説明

常温流通食品セットおよびそれを用いた加工米飯調理物

【課題】電子レンジ調理加熱などの短時間加熱でチャーハンなどの調理物を容易に得ることができる、安価で食味・食感に優れ、米飯の粘着のない常温流通食品セットおよびそのセットを用いて加熱調理して得られるチャーハンなどの加工米飯調理物の提供。
【解決手段】少なくとも(イ)所定量容器に密封した炊飯米2、(ロ)所定量容器に密封・殺菌した具材3、および(ハ)所定量容器に密封し必要に応じて殺菌したトッピング4を含む常温流通食品セット1において、前記炊飯米として、精白米を洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯し得られる炊飯米であって、グルコノデルタラクトン、食用有機酸などを所定量含有するとともに、植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米を用いることにより課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温流通食品セットおよびそれを用いたチャーハンなどの加工米飯調理物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チャーハンなどの加工米飯調理物を凍結した後に包装した冷凍食品が市場に出回っている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、チャーハンなどの加工米飯調理物を合成樹脂フィルム等の袋に充填、密封した後加圧殺菌した常温流通レトルト品(例えば、特許文献4参照)や、合成樹脂フィルム等の袋に米に具材、調味料、香辛料、油脂などを混合した混合物を充填、密封した後加圧殺菌すると同時に炊飯してチャーハンなどの常温流通レトルト米飯を製造する方法(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【0003】
また精白米を洗米し、更に紫外線、マイクロ波、オゾンの何れかで無菌状態になるまで殺菌し、それを無菌袋に真空で袋詰めにしたすぐ炊ける米の加工方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【特許文献1】特開平9−224625号公報
【特許文献2】特許第3700404号公報
【特許文献3】特開2002−191304号公報
【特許文献4】特許第2561161号公報
【特許文献5】特開平8−195号公報
【特許文献6】特開昭61−5750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の冷凍食品は、長期保存可能である利点があるが、凍結したり、カットあるいはクラッシュするなどの工程が必要となり、手間がかかって、コストアップになる問題があるとともに、一旦調理した加工米飯を凍結し、食する際には解凍、加熱を行うので食味、食感が低下する問題がある。
また、常温流通レトルト米飯は高温加熱処理(例えば、120℃、20〜30分間加熱)を行うため、味と香りが維持できず、風味、食感が損なわれるなどの問題がある。
紫外線、マイクロ波、オゾンの何れかで無菌状態になるまで洗米した精白米を殺菌し、それを無菌袋に真空で袋詰めにする方法であっても米に汚染している菌は完全殺菌することは至難である。
【0005】
本発明の第1の目的は、一般の人でも例えば電子レンジ調理加熱などの短時間加熱でチャーハンなどの調理物を容易に得ることができる、安価で食味・食感に優れ、米飯の粘着がなく良好なパラパラ感を有する長期常温流通可能な常温流通食品セットを提供することであり、
本発明の第2の目的は、そのような常温流通食品セットを用いて加熱調理して得られるチャーハンなどの加工米飯調理物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するための本発明の請求項1に記載の常温流通食品セットは、少なくとも(イ)所定量容器に密封した炊飯米、(ロ)所定量容器に密封・殺菌した具材、および(ハ)所定量容器に密封し必要に応じて殺菌したトッピングを含む常温流通食品セットにおいて、
前記炊飯米として、精白米を洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯し得られる炊飯米であって、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つを所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米を用いることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の常温流通食品セットは、請求項1に記載の常温流通食品セットにおいて、
食用有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つの食用有機酸であることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の常温流通食品セットは、請求項1に記載の常温流通食品セットにおいて、有機酸の塩がカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの混合物から選択される少なくとも一つの有機酸の塩であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の常温流通食品セットの(イ)炊飯米、(ロ)具材、(ハ)トッピングを各容器から取り出して混合し、加熱して調理したことを特徴とする加工米飯調理物である。
【0010】
本発明の請求項5に記載の加工米飯調理物は、請求項4記載の加工米飯調理物において、チャーハンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の常温流通食品セットは、少なくとも(イ)所定量容器に密封した炊飯米、(ロ)所定量容器に密封・殺菌した具材、および(ハ)所定量容器に密封し必要に応じて殺菌したトッピングを含む常温流通食品セットにおいて、
前記炊飯米として、精白米を洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯し得られる炊飯米であって、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つを所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米を用いることを特徴とするものであり、
炊飯米は好気性菌や嫌気性菌などの増殖や活動を抑えることができるので、常温で長期保存しても炊きたての味と香りが維持でき、具材およびトッピングも常温で長期保存できるので、長期常温流通が可能な上、食する際には、炊飯米、具材、トッピングを各容器から取り出して混合し、例えば電子レンジ調理加熱などの短時間加熱でチャーハンなどの調理物を容易に得ることができ、そして安価で米飯の粘着がなく良好なパラパラ感を有し、食味・食感に優れるという顕著な効果を奏する。
【0012】
本発明の請求項2に記載の常温流通食品セットは、請求項1に記載の常温流通食品セットにおいて、
食用有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つの食用有機酸であることを特徴とするものであり、
好気性菌や嫌気性菌などの増殖や活動を抑えることができる上、食味・食感への影響がなく、食味・食感に優れる炊飯米が得られ、入手も容易であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項3に記載の常温流通食品セットは、請求項1に記載の常温流通食品セットにおいて、有機酸の塩がカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの混合物から選択される少なくとも一つの有機酸の塩であることを特徴とするものであり、
好気性菌や嫌気性菌などの増殖や活動を抑えることができる上、食味・食感への影響がなく、食味・食感に優れる炊飯米が得られ、入手も容易であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0014】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の常温流通食品セットの(イ)炊飯米、(ロ)具材、(ハ)トッピングを各容器から取り出して混合し、加熱して調理したことを特徴とする加工米飯調理物であり、
例えば電子レンジ調理加熱などの短時間加熱で米飯の粘着がなく良好なパラパラ感を有し、食味・食感に優れるチャーハンなどの調理物を容易に得ることができるという顕著な効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項5に記載の加工米飯調理物は、請求項4記載の加工米飯調理物において、チャーハンであることを特徴とするであり、
例えば電子レンジ調理加熱などの短時間加熱で米飯の粘着がなく良好なパラパラ感を有し、食味・食感に優れるチャーハンを容易に得ることができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の常温流通食品セットを説明する説明図である。
図1に示したように本発明の常温流通食品セット1は、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つを所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米を所定量ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した包装体2、具材を同様の容器中に充填し、密封しレトルト殺菌した包装体3、トッピングを同様の容器中に充填し、密封し必要に応じてレトルト殺菌した包装体4をセットにして収容した包装体5とから構成されている。
本発明の常温流通食品セット10中の各容器2、3、4から炊飯米、具材、トッピングを取り出して混合し、電子レンジ調理加熱などの短時間加熱により調理すると、米飯の粘着がなく良好なパラパラ感を有し、食味・食感に優れるチャーハンなどの調理物を容易に得ることができる。
【0017】
図2は、本発明の常温流通食品セットの他の例を説明する説明図である。
図3は図2に示した常温流通食品セットを用いて、電子レンジで加熱調理して食する1例を説明する説明図である。
図2および図3に示したように10Aは本発明の常温流通食品セットである。 本発明の常温流通食品セット10Aは、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つを所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米を所定量充填し密封したガスバリヤー性耐熱容器11の上に、具材を図に示した容器中に充填し、密封しレトルト殺菌した包装体12、およびトッピングを図に示した容器中に充填し、密封し必要に応じてレトルト殺菌した包装体19を載せて、底部側からその上部側を経て底部側にわたるように縦巻き状にするスリーブ型カートン13にて包装してなるものである。
【0018】
耐熱容器11の内部には、前記のようにグルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つを所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米が所定量充填され、上面開口を柔軟で耐熱性のある樹脂シートからなる蓋材14で覆って、開口周縁をヒートシールして閉じて完全に密封してあるが、蓋材14は必要時に手操作で剥ぎ取ることができるシール強度でヒートシールしてある。
【0019】
包装袋12の中には、前記炊飯米と合わせて食することのできる具材を充填して、密封し、レトルト殺菌した具材が電子レンジ加熱調理を行なえるように前加工されて収容されていて、相対向した二枚の樹脂シート又は金属箔のラミネート材からなる包装材料の辺部同士をヒートシールすることにより全体として略偏平となるように形成されている。
【0020】
包装袋19の中には、前記炊飯米と合わせて食することのできるトッピングを充填して、密封し、必要に応じてレトルト殺菌したトッピングが電子レンジ加熱調理を行なえるように前加工されて収容されていて、相対向した二枚の樹脂シート又は金属箔のラミネート材からなる包装材料の辺部同士をヒートシールすることにより全体として略偏平となるように形成されている。
【0021】
電子レンジ加熱調理する際は、まず耐熱容器11のスリーブ型カートン13のカバー部15を開き、耐熱容器11の蓋材14の一部を捲って開くとともに、前記包装袋12を開封し、蓋材14を捲って形成した開口から包装袋12側の具材を耐熱容器11に入れ、次いで前記包装袋19を開封し、蓋材14を捲って形成した開口から包装袋19側のトッピングを耐熱容器11に入れて前記炊飯米と均一に合わせる。
次に、蓋材14を戻して開口を閉じるとともに、カバー部15を戻してそのカバー部15の係止爪16を座部17における係止部18に係止させる。こうすることによりカバー部15は蓋材14を覆うように被せ付けられた状態が維持される。そして、スリーブ型カートン13と耐熱容器11との組み合わせとなった包装体10を前記カバー部15が被せ付けられた形態のまま電子レンジの庫内に入れ、電子レンジ加熱調理を短時間行なう。
【0022】
加熱が終了したら、常温流通食品セット10Aを電子レンジ庫内から取り出し、カバー部15を開き、蓋材14を取り除くことにより、本発明の加工米飯調理物を食することができる。
電子レンジ加熱調理されて熱くなった耐熱容器11に直接触れることなく取り扱うことができるので火傷を防ぐことができる。
【0023】
本発明で用いる精白米とは、うるち米、もち米、ワイルドライス、玄米などの精白物である。また必要に応じてこれらの半調理、半加熱物などのα化米および他の穀類などを添加することもできる。
【0024】
本発明において精白米は常法に従い洗米を行う。精白米を洗米後、浸漬水に浸漬する。通常、生米の水分含量は10〜18%であるので、精白米の水分含量が約20〜50%となるように水に浸漬したり、水を噴霧したりすることが知られているが、この範囲に限定されるものではない。
精白米を浸漬水から取り出し、引き続き炊飯直前に米に対して例えば1.0〜1.5倍量の炊き水を添加し、常法に従いガス、電気、蒸気などの熱源を用いて常圧炊飯を行う。
【0025】
このようにして炊飯した後、米飯が比較的温かい約60℃以上のうちに、無菌設備中でバリヤー性耐熱容器中に必要に応じて脱酸素剤と共に充填し、例えばヒートシール機で完全に密封する。
例えば、米国航空宇宙局(NASA)の規格でクラス100〜クラス10000のクリーンルームやクリーンブース内等で無菌充填を行なう。無菌充填を行なう際には使用する設備・包材・容器・脱酸素剤等は充分に滅菌されたものを使用する。
【0026】
好ましいガスバリヤー性耐熱容器包装体は、加熱に耐えうる容器であって、空気不透過性のものが好ましく、細菌などの侵入を防ぎ得るものであり、その形態は限定されるものではなく、例えば耐熱性合成樹脂からなるトレーなどの耐熱容器か、耐熱性合成樹脂フィルムからなる耐熱プラスチック袋を例示することができる。
例えば、耐熱容器は、塩化ビニリデンフィルムを中間層とし、上下層には、ポリプロピレンを積層しこれを容器状に成形したものと上蓋フィルム(PET/Kナイロン/ポリエチレン系シーラント)などが使用できる。
またそのままの状態で電子レンジ加熱調理しない場合は、金属箔のラミネート材からなるトレーなどの耐熱容器か、金属箔のラミネート材からなる耐熱プラスチック袋を使用することもできる。
【0027】
上記のような米飯の製造方法において、本発明においては、グルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩を少なくとも一つ所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む含有する浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整することが、好気性菌や嫌気性菌などの増殖や活動を抑えることができ、長期保存しても炊きたての味と香りが維持でき、かつ米飯の粘着のない良好なパラパラ感を有する米飯を製造するために必要である。
【0028】
本発明で用いるグルコノデルタラクトンは食品添加物であり、本発明において好ましく用いることができる。
本発明で用いる上記の食用有機酸は食品添加物として認められている食用酸であり、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの混合物などを挙げることができるが、長期保存性と食味とを同時に満足させるためにはクエン酸、グルコン酸あるいはこれらの混合物は好ましく使用することができる。
本発明で用いる上記の食用有機酸の塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの混合物などを挙げることができる。
またグルコノデルタラクトンとこれらの食用有機酸やその塩との混合物も使用することができる。
【0029】
食用有機酸を使用せずに炊飯した炊飯後の米飯のpHは約6.7であり、この米飯は食味は優れているが、長期保存性に劣るので、本発明においては炊飯後の米飯のpHを4.0〜4.8となるように調整することにより食中毒菌の増殖を防止することが可能であることを究明した。
pH値を低く調整するほど、食中毒菌の増殖防止効果は高まるが、食味に悪影響がでるので好ましくなく、逆にpH値を高く調整すると、長期保存性が悪化するので、長期保存食品として商品化するためには、常温で最低でも約6ケ月間は保存できる保存性が要求されることを考えて、炊飯後の米飯のpHを4.0〜4.8に制御するのが好ましいとの知見を得たものである。
【0030】
本発明において、グルコノデルタラクトンや食用有機酸、植物油脂および調理用塩などを浸漬水や炊き水に添加して上記範囲内のpH値に制御された米飯を製造するための具体的方法としては、
(1)精白米を洗米後、一定時間水に浸漬後、炊飯直前に炊き水にグルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩、植物油脂および調理用塩などを添加し、炊飯する方法、
(2)精白米を洗米後、グルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩、植物油脂および調理用塩などを含む溶液中に一定時間浸漬し、pH値を低下させ、そのまま炊飯する方法、
(3)精白米を洗米後、グルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩、植物油脂および調理用塩などを含む溶液中に一定時間浸漬し、pHをある程度低下させ、さらに炊飯直前に炊き水にグルコノデルタラクトンや食用有機酸あるいはその塩などを添加し、炊飯する方法、
があるが、最終pH値の安定度と品質の観点等より、(3)の方法によるのが最も現実的であり好ましい方法である。
【0031】
本発明で用いる植物油脂は、使用時に液状を呈するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、コーン油、大豆油、なたね油、ごま油、こめ油、サフラワー油、やし油、パーム油、カカオ油、ひまわり油、綿実油などを挙げることができるが、オリーブオイル、なたね油、コーン油、ひまわり油、綿実油、ぶどう種子油、サフラワー油などあるいはこれらの2種以上を混合・調整されたものが使用しやすく好ましく使用できる。
植物油脂の浸漬水や炊き水への添加量は炊飯後の米飯の粘着を抑制ないし防止できる添加量であればよく、例えば浸漬水や炊き水全体に対して0.1〜0.3質量%である。0.1質量%未満では米飯の粘着を抑制ないし防止できない恐れがあり、0.3質量%を超えると米飯の食味、食感を損なう恐れがある。
植物油脂に乳化剤を添加せずに高速攪拌するなどして浸漬水や炊き水へ均一に分散させて使用することも可能であるが、植物油脂に乳化剤を適宜添加して浸漬水や炊き水へ均一に乳化分散させて使用することが好ましい。使用する乳化剤は食用乳化剤が好ましい。
【0032】
本発明で用いる調理用塩は、特に限定されるものではなく、食塩、岩塩などいずれも使用できる。調理用塩の添加量は、例えば浸漬水や炊き水全体に対して1〜2質量%である。1質量%未満では米飯の粘着を抑制ないし防止できない恐れがあり、2質量%を超えると米飯の食味、食感を損なう恐れがある。
【0033】
浸漬水や炊き水へ、所定量の植物油脂および調理用塩を添加することにより、炊飯後の米飯の互いの付着を防止できるとともにほぐれ感を付与することができる。
【0034】
本発明で用いる具材は、具体的には、例えば、鶏卵などの卵類、植物油脂、キャベツ、レタス、シュンギクなどの葉菜、ゴボウ、ニンジン、ショウガ、ニンニクなどの根菜、セロリ、玉ねぎ、長ねぎ、フキなどの茎類、カリフラワー、ブロッコリーなどの花菜などの野菜類、鮭、アサリ、カニ、イカ、タコなどの魚貝類、牛肉、豚肉、鳥肉などの畜肉類などの1種または2種以上、その他調味料、着色料、乳化剤などを添加して調理したものを挙げることができる。
具材は所定量ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、密封し例えばレトルト殺菌処理を行う。
【0035】
本発明で用いるトッピングは、具体的には、例えば、調味料を含む前記植物油脂および/または動物油脂、乳化剤、酸化防止剤、その他調味料、調理用塩、砂糖その他を添加して調理したものを挙げることができる。
このトッピングは所定量ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、密封し例えばレトルト殺菌処理を行う。
本発明で用いる動物油脂は、具体的には、例えば、バター、ヘット、ラードなどを挙げることができる。動物油脂を用いると、ボリューム感を付与することができるので好ましい。
【0036】
本発明において、本発明の主旨を逸脱しない範囲で米飯、具材、トッピングにさらに着色料、その他食品添加物を添加してもよい。
【実施例】
【0037】
次に実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
含水率15%の精白米を洗米後、浸漬水として水を用い、それに60分間浸漬して含水率32%とした浸漬米を得た。
炊飯直前に炊き水として並塩1質量%、乳化油脂(商品名:NS−100、日本油脂製)0.2質量%、グルコン酸1質量%含有する炊飯水を浸漬米8kgに対して6.5リットル用いガス式炊飯器約25分炊飯し、含水率55〜65質量%の炊飯米を得た。炊飯後の米飯のpH値を下記の測定法で測定した結果、4.5〜4.7であった。
【0038】
pH測定は以下の方法によった。
(1)米飯20gに対して、50ccの蒸留水を加え、ホモゲナイザーにて処理する。
(2)5分間放置後、pHメーター[東亜電波工業(株)製HM−30S]にてPHを測定する。
【0039】
米飯が約60℃の状態で、クラス100のバイオクリーンルーム内で、バリヤー性耐熱容器として、PP/EVOH/PPからなるドライラミネート材を袋状に製袋し、一部ヒートシールしていない未溶着部を設けたプラスチック袋を用い、必要に応じて脱酸素剤と共に充填し、ヒートシール機でヒートシールして完全に密封した。
【0040】
次に焼豚30質量%、卵65質量%、コーン油5質量%からなる具材を調理した。この具材をガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、密封しレトルト殺菌処理(120℃、20〜30分間加熱)を行った。
【0041】
次に調味料を含む油脂60質量%、乳化剤(HLB=5、シュガーエステルS−570、三菱化学フーズ製)1.5質量%、粉体調味料35質量%、調理用塩1質量%、砂糖1質量%、その他1.5質量%からなるトッピングを調理した。このトッピングをガスバリヤー性容器中に充填した。
【0042】
上記(イ)所定量容器に密封した炊飯米、(ロ)所定量容器に密封・殺菌した具材、および(ハ)所定量容器に密封したトッピングからなる常温流通食品セットを常温で約12ケ月間保存した後、それぞれ容器から取り出して混合し、電子レンジで3分間あたためてチャーハンを調理した。このチャーハンを食し、食味、食感、保存性を評価した。
また、(イ)所定量容器に密封した炊飯米を常温で約12ケ月間保存した後、電子レンジで3分間あたためた炊飯米は異味異臭もなく、かすかに酸味を有しており、優れたパラパラ感を有し、たきたての食感を有していた。
チャーハンの食味、食感は訓練された味覚審査員を用い、官能評価した結果、米飯の粘着がなく、優れたパラパラ感を有し、食味・食感に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の常温流通食品セットは、少なくとも(イ)所定量容器に密封した炊飯米、(ロ)所定量容器に密封・殺菌した具材、および(ハ)所定量容器に密封し必要に応じて殺菌したトッピングを含む常温流通食品セットにおいて、
前記炊飯米として、精白米を洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯し得られる炊飯米であって、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つを所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米を用いることを特徴とするものであり、
炊飯米は、好気性菌や嫌気性菌などの増殖や活動を抑えることができるので、常温で長期保存しても炊きたての味と香りが維持でき、具材およびトッピングも常温で長期保存できるので、長期常温流通が可能な上、食する際には、炊飯米、具材、トッピングを各容器から取り出して混合し、例えば、電子レンジ調理加熱などの短時間加熱でチャーハンなどの調理物を容易に得ることができ、安価で米飯の粘着がなく良好なパラパラ感を有し、食味・食感に優れるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の常温流通食品セットを模式的に説明する説明図である。
【図2】本発明の常温流通食品セットの他の例を説明する説明図である。
【図3】図2に示した常温流通食品セットを用いて、電子レンジで加熱調理して食する1例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1、10A 常温流通食品セット
2 炊飯後の米飯を所定量ガスバリヤー性耐熱容器中に充填し、完全に密封した包装体
3、12 具材を同様の容器中に充填し、密封しレトルト殺菌した包装体
4、19 トッピングを同様の容器中に充填し、密封しレトルト殺菌した包装体5 セットを収容した包装体
11 ガスバリヤー性耐熱容器
13 スリーブ型カートン
14 蓋材
15 カバー部
16 係止爪
17 座部
18 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(イ)所定量容器に密封した炊飯米、(ロ)所定量容器に密封・殺菌した具材、および(ハ)所定量容器に密封し必要に応じて殺菌したトッピングを含む常温流通食品セットにおいて、
前記炊飯米として、精白米を洗米後、浸漬水に浸漬し、次いで浸漬水から取り出し、炊飯直前に炊き水を添加して炊飯し得られる炊飯米であって、グルコノデルタラクトン、食用有機酸またはその塩あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つを所定量含有するとともに、乳化剤を必要に応じて添加した植物油脂および調理用塩を必須成分として含む浸漬水および/または炊き水を用いて炊飯後の米飯のpHが4.0〜4.8となるように調整された炊飯米を用いることを特徴とする常温流通食品セット。
【請求項2】
食用有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも一つの食用有機酸であることを特徴とする請求項1に記載の常温流通食品セット。
【請求項3】
有機酸の塩がカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびこれらの混合物から選択される少なくとも一つの有機酸の塩であることを特徴とする請求項1に記載の常温流通食品セット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の常温流通食品セットの(イ)炊飯米、(ロ)具材、(ハ)トッピングを各容器から取り出して混合し、加熱して調理したことを特徴とする加工米飯調理物。
【請求項5】
チャーハンであることを特徴とする請求項3記載の加工米飯調理物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate