説明

帯電防止性で、滑りやすい湾曲防止背面コーティング

【課題】画像形成ベルトの裏側に摩擦帯電が蓄積するのを抑える/止めるための湾曲防止背面コーティングを有する画像形成ベルトの提供。
【解決手段】画像形成装置の可とう性部材および可とう性要素に望ましい平坦性を与える、湾曲防止背面コーティング層1の配合物に関する。より特定的には、帯電防止性ポリマーと、表面エネルギーの小さなA−B型ジブロックコポリマーと、接着促進剤とのポリマーブレンドを含むように配合された湾曲防止背面コーティングを含む、画像形成体。本実施形態は、電気伝導性であり、さらに、表面接触摩擦を実質的に下げ、作業場所で、通常の画像形成ベルト操作条件で、画像形成ベルトの裏側に摩擦帯電が蓄積するのを抑える/止める。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書で開示される実施形態は、一般的に、特定のポリマーブレンドを含む湾曲防止背面コーティングを備えるように調製された、可とう性の改良された電子写真式画像形成ベルトに関し、このポリマーブレンドは、帯電防止性ポリマーと、表面エネルギーの小さなポリカーボネートとを含み、これによって、(1)接触摩擦を減らし、画像形成ベルトを動かしやすくするために、表面エネルギーを下げる効果を与え、(2)作業場所で、通常の画像形成ベルト操作条件で、摩擦帯電が蓄積するのを止めるために、帯電防止性を付与する。
【0002】
現行の有機ベルト感光体では、感光体の上部のCTLコーティングによって引き起こされる残留応力のバランスをとり、湾曲しないようにするために、湾曲防止背面コーティング層を用いる。それに加え、ACBC層は、光学的に適切な透過率を有しているべきであり(例えば、透明)、その結果、感光体を背面から消去することができる。湾曲防止背面コーティング層のための既存の配合物は、画像形成装置を使用している間、湾曲防止背面コーティング層に摩擦帯電が発生してしまうような低い伝導率を有している。この摩擦帯電によって、画像形成装置中の抗力が増え、モーターの負荷が増え、湾曲防止背面コーティング層の摩耗が増える。上述の層の摩擦帯電をなくすために、さらなる要素(例えば、活性な反対電荷のデバイス)または添加剤(例えば、伝導性薬剤)を用いている。しかし、これらの選択肢は、費用がかさみ、さらなる要素を含むことで複雑化するか、または、画像形成体を背面から消去するのに適した光学的透明度を有さないACBC分散物を生じてしまうような添加物を含むため、望ましくない。したがって、上述の問題を被らない改良されたACBCが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に示されている実施形態によれば、可とう性基板と;この基板の第1の面に配置されている、少なくとも1つの画像形成層と;この少なくとも1つの画像形成層とは反対の側にある、基板の第2の面に配置されている、湾曲防止背面コーティングとを備える可とう性電子写真式画像形成体が提供され、この湾曲防止背面コーティングが、帯電防止性ポリマーと、表面エネルギーの小さなポリカーボネートとを含み、その中にコポリエステル接着促進剤を含むようなポリマーブレンドを含んでおり、この表面エネルギーの小さなポリカーボネートが、2個のセグメントに分かれたブロックを含むA−B型ジブロックコポリマーであり、第1のセグメントブロック(A)が、
【化1】


であり、式中、ポリジメチルシロキサン(PDMS)繰り返し単位xが、約10〜約70であり、yが、約1〜約15であり、第2のセグメントブロック(B)が、
【化2】


からなる群から選択され、式中、zが、約50〜約400である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、本開示の実施形態にしたがって調製された、湾曲防止背面コーティング層(ACBC)配合物を備える、可とう性ベルト形状をした多層電子写真式画像形成体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
従来の負に帯電した可とう性多層電子写真式画像形成体は、上部の一番外側に、露出したCTLを有しており、底部に、露出したACBC層を有しており、その状態が図に示されている。基板10は、任意要素の電気伝導層12を備えている。任意要素の正孔遮蔽層14を、電気伝導層12の上に塗布し、次いで、その上に任意要素の接着層16を塗布することができる。電荷発生層(CGL)18は、層16、14、12、10の上側にあるが、上部の一番外側にあるCTL20よりは下にある。任意要素のアース板層19は、CGL18およびCTL20を電気伝導層12に動作可能に接続しており、電気を導通させるために備えられている。ACBC層1は、通常は、基板10の面に塗布されるべき最後の層であり、画像形成体を平面にするために、電気的に活性な層と反対側にある。
【0006】
CTLは、CGLにコーティングされる一番外側の上部層であり、溶液コーティングによって塗布されるため、その後、濡れた状態で塗布されたCTLコーティングを約120℃の高温で乾燥させ、最終的に、コーティングされた感光体を、約25℃の周囲の室温まで冷却する。したがって、数千フィートのコーティングされた多層感光体材料の画像形成体ウェブストックの製造が、CTLコーティングに仕上げ溶液を塗布した後の乾燥/冷却プロセス中に行なわれる場合、動きを抑制するものがなければ、自然と上方向に曲がり、ロール状になってしまうだろう。このように上方向に曲がるのは、CTLと基板支持体とで熱収縮率が違うからである。典型的な感光デバイス中のCTLは、可とう性基板支持体よりも熱収縮係数が約3.7倍大きいため、CTLは、最終的に感光ウェブストックが周囲の室温まで冷めると、可とう性基板支持体よりも大きく寸法が縮んでしまう。CTLコーティングが終了した後に、感光ウェブストックが曲がってしまうのは、加熱/冷却サイクルおよび処理工程の結果である。上方向に曲がってしまう現象が発生するのは、以下の機構によって説明することができる。(1)濡れた状態で塗布された電荷移動層を有するウェブストックを高温で乾燥させ、この濡れたCTLコーティングが、120℃の高温で乾燥させている間に溶媒が失われるが、120℃で、CTLは、溶媒を失った後に、粘性の流動性液体のままであるときに、寸法が縮む。この物質のガラス転移点(Tg)は85℃であるため、CTLは、すべての溶媒が失われた後に、調節しなおし、内部応力を開放し、寸法安定性を維持するように流動すると思われ;(2)粘性液体状態のCTLをさらに冷却し、ガラス転移点(Tg)である85℃に到達すると、このTgで、CTLは粘性液体から固体層に変化するため、CTLは即座に固化し、その下にあるCGLに付着し;(3)感光ウェブの固体CTLを最終的に85℃から25℃の周囲室温まで冷却すると、可とう性基板支持体よりも寸法の熱圧縮形数が約3.7倍大きいため、可とう性基板支持体よりも大きく縮む。このように寸法圧縮度が異なることによって、CTLに引張ひずみが蓄積し、そのために、この時点で、感光ウェブが上方向に引っ張られ、曲がってしまう。この時点で動きを抑制するものがなければ、感光ウェブストック(厚み29マイクロメートルのCTLと、3 1/2 milのポリエチレンナフタレート基板とを有する)は、自然に1 1/2インチのロール状に曲がってしまうだろう。この曲がりを打ち消すために、可とう性基板支持体のうち、CTLを備えている側とは反対側の背面にACBCが塗布され、感光ウェブストックが望ましい平面性を保つ。
【0007】
曲がり制御のために塗布されたACBCは、感光体表面に残る残留電圧を、電子写真式画像形成プロセス中に、ベルトの背面から光を照射して消すことができるように、光学的に適切な透過率(例えば、透明)を有している必要がある。ACBC層用の既存の配合物は、非伝導性ポリマーが配合されているため、ACBC層に、画像形成装置の使用中に、ベルト支持モジュール要素に対する摩擦相互作用によって、摩擦による帯電が蓄積し、画像形成装置の抗力が増し、モーターへの負荷が大きくなり、ACBC層の摩耗が強くなる。また、このとき、通常の機械でベルトが機能する条件では、感光ベルトが回転する動きが遅くなってしまうほどに、摩擦による帯電が蓄積する。さらなる機械要素(例えば、活性な反対電荷のデバイス)を用い、層が摩擦によって帯電しないようにするか、または帯電しにくくする。しかし、さらなる要素を使用すると、費用がかさみ、感光体の機能を望ましくない程度まで複雑にしてしまうこともある。
【0008】
または、ACBC層にカーボンブラック分散物のような伝導性薬剤を入れ、摩擦による電荷が外に出ないように、代替的なACBCの組成を変更した。残念なことに、これらの分散物は、それほど安定ではなく、コーティング溶液にカーボンブラック粒子が浮いてしまうという問題が生じており、分散物を過剰に混合する必要があり、そうすると、伝導性が下がってしまう。さらに、ACBC層でカーボンブラック分散物を使いすぎると、別の問題が生じ、摩擦による帯電を有効になくすのに必要な伝導性を達成するには、高レベルの粒子分散物を用いる必要がある。それにもかかわらず、添加量が多くなると、ほぼ常に不透明な層が生じてしまうというだけではなく、光学的に、感光ベルトを背面から有効に消去するのに適さなくなり、他の有害な影響が出てしまうことが多いことがわかっている。したがって、これらの欠点をもたない新規の目新しいACBC配合物を作製することが必要である。
【0009】
本開示では、実施形態は、一般的に、可とう性の改良された静電複写式画像形成体に関し、特に、可とう性の、多層構造の電子写真式画像形成体または感光体に関し、本開示のACBCは、2つの異なるフィルムを形成する熱可塑性材料をブレンドしたポリマーによって作られ、片方の熱可塑性材料は、帯電防止特性を付与し、他方は、表面接触を低下させるために、表面エネルギーを下げる効果を付与する。本発明の実施形態および本開示の方法にしたがって調製され、得られたACBCは、良好な光学的透明度を有しており、さらに、画像形成体の平坦性に影響を与える湾曲防止性を制御する性質を有している。これらの実施形態では、熱可塑性材料の1つは、ポリエステル単位、ポリカーボネート単位、ポリエチレングリコール単位からなる帯電防止性コポリマーを含んでいる。第2の熱可塑性材料は、ビスフェノールポリカーボネートブロック(B)のセグメントが、ポリジメチルシロキサンブロック(A)のセグメントに線形に結合したものからなるA−B型のジブロックコポリマーであり、これにより、ACBCの表面エネルギーが低くなり、滑りやすくなる。
【0010】
可とう性感光ベルトを用いる電子写真式再現装置またはデジタル印刷装置では、光感受性部材の上に、光像を静電潜像の形態で記録し、次いで、現像混合物を塗布することによって、この潜像を目に見えるようにする。中にトナー粒子を含む現像剤を、静電潜像と接触させ、電荷保持性の表面を有する感光ベルトの上に画像を現像する。次いで、現像されたトナー画像は、転写体によって画像が移動し、複写用出力基板(例えば、紙)に転写されてもよい。
【0011】
再び図を参照すると、負に帯電した可とう性の、ベルト形状を備える多層構造の電子写真式画像形成体の実施形態が示されている。見ればわかるように、ベルト形状曲がり防止性背面コーティング(ACBC)1と、支持基板10と、伝導性アース面12と、アンダーコート層14と、接着層16と、電荷発生層(CGL)18と、電荷移動層(CTL)20とを備えている。任意要素のオーバーコート層32、アース板19も含まれていてもよい。CGL18と、負に帯電した画像形成体のCTL20の形成は、ここでは2個の別個の層を有するように図に記載され、示されているが、それでも、これらの層の機能的要素が交互に合わされていてもよく、単一層になるように配合されてもよいことが理解されるであろう。しかし、CGL18は、CTL20の上部に配置されてもよく、その場合には、したがって、画像形成体は、正に帯電した部材に変換される。
【0012】
感光材の支持基板10は、不透明であってもよく、実質的に透明であってもよく、必要な機械特性を有する任意の適切な有機材料または無機材料を含んでいてもよい。基板全体が、電気伝導性表面と同じ材料を含んでいてもよく、または、電気伝導性表面は、単に、基板のコーティングであってもよい。例えば、金属または金属アロイのような任意の適切な電気伝導性材料を用いてもよい。
【0013】
基板10は、例えば、平板状、円筒形、ドラム状、巻物状、末端のない可とう性ベルトなどの多くの異なる形状を複数有していてもよい。図に示されるように、基板がベルトの形態である場合、ベルトは、つなぎ目があってもよく、つなぎ目がなくてもよい。他の実施形態では、本明細書の感光材は、剛性であり、ドラム形状である。
【0014】
可とう性ベルトの基板10の厚みは、柔軟性、機械的性能、経済的な考慮事項を含む多くの因子によって変わる。この実施形態の可とう性支持基板10の厚みは、最適な機械的機能のために、約1.0〜約7.0mil、または約2.0〜約5.0milであってもよい。
【0015】
電気伝導性アース面12は、電気伝導性金属層であってもよく、この層は、例えば、任意の適切なコーティング技術(例えば、真空蒸着技術)によって、基板10に形成されていてもよい。金属としては、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、および他の伝導性物質、およびこれらの混合物が挙げられる。伝導層は、電子写真用伝導体にとって望ましい光学的透明度および柔軟性に依存して、厚みが実質的に広範囲に変化してもよい。したがって、可とう性感光性画像形成デバイスの場合、伝導層の厚みは、電気伝導性、柔軟性、光透過率の最適な組み合わせのために、少なくとも約20オングストロームであってもよく、約750オングストローム以下であってもよく、少なくとも約50オングストロームであってもよく、または、約200オングストローム以下であってもよい。
【0016】
電気伝導性アース平面層12を堆積させた後、正孔遮蔽層14を電気伝導性アース平面層12に塗布してもよい。正に帯電した感光材のための電子遮蔽層は、正孔が、感光材の画像形成表面から伝導層に移動することは可能である。負に帯電した感光材の場合、正孔が伝導層から反対側の光伝導層に入り込むのを防ぐ障壁を形成することが可能な、任意の適切な正孔遮蔽層を利用してもよい。
【0017】
図に示されている実施形態では、界面層16は、遮蔽層14とCGL18との間に位置していてもよい。界面層は、コポリエステル樹脂を含んでいてもよい。接着界面層を正孔遮蔽層14に直接塗布してもよい。したがって、いくつかの実施形態の接着界面層は、接着による結合性を高め、結合部を与えるように、その下にある正孔遮蔽層14と、その上にある電荷発生層18の両方に連続的に直接接触していてもよい。さらに他の実施形態では、接着界面層は、まったく含まれない。
【0018】
接着界面層は、乾燥後の厚みが、少なくとも約0.01マイクロメートル、または約900マイクロメートル以下であってもよい。いくつかの実施形態では、乾燥時の厚みは、約0.03マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0019】
アース板層19は、フィルムを形成するポリマーバインダーと、電気伝導性粒子とを含んでいてもよい。電気伝導性アース板層19で、任意の適切な電気伝導性粒子が用いられてもよい。電気伝導性粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、銅、銀、金、ニッケル、タンタル、クロム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、酸化インジウムスズなどが挙げられる。電気伝導性粒子は、任意の適切な形状を有していてもよい。形状としては、不規則な形、粒状、球状、楕円形、立方体、フレーク状、繊維状などが挙げられる。アース板層は、厚みが、少なくとも約7マイクロメートル、または約42マイクロメートル以下、または少なくとも約14マイクロメートル、または約27マイクロメートル以下であってもよい。
【0020】
その後、CGL18を、アンダーコート層14に塗布してもよい。電荷発生/光伝導性材料を含み、粒子の形態であってもよく、フィルムを形成するバインダー(例えば、不活性樹脂)に分散した形態であってもよい、任意の適切な電荷発生バインダーを利用してもよい。
【0021】
電荷発生材料は、樹脂系バインダー組成物中に種々の量で存在してもよい。一般的に、少なくとも約5容積%、または約90容積%以下の電荷発生材料は、樹脂系バインダーの少なくとも約95容積%、または約10容積%以下に分散し、より特定的には、少なくとも約20容積%、または約60容積%以下の電荷発生材料は、樹脂系バインダー組成物の少なくとも約80容積%、または約40容積%以下に分散する。
【0022】
特定の実施形態では、CGL18は、厚みが、少なくとも約0.1μm、または約2μm以下、または少なくとも約0.2μm、または約1μm以下であってもよい。
【0023】
CTLを、単一層20の観点で特定的に述べているが、この詳細を、二重の電荷移動層を有する実施形態に適用してもよいだろう。その後、CTL20をCGL18に塗布し、光によって生成した正孔または電子がCGL18から注入されるのを後押しし、正孔/電子が電荷移動層を通って、画像形成体表面に移動させ、表面電荷を選択的に放電することができるような、任意の適切な、透明有機ポリマーまたは非ポリマー系材料を含んでいてもよい。一実施形態では、CTL20は、正孔を移動させるだけではなく、電荷発生層18を剥離または化学物質による攻撃から守る役目があり、したがって、画像形成体の耐用年数を延ばす場合がある。CTL20は、実質的に非光伝導性材料であってもよいが、光によって発生した正孔がCGL18から注入されるのを後押しする材料であってもよい。
【0024】
CTL20は、電気的に不活性なポリマー系材料(例えば、ポリカーボネートバインダー)に溶解するか、または分子レベルで分散し、固体溶液を形成し、それによってこの材料を電気的に活性にするような添加剤として有用な、任意の適切な電荷移動成分または活性化する化合物を含んでいてもよい。CTLに複数の電荷移動化合物が含まれていてもよく、この層の厚みは、一般的に、約5〜約75マイクロメートルである。
【0025】
画像形成体の他の層としては、例えば、任意要素のオーバーコート層32を備えていてもよい。任意要素のオーバーコート層32は、所望な場合、画像形成体表面を保護し、剥離耐性を高めるために、電荷移動層20の上側に位置していてもよい。したがって、典型的なオーバーコート層は、硬質で耐摩耗性のポリマー系材料から作られる。いくつかの実施形態では、オーバーコート層32は、厚みが、約0.1マイクロメートル〜約10マイクロメートルの範囲であってもよく、約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルの範囲であってもよい。これらのオーバーコート層は、電気絶縁性またはわずかに半導体性の熱可塑性有機ポリマーまたは無機ポリマーを含んでいてもよい。
【0026】
電荷移動層のコーティングプロセスが終わったと同時に、感光ウェブが自然に上方向に曲がるため、ACBC1は、この曲がる方向と反対向きに作用し、平坦にするように、基板の裏側に塗布されている必要がある。ACBC1は、電気絶縁性またはわずかに半導体性の有機ポリマーまたは無機ポリマーを含んでいてもよい。ACBCは、平坦性および/または耐剥離性を付与する。典型的なACBC1は、可とう性基板10のうち、画像形成層の反対側にある裏側に形成されてもよい。ACBCは、従来から、フィルムを形成する樹脂バインダーと、接着促進添加剤とを含んでいてもよい。樹脂バインダーは、上に記載したCTLのバインダーと同じ樹脂であってもよい。フィルムを形成する樹脂の例は、ポリアクリレート、ポリスチレン、ビスフェノールポリカーボネート、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニルカーボネート)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェニルポリカーボネートなどが挙げられる。添加剤として用いられる接着促進剤としては、49,000樹脂(Rohm and Haas)、Vitel PE−100、Vitel PE−200、Vitel PE−307(Goodyear)などが挙げられる。通常は、ACBCの合計重量を基準として、添加するために約1〜約15重量%の接着促進剤が選択される。
【0027】
ACBCの熱係数は重要であり、感光デバイスを平坦にするために、光活性層の熱係数とあっているべきである。この実施形態では、本開示の配合物にしたがって調製されたACBCは、帯電防止性ポリマーが、表面エネルギーの小さなポリカーボネートとブレンドされたもので構成されるポリマーブレンド40であり、さらに、コポリエステル接着促進剤36は、機械を動かしている間に、消去する光の波長において、少なくとも80%光学透明度を与える。したがって、本発明の実施形態のACBCは、望ましい静電気散逸能を有しており、耐用年数を延ばすための高い耐摩耗性を有し、合理的な光学的な透明度を有していることが好ましい。本発明の実施形態のACBCは、さらに、表面潤滑性も有しており、表面の接触摩擦を減らし、動的な画像形成ベルトが回転する間に、滑りによる摩擦から誘発される摩擦静電気の蓄積が最小になる。
【0028】
開示されているACBC層1は、従来のACBCと関連があるすべての課題に対する解決策を与える。上述のように、ポリマーがブレンドされた革新的なACBC材料マトリックスは、(1)コポリマーの分子鎖にポリエステル単位、ポリカーボネート単位、ポリエチレングリコール単位を含む、ポリエステル/ポリカーボネート/ポリエチレングリコールの比率が約62/33/6の、フィルムを形成する熱可塑性帯電防止性コポリマーと、(2)表面接触摩擦を減らす(例えば、剥離/摩耗/引っ掻き耐性を高める)表面潤滑性、同様に、良好な光学的透明性が得られるように選択された、フィルムを形成する表面エネルギーの小さな新しいポリマー成分とを含む。
【0029】
帯電防止性コポリマーSTAT−LOY 63000 CTCは、Sabic Innovate Plasticsから入手可能な、市販のあらかじめ混合された樹脂である。この樹脂は、分子鎖が、ポリエステル単位、ポリカーボネート単位、ポリエチレングリコール単位からなる、フィルムを形成する熱可塑性材料である。STAT−LOY。この混合したポリマーの核磁気共鳴(NMR)分析は、約62部のポリエステル(trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および1,4−シクロヘキサンジメタノールのtrans/cis混合物によって作られる)、33部のビスフェノールAポリカーボネート(PCA)、少なくとも6部のポリエチレングリコール(PEG)の混合物であることを示していた。
【0030】
本開示のACBC用途のために選択される、フィルムを形成する表面エネルギーの小さな新規ポリマーは、表面エネルギーの小さなポリカーボネートである。このポリマーは、基本的に、ビスフェノールAポリカーボネートから、主鎖ポリカーボネート骨格にポリジメチルシロキサン(PDMS)セグメントを含むように誘導体化されるか、または改変されたビスフェノールAポリカーボネートである。したがって、表面エネルギーの小さなポリマーを、2個のセグメントに分かれたブロック、つまり、以下の式で示されるPDMS含有ブロック(A)と、ビスフェノールAブロック(B)ポリカーボネート骨格を有するA−B型ジブロックコポリマーと定義してもよく
【化3】


式中、xは、ジメチルシロキサン(DMS)繰り返し単位の数であり、約10〜約70の範囲であり;yは、表面エネルギーの小さなポリカーボネートの分子量の約2〜約10重量%に基づいて算出した約1〜約15のPDMS含有ブロック(A)セグメントの繰り返しの数であり;zは、ブロック(B)において、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニルカーボネート)鎖のビスフェノールAポリカーボネートの繰り返し数であり、表面エネルギーの小さなポリカーボネートの約15,000〜約130,000の分子量から決定され、50〜400の値が得られる。したがって、表面エネルギーの小さなビスフェノールAポリカーボネートのA−B型ジブロックコポリマー構造を、以下の式(I)によって一般的にあらわしてもよい。
【化4】

【0031】
ACBC配合物で使用する、表面エネルギーの小さなポリカーボネートは、分子量が、少なくとも15,000であるが、好ましくは、溶解度および粘性を考慮し、約20,000〜約130,000であるべきである。
【0032】
さらなる実施形態では、本開示の湾曲防止背面コーティング層の配合で使用する表面エネルギーの小さな新規ポリカーボネートは、上述のものに代えて、式(I)のポリカーボネート主鎖のブロック(B)セグメントを改変することによって簡便に誘導され/得られるいくつかの変数の1つであってもよく、これにより、以下に示すさらなる構造を与えてもよい。
【化5】

【0033】
本質的に、上述のすべての表面エネルギーの小さなポリカーボネートは、繰り返し単位xが約10〜約70であり、yが約1〜約15であり、zが約50〜約400であるジメチルシロキサン(DMS)を含んでいる。
【0034】
特定の実施形態では、上述の表面エネルギーの小さなポリカーボネートは、繰り返し単位xが約10〜約70であり、yが約1〜約15であり、表面エネルギーの小さなポリカーボネートの合計分子量の約2〜約10重量%であり、zは、約50〜約400であり、前記表面エネルギーの小さなポリカーボネートの合計分子量のうち、約15,000〜約130,000の分子量を有するようなジメチルシロキサン(DMS)を含んでいる。
【0035】
特定の実施形態では、表面エネルギーの小さなポリカーボネートは、PDMS含有ブロック(A)セグメントを約4〜約6重量%含む。表面エネルギーの小さなポリマーは、分子量が約20,000〜約200,000である。特定の実施形態では、このポリマーは、分子量が約25,000〜約130,000であり、適切な画像形成層コーティング用途のために、溶媒への溶解度、良好なコーティング溶液粘度の制御に影響を与える。ポリカーボネート骨格におけるPDMS含有ブロック(A)の存在は、配合されたACBCの表面エネルギーを実際に下げるため、表面潤滑性が増し、表面接触摩擦の低下に影響を及ぼす。
【0036】
まとめると、図は、実施形態にかかる、ベルト形状を備える画像形成体を示す。この実施形態では、ACBC1は、2つのフィルムを形成する熱可塑性材料からなるように配合された接着促進剤36と、ポリマーブレンド40とを含む。特定の実施形態では、ポリマーブレンド40は、フィルムを形成する表面エネルギーの小さなポリカーボネートと、分子鎖にポリエステル単位、ポリカーボネート単位、ポリエチレングリコール単位を含むフィルムを形成する帯電防止性コポリマーとをブレンドしたものである。いくつかの実施形態では、接着促進剤36は、得られたACBC層1の合計重量を基準として、約1〜約15重量%、または約4〜約8重量%の量で存在する。他の実施形態では、ポリマーブレンド40は、得られたACBC層1の合計重量を基準として、約99〜約85重量%、または約96〜約92重量%の量で存在する。さらなる実施形態では、PTFE、シリカまたは金属酸化物の粒子分散物を本発明の実施形態に組み込み、本開示のACBC層の耐摩耗性を高めてもよい。
【0037】
この実施形態は、帯電防止性であり、表面が潤滑性で接触摩擦が低く、場合により、適切に透明なACBC層を提供する。もっと重要なことに、この実施形態のACBC配合物は、約6.0×1012〜約8.0×1012ohm/sqの表面抵抗率を与えることがわかっており、この値は、標準的なACBCコントロールの1×1014ohms/sqよりも低い。また、約85%の光透過率を有しており、これにより、放射光によって画像形成ベルトが背後から良好に消去される。それに加え、調製されたACBC1は、基板10に対して優れた接着結合強度を有しており、同じコーティング層厚を有する従来のポリカーボネートACBCと等価な湾曲防止を制御する効果を与えることもわかっている。
【0038】
それに加え、ベルト形状を用いる本実施形態の電子写真式画像形成体で、CTLは、ポリマーバインダーに対する移動分子の比率が同じであるか、または異なる二重経路のCTL(二重層のCTL)から構成されるように、再び設計されてもよい。これらの実施形態では、湾曲を効果的に制御するために、厚みが3〜5milの可とう性二軸配向したポリエチレンテレフタレート(またはポリエチレンナフタレート)基板を用い、厚みが約12〜約36マイクロメートルの単経路CTLまたは二重経路CTLでコーティングされ、対応するACBCの厚みが、約9.0〜約33.0マイクロメートルの電子写真式画像形成体が必要である。
【0039】
(コントール例)
【0040】
厚み3.5mil(89μm)を有する二軸延伸したポリエチレンナフタレート基板(PEN、KADALEXとしてDuPont Teijin Films.から入手可能)の厚み0.02μmのチタン層をコーティングした基板を与えることによって、可とう性電子写真式画像形成ウェブを調製した。チタン化したKADALEX基板は、6.5gのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、39.4gの蒸留水、2.08gの酢酸、752.2gの200proofの変性アルコールおよび200gのヘプタンの混合物を含むブロッキング層溶液でコーティングされた押出成形品であった。次いで、この濡れた状態のコーティング層を、強制排気式乾燥器で、135℃で5分間乾燥させ、コーティングから溶媒を除去し、架橋したシランブロッキング層が生成した。得られたブロッキング層は、乾燥時の平均厚みが、エリプソメーターを用いて測定した場合、0.04μmであった。
【0041】
次いで、テトラヒドロフラン/モノクロロ−ベンゼン/塩化メチレンが重量比で8:1:1の溶媒混合物中の溶媒の合計重量を基準として、0.16重量%のARDELポリアリレート(重量平均分子量が約54,000であり、Toyota Hsushu,Inc.から入手可能である)を含むコーティング溶液を用い、接着界面層を押出コーティングによってブロッキング層に塗布した。強制換気式乾燥器中、接着界面層を125℃で1分間乾燥させた。得られた接着界面層は、乾燥時の厚みが約0.02μmであった。
【0042】
その後、接着界面層を電荷発生層の上にコーティングした。0.45gのIUPILON 200、ポリ(4,4’−ジフェニル)−1,1’−シクロヘキサンカーボネートのポリカーボネート(PC−z 200、Mitsubishi Gas Chemical Corporationから入手可能)、50mLのテトラヒドロフランを4オンスのガラス瓶に加えることによって、電荷発生層の分散物を調製した。2.4gのヒドロキシガリウムフタロシアニンV型および300gの直径1/8インチ(3.2mm)のステンレス鋼のショットを上述の溶液に加えた。次いで、この混合物を、ボールミルに約20〜約24時間置いた。次いで、重量平均分子量が20,000(PC−z 200)の2.25gのポリ(4,4’−ジフェニル−1,1’−シクロヘキサンカーボネート)を、46.1gのテトラヒドロフランに溶解し、次いでヒドロキシガリウムフタロシアニンスラリーに加えた。次いで、このスラリーをシェーカーに入れ、10分間放置した。その後、押出用途のプロセスによって、得られたスラリーを接着界面上にコーティングし、濡れたときの厚みが0.25milの層を生成する層を形成した。しかし、ブロッキング層および接着層を有する基板ウェブストックの片方の縁にそった、幅が約10mmの試験片を、後で塗布されるアース板層によって十分な電気接続が促進されるように、電荷発生層によってコーティングされないように意図的に残しておいた。ポリ(4,4’−ジフェニル)−1,1’−シクロヘキサンカーボネート、テトラヒドロフランおよびヒドロキシガリウムフタロシアニンで構成された電荷発生層を、強制換気式乾燥器中、125℃で2分間乾燥させ、厚みが0.4μmの乾燥した電荷発生層を得た。
【0043】
このコーティングされたウェブストックを、コーティング材料を同時に押し出すことによって、電荷移動層(CTL)およびアース板層で同時にコーティングした。褐色ガラス瓶に、重量比で1:1(またはそれぞれ50重量%)の熱可塑性ビスフェノールAポリカーボネート(FPC 0170、分子量は約120,000であり、Mitsubishi Chemicalsから市販されている)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンの電荷移動化合物を入れることによって、CTLを調製した。得られた混合物を溶解し、塩化メチレン中、15重量%の固体を得た。この溶液を、押出によって電荷発生層に塗布し、強制換気下で乾燥させ、コーティングを形成し、ジアミン電荷移動化合物とFPC0170ビスフェノールAポリカーボネートバインダーを重量比50:50で含む、厚み29μmの乾燥したCTLを与えた。
【0044】
電荷発生層によってコーティングされないまま残した幅約10mmの接着層の試験片を、同時押出プロセス中に、アース板層でコーティングした。23.81g、固形分の合計重量の7.87%のポリカーボネート樹脂(FPC 0170、Mitsubishi Chemicalsから入手可能)、塩化メチレン332gをカーボーイ容器中で混合することによって、アース板層のコーティング混合物を調製した。この容器にしっかりと蓋をし、ポリカーボネートが塩化メチレンに溶解するまで、ロールミルに約24時間入れた。得られた溶液を、グラファイトが9.41重量部、エチルセルロースが2.87重量部、溶媒が87.7重量部のグラファイト分散物(固形分が12.3重量%)約93.89g(Acheson Graphite dispersion RW22790、Acheson Colloids Companyから入手可能)とともに、水で冷却したジャケット付き容器中、分散物が過剰に加熱されてしまったり、溶媒が失われたりしないように高剪断ブレードで分散させつつ、15〜30分間混合した。次いで、得られた分散物を濾過し、塩化メチレンを用いて粘度を調節した。このアース板層のコーティング混合物を、同時押出によってCTLとともに電子写真式画像形成ウェブに塗布し、乾燥時の厚みが約19μmの電気伝導性アース板層を形成した。
【0045】
上の層をすべて含む画像形成ウェブストックを、強制換気式乾燥機で、125℃で3分間流し、CTLとアース板を両方とも同時に乾燥させた。画像形成ウェブは、この時点で制限がない場合には、上に向かって1 1/2インチの管状に丸まっているであろう。
【0046】
画像形成体の曲がりを制御するために、88.2gのFPC0170ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、7.12gのVITEL PE−200コポリエステル接着促進剤(Bostik,Inc.、Wauwatosa、Wisconsinから入手可能)、9.7gのPTFE粒子、1,071gの塩化メチレンをカーボーイ容器中で混合し、固形分を8.9%含むコーティング溶液を得ることによって湾曲防止背面コーティングを調製した。この容器にしっかりと蓋をし、ポリカーボネートおよびポリエステルが塩化メチレンに溶解し、湾曲防止背面コーティング溶液が得られるまで、ロールミルに約24時間入れた。次いで、湾曲防止背面コーティング溶液を、押出コーティングによって、電子写真式画像形成ウェブの裏面(電荷発生層およびCTLと反対の面)に塗布し、強制換気乾燥機中、最大温度125℃で3分間乾燥させ、画像形成体を平坦にする、厚みが17μmの乾燥した湾曲防止背面コーティング(ACBC)を得た。このようにして得た可とう性画像形成体をコントロールとして使用した。
【0047】
(開示例)
【0048】
次いで、コントロール例に記載したのと実際に同じ手順にしたがい、同じ物質組成を用い、但し、各画像形成ウェブ中のACBCを、帯電防止性ポリマー、表面エネルギーの小さなポリカーボネートのポリマーブレンドからなる革新的な配合物と置き換えることによって、3種類の可とう性画像形成ウェブを調製し、この3種類の重量比は、それぞれ開示I、II、IIIのように、95:5、90:10、75:25であった。
【0049】
帯電防止性ポリマー材料は、あらかじめ混合されたポリマーであり、SABIC INNOVATIVE PLASTICSからSTAT−LOY 63000CTとして入手可能であり、静電気散逸能を与えた。この混合されたポリマーのNMR分析から、62部のポリエステル(trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジメタノールのtrans/cis混合物によって作られた)、33部のポリカーボネート−A、少なくとも6部のポリエチレングリコール(PEG)の混合物であることが示された。したがって、独立して、以下のものから構成される。
【0050】
【表1】

【0051】
この開示の画像形成体において、ポリマーブレンドされたACBCはそれぞれ、表面エネルギーの小さな改変されたポリカーボネートを含んでおり、このポリカーボネートは、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニルカーボネート)のビスフェノールAポリカーボネートを、ポリマー骨格に少量のポリジメチルシロキサン(PDMS)を含み、ACBCに滑り性を付与するように改変することによって作られるA−B型ジブロックコポリマーであった。表面エネルギーの小さなA−B型ジブロックコポリマーを使用し、このコポリマーは、Sabic Innovative Plasticsから入手可能な市販の材料であり、以下の式(I)に記載の分子構造を有しており、
【化6】


式中、約25,000の分子量を有し、表面エネルギーが低いA−Bジブロックコポリマーの場合、繰り返し単位xは約50であり、yは約9であり、zは約120である。
【0052】
配合されたACBCは、厚みが約17マイクロメートルであり、8重量%のVitel PE−200接着促進剤(Bostik Inc.、Wauwatosa、Wisconsinから得られる)も、ACBCに加えられていた。このようにして得られた調製された可とう性画像形成ウェブは、コントロール画像形成体に匹敵する平坦な形状を有していた。
【0053】
(物理的/機械的な測定および伝導率の測定)
【0054】
表面エネルギーの小さなA−B型ジブロックコポリマーが組み込まれたACBCの表面エネルギー、滑り時の接触摩擦係数、表面滑り性を決定し、コントロール例の標準的なACBCから得られた結果と比較した。表面エネルギーは、液体接触角の測定値によって決定され、滑り時の接触摩擦は、ステンレス鋼表面に対して試験され、表面滑り性(接着性と逆)を、180 3M接着テープ剥離試験法によって行ない、表面抵抗率は、HiResta計を用いて1000ボルトで測定した。得られた試験結果を以下の表1にまとめて列挙している。
【0055】
【表2】

【0056】
上の表のデータは、滑りやすいように調製されたACBC(表面エネルギーの小さなポリマーが組み込まれたもの)が、標準的なACBCコントロールと比較した場合に、表面エネルギーを下げ、滑り性を与えるとともに、接触摩擦を低下させる(PTFE分散物が存在しない場合でも)といった顕著な向上がみられることを示している。バッカーバーに対して滑らせる動きについて試験した場合、革新的なACBCは、対応するコントロールACBCと比べて、耐摩耗性が1.5倍まで上がっていることがわかった。非常に重要なことだが、本開示にしたがって配合され、調製されたすべてのACBCが、標準的なACBCコントロールよりも約2桁低い表面抵抗率を有することがわかった。
【0057】
さらに、本発明の伝導性の/滑りやすいACBCも、対応するコントロールACBCと比較した場合、PEN基板に対して同等の接着結合強度を有しており、ほぼ同等の光学透明性を有していた。
【0058】
(画像形成ベルトによる機械回転試験)
【0059】
重量比75:25の帯電防止性ポリマーおよびA−Bジブロックコポリマーのポリマーブレンドを含む、革新的なACBC配合物の調製された可とう性画像形成ウェブを、コントロールACBC画像形成ウェブとともにシートに切断し、超音波溶接プロセスによって画像形成ベルトへと変換した。次いで、このベルトを、摩擦帯電の蓄積を評価するために、Nuevera機で動的に回転試験を行った。上述のようにして得られたそれぞれのP/RベルトのACBCにおいて、摩擦電位の蓄積についてESVデバイスを用いて決定すると、標準的なACBCコントロールベルトは、約180ボルトで摩擦帯電がすばやく蓄積したが、本開示のACBCでは、動的なベルト回転試験をさらに延長した後でも、摩擦帯電の蓄積はわずか約60ボルトであった。この結果から、摩擦帯電の約67%低下が示されており、このことは、本開示にしたがって配合されたACBC表面の滑り性によって、滑り時の接触摩擦が低下し、ACBCからの摩擦帯電が有効に減らされることを示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可とう性電子写真式画像形成体であって、
可とう性基板と;
前記基板の第1の面に配置されている、少なくとも1つの画像形成層と;
前記少なくとも1つの画像形成層とは反対の側にある、前記基板の第2の面に配置されている、湾曲防止背面コーティングとを備え、この湾曲防止背面コーティングが、帯電防止性ポリマーと、表面エネルギーの小さなポリカーボネートとのポリマーブレンドを含み、この表面エネルギーの小さなポリカーボネートが、2個のセグメントに分かれたブロックを含むA−B型ジブロックコポリマーであり、第1のセグメントブロック(A)が、
【化1】


であり、式中、ポリジメチルシロキサン(PDMS)繰り返し単位xが、約10〜約70であり、yが、約1〜約15であり、第2のセグメントブロック(B)が、
【化2−1】

【化2−2】


からなる群から選択され、式中、zが、約50〜約400である、可とう性電子写真式画像形成体。
【請求項2】
表面エネルギーの小さな前記A−B型ジブロックコポリマーが、
【化3】


であり、式中、xは、約10〜約70であり、yは、約1〜約15であり、前記表面エネルギーの小さなポリカーボネートの合計分子量の約2〜約10重量%であり、zは、約50〜約400であり、前記表面エネルギーの小さなポリカーボネートの合計分子量のうち、約15,000〜約130,000の分子量を含む、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項3】
前記帯電防止性ポリマー:表面エネルギーの小さな前記A−B型ジブロックコポリマーの比率が、前記湾曲防止背面コーティング層の合計重量を基準として、約95:5〜約90:10である、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項4】
前記湾曲防止背面コーティング層が、前記湾曲防止背面コーティングの合計重量を基準として約1〜約15重量%の量で存在するコポリエステル接着促進剤をさらに含む、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項5】
表面エネルギーの小さな前記A−B型ジブロックコポリマーが、前記表面エネルギーの小さなポリカーボネートの合計分子量を基準として、約4〜約6重量%のポリジメチルシロキサン繰り返し単位をブロック(A)セグメント中に含む、請求項2に記載の画像形成体。
【請求項6】
前記湾曲防止背面コーティングが、前記湾曲防止背面コーティング層の合計重量を基準として、約2〜約10重量%の量で存在する有機フィラーまたは無機フィラーをさらに含む、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項7】
前記湾曲防止背面コーティングの摩擦帯電の蓄積が、前記ポリマーブレンドを含まない湾曲防止背面コーティングを有する画像形成体と比較した場合に、約180ボルト〜約60ボルト減る、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項8】
前記湾曲防止背面コーティングの電気抵抗率が、前記ポリマーブレンドを含まない湾曲防止背面コーティングを有する画像形成体と比較して、約2桁減少している、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項9】
前記湾曲防止背面コーティング層の摩擦係数が、金属表面を滑らせる作用に対し、約0.3である、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項10】
記録媒体上に画像を形成するための画像形成装置であって、
(a)静電潜像を受け入れるための電荷保持性表面を有し、
可とう性基板と、
前記基板の第1の面に配置されている、少なくとも1つの画像形成層と、
前記少なくとも1つの画像形成層とは反対の側にある、前記基板の第2の面に配置されている、湾曲防止背面コーティングとを備え、この湾曲防止背面コーティングが、帯電防止性ポリマーと、表面エネルギーの小さなポリカーボネートとのポリマーブレンドを含み、この表面エネルギーの小さなポリカーボネートが、2個のセグメントに分かれたブロックを含むA−B型ジブロックコポリマーであり、第1のセグメントブロック(A)が、
【化4】


であり、式中、ポリジメチルシロキサン(PDMS)繰り返し単位xが、約10〜約70であり、yが、約1〜約15であり、第2のセグメントブロック(B)が、
【化5−1】


【化5−2】


からなる群から選択され、式中、zが、約50〜約400であるような、可とう性画像形成体と;
(b)前記電荷保持性表面に現像材料を塗布し、前記静電潜像を現像し、前記電荷保持性表面に現像した画像を形成するための現像要素と;
(c)前記電荷保持性表面から複写基板へと前記現像した画像を転写するための転写要素と;
(d)前記複写基板に前記現像した画像を定着させるための定着要素とを備える、画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−37882(P2012−37882A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159477(P2011−159477)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】