常磁性粒子による、細胞および生体分子の簡単かつ迅速な検出方法
本発明は、常磁性粒子(ビーズ)による、細胞および生体分子の簡単かつ迅速な検出方法に関する。この方法では、特異的結合を評価する前にビーズから検出生体分子または目標細胞を分離するということをしない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常磁性粒子(ビーズ)によって、細胞または生体分子を検出する簡単かつ迅速な方法に関する。単一特異性の抗体または抗原(検出分子)を担持させた常磁性ビーズ(いろいろな製造者が市販している)を、検査すべきサンプルに加え、これと混合する。ビーズを含むこのサンプルを、次に強い磁場内に置く。磁場はビーズを捕捉し、サンプルの残りの部分は、完全に除去されるか、または吸引される。磁場の除去後、粒子は懸濁させられる。ここで、これらの粒子によって形成される塊は、標的細胞または標的生体分子の特異的反応または特異的分離の存在を示す。というのは、標的細胞または標的分子は、特異的な検出分子と反応し、ビーズとともに目視できる結合体(凝集体)を生じるからである。さらに、特異的反応の存在は、特異的生体分子の結合を光度測定により決定することによっても検出することができる。この場合、好ましくは、標識付けしたビーズまたは抗体を使用する。
【0002】
この方法は、任意の時と場所で、非常に高い感度で、簡単に実施できる迅速な検査および評価がなされるという特徴を有する。反応は、他の非常磁性の小さなビーズを加えることによって目視的および量的に促進することができる。このビーズには、特異的検出分子を担持させることもできる。ゲルカードシステム(gel card system)(粒子凝集テストシステム)での検査または光度測定によって、反応のさらなる検出または促進が可能である。着色またはユーロピウム標識付けビーズの場合には、特にそうである。
【背景技術】
【0003】
細胞および生体分子の検出は、数多くの分野で必要であり、たとえば、母体循環系における胎児(infant)細胞の検出、患者の循環系における腫瘍細胞の早期検出、自己幹細胞形成時の腫瘍細胞の検出、タンパク質(体液または組織内の分子)の検出、サンプルまたは食品中の細菌または病原菌の検出、毒素(生物兵器)の検出、その他がある。従来使用されている高感度技術は、かなり複雑であり、特別の研究室でしか実施できない。これらの技術としては、たとえば、フローサイトメトリー(FACS)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および免疫組織化学的方法[1〜16]がある。常磁性および非常磁性マイクロおよびナノビーズは、いろいろな製造者(Dynal、Miltenyi、Biotec、その他)が供給しており、常磁性ビーズによる細胞および生体分子の精製法が多数開示されている[DE 101 11 520 A1; WO 02/090565 A2; DE 101 37 665 A1; US 2002/0072129 A1; EP 0 855 441 A2; US 2003/0175691 A1; 4,649,116; US 2003/0032028 A1; US 2004/0005718 A1]。この種の常磁性ビーズは、溶液からの分離のために使用でき、また特定の細胞または分子の特性決定に使用できる。
【0004】
通常のプロトコルにおいては、磁性粒子の懸濁液が、特定の細胞または分子を含むサンプルと混合される。そのあと、磁石が使用され、標的細胞または標的分子を担持した粒子が磁場によって容器の壁上に捕捉されるようにされる。上澄みが捨てられ、粒子は少なくとも一回洗浄される。次に、付着した細胞または生体分子をビーズから分離するために適当な緩衝剤が加えられる。分離は、遠心分離または磁場印加によって実行される。分離された標的分子は、前述のかなり複雑な方法たとえばFACS、PCR、または免疫組織化学的方法によって検出される。以上で述べたどの方法にも、次のような欠点がある。
1. 標的分子のビーズからの分離が常に必要である。
2. 該分離により標的分子の損失が起こる。
3. 作業の量。
4. 時間の長さ。
5. 費用。
6. 一般に複雑な作業性。
7. 特殊な装置の必要性。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、前記先行技術の欠点を克服するために使用できる方法を開発することである。より詳しくは、本発明の方法は、実施が迅速かつ簡単であり、同時に非常に高感度であるようなものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、第一の側面において、
サンプル中の細胞または生体分子を検出する方法であって、
a) 常磁性ビーズを、検出すべき生体分子または検出すべき細胞の特性に対する検出分子(好ましくは、特異的抗体または抗原)で被覆し、
b) 前記検査すべきサンプルを前記被覆ビーズに接触させ、
c) 前記サンプルを、この接触ビーズから分離し、
d) 検出すべき生体分子または検出すべき細胞の存在を、特異的反応の存在にもとづいて、評価する、
ことを特徴とする方法、
に関する。
【0007】
この方法は、好ましくは、ステップa)および/またはb)において、マイクロビーズのほかに、検査細胞/生体分子の同じ特性または別の特性を標的とする第2の検出分子で被覆したナノビーズまたは抗体を、結合反応における“凝集促進剤”(すなわち、促進剤ビーズ)として投入することによって、実施される。
【0008】
あるいは、本発明のもう1つの好ましい実施形態においては、前記凝集促進剤を、本発明の方法のステップc)のあとにだけ添加することもできる。
【0009】
検査は、好ましくは、ゲルカードシステム(粒子凝集テストシステム)によって実施することができる。
【0010】
本発明においては、ナノ粒子の寸法は、好ましくは、50 nm〜0.5 μm、さらに好ましくは、約100 nmである。
【0011】
特に好ましいのは、光度測定評価を可能にする着色ナノ粒子および/またはマイクロビーズである。
【0012】
本発明で特に好ましい検出システムは、ユーロピウム含有ビーズ特にナノビーズまたは抗体を含む。前記ビーズしたがってまた形成される凝集粒子は、時間遅れ蛍光発光により、高感度で検出することができる。ユーロピウムナノ粒子は、たとえば、Seradyn(米国、インディアナポリス)から購入することができる。これらの粒子には、ユーロピウムキレートが、表面が結合(coupling)反応のために自由なままであり、かつユーロピウムキレートが漏れ出ないように、“吸収”させられる。ユーロピウムキレート:トリス-(ナフチルトリフルオロブタンジオン)。これらの粒子は、紫外線(ピーク333 nm)で励起されたとき、約0.5ミリ秒間、613 nmの光を放射する。この時間は、大部分の蛍光体の放射時間の10,000〜100,000倍である。この非常に長く続く放射と大きなストークスシフト(放射波長と励起波長との差)とにより、時間遅れ蛍光発光にもとづく検査が可能になる。一個の粒子はトリス-ナフチルトリフルオロブタンジオン(ジケトン)内に取り込まれた>30,000個のユーロピウム原子を含む。100 nm粒子の“量子収率”は、約3,000個のフルオレセイン(もっとも普通に使用される蛍光体の1つ)分子に相当する。これに比して、フィコビリンタンパク質(おそらく、もっともよく知られた蛍光性化合物)は、約30フルオレセイン分子の量子収率に相当する量子収率を有する。100 nmの粒子は、フィコビリンタンパク質の径の10倍の径を有し、1000倍の体積:質量比を有するので、該ビーズの蛍光は、モル単位で考えて、フィコビリンタンパク質のそれの100倍である。
【0013】
本発明のマイクロ粒子の寸法は、0.1〜5 μm好ましくは2.5〜3 μmである。
【0014】
凝集の存在は、目視または光度測定によって評価され、好都合である。
【0015】
随意であるが、ステップ(c)および(d)の間に、一回以上の洗浄ステップを実行することも可能である。この洗浄ステップは、検出すべき分子が抗体であって、図7による手順を選択する場合には、省略することができて、好都合である。
【0016】
本発明の分子は、具体的には抗原および抗体であるが、原理的には、この方法により、当業者になじみのある任意の生体分子、たとえばタンパク質、核酸、その他を検出することができる。前記抗体は、特に、たとえば血液型の決定において検出されるものである。
【0017】
本発明の検出分子は、当然、検出すべき特異的生体分子による。前記検出分子は、好ましくは、特異的抗体または抗原であるが、他の結合分子たとえば核酸その他とすることもできる。
【0018】
“検出すべき生体分子または検出すべき細胞(代替呼称:標的細胞、略記:ZZ)の特性という言葉は、本発明においては、たとえば、検出すべき該生体分子または該細胞の抗原決定基(エピトープ)を意味する。しかし、たとえば、相補性核酸その他の結合成分とすることもできる。
【0019】
本発明の方法は、個別細胞または生体分子が粒子から分離されず、要素間の反応好ましくは凝集によって直接目視または光度測定によって評価されるという点で、先行技術の欠点を克服するものである(図1参照)。凝集、または粒子の凝集を生じない特異的結合反応が起こると、これは特異的反応であり、サンプルは陽性であるとみなされる。感度は、加える量によって、また赤血球の凝集または粒子の凝集を検出するための市販のゲルカード(たとえば、DiaMed社のIDカードシステム)を使用することによって、高めることができる(図2)。反応の目視可能性は、より小さなビーズ(ナノビーズ)(50 nm〜0.5 μm)を加えることによって、さらに高めることができる(図3)。これらの促進剤ビーズは、同じ生体分子または同じ検査細胞に対する抗体または抗原と一緒に、あらかじめ加えられる。測定の方法に応じて、無色または着色促進剤ビーズを使用することができる。後者の場合、反応は光度測定によって測定することもできる。促進剤ビーズは、常磁性ビーズと同時(図3)、または標的分子の分離および精製後(図4)に、出発サンプルに加えることができる。また、促進剤ビーズではなく標識付き抗体を使用することも可能であり、この場合、先行技術において公知の標識付け法を使用することができる。ここでは、非放射性標識が好ましい(図5または図6)。反応は、目視、自動式、または光度測定によって判断することができる。さらに、この方法は、抗原性生体分子だけでなく抗体の検出にも適当である。その場合、特異性または非特異性の未結合抗体を除去するための洗浄プロセスは省略することができる(図7)。しかし、洗浄しても良い(図8)。
【0020】
したがって、本発明は、その好ましい側面において、
サンプル中の特異性抗体を検出する方法であって、
前記ステップa)に加えて、
追加ステップa1)を有し、該ステップにおいて、検出すべき抗体が標的とする抗原を支持体(I)上に導入し、ここで該抗原は前記支持体に強く結合することはなく、
また、追加ステップa2)を有し、該ステップにおいて、もう一つの支持体(II)を抗種X抗体(anti-species X antibody)で被覆し、ここで種Xが、検出すべき抗体を生じる種であり、支持体(II)が、検査すべきステップb)において初めて支持体(I)に接触できるように配置し、
また、追加ステップa3)を有し、該ステップにおいて、ステップa)の被覆ビーズをステップa1)の抗原と接触させ、
ステップc)において、磁力によって、被覆ビーズ、抗原、および検出すべき抗体の凝集体が抗X被覆支持体に向って移動し、ここで、検出すべき抗体のサンプル中の存在が、特異的凝集粒子の形成、または前記検出すべき抗体と抗X抗体との間の特異的結合反応によって決定されるように、磁石が使用される、
ことを特徴とする方法、
に関する。この場合の手順を、図7に図式で示す。この場合、カバープレート(covering plate)を、ステップc)の前にのみ使用することもできる。結合は、本発明において前述した適当な方法によって、検出することができる。
【0021】
本発明の方法の非常に重要なもう1つの利点は、検査すべきサンプルの体積を事実上任意に大きくできるということである。磁性ビーズの直接使用のため、100 ml以上のサンプル体積の場合でさえも問題は起こらず、したがって、サンプルと検出分子またはZZとの分離を省略することができる。考えられるサンプルサイズの理論的上限は、使用する磁性ビーズの入手可能性による。たとえば、血液検査は先行技術においては100 μl 以下の体積でのみ実施されている。これは、先行技術の検査の低感度の原因であると考えられ、本発明によりこの感度が大きく改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図7は、抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。特定標的細胞に対する抗体(AB)が検出される。そのために、前記特定標的細胞を、支持体物質上に、結合しないように、たとえば、微量定量プレートのくぼみ内にピペットで投入する。抗ヒト抗体は、対応するカバープレートにしっかりと結合する。次に、別のZZ特異性抗原に対する非ヒトABに結合した常磁性ビーズを、ZZに加え、結合させる。そのあと、図7に小さく示したABで記号化される、検査すべきヒトサンプルを加える。このABは、同時に、サンプル中に存在する任意の標的細胞特異性ABを示し、これも存在すれば、検出すべきものである。サンプルがZZに対するABを含んでいる場合、これらのABはZZに結合する。次に、このようにして形成される凝集体を、磁石の助けにより“持ち上げて”、該凝集体がカバーの底部にある抗ヒトABに接触するようにする。この凝集体は、ヒトABが特異性ABとしてZZに結合した場合にのみ、ヒトABを含む。次に、これらのABと抗ヒトABによって仲介されて、特異的結合反応特に凝集が起こり、この反応は、直接の目視により、あるいは関与する分子および/またはビーズの標識付けによって、光度測定により、評価することができる。この場合、洗浄ステップは必要ない。
【0023】
図8は、抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。この場合にも、ABは同様に検出される。しかし、感度を高め、非特異的結合を避けるために、ここでは、洗浄ステップが実施される。血清中の特異性ABの存在は、凝集反応の存在によって決定される。
【0024】
図9は、実施例1の結果を示す。抗p53含有血清がp53被覆ビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0025】
図10は、実施例2の結果を示す。IgG含有血清が抗IgG被覆ビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0026】
図11は、実施例3の結果を示す。Rh陽性(Rh+)の赤血球が抗Rh+被覆ビーズと反応して、凝集を生じるということが明瞭である。
【0027】
図12は、実施例4の結果を示す。抗p53 ABが管内のビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0028】
図13は、実施例5の結果を示す。栓球(血小板)に対する自己抗体が血小板抗原被覆ビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0029】
図14は、実施例6の結果を示す。Rh+赤血球が抗Rh+被覆ビーズと反応して、凝集を生じるということが明瞭である。
【0030】
図15は、実施例7の結果を示す。ABがゲルカード内で凝集を生じる(T47Dを標的とするAB)ということが明瞭である。
【0031】
図16は、実施例7の結果を示す。ABが管内で凝集を生じる(T47Dを標的とするAB)ということが明瞭である。
【0032】
以下、本発明を実施例によって説明するが、これらの例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0033】
抗P53の検出
-ビーズ(ドイツ、Dynal社製、Magnetobeads M-270、直径2.8 μm)を、製造者からの情報にもとづいて、ヒトP53(リシン320(lys320)-アセチル化)(ドイツ、Cologne市、Biotrend社)に結合させた。
-40 μl の0.1 vol%ビーズを20 μl の血清(癌患者からのものと健康な人からの対照との二つ)とともに37℃で30分間培養した。
-ビーズを1回、粒子緩衝剤(スイス、DiaMed社)で洗浄して、50 μl の粒子緩衝材中に再懸濁させた。
-製造者の情報にもとづいて、ビーズをゲルカード(DiaMed社、“ヤギ-抗ヒト”)1:2に一層塗布し、遠心分離した。
【0034】
1、2、3、および4で使用した血清は、癌が疑われる患者からのものである。
【0035】
結果を図9に示す。抗P53 ABが簡単に患者の血清中に検出された。
【実施例2】
【0036】
IgGの検出
-ビーズを抗ヒトIgG(Dianova社)に結合させた(実施例1参照)。
-IgG含有サンプル(患者の血清)を、NaClゲルカード(スイス、DiaMed社)上で、50 μl のビーズ(0.1 vol%)とともに、37℃で15分間培養してから、遠心分離した(図10)。
【0037】
結果:図10は、IgG含有血清は抗IgG被覆ビーズの凝集を生じることを、明瞭に示している。
【実施例3】
【0038】
Rh陰性(Rh−)血液サンプル(総量:3 ml)中のRh+細胞の検出
サンプルを、室温で、約5分間、磁性ビーズ(実施例1参照)とナノビーズ(ベルリン、Mikropartikel社、直径300 nm)を同時に加えて、混合した。どちらのタイプのビーズも、抗D抗体(英国、Bristol市、クローンBRAD3)とともに投入した。そのために、20 μgのABを、100μl のビーズ(109個のビーズ)と混合し、製造者の情報にもとづいて、処理した。後続の手順については、実施例1および2を参照されたい。
【0039】
結果:感度はきわめて高い。一個のRh+赤血球を、10,000,000,000個の他の細胞中で検出することができる。
【実施例4】
【0040】
Coumbs管中での抗p53の検出
1) Dynalのビーズ(実施例1参照)をヒトP53で被覆し、37℃で、30分間、血清で培養した。
2) ビーズを、1回、緩衝剤で洗浄した。
3) ビーズを、100μlの粒子緩衝剤中に再懸濁させた。
4) これに、10μlのナノビーズ(直径100 nm、ウサギ-抗ヒト)を加え、混合物をCoumbs遠心分離器(製造者:Immuncore)中で、300 Gで、30秒間、遠心分離した。
【0041】
結果:抗p53 ABが管内でビーズの凝集を生じるということが明瞭に示されている。
【実施例5】
【0042】
ゲルカードによる血小板抗体の検出
1) Dynalのビーズ(実施例1参照)をAB抗CD41または抗CD49b(血小板抗原に対するモノクローナル抗体)で被覆し、37℃で、30分間、血小板可溶化剤(solubilizate)(40 μl の濃縮液)と20 μl の血清によって培養した。
2) ビーズを、1回、粒子緩衝剤で洗浄した。
3) ビーズを、50 μlの粒子緩衝剤中に再懸濁させ、製造者の情報にもとづいて、ヤギ-抗ヒトゲルカード(Dynal社)1:4に塗布した(図13)。後続の手順に関しては、実施例1および2を参照されたい。
【0043】
結果:栓球(血小板)に対する自己抗体が血小板抗原で被覆したビーズの凝集を生じるということがはっきり見てとれる。
【実施例6】
【0044】
Coumbs管内でのRH+細胞の検出
1) 100μl のDynalのビーズ(実施例1参照)を、抗D(実施例3参照)で被覆し、10μl の抗D被覆ナノビーズ(実施例4参照、直径100 μm)で、10分間培養した。
2) 磁石を使用して、ビーズを、血液から分離した。
3) ビーズを、1回、NaClで洗浄した。
4) ビーズを、100 μl のNaCl中に再懸濁させ、300 Gで、30秒間、Coumbs遠心分離器(Immuncore社)で遠心分離した(図14)。
【0045】
結果:Rh+赤血球が抗Rh+(抗D)被覆ビーズと反応して、凝集を生じるということが明瞭に見てとれる。
【実施例7】
【0046】
2 mlのEDTA血液中の上皮腫細胞(細胞系T47D)の、クローン5E11による検出。ゲルカード(DiaMed社)使用検出と血液中での直接検出。
1) 標準的な方法で1:5に希釈してビオチン化した(クローン 5E11、Dianova EP4)10 μl の抗体を、培養器内で、37℃において、0.5時間、10 μl のストレプトアビジンビーズ(Dynal M-280)に結合させた。
2) ビーズを、100 μl の粒子緩衝剤で、2回洗浄した。
3) ビーズを、100 μl の粒子緩衝剤に再懸濁させ、T47D細胞を含む2 mlのEDTA血液(陽性サンプル)またはT47Dを含まない2 mlのEDTA血液(陰性サンプル)に加えた。
4) 回転体上で15分間の培養を行った。
5) 次に、10分間、磁石で分離した。
6) ビーズを、50 μlの粒子緩衝剤に再懸濁させ(この段階で、陽性サンプルにおいては、凝集粒子が形成された)、(a)カード(Dynal)に塗布して(図15)、カード遠心分離器内で、10分間、遠心分離し、また(b)管内で検出した(図16)。
【0047】
結果:ABがゲルカード内で凝集を生じるということが明らかである(T47Dに対するAB、図15)。また、ABが管内で凝集を生じるということも明らかである(T47D9に対するAB、図16)。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の方法の手順を示す。
【図2】NaClゲルカード(スイス、DiaMed製)を使用して、本発明の方法を実施した結果を示す。
【図3】凝集促進剤を常磁性ビーズと同時に投入する、本発明の方法の手順を示す。
【図4】凝集促進剤を、生体分子または細胞に、該生体分子または細胞の分離および精製後に添加する、本発明の方法の手順を示す。
【図5】凝集促進剤として抗体を使用する、本発明の方法の可能な手順を示す。
【図6】凝集促進剤として抗体を使用する、本発明の方法のもう一つの可能な手順を示す。
【図7】抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。
【図8】抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。
【図9】実施例1の結果を示す。
【図10】実施例2の結果を示す。
【図11】実施例3の結果を示す。
【図12】実施例4の結果を示す。
【図13】実施例5の結果を示す。
【図14】実施例6の結果を示す。
【図15】実施例7の結果を示す。
【図16】実施例7の結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、常磁性粒子(ビーズ)によって、細胞または生体分子を検出する簡単かつ迅速な方法に関する。単一特異性の抗体または抗原(検出分子)を担持させた常磁性ビーズ(いろいろな製造者が市販している)を、検査すべきサンプルに加え、これと混合する。ビーズを含むこのサンプルを、次に強い磁場内に置く。磁場はビーズを捕捉し、サンプルの残りの部分は、完全に除去されるか、または吸引される。磁場の除去後、粒子は懸濁させられる。ここで、これらの粒子によって形成される塊は、標的細胞または標的生体分子の特異的反応または特異的分離の存在を示す。というのは、標的細胞または標的分子は、特異的な検出分子と反応し、ビーズとともに目視できる結合体(凝集体)を生じるからである。さらに、特異的反応の存在は、特異的生体分子の結合を光度測定により決定することによっても検出することができる。この場合、好ましくは、標識付けしたビーズまたは抗体を使用する。
【0002】
この方法は、任意の時と場所で、非常に高い感度で、簡単に実施できる迅速な検査および評価がなされるという特徴を有する。反応は、他の非常磁性の小さなビーズを加えることによって目視的および量的に促進することができる。このビーズには、特異的検出分子を担持させることもできる。ゲルカードシステム(gel card system)(粒子凝集テストシステム)での検査または光度測定によって、反応のさらなる検出または促進が可能である。着色またはユーロピウム標識付けビーズの場合には、特にそうである。
【背景技術】
【0003】
細胞および生体分子の検出は、数多くの分野で必要であり、たとえば、母体循環系における胎児(infant)細胞の検出、患者の循環系における腫瘍細胞の早期検出、自己幹細胞形成時の腫瘍細胞の検出、タンパク質(体液または組織内の分子)の検出、サンプルまたは食品中の細菌または病原菌の検出、毒素(生物兵器)の検出、その他がある。従来使用されている高感度技術は、かなり複雑であり、特別の研究室でしか実施できない。これらの技術としては、たとえば、フローサイトメトリー(FACS)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および免疫組織化学的方法[1〜16]がある。常磁性および非常磁性マイクロおよびナノビーズは、いろいろな製造者(Dynal、Miltenyi、Biotec、その他)が供給しており、常磁性ビーズによる細胞および生体分子の精製法が多数開示されている[DE 101 11 520 A1; WO 02/090565 A2; DE 101 37 665 A1; US 2002/0072129 A1; EP 0 855 441 A2; US 2003/0175691 A1; 4,649,116; US 2003/0032028 A1; US 2004/0005718 A1]。この種の常磁性ビーズは、溶液からの分離のために使用でき、また特定の細胞または分子の特性決定に使用できる。
【0004】
通常のプロトコルにおいては、磁性粒子の懸濁液が、特定の細胞または分子を含むサンプルと混合される。そのあと、磁石が使用され、標的細胞または標的分子を担持した粒子が磁場によって容器の壁上に捕捉されるようにされる。上澄みが捨てられ、粒子は少なくとも一回洗浄される。次に、付着した細胞または生体分子をビーズから分離するために適当な緩衝剤が加えられる。分離は、遠心分離または磁場印加によって実行される。分離された標的分子は、前述のかなり複雑な方法たとえばFACS、PCR、または免疫組織化学的方法によって検出される。以上で述べたどの方法にも、次のような欠点がある。
1. 標的分子のビーズからの分離が常に必要である。
2. 該分離により標的分子の損失が起こる。
3. 作業の量。
4. 時間の長さ。
5. 費用。
6. 一般に複雑な作業性。
7. 特殊な装置の必要性。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、前記先行技術の欠点を克服するために使用できる方法を開発することである。より詳しくは、本発明の方法は、実施が迅速かつ簡単であり、同時に非常に高感度であるようなものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、第一の側面において、
サンプル中の細胞または生体分子を検出する方法であって、
a) 常磁性ビーズを、検出すべき生体分子または検出すべき細胞の特性に対する検出分子(好ましくは、特異的抗体または抗原)で被覆し、
b) 前記検査すべきサンプルを前記被覆ビーズに接触させ、
c) 前記サンプルを、この接触ビーズから分離し、
d) 検出すべき生体分子または検出すべき細胞の存在を、特異的反応の存在にもとづいて、評価する、
ことを特徴とする方法、
に関する。
【0007】
この方法は、好ましくは、ステップa)および/またはb)において、マイクロビーズのほかに、検査細胞/生体分子の同じ特性または別の特性を標的とする第2の検出分子で被覆したナノビーズまたは抗体を、結合反応における“凝集促進剤”(すなわち、促進剤ビーズ)として投入することによって、実施される。
【0008】
あるいは、本発明のもう1つの好ましい実施形態においては、前記凝集促進剤を、本発明の方法のステップc)のあとにだけ添加することもできる。
【0009】
検査は、好ましくは、ゲルカードシステム(粒子凝集テストシステム)によって実施することができる。
【0010】
本発明においては、ナノ粒子の寸法は、好ましくは、50 nm〜0.5 μm、さらに好ましくは、約100 nmである。
【0011】
特に好ましいのは、光度測定評価を可能にする着色ナノ粒子および/またはマイクロビーズである。
【0012】
本発明で特に好ましい検出システムは、ユーロピウム含有ビーズ特にナノビーズまたは抗体を含む。前記ビーズしたがってまた形成される凝集粒子は、時間遅れ蛍光発光により、高感度で検出することができる。ユーロピウムナノ粒子は、たとえば、Seradyn(米国、インディアナポリス)から購入することができる。これらの粒子には、ユーロピウムキレートが、表面が結合(coupling)反応のために自由なままであり、かつユーロピウムキレートが漏れ出ないように、“吸収”させられる。ユーロピウムキレート:トリス-(ナフチルトリフルオロブタンジオン)。これらの粒子は、紫外線(ピーク333 nm)で励起されたとき、約0.5ミリ秒間、613 nmの光を放射する。この時間は、大部分の蛍光体の放射時間の10,000〜100,000倍である。この非常に長く続く放射と大きなストークスシフト(放射波長と励起波長との差)とにより、時間遅れ蛍光発光にもとづく検査が可能になる。一個の粒子はトリス-ナフチルトリフルオロブタンジオン(ジケトン)内に取り込まれた>30,000個のユーロピウム原子を含む。100 nm粒子の“量子収率”は、約3,000個のフルオレセイン(もっとも普通に使用される蛍光体の1つ)分子に相当する。これに比して、フィコビリンタンパク質(おそらく、もっともよく知られた蛍光性化合物)は、約30フルオレセイン分子の量子収率に相当する量子収率を有する。100 nmの粒子は、フィコビリンタンパク質の径の10倍の径を有し、1000倍の体積:質量比を有するので、該ビーズの蛍光は、モル単位で考えて、フィコビリンタンパク質のそれの100倍である。
【0013】
本発明のマイクロ粒子の寸法は、0.1〜5 μm好ましくは2.5〜3 μmである。
【0014】
凝集の存在は、目視または光度測定によって評価され、好都合である。
【0015】
随意であるが、ステップ(c)および(d)の間に、一回以上の洗浄ステップを実行することも可能である。この洗浄ステップは、検出すべき分子が抗体であって、図7による手順を選択する場合には、省略することができて、好都合である。
【0016】
本発明の分子は、具体的には抗原および抗体であるが、原理的には、この方法により、当業者になじみのある任意の生体分子、たとえばタンパク質、核酸、その他を検出することができる。前記抗体は、特に、たとえば血液型の決定において検出されるものである。
【0017】
本発明の検出分子は、当然、検出すべき特異的生体分子による。前記検出分子は、好ましくは、特異的抗体または抗原であるが、他の結合分子たとえば核酸その他とすることもできる。
【0018】
“検出すべき生体分子または検出すべき細胞(代替呼称:標的細胞、略記:ZZ)の特性という言葉は、本発明においては、たとえば、検出すべき該生体分子または該細胞の抗原決定基(エピトープ)を意味する。しかし、たとえば、相補性核酸その他の結合成分とすることもできる。
【0019】
本発明の方法は、個別細胞または生体分子が粒子から分離されず、要素間の反応好ましくは凝集によって直接目視または光度測定によって評価されるという点で、先行技術の欠点を克服するものである(図1参照)。凝集、または粒子の凝集を生じない特異的結合反応が起こると、これは特異的反応であり、サンプルは陽性であるとみなされる。感度は、加える量によって、また赤血球の凝集または粒子の凝集を検出するための市販のゲルカード(たとえば、DiaMed社のIDカードシステム)を使用することによって、高めることができる(図2)。反応の目視可能性は、より小さなビーズ(ナノビーズ)(50 nm〜0.5 μm)を加えることによって、さらに高めることができる(図3)。これらの促進剤ビーズは、同じ生体分子または同じ検査細胞に対する抗体または抗原と一緒に、あらかじめ加えられる。測定の方法に応じて、無色または着色促進剤ビーズを使用することができる。後者の場合、反応は光度測定によって測定することもできる。促進剤ビーズは、常磁性ビーズと同時(図3)、または標的分子の分離および精製後(図4)に、出発サンプルに加えることができる。また、促進剤ビーズではなく標識付き抗体を使用することも可能であり、この場合、先行技術において公知の標識付け法を使用することができる。ここでは、非放射性標識が好ましい(図5または図6)。反応は、目視、自動式、または光度測定によって判断することができる。さらに、この方法は、抗原性生体分子だけでなく抗体の検出にも適当である。その場合、特異性または非特異性の未結合抗体を除去するための洗浄プロセスは省略することができる(図7)。しかし、洗浄しても良い(図8)。
【0020】
したがって、本発明は、その好ましい側面において、
サンプル中の特異性抗体を検出する方法であって、
前記ステップa)に加えて、
追加ステップa1)を有し、該ステップにおいて、検出すべき抗体が標的とする抗原を支持体(I)上に導入し、ここで該抗原は前記支持体に強く結合することはなく、
また、追加ステップa2)を有し、該ステップにおいて、もう一つの支持体(II)を抗種X抗体(anti-species X antibody)で被覆し、ここで種Xが、検出すべき抗体を生じる種であり、支持体(II)が、検査すべきステップb)において初めて支持体(I)に接触できるように配置し、
また、追加ステップa3)を有し、該ステップにおいて、ステップa)の被覆ビーズをステップa1)の抗原と接触させ、
ステップc)において、磁力によって、被覆ビーズ、抗原、および検出すべき抗体の凝集体が抗X被覆支持体に向って移動し、ここで、検出すべき抗体のサンプル中の存在が、特異的凝集粒子の形成、または前記検出すべき抗体と抗X抗体との間の特異的結合反応によって決定されるように、磁石が使用される、
ことを特徴とする方法、
に関する。この場合の手順を、図7に図式で示す。この場合、カバープレート(covering plate)を、ステップc)の前にのみ使用することもできる。結合は、本発明において前述した適当な方法によって、検出することができる。
【0021】
本発明の方法の非常に重要なもう1つの利点は、検査すべきサンプルの体積を事実上任意に大きくできるということである。磁性ビーズの直接使用のため、100 ml以上のサンプル体積の場合でさえも問題は起こらず、したがって、サンプルと検出分子またはZZとの分離を省略することができる。考えられるサンプルサイズの理論的上限は、使用する磁性ビーズの入手可能性による。たとえば、血液検査は先行技術においては100 μl 以下の体積でのみ実施されている。これは、先行技術の検査の低感度の原因であると考えられ、本発明によりこの感度が大きく改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図7は、抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。特定標的細胞に対する抗体(AB)が検出される。そのために、前記特定標的細胞を、支持体物質上に、結合しないように、たとえば、微量定量プレートのくぼみ内にピペットで投入する。抗ヒト抗体は、対応するカバープレートにしっかりと結合する。次に、別のZZ特異性抗原に対する非ヒトABに結合した常磁性ビーズを、ZZに加え、結合させる。そのあと、図7に小さく示したABで記号化される、検査すべきヒトサンプルを加える。このABは、同時に、サンプル中に存在する任意の標的細胞特異性ABを示し、これも存在すれば、検出すべきものである。サンプルがZZに対するABを含んでいる場合、これらのABはZZに結合する。次に、このようにして形成される凝集体を、磁石の助けにより“持ち上げて”、該凝集体がカバーの底部にある抗ヒトABに接触するようにする。この凝集体は、ヒトABが特異性ABとしてZZに結合した場合にのみ、ヒトABを含む。次に、これらのABと抗ヒトABによって仲介されて、特異的結合反応特に凝集が起こり、この反応は、直接の目視により、あるいは関与する分子および/またはビーズの標識付けによって、光度測定により、評価することができる。この場合、洗浄ステップは必要ない。
【0023】
図8は、抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。この場合にも、ABは同様に検出される。しかし、感度を高め、非特異的結合を避けるために、ここでは、洗浄ステップが実施される。血清中の特異性ABの存在は、凝集反応の存在によって決定される。
【0024】
図9は、実施例1の結果を示す。抗p53含有血清がp53被覆ビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0025】
図10は、実施例2の結果を示す。IgG含有血清が抗IgG被覆ビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0026】
図11は、実施例3の結果を示す。Rh陽性(Rh+)の赤血球が抗Rh+被覆ビーズと反応して、凝集を生じるということが明瞭である。
【0027】
図12は、実施例4の結果を示す。抗p53 ABが管内のビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0028】
図13は、実施例5の結果を示す。栓球(血小板)に対する自己抗体が血小板抗原被覆ビーズの凝集を生じるということが明瞭である。
【0029】
図14は、実施例6の結果を示す。Rh+赤血球が抗Rh+被覆ビーズと反応して、凝集を生じるということが明瞭である。
【0030】
図15は、実施例7の結果を示す。ABがゲルカード内で凝集を生じる(T47Dを標的とするAB)ということが明瞭である。
【0031】
図16は、実施例7の結果を示す。ABが管内で凝集を生じる(T47Dを標的とするAB)ということが明瞭である。
【0032】
以下、本発明を実施例によって説明するが、これらの例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0033】
抗P53の検出
-ビーズ(ドイツ、Dynal社製、Magnetobeads M-270、直径2.8 μm)を、製造者からの情報にもとづいて、ヒトP53(リシン320(lys320)-アセチル化)(ドイツ、Cologne市、Biotrend社)に結合させた。
-40 μl の0.1 vol%ビーズを20 μl の血清(癌患者からのものと健康な人からの対照との二つ)とともに37℃で30分間培養した。
-ビーズを1回、粒子緩衝剤(スイス、DiaMed社)で洗浄して、50 μl の粒子緩衝材中に再懸濁させた。
-製造者の情報にもとづいて、ビーズをゲルカード(DiaMed社、“ヤギ-抗ヒト”)1:2に一層塗布し、遠心分離した。
【0034】
1、2、3、および4で使用した血清は、癌が疑われる患者からのものである。
【0035】
結果を図9に示す。抗P53 ABが簡単に患者の血清中に検出された。
【実施例2】
【0036】
IgGの検出
-ビーズを抗ヒトIgG(Dianova社)に結合させた(実施例1参照)。
-IgG含有サンプル(患者の血清)を、NaClゲルカード(スイス、DiaMed社)上で、50 μl のビーズ(0.1 vol%)とともに、37℃で15分間培養してから、遠心分離した(図10)。
【0037】
結果:図10は、IgG含有血清は抗IgG被覆ビーズの凝集を生じることを、明瞭に示している。
【実施例3】
【0038】
Rh陰性(Rh−)血液サンプル(総量:3 ml)中のRh+細胞の検出
サンプルを、室温で、約5分間、磁性ビーズ(実施例1参照)とナノビーズ(ベルリン、Mikropartikel社、直径300 nm)を同時に加えて、混合した。どちらのタイプのビーズも、抗D抗体(英国、Bristol市、クローンBRAD3)とともに投入した。そのために、20 μgのABを、100μl のビーズ(109個のビーズ)と混合し、製造者の情報にもとづいて、処理した。後続の手順については、実施例1および2を参照されたい。
【0039】
結果:感度はきわめて高い。一個のRh+赤血球を、10,000,000,000個の他の細胞中で検出することができる。
【実施例4】
【0040】
Coumbs管中での抗p53の検出
1) Dynalのビーズ(実施例1参照)をヒトP53で被覆し、37℃で、30分間、血清で培養した。
2) ビーズを、1回、緩衝剤で洗浄した。
3) ビーズを、100μlの粒子緩衝剤中に再懸濁させた。
4) これに、10μlのナノビーズ(直径100 nm、ウサギ-抗ヒト)を加え、混合物をCoumbs遠心分離器(製造者:Immuncore)中で、300 Gで、30秒間、遠心分離した。
【0041】
結果:抗p53 ABが管内でビーズの凝集を生じるということが明瞭に示されている。
【実施例5】
【0042】
ゲルカードによる血小板抗体の検出
1) Dynalのビーズ(実施例1参照)をAB抗CD41または抗CD49b(血小板抗原に対するモノクローナル抗体)で被覆し、37℃で、30分間、血小板可溶化剤(solubilizate)(40 μl の濃縮液)と20 μl の血清によって培養した。
2) ビーズを、1回、粒子緩衝剤で洗浄した。
3) ビーズを、50 μlの粒子緩衝剤中に再懸濁させ、製造者の情報にもとづいて、ヤギ-抗ヒトゲルカード(Dynal社)1:4に塗布した(図13)。後続の手順に関しては、実施例1および2を参照されたい。
【0043】
結果:栓球(血小板)に対する自己抗体が血小板抗原で被覆したビーズの凝集を生じるということがはっきり見てとれる。
【実施例6】
【0044】
Coumbs管内でのRH+細胞の検出
1) 100μl のDynalのビーズ(実施例1参照)を、抗D(実施例3参照)で被覆し、10μl の抗D被覆ナノビーズ(実施例4参照、直径100 μm)で、10分間培養した。
2) 磁石を使用して、ビーズを、血液から分離した。
3) ビーズを、1回、NaClで洗浄した。
4) ビーズを、100 μl のNaCl中に再懸濁させ、300 Gで、30秒間、Coumbs遠心分離器(Immuncore社)で遠心分離した(図14)。
【0045】
結果:Rh+赤血球が抗Rh+(抗D)被覆ビーズと反応して、凝集を生じるということが明瞭に見てとれる。
【実施例7】
【0046】
2 mlのEDTA血液中の上皮腫細胞(細胞系T47D)の、クローン5E11による検出。ゲルカード(DiaMed社)使用検出と血液中での直接検出。
1) 標準的な方法で1:5に希釈してビオチン化した(クローン 5E11、Dianova EP4)10 μl の抗体を、培養器内で、37℃において、0.5時間、10 μl のストレプトアビジンビーズ(Dynal M-280)に結合させた。
2) ビーズを、100 μl の粒子緩衝剤で、2回洗浄した。
3) ビーズを、100 μl の粒子緩衝剤に再懸濁させ、T47D細胞を含む2 mlのEDTA血液(陽性サンプル)またはT47Dを含まない2 mlのEDTA血液(陰性サンプル)に加えた。
4) 回転体上で15分間の培養を行った。
5) 次に、10分間、磁石で分離した。
6) ビーズを、50 μlの粒子緩衝剤に再懸濁させ(この段階で、陽性サンプルにおいては、凝集粒子が形成された)、(a)カード(Dynal)に塗布して(図15)、カード遠心分離器内で、10分間、遠心分離し、また(b)管内で検出した(図16)。
【0047】
結果:ABがゲルカード内で凝集を生じるということが明らかである(T47Dに対するAB、図15)。また、ABが管内で凝集を生じるということも明らかである(T47D9に対するAB、図16)。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の方法の手順を示す。
【図2】NaClゲルカード(スイス、DiaMed製)を使用して、本発明の方法を実施した結果を示す。
【図3】凝集促進剤を常磁性ビーズと同時に投入する、本発明の方法の手順を示す。
【図4】凝集促進剤を、生体分子または細胞に、該生体分子または細胞の分離および精製後に添加する、本発明の方法の手順を示す。
【図5】凝集促進剤として抗体を使用する、本発明の方法の可能な手順を示す。
【図6】凝集促進剤として抗体を使用する、本発明の方法のもう一つの可能な手順を示す。
【図7】抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。
【図8】抗体を検出するための、本発明の方法の手順を示す。
【図9】実施例1の結果を示す。
【図10】実施例2の結果を示す。
【図11】実施例3の結果を示す。
【図12】実施例4の結果を示す。
【図13】実施例5の結果を示す。
【図14】実施例6の結果を示す。
【図15】実施例7の結果を示す。
【図16】実施例7の結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の特定の細胞(ZZ)または生体分子を検出する方法であって、
a) 常磁性ビーズを、前記生体分子または前記細胞の特性を標的とする特異的検出分子で被覆し、
b) 前記サンプルを前記被覆ビーズに接触させ、
c) 前記サンプルを、磁石の使用によって、この接触ビーズから分離し、
d) 検出すべき生体分子または検出すべき細胞の存在を、該生体分子および/またはZZと前記被覆ビーズとの間の特異的反応の存在にもとづいて、評価する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
当該生体分子および/またはZZと当該被覆ビーズとの間の特異的反応が凝集であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マイクロビーズの寸法が0.1〜5 μm、好ましくは2.5〜3 μmであり、また好ましくは着色またはユーロピウム標識付けされていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応混合物が、さらに、凝集促進剤として、検出すべき細胞または検出すべき生体分子に対する特異的検出分子で被覆した好ましくは着色またはユーロピウム標識付けされたナノビーズを含むことを特徴とする請求項1から3の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ナノ粒子の寸法が、50 nm〜0.5 μm、好ましくは約100 nmであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、検出すべき細胞または検出すべき生体分子に対する、特異的な、好ましくは標識付けされた第2の抗体を、凝集促進剤として含むことを特徴とする請求項1から5の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の洗浄プロセスがステップ(c)と(d)との間で実施されることを特徴とする請求項1から6の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
当該ビーズが、ステップ(c)のあと、懸濁させられることを特徴とする請求項1から7の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
検査が、ゲルカードシステム(粒子凝集テストシステム)で実施されることを特徴とする請求項1から8の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
検査がCoumbs管内で実施されることを特徴とする請求項1から9の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
ナノ粒子および/またはマイクロビーズが着色されていることを特徴とする請求項1から10の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
特異的反応の存在が光度測定により評価されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ナノ粒子および/またはマイクロビーズがユーロピウムで標識付けされ、凝集粒子が蛍光測定によって検出されることを特徴とする請求項1から12の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
当該生体分子が抗体であり、当該検出分子が対応する抗原であることを特徴とする請求項1から13の中のいずれか1つの方法。
【請求項15】
当該抗原がその自然のままの形好ましくは特定細胞型の形で存在することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ステップa)に加えて、
ステップa1)において、検出すべき抗体が標的とする抗原を投入し、
ステップa2)において、支持体を抗種X抗体で被覆し、ここで種Xが、検出すべき抗体を生じる種であり、
ステップa3)において、ステップa)の被覆ビーズをステップa1)の抗原と接触させ、ここで、サンプルと抗種X抗体を保持する支持体との接触が不可能でないようにし、
ステップc)において、磁力によって、被覆ビーズ、抗原、および検出すべき抗体の凝集体が抗X被覆支持体に向って移動し、ここで、検出すべき抗体のサンプル中の存在が、前記検出すべき抗体と抗X抗体との間の特異的結合の形成によって決定されるように、磁石が使用される、
ことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項1】
サンプル中の特定の細胞(ZZ)または生体分子を検出する方法であって、
a) 常磁性ビーズを、前記生体分子または前記細胞の特性を標的とする特異的検出分子で被覆し、
b) 前記サンプルを前記被覆ビーズに接触させ、
c) 前記サンプルを、磁石の使用によって、この接触ビーズから分離し、
d) 検出すべき生体分子または検出すべき細胞の存在を、該生体分子および/またはZZと前記被覆ビーズとの間の特異的反応の存在にもとづいて、評価する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
当該生体分子および/またはZZと当該被覆ビーズとの間の特異的反応が凝集であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マイクロビーズの寸法が0.1〜5 μm、好ましくは2.5〜3 μmであり、また好ましくは着色またはユーロピウム標識付けされていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応混合物が、さらに、凝集促進剤として、検出すべき細胞または検出すべき生体分子に対する特異的検出分子で被覆した好ましくは着色またはユーロピウム標識付けされたナノビーズを含むことを特徴とする請求項1から3の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ナノ粒子の寸法が、50 nm〜0.5 μm、好ましくは約100 nmであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、検出すべき細胞または検出すべき生体分子に対する、特異的な、好ましくは標識付けされた第2の抗体を、凝集促進剤として含むことを特徴とする請求項1から5の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の洗浄プロセスがステップ(c)と(d)との間で実施されることを特徴とする請求項1から6の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
当該ビーズが、ステップ(c)のあと、懸濁させられることを特徴とする請求項1から7の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
検査が、ゲルカードシステム(粒子凝集テストシステム)で実施されることを特徴とする請求項1から8の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
検査がCoumbs管内で実施されることを特徴とする請求項1から9の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
ナノ粒子および/またはマイクロビーズが着色されていることを特徴とする請求項1から10の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
特異的反応の存在が光度測定により評価されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ナノ粒子および/またはマイクロビーズがユーロピウムで標識付けされ、凝集粒子が蛍光測定によって検出されることを特徴とする請求項1から12の中のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
当該生体分子が抗体であり、当該検出分子が対応する抗原であることを特徴とする請求項1から13の中のいずれか1つの方法。
【請求項15】
当該抗原がその自然のままの形好ましくは特定細胞型の形で存在することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ステップa)に加えて、
ステップa1)において、検出すべき抗体が標的とする抗原を投入し、
ステップa2)において、支持体を抗種X抗体で被覆し、ここで種Xが、検出すべき抗体を生じる種であり、
ステップa3)において、ステップa)の被覆ビーズをステップa1)の抗原と接触させ、ここで、サンプルと抗種X抗体を保持する支持体との接触が不可能でないようにし、
ステップc)において、磁力によって、被覆ビーズ、抗原、および検出すべき抗体の凝集体が抗X被覆支持体に向って移動し、ここで、検出すべき抗体のサンプル中の存在が、前記検出すべき抗体と抗X抗体との間の特異的結合の形成によって決定されるように、磁石が使用される、
ことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−506132(P2008−506132A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520739(P2007−520739)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007571
【国際公開番号】WO2006/005593
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507012560)
【出願人】(507012571)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007571
【国際公開番号】WO2006/005593
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507012560)
【出願人】(507012571)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]