説明

帯電防止剤組成物、これを含有する帯電防止性樹脂組成物

【課題】 少量の添加であっても、優れた帯電防止能を発現する帯電防止剤およびこれを含有してなる制電性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマー(X)及びリチウム塩を含有する帯電防止剤組成物であって、前記ポリマー中のフッ素原子含有量が、ポリマー(X)全体の3〜35重量%であることを特徴とする帯電防止剤組成物、前記帯電防止剤組成物と樹脂組成物を含有した帯電防止性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止剤に関し、詳細には、アクリル樹脂組成物等に予め添加して使用する場合など特に好適な、フッ素原子含有ポリマーを必須成分として含有する帯電防止剤、これを含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、成型品、シート・フィルム、塗料(コーティング材)など様々な形態で広く利用されているが、絶縁抵抗性が高いため、静電気を帯びやすい。ホコリの付着による外観の悪化や製造工程上の不具合を避けるため、導電材や帯電防止剤を添加することが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照)。しかし、従来の導電剤や帯電防止剤は、樹脂に対して数パーセント以上添加する必要があり、プラスチック本来の性能に少なからず影響を及ぼすため、少量の添加で効果のある帯電防止剤が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−5967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少量の添加であっても、優れた帯電防止能を発現する帯電防止剤およびこれを含有してなる制電性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマー及びリチウム塩を必須成分とするが帯電防止剤組成物が、少量の添加であっても、優れた帯電防止能を発現することを見出し本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマー(X)及びリチウム塩を含有する帯電防止剤組成物であって、前記ポリマー中のフッ素原子含有量が、ポリマー(X)全体の3〜35重量%であることを特徴とする帯電防止剤組成物、前記帯電防止剤組成物と樹脂組成物を含有した帯電防止性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂等に対して溶解性が高く、少量の添加であっても、優れた帯電防止能を発現する帯電防止剤、これを含有した帯電防止性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるフッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマーは、フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマーであれば、特に限定されない。本発明の帯電防止材としては、帯電防止ポリマー中のフッ素含量3〜35重量%であることが必須である。更に、より好ましくは10〜30重量%である。フッ素含量3重量%より低いと表面移行性が低下し、少量で効果が発現しない。また、35重量%より高いと樹脂との相溶性が悪くなる。
【0009】
また、帯電防止ポリマー中のエチレンオキシド(−CO−)含有量は、帯電防止ポリマー中の30重量%以上であることが、帯電防止効果が顕著となることから好ましく、80重量%以下であることが、相対的にフッ素の量が増大し、表面移行性が向上することから好ましく、特に、35〜70重量%であることが好ましい。
【0010】
前記のフッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマーとしては、例えば、(1)フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)とを含有する単量体類を重合して得られるポリマー、(2)フッ素化アルキル基含有化合物(I)と反応可能な反応性基を有するモノマー(II)を重合して、ポリマーを得た後、得られたポリマーとフッ素化アルキル基含有化合物(I)を反応したポリマー等が挙げられる。
【0011】
前記フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマーとして、前記(1)のポリマーについて説明する。
【0012】
前記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、フッ素化アルキル基とエチレン性不飽和基を有する化合物であれば制限なく用いることができる。フッ素化アルキル基の炭素数としては、重合反応時に用いる溶媒、重合開始剤、及び必要に応じて併用されるその他の単量体との相溶性、及び得られるオリゴマーを界面活性剤として使用した場合に添加される材料中の溶媒や樹脂等の各種媒体への溶解性と、界面活性能力を両立させ得る観点から通常1〜20であり、4〜12であることが好ましく、特に6〜8であることが好ましい。
【0013】
なお、本発明に用いるフッ素化アルキル基を含有する重合性単量体(A)において、フッ素化アルキル基とは、アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたもの(パーフルオロアルキル基)と、アルキル基中の一部の水素原子がフッ素原子で置換されたもの〔例えば、−(CFH等〕との総称であり、直鎖状でも分岐状であっても良い。更に、該フッ素化アルキル基中に酸素原子を含むもの〔例えば−OCFCF(OCF(CF)CFCFCF、−(OCFCF−等〕も本定義中に含めるものとする。
【0014】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)としては、原料の入手が容易であり、他の成分との相溶性等に優れる点から、下記一般式(1)
CH=C(R)COO(X) (1)
(式中、Rは水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子又はシアノ基であり、Xはフッ素原子を含まない2価の連結基であり、aは0または1の整数であり、Rはフッ素化アルキル基である。)にて表される単量体であることが好ましい。
【0015】
前記一般式(1)中のXとしては、例えば、−(CH−、−CHCH(OH)(CH−、−(CHNR−SO−、−(CHNR−CO−(但し、nは1〜10の整数であり、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基である。)、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−等が挙げられる。又、前記一般式(1)中のRとしては、例えば、−C、−C15、−C17、−(CFH、−(CFCF(CF、−(OCFCFOCFCF、−(OCFCF(CF))等が挙げられる。
【0016】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例として以下の如きものが挙げられる。
a−1 :CH=CHCOOCHCH17
a−2 :CH=C(CH)COOCHCH17
a−3 :CH=CHCOOCHCH1225
a−4 :CH=CHCOOCHCH13
a−5 :CH=CHCOOCHCH
a−6 :CH=CFCOOCHCH13
a−7 :CH=CHCOOCHCF
a−8 :CH=C(CH)COOCHCF(CF
a−9 :CH=C(CH)COOCHCFHCF
a−10:CH=CHCOOCH(CF
a−11:CH=CHCOOCHCH(OH)CH17
a−12:CH=CHCOOCHCHN(C)SO17
a−13:CH=CHCOOCHCHN(C)COC15
a−14:CH=CHCOOC(CF(CF)OCF
a−15:CH=CHCOOCH(CF(CF)OCF
尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。また、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、1種類であっても良いし、構造が異なる2種類以上の化合物の混合物であっても良い。
【0017】
本発明で用いるフッ素化アルキル基を含有する重合性単量体(A)とポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)とを含有する単量体類を重合して得られるポリマー中の含フッ素部位であるフッ素化アルキル基は、モノマーとして用いるエチレン性不飽和単量体中に存在するので、必ず側鎖部分に位置することになる。また、このような前記単量体(A)の多く、例えば、前記化合物A−1〜A−15は、フロンまたは代替フロンのようなハロゲン系溶媒を使用することなく、汎用の有機溶媒(例えば、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶剤、酢酸エチルのようなエステル系溶剤、イソプロピルアルコールのようなアルコール系溶剤、トルエンのような芳香族系溶剤等)中でも収率よく重合反応を進行させることが可能であり、また、重合して得られるオリゴマーも該有機溶媒に溶解する。
【0018】
本発明に用いるポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)としては、前記重合性単量体(A)以外の化合物であり、特に、ポリオキシアルキレン構造を有するエチレン性不飽和単量体であることが好ましく、更に、ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。ポリオキシアルキレン構造の例としては、ポリオキシエチレン鎖単独、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブッロク共重合体からなる構造、ポリオキシエチレン鎖とそれ以外のポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレンブロック共重合からなる構造等を含有する重合性単量体が挙げられる。
【0019】
前記の中でも、ポリオキシエチレン構造のオキシエチレンとしての繰り返し単位数が2〜100である範囲が好ましい。
【0020】
前記ポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)の具体的な化合物としては、新中村化学工業(株)社製NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G、M−450G、AM−90G、1G、2G、3G、4G、9G、14G、23G、9PG、A−200、A−400、A−600、APG−400、APG−700、日本油脂(株)社製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、PME−4000、70FEP−350B、55PET−800、50POEP−800B、NKH−5050、PDE−50、PDE−100、PDE−150、PDE−200、PDE−400、PDE−600、AP−400、AE−350、ADE−200、ADE−400等が挙げられる。
【0021】
また、フッ素化アルキル基を含有する重合性単量体(A)とポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)との配合比は、前記のようにポリマー(X)中のエチレンオキシド(−CO−)の含有量がポリマー全体の30〜80重量%となるように調整することが好ましい。
【0022】
本発明に用いるポリマーの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合に基づき溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、乳化重合法等が挙げられる。
【0023】
次いで前記重合開始剤について述べる。重合開始剤は重合機構により種々の化合物を選択して使用できる。一般に重合機構は前記の方法があり、本発明に用いるポリマーの製造方法には重合機構の制限はないが、工業的な重合温度等の製造条件、原料モノマーの入手容易性、目的とする分子量(重合度)、ラジカル溶液重合法により製造することが好ましい。従って、重合開始剤も溶媒に可溶なラジカル重合性開始剤を用いることが好ましい。このようなラジカル重合性開始剤には、光重合開始剤と熱重合開始剤が挙げられるが、該製造法における重合制御が容易である点から、熱重合開始剤である有機過酸化物又はアゾ化合物を用いることが好ましい。前記有機過酸化物又はアゾ化合物としては、重合条件により種々選択可能であるが、具体的化合物としては、日本油脂株式会社製パーヘキサHC、パーヘキサTMH、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC等のパーオキシケタール類、パーロイル355、パーロイルO、パーロイルL、パーロイルS、ナイパーBW、ナイパーBMT等のジアシルパーオキサイド、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、パーシクロND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルIB、パーブチルL、パーブチル535、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ等のパーオキシエステル類、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(例えば、大塚化学株式会社製AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(例えば、大塚化学株式会社製AMBN)、2,2’−アゾビス−2−ジメチルバレロニトリル(例えば、大塚化学株式会社製ADVN)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(例えば、和光純薬工業株式会社製V−601)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(例えば、和光純薬工業株式会社製V−40)、2,2’−アゾビス−[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](例えば、和光純薬工業株式会社製VF−096)、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(例えば、和光純薬工業株式会社製V−30)、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(例えば、和光純薬工業株式会社製VAm−110)、2,2’−アゾビス−(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)(例えば、和光純薬工業株式会社製VAm−111)等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)とを含有する単量体類を重合して得られるポリマーは、配合する樹脂との相溶性が良好となることから、数平均分子量100,000以下が好ましく、表面に移行するエチレンオキシド(−CO−)の量が充分で、帯電防止効果が顕著となることから、1000以上が好ましく、特に1,000〜10,000が好ましい。
【0025】
重合反応させる際に、溶媒は必ずしも使用する必要はないが、作業容易性や重合反応に伴う発熱の制御容易性、安全性の点から溶媒存在下で行うことが好ましい。前記溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類のいずれも使用できる。前記溶媒としては単一であっても、2種類以上の混合溶媒であっても構わない。
【0026】
単量体類と溶媒の組み合わせによっては、溶媒への連鎖移動反応が生じ得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーの分子量に影響を与える場合がある。例えば、単量体(I)中に(メタ)アクリルモノマーを含有する場合、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンのようなケトン類は連鎖移動反応を起し難いが、イソプロピルアルコール等のアルコール類は連鎖移動反応を起し易い。本発明の製造方法では、単量体類(I)と溶媒との組み合わせにより、広範な溶媒を選択することが可能であり、従って、場合によっては、溶媒への連鎖移動反応を利用し分子量を調整することも可能である。
【0027】
単量体類と重合開始剤との溶媒への注入方法についても制限はないが、多量の重合開始剤を使用するため、重合反応の制御、安全性の点から滴下しながら注入することが好ましい。滴下する方法としては、単量体類、重合開始剤と溶媒の組み合わせ、目的とする重合度又は分子量、安全性等を考慮し、単量体類、重合開始剤、溶媒の任意な組み合わせからなる滴下液が調製される。このような、単量体類、重合開始剤、溶媒の任意な組み合わせからなる滴下液は、単量体類、重合開始剤、必要に応じて使用する溶媒との相溶性を考慮して決定される。一般に含フッ素化合物を含む溶液を調製する場合、その種類や濃度に制約を受ける場合がある。このような制約は、得られるオリゴマーの重合度又は分子量等の設計に影響したり、製造設備上の制約を受けたりする場合もあるが、本発明で用いる単量体類、重合開始剤は、無溶媒でも滴下液を調製できる組み合わせがあるばかりでなく、各々が広範な溶媒に可溶であるため、その組み合わせの中から、重合度又は分子量の設計や製造設備に影響を及ぼすことなく、最適な滴下液を調製することが可能である。
【0028】
さらに、製造条件によっては、滴下液として高濃度のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と溶媒の混合物、単量体類、単量体類と溶媒との混合物、単量体類と重合開始剤との混合物、単量体類、重合開始剤及び溶媒の混合物等を調製する必要が生じる。このような場合であっても、併用するその他の単量体類、重合開始剤、溶媒との組み合わせにもよるが、多くのフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、均質溶液又は分散液を得ることが可能である。滴下液が均質又は分散状態であることは、共重合反応をより均質に進行させる上で重要である。これは得られるポリマーの応用特性(例えば、溶剤や樹脂溶液への溶解性、界面活性能)にも影響する場合があり、通常、均質な共重合体が好ましく、滴下液も均質であることが好ましい。滴下液の均質又は分散性は、上記したフッ素化アルキル基鎖長およびフッ素原子含有量に強く依存する。本発明においては、広い範囲で滴下液の均質又は分散性を保てることから、重合条件の許容範囲が広くなり、ポリマーを合理的且つ効率的に設計できるという利点を有する。
【0029】
前記フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマーとして、前記(2)のポリマーについて説明する。
前記(2)のポリマーとしては、例えば、下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)等が挙げられる。
(a)イソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物とポリオキシエチレン基含有不飽和化合物とを含有する重合性単量体類を重合してポリマーを得た後、得られたポリマー(IIa)に、例えば、フッ素化アルコール類等のフッ素化アルキル基活性水素化合物(Ia)を反応させて得られるポリマー、
(b)水酸基等の活性水素基含有不飽和化合物とポリオキシエチレン基含有化合物とを含有する重合性単量体類を重合してポリマーを得た後、得られたポリマーを得た後、得られたポリマー(IIb)に、例えば、イソシアネート基を含有するフッ素系化合物(Ib)を反応させて得られるポリマー、
(c)エポキシ基含有不飽和化合物とポリオキシエチレン基含有化合物とを含有する重合性単量体類を重合してポリマーを得た後、得られたポリマー(IIc)に、例えば、フッ素化アルコール類等のフッ素化アルキル基活性水素化合物(Ic)を反応させて得られるポリマー、
(d)イソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物を含有する重合性単量体類を重合してポリマーを得た後、得られたポリマー(IId)に、例えば、フッ素化アルコール類、・・・・・等のフッ素化アルキル基活性水素化合物(Id)とポリエチレングリコールとを反応させて得られるポリマー、
(e)ポリオキシエチレン基含有化合物とカルボキシル基とを含有する重合性単量体類を重合してポリマーを得た後、得られたポリマー(IIe)に、フッ素化アルキル基含有グリシジル化合物等のフッ素化アルキル基含有エポキシ化合物(Ie)を反応させて得られるポリマー。
【0030】
前記(a)において用いられるイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【化1】

【0032】
なお、前記(2)で用いられるポリオキシエチレン基含有不飽和化合物としては、前述の重合性単量体(B)が挙げられる。
【0033】
また、フッ素化アルキル基活性水素化合物(Ia)としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化2】

【0035】
前記(b)においてポリマー(IIb)に用いる水酸基等の活性水素基含有不飽和化合物としては、たとえば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスルトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、前記水酸基を含むモノマーをカプロラクトン変性したモノマー(商品名FM−1、FM−3、FM−10、FA−1、FA−3でダイセル化学工業より市販されている。)が挙げられる。
【0036】
前記イソシアネート基を含有するフッ素系化合物(Ib)としては、後述するフッ素化アルキル基活性水素化合物と各種ポリイソシアネート類との反応物が挙げられる。
【0037】
前記(c)に用いられるエポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、分子中にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらの例としては、以下の化合物が知られている。例えば、化合物の末端にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートしては、グリシジルメタクリレートや1−メチル−1,2−エポキシ−エチルメタクリレート等がある。また、脂環式エポキシを持つ(メタ)アクリレートは、ダイセル化学工業製の「サイクロマーA−200」(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート)や「サイクロマーM−100」(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)等がある。
【0038】
前記フッ素化アルキル基含有活性水素化合物(Ic)としては、前記フッ素化アルキル基活性水素化合物(Ia)が使用可能であり、更に、下記構造式で表されるカルボン酸類も使用できる。
【0039】
【化3】

【0040】
前記(d)において用いるイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物としては、前述のイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物が挙げられ、前記フッ素化アルキル基活性水素化合物(Id)としては、前記化合物フッ素化アルキル基活性水素化合物(Ia)が使用可能である。また、ポリエチレングリコールとしては、種々の分子量のものが使用可能であり、ポリオキシエチレン構造の含有率とフッ素原子含有率とから、適宜決定できる。
【0041】
前記(e)のポリマーにおいて用いるフッ素化アルキル基含有グリシジル化合物等のフッ素化アルキル基含有エポキシ化合物としては、例えば、下記の構造を有するものが挙げられる。(下記構造式中のGは、グリシジル基を表す。)。
C4F9SO2N(Bu)CH2CH2OG
C4F9CH2CH2OG
C6F13CH2CH2OG
GOCH2CH2C6F13CH2CH2OG
C8F17CH2CH2OG
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2OG
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2OG
GOCF(CF3)OCF2CF2OCF(CF3)CH2OG
【0042】
また、カルボキシル基とを含有する重合性単量体類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレート等が挙げられる。
【0043】
また、本発明に用いるポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲で、前記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)以外の重合性単量体を併用してもよい。これらの例としては、単量体(A)、単量体(B)と共重合するものであれば特に制限なく使用できる。例えば、スチレン、ブタジエン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシルブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、即ちアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸誘導体としてアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以後この表現は、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を総称するものとする。)、即ち(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ステアリルエステル等、また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のヒドロキシアルキルエステル、即ち2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等、更にはモノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェ−ト、モノ(メタクリロキシエチル)アシッドホスフェ−ト、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアミノアルキルエステル即ちジメチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノプロピルエステル等、また(メタ)アクリル酸の、炭素数が3〜18のエーテル酸素含有アルキルエステル、例えばメトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、ブチルカルビルエステル等、更に環状構造含有モノマーとしては、例えばジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等、またアルキル炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル、即ちグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等、また、共栄社化学株式会社製HOA−MS、HOA−MPL、HOA−MPE、HOA−HH、東亜合成株式会社製アロニックス M−5300、M−5400、M−5500、M−5600、M−5700等の市販品が挙げられる。
【0045】
本発明に用いるリチウム塩としては、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、アセチルアセトン・リチウム等が挙げられる。これらの中でも、前記ポリマーとの相溶性が良好なことから、過塩素酸リチウムが好ましい。
【0046】
また、無機系Li塩化合物の添加量は、フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマー(X)、例えば、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)とを含有する単量体類を重合して得られるポリマーのエチレンオキシドポリマー中のエチレンオキシド(−CO−)1モルに対して、0.2〜1.5モル含有していることが好ましい。
【0047】
本発明の帯電防止剤組成物には、必要に応じて、更に、有機溶剤を含有することが好ましい。好ましい有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。
【0048】
帯電防止剤組成物を溶液として用いる場合の固形分濃度としては、特に限定されないが、作業性の観点から5〜60重量%が好ましい。
【0049】
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、本発明の帯電防止剤組成物を後述する樹脂類(X)に混合することで得られる。混合する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂としては、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンー(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂やポリオキシメチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、PPS樹脂、ポリカプロラクタム、ポリカプロラクトン、ナイロン66、ポリスルフォン、ポリエステル、ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタンエラストマー等があげられる。これら熱可塑性樹脂のなかでも、ポリスチレン、スチレンーアクロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の帯電防止剤として好ましい。
【0050】
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、この場合、熱硬化性樹脂の前駆体又はプレポリマーと本発明の帯電防止剤組成物を予め混合した後、重合/硬化させることができる。
【0051】
前記の樹脂類(Y)の中でも、例えば、非フッ素化アクリル系重合体(Ya)とフッ素化オレフィン系重合体(Yb)とを組み合わせた樹脂類、或いは、フッ素化アクリル系重合体(Yc)、非フッ素化アクリル系重合体(Ya)及びフッ素化オレフィン系重合体(Yb)との組み合わせた樹脂類に本発明の帯電防止剤組成物を組み合わせた樹脂組成物は、防汚染性に優れた帯電防止性樹脂組成物を得られることから好ましい。
【0052】
前記非フッ素化アクリル系重合体(Ya)としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を含有する重合体が挙げられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、ジブチルフマル酸エステル、ジメチルフマル酸エステル等の単独又は共重合体を挙げることができる。
【0053】
また、フッ素化オレフィン系重合体(Yb)とは、フッ素化オレフィンモノマーを含む重合体であって,有機溶剤に分散又は溶解するものである。その具体例として、例えばポリ(テトラフロロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(エチレン・テトラフロロエチレン)共重合体、ポリ(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン)共重合体、ポリ(テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体、ポリ(フッ化ビニルエ−テル)、そしてポリ(フッ化ビニルエ−テル・テトラフロロエチレン)共重合体等が挙げられるが、他のアクリル成分との相溶性、溶剤に対する溶解性などの加工性と防汚性を兼備するという点で、特にフッ化ビニリデン系重合体が好ましい。
【0054】
前記フッ化ビニリデン系重合体としては、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン)共重合体、ポリ(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体 、ポリ(テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体、ポリ(フッ化ビニリデン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体等が挙げられる。
【0055】
また、前記フッ素化オレフィン系重合体(Yc)としては、前記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)や下記パーフルオロアルキル基およびポリジメチルシロキサン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物類(1)〜(12)を重合したものが挙げられる。
【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
なお、非フッ素化アクリル系重合体(Ya)、フッ素化オレフィン系重合体(Yb)、フッ素化アクリル系重合体(Yc)の混合割合は、非フッ素化アクリル系重合体(Ya)、フッ素化オレフィン系重合体(Yb)のみの場合は、その重量比(Ya)/(Yb)が0.5〜4.0の範囲にあることが好ましい。また、非フッ素化アクリル系重合体(Ya)、フッ素化オレフィン系重合体(Yb)、フッ素化アクリル系重合体(Yc)を用いる場合には、重量比で、(Ya)/(Yb)/(Yc)=(35〜70)/(20〜50)/(2〜15)であることが、防汚染性や相溶性、透明性が良好となる点で好ましい。
【0059】
帯電防止性樹脂組成物と混合する樹脂の配合比(固形分比)は、少量の添加で効果があるので、例えば、前記帯電防止剤組成物の固形分含有量が帯電防止性樹脂組成物固形分全体の0.1〜3重量%であるが、塗工した場合の塗膜の透明性に優れていることから好ましい。
【0060】
本発明の帯電防止剤組成物は、少量の添加量であっても、充分な帯電防止性能を有している。そのため、これを含有する帯電防止性樹脂組成物は種々の用途に使用可能である。例えば、溶剤型防汚染コート剤に帯電防止剤組成物を配合した組成物は、高い帯電防止性を有していながら、従来の帯電防止剤を多量に含有する帯電防止性樹脂組成物と比較して、機械物性等の低下が少ない。また、例えば、電子写真方式の複写機やプリンタにおいて、感光体ドラムに接して回転するように設けられた帯電ロールや現像ロール等の半導電性ロール用に用いると、帯電量の調節に自由度が増して好ましい。
【実施例】
【0061】
次に本発明をより詳細に説明するために実施例を掲げる。なお、例中の部及び%は特に断りのない限り、すべて重量部、重量%を表す。
【0062】
表面固有抵抗:作製した塗膜板を23℃、50%RH雰囲気下で24時間放置した後、同雰囲気下で東亜ディーケーケー株式会社製超絶縁計DSM−8103を用いて測定した。(印加電圧1000V)
【0063】
塗膜作製条件(1)(UV硬化塗膜):調製した硬化性組成物をバーコーター(#13)でPETフィルム(東洋紡(株)製コスモシャインA4300)に塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(照射強度80W/cm、積算光量1000mJ/cm2)で紫外線を照射して、硬化塗膜を得た。
【0064】
塗膜作製条件(2):調製した溶剤乾燥型塗料組成物を、あらかじめアセトンで表面を洗浄したガラス板に、0.152mmアプリケーターで塗布し、室温で1時間風乾後、100℃で30分乾燥し、塗膜を得た。
【0065】
水洗試験:作製した塗膜板を1時間流水にさらした後、水を拭き取り、60℃で15分乾燥した。これを、合計3回繰り返した。この塗膜の表面固有抵抗を測定した。
【0066】
なお、重量平均分子量、数平均分子量の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。
カラム温度:40℃
移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/分
試料濃度:1.0重量%
試料注入量:100マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0067】
合成例1
攪拌装置、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えたガラスフラスコに重合溶剤としてイソプロパノールを133g仕込む。一方、CH=CHCOOCHCH13(a−4)40g、CH=CHCOO(CO)H(n=10)60g、イソプロパノール69gをあらかじめ混合し均一に溶解させたものと、重合開始剤2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB) 2gをイソプロパノール31gに溶解させたものをそれぞれ滴下ロートに仕込み、滴下液とする。滴下液を仕込んだ滴下ロートをガラスフラスコにセットし、窒素ガスを注入しながら80℃に昇温する。80℃に到達したら、滴下液を2時間かけて一定量ずつ同時に滴下する。その後、15時間ホールドして重合を完結させ、表1に示すポリマー(A−1)を得た。
【0068】
合成例2
攪拌装置、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えたガラスフラスコに重合溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を133g仕込む。一方、(a−4)40g、CH=CHCOO(CO)H(n=10)60g、MIBK50gをあらかじめ混合し均一に溶解させたものと、重合開始剤MAIB 1gをMIBK45gに溶解させたものをそれぞれ滴下ロートに仕込み、滴下液とする。滴下液を仕込んだ滴下ロートをガラスフラスコにセットし、窒素ガスを注入しながら85℃に昇温する。85℃に到達したら、滴下液を2時間かけて一定量ずつ同時に滴下する。その後、1時間30分ホールドした後、重合開始剤MAIB 0.5gをMIBK5gに溶解させたものを滴下する。さらに2時間30分ホールドした後、110℃に昇温して3時間ホールドし重合を完結させ、表1に示すポリマー(A−2)を得た。
【0069】
合成例3
CH=CHCOOCHCH13(a−4)20g、CH=CHCOO(CO)H(n=10)80gを用いた以外は、合成例1と同様にして、表1に示すポリマー(A−3)を得た。
【0070】
合成例4
攪拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに重合溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を233.3g、モノマーとして(a−4)40g、CH2=CHCOO(EO)nH(n=10)40g、アクリル酸ブチル20g、重合開始剤としてAIBN 1.0gを仕込む。窒素ガスを注入しながら85℃に昇温する。85℃に到達後、5時間ホールドし、さらに110℃に昇温して2時間ホールドし重合を完結させ、表1に示すポリマー(A−4)を得た。
【0071】
実施例1〜7、比較例1〜4
合成例1〜4で得られたポリマー(A−1)〜(Aー4)とリチウム塩と後述する樹脂組成物とを、表2、3に示す割合で混合して、帯電防止性樹脂組成物(UV−11、SB−1)を調製した。
次いで、得られた帯電防止性樹脂組成物を塗膜作製条件(1)、(2)で塗膜を作成した。得られた塗膜について前記の水洗試験を行い、水洗試験前後の表面固有抵抗を測定し、帯電防止能を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
UV−11:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物とポリマー(A−1)を100/4/1(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。
UV−12:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物とポリマー(A−1)を100/4/2(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。
【0074】
UV−21:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物とポリマー(A−2)を100/4/2(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。
【0075】
UV−31:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物とポリマー(A−3)を100/4/1.2(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。
UV−32:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物とポリマー(A−3)を100/4/2.3(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。
【0076】
SB−1:アクリル樹脂とフッ素樹脂の混合物(溶剤溶液)であるディフェンサTR−306(大日本インキ化学工業(株)製)にポリマー(A−1)を混合し、樹脂分が10重量%になるようにMIBKで希釈した。
前記の組成物には、表2に記載されたリチウム塩が添加されている。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
UV−10:リチウム塩を添加しない以外は、前記UV−11と同一の組成物である。
UV−Rf1:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物と表3中のRf化合物1を100/4/2(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。
UV−Rf2:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物と表3中のRf化合物2を100/4/1(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。
UV−40:UV硬化型樹脂ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)、光開始剤イルガキュア184の混合物とポリマー(A−4)を100/4/1(有効成分比)で混合し、ユニディック シンナー#16で50重量%に希釈した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマー(X)及びリチウム塩を含有する帯電防止剤組成物であって、前記ポリマー(X)中のフッ素原子含有量が、ポリマー(X)全体の3〜35重量%であることを特徴とする帯電防止剤組成物。
【請求項2】
前記ポリマー(X)中のエチレンオキシド(−CO−)の含有量がポリマー全体の30〜80重量%である請求項1記載の帯電防止剤組成物。
【請求項3】
前記リチウム塩が、ポリマー(X)中のエチレンオキシド(−CO−)1モルに対して、0.2〜1.5モル含有する請求項2記載の帯電防止剤組成物。
【請求項4】
前記フッ素化アルキル基とポリオキシエチレン構造とを含有するポリマー(X)がフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)とポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)とを含有する単量体類を重合して得られるポリマーである請求項1記載の帯電防止剤組成物。
【請求項5】
前記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)が下記一般式(1)
CH=C(R)COO(X) (1)
(式中、Rは水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子又はシアノ基であり、Xはフッ素原子を含まない2価の連結基であり、aは0または1の整数であり、Rはフッ素化アルキル基である。)で表される単量体である請求項2記載の帯電防止剤組成物。
【請求項6】
前記ポリオキシエチレン基を含有する重合性単量体(B)が、ポリオキシエチレン基含有(メタ)アクリレートである請求項4又は5記載の帯電防止剤組成物。
【請求項7】
前記リチウム塩が過塩素酸リチウムである請求項1〜6のいずれか1つに記載の帯電防止剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の帯電防止剤組成物と前記ポリマー(X)以外の樹脂(Y)を含有する帯電防止性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリマー(X)以外の樹脂(Y)が、アクリル樹脂である請求項8記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項10】
前記前記ポリマー(X)以外の樹脂(Y)が、アクリル樹脂とフッ素樹脂である請求項8記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項11】
前記帯電防止剤組成物の固形分含有量が帯電防止性樹脂組成物固形分全体の0.1〜3重量%である請求項8記載の帯電防止性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−114282(P2009−114282A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287214(P2007−287214)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】