説明

帯電防止ハードコート積層体

【課題】帯電防止性及び耐擦傷性を有する帯電防止ハードコートシートまたはフィルム等の帯電防止ハードコート積層体の提供。
【解決手段】基材上に帯電防止層を介して導電性をもたないハードコート層が積層された帯電防止ハードコート積層体であって、下層の前記帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含む層であり、上層の前記ハードコート層は活性エネルギー線により硬化した樹脂組成物からなる層であり、JIS L 1094に基づき計測した摩擦帯電圧が、1000V以下である帯電防止ハードコート積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた帯電防止性を保持すると同時に、優れた表面の耐擦傷性を有する帯電防止ハードコート積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
PET、PE等のプラスチックフィルムやシートは種々の工業製品の表面保護用フィルムやタッチパネル等に幅広く使用されている。しかし、これらのフィルムやシートは摩擦等で帯電し易いという性質を有しており、そのため電子製品等においては帯電により悪影響を与えたり、また、その表面に塵やゴミが付着し易くなるといった問題があった。加えて、表面における耐擦傷性が低く、表面にキズが付き易いために、透明性が著しく低下するといった問題もあった。
上記帯電の問題を解決するためにフィルムやシートの表面上に導電層を形成させることが行われており、その改良が提案されている。
【0003】
特許文献1には、帯電防止性と同時に塗膜表面の耐擦傷性に優れる帯電防止ハードコートフィルムとして、フィルム基材上に導電層を介してハードコート層が積層された帯電防止ハードコートフィルムであって、下層の前記導電層は導電性高分子及び所望によりバインダー樹脂を含む層であり、上層の前記ハードコート層は導電性高分子とハードコート成分を含み、硬度が鉛筆硬度3H以上となる層である帯電防止ハードコートフィルムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、4級アンモニウム塩使用のフィルム塗布用静電防止剤に関し、低湿度でも静電効果が満足でき、接着性の問題をも解決した、静電防止性フィルムコーティング剤を中間層としてプラスチックフィルムを張り合わせた静電防止性ラミネートフィルムが開示されている。
【0005】
上述のように、帯電防止性と耐擦傷性共に問題解決する方法は提案されている。しかしながら、特許文献1では、特定組成の導電性ハードコート剤を作製する必要があり、特許文献2では、ラミネート工程が必要で作業が煩雑であった。
【特許文献1】特開2008−31203号公報
【特許文献2】特開2007−70396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、帯電防止性及び耐擦傷性を有する帯電防止ハードコートシートまたはフィルム等の帯電防止ハードコート積層体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため基材上に帯電防止層を挟んで活性エネルギー線により硬化した導電性をもたないハードコート層を積層することで、本発明を完成するに至った。本発明において、ハードコート層は導電性が必要でなく、単に帯電防止層への密着が良く、所望の硬度となる活性エネルギー線硬化型樹脂であればよい。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)基材上に帯電防止層を介して導電性をもたないハードコート層が積層された帯電防止ハードコート積層体であって、下層の前記帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含む層であり、上層の前記ハードコート層は活性エネルギー線により硬化した樹脂組成物からなる層であり、該積層体におけるハードコート層表面のJIS L 1094に基づき計測した摩擦帯電圧が、1000V以下である帯電防止ハードコート積層体、
(2)前記積層体におけるハードコート層表面の硬度が、鉛筆硬度H以上である上記(1)に記載の帯電防止ハードコート積層体、
(3)前記基材がシートまたはフィルムである上記(1)または(2)に記載の帯電防止ハードコート積層体、
(4)前記基材が透明であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の帯電防止ハードコート積層体、
(5)基材上に帯電防止層を介して導電性をもたないハードコート層を積層することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の帯電防止ハードコート積層体の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、帯電防止性とともに耐擦傷性が優れた帯電防止ハードコートシートまたはフィルムを比較的簡便に作製し提供することができ、さらに帯電防止層が積層中にあるため帯電防止効果が半永久的に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で使用する基材は、特に限定されず、平面をもつものであればよい。基材がシートまたはフィルムであれば、ハードコート層表面だけでなく基材の裏面も帯電防止効果を及ぼすものであり、厚手もしくは立体状の基材を使用した場合は、平面上のハードコート層表面にのみ帯電防止効果を及ぼす。基材の厚さに応じて徐々に帯電防止効果が基材の裏面まで及ばなくなり、厚さが0.5mmを超えると帯電防止層の反対側基材面まで帯電防止効果を及ぼし難くなる。
本発明で使用する基材は、透明性および平滑性に優れるものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス等から形成されるシートまたはフィルムが挙げられる。また、帯電防止層が積層される面はハードコート剤の濡れが阻害されないように表面処理されていることが好ましい。
【0011】
基材上に形成される帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含む。導電性高分子としては、例えば、既知の導電性高分子を使用することができ、具体的には以下に示すモノマーを重合させることにより製造された導電性高分子を挙げることができる。例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン、p−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェンおよび3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくは、ピロールが挙げられる。市販の導電性高分子分散液として入手でき、基材上に塗布乾燥、紫外線照射、電子線照射、加熱硬化することにより帯電防止層を形成することができる。
【0012】
帯電防止剤としては、既知の界面活性剤、4級アンモニウム塩含有化合物、3級アミン含有化合物、カルボン酸含有化合物、リン酸含有化合物、スルホン酸含有化合物が挙げられ、コーティング剤に添加後、基材上に塗布乾燥することにより帯電防止層を形成することができる。市販の帯電防止コーティング剤として入手できる。
【0013】
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウムすず)、酸化亜鉛、二酸化チタン等が挙げられる。既知の方法で、基材上に薄膜として形成したものを、本発明に用いることができる。
【0014】
ハードコート成分としては、活性エネルギー線、例えば、紫外線や電子線の照射を受けることによって架橋し硬化する光硬化性樹脂を含むものであればよい。組成的には、光硬化型モノマー及び/又は光硬化型プレポリマーと、必要に応じてその他の樹脂、溶剤、架橋剤、光重合開始剤等各種添加剤を含むものである。特に、導電性、帯電防止素材を添加しなければ、導電性をもたない光硬化樹脂となり、導電性をもたないハードコート層が得られる。本発明では、導電性をもたないとは、帯電防止効果を奏するために必要とされる表面抵抗率が1012Ω/□以下でない、ことを意味する。
【0015】
ハードコート成分とする光硬化性樹脂には、必要に応じて各種機能を追加する添加剤をコーティング剤に溶解及び/または分散により添加することができる。従って、本発明では、帯電防止に加え他の機能を追加することが容易に可能となる。
【0016】
光硬化性樹脂としては、多官能性(メタ)アクリル系モノマー及び/又は多官能性(メタ)アクリル系プレポリマーを含むものであることが好ましい。多官能性(メタ)アクリル系モノマーは、分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、(メタ)アクリロイル基ともいう)を2以上有するモノマーである。特に、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものを用いると、耐擦傷性に一層優れるので好ましい。多官能性(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。このようなモノマーは、一種単独で用いても、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、多官能性(メタ)アクリル系プレポリマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系などのいずれを用いることもできる。ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。また、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することによっても得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオール(メタ)アクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。このような(メタ)アクリレート系プレポリマーは一種単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
必要に応じて、硬化した樹脂組成物のTgを調整する目的で、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを含めてもよい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の置換基を有していてもよい炭素数1〜18、好ましくは6〜13のアルキルエステル、シクロアルキルエステル又は芳香族エステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、或いは酢酸ビニル等が挙げられる。このような中でも、アクリロイル基を一つ有する単官能(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、更に、単官能(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。また、特に、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の帯電防止ハードコート積層体は、画像表示装置等埃付着を嫌う用途で有効に使用できるため、ハードコート層は透明であることが好ましい。
【0018】
ハードコート成分としては、形成するハードコート層を鉛筆硬度H以上にし得るものが好ましい。積層体としてのハードコート層表面の鉛筆硬度は、使用する基材の材質、厚みに影響されることがあるため、ハードコート成分のみで積層体としてのハードコート層の鉛筆硬度は確定されないが、市販のエネルギー線硬化型ハードコート剤から選択して利用することができる。また、帯電防止層が接着補強の役割を成すことが期待されるため、ハードコート剤を基材へ直にコートする場合よりも、本発明では密着性に優れることが予想される。
【0019】
導電性高分子または帯電防止剤を含む組成物による帯電防止層の形成は、該組成物を基材上にコーティングし、必要により乾燥を行うことにより達成される。基材へのコーティング方法は、特に限定されず、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター等を用いてコーティングすることができる。
【0020】
ハードコート層の形成は、ハードコート成分、所望により更なる成分、および必要に応じて溶媒を添加してハードコート液を調製した後、これを基材平面上に形成された帯電防止層上にコーティングし、必要により乾燥、活性エネルギー線照射処理を行うことにより達成される。基材帯電防止層へのコーティング方法は、特に限定されず、グラビア印刷、インクジェット印刷、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター等を用いてコーティングすることができる。
【0021】
本発明のハードコート層の厚さは、0.5mmを超えないことが好ましい。0.5mmを超えると帯電防止効果が有効に発揮されない。ハードコート層が0.5mmを超えない適度に薄い場合は、効果的に帯電防止効果が発揮されるので好ましい。
【0022】
本発明の積層体におけるハードコート層表面のJIS L 1094に基づき計測した摩擦帯電圧は1000V以下である。1000Vを超えると、静電防止効果は期待できない。摩擦帯電圧は好ましくは250V以下であり、測定値が低ければ低いほど静電防止効果は確実なものとなる。
【実施例】
【0023】
以下の実施例により本発明を詳しく説明する。但し、実施例により本発明を限定するものではない。なお、実施例、比較例中の部数や%は、断り書きがない限り、質量部、質量%を表す。
【0024】
実施例1
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルム(ユニチカ社製、商品名:エンブレットSA)の処理面上にポリチオフェン系の導電性高分子分散液(東京インキ社製、商品名:導電ニスK−434)をバーコーター#5で塗布し、続けてドライヤーで揮発成分を留去して導電性高分子コートPETフィルムを得た。次いで、導電性高分子層上に紫外線硬化型コート剤(東京インキ社製、商品名:UVトップHC106)をバーコーター#4で塗布し、ドライヤーで揮発成分を留去後、80W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し照射距離10cm,ライン速度10m/minで紫外線を照射して本発明の帯電防止ハードコートフィルム1を得た。
【0025】
実施例2
バーコーター#4をバーコーター#8に替える以外は実施例1と同様にして本発明の帯電防止ハードコートフィルム2を得た。
【0026】
実施例3
厚さ100μmのPETフィルムを厚さ300μmのポリカーボネート(以下、PC)フィルム(住友ベークライト社製、商品名:ポリカエースECG100)に替える以外は実施例1と同様にして本発明の帯電防止ハードコートフィルム3を得た。
【0027】
実施例4
厚さ100μmのPETフィルムを厚さ300μmのPCフィルムに替える以外は実施例2と同様にして本発明の帯電防止ハードコートフィルム4を得た。
【0028】
実施例5
厚さ100μmのPETフィルムの処理面上にカチオン系アクリルポリマーの帯電防止コーティング剤(東京インキ社製、商品名:帯電防止ニス1326)100部とイソシアネート系硬化剤(東京インキ社製、商品名:LG硬化剤B)3部との混合物をバーコーター#5で塗布し、続けてドライヤーで揮発成分を留去し、50℃/12Hrの条件でエージングを行い帯電防止コーティング剤塗布PETフィルムを得た。次いで、帯電防止層上に紫外線硬化型コート剤(東京インキ社製、商品名:UVトップHC107)をバーコーター#4で塗布し、ドライヤーで揮発成分を留去後、80W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し照射距離10cm,ライン速度10m/minで紫外線を照射して本発明の帯電防止ハードコートフィルム5を得た。
【0029】
実施例6
バーコーター#4をバーコーター#8に替える以外は実施例5と同様にして本発明の帯電防止ハードコートフィルム6を得た。
【0030】
実施例7
実施例5において用いた帯電防止コーティング剤(東京インキ社製、商品名:帯電防止ニス1326)100部とイソシアネート系硬化剤(東京インキ社製、商品名:LG硬化剤B)3部との混合物をイソプロピルアルコール:メチルエチルケトン=2:1の混合溶剤で3倍に希釈した混合物に替える以外は実施例5と同様にして本発明の帯電防止ハードコートフィルム7を得た。
【0031】
比較例1
実施例1に用いたPETフィルムをそのまま評価した。
【0032】
比較例2
導電性高分子分散液を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0033】
比較例3
実施例1で作製した導電性高分子コートPETフィルムをそのまま評価した。
【0034】
比較例4
実施例3に用いたPCフィルムをそのまま評価した。
【0035】
比較例5
導電性高分子分散液を使用しない以外は、実施例3と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0036】
<評価>
実施例1〜7、および比較例1〜5で得られたフィルムにつき、物性を測定し、結果を表1、表2に示す。評価項目および評価基準は以下の通りとした。
なお、エネルギー線硬化塗膜の膜厚は、バーコーター各々のウエット塗布量のカタログ値、ハードコート剤の固形分より計算により算出した。また、表中、−表示は、評価しないことを示す。
【0037】
(1)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4 に従い、各種硬度の鉛筆を45度の角度で樹脂層表面に当て、傷が目視確認されなかった、最も軟らかい鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
【0038】
(2)密着
ハードコート層にX状の切れ込みを形成し、その上にセロハンテープ(28mm、ニチバン社製)を貼り付け、180度の角度で急速に剥離させる。剥離面積に基づき、以下に示す4ランクの基準で判定した。
○:全く剥離せず
○△:剥離面積が1/4以下である
△:剥離面積が1/4より大きく、3/4以下である
×:剥離面積が3/4より大きい
【0039】
(3)摩擦帯電圧
評価試料を35mm×45mmに切り取り、JIS L 1094に基づき、ハードコート層等の表面をカナキン3号と摩擦させ60秒後の電位差を摩擦帯電圧測定器(大栄科学精器製作所製、RST−200)により測定した。
【0040】
(4)耐摩擦傷性
評価試料を30mm幅に切り分け、ハードコート層等の表面を#0000のスチールウールを摩擦子に用い、荷重500g、回数100往復にて学振式耐摩試験機を用いて摩擦を行い測定サンプルを作製した。このサンプルの摩擦試験前後のヘイズ値をJIS K 7136に従い、ヘイズ測定器(東洋精機製作所製:ヘイズガード 2)により測定した。以下に示す基準で判定した。
○:目視により摩擦傷を確認し難い
×:目視により摩擦傷を容易に確認できる
【0041】
(5)静電防止効果(アッシュテスト)
評価試料について、そのハードコート層等の表面をナイロン製布を使用し30回擦った後に、たばこの灰の上から1cm上にかざして、たばこの灰がハードコート層等の表面に付着する状況から、目視により静電防止効果を判定した。
○:灰は全く付着せず、静電防止効果が非常に良好
△:灰は少ししか付着しておらず、静電防止効果が良好
×:灰は多量に付着しており、静電防止効果が認められない
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、帯電防止性及び耐擦傷性を有する帯電防止ハードコートシートまたはフィルム等の帯電防止ハードコート積層体を提供することができる。電子機器等の透明表示板として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に帯電防止層を介して導電性をもたないハードコート層が積層された帯電防止ハードコート積層体であって、
下層の前記帯電防止層は導電性高分子、帯電防止剤および導電性金属酸化物から選択される一種以上を含む層であり、
上層の前記ハードコート層は活性エネルギー線により硬化した樹脂組成物からなる層であり、
該積層体におけるハードコート層表面のJIS L 1094に基づき計測した摩擦帯電圧が、1000V以下である
帯電防止ハードコート積層体。
【請求項2】
前記積層体におけるハードコート層表面の硬度が、鉛筆硬度H以上である請求項1に記載の帯電防止ハードコート積層体。
【請求項3】
前記基材がシートまたはフィルムである請求項1または請求項2に記載の帯電防止ハードコート積層体。
【請求項4】
前記基材が透明であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止ハードコート積層体。
【請求項5】
基材上に帯電防止層を介して導電性をもたないハードコート層を積層することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止ハードコート積層体の製造方法。

【公開番号】特開2010−58267(P2010−58267A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223019(P2008−223019)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】