説明

帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】表面層の粗面化のバラツキを抑制すると共に、クラックの発生を抑制した帯電部材を提供すること。
【解決手段】弾性層31と、弾性層31上に配設され、表面に凹凸を付与するための粒子32Bを含んで構成されると共に、表面層32を有する帯電部材において、粒子32Bの平均粒径t1が、表面層32における粒子が存在しない領域の平均膜厚よりも大きく、且つ表面層32における粒子32Bが存在する領域の粒子32Bを除いた実膜厚t3が、表面層32における粒子32Bが存在しない領域の平均膜厚t2の1/2以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタやコピー機を中心とする画像形成装置が広く普及しており、画像形成装置を構成する様々な要素に関する技術も広く普及している。画像形成装置の中でも電子写真方式を採用している画像形成装置では、感光体(像保持体)ドラムをはじめとする感光体を帯電装置を用いて帯電させ、帯電した感光体上に周囲の電位とは電位が異なる静電潜像を形成することによって印刷したいパターンの形成が行われることが多く、このようにして形成された静電潜像は、トナーで現像された後、最終的に記録用紙などの記録媒体上に転写される。
【0003】
帯電装置は、感光体を帯電させるという重要な働きをする装置であり、感光体に直接接触して感光体を帯電させる接触帯電方式の帯電装置と、感光体とは接触せずに感光体近傍でコロナ放電などにより感光体を帯電させる非接触帯電方式の帯電装置との2種類の帯電装置に大別される。最近では、非接触帯電方式の帯電装置に比較してオゾンや窒素酸化物等の化学物質の発生量の少ない接触帯電方式を採用する帯電装置が増えている。
【0004】
帯電装置に備えられる帯電ロール等の帯電部材として、トナー付着等の汚染を防止するため、粒子(フィラー)を含有させて表面粗さを大きくした帯電部材が提案されてきている。具体的には、例えば、導電性基体上に抵抗層を被覆又は支持した構造を有する帯電部材において、該抵抗層が、該非導電性粒子を導電性基体に近い内面側近傍に比べて表面側近傍に多く含有することを特徴とし、前記抵抗層内において、非導電性粒子が、下面側の厚み10%の範囲に比べ、表面側の面から厚み10%の範囲以内に、1.1倍以上5倍以下の割合で分布している帯電部材が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、コート層に、10〜150μmの平均粒径を有し、且つ該コート層の厚さよりも小さい粒径の中空球状弾性粒子を分散・含有する帯電部材(帯電ロール)が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、回転する帯電部材(帯電ロール)に対して接触した状態で連れ回るクリーング部材(クリーニングロール)により、帯電部材の表面をクリーニングする方式が提案されている(特許文献3乃至4参照)。
【特許文献1】特開2005−300667公報
【特許文献2】特開2004−240357公報
【特許文献3】特開平2−272594号公報
【特許文献4】特開平8−62948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、表面層の粗面化のバラツキを抑制すると共に、クラックの発生を抑制した帯電部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
弾性層と、前記弾性層上に配設され、表面に凹凸を付与するための粒子を含んで構成される表面層と、を有し、
前記粒子の平均粒径が、前記表面層における粒子が存在しない領域の平均膜厚よりも大きく、
且つ前記表面層における粒子が存在する領域の前記粒子を除いた実膜厚が、前記表面層における粒子が存在しない領域の平均膜厚の1/2以上である帯電部材。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記粒子が、膨張性の中空粒子である請求項1に記載の帯電部材。
【0010】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は2に記載の帯電部材を備える帯電装置。
【0011】
請求項4に係る発明は、
像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電手段と、を備え、
前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置であるプロセスカートリッジ。
【0012】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備え、
前記帯電手段が、前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置である画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、表面層における粒子の存在状態を考慮しない場合に比べ、表面層の粗面化のバラツキが抑制されると共に、クラックの発生が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、他種の粒子を用いる場合に比べ、容易に、特定の表面層における粒子の存在状態が実現される。
請求項3に係る発明は、本構成を有さない場合に比べ、帯電部材の表面層の粗面化のバラツキに起因する画像欠陥が抑制されると共に、帯電部材の表面層のクラックが抑制されつつ、帯電が行われる。
請求項4に係る発明は、本構成を有さない場合に比べ、帯電部材の表面層の粗面化のバラツキに起因する画像欠陥が抑制されると共に、帯電部材の表面層のクラックが抑制されつつ、帯電が行われる。
請求項5に係る発明は、本構成を有さない場合に比べ、帯電部材の表面層の粗面化のバラツキに起因する画像欠陥が抑制されると共に、帯電部材の表面層のクラックが抑制されつつ、帯電が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ、説明する。
【0015】
(帯電部材)
図1は、本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。図3は、本実施形態に係る帯電部材における表面層を示す拡大断面図である。なお、図2及び図3は、図1のA−A断面図である。
【0016】
本実施形態に係る帯電部材121は、図1及び図2に示すように、例えば、シャフト30(芯体)と、シャフト30の外周面に配設された弾性層31と、弾性層31の外周面に配設された表面層32と、を有するロール部材である。そして、表面層32は、図3に示すように、樹脂32Aと粒子32Bとを含んで構成されている。
【0017】
本実施形態に係る帯電部材121は、上記構成に限られず、例えば、弾性層31とシャフト30との間に配設される接着層(プライマー層)、弾性層31と表面層32との間に配設される抵抗調整層又は移行防止層、表面層32の外側(最表面)に配設されるコーティング層(保護層)を設けた構成であってもよい。
【0018】
シャフト30は、導電性の棒状部材であり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、シャフト30としては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。シャフト30は、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0019】
弾性層31は、例えば、弾性材料と、導電剤と、必要に応じて、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0020】
弾性材料としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。中でも、ポリウレタン、シリコーンゴム、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR及びこれらのブレンドゴムが望ましく用いられる。これらの弾性材料は、発泡したものであっても無発泡のものであってもよい
【0021】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ここで、カーボンブラックとして具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0023】
導電剤の添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲であることが望ましく、15質量部以上25質量部以下の範囲であることがより望ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、弾性材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが望ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることがより望ましい。
【0024】
弾性層31に配合されるその他添加剤としては、例えば、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)等の通常弾性層に添加され得る材料が挙げられる。
【0025】
弾性層31の厚みは、平均膜厚で1mm以上10mm以下程度とすることが望ましく、2mm以上5mm以下程度とすることがより望ましい。そして、弾性層の体積抵抗率は10Ωcm以上1014Ωcm以下が望ましい。
【0026】
表面層32は、図3に示すように、樹脂32Aと、粒子32Bと、必要に応じて、導電剤やその他添加剤と、を含んで構成される。そして、粒子32Bの平均粒径t1が、表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2よりも大きく、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3が、表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2の1/2以上となっている。
【0027】
この粒子32Bが存在する領域P2とは、粒子32Bにより表面層32の厚み方向に投影される領域を意味する。一方で、粒子32Bが存在しない領域P1とは、粒子32Bにより表面層32の厚み方向に投影される領域以外の領域を意味する。そして、粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2とは、当該粒子32B同士により挟まれた粒子32Bが存在しない領域P1における最も厚みが薄い部分の膜厚の平均値である。また、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2では、粒子32Bを除く成分(樹脂32A)による層が存在し、この層の最も厚みが薄い部分の膜厚の平均値が実膜厚t3(t31+t32)である。
【0028】
粒子32Bの平均粒径t1と、表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2と、の差は、1μm以上50μm以下であることが望ましく、より望ましくは5μm以上20μm以下である。
また、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3は、表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2の1/2以上であるが、望ましくは2/3以上である。なお、この上限は、特に制限はないが1以下である。
【0029】
粒子32Bの平均粒径t1は、5μm以上100μm以下であることが望ましく、より望ましくは10μm以上50μm以下である。なお、粒子32Bは、球形であっても、不定形であってもよい。
また、粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2は、5μm以上50μm以下であることが望ましく、より望ましくは10μm以上40μm以下である。
また、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3は、10μm以上30μm以下であることが望ましく、より望ましくは15μm以上30μm以下である。
【0030】
なお、粒子32Bの平均粒径t1が表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2よりも小さいと、表面層32に粗面化のバラツキが生じやすくなり、トナーや外添剤等の汚染により、局所的な汚れが発生しやすくなる。一方、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3が表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2の1/2未満となると、像保持体との接触による歪みや変形と帯電による電気的ストレスにより、表面層32にクラックが生じやすくなる。
【0031】
ここで、粒子32Bの平均粒径t1は、体積平均粒径であり、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用いて測定した値である。なお。粒子32Bの粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定する。
【0032】
一方、平均膜厚t2、実膜厚t3は、次のように測定する。帯電部材121から片刃ナイフで表面層の断片を切り出し、この断片の表面層をマイクロスコープで観察する。そして、粒子32B同士により挟まれた粒子32Bが存在しない領域P1における最も厚みが薄い部分の膜厚、を測定すると共に、粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた部分の膜厚をそれぞれ測定し、これを10回繰り返した平均値を平均膜厚t2、実膜厚t3とした。
【0033】
粒子32Bは、表面層32に配合させ、当該表面層32の表面(帯電部材121外周面)に凹凸(特定の表面粗さ)を付与するためのものであり、粒子32Bにより表面層32の表面に凹凸が付与されている。
【0034】
粒子32Bとしては、導電性粒子、非導電性粒子のいずれでもよいが、非導電性粒子がよい。導電性粒子としては、弾性層31に配合する上記導電剤として挙げられた材料の粒子が挙げられる。非導電性粒子としては、樹脂粒子(ポリイミド樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等)、無機粒子(クレー粒子,カオリン粒子,タルク粒子,シリカ粒子,アルミナ粒子等)、又はセラミック粒子等が挙げられる。粒子32Bは、樹脂32Aと同種の樹脂で構成した粒子であってもよく、これにより粒子32Bと樹脂32Aとの相溶性がよくなり、粒子32Bと樹脂32Aとの密着性が高くなる。
ここで、導電性とは、体積抵抗率が1013Ωcm未満を意味し、非導電性とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上を意味する。なお、他も同様である。
【0035】
粒子32Bとしては、特に膨張性の中空粒子であることが望ましい。膨張性の中空粒子としては、熱、溶剤、圧力によって膨張する中空粒子が挙げられ、特に、熱によって膨張する熱膨張性の中空粒子であることが最も好適である。熱膨張性の中空粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば塩化ビニリデン系共重合体・アクリロニトリル共重合体)のカプセル内に、低沸点溶剤(例えば、イソブタン、ノルマルブタン、エチルメチルエーテル、イソペンタン等)を充填したものが挙げられる。この熱膨張性の中空粒子の市販品としては、例えば、松本油脂製薬製「マツモトマイクロスフェアーF−30」、松本油脂製薬製「マツモトマイクロスフェアーF−40」、日本フェライト製「エクスパンセル 053−40」、日本フェライト製「エクスパンセル 054−40」、日本フェライト製「エクスパンセル 007−40」が挙げられる。
【0036】
膨張性の中空粒子の特性として未膨張時の平均粒径(体積平均粒径)は、10μm以上20μm(望ましくは10μm以上15μm以下)であることが望ましく、膨張時の平均粒径が上述した粒子32Bの平均粒径(体積平均粒径)の範囲となる粒子であることがよい。また、膨張性の中空粒子の膨張率は、未膨張時に対して150%以上600%以下(望ましくは300%600%以下)であることがよい。この膨張率は、膨張時の平均粒径を未膨張時の平均粒径で割ることで算出される。
【0037】
膨張性の中空粒子は、後述するが、未膨張の膨張性の中空粒子を表面層形成時に膨張させて、表面層内に配合するものである。つまり、膨張した状態で膨張性の中空粒子は、表面層32に存在するものである。
【0038】
粒子32Bの配合量は、樹脂32Aに対して5容量%以上35容量%以下であることが望ましく、より望ましくは10容量%以上35容量%以下であり、さらに望ましくは、20容量%以上35容量%以下である。粒子32Bの配合量を上記範囲とすると、表面層32に対して特定の十点平均表面粗さRzや特定の表面凹凸の平均間隔Smを得ることが容易となる。
【0039】
一方、樹脂32Aとしては、アクリル樹脂,セルロース樹脂,ポリアミド樹脂,共重合ナイロン,ポリウレタン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリビニル樹脂,ポリアリレート樹脂,スチレンブタジエン樹脂,メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えばテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等)、尿素樹脂等が挙げられる。ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。また、樹脂32Aとしては、上記弾性層31に配合される弾性材料を適用してもよい。
【0040】
表面層32に配合される導電剤としては、上記弾性層31に配合される導電剤が挙げられる。また、その他添加剤としては、例えば、導電剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る材料が挙げられる。
【0041】
表面層32の厚み(全体厚み)は、平均膜厚で20μm以上60μm以下が望ましい。そして、表面層の体積抵抗率は10Ωcm以上1014Ωcm以下が望ましい。表面層32の厚み(全体厚み)は、上記平均膜厚や実膜厚の測定の測定において、表面層32の最も厚い部分の厚みを測定し、これを10回繰り返して得られる値の平均値である。
【0042】
次に、本実施形態に係る帯電部材121の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係る帯電部材の製造方法を示す工程図である。なお、本製法では、粒子32Bとして熱膨張性の中空粒子を適用した形態を説明する。
【0043】
まず、図4(A)に示すように、シャフト30を準備する。そして、上記各成分が溶剤に溶解又は分散された弾性層形成用塗布液をシャフト30の外周面に塗布して、例えば、加熱等を行って弾性層31を形成する。なお、塗布方法としては、例えば、ブレード塗布法,マイヤーバー塗布法,スプレー塗布法,浸漬塗布法,ビード塗布法,エアーナイフ塗布法,カーテン塗布法等が利用される。
【0044】
次に、図4(B)に示すように、上記各成分が溶剤に溶解又は分散された表面層形成塗布液を弾性層31上(外周面)に塗布して、表面層形成塗布液の塗膜32Rを形成する。ここで、表面層形成塗布液には、粒子32Bとして、未膨張の熱膨張性の中空粒子が配合されている。これにより、塗膜32Rの膜厚に対して平均粒径が小さい状態で粒子32Bが存在させられることから、粒子32Bの周囲には他の成分(樹脂等)が存在することになる。つまり、粒子32Bが存在する領域(塗膜厚み方向い投影される領域)では、特に、粒子32Bよりも弾性層側の領域では、粒子32Bを除く他の成分(樹脂等)による塗膜が確保される。
【0045】
そして、図4(C)に示すように、表面層形成塗布液の塗膜32Rに対して加熱等を施すことで、表面層32を形成する。この際、熱膨張性の中空粒子からなる粒子32Bは、膨張し、表面側に凹凸が付与される。一方で、粒子32Bの弾性層側の領域には、上記如く、粒子32Bを除く他の成分(樹脂等)による塗膜が確保されていることから、熱膨張性の中空粒子からなる粒子32Bが膨張し、表面層32が形成されても、当該粒子32Bの弾性層側の領域には粒子32Bを除く他の成分(樹脂等)による層が形成されることとなる。したがって、上記粒子32Bの平均粒径t1と。表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2と、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3と、の関係を持つ表面層32が得られやすくなる。
【0046】
なお、上記製法では、粒子32Bとして熱膨張性の中空粒子を適用した形態を説明したが、例えば、粒子32Bとして、非膨張性の粒子を適用した形態の場合、粒子32Bを配合しない表面層形成用塗布液(組成物)を用いて弾性層上にベース表面層を形成した後、その後、粒子32Bを配合した表面層形成用塗布液(組成物)を用いてベース表面層上に粒子含有表面層を形成することで、上記粒子32Bの平均粒径t1と、表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2と、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3と、の関係を持つ表面層32が得られやすくなる。
【0047】
次に、本実施形態に係る帯電部材121の特性について説明する。
本実施形態に係る帯電部材121は、その表面(粒子32Bよって付与される表面層32の表面)の凹凸の平均間隔Smは、50μm以上200μm以下であることが望ましく、100μm以上200μm以下であることがより望ましく、100μm以上200μm以下であることがさらに望ましい。この範囲に設定することによって、表面層32にトナーや外添剤などの異物が付着しにくくなり、耐汚染性が高くなる。凹凸の平均間隔Smが50μm未満であると、トナーや外添剤などの異物が付着することがある。凹凸の平均間隔Smが200μmよりも大きい場合には、凹凸部分にトナー及び紙粉等が溜まり易くなると共に、局所的に異常放電が発生しやすなり、白抜け等の画像欠陥が起こることがある。
【0048】
なお、凹凸の平均間隔Smとは、JIS−B 0601−1994に規定された凹凸の平均間隔である。凹凸の平均間隔Smは、23℃・55RH%の環境下において、表面粗さ測定機SURFCOM1400(ACCRETECH社製)を用い、JIS−B 0601−1994の条件に従って、帯電部材121の軸方向に沿って行って求めた。
【0049】
本実施形態に係る帯電部材121は、その表面(粒子32Bよって付与される表面層32の表面)の十点平均表面粗さRzが、3μm以上12μm以下であることが望ましく、7μm以上12μm以下であることがより望ましく、10μm以上12μm以下であることが特に望ましい。この範囲に設定することによって、表面層32にトナーや外添剤などの異物が付着しにくくなり、耐汚染性が高くなる。十点平均表面粗さRzが3μm未満であると、トナーや外添剤などの異物が付着することがある。十点平均表面粗さRzが12μmよりも大きい場合には、凹凸部分にトナー及び紙粉等が溜まり易くなると共に、局所的に異常放電が発生しやすなり、白抜け等の画像欠陥が起こることがある。
【0050】
なお、当該十点平均表面粗さRzとは、JIS B0601(1994)に規定された表面粗さのことである。十点平均表面粗さRzは、表面粗さ測定器等を用いて測定することができるが、23℃・55RH%の環境下において、接触式表面粗さ測定装置(サーフコム570A、東京精密社製)を用いた。表面粗さの測定に際しては、測定距離を2.5mmとし、接触針としてはその先端がダイヤモンド(5μmR、90°円錐)のものを用い、場所を変えて3回繰り返し測定した際の平均値を十点平均表面粗さRzとして求めた。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る帯電部材121では、表面に凹凸を付与するための粒子32Bが配合された表面層32は、粒子32Bの平均粒径t1が表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2よりも大きく、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3が表面層32における粒子32Bが存在しない領域P1の平均膜厚t2の1/2以上となっている。これにより、粒子32Bにより表面層32の表面に凹凸を付与しつつ、粒子32Bの弾性層側の領域に粒子32Bを除く他の成分による層を存在させられる。つまり、例えば、粒子32Bにより表面層32の表面に対して上記特定の十点平均表面粗さRzや特定の凹凸の平均間隔が得られつつ、表面層32における粒子32Bが存在する領域P2の粒子32Bを除いた実膜厚t3が確保される。したがって、本実施形態に係る帯電部材121では、表面層の粗面化のバラツキが抑制されると共に、クラックの発生が抑制される。
【0052】
結果、帯電部材121の表面の局所的な汚れが抑制されつつ、帯電部材121に対する局所的な応力集中による表面層32のクラックの発生が抑制される。なお、帯電部材121の表面には、局所的な汚れではなく、均一に汚れることになるが、当該均一な汚れはクリーニング部材により除去されやすいため、帯電部材121の汚れによる帯電不良やそれによる画像欠陥は抑制される。そして、本実施形態に係る帯電部材121を、後述する帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に適用することで、帯電部材の表面層の粗面化のバラツキに起因する画像欠陥が抑制されると共に、帯電部材の表面層のクラックが抑制されつつ、帯電が行われる。
【0053】
また、本実施形態に係る帯電部材121では、粒子32Bとして、膨張性の中空粒子を適用することで、上記説明した如く、容易に、特定の表面層における粒子32Bの存在状態が実現される。
【0054】
(帯電装置)
以下、本実施形態に係る帯電装置について説明する。図5は、本実施形態に係る帯電装置の概略斜視図である。本実施形態に係る帯電装置は、帯電部材として、上記本実施形態に係る帯電部材を適用した形態である。
【0055】
本実施形態に係る帯電装置12は、図5に示すように、例えば、帯電部材121と、クリーニング部材122と、が特定の食い込み量で接触している配置されている。そして、帯電部材121のシャフト30及びクリーニング部材122のシャフト122Aの軸方向両端は、各部材が回転自在となるように導電性軸受け123(導電性ベアリング)で保持されている。導電性軸受け123の一方には電源124が接続されている。なお、本実施形態に係る帯電装置は、上記構成に限られず、例えば、クリーニング部材122を備えない形態であってもよい。
【0056】
クリーニング部材122は、帯電部材121の表面を清掃するための清掃部材であり、例えば、ロール状で構成されている。クリーニング部材122は、例えば、シャフト122Aと、シャフト122Aの外周面に弾性層122Bと、で構成される。
【0057】
シャフト122Aは、導電性の棒状部材であり、その材質は例えば、鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、シャフト122Aとしては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。シャフト122Aは、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0058】
弾性層122Bは、多孔質の3次元構造を有する発泡体からなり、内部や表面に空洞や凹凸部(以下、セルという。)が存在し、弾性を有していることがよい。弾性層122Bは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、オレフィン、メラミン又はポリプロピレン、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレン、シリコーン、ニトリル、等の発泡性の樹脂材料又はゴム材料を含んで構成される。
【0059】
これらの発泡性の樹脂材料又はゴム材料のなかもで、帯電部材121との従動摺擦によりトナーや外添剤などの異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電部材121の表面にクリーニング部材122の擦れによるキズをつけ難くするために、また、長期にわたり千切れや破損が生じ難くするために、引き裂き、引っ張り強さなどに強いポリウレタンが特に好適に適用される。
【0060】
ポリウレタンとしては、特に限定するものではなく、例えば、ポリオール(例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステル、アクリルポリールなど)と、イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)の反応物が挙げられ、これらの鎖延長剤(例えば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど)による反応物であってもよい。なお、ポリウレタンは、発泡剤(水やアゾ化合物(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)を用いて発泡させるのが一般的である。
【0061】
弾性層122Bの25mm当たりのセル数(個/25mm)としては、20個/25mm以上80個/25mm以下であることが望ましく、30個/25mm以上80個/25mm以下であることがさらに望ましく、30個/25mm以上50個/25mm以下であることが特に望ましい。
【0062】
弾性層122Bの硬さとしては、100N以上500N以下が望ましく100N以上400N以下がさらに望ましく、150N以上400N以下が特に望ましい。
【0063】
導電性軸受け123は、帯電部材121とクリーニング部材122とを一体で回転自在に保持すると共に、当該部材同士の軸間距離を保持する部材である。導電性軸受け123は、導電性を有する材料で製造されていればいかなる材料及び形態でもよく、例えば、導電性のベアリングや導電性の滑り軸受けなどが適用される。
【0064】
電源124は、導電性軸受け123へ電圧を印加することにより帯電部材121とクリーニング部材122とを同極性に帯電させる装置であり、公知の高圧電源装置を用いることができる。
【0065】
本実施形態に係る帯電装置12では、電源124から導電性軸受け123に電圧が印加されることで、帯電部材121とクリーニング部材122とが同極性に帯電する。これにより、像保持体表面の異物(例えばトナーや外添剤)をクリーニング部材122及び帯電部材121表面に蓄積させるが抑制され、像保持体に移行でき、像保持体のクリーニング装置で異物が回収される。そのため、長期にわたり帯電部材121とクリーニング部材122とに汚れが蓄積することが抑制され、帯電性能が維持される。
【0066】
(画像形成装置、プロセスカートリッジ)
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備える。そして、帯電手段(帯電装置)として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。
【0067】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば上記構成の画像形成装置に脱着され、像保持体と、像保持体を帯電する帯電手段と、を備える。そして、帯電手段として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段及び転写後の像保持体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0068】
次に、本実施形態に係る画像形成装置、及びプロセスカートリッジについて図面を参照しつつ説明する。図6は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図7は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【0069】
本実施形態に係る画像形成装置101は、図6に示すように、像保持体10を備え、その周囲に、像保持体を帯電する帯電装置12と、帯電装置12により帯電された像保持体10を露光して潜像を形成する露光装置14と、露光装置14により形成した潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、現像装置16により形成したトナー像を記録媒体Pに転写する転写装置18と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を備える。また、転写装置18により記録媒体Pに転写されたトナー像を定着する定着装置22を備える。
【0070】
そして、本実施形態に係る画像形成装置101は、帯電装置12として、例えば、帯電部材121と、帯電部材121に接触配置されたクリーニング部材122と、帯電部材121及びクリーニング部材122の軸方向両端を各部材が回転自在となるように保持する導電性軸受け123(導電性ベアリング)と、導電性軸受け123の一方に接続された電源124と、が配設された、上記本実施形態に係る帯電装置が適用されている。
【0071】
一方、本実施形態の画像形成装置101は、帯電装置12(帯電部材121)以外の構成については、従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成が適用される。以下、各構成の一例につき説明する。
【0072】
像保持体10は、特に制限なく、公知の感光体が適用されるが、電荷発生層と電荷輸送層を分離した、いわゆる機能分離型と呼ばれる構造の有機感光体が好適に適用される。また、像保持体10は、その表面層が電荷輸送性を有し架橋構造を有するシロキサン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、アクリル系樹脂で構成された感光体も好適に適用される。
【0073】
露光装置14としては、例えば、レーザー光学系やLEDアレイ等が適用される。
【0074】
現像装置16は、例えば、現像剤層を表面に形成させた現像剤保持体を像保持体10に接触若しくは近接させて、像保持体10の表面の潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置である。現像装置16の現像方式は、既知の方式として二成分現像剤による現像方式が好適に適用される。この二成分現像剤による現像方式には、例えば、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。
【0075】
転写装置18としては、例えば、コロトロン等の非接触転写方式、記録媒体Pを介して導電性の転写ロールを像保持体10に接触させ記録媒体Pにトナー像を転写する接触転写方式のいずれを適応してもよい。
【0076】
クリーニング装置20は、例えば、クリーニングブレードを像保持体10の表面に直接接触させて表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する部材である。クリーニング装置20としては、クリーニングブレード以外にクリーニングブラシ、クリーニングロール等を適用してもよい。
【0077】
定着装置22としては、ヒートロールを用いる加熱定着装置が好適に適用される。加熱定着装置は、例えば、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層あるいは耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し特定の接触圧で接触して配置され、円筒状芯金の外周面あるいはベルト状基材表面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラ又は加圧ベルトと、で構成される。未定着のトナー像の定着プロセスは、例えば、定着ローラと加圧ローラ又は加圧ベルトとの間に未定着のトナー像が転写された記録媒体Pを挿通させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。
【0078】
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、中間転写体を利用した中間転写方式の画像形成装置、各色のトナー像を形成する画像形成ユニットを並列配置させた所謂タンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0079】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、図7に示すように、上記図6に示す画像形成装置において、露光のための開口部24A、除電露光のための開口部24B及び取り付けレール24Cが備えられた筐体24により、像保持体10と、像保持体を帯電する帯電装置12と、露光装置14により形成した潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を一体的に組み合わせて保持して構成したプロセスカートリッジ102である。そして、プロセスカートリッジ102は、上記図6に示す画像形成装置101に脱着自在に装着されている。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は、「質量部」を意味する。
【0081】
[実施例1]
(帯電ロールの作製)
−弾性層の作製−
下記組成の混合物をオープンロールで混練りし、SUS303の直径8mmの導電性芯材表面(シャフト)に接着層を介してプレス成形機を用いて直径15mmのロールを形成、その後研磨により直径14mmの導電性弾性ロール(シャフト外周面に弾性層が形成されたロール)を得た。
・弾性材料(ゴム材:エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、Gechron3106、日本ゼオン社製) 100質量部
・導電剤(カーボンブラック、アサヒサーマル、旭カーボン社製) 15質量部
・導電剤(ケッチェンブラックEC、ライオン社製) 5質量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム) 1質量部
・加硫剤(硫黄、200メッシュ、鶴見化学工業社製) 1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM、大内新興化学工業社製) 2.0質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT、大内新興化学工業社製) 0.5質量部
・加硫促進助剤(酸化亜鉛、酸化亜鉛1種、正同化学工業社製) 3質量部
ステアリン酸 1.5質量部
【0082】
−表面層用塗布液の作製−
下記組成の混合物をビーズミルにて分散して得られた分散液を得た
・高分子材料(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液、バイロン30SS、東洋紡績社製)
100質量部
・硬化剤(アミノ樹脂溶液、スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製) 26.3質量部
・導電剤a1(カーボンブラック、MONARCH1000、キャボット社製)
20質量部
【0083】
上記で得られた分散液に下記の熱膨張性粒子を混合させ、ボールミルで1晩攪拌させた後に、MEK(メチルエチルケトン)で希釈し表面層用塗布液(粘度:50mPa・s(25℃))を得た
・熱膨張性中空粒子(平均粒径(未膨張時):10μm、マツモトマイクロスフェアーF−30(松本油脂製薬社製)) 10質量部
【0084】
−表面層の形成−
上記表面層用塗布液に前記導電弾性性ロールを浸漬塗布して、平均膜厚35μmの塗膜を得た。その後、塗膜を160℃で30分間加熱乾燥することで表面層を形成すると共に、その加熱により熱膨張粒子の径膨張も同時に行い平均粒径50μmの粒子とした。その結果、粒子が存在しない領域の平均膜厚t2が30μmの表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0085】
(帯電ロールの評価)
−表面層の観察・測定−
上記測定方法に従って、熱膨張性粒子の平均粒径t1、表面層における粒子が存在しない領域の平均膜厚t2、表面層における粒子が存在する領域の粒子を除いた実膜厚t3、表面層の表面凹凸の平均間隔Smを調べた。その結果を表1に示す。
【0086】
−印字テスト評価−
上記で得られた帯電ロールと帯電部材洗浄部材として発泡ウレタンを弾性層に用いたクリーニングロールを導電性ベアリングにて一体保持構造(図5参照)とし帯電ユニット(帯電装置)を得た。
【0087】
得られた帯電ユニットをDocuCentreColor f450用改造カートリッジをDocuCentreColor f450改造機(富士ゼロックス社製)に感光体とのニップ荷重を800gで装着し、高温高湿(28℃、85%)環境で50,000枚印字(印字条件:A3用紙全面をハーフトーン50%で出力)を行い、その後低温低湿環境(10℃、15%)で12時間放置後に印字テスト (低温低湿環境(10℃、15%)環境で印字条件:A3用紙全面をハーフトーン50%で出力)を行い下記基準に基づき目視で評価した。その結果を表1に示す。
〔印字判定基準〕
◎:帯電部材に起因するスジ、又は濃度ムラの発生なし
○:帯電部材に起因するスジ、又は濃度ムラの発生はないが、帯電部材表面に汚れあり
×:帯電部材に起因するスジ、又は濃度ムラの発生あり
【0088】
−クラック評価−
上記評価終了後にカートリッジから帯電ロールを回収し表面層の状態をマイクロスコープで拡大し評価した。その結果を表1に示す。
〔表面層判定基準〕
◎:帯電部材表面にクラックなどの亀裂なし
×:帯電部材表面の一部にクラック発生
【0089】
(実施例2)
実施例1の帯電ロールの作製において、表面層用塗布液に添加する粒子として熱膨張性中空粒子の代わりに、アクリルビーズ(平均粒径;30μm、松本製薬製:M−500)を用い、表面層用塗布液を希釈するMEKの量を減らし粘度を70mPa・s(25℃)と上げると共に、浸漬塗布の速度を下げて、表面層用塗布液の塗膜の膜厚を40μmとして、粒子が存在しない領域の平均膜厚t2が30μmの表面層を形成した以外は、実施例1と同じ方法で帯電ロールを作製し、実施例1と同じ構成で評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例3)
実施例1の帯電ロールの作製において、表面層用塗布液に添加する熱膨張性中空粒子の量を5質量部に変えた以外は実施例1と同じ方法で帯電ロールを作製し、実施例1と同じ構成で評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例1)
実施例1の帯電ロールの作製において、表面層用塗布液に希釈するMEKの量を増やし粘度を30(25℃)と下げて、表面層用塗布液の塗膜の膜厚を20μmとして、粒子が存在しない領域の平均膜厚t2が20μmの表面層を形成したこと以外は実施例1と同じ方法で帯電ロールを作製し、実施例1と同じ構成で評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
実施例1の帯電ロールの作製において、表面層用塗布液に添加する粒子として熱膨張性中空粒子の代わりに、アクリルビーズ(平均粒径;15μm、松本製薬製:M−100)を用い、表面層用塗布液を希釈するMEKの量を増やし粘度を25mPa・s(25℃)と下げて、表面層用塗布液の塗膜の膜厚を15μmとして、粒子が存在しない領域の平均膜厚t2が15μmの表面層を形成したこと以外は実施例1と同じ方法で帯電ロールを作製し、実施例1と同じ構成で評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(比較例3)
実施例1の帯電ロールの作製において、表面層用塗布液に添加する粒子として熱膨張性中空粒子の代わりに、アクリルビーズ(平均粒径:15μm、非膨張性、松本製薬製:M−100)を使用したのと、表面層用塗布液を希釈するMEKの量を増やし粘度を25mPa・s(25℃)と下げ、粒子が存在しない領域の平均膜厚t2が20μmの表面層を形成したこと以外は実施例1と同じ方法で帯電ロールを作製し、実施例1と同じ構成で評価を行った。結果を表1に示す
【0094】
【表1】

【0095】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、比較例に比べ、帯電ロールは印字時に付着する異物の影響を受けず、良好な印字品質が得られ、表面層のクラックの発生が抑制されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る帯電部材における表面層を示す拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係る帯電部材の製造方法を示す工程図である。
【図5】本実施形態に係る帯電装置の概略斜視図である。
【図6】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図7】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0097】
10 像保持体
12 帯電装置
14 露光装置
16 現像装置
18 転写装置
20 クリーニング装置
22 定着装置
24 筐体
24A 開口部
24B 開口部
24C 取り付けレール
30 シャフト
31 弾性層
32 表面層
32A 樹脂
32B 前記粒子
101 画像形成装置
102 プロセスカートリッジ
121 帯電部材
122 クリーニング部材
123 導電性軸受け
122A シャフト
122B 弾性層
124 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層と、前記弾性層上に配設され、表面に凹凸を付与するための粒子を含んで構成される表面層と、を有し、
前記粒子の平均粒径が、前記表面層における粒子が存在しない領域の平均膜厚よりも大きく、
且つ前記表面層における粒子が存在する領域の前記粒子を除いた実膜厚が、前記表面層における粒子が存在しない領域の平均膜厚の1/2以上である帯電部材。
【請求項2】
前記粒子が、膨張性の中空粒子である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の帯電部材を備える帯電装置。
【請求項4】
像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電手段と、を備え、
前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置であるプロセスカートリッジ。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備え、
前記帯電手段が、前記帯電手段が、請求項3に記載の帯電装置である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181819(P2010−181819A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27584(P2009−27584)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】