説明

干渉波除去装置、および干渉波除去方法

【課題】希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく逆位相合成キャンセルを行うことができる、干渉波除去装置を提供する。
【解決手段】データの送受信を行わないタイムスロットで受信した妨害波を基に各空中線101,102で受信した妨害波の位相を揃えるためのキャンセル係数W11,W12を算出し、このキャンセル係数W11,W12を係数保持器123,124に保持する。係数制御器122は通信機が希望波を受信するタイムスロットにおいて、係数保持器123,124に保持されたキャンセル係数W11,W12を乗算器107,108に出力する。乗算器107,108は、各空中線101,102の受信信号と係数保持器123,124から出力されるキャンセル係数W11,W12のそれぞれを乗算する。逆位相合成加算器113は乗算器107,108の出力信号の差分をとり妨害波のキャンセルを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空間ダイバーシティ方式に関し、特にTDMA(Time Division Multiple Access)方式により多元接続通信を行う場合に、妨害波となる干渉波等の影響を受ける環境下での通信を行う際に使用される、干渉波除去装置、及び干渉波除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉波除去装置の例として、空間ダイバーシティ方式の通信において妨害波の除去を行う回路の例を図4に示す。
【0003】
図4において、希望波D及び妨害波Jを2つの空中線(アンテナアレイ)101,102で受信している状況を考える。妨害波Jの受信レベルは希望波Dの受信レベルよりも十分に大きく、希望波Dは無視できるものとすると、空中線101,102における妨害波Jの受信信号1、受信信号2は、
「受信信号1=h・J」、「受信信号2=h・J」、となる。
ここで、h、hは伝搬定数であり、空中線を含む伝搬路の状況によって定まる。受信信号1及び受信信号2はそれぞれ乗算器107,108により後述するキャンセル係数W,Wと掛け合わされ、乗算器107の出力信号は「W・h・J」となり、乗算器108の出力信号は「W・h・J」となる。
乗算器107の出力信号(W・h・J)は自動利得制御器(AGC)111により正規化され、乗算器108の出力信号(W・h・J)は自動利得制御器(AGC)112により正規化される。そして、逆位相合成加算器113により、自動利得制御器111の出力信号と、自動利得制御器112の出力信号との差分を取られ、出力信号Out´となる。また、乗算器107の出力信号(W・h・J)と、乗算器108の出力信号(W・h・J)とは加算器109により合成され、加算器109の出力信号が自動利得制御器(AGC)110により正規化される。
【0004】
ここでキャンセル係数W,Wは、受信信号1と受信信号2に含まれる妨害波の位相が揃うように相関を取られた係数である。このキャンセル係数W,Wは、自動利得制御器110により正規化された信号(加算器109の出力信号を正規化した信号)と、複素共役器103,104により複素共役をとられたそれぞれの信号(受信信号1及び受信信号2の複素共役信号)とを、相関器105,106により相関を取ることで生成される。従って、加算器109から出力される信号は以下のようになる。
・h・J+W・h・J=(W・h+W・h)・J
この加算器109の出力信号を自動利得制御器(AGC)110に入力し利得の調整を行うと、自動利得制御器110からの出力はJとなる。また複素共役器103,104において受信信号1及び受信信号2の複素共役をとると、それぞれ、(h・J)、(h・J)、となる(は複素共役を示す)。相関器105,106により、これらの相関を取ると、キャンセル係数W,Wは、以下のようになる。
=E[(h・J)・J]
=E[h・J・J]=E[h・|J|]
そして、Jを1に規格化すると、
=h
となる。同様に、W=hとなる。
【0005】
よって乗算器107,108からの出力はそれぞれ、
・h・J=h・h・J=|h|・J
・h・J=h・h・J=|h|・J
となる。
これらは自動利得制御器111,112にて正規化された後、逆位相合成加算器113にて差分を取られる。すなわち、逆位相合成加算器113からの出力信号Out´は
(|h|/|h|−|h|/|h|)・J=0
となり、妨害波がキャンセルされ、希望波のみを取り出すことができる。
【0006】
妨害波のキャンセル手順における、信号ベクトルの状態遷移を図5に示す。図5(A)は、受信信号1(図4に示す空中線101による受信信号)の信号ベクトルであり、Dは希望波、Jは妨害波を表す。図5(B)は、受信信号2(図4に示す空中線102による受信信号)の信号ベクトルであり、Dは希望波、Jは妨害波を表す。図5(A)及び(B)に示す受信信号1,2のそれぞれに、乗算器107,108によりキャンセル係数W,Wを掛け合わせることにより、妨害波J,Jの位相を揃えたものが図5(C)及び(D)に示すベクトル図である。図5(C)及び(D)に示す信号ベクトルを自動利得制御器111,112により正規化し、逆位相合成加算器113により差分をとることにより、図5(E)に示すように、妨害波J,Jがキャンセルされ、希望波「D+D」を、出力信号Out´として取り出すことができる。
以上説明した逆位相合成キャンセラ(干渉波除去装置)においては、希望波Dよりも妨害波Jが大きくなっている場合に、精度の高いキャンセル係数W、Wを求めやすいという特徴がある。
【0007】
なお、関連する無線中継装置がある(特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の無線中継装置は、システムゲインやフェードマージンへの影響を少なくして干渉波の中継を防止することを目的としている。このために、システムの全ての局が使用しない干渉波測定用タイムスロットを設け、検出される干渉波レベルに基づきスレッショルド値を設定し、信号レベルがスレッショルド値を超えるとき、受信信号を「中継する」するように構成されている(段落番号0001、0022、0024、0032、0033)。
【0008】
また、関連する無線中継方法がある(特許文献2を参照)。この特許文献2に記載の無線中継方法は、一方のアンテナから受信した希望波を増幅して他方のアンテナから送信することで希望波の中継を行う際に、アンテナ間に回り込む干渉波を抑圧することを目的としている。このために、相関演算で得られた相関値自体を忘却係数のパラメータとして目標調整量への追従を決めて、干渉波をキャンセルすることにより、干渉波の除去精度を向上するようにしている(0001、0013、0014、0028、0029、0030)。
【0009】
また、関連する無線通信端末がある(特許文献3を参照)。この特許文献3に記載の無線通信端末は、希望波と妨害波との強度比を考慮した選択ダイバーシティを行う無線通信端末及びアンテナ選択方法を提供することを目的とする。このために、基地局との通信開始時或いは中断後の再開時に、受信レベル測定部が測定した第1のアンテナにおける妨害波の受信レベルと、第2のアンテナにおける妨害波の受信レベルと、第1のアンテナにおける希望波の受信レベルと、第1のアンテナにおける希望波の受信レベルとを基に、第1のアンテナにおけるD/U比と、第2のアンテナにおけるD/U比を算出し、算出したD/U比がより大きい方のアンテナを選択する(段落番号0001、0008、0011、0024、0025、0027)。
【0010】
また、関連する干渉波除去装置がある(特許文献4を参照)。この特許文献4に記載の干渉波除去装置は、移動局が自己に定められた周波数チャネルにより基地局からの情報を受信する場合に、隣接チャネルよる干渉波信号除去することを目的としている。このために、入力信号より、隣接チャネルよる干渉波信号除去するように構成されている(段落番号0001、0006、0022)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−177464号公報
【特許文献2】特開2004−048201号公報
【特許文献3】特開2009−135656号公報
【特許文献4】特開平09−261086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、逆位相合成キャンセラにおいては、希望波よりも妨害波が大きくなっている場合に、精度の高いキャンセル係数を求めやすいという特徴がある。一方、希望波と妨害波それぞれの強度が近い値になるに従い、希望波と妨害波を判別することが困難になり、キャンセル係数を正確に定めることができないという問題がある。
本発明の主たる課題は、希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく逆位相合成キャンセルを行うことができる、干渉波除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の干渉波除去装置及び干渉波除去方法は、空間ダイバーシティ方式を用いた通信機によりTDMA通信を行う際に、当該通信機に割り当てられた時間帯以外のタイムスロットで妨害波の受信を行い、該妨害波の信号を基に、各空中線で受信された妨害波の位相を揃えるためのキャンセル係数を算出し、該キャンセル係数を用いて妨害波の逆位相合成キャンセルを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の干渉波除去装置では、逆位相合成キャンセラによる妨害波除去方式及び空間ダイバーシティ方式を用いる送受信器(通信機)により、TDMA方式で多元接続通信を行う場合において、割り当てられた時間帯以外のタイムスロット(データの送受信を行わないタイムスロット)で受信器のみをONとし、妨害波の受信を行い、この妨害波の信号をキャンセル係数の算出に利用するようにしたので、これにより、希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく逆位相合成キャンセルを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる干渉波除去装置の構成を示す図である。
【図2】TDMAタイムスロットの例を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係わる干渉波除去装置の構成を示す図である。
【図4】干渉波除去装置の例を示す図である。
【図5】信号ベクトルの状態遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる干渉波除去装置の構成を示す図である。図1に示す例は、空間ダイバーシティ方式でのTDMA通信において妨害波の除去を行う回路の例である。
図1において、符号101,102は空中線、符号103,104は複素共役器、符号105,106は相関器、符号107,108は乗算器、符号109は加算器、符号110,111,112は自動利得制御器(AGC)、符号113は逆位相合成加算器、符号121はTDMA復調器、符号122は係数制御器、符号123,124は係数保持器である。
【0017】
図1に示す干渉波除去装置が、図4に示す干渉波除去装置と構成上異なるのは、図4に示す干渉波除去装置に、図1に示すTDMA復調器121と、係数制御器122と、係数保持器123,124とを新たに追加した点であり、他の構成については図4に示す干渉波除去装置と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。すなわち、図1に示す干渉波除去装置は、図4に示す干渉波除去装と同様に、相関器105,106によりキャンセル係数W11,W12を生成し、乗算器107,108の出力信号に対して、逆位相合成加算器113により差分をとることで妨害波の逆位相合成キャンセルを行うものであるが、このキャンセル係数W11,W12の生成方法と、このキャンセル係数W11,W12を用いて妨害波を逆位相合成キャンセルするタイミング(タイムスロット)を選択する点に特徴がある。
【0018】
また、図2は、TDMAタイムスロットの例を示している。図2において白枠で示されたスロットa(x=1,2,3,・・・)が、該当の通信機がデータの送受信を行うスロット(当該通信機に割り当てられた時間帯のタイムスロット)である。
通常の場合、TDMAにおいては、各通信機に割り当てられた時間帯においてのみ通信を行うが、ここでは、割り当てられた時間帯ではデータの送受信を行い、その他の時間帯では受信のみを行う。すなわち図1に示す干渉波除去装置においては、図2中の白枠で示されたスロットaにおいてデータの送受信を行い、図中に斜線枠で示されたスロットb,c,d(x=1,2,3,・・・)においてはデータの受信のみを行う。これにより、スロットaでは希望波及び妨害波が、スロットb,c,dでは妨害波のみが受信されることになる。
【0019】
一例として、図1に示す干渉波除去装置と図2に示すタイムスロットにおいて通信を行う場合を考える。前述の図4において説明した方法により、スロットb,c,dにおいて妨害波を受信し、この妨害波の情報を基に、相関器105,106によりキャンセル係数W11,W12を生成することができる。これらのキャンセル係数W11,W12を用いることで、スロットb、c、dにおける妨害波を除去することが可能である。このキャンセル係数W11,W12を、係数保持器123,124に保持しておく。
【0020】
次に、スロットaにおいて受信を行う。スロットaでは希望波及び妨害波が受信されるが、希望波と妨害波の強度が近い値である場合、希望波と妨害波を区別することが困難になり、キャンセル係数を正確に定めることができず、希望波を正しく検出できない。ここで、スロットaの時間帯においては、係数保持器123,124に保持していたキャンセル係数W11,W12を、乗算器107,108に入力するよう、係数制御器122から係数保持器123,124に指示を出すようにする。TDMAスロットと係数制御器122の同期はTDMA復調器121からの信号により行う。妨害波の変動周期は、TDMAのスロット周期と比較して十分大きいため、スロットb,c,dでの妨害波を元に生成したキャンセル係数W11,W12を用いることで、スロットaにおける妨害波を除去することができ、結果、希望波のみを取り出すことができる。
【0021】
以上説明したように、本発明の干渉波除去装置では、空間ダイバーシティ方式を用いる送受信器(通信機)によりTDMA方式で多元接続通信を行う場合において、希望波の送信が行われないタイムスロットで受信器のみをONとし、妨害波の収集(受信)を行い、この妨害波の情報を基にキャンセル係数を決定し、そのキャンセル係数を次の希望波の送受信が行われるタイムスロットで用いて逆位相合成キャンセルを行う。これにより、希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく希望波を取り出すことができる。
【0022】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態として、空間及び周波数による4重ダイバーシティ方式に本発明を適用した場合の例について説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態に係わる干渉波除去装置の構成を示す図である。
図3に示す例は、周波数f1についての空間ダイバーシティブランチ11と、周波数f2についての空間ダイバーシティブランチ12とを並列に設けた、空間及び周波数による4重ダイバーシティ方式の例である。
【0023】
図3において、空中線101及び102は、それぞれ、空間ダイバーシティブランチ11と、空間ダイバーシティブランチ12とに共通に接続される。この空中線101及び102は、周波数f1と周波数f2により周波数ダイバーシティされた信号を受信する。空中線101及び102により受信された信号のうち周波数f1の受信信号が、不図示のフィルタを介して、空間ダイバーシティブランチ11側に送られる。空間ダイバーシティブランチ11側では周波数f1の受信信号について、空間ダイバーシティによる逆位相合成キャンセルを行う。
同様にして、空中線101及び102により受信された信号のうち周波数f2の受信信号が、不図示のフィルタを介して、空間ダイバーシティブランチ12側に送られる。空間ダイバーシティブランチ12側では周波数f2の受信信号について、空間ダイバーシティによる逆位相合成キャンセルを行う。
【0024】
なお、空間ダイバーシティブランチ11と空間ダイバーシティブランチ12のそれぞれは、図1に示す干渉波除去装置と同様の構成である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
上記構成において、空間ダイバーシティブランチ11(より正確には空間ダイバーシティブランチ11内の逆位相合成加算器113)から出力される干渉波除去された信号Q1と、空間ダイバーシティブランチ12(より正確には空間ダイバーシティブランチ12内の逆位相合成加算器113)から出力される干渉波除去された信号Q2とは、加算器131により合成され、この加算器131により合成された信号がTDMA復調器121により復調され、出力信号Outとして出力される。
このように、第2の実施の形態においては、周波数f1についての空間ダイバーシティに本発明の干渉波除去装置(逆位相合成キャンセラ)を用い、また、周波数f2についての空間ダイバーシティにも本発明の干渉波除去装置(逆位相合成キャンセラ)を用いることにより、空間及び周波数の4重ダイバーシティ方式においても、希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく希望波を取り出すことができる。
【0025】
なお、ここで、本発明と上記実施形態との対応関係について補足して説明しておく。本発明における空中線は空中線101,102が対応する。本発明における相関器は相関器105,106が対応し、そのうち第1の相関器は相関器105が、第2の相関器は相関器106がそれぞれ対応する。また、本発明における係数保持器は係数保持器123,124が対応し、そのうち第1の係数保持器は係数保持器123が、第2の係数保持器は係数保持器124がそれぞれ対応する。また、本発明における乗算器は乗算器107,108が対応し、そのうち第1の乗算器は乗算器107が、第2の乗算器は乗算器108がそれぞれ対応する。また、本発明におけるTDMA復調器はTDMA復調器121が、係数制御器は係数制御器122がそれぞれ対応する。
また、本発明における第1の複素共役器は複素共役器103が対応し、本発明における第2の複素共役器は複素共役器104が対応する。また、本発明における加算器は加算器109が対応し、本発明における逆位相合成加算器は逆位相合成加算器113が対応する。また、本発明における第1の自動利得制御器は自動利得制御器110が対応し、本発明における第2の自動利得制御器は自動利得制御器111が対応し、本発明における第3の自動利得制御器は自動利得制御器112が対応する。また、本発明における第1の受信信号は受信信号1が対応し、本発明における第2の受信信号は受信信号2が対応する。
また、本発明における第1の周波数は周波数f1が対応し、第2の周波数は周波数f2が対応する。また、本発明における逆位相合成キャンルを行う第1の系統は空間ダイバーシティブランチ11が対応し、本発明における逆位相合成キャンルを行う第2の系統は空間ダイバーシティブランチ12が対応する。
【0026】
そして、図1に示す干渉波除去装置の実施形態では、通信機に割り当てられた時間帯以外のタイムスロットで受信した妨害波の受信信号を基に、各空中線101,102で受信された妨害波の位相を揃えるためのキャンセル係数W11,W12を、各空中線101,102ごとに算出する相関器105,106と、空中線101,102ごとに算出された各キャンセル係数W11,W12を保持するための係数保持器123,124と、各空中線101,102の受信信号と、係数保持器123,124に保持された各キャンセル係数W11,W12のそれぞれとを乗算する乗算器107,108と、乗算器107,108により算出される各空中線101,102ごとの乗算結果の差分をとり逆位相合成キャンセルを行う逆位相合成加算器113と、通信機器が希望波を受信するタイムスロットのタイミングに同期して、係数保持器123,124に保持されたキャンセル係数W11,W12を乗算器107,108に出力させる係数制御器122と、を有して構成される。
これにより、空間ダイバーシティを行う場合に、希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく希望波を取り出すことができる。
【0027】
また、上記実施形態においては、第1の空中線101により受信された受信信号1の複素共役をとる第1の複素共役器103と、第2の空中線102により受信された受信信号2の複素共役をとる第2の複素共役器104と、受信信号1と受信信号2とに含まれる妨害波の位相が揃うように、受信信号1と相関を取るための第1のキャンセル係数W11を算出する第1の相関器105と、第1のキャンセル係数W11を保持するための第1の係数保持器123と、受信信号1と受信信号2とに含まれる妨害波の位相が揃うように、受信信号2と相関を取るための第2のキャンセル係数W12を算出する第2の相関器106と、第2のキャンセル係数W12を保持するための第2の係数保持器124と、受信信号1と第1の係数保持器123から出力される第1のキャンセル係数W11とを乗算する第1の乗算器107と、受信信号2と第2の係数保持器124から出力される第2のキャンセル係数W12とを乗算する第2の乗算器108と、第1の乗算器107の出力信号と第2の乗算器108の出力信号とを合成する加算器109と、加算器109の出力信号を正規化する第1の自動利得制御器110と、第1の乗算器107の出力信号を正規化する第2の自動利得制御器111と、第2の乗算器108の出力信号を正規化する第3の自動利得制御器112と、第2及び第3の自動利得制御器111,112の出力信号の差分をとり逆位相合成キャンセルを行う逆位相合成加算器113と、逆位相合成加算器113の出力信号の復調を行うTDMA復調器121と、第1及び第2の係数保持器123,124に保持されたそれぞれのキャンセル係数W11,W12の乗算器107,108への出力を制御する係数制御器122と、を備え、第1の相関器105は、第1の複素共役器103により複素共役がとられた受信信号と、第1の自動利得制御器110により正規化された信号とを基に、第1のキャンセル係数W11を算出し、第2の相関器106は、第2の複素共役器104により複素共役がとられた受信信号と、第1の自動利得制御器110により正規化された信号とを基に、第2のキャンセル係数W12を算出し、係数制御器122は、TDMA復調器121からの制御指令により、第1及び第2の係数保持器123,124に保持されたキャンセル係数W11,W12のそれぞれを、通信機が希望波を受信するタイムスロットのタイミングに同期して第1及び第2の乗算器107,108に出力させる。
これにより、空間ダイバーシティを行う場合に、希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく希望波を取り出すことができる。
【0028】
また、図3に示す実施形態では、記各空中線101,102により空間ダイバーシティを行うとともに、第1及び第2の周波数f1,f2を用いて周波数ダイバーシティを行うように構成され、第1の周波数f1に対して空間ダイバーシティにより逆位相合成キャンルを行う空間ダイバーシティブランチ11と、第2の周波数f2に対して空間ダイバーシティにより逆位相合成キャンルを行う空間ダイバーシティブランチ12と、を備え、空間ダイバーシティブランチ11の出力信号と、空間ダイバーシティブランチ12の出力信号とを加算することを特徴とする。
これにより、空間及び周波数の4重ダイバーシティ方式においても、希望波と妨害波の比に関わらず、精度よく希望波を取り出すことができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の干渉波除去装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
11,12・・・空間ダイバーシティブランチ、101,102・・・空中線、103,104・・・複素共役器、105,106・・・相関器、107,108・・・乗算器、109・・・加算器、110,111,112・・・自動利得制御器、113・・・逆位相合成加算器、121・・・TDMA復調器、122・・・係数制御器、123,124・・・係数保持器、131・・・加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間ダイバーシティ方式を用いた通信機によりTDMA通信を行う際に、当該通信機に割り当てられた時間帯以外のタイムスロットで妨害波の受信を行い、該妨害波の信号を基に、各空中線で受信された妨害波の位相を揃えるためのキャンセル係数を算出し、該キャンセル係数を用いて妨害波の逆位相合成キャンセルを行うことを特徴とする干渉波除去装置。
【請求項2】
前記通信機に割り当てられた時間帯以外のタイムスロットで受信した妨害波の受信信号を基に、前記各空中線で受信された妨害波の位相を揃えるためのキャンセル係数を、各空中線ごとに算出する相関器と、
前記空中線ごとに算出された各キャンセル係数を保持するための係数保持器と、
前記各空中線の受信信号と、前記係数保持器に保持された各キャンセル係数のそれぞれとを乗算する乗算器と、
前記乗算器により算出される各空中線ごとの乗算結果の差分をとり逆位相合成キャンセルを行う逆位相合成加算器と、
前記通信機器が希望波を受信するタイムスロットのタイミングに同期して、前記係数保持器に保持されたキャンセル係数を前記乗算器に出力させる係数制御器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の干渉波除去装置。
【請求項3】
第1の空中線により受信された第1の受信信号の複素共役をとる第1の複素共役器と、
第2の空中線により受信された第2の受信信号の複素共役をとる第2の複素共役器と、
前記第1及び第2の受信信号に含まれる妨害波の位相が揃うように、前記第1の受信信号と相関を取るための第1のキャンセル係数を算出する第1の相関器と、
前記第1のキャンセル係数を保持するための第1の係数保持器と、
前記第1及び第2の受信信号に含まれる妨害波の位相が揃うように、前記第2の受信信号と相関を取るための第2のキャンセル係数を算出する第2の相関器と、
前記第2のキャンセル係数を保持するための第2の係数保持器と、
前記第1の受信信号と、前記第1の係数保持器から出力される第1のキャンセル係数とを乗算する第1の乗算器と、
前記第2の受信信号と、前記第2の係数保持器から出力される第2のキャンセル係数とを乗算する第2の乗算器と、
前記第1の乗算器の出力信号と前記第2の乗算器の出力信号とを合成する加算器と、
前記加算器の出力信号を正規化する第1の自動利得制御器と、
前記第1の乗算器の出力信号を正規化する第2の自動利得制御器と、
前記第2の乗算器の出力信号を正規化する第3の自動利得制御器と、
前記第2及び第3の自動利得制御器の出力信号の差分をとり逆位相合成キャンセルを行う逆位相合成加算器と、
前記逆位相合成加算器の出力信号の復調を行うTDMA復調器と、
前記第1及び第2の係数保持器に保持されたそれぞれのキャンセル係数の前記乗算器への出力を制御する係数制御器と、
を備え、
前記第1の相関器は、前記第1の複素共役器により複素共役がとられた受信信号と、前記第1の自動利得制御器により正規化された信号とを基に、前記第1のキャンセル係数を算出し、
前記第2の相関器は、前記第2の複素共役器により複素共役がとられた受信信号と、前記第1の自動利得制御器により正規化された信号とを基に、前記第2のキャンセル係数を算出し、
前記係数制御器は、前記TDMA復調器からの制御指令により、前記第1及び第2の係数保持器に保持されたキャンセル係数のそれぞれを、前記通信機が希望波を受信するタイムスロットのタイミングに同期して前記第1及び第2の乗算器に出力させる
ことを特徴とする請求項1に記載の干渉波除去装置。
【請求項4】
前記各空中線により空間ダイバーシティを行うとともに、
第1及び第2の周波数を用いて周波数ダイバーシティを行うように構成され、
前記第1の周波数に対して空間ダイバーシティにより逆位相合成キャンルを行う第1の系統と、
前記第2の周波数に対して空間ダイバーシティにより逆位相合成キャンルを行う第2の系統と、
を備え、
前記第1の系統の出力信号と、前記第2の出力信号とを加算する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の干渉波除去装置。
【請求項5】
空間ダイバーシティ方式を用いた通信機によりTDMA通信を行う際に、当該通信機に割り当てられた時間帯以外のタイムスロットで妨害波の受信を行い、該妨害波の信号を基に、各空中線で受信された妨害波の位相を揃えるためのキャンセル係数を算出し、該キャンセル係数を用いて妨害波の逆位相合成キャンセルを行うことを特徴とする干渉波除去方法。
【請求項6】
TDMAのタイムスロットにおいて、当該通信機に割り当てられたタイムスロットにおいてはデータの送受信を行い、その他のタイムスロットでは受信のみを行う手順と、
前記その他のタイムスロットにおいて妨害波を受信し、該妨害波の信号を基に、前記各空中線ごとにキャンセル係数を算出する手順と、
前記算出されたキャンセル係数を保持する手順と、
前記通信機に割り当てられたタイムスロットにおいて希望波を受信する際に、前記保持していたキャンセル係数を用いて妨害波を除去する手順と、
が行われることを特徴する請求項5に記載の干渉波除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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