説明

常温硬化性樹脂組成物

【課題】ホルムアルデヒド発散量が充分に低減されることにより、化学物質の発散に対する衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制されて、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として、特に防水ライニング用材料に好適であるラジカル硬化性樹脂を含有する樹脂組成物、及び、それを含む防水材を提供する。
【解決手段】ラジカル硬化性樹脂並びに第一級アミン及び/又は第二級アミンを含有する常温硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として有用な不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂等のラジカル硬化性樹脂を含有する常温硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル硬化性樹脂は、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として用いられ、常温で硬化する常温硬化システムに適応できるものが広く採用されている。このようなラジカル硬化性樹脂としては、常温でラジカル重合可能であり、硬化物が靱性、強度、耐久性、防水性等の性能を有することから、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂が多くの実績があり、その他にもウレタン(メタ)アクリレート樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは、例えば、防水材(防水ライニング用材料)の他、床材、化粧板、家具材、防食材、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)材料、WPC(Wood Plastic Combination)、バスタブ(浴槽)、人大(人工大理石)、包装品等の様々な分野において用いられている。
【0003】
ところで、建築材料に対するシックハウス対策として建築基準法等の一部改正があり、居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置に関する技術的基準の整備に関し、発散により衛生上の支障を生じるおそれのある化学物質としてホルムアルデヒドが挙げられている。例えば、内装仕上げ材の発散速度に関し、夏季においてその表面積1平方メートルにつき毎時0.12ミリグラムを超える量のホルムアルデヒドを発散するものが第一種ホルムアルデヒド発散建築材料(内装の仕上げには、用いないものとする)等とされることから、ホルムアルデヒドの発散量を基準値より低くして、内装仕上げ材等の分野において建築基準に適合させることができる技術が求められている。
【0004】
従来の硬化性樹脂に関する技術としては、不飽和ポリエステル、スチレン及び(メタ)アクリレート系不飽和単量体からなり、スチレンの不飽和基モル数を特定した化粧板塗料用不飽和ポリエステル樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、スチレン臭気を発生しないことを目的としたものである。また、エポキシ化合物(A)と、(メタ)アクリル酸(B)との反応物からなるエポキシ(メタ)アクリレート(I)、及び、重合性(メタ)アクリル系モノマー(II)を含んでなる硬化性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この硬化性樹脂組成物は、低臭気性等において優れた性能を示し、各種の用途に有用なものである。
【0005】
また、アセチルアセトンパーオキサイド、特定のパーオキシエステル、アセチルアセトン及び金属石鹸を用いることにより、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂を硬化する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この硬化方法は、硬化後に残存するスチレンモノマーを低下させることを目的とするものである。また、不飽和ポリエステル樹脂からなる樹脂液中に、有機系硬化促進剤を含むポリエステル化粧合板に関し、実施例において、硬化剤としてメチルエチルケトンパーオキサイド、及び、硬化促進剤としてN−ピロジノアセトアセトアミドを用いた樹脂液が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この樹脂液は、着色がなく硬化が充分となるとともに、スチレン臭気の極めて少ないポリエステル化粧合板を得ることを目的とするものである。
【0006】
更に、アセトアセチル基含有不飽和ポリエステル系樹脂からなるアルデヒド吸着剤に関し、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジシアンジアミド、グリオキザールモノウレタン等のホルムアルデヒド吸着剤を併用してもよい旨が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。この吸着剤は、基材から発生するホルムアルデヒドを吸着することを目的とする。また、不飽和ポリエステル樹脂、多価アミン化合物及び繊維補強材からなり、特定温度で一定時間増粘させて得られる不飽和ポリエステル樹脂成形材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。これは、増粘速度を速くすることができ、短時間で成形材料を製造することができる方法である。
【0007】
しかしながら、これらの技術においては、建築基準法等の一部改正等に充分に対応することができるようにホルムアルデヒド等の発散量をより低く抑制することにより、樹脂組成物の硬化過程や硬化物において衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制され、各種の用途に好適なものとするための工夫の余地があった。例えば、ホルムアルデヒド等の発散量が充分に抑制された防水ライニング用材料として好適なものとするための工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−371232号公報
【特許文献2】特開2001−240632号公報
【特許文献3】特開平9−110949号公報
【特許文献4】特開2003−276013号公報
【特許文献5】特開平11−197502号公報
【特許文献6】特開平7−207047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ホルムアルデヒド発散量が充分に低減されることにより、化学物質の発散に対する衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制されて、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として、特に防水ライニング用材料に好適であるラジカル硬化性樹脂を含有する常温硬化性樹脂組成物、及び、それを含む防水材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ラジカル硬化性樹脂を含有する樹脂組成物について種々検討したところ、ラジカル硬化性樹脂にアミンを含有する樹脂組成物が硬化過程や硬化後において、ホルムアルデヒド発散量を低減することが可能となることを見いだし、このような樹脂組成物が、各種の分野において、特に防水材(防水ライニング用材料)に好適なものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、樹脂組成物に含有されるアミンとして、第一級アミン及び/又は第二級アミンを用いることにより、該樹脂組成物の硬化過程や硬化物において衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制される程度にホルムアルデヒド発散量を効果的に低減することができることを見いだし、中でも一価アミン(モノアミン)を用いることが有効であることを見いだし、本発明に到達したものである。本発明の常温硬化性樹脂組成物は、平成15年7月1日に施行された改正建築基準法における「シックハウス対策に係る建築基準法等の一部を改正する法律」を受け、建築分野等における建築材料等の最終製品が、ホルムアルデヒド発散量を充分に低減することを可能とするものである。
【0011】
すなわち本発明は、ラジカル硬化性樹脂並びに第一級アミン及び/又は第二級アミンを含有する常温硬化性樹脂組成物である。
本発明はまた、上記常温硬化性樹脂組成物を含む防水材でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明の常温硬化性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ともいう。)において、ラジカル硬化性樹脂としては、重合体と重合性単量体とを含むものである。
上記ラジカル硬化性樹脂において、重合体としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート系重合体等の1種又は2種以上のものから構成されるものであることが好ましい。中でも、例えば、防水ライニング用材料に用いる場合には、形成される防水層が充分な基本性能を有することから、不飽和ポリエステルを含んでなることが好ましい。
上記要件を満たす重合体の含有量としては、ラジカル硬化性樹脂に含まれる重合体の全量を100質量%として、50〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、70〜100質量%であり、更に好ましくは、90〜100質量%である。
【0013】
上記重合体としてはまた、二重結合力価が300〜1800であるものを含むものであることが好ましい。二重結合力価が300未満であると、例えば、防水ライニング用材料に使用した場合に、防水層の追従性等が充分なものとはならないおそれがあり、1800を超えると、防水層の耐加重性、耐磨耗性等が優れたものとはならないおそれがある。好ましくは、400〜1600であり、より好ましくは、600〜1400である。
なお、二重結合力価とは、二重結合1モル当たりの該重合体のグラム数であり、例えば、以下に記載するように求めることが好ましい。
(二重結合力価の求め方)
被架橋重合体/不飽和多塩基酸(又は不飽和基含有エポキシ)のモル数
とするか、又は、不飽和ポリエステルの場合、
{(酸成分+グリコール成分)−縮合水}/不飽和酸のモル数
とする。
【0014】
以下に、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリレート系重合体について説明する。
上記不飽和ポリエステルとしては、多塩基酸成分と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とを縮合反応して得ることができる。なお、多塩基酸成分を「酸成分」ともいい、不飽和多塩基酸を「不飽和酸」ともいう。
上記不飽和ポリエステルに用いられる多塩基酸成分としては、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分に含まれる水酸基及び/又はエポキシ基と反応してエステル結合を生成することができる置換基を2つ以上有する化合物であればよく、不飽和多塩基酸を必須とし、その一部を飽和多塩基酸に置き換えて使用してもよい。
上記不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β―不飽和多塩基酸;ジヒドロムコン酸等のβ,γ―不飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル等が挙げられる。これら例示の化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
上記飽和多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族飽和多塩基酸;ヘット酸、1,2−ヘキサヒドロフタル酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環式飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル等が挙げられる。これら例示の化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
上記不飽和ポリエステルに用いられるグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,4−ジオール、2,2−ジエチルブタン−1,3−ジオール、4,5−ノナンジオール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。これら例示の化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
上記不飽和ポリエステルに用いられるエポキシ化合物成分としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、3,4−エポキシ−1−ブテン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等を用いることができる。これら例示の化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
上記不飽和ポリエステルの原料の一部を、以下に示すアリル基等の不飽和結合を有する化合物に置き換えて製造してもよく、この場合には、いわゆる空気硬化型ポリエステルとすることができる。具体的には、少なくとも前述の通常の多塩基酸成分の全量又は一部を、以下に示すアリル基等の不飽和結合を有する不飽和多塩基酸に置き換えるか、上述した通常のグリコール成分及び/若しくはエポキシ化合物成分の全量又は一部を、以下に示すアリル基等の不飽和結合を有するグリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分に置き換えればよい。
【0019】
上記不飽和結合を有する不飽和多塩基酸成分としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、α−テルピネン−無水マレイン酸付加物、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物(エンドメチレンテトラヒドロフタル酸)、ロジン、エステルガム、乾性油脂肪酸、半乾性油、脂肪酸等があげられる。これら例示の化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記不飽和結合を有するグリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分としては、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールエタンモノアリルエーテル、トリメチロールエタンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これら例示の化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
上記不飽和ポリエステルにおける多塩基酸成分やアルコール成分等の種類や使用量としては特に限定されず、使用用途に応じて適宜設定すればよい。また、多塩基酸成分と、アルコール成分及び/又はエポキシ化合物成分との反応モル比としては、多塩基酸成分:アルコール成分とした場合に、10:8〜10:12であることが好ましい。
なお、多塩基酸成分やアルコール分を縮合させる方法としては特に限定されず、例えば、反応温度や反応時間等の反応条件も適宜設定すればよい。
【0021】
上記ビニルエステルとしては、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応により得ることができる。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA系樹脂、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂、ビスフェノールF系樹脂、水素化ビスフェノールA系の脂肪族系のエポキシ樹脂等が好適である。また、ビスフェノールA系樹脂やビスフェノールF系樹脂としては、ビスフェノールA及び/又はビスフェノールFと脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物とを反応させて得られる反応生成物であることが好ましい。
上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が好適である。
【0022】
上記脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物は、脂肪族2官能アルコールのジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のものであり、エポキシ当量が300以下であることが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が好適である。
上記ビニルエステルにおけるエポキシ樹脂や不飽和一塩基酸の種類や使用量としては特に限定されず、使用用途に応じて適宜設定すればよい。また、これらを反応させる方法としては特に限定されず、例えば、反応温度や反応時間等の反応条件も適宜設定すればよい。
【0023】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオールと、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。
上記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカ−ボネ−トポリオール、ポリブタジエンポリオール等の1種又は2種以上が好適であり、数平均分子量が200〜3000であるものが好ましい。より好ましくは、数平均分子量が400〜2000のものである。なお、ポリエーテルポリオールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドの他に、ビスフェノールAやビスフェノールFにアルキレンオキサイドを付加させたポリオールも使用することができる。また、ポリエステルポリオールとは、二塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合体、又は、ポリカプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合体である。
【0024】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の1種又は2種以上が好適である。
【0025】
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類や、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類等の1種又は2種以上が好適である。
上記ウレタン(メタ)アクリレートにおけるポリオール、ポリイソシアネート及び水酸基を有する(メタ)アクリレートの種類や使用量としては特に限定されず、使用用途に応じて適宜設定すればよい。また、これらを反応させる方法としては特に限定されず、例えば、反応温度や反応時間等の反応条件も適宜設定すればよい。
【0026】
上記(メタ)アクリレート系重合体としては、メタクリル酸メチル等の重合体等が挙げられる。また、重合体に酸やエポキシ基の官能基を導入するために、アクリル酸やグリシジルメタクリル酸を共重合させたものや、更にその官能基に反応させて重合性官能基を持たせた重合体やアクリル系以外のスチレン等の単量体を共重合したものを使用することも可能である。
【0027】
本発明におけるラジカル硬化性樹脂において、重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の1官能アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等の分子内に環状構造を有する1官能(メタ)アクリレート;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等を用いることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレンを用いることが好ましい。
なお、上記(メタ)アクリレート系重合体と重合性単量体とを含むラジカル硬化性樹脂を得る場合においては、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体等の重合性単量体に溶解させた樹脂(アクリルシラップ)であることが好ましい。また、耐熱性を上げるためにエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能ビニル単量体を用いることもできる。
【0028】
上記重合性単量体において、スチレンを用いる場合には、重合性単量体の全量を100質量%とすると、50〜100質量%であることが好ましい。
上記重合性単量体の好適な形態としては、25℃における粘度が100mPa・s以下のものである。粘度が100mPa・sを超えると、樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が充分なものとはならないおそれがある。
【0029】
本発明におけるラジカル硬化性樹脂としては、上述した重合体及び重合性単量体を含むものであり、常温でラジカル重合が可能なものである。
なお、重合体及び重合性単量体の質量比としては、重合体/重合性単量体が、(20〜80)/(80〜20)であることが好ましい。重合性単量体の質量比が80質量%を超えると、得られる樹脂の耐薬品性及び靭性が充分なものとならないおそれがあり、20質量%未満であると、硬化物の表面性を充分に向上することができず、また、粘度が大きいために作業性に優れたものとはならないおそれがある。
上記ラジカル硬化性樹脂においてはまた、安定剤として、ハイドロキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、クレゾール、t一ブチルハイドロキノン、フェルダジル、DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)等の安定ラジカルを使用することができる。
【0030】
上記ラジカル硬化性樹脂としては、例えば、上述した重合体を重合性単量体に溶解させて得られる、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、アクリル樹脂等の1種又は2種以上が好適である。好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂であり、中でも、ジシクロペンタジエン(DCPD)系不飽和ポリエステル樹脂、及び/又は、回収ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた不飽和ポリエステル樹脂であることが好ましい。なお、「回収PETを用いた」とは、回収PETを原料として利用したことを意味する。
以下にジシクロペンタジエン系不飽和ポリエステル樹脂、及び、回収PETを原料として利用した不飽和ポリエステル樹脂について、更に詳しく説明する。
【0031】
上記ジシクロペンタジエン系不飽和ポリエステル樹脂とは、ノルボルネン骨格を有する不飽和ポリエステルを上述した重合性単量体に溶解したものである。ノルボルネン骨格を有する不飽和ポリエステル(I)(以下、「不飽和ポリエステル(I)」ともいう。)とは、不飽和ポリエステルの分子末端の一部に、下記一般式(1)で示されるノルボルネン骨格が導入されたものを指す。
【0032】
【化1】

【0033】
上記不飽和ポリエステル(I)の酸価及び分子量には特に制限が無いが、一般的には酸価が40以下であり、数平均分子量が500〜5000、重量平均分子量が1000〜50000の範囲内にあることが好ましく、低粘性と硬化物物性とのバランスの観点から、数平均分子量が600〜2500、重量平均分子量が1500〜15000の範囲内にあることがより好ましい。なお、これらの分子量測定は、汎用のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質として、示差屈折率計を検出器として測定することで容易に測定することができる。
【0034】
上記不飽和ポリエステルへのノルボルネン骨格の導入方法としては特に限定されないが、例えば、ジシクロペンタジエンを原料に用いて導入する方法が効率的かつ経済的である。具体的には、例えば、不飽和ポリエステルに用いられる多塩基酸酸成分の一部を、ジシクロペンタジエンの不飽和多塩基酸付加物で置き換えることによって得られる。ジシクロペンタジエンの不飽和多塩基酸付加物としては、上述した不飽和多塩基酸をジシクロペンタジエンに付加させてなる付加物、例えば、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物等のジシクロペンタジエンの不飽和2価カルボン酸付加物を用いることができる。また、不飽和ポリエステルに用いられるグリコール成分の一部を、ジシクロペンタジエンのグリコール付加物類やヒドロキシジシクロペンタジエンで置き換えることによっても得られる。
【0035】
これらのノルボルネン骨格の不飽和ポリエステルへの導入方法のうち、本発明の優れた効果を有効に引き出すためには、ジシクロペンタジエンの不飽和2価カルボン酸付加物を原料に用いて不飽和ポリエステル(I)を製造することが好ましく、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を原料とすることが特に好ましい。
なお、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物は、ジシクロペンタジエン、無水マレイン酸及び水の付加反応を行うことによって製造することができるが、例えば、特開平11−49849号公報に記載の方法、すなわち無水マレイン酸と水の反応混合物にジシクロペンタジエンを反応させる工程において、無水マレイン酸の水に対するモル比が1未満、好ましくは0.2〜0.9として製造する方法が、最終的に得られる成形品の耐水性が向上するため特に好ましい。この場合、不飽和ポリエステル(I)の製造方法は、(1)ジシクロペンタジエン、無水マレイン酸及び水を反応させてジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得る工程、並びに、(2)該ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物に多塩基酸成分及びグリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分を加え脱水縮合させて不飽和ポリエステル(I)を得る工程から製造されることになる。
【0036】
また多塩基酸成分、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分、並びに、ジシクロペンタジエンを同時に加えて昇温し脱水縮合させて不飽和ポリエステル(I)を製造することもできる。この場合、ジシクロペンタジエンの多塩基酸付加物に加えてジシクロペンタジエンのグリコール付加物の形で、ノルボルネン骨格が不飽和ポリエステルに導入される。更に、多塩基酸成分と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とを脱水縮合させた後に、ジシクロペンタジエンを添加し、分子末端のカルボン酸基及び水酸基に付加反応させて不飽和ポリエステル(I)を製造することもできる。
【0037】
なお、ノルボルネン骨格を有する不飽和ポリエステル(I)の合成方法としては、例えば、「専門議事録(Technical Proceedings)」〔強化プラスチック/合成物学会(Reinforced Plastics/Composites Institute)、ザ ソサイアティ オブ ザ プラスチックス インダストリー社(The Society of the Plastics Industory Inc.)、第36回年次会議(36th Annual Conference)、1981年 7−E期(Session 7−E(1981))〕にまとめられており、本発明の優れた効果を犠牲にしない範囲内で、これら公知の方法を用いることができる。
【0038】
上記不飽和ポリエステル(I)においては、ノルボルネン骨格の導入率が、不飽和ポリエステルを構成する全多塩基酸成分に対して、5〜100モル%のジシクロペンタジエンを使用することが好ましく、50〜80モル%が更に好ましい。この範囲より少量の場合では、色むら・色別れ等による成形品外観が発生するおそれがあり、また、この範囲より多量の場合では、成形品の靱性に乏しく、成形時のクラック発生の原因となるおそれがある。
なお、ノルボルネン骨格の導入率としては、原料仕込みの比率から容易に計算することができ、例えば、不飽和ポリエステル(I)の製造時に用いた全多塩基酸成分の量をXモル、ジシクロペンタジエンの使用量をYモルとすると、ノルボルネン骨格の導入率は、単純に(Y/X×100)%となる。ジシクロペンタジエンに替えて、例えば、ヒドロキシジシクロペンタジエンやジシクロペンタジエンのエチレングリコール付加物を用いた場合ももちろん、各々の使用モル数を全多塩基酸成分の使用モル数で除してノルボルネン骨格の導入率を算出すればよい。
【0039】
上記回収ポリエチレンテレフタレートを原料として利用した不飽和ポリエステルとは、回収ポリエチレンテレフタレート(以下、「回収PET」ともいう。)と多価アルコールとを反応させて得られるグリコール分解物と、α−β不飽和多塩基酸又はその酸無水物とからなる不飽和ポリエステルを意味する。
なお、不飽和ポリエステル樹脂の原料に回収PETを利用する技術としては、例えば、「モダンプラスティックス インターナショナル(Modern Plastics International)」〔ロジャー・カレンダイン(Roger Calendine)著、(米国)、マックグロウ・ヒル社(McGraw−Hill)、1980年6月〕に反応方法、機械的強度、経済性が開示されている。また、特開平11−181067号公報には、保存安定性及び硬化性のあるポリエチレンテレフタレートを用いた不飽和ポリエステル樹脂の製造方法が開示されている。更に、特開平11−181072号公報には、破砕、洗浄された含水率0.1重量%以上、10重量%以下の回収PETを不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いる製造方法が開示されている。
【0040】
上記回収PETとしては特に限定されないが、例えば、フィルム屑、ペットボトルを原料としたものが挙げられる。中でも、無色のタイプが好ましい。また、回収PETの形状は特に限定されず、ペレット状やフレーク状のいずれも使用できる。
上記回収PET使用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、例えば、下記の方法で得ることができる。
まず、グリコール分解物は、回収PETと多価アルコールとを200℃〜250℃で3時間〜10時間かけてアルコリシス反応して得られる。次いで、前記のグリコール分解物と、α,β−不飽和多塩基酸又はその酸無水物及び必要に応じて他の飽和酸とを、200℃〜250℃で5時間〜20時間かけて脱水重縮合反応し後、上述した重合性単量体で希釈し、必要に応じて安定化剤としての重合禁止剤を添加して、回収PET使用不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製する。
【0041】
上記回収PETと多価アルコールとの反応比率としては、テレフタル酸とエチレングリコールとからなる繰り返し単位を回収PETの1モルとして計算した場合、より多くの回収PETを使用する観点から、回収PET使用割合が10モル%以上であることが好ましい。また、重合性単量体への溶解性の点から、90モル%以下であることが好ましい。特に、20モル%以上、80モル%以下であることが好ましい。なお、回収PET使用割合の値が小さいほど、α、β−不飽和多塩基酸又はその酸無水物を多く使用することができ、α、β−不飽和多塩基酸又はその酸無水物が多いほど、不飽和ポリエステル樹脂が高反応性となり、強度その他の物性が良好となることから、回収PETをより多く利用する観点と物性とのバランスを考慮して決定することが好ましい。
【0042】
本発明におけるラジカル硬化性樹脂としてはまた、常温硬化性樹脂組成物の硬化物における引張強度が10MPaより大きく、かつ、引張伸び率が10%より大きいものであることが好適である。引張強度が10MPa以下であると、例えば、防水ライニング用材料に使用した場合に、形成された防水層の防水性、耐水性、基材に対する追従性等を充分に向上させることができないおそれがあり、また、引張伸び率が10%以下であると、樹脂組成物から形成される硬化層の剛直性が高くなり過ぎて、コンクリート等の基材の伸縮や振動に対する追従性が充分とはならないおそれがある。
上記引張強度としては、15MPa以上であることがより好ましく、更に好ましくは、20MPa以上である。また、50MPa以下であることがより好ましく、更に好ましくは、40MPa以下である。
上記引張伸び率としては、20%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、50%以上である。また、200%以下であることがより好ましく、更に好ましくは、100%以下である。
なお、樹脂組成物の硬化物における引張強度及び引張伸び率は、日本工業規格(JIS K7113)に準拠して測定することが好ましい。
【0043】
本発明の好ましい形態としては、上記ラジカル硬化性樹脂は、二重結合力価が300〜1800である重合体を含み、常温硬化性樹脂組成物の硬化物における引張強度が10MPaより大きく、かつ、引張伸び率が10%より大きいものである形態である。
【0044】
本発明の樹脂組成物において、第一級、第二級アミン(第一級、第二級アミン化合物)としては、ホルムアルデヒドの捕捉を目的として用いられるものであるが、一価アミン(モノアミン)であることが好ましい。このようなアミン化合物としては、例えば、アニリン、トルイジン、クレゾール等のアニリン類;アセト酢酸アニリド等のアニリド類を含む芳香族アミン類;モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン等の脂環式アミン;オクチルアミン等の脂肪族アミンが挙げられる。より好ましくは、芳香族アミン、及び、脂環式アミンの一つであるp−トルイジン、ピペリジン等である。
なお、これら第一級、第二級アミンは、予め樹脂組成物中に配合しておいてもよく、硬化させる直前に配合してもよい。また、本発明で用いる第一級、第二級アミン化合物には、予め配合した第一級、第二級アミン化合物が樹脂組成物中で骨格中や他の配合物と反応し、形成したアミン化合物も含まれる。
【0045】
上記第一級、第二級アミンの使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、上限は3重量部、下限は0.01重量部であることが好ましい。より好ましい上限は1.5重量部、下限は0.05重量部である。また、好ましい範囲は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部であり、より好ましい範囲は、0.05〜1.5重量部である。このような範囲に設定することにより、ホルムアルデヒド発散量を充分に低減するという本発明の作用効果を充分に発揮することが可能となる。
【0046】
上記樹脂組成物において、硬化剤としてはケトンパーオキサイドがあり、例えば、アセチルアセトンパーオキサイド(AAPO)、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、エチルアセトアセテートパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド等の一種又は二種以上が挙げられる。なお、ケトンパーオキサイド以外の他の硬化剤、例えば、クメンヒドロキシパーオキサイド等を併用してもよい。
【0047】
上記ケトンパーオキサイドの使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、上限は3重量部、下限は0.5重量部とすることが好ましい。3重量部を超えても、用いる量に比べて、ラジカル硬化性樹脂の硬化剤としての効果が充分に発揮されないおそれがあり、0.5重量部未満であると、樹脂組成物が充分に硬化しないおそれがあり、また、ホルムアルデヒド発散量を充分に低減させることができないおそれがある。より好ましい上限は2重量部、下限は1重量部である。また、好ましい範囲は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.5〜3重量部であり、より好ましい範囲は、1〜2重量部である。
【0048】
本発明における樹脂組成物においてはまた、空乾性付与剤(空気乾燥性付与剤)を含有するものであることが好ましい。
上記空乾性付与剤とは、ラジカル硬化性樹脂が硬化する際に樹脂組成物から形成される被膜や成形物の表面に析出し、空気との遮断層を該表面に形成することにより、空気中の酸素がラジカル硬化性樹脂のラジカル重合を阻害することを防止してラジカル硬化性樹脂の乾燥性を向上させる作用を有するものである。これを用いることにより、硬化物のホルムアルデヒド発散量を更に充分に低減させることが可能となる。このような空乾性付与剤としては、例えば、以下の(1)〜(3)に記載するワックス類等が挙げられる。
【0049】
(1)天然ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の植物系ワックス;密蝋、ラノリン、鯨蝋等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス等が挙げられる。
(2)合成ワックスとしては、例えば、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス;動物性油脂の誘導体;カルボキシル基含有単量体とオレフィンとの共重合体;硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス;ステアリン酸、ドデカン酸、ステアリン酸オクタデシル等の炭素数12以上の脂肪酸及びその誘導体;アルキルフェニールや高級アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したアルコール類等が挙げられる。
(3)その他のものとしては、例えば、天然ワックスや合成ワックス等の配合ワックス等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記ワックス類に、他の成分を含んでもよい。
これらの中でも、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
【0050】
上記空乾性付与剤としてはまた、樹脂組成物を常温で硬化させる場合や、防水ライニング用材料に用いる場合には、JIS K2235に分類される融点が40〜80℃の1種又は2種以上のものを用いることが好ましい。これにより、樹脂組成物の施工において、硬化途中の樹脂組成物から形成される被膜や成形物の表面に析出しやすくなることから、空気との遮断層が充分に形成され、本発明の作用効果を充分に発揮することができることとなる。また、特に防水ライニング用材料に使用した場合には、乾燥後の防水性と基材に対する追従性、耐加重性、耐磨耗性等の機械的特性や、防根性、耐薬品性、長期耐久性等の付加性能も充分かつ確実に発揮させることが可能となる。
上記空乾性付与剤の融点が40℃未満であると、硬化途中の被膜や成形物の表面に空乾性付与剤が充分に析出しにくくなるおそれがあり、また、80℃を超えると、樹脂組成物中に充分に溶解することができないおそれがある。より好ましくは、50〜70℃である。
【0051】
上記空乾性付与剤としては更に、融点が異なる2以上の空乾性付与剤により構成されていてもよい。樹脂組成物の施工では、季節により施工時の温度条件が異なることになるが、融点が異なる2種以上の空乾性付与剤を用いることにより、一年を通じて常温硬化性や表面乾燥性を向上する作用を発揮させることが可能となる。すなわち硬化途中の被膜や成形物の表面に遮断層を形成しやすくするためには、気温が高い夏場では空乾性付与剤の融点を高くする方がよく、気温が低い冬場では空乾性付与剤の融点を低くする方がよいが、融点が高い空乾性付与剤と融点を低い空乾性付与剤とを組み合わせることにより気温に関わりなく硬化途中の被膜や成形物の表面に遮断層が充分に形成されることになる。
【0052】
上記空乾性付与剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、上限は1重量部、下限は0.001重量部(10ppm)とすることが好ましい。1重量部を超えると、樹脂組成物中に充分に溶解することができず、基材等との密着性が充分とはならないおそれがある。0.001重量部未満であると、優れた遮断性及び硬化性を発揮することができず、硬化物からのホルムアルデヒド発散量を低減できないおそれがある。より好ましい上限は0.3重量部、下限は0.01重量部(100ppm)である。また、好ましい範囲は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部であり、より好ましい範囲は、0.01〜0.3重量部である。
【0053】
上記樹脂組成物においてはまた、必要に応じて、常温で硬化させるための促進剤や、促進助剤等を含んでいてもよい。
上記促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸コバルト等の金属石鹸類等が挙げられ、中でもコバルト塩を用いることが好適である。
上記促進剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、5重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.2重量部以上、0.5重量部以下である。
【0054】
上記促進助剤としては、例えば、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシ)−4−メチルアニリン等のアミン類等のβ−ケトエステル、β−ケトアミド類;アセチルアセトン等のβ−ジケトン類等が好適である。
促進助剤の使用総量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、5重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.03重量部以上、1.0重量部以下である。
【0055】
上記樹脂組成物においては更に、必要に応じて、充填剤、揺変剤、繊維強化材、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、無機骨材、不活性粉体、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、顔料やトナー等の着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。
上記添加剤において、充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム(ATH)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ガラスパウダー、ミルドファイバー、クリストバライト、マイカ、シリカ、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、ガラス粉末等の無機充填剤;有機充填剤等の1種又は2種以上が挙げられる。充填剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、20重量部以上、300重量部以下であることが好ましい。また、上記樹脂組成物としては、これらの充填剤を用いることにより、注型(人大)、塗床材に好適に利用することができる。この場合、ATHやシリカを用いることがより好ましく、使用量としては、120重量部以上、200重量部以下であることが好適である。
【0056】
上記揺変剤としては、例えば、ヒュームドシリカ等が挙げられる。揺変剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。なお、揺変剤を用いることにより、樹脂組成物を、防水ライニングや塗料、ゲルコート等の技術に好適に利用することができる。
【0057】
上記繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミド、ポリエステル、ビニロン、フェノール、テフロン(登録商標)等の有機繊維;天然繊維等が挙げられる。中でも、ガラス繊維が好ましい。繊維強化材の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、5重量部以上、70重量部以下であることが好ましい。なお、繊維強化材を用いることにより、樹脂組成物を、繊維強化プラスチック(FRP)材料や防水ライニング等の技術に好適に利用することができる。
なお、この場合、本発明の樹脂組成物を施工した後にクロス(織物)状、マット状、不織布状等のガラス繊維を積層することにより樹脂組成物を繊維強化材に含浸することが防水ライニング用材料等の調製や施工性の点で好ましい。中でも、マット状のガラス繊維を用いることが好ましい。また、樹脂組成物を施工した後にチョップ状のガラス繊維を散布して積層することにより樹脂組成物を繊維強化材に含浸することもできる。
【0058】
上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン類;t−ブチルカテコール等のカテコール類;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール等のフェノール類;フェノチアジン等が好適である。
上記消泡剤としては、シリコン系等の他、市販の高分子系消飽剤その他添加剤を用いることができる。
上記増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の多価金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の多価金属水酸化物;多官能イソシアネート等が好適である。
上記無機骨材としては、珪砂、シリカ、クレー、ベントナイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム等の無機粉体等が好適である。不活性粉体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂硬化物、ゴム、木材等の粉体及び/又は粉砕物等が好適である。また、上記樹脂組成物においては、無機骨材及び/又は不活性粉体を用いることにより、特にレジンモルタルパテ材用途に好適に使用することができることとなる。
【0059】
本発明においては、樹脂組成物を調整する工程や調整した後の工程において、樹脂組成物の原料や調製された樹脂組成物をバブリングしてもよい。これにより、例えば、原料等にホルムアルデヒドが混入したり、樹脂組成物の調整工程や調整した後の工程においてホルムアルデヒドが生成したりしても、樹脂組成物の硬化物におけるホルムアルデヒド発散量を充分に低減することができ、本発明の作用効果を更に充分に発揮することが可能となる。
【0060】
本発明の樹脂組成物においては、硬化過程や硬化後のホルムアルデヒドの発生を充分に抑制することが可能となる。樹脂組成物の硬化物におけるホルムアルデヒド発散量としては、1.0mg/L以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5mg/L以下であり、更に好ましくは、0.1mg/L以下である。
【0061】
本発明の樹脂組成物により被膜(塗膜)を形成する方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物を基材に塗布した後硬化させることにより被膜を成形する方法;マット状の繊維強化材を用いる場合には、本発明の樹脂組成物をハンドレイアップ等により繊維強化材を含浸させて被覆材とし、硬化させることにより被膜を形成する方法等が挙げられる。
上記基材としては、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材等が挙げられる。また、これらの基材は、本発明の樹脂組成物が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。
【0062】
上記樹脂組成物を基材に塗布する方法、及び、硬化方法としては、該樹脂組成物が用いられる用途により適宜設定すればよいが、塗装方法としては、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、スピンコート、バーコート、フローコート、静電塗装、ダイコート、フイルムラミネート、ゲルコート等による塗装法等により行うことができる。また、硬化方法としては、例えば、施工直前に、硬化剤を含む全ての成分を混合して樹脂組成物を作成したり、予め硬化剤を除いて樹脂組成物を調整し、施工する直前に硬化剤を混合したりすることにより硬化させることができる。また、硬化条件において、硬化温度としては、常温で行うことが好ましい。より好ましくは、−10〜60℃であり、更に好ましくは、10〜40℃である。ゲル化時間としては、1〜180分であることが好ましい。より好ましくは、5〜60分である。なお、上記樹脂組成物から形成される塗膜の膜厚としては、用いられる用途により適宜設定すればよい。
【0063】
本発明の樹脂組成物としてはまた、防水材(防水ライニング用材料)を形成するために使用することが好ましく、これにより、防水性や耐水性、基材に対する追従性、耐加重性、耐磨耗性等の機械的特性が優れるうえに、防根性、耐薬品性、長期耐久性等の付加性能を有し、しかも硬化過程や硬化後のホルムアルデヒド発散量を充分に低減することが可能な防水材を得ることができる。このような防水材もまた、本発明の1つである。
またベランダや屋内床に使用される防水材では、異物の落下等は避けられず、これらに対する衝撃性は要求物性の一つであるが、本発明においては、上記樹脂組成物を用いることにより、異物の落下等に対して充分に耐え得る性能を有することになる。なお、二重結合力価が300に満たない重合体を用いた樹脂組成物の硬化物においては、落球衝撃で破砕が確認される。
【発明の効果】
【0064】
本発明の常温硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であるので、ホルムアルデヒドの発散量が充分に低減されることにより、化学物質の発散に対する衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制されて、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として、例えば、防水材の他、床材、化粧板、家具材、防食材、繊維強化プラスチック材料、WPC、バスタブ、人大、包装品等の様々な分野において、特に防水材に好適である樹脂組成物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例におけるホルムアルデヒド発散量の測定時に用いたガラス瓶内の形態を例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0067】
合成例1(不飽和ポリエステル樹脂A)
温度計、撹拌機、不活性ガス吹込管及び還流冷却管を備えた四ツ口フラスコに、トリエチレングリコール1200部、プロピレングリコール175部、イソフタル酸747部及びアジピン酸438部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら210℃で酸価10まで縮合反応した。150℃まで冷却し無水マレイン酸245部を仕込み、210℃まで昇温し、15時間、縮合反応させた数平均分子量4300、二重結合力価996の不飽和ポリエステル65部に、スチレン35部、ハイドロキノン0.01部を加え、酸価7、粘度0.8Pa・sの不飽和ポリエステル樹脂Aを得た。
【0068】
合成例2(不飽和ポリエステル樹脂B)
合成例1と同じ反応装置で、ジエチレングリコール954部、プロピレングリコール114部、テレフタル酸498部、無水フタル酸370部及びアジピン酸219部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら220℃で酸価10まで縮合反応した。150℃まで冷却し無水マレイン酸294部を仕込み、215℃まで昇温し、15時間、縮合反応させた数平均分子量3500、二重結合力価728の不飽和ポリエステル65部に、スチレン35部、ハイドロキノン0.01部を加え、酸価7、粘度0.8Pa・sの不飽和ポリエステル樹脂Bを得た。
【0069】
合成例3(ビニルエステル樹脂A)
温度計、撹拌機、空気吹込管及び還流冷却管を備えた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート284部、1,12−(6−エチルドデカン)ジカルボン酸と1,16−(6−エチルヘキサデカン)ジカルボン酸との混合物(商品名「SB−20」、岡村製油社製、酸価328mgKOH/g)685部、オクチル酸亜鉛4部、及び、ハイドロキノン0.4部を仕込んだ。続いて、上記混合物を空気気流中で撹拌して、115℃で2時間反応させた。この生成物の酸価は115mgKOH/gであった。更に、ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「アラルダイドAER250」、旭チバ社製、平均エポキシ当量185)347部と、トリエチルアミン1.4部とを投入した。この混合物を空気気流中で撹拌して、115℃3時間反応させた。これにより数平均分子量3000、二重結合力価658、酸価が5.0mgKOH/gのビニルエステルを得た。ビニルエステル65部に、スチレン35部、ハイドロキノン0.01部を加え、粘度0.6Pa・sのビニルエステル樹脂Aを得た。
【0070】
比較合成例1(不飽和ポリエステル樹脂C)
温度計、窒素ガス導入管、及び、撹拌機を備えた反応器としての四ツ口フラスコに、飽和二塩基酸としてのイソフタール酸498部、並びに、多価アルコールとしてのプロピレングリコール418部及びジプロピレングリコール670部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素ガス置換した。次に、この混合物を撹拌しながら最高温度が215℃となるように加熱し、脱水反応を行った。これにより、酸価が10になったところで温度を50℃に下げ、更に、不飽和二塩基酸としての無水マレイン酸を686部仕込み、最高温度が215℃となるように加熱し、脱水反応を継続して酸価が28の不飽和ポリエステルを得た。そして、この不飽和ポリエステル(固形分)60部、重合性不飽和単量体としてのスチレン40部、及び、安定剤としてのハイドロキノン0.02部を混合することにより、数平均分子量2000、二重結合力価291の不飽和ポリエステル樹脂Cを得た。
【0071】
比較合成例2(ビニルエステル樹脂B)
温度計、窒素ガス導入管、及び、撹拌機を備えた反応器としての四ツ口フラスコに、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量189のエピクロン850(商品名、大日本インキ化学工業社製)458部、メタクリル酸215部、ハイドロキノン0.35部及びトリエチルアミン2.1部を加えて、含酸素気流中で110℃まで昇温し、6時間反応させて重合性ビニル基を有するエポキシアクリレートを得た。そして、このエポキシアクリレート65部、重合性不飽和単量体としてのスチレン35部、及び、安定剤としてのハイドロキノン0.02部を混合することにより、数平均分子量1500、二重結合力価269のビニルエステル樹脂Bを得た。
【0072】
(パラメータ)
1:二重結合力価
二重結合力価としては、以下のようにして求めた。
被架橋重合体/不飽和多塩基酸(又は不飽和基含有エポキシ)のモル数
とするか、又は、不飽和ポリエステルの場合、
{(酸成分+グリコール成分)−縮合水}/不飽和酸のモル数
とする。
2:引張強度及び引張伸び率
合成例1〜3、比較合成例1〜2で製造したラジカル硬化性樹脂のそれぞれについて、日本工業規格(JIS K7113)に準拠して、硬化物の引張強度及び引張伸び率を求めた。結果を表2、表3に示す。なお、この測定試験の対象となる硬化物としては、ラジカル硬化性樹脂と、オクチル酸コバルトとを、質量比が100/0.3となるように混合した樹脂組成物を硬化させたものを用いた。
【0073】
実施例1〜4、比較例1〜2
不飽和ポリエステル樹脂A100部に対して、硬化剤及びアミン化合物を添加混合し、樹脂組成物を得た。硬化剤及びアミン化合物の種類、添加量等については、表1に示した。
この樹脂組成物のそれぞれについて、下記ホルムアルデヒド定量法を用いてホルムアルデヒド発散量を測定し、また、この樹脂組成物の硬化物について、下記落球衝撃試験を行い、破砕の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0074】
(ホルマリン定量)
1:試験板の作製
長さ75mm、幅50mmのガラス板片面に樹脂をウェット0.5mm厚で刷毛塗りし、常温硬化後、2日常温で養生し試験板とした。
2:試験方法
・密閉可能な内蓋付の容量900mlのガラス瓶を用意する。
・ガラス瓶に50gの水を入れる。
・図1のように、ガラス瓶内の内蓋に1枚の試験板を針金の先端に付けたクリップで支持する。一方、別のガラス瓶には、空試験用として試験板は装着しない。
・ガラス瓶に蓋をして、放散試験を開始する。
1回の放散試験の時間は24時間とし、JIS K5601−4−1に従いアセチルアセトン吸光光度法によって、ホルマリン濃度を測定した。
【0075】
(落球衝撃試験)
300mm×300mm×3mm(厚さ)の硬化物に対して、500gの鋼球を1mの高さから落として破砕の有無を確認し、以下のように評価した。
○:破砕が生じなかった。
×:破砕が確認された。
【0076】
【表1】

【0077】
上記表1において、「パーメックN」とは、メチルエチルケトンパーオキサイドを55質量%含有する日本油脂社製の有機過酸化物である。
なお、表1において、樹脂、硬化剤及びアミン化合物の単位は、重量部である。
【0078】
実施例5〜9
ラジカル硬化性樹脂100部に対して、硬化剤及びアミン化合物を添加混合し、樹脂組成物を得た。樹脂、硬化剤及びアミン化合物の種類、添加量等については、表2に示した。
この樹脂組成物のそれぞれについて、実施例1等と同様に、ホルムアルデヒド発散量を測定し、また、落球衝撃試験による破砕の有無を確認した。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2において、樹脂、硬化剤及びアミン化合物の単位は、重量部である。
【0081】
実施例10〜14
ラジカル硬化性樹脂100部に対して、硬化剤及びアミン化合物を添加混合し、樹脂組成物を得た。樹脂、硬化剤及びアミン化合物の種類、添加量等については、表3に示した。
この樹脂組成物のそれぞれについて、実施例1等と同様に、ホルムアルデヒド発散量を測定し、また、落球衝撃試験による破砕の有無を確認した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
表3において、樹脂、硬化剤及びアミン化合物の単位は、重量部である。
【0084】
実施例15〜17
不飽和ポリエステル樹脂A100部に対して、硬化剤、アミン化合物及び空乾性付与剤を添加混合し、樹脂組成物を得た。硬化剤、アミン化合物及び空乾性付与剤の種類、添加量等については、表4に示した。
この樹脂組成物のそれぞれについて、実施例1等と同様に、ホルムアルデヒド発散量を測定し、また、落球衝撃試験による破砕の有無を確認した。結果を表4に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
上記表4において、「パーキュアAL」とは、アセチルアセトンパーオキサイドを34質量%含有する日本油脂社製の有機過酸化物であり、「パラフィンワックス135F」とは、日本精蝋社製のパラフィンワックスである。
なお、表4において、樹脂、硬化剤、アミン化合物及び空乾性付与剤の単位は、重量部である。
【符号の説明】
【0087】
1:900mlガラス瓶
2:クリップ
3:試験板
4:水50g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル硬化性樹脂並びに第一級アミン及び/又は第二級アミンを含有する常温硬化性樹脂組成物であって、
該ラジカル硬化性樹脂は、重合体と重合性単量体とを含み、
該第一級アミン及び/又は第二級アミンは、モノアミンであることを特徴とする常温硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第一級アミン及び/又は第二級アミンは、アニリン類、脂環式アミン及び/又は脂肪族アミンであることを特徴とする請求項1に記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、更に金属石鹸を含み、
該金属石鹸は、コバルト塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記常温硬化性樹脂組成物は、更に硬化剤を含み、
該硬化剤は、ケトンパーオキサイドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ケトンパーオキサイドは、アセチルアセトンパーオキサイドであることを特徴とする請求項4に記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ラジカル硬化性樹脂は、二重結合力価が300〜1800である重合体を含み、常温硬化性樹脂組成物の硬化物における引張強度が10MPaより大きく、かつ、引張伸び率が10%より大きいものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の常温硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする防水材。


【図1】
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【公開番号】特開2009−120854(P2009−120854A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56056(P2009−56056)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【分割の表示】特願2003−381717(P2003−381717)の分割
【原出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【出願人】(503090980)ジャパンコンポジット株式会社 (38)
【Fターム(参考)】