説明

帯電防止性を有する材料の製造方法

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、電気機器製品の部品の一部、または電気機器もしくは部品を包装する袋,容器または蓋材に用いる包装材料等に用いる帯電防止性を有する材料の製造方法に関するものである。
〔従来技術およびその問題点〕
電子機器製品が高度化、精密化するに伴ない、集積回路や大規模集積回路が利用される様になったが、これらは微量の静電気により静電気破壊を起しやすく、また感光材料も高感度化しており、たとえばX線フィルムなども静電気の発生によりスタチックマークと呼ばれる一種の露光現象を起しやすい。
これら感静電気性の材料あるいは部品を包装する際に、汎用のプラスチックフィルム、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等を用いた場合には、これら汎用のプラスチックフィルムが絶縁物であるため、極めて帯電しやすく、作業中あるいは輸送中に発生する静電気により、静電破壊をはじめとした種々の静電気障害を起しやすく、包装材料としては難しい問題を抱えていた。
従来、この種のトラブルを防止する目的で、ポリエチレン等の汎用の樹脂に導電性カーボン微粉末や金属微粉末などの導電性フィラーを混ぜて分散させたもの、あるいはイオン性を有する界面活性剤を混入させたものがある。しかしながら、これらのカーボン微粉末や金属微粉末を完全に均一、等間隔に樹脂中に分散させるのは難しく、分散が不完全の場合は求める導電性が得られず、帯電防止性も不均一なものとなる。一方、イオン性の界面活性剤、いわゆる帯電防止剤を樹脂中に混入させた場合には、その効果が湿度の影響を受けやすく、均一性、持続性などに於て好ましいものではない。
また、これら導電性フィラーを樹脂中に分散させる為、ヒートシール性(熱融着性)を阻害して、包装材料としての機能を損ったりする。一方、イオン性の界面活性剤、いわゆる帯電防止剤を樹脂中に混入させた場合には、その効果が湿度の影響を受けやすく、また樹脂の表面にブリード(浸出)してきて効果を発するものである為、樹脂と界面活性剤との非相溶性、界面活性剤の移動性を促進する界面活性剤の低分子量性などが必要であるが、これらは前者の非相溶性に起因する界面活性剤の経時や輸送中での脱落、後者に起因する界面活性剤の揮散性、あるいは樹脂の成膜時の熱履歴を受けて、界面活性剤の分散、揮散などがあり、効果の均一性・持続性などに於て好ましいものではない。
〔目的〕
本発明はこのような現況を鑑みてなされたものである。即ち、本発明は極めて透明で、かつ均一性、持続性を有し、しかも袋等を製造可能な帯電防止性を有する材料を得る製造方法を提供する事を目的としている。
〔発明の構成〕
本発明は基材となる疎水性プラスチックフィルム又はシートの被積層面を低温プラズマ処理し、その上に水溶性バインダーを介在させて成るポリピロール層を部分的に積層することを特徴としている。
具体的には、第1図に示すように基材1となる疎水性プラスチックフィルム又はシートの被積層面3を、酸素又は酸素と窒素との混合ガスによる低温プラズマ処理し、その上に塩化第二鉄を触媒として含有した水溶性バインダーをコーティングし、乾燥後、ピロールの気相中に放置して成るポリピロール層2を部分的に積層することを特徴としている。
ピロールの気相重合より成るポリピロールの製造方法は特開昭61−157522号公報等に示されている。しかしながらこれらの方法では、基材であるプラスチックが疎水性であり、かつ塩化第二鉄等の触媒を含有するバインダー樹脂が親水性である為、基材とバインダー層との接着力が極めて弱く実用性に欠ける。本発明では、この様な欠点を補うべく発明されたものである。即ち、基材となる疎水性プラスチックフィルム又はシートの被積層面を、酸素又は酸素と窒素との混合ガスで低温プラズマ処理することにより被積層面の親水性を著しく向上させ、その結果、水溶性バインダーとの接着力を増大させることを特徴としている。
本発明に於る疎水性プラスチックとは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエヒレンテレフタレート、ポリアミド、または、これらの積層フィルムであり、また水溶性バインダーとは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等である。
上記、疎水性プラスチックとしては、予じめヒートシール性を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルのほか、低温プラズマ処理をすることにより、ヒートシール性が付 されるポリエチレンテレフタレート、ポリアミドが用いられる、シール面がシール性を有するものを指す。
また更に、本発明に於て触媒としての塩化第二鉄を含有する水溶性バインダーをコーティングする方法には、通常のグラビアコート、ロールコート等が利用できる。
<実施例−1>1) 厚さ60μのポリエチレン(PE)フィルム(タマポリ(株)製M−16P)の片面に、下記条件による低温プラズマ処理して、PEの処理フィルム■を得た。
イ) 低温プラズマ処理装置;TMZ−4072(東芝製)
ロ) 使用ガス;酸素20%,窒素80%の混合ガスハ) 真空度;0.5torrニ) 出力;500wattホ) 処理時間;30sec2) 下記組成より成る塩化第二鉄含有水溶性バインダー液■を得た。


3) 1)で得られたPEの処理フィルム■と、比較として未処理の該PEフィルム上に、格子彫刻75■−135μのグラビアパターン版を用いて、2)に記載の塩化第二鉄含有水溶性バインダー液■を部分コーティングし、その後乾燥して各々約3μの膜厚を得た。
4) 次に3)で得られた該各フィルムを、10℃の飽和ピロール蒸気相中に5分間曝露して反応を終了し、ポリピロール層を得た。
5) 次に4)で得られた帯電防止性を有する包装材料の非該コーティング部を、センチネル社製ヒートシーラーを用いて、温度130℃、圧力3kg/cm2、時間1秒の条件で三方シールして袋を作製した。処理フィルム■と未処理フィルムからなるそれぞれの帯電防止性を有する袋の物性テスト結果を以下に示す。


イ) 表面抵抗値〜4端子法により測定ロ) 接着強度〜90゜剥離試験(PEとバインダー間の剥離)
ハ) 実用性〜袋状での手もみ試験 上記の如く、本発明によりPE層と帯電防止性を有するバインダー層との接着強度の極めて強い帯電防止性を有する包装材料が得られた。
<実施例2>1) 厚さ25μのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製ルミラーF−65)の片面に、下記条件による低温プラズマ処理をして、PETの処理フィルム■を得た。
イ) 低温プラズマ処理装置:TMZ−4072(東芝製)
ロ) 使用ガス:酸素ガスハ) 真空度:1.0torrニ) 出力:1000wattホ) 処理時間:30sec2) 下記組成より成る塩化第二鉄含有親水性バインダー塗工液■を得た。


3) 1)で得られたPETの処理フィルム■と、比較例として未処理のPETフィルム上に、グラビア塗工により塩化第二鉄含有親水性バインダー塗工液を部分塗工し、その後乾燥して各々約2〜3μ厚の塗膜を得た。
4) 次に3)で得られた各フィルムを、10℃の飽和ピロール蒸気相中に5分間曝露して反応を終了し、ポリピロール層を得た。
5) 上述の如く得られた積層フィルムに於て、基材(PETの処理フィルム■、未処理のPETフィルム)とポリピロール層を含む親水性バインダー層との接着強度を測定したところ、表−1の如く低温プラズマ処理による著しい接着強度の向上が得られた。
6) 次に親水性バインダーの非塗工部どうしを、160℃−3秒のヒートシール条件により、ヒートシールを行ない、ヒートシール強度を測定した。結果を同様に表−1に示めす。


〔発明の効果〕
本発明の方法で製造された材料は、導電性が均一で、持続性を有し、しかも袋等の製造が可能となった。
特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドより成る従来熱接着性を有さないフィルムに低温プラズマ処理を施こし、ピロール重合触媒を含む親水性バインダーを部分塗工し、ピロールを気相重合させることで、基材との接着強度の高いポリピロール層を有し、かつ親水性バインダーの非塗工部がヒートシール性を有する帯電防止性の包装材料が得られ、非常に実用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明で得られた材料を示す断面説明図である。
1……基材
2……ポリピロール層
3……被積層面

【特許請求の範囲】
【請求項1】疎水性プラスチックフィルム、又はシートからなる基材上に、親水性バインダー層を介在させて成るポリピロール層を、ピロール重合触媒を含む親水性バインダーを部分塗工して気相重合させることにより部分的に積層する際に、該基材の被積層面を低温プラズマ処理することを特徴とする帯電防止性を有する材料の製造方法。

【第1図】
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【特許番号】第2546252号
【登録日】平成8年(1996)8月8日
【発行日】平成8年(1996)10月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−35118
【出願日】昭和62年(1987)2月18日
【公開番号】特開昭63−202893
【公開日】昭和63年(1988)8月22日
【出願人】(999999999)凸版印刷株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭61−157522(JP,A)
【文献】特開昭57−182326(JP,A)
【文献】特開昭56−61434(JP,A)
【文献】特開昭50−73976(JP,A)