説明

常温保存可能に容器パックされたパスタ食品の製造方法

【課題】常温保存可能に容器パックされたパスタ食品の製造においてアルデンテ状態を保って食感の良いパスタ食品を比較的簡易な設備で比較的安価に提供する。
【解決手段】パスタ原料麺を所定時間茹でる工程(S12)と、茹でたパスタを個食分ずつ容器に充填する工程(S15)と、容器に充填したパスタを高温高圧蒸気で加圧加熱処理する工程(S17)と、該加圧加熱処理済パスタを蒸煮してアルデンテ状態に茹で上げる工程(S18)と、該加圧加熱処理済パスタが充填された容器を密閉シールする工程(S19)とを経て、食感に優れた容器パックパスタ食品を製造する。密封シール工程は好ましくはクリーンブース内で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は常温保存可能に容器パックされたパスタ食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
常温保存可能にパックされたパスタ食品の製造方法として、従来は、原料乾麺を一食分ずつ茹でバケットに投入して所定時間茹で、茹でバケットから冷却バケットに移して水冷却し(茹で止め)、冷却バケットを揺らしながら水切りし、必要に応じてpH調整を行った後、パウチ(袋)または容器に充填し、麺同士が結着することを防止するための結着防止剤(オイルなど)を添加し、密封シールし、ボイル殺菌またはレトルト釜での殺菌により殺菌処理を行い、除水して、パウチ入りまたは容器入りのパスタ食品を製造する方法が知られている(下記特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平10−271971号公報
【特許文献2】特開平07−272629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来技術では、茹でた麺をボイル殺菌やレトルト殺菌することにより常温保存が可能な麺を製造しているが、このようにして製造された麺は時間と共に中心と外側の水分が均一化したりあるいは澱粉が老化するなどにより、アルデンテ状態(中心が固く、周囲が柔らかい水分勾配を有する状態)を保った食感の良いパスタ製品として提供することが困難であった。
【0004】
したがって、本発明の課題は、常温保存可能に容器パックされたパスタ食品の製造においてアルデンテ状態を保って食感の良いパスタ食品を比較的簡易な設備で比較的安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、パスタ原料麺を所定時間茹でる工程と、茹でたパスタを個食分ずつ容器に充填する工程と、容器に充填したパスタを高温高圧蒸気で加圧加熱処理する工程と、該加圧加熱処理済パスタが充填された容器を密閉シールする工程と、を有することを特徴とする常温保存可能に容器パックされたパスタ食品の製造方法である。
【0006】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の方法において、前記密封シール工程がクリーンブース内で行われることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の方法において、前記加圧加熱処理工程が、茹でたパスタを入れた容器を上下チャンバ間の密閉空間内に入れ、この密閉空間内に3〜8kgf/cmの高圧蒸気を5〜10秒間フラッシュ注入して容器内のパスタを130〜150℃で加圧加熱処理した後、上下チャンバを開放することを1サイクルとして、4〜8サイクル繰り返し行うことにより実行されることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る本発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の方法において、密閉シールされたパスタ入り容器を上下反転させた状態で蒸らしを行う工程と、該容器を再度上下反転させて元に戻した状態で冷却する工程と、をさらに有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る本発明は、請求項1ないし4のいずれか記載の方法において、前記加圧加熱処理済パスタを蒸煮してアルデンテ状態に茹で上げる工程をさらに有し、この蒸煮工程後に前記密閉シール工程を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る本発明は、請求項1ないし4のいずれか記載の方法において、密封シールされた容器をレトルト釜に投入して該容器内のパスタをアルデンテ状態に茹で上げると共に二次殺菌処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常温保存可能に容器パックされたパスタ食品の製造においてアルデンテ状態を保って食感の良いパスタ食品を比較的簡易な設備で比較的安価に提供することができる。
【0012】
本発明により製造されるパスタ食品は、高温高圧蒸気による加圧加熱処理を経ており、その後の蒸煮処理によって二次的な殺菌処理が行われ、且つ、酸素不透過性の容器および蓋材で内容物が外気から遮断されていて二次汚染を防止しているため、実質的な無菌状態が維持され、常温でも長期間の保存が可能である。したがって、消費者は購入後、電子レンジで1〜3分程度温めれば茹で立てと同様の食味および食感のパスタを手軽に食することができる。また、コンビニなどの販売店にとっては、過剰な仕入れによる廃棄ロスや過小な仕入れによる売上チャンスロスがなくなり、きわめて大きなコストメリットが得られる。
【0013】
密封シール工程をクリーンブース内で行うことにより、常温保存性がより優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳述する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1による無菌パックパスタ食品の製造方法を示すフロー図である。この実施例によれば、食味に優れ且つ実質的に無菌化された状態のパスタ食品を製造することができる。
【0016】
一食分のパスタの原料乾麺を茹でバケットに供給し(S11)、茹でバケット内で茹でる(S12)。茹で時間は原料乾麺の太さなどに応じて設定されているが、設定茹で時間より若干(10〜30%程度)短い茹で時間とする。
【0017】
茹でた麺を冷却バケットに移して水冷却して茹で止めし(S13)、連続漬け込み式温度調整槽にて乳酸GDLその他製剤を用いてpH調整を行った(S14)後、容器に充填し(S15)、麺同士が結着して喫食時に麺がほぐれにくくなることを防ぐために結着防止剤(オイル、大豆多糖類など)を添加する(S16)。
【0018】
容器の一例が図2に示されており、後の蒸気殺菌処理(S17)における130〜150℃程度の高温に晒されても熱軟化・熱変形しない程度の耐熱性と、耐水性と、密封シール後の二次汚染を実質的に防止するための酸素不透過性を兼ね備えたプラスチック材料から、パスタ製品として消費者に供給する一食分のパスタを収容するに必要且つ十分な容量を有するパスタ収容部1aと、その上端から略水平に外方に向けて延出するフランジ部1bとを有して略皿状ないしトレー状に一体成形されている。この容器1のプラスチック材料には主としてポリプロピレンが用いられるが、必要に応じて、ポリプロピレンにポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合樹脂をラミネートしたもの、ポリエチレンテレフタレート(PET)、表裏ポリプロピレン層の間に圧延アルミ箔などの金属箔を芯層として積層したものなどを使用することができる。
【0019】
その後、必要に応じてウエイトチェックおよびウエイト補正を行った後、図3に示すような加圧加熱装置2を用いて高温高圧条件下で加圧加熱処理を行う(S17)。この加圧加熱装置2は、蒸気導入口3aを備えた上チャンバ3と、下チャンバ4と、これら上下チャンバ3,4を相対移動させて密接させ内部に密閉空間を形成するための移動手段5と、該密閉空間に蒸気導入口3aから所定圧(たとえば3〜8kgf/cm程度)の蒸気を供給する蒸気供給手段6とを備えている。個食分の茹でパスタ入り容器1は容器支持板7(容器1のパスタ収容部1aを落とし込む開口が容器個数分形成され、該開口の回りの縁面で容器フランジ部1bを係止する)により所定個数分が同時に加圧加熱処理されるようになっている。高圧蒸気フラッシュにより、上下チャンバ3,4による密閉空間の内圧上昇と共にその蒸気温度が徐々に上昇し、たとえば130〜150℃の高温となる。なお、加圧加熱装置2の詳細構成は、特開平8−276877号公報に記載のものを採用することができる。
【0020】
このようにして、型密閉→蒸気フラッシュ(5〜10秒間程度)→型開放を1サイクルとして数回程度繰り返して加圧加熱処理を行う。この繰り返し回数はパスタの種類や質によって調整可能であるが、一般に4〜8回程度である。この殺菌処理が施される時点で容器1は密封シールされずに開口しているため、型密閉空間内の高温高圧条件がダイレクトに容器1およびその中に充填されているパスタに伝わる。したがって、短時間ではあっても130〜150℃もの高温条件で加圧加熱処理されることにより、容器1および容器内のパスタが効率的に処理され、パスタのコシを長時間維持することができる。
【0021】
加圧加熱処理終了後、蒸煮する(S18)。蒸煮条件は、たとえば95〜105℃で15〜40分とする。蒸煮することによりパスタをアルデンテ状態まで茹で上げると共に、容器1やその内容物に付着している可能性のある微生物を死滅・減少させることができる。
【0022】
省スペース実現のため、蒸煮処理においては循環駆動される多列多段式のゴンドラを用いることが好ましい。すなわち、複数(たとえば4〜10個)の容器1,1・・・を収容可能な棚板が垂直方向に複数段(たとえば7段)互いの間に間隔をおいて並行に積層されてなる多段ゴンドラを複数基(たとえば8〜70基)用い、これら多段ゴンドラを垂直平面上に周回駆動されるチェーンコンベアに等間隔で接続してなる搬送装置を設置する。容器1を収容する棚板としては、前述の蒸気殺菌処理2において用いられる容器支持板7と同様に、容器収容部1aを嵌合するための開口が容器収容個数分形成されており、該開口の回りの縁面上に容器フランジ部1bを係止することにより容器を吊り下げ状態で収容する構成を有するものを用いることができる。
【0023】
このような多列多段式ゴンドラを用いた場合、滅菌済みのパスタが充填された容器1は、任意の移載装置により、蒸煮機の上方を移動してリターンしてくる空の多段ゴンドラの各段に送り込まれる。そして、全段に容器1を収容したゴンドラは蒸煮機の蒸気室内に送り込まれ、蒸気室内を移動する間の所定時間(たとえば15〜40分)に蒸煮処理が行われる。
【0024】
蒸煮機の蒸気室を複数のゾーンに分けて、各ゾーンごとに独立して温度制御するようにしても良い。これにより、蒸煮工程に応じて最適な蒸気温度を設定することができる。
【0025】
蒸煮処理を完了したゴンドラはチェーンコンベアによって引き上げられ、一段ずつトレーをコンベア上に送り出す。空になったゴンドラは蒸煮機の入口に向けてリターンして次の容器収容に備える。
【0026】
蒸煮処理を完了後、パスタ入り容器をシール装置に投入して、該容器にあらかじめUV殺菌された蓋材8を被着して密封シールする(S19)。シール装置は公知のヒートシール装置であって良いが、必要に応じて、シールした蓋材8の不要部分をカットするトリミング手段が付設される。また、密封シール後の品質劣化を防止するため、蓋材8は前述の容器1の材質と同様に酸素不透過性を有するプラスチック材料で成型されたフィルムであることが好ましく、ポリエチレンやポリプロピレンを主体とするイージーピール性を有するものが好適に用いられる。容器1に窒素ガスなどの不活性ガス9をフラッシュ注入して容器内の空気を追い出して不活性ガス置換した後に密封シールを行うことが好ましい。さらに必要な場合には脱酸素材を封入して密封シールする。
【0027】
蒸煮機の出口からシール装置への容器1搬送はコンベアなどによって行われるが、この間に外気に晒されると雑菌が混入して二次汚染を招くおそれがあるので、これを防止するために、シール装置は、たとえばクラス100〜1000程度のクリーン度を有するクリーンブース(またはクリーンルーム)9に収容されている。これにより、S17で行われる高温高圧条件下での蒸気殺菌処理およびS18で行われる蒸煮処理による無菌状態が密封シール工程においても維持され、無菌パック製品として提供することが可能となる。クリーンブースの構造は、たとえば、蒸煮機の出口からシール装置の入口までの間をトンネル状のブースとし、クリーンエア発生装置をブース中央上部に取り付けて連続的にクリーンエアを送入する。クリーンブース内を陽圧(たとえば外気圧より0.5〜2mmAq程度高い圧力)に保持して、クリーンエアをブースの上から下へ、中央から外周へと流し、また搬送コンベア上では搬送方向と反対方向に(シール装置から蒸煮機に向けて)流すことにより、内部に汚染された外気が侵入することを防ぐように構成することが好ましい。
【0028】
シール装置によりパスタ入り容器1を密封シールした後、この密封シールされた容器1を上下反転させた状態にして温水で蒸らし(S20)、この反転状態を元に戻してチラー水などの冷却液で40℃以下に冷却する(S21)。蒸らし処理の前に密封シールされた容器1を上限反転させると、容器内の水分布が上下で均一化されるので、蒸らし処理を効率的・均等に行うことができる。冷却は蒸れ臭を防ぐために行うものであり、たとえば、パスタ入りの密封容器を冷水槽に通過させて冷却する。S20の蒸らしおよびS21の冷却は、前述のS18での蒸煮と同様に多段多列式ゴンドラを採用して、処理効率の向上を図ることが好ましい。
【0029】
冷却後、反転させた容器を元に戻して、水分を除去し且つ所定含水率まで乾燥し(S22)、さらに、製造年月日や賞味期限などの印刷、ピンホール検査、重量検査などの製品化のために必要な後処理(S23)を経て、無菌パックパスタ食品9として出荷する。パスタソースを同梱または添付して製品としても良い。
【0030】
このようにして製造される無菌パックパスタ食品は、pH調整(S14)により保存性が高められ、また、高温高圧蒸気による加圧加熱処理(S17)を経た後の蒸煮処理(S18)によっても保存性が高められ、一連の処理工程の間で外気に触れる可能性のある処理領域はクリーンブースで外気から遮断されており、且つ、酸素不透過性の容器1および蓋材8で内容物が外気から遮断されていて二次汚染を防止しているため、実質的な無菌状態が維持され、常温でも長期間(6ヶ月〜1年またはさらにそれ以上)の保存が可能である。したがって、消費者は購入後、電子レンジで1〜3分程度温めれば茹で立てと同様の食味および食感のパスタを手軽に食することができる。また、コンビニなどの販売店にとっては、過剰な仕入れによる廃棄ロスや過小な仕入れによる売上チャンスロスがなくなり、きわめて大きなコストメリットが得られる。
【実施例2】
【0031】
図5は、本発明の実施例2による無菌パックパスタ食品の製造方法を示すフロー図である。この実施例によれば、食味に優れ且つ実際上十分な程度の長期常温保存性を備えたパスタ食品を比較的簡易・安価な設備で製造することができる。
【0032】
図5に示すフロー中、S31〜S37は、図1に示すフローのS11〜S17と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0033】
この実施例では、密封シール(S38)後にレトルト釜での蒸煮(S39)を行うので、S17で高温高圧条件下での蒸気殺菌処理を行った後、パスタ入り容器を直ちにシール装置に投入して密封シールする(S38)。密封シールについても、その処理自体は図1のフロー中のS18と実質的に同じで良いが、この実施例では次に行うレトルト釜での蒸煮(S39)が二次殺菌処理を兼ねるので、基本的には密封シールの処理工程をクリーンブース化する必要はない。
【0034】
S39での蒸煮は従来の殺菌処理に汎用されている等差圧式レトルト釜を使用することができるので、新規に設置する場合にも比較的低コストで設置可能であるし、既にレトルト釜の設備を所有している場合には特にコストメリットが大きい。レトルト釜としては、図6に示すように、シールされたパスタ入り容器1を多段多列に多数個収容可能な等差圧式レトルト釜10を用い、100〜105℃で30〜90分の殺菌工程で殺菌処理を行い、冷却工程で40℃以下まで冷却する。
【0035】
その後、除水・乾燥(S40)および製品化処理(S41)を行うが、これらは図1に示すフロー中のS22およびS23と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0036】
このようにして製造される無菌パックパスタ食品は、pH調整(S34)により保存性が高められ、また、密閉シール後に行われるレトルト釜内での蒸煮処理(S39)によっても保存性が高められ、且つ、酸素不透過性の容器1および蓋材8で内容物が外気から遮断されていて二次汚染を防止しているため、実質的な無菌状態が維持され、常温でも長期間(6ヶ月〜1年程度)の保存が可能である。したがって、消費者は購入後、電子レンジで1〜3分程度温めれば茹で立てと同様の食味および食感のパスタを手軽に食することができる。また、コンビニなどの販売店にとっては、過剰な仕入れによる廃棄ロスや過小な仕入れによる売上チャンスロスがなくなり、きわめて大きなコストメリットが得られる。さらには、この実施例によるときは基本的にクリーンブースは不要であり、レトルト釜を利用できるので、投資コストの削減や既存設備の有効利用を図ることができる。
【実施例3】
【0037】
実施例1および実施例2ではパスタ乾麺を原料に用いて供給し(S11,S31)たが、これに代えて、生パスタを製造する工程を付設しても良い。すなわち、図1および図5のフローに示すように、パスタ原料を供給し(S24,S42)、これをパスタプレスに投入して麺にした(S25,S43)後、所定長さにカットし(S26,S44)、これを茹でる(S12,S32)。
【0038】
上記以外の処理については実施例1、実施例2に既述したと同様であるので、説明を省略する。
【実施例4】
【0039】
実施例1において、茹で(S12)時間と加圧加熱処理(S17)および蒸煮処理(S18)との関係を調べるための試験を行った。S11における原料乾麺にはマ・マー(登録商標)1.6mm麺(乾麺重量0.7g/本、標準茹で時間7分)を用い、これを5分〜7.5分(0.5分きざみ)の茹で時間で茹でた(S12)後に、140℃/5.5秒間の蒸気フラッシュによる加圧加熱処理を4回繰り返して行い(S17)、さらに15分間蒸煮(S18)した。この試験において、茹で後、加圧後および蒸煮後の各麺重量を測定して歩留まりを計算した。その結果を図7のグラフに示す。
【0040】
このグラフに示されるように、使用したパスタ乾麺の標準茹で時間(7分)で茹でた後の歩留まりが232.6%であるところ、茹で後に本発明に基づいて加圧加熱および蒸煮を行った場合には、茹で時間を5分まで短縮しても標準茹で時間の茹で後の歩留まりを大きく上回る歩留まりが得られることが確認された。ただし、茹で時間が6分を下回ると麺質が硬くゴム状となってしまって容器充填(S15)が困難になることから、6.5分程度の茹で時間を確保することが好ましい。
【0041】
次に、加圧加熱処理(S17)における加圧回数と歩留まりとの関係を調べるための試験を行った。S11における原料乾麺にはディチェコ(登録商標)1.6mm麺を用い、これを7分間茹でた(S12)後に加圧加熱処理(S17)を行わない場合(加圧回数0)と、これを6.5分間茹でた(S12)後に140℃/5.5秒間の蒸気フラッシュによる加圧加熱処理を2回、4回、6回および8回繰り返して行った場合のそれぞれについて、さらに15分間蒸煮(S18)し、1.5分間放置後に密封シール(S19)した。この試験において、茹で後、加圧後および蒸煮後の各麺重量を測定して歩留まりを計算した。その結果を図8のグラフに示す。
【0042】
このグラフに示されるように、茹で時間を6.5分と標準茹で時間より短くした場合であっても、加圧加熱処理において2〜8回の加圧を行うことにより、茹で時間を標準の7分としながら加圧加熱処理を行わなかったものに比べて加圧/蒸煮後の歩留まりが大幅に向上することが確認された。
【0043】
さらに、これら各製品を2日間常温保存後および2週間冷蔵保存後に試食評価したところ、加圧加熱処理を行わないものは麺の弾力がなく、食べるとプツプツ切れてしまう印象が残るのに対して、加圧加熱処理を行ったものは適度な硬さと弾力があり、好ましい麺の食感が得られた。ただし、加圧回数2回では特に製造直後の麺が柔らかすぎる傾向があり、加圧回数を増やすことによって徐々に硬さが増していくが加圧回数8回が適度の硬さの限界との印象であったので、好ましい加圧回数は4〜8回であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態による無菌パックパスタ食品の製造方法を示すフロー図である。
【図2】この無菌パックパスタ食品に用いられる容器形状の一例を示す断面図である。
【図3】この製造方法における加圧加熱処理および該処理に用いられる加圧加熱装置を示す説明図である。
【図4】この製造方法における蒸煮、密封シールおよび蒸らしの各処理における容器の状態(反転)を示す説明図である。
【図5】本発明の別の実施形態による無菌パックパスタ食品の製造方法を示すフロー図である。
【図6】この製造方法におけるレトルト釜蒸煮処理および該処理に用いられるレトルト釜を示す説明図である。
【図7】茹で時間と歩留まりの関係を示すグラフである。
【図8】加圧回数と歩留まりの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1 容器
1a パスタ収容部
1b フランジ部
2 殺菌装置
3 上チャンバ
4 下チャンバ
5 移動手段
6 蒸気供給手段
7 容器支持板
8 蓋材
9 不活性ガス
10 レトルト釜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスタ原料麺を所定時間茹でる工程と、茹でたパスタを個食分ずつ容器に充填する工程と、容器に充填したパスタを高温高圧蒸気で加圧加熱処理する工程と、該加圧加熱処理済パスタが充填された容器を密閉シールする工程と、を有することを特徴とする常温保存可能に容器パックされたパスタ食品の製造方法。
【請求項2】
前記密封シール工程がクリーンブース内で行われることを特徴とする、請求項1記載のパスタ食品の製造方法。
【請求項3】
前記加圧加熱処理工程が、茹でたパスタを入れた容器を上下チャンバ間の密閉空間内に入れ、この密閉空間内に3〜8kgf/cmの高圧蒸気を5〜10秒間フラッシュ注入して容器内のパスタを130〜150℃で加圧加熱処理した後、上下チャンバを開放することを1サイクルとして、4〜8サイクル繰り返し行うことにより実行されることを特徴とする、請求項1または2記載のパスタ食品の製造方法。
【請求項4】
密閉シールされたパスタ入り容器を上下反転させた状態で蒸らしを行う工程と、該容器を再度上下反転させて元に戻した状態で冷却する工程と、をさらに有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載のパスタ食品の製造方法。
【請求項5】
前記加圧加熱処理済パスタを蒸煮してアルデンテ状態に茹で上げる工程をさらに有し、この蒸煮工程後に密閉シール工程を行うことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか記載のパスタ食品の製造方法。
【請求項6】
密封シールされた容器をレトルト釜に投入して該容器内のパスタをアルデンテ状態に茹で上げると共に二次殺菌処理を行うことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか記載のパスタ食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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