に設置して、予備成形体を160℃で20分間加熱し、発泡させた。その後、金型から脱型後、熱風炉160℃で30分加熱して二次加硫を施し、外径が12mm、長さが232mmの弾性体層を有する帯電ローラ1を得た。
【0176】
(中空粒子の粒径の測定)
帯電ローラ1の弾性体層に含有されている中空粒子の粒径を、上述した方法で測定した。結果を表4に示す。
【0177】
(Cセット画像の評価)
図6に示す構成を有する電子写真装置として、ヒューレット・パッカード社製カラーレーザージェットプリンター(HP Color LaserJet 4700dn、商品名)を記録メディアの出力スピード200mm/sec(A4縦出力)に改造して用いた。画像の解像度は600dpi、1次帯電は直流電圧−1100Vである。また、図7に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記プリンター用のプロセスカートリッジを用いた。
【0178】
上記プロセスカートリッジから付属の帯電ローラを取り外し、帯電ローラ1をセットした。帯電ローラ1は、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。そして、このプロセスカートリッジを40℃、95%RHの環境に1ヶ月間放置した。
【0179】
次に、このプロセスカートリッジを23℃、50%RHの環境で6時間放置した後に、前記電子写真装置に装着し、同様の環境にて画像を出力した。画像としては、ハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力した。出力した画像についてCセット画像の評価を行った。結果を表4に示す。尚、評価の基準は以下の通りである。
ランク1;Cセット画像の発生は認められない。
ランク2;軽微なスジ状の画像が認められる。
ランク3;スジ状の画像が帯電ローラのピッチで確認できるが、実用上問題の無い画質である。
ランク4;スジ状の画像が目立ち、画質の低下が認められる。
【0180】
(Cセット量の測定)
画像出力後、プロセスカートリッジから帯電ローラ1を取り外し、Cセット部、及び非Cセット部における帯電ローラ1の半径をそれぞれ測定した。非Cセット部の半径とCセット部の半径の差をCセット量とする。測定方法を以下に示す。
【0181】
測定装置としては、東京光電子工業(株)の全自動ローラ測定装置を用いた。帯電ローラの長手方向中央部、及び、その中央部から左右それぞれ90mm位置の3個所について、帯電ローラを1°ずつ回転させ、Cセット部、非Cセット部に対応する位置において帯電ローラの半径を測定した。次に、各箇所における非Cセット部の半径の最大値とCセット部の半径の最小値の差を算出し、3箇所の中で最も半径の差が大きい値をCセット量とした。結果を表4に示す。
【0182】
(帯電音の評価)
Cセット画像の評価に用いた帯電ローラ1を用いて、帯電音を測定した。測定は、帯電音測定専用治具を用い、無響室において行った。測定の手順は以下のとおりである。
【0183】
像担持体である感光体と帯電ローラ1のみを治具にセットして、この感光体と帯電ローラとの接触ポイントから20cm離した場所に騒音計を設置し、音圧を測定した。この際、感光体は毎分30回転の速度で回転させ、帯電ローラは、直流電圧−600V、交流電圧1800Vpp、周波数3000Hzを印加した。また、音圧の値(dB)は、電圧印加後、30秒後から50秒後までの値の平均値とした。測定結果を表4に示す。
【0184】
また、この音圧測定に加え、上記音圧測定時において生じる帯電音を実際に聞き、聴感によっても評価した。評価結果を表4に示す。なお、帯電音の評価基準は以下の通りである。
ランク1;帯電音の発生が認められるが、わずかである。
ランク2;帯電音の発生が認められるが、実用上問題の無いレベルである。
ランク3;帯電音が大きな音となって感じられる。
【0185】
<実施例2>
導電性基体及びコンパウンドとして、実施例1と同様のものを準備した。上記導電性基体とともに、ゴムコンパウンド1をクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約13mmのローラ形状になるように成形し予備成形体を作製した。得られた予備成形体を熱風炉にて160℃で1時間加熱したのち、弾性体層の端部を除去して、外径が12.5mm、長さが232mmの弾性体層を有する帯電ローラを得た。次に、この帯電ローラの多孔質導電性弾性体層の外周面を、プランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨して、多孔質導電性弾性体層の外径を12mmに調整し、帯電ローラ2を得た。帯電ローラ2について、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表4に示す。
【0186】
<実施例3>
導電性基体としては実施例1と同様のものを準備した。ゴム弾性体層用のコンパウンドとしては、50℃に調節した密閉型ミキサーにて下記5種類の材料を15分間混練し、ゴムコンパウンドBを調製した。
・アクリロニトリルブタジエンゴム:100質量部、
・カーボンブラック:48質量部、
・ステアリン酸亜鉛:1質量部、
・酸化亜鉛:5質量部、
・炭酸カルシウム:20質量部。
【0187】
次に、20℃に冷却した二本ローラ機にて下記4種類の材料を15分間混練して、ゴムコンパウンド2を調製した。
・ゴムコンパウンドB:174質量部、
・硫黄:1.2質量部、
・テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD):4.5質量部、
・熱膨張性マイクロカプセル11:10質量部。
【0188】
上記導電性基体とともに、ゴムコンパウンド2をクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約13mmのローラ形状になるように成型した。得られた予備成形体を電気オーブンを用いて160℃で1時間加熱し、接着剤の硬化、加硫、及び発泡を行った。その後、ゴムの両端部を突っ切り、ゴム長さを232mmとした後、外径が12mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行って、帯電ローラ3を作製した。帯電ローラ3について、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表4に示す。
【0189】
<実施例4>
導電性基体としては実施例1と同様のものを準備した。ゴム弾性体層用のコンパウンドとしては、まず、80℃に調節した密閉型ミキサーにて下記7種類の材料を15分間混練し、ゴムコンパウンドCを調製した。
・スチレンブタジエンゴム:100質量部、
・酸化亜鉛:5質量部、
・ステアリン酸亜鉛:2質量部、
・カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD):8質量部、
・カーボンブラック(シーストS):40質量部、
・炭酸カルシウム:15質量部、
・パラフィンオイル(PW380):20質量部。
【0190】
次に、20℃に冷却した二本ローラ機にて下記5種類の材料を15分間混練して、ゴムコンパウンド3を調製した。
・ゴムコンパウンドC:190質量部、
・硫黄:1質量部、
・ジベンゾチアジルスルフィド(DM):1質量部、
・テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS):1質量部、
・熱膨張性マイクロカプセル11:10質量部。
【0191】
上記導電性基体とともに、ゴムコンパウンド3をクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、実施例1と同様にして帯電ローラ4を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0192】
<実施例5>
導電性基体としては実施例1と同様のものを準備した。ゴム弾性体層用のコンパウンドとしては、まず、80℃に調節した密閉型ミキサーにて下記7種類の材料を15分間混練し、ゴムコンパウンドDを調製した。
・エチレンプロピレンジエンゴム:100質量部、
・酸化亜鉛:5質量部、
・ステアリン酸亜鉛:2質量部、
・カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD):8質量部、
・カーボンブラック(シーストS):30質量部、
・炭酸カルシウム:15質量部、
・パラフィンオイル(PW380):20質量部。
【0193】
次に、20℃に冷却した二本ローラ機にて下記5種類の材料を15分間混練して、ゴムコンパウンド4を調製した。
・ゴムコンパウンドD:180質量部、
・硫黄:1質量部、
・ジベンゾチアジルスルフィド(DM):1質量部、
・テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS):1質量部、
・熱膨張性マイクロカプセル11:10質量部。
【0194】
上記導電性基体とともに、ゴムコンパウンド4をクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、実施例1と同様にして、帯電ローラ5を製造し、各評価を行った。結果を表4に示す。
【0195】
<実施例6〜105>
ゴムコンパウンド及び熱膨張性マイクロカプセルを表4〜表6のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ6〜105を作製し、各評価を行った。結果を表4〜表6に示す。
【0196】
<実施例106>
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が14質量%となるように調製した。この溶液714.3質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対し下記2種類の材料を加え、混合溶液を調製した。
・アセチレンブラック:25質量部、
・ブロックイソシアネート混合物(*1):80.14質量部。
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
(*1)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物。
【0197】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。その後、ガラスビーズを除去して表面層用塗布液1を得た。
【0198】
次に、この表面層用塗布液1を用いて、実施例105で作製した帯電ローラ105に1回ディッピング塗布した。塗布後、常温で30分間風乾し、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、ローラ上に表面層を形成した帯電ローラ106を得た。尚、塗布条件については、浸漬時間を9秒として、引き上げ速度は初期速度20mm/s、最終速度2mm/sとし、その間は時間に対して直線的に速度を変化させて行った。帯電ローラ106について実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表6に示す。
【0199】
<実施例107>
下記5種類の材料を混合し、ナイロン樹脂の表面層用塗布液を調製した。
・N−メトキシメチル化ナイロン:100質量部、
・アセチレンブラック:25質量部、
・メタノール:256質量部、
・トルエン:135質量部、
・クエン酸:2質量部。
【0200】
上記材料を、実施例106と同様にペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。その後、ガラスビーズを濾過により除去し、表面層用塗布液2を得た。この表面層用塗布液2を用いて、実施例105で作製した帯電ローラ105に1回ディッピング塗布した。常温で30分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて150℃で1時間乾燥して、ローラ上に表面層を形成した帯電ローラ107を得た。帯電ローラ107について、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表6に示す。
【0201】
<実施例108>
下記4種類の材料を用いて、アクリル樹脂の表面層用塗布液を調製した。
・3官能アクリレートモノマー(商品名「SR−454」:日本化薬(株)製)90質量部、
・シランカップリング剤(商品名「KBM−5103」:信越化学工業(株)製)10質量部、
・アセチレンブラック:30質量部、
・メチルイソブチルケトン:488質量部。
【0202】
上記材料を、実施例106と同様にペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。その後、ガラスビーズを除去し、表面層用塗布液3を得た。
【0203】
この表面層用塗布液3を用いて、帯電ローラ105にリング塗工により塗布し、常温で30分間以上風乾した。その後、電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)を用いて、加速電圧150kV、線量1200kGy、酸素濃度300ppm以下という条件で電子線を照射し、ローラ上に表面層を形成した帯電ローラ108を得た。帯電ローラ108について、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表6に示す。
【0204】
<実施例109〜123>
ゴムコンパウンド及び熱膨張性マイクロカプセルを表6のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを作製した。各帯電ローラについて、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表6に示す。
【0205】
<実施例124>
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製棒に、プライマーとしてFC5150[住友スリーエム(株)製商品名]を塗布し、乾燥したものを導電性基体として使用した。次に、30℃に冷却した二本ローラ機にて下記5種類の材料を15分間混練して、ゴムコンパウンド5を調製した。
・フッ素ゴム(商品名:ダイエルG−755L,ポリオール加硫二元系,ダイキン工業株式会社製):100質量部、
・MTカーボンブラック(商品名:Thermax N−990,CANCARB Ltd 製):10質量部、
・酸化マグネシウム(商品名:キョーワマグMA−150,協和化学工業株式会社製):3質量部、
・水酸化カルシウム(商品名:CALDIC−2000,近江化学工業株式会社製):6質量部、
・熱膨張性マイクロカプセル108:10質量部。
【0206】
上記導電性基体とともに、ゴムコンパウンド5をクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約10mmのローラ形状になるように成形し予備成形体を作製した。次に、予備成形体のゴムコンパウンド端部を除去して、導電性基体の端部を露出させた予備成形体を、内径が12mmの円筒形キャビティを有する金型に設置して、予備成形体を160℃で15分間加熱し、発泡させた。その後、金型から脱型後、熱風炉170℃で10分加熱して二次加硫を施し、外径が12mm、長さが232mmの弾性体層を有する帯電ローラ124を得た。帯電ローラ124について、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表6に示す。
【0207】
<実施例125>
ゴムコンパウンド及び熱膨張性マイクロカプセルを表6のように変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラ125を作製し、各評価を行った。結果を表6に示す。
【0208】
<実施例126および127>
実施例125において、ゴムコンパウンド1を調製する際の熱膨張性マイクロカプセル108の添加量を、実施例126では2質量部、実施例127では20質量部に変更したこと以外は、実施例125と同様にして帯電ローラ126および127を作製した。帯電ローラ126および127について、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表6に示す。
【0209】
<比較例1および2>
ゴムコンパウンド及び熱膨張性マイクロカプセルを表6のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ128および129を作製し、各評価を行った。結果を表6に示す。
【0210】
<比較例3>
実施例124において、熱膨張性マイクロカプセル108の代わりに、アゾジカルボンアミド(商品名:セルマイクCAP−250,三協化成株式会社製)10質量部を添加したこと以外は、実施例124と同様にして帯電ローラ130を作製した。帯電ローラ130について、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表6に示す。
【0211】
<比較例4>
ゴムコンパウンド及び熱膨張性マイクロカプセルを表6のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ131を作製し、各評価を行った。結果を表6に示す。
【0212】
【表3】

【0213】
【表4】

【0214】
【表5】

【0215】
【表6】

【0216】
【表7】

【0217】
【表8】

【0218】
上記表4〜表6の結果が示すように、本発明の帯電ローラは、Cセット画像、帯電音の発生が抑制されている。
【符号の説明】
【0219】
1 導電性基体
2 弾性体層
3 表面層
4 電子写真感光体
5 帯電部材(帯電ローラ)
6 現像ローラ
7 転写材
8 転写ローラ
9 定着部
10 クリーニング部材
11 潜像形成装置(露光装置)
12 帯電前露光装置
13 弾性規制ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体および弾性体層を有する帯電部材であって、該弾性体層は、熱可塑性樹脂と下記式(1)で示される構成単位を有する化合物とを含むシェルを有する中空粒子を含有している多孔質体であることを特徴とする帯電部材:
【化1】

[式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは下記式(2)で表わされる構造を有する基である。
【化2】

式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。aは0または1である。E1、E2およびE3は各々独立に下記式(3)で表わされる基である。
【化3】

【化4】

【化5】

式(6)〜式(8)中、R8、R9およびR11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。
【化6】

式(3)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。Z1は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。
R3、R4、R6およびR7は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【化7】

【化8】

【化9】

式(15)〜式(17)中、R15、R16およびR17は各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。
【化10】

式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【化11】

式(19)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および上記式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。R19、R20、R22およびR23は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R21は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
X2は水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、式(18)で表わされる基および式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
式(3)においてXが式(19)で表わされる基である場合における式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または式(18)で示す基である。
【化12】

式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【化13】

式(21)中、R25、R26およびR27は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。]。
【請求項2】
前記化合物における式(3)中のhが0であり、Xが前記式(19)で表わされる基であって、式(19)中のrが0であり、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1以上3以下であるものである請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記化合物が、更に下記式(4)で示される構成単位を有する請求項1または2に記載の帯電部材:
【化14】

[式(4)中、R2は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Jは水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、下記式(9)、下記式(10)、または下記式(11)で示される基である。
【化15】

【化16】

【化17】

式(9)〜式(10)中、R12およびR13は各々独立に炭素原子数1以上6以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および前記式(11)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。式(11)中、R14は炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。tは1以上3以下の整数である。]。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル酸樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの一項に記載の帯電部材と、該帯電部材により帯電可能なように配置された電子写真感光体とが一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの一項に記載の帯電部材と、該帯電部材によって帯電可能なように配置された電子写真感光体とを有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−118232(P2012−118232A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266986(P2010−266986)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】