説明

平坦な案内溝を備えた編成システム

【課題】全体重量の減少、より小さな摩擦表面および、よりしっかりした構成とし、特に往復動作モードで、より大きな編成速度とより大きな回転加速による動作を可能にし、潤滑油およびエネルギー全体の節約となる編成装置を提供する。
【解決手段】編成装置10は、針床12と編成工具16とを備え、針床12は、溝壁の構成からみて接合個所および継目がないように、同じく針床12の基体を通して溝の底に垂直であるように、構成される。個々の案内溝13、14、15の深さは溝幅の3倍未満が好ましい。結果的に、特に極めて微細に針分割される場合、得られる溝壁は、強く、安定で丈夫であり、硬化またはコーティング処理を受け得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば編成シリンダの形態の針床および、例えば針の形態の編成工具、特にべら型針を備えた編成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
針床、特に特許文献1の実施例から知られるような編成シリンダ、が製造されており、それらは、例えば、軸方向に延びる案内溝が、円筒(シリンダ)形の基体に機械加工され、当該案内溝は、編成工具、例えば針のための案内溝を形成する。同じ文献に述べられた案内溝を加工するための別の可能性は、中空円筒である金属本体の外側に長手方向の溝を切削加工し、それから条片を当該長手方向の溝に嵌入することである。編成工具のための案内溝は嵌入した条片の間に定まる。
【0003】
いずれの場合においても、案内溝の深さがその幅よりかなり大きいということが想定される。例えば、E20(1インチにつき20本以上の針)より細かな針筒(シリンダ)は、3.7mmの案内溝の深さと0.44mの案内溝の幅を有する。これは8を超える深さ/幅比率に対応する。
【0004】
これまでに知られている考え方はより大きな細微度の場合に問題がある。特に、より粗い細微度(例えばE18かそれより小さいもの)の度合いの事例で、通常は機械加工された案内溝を有するシリンダが用いられている。これによれば、側面を平行にして並ぶ案内溝が針筒に得られる。しかしながら、この既存の条片を硬化させることは困難である。細微度18を超えるときには、硬化は不要としても良さそうであるが、しかしながらそれによって摩耗の問題がまた生じうる。
【0005】
シリンダに嵌入される条片の設計は、結果として高価な製造工程となる。これは特に、E18のような高い細微度の事例において、特にそうである。しかしながらフットの破損および条片の損傷の場合、損傷した条片を個別的に取り代えることができる場合は、シリンダ全体の損傷は時として防止できる。
【0006】
より高い精度が要求される場合、さし込まれた条片を編成シリンダに使用する構成は問題をおこすかもしれない。実際、案内溝が結果としてわずかに台形になり得るからである。もしも逆に、それを補償するためにそれ自身の形がやや台形であるような条片がいられるなら、その製造はかなり高価なものとなる。
【0007】
編成シリンダを硬化する問題は、例えば文献2に示されるような別の構成に帰着する。概略的にそこで示された編成シリンダは、長方形の横断面を有する案内溝を有し、分割されている。当該編成シリンダは、内側の、非硬化の中空の円筒形本体に、外板の形をした硬化した部分が取り付けられ、当該部分に針溝が設けられている。
【0008】
この構成で大きな問題は、中空の円筒形ベース本体の外側に付属する外板の形をした部分が硬化中に歪みやすいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第423244号明細書
【特許文献2】独国特許第677979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
信頼性の高い工程を採用して経済的で簡単な製造を可能にし、そして同時に、編成速度の増加要求をも満たす、編成装置の概念を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の編成装置により達成される。
【0012】
本発明の編成装置は、案内溝を有する針床を備え、そこでは針の深さは、溝幅より、少なくとも3/4倍および多くて5倍の大きさをもつ。溝の深さと溝幅の比は、2と3の間が好ましく、2.5と2.75の間も好ましく、そして最適の場合は2.62である。
【0013】
この際、針床は継目および接合個所がなく、同一材料で作成される。溝壁と針床の残りの本体間との間に継目も接合個所もなく、針床自体は、案内溝の底の下にさえ、いかなる接合個所あるいは継目も有しない。編成シリンダの場合、したがって、当該シリンダはその半径方向全体において一体成形される。このことは、編成シリンダが、軸方向に互いに配置された、いくつかの環状の構成要素から成り得るという事実によって妨げられない。本発明の枠組みの中で、編成シリンダを、軸方向に延びる接合個所に沿って互いに当接する、例えばシェル型の、いくつかの部分で構成することも可能である。いずれにしても、半径方向の構造的連続性がある。
【0014】
さらにまた、編成装置は、案内溝の中で軸方向に移動され得るように配置され、案内溝から突き出る少なくとも一つのフットを備えた、編成工具からなる。編成工具の全ては同じ構成であってもよい。例えば、それらはべら型針、スライダ針等でもよい。
【0015】
好ましい実施例においては、編成工具のシャンク横断面は、溝の横断面に合致し、その場合編成工具のシャンク横断面は、特にその幅に関しては、極めてわずかに小さい。編成工具は案内溝内で、可動なように配置されるからである。編成工具のシャンク横断面は、したがって、ほぼ溝の横断面に合致している。溝壁は、編成工具のシャンクを越えないか、実質的には突き出さない。溝の深さが浅いので、結果としてできた編成シリンダは、通常の編成シリンダに比べ実質的により少ない重量をもつ。加えて、案内溝で移動する針の重量はほぼ従来の技術による針の重量の半分であり、これは編成装置に関して潜在的には最高20%重量の節約となる。軽量化が、特に、外径について行われるので、これは編成シリンダの質量慣性モーメントの実質的な減少になる。これは、例えば、模様化された製品の生産の際の、往復運動を繰り返すような場合など、編機が動作の間頻繁に回転の反転を繰り返すときに、特に、その編機の動作速度の増加のために重要である。
【0016】
上述した重量の相当な減少に加えて、本発明の編成システムの製造のために必要とされる原料は、従来技術による編成システムの製造のために必要である量よりかなり少なくて済む。さらに少ない原料資源で済むことから、本発明により編成システムの総原価が減ることとなる。
【0017】
案内溝の深さの大幅な減少は、広範囲にわたる技術的な成果である。溝の深さの減少および対応する編成工具の条片高さの同程度の減少のため、編成工具と溝壁との間の大幅な接触面の減少が結果として得られる。これは、編成工程において、繰り返し克服されるべき摩擦、特に静止摩擦を減らす。静止摩擦の減少は、最終的にカムアッセンブリ摩耗の減少、駆動力の低下、そして同じく、最終的に油の必要性の減少にも至る。
【0018】
案内溝の好ましい実施例では、少なくとも一つの凹所が案内溝に備えられるので、編成工具と案内溝との間の接触面はさらに減る。凹所は、溝壁に、または案内溝の底に備えられてもよい。この際、少なくとも一つの凹所は、編成カムが編機針のフットに作用する領域外で案内溝に配置される。凹所の長さおよび位置は、少なくとも、編成工具の間隔を置いた2つの別々の箇所、地点が、編目を構成する全工程の間、案内溝と常に相互に作用するように決められる。これは、凹所が溝壁に設けられるかあるいは案内溝の底に設けられるかどうかとは別の事項である。好ましくは、凹所は、少なくとも2つの当接点の間に位置する。案内溝に少なくとも一つの不連続があるようにすれば、複数の凹所を設けるか、または1つの凹所を設けることが可能である。凹所のどのような不連続も、編成工具のための当接点を構成できるであろう。凹所の長さは、少なくとも対応する経路は、編成工具の収納位置から最前面の突き出た位置まで、動作の間における編成工具の移動距離に対応する。凹所の長さは、最大でも、案内溝の収納位置において、収容される編成工具の部分の長さ、引くことのその収納位置からその最前面の突き出た位置まで編成工具が移動する長さ、引くことの当接点の長さ、である。
【0019】
本発明の編成システムの他の実施例において、凹所は編成工具自体に設けられてもよい。この場合、編成工具の背部および/または1つの平坦な側は、少なくとも一つの切り欠きを有する。
【0020】
凹所が、編成工具にまたは案内溝に設けられるかどうかに関わらず、凹所は、長方形のくぼみの形を有するように設けられてもよい。このくぼみは、その場合、案内溝の底に平行に、または編成工具の背部に対し平行に、または溝壁に対し平行に、または編成工具の平坦な側に対してオフセットされて配置された、平面平坦な底部を有する。凹所は、円弧の断面形状の凹面底部を有することも可能である。凹所は、その場合円筒形断面の形を有する。凹所は、底または案内溝の、または編成工具の背部の、または溝壁または編成工具の平坦な側の最大90%を占めてもよく、この場合、編成工具は、編目形成工程の間、案内溝(溝壁、溝底)の少なくとも2つの箇所、地点に対して確実に当接し、そして、このようにして正確な、確実な案内を確かなものとする。
【0021】
丸編機の場合の編成装置の示唆された幾何学的構造、特に編成シリンダの新規な幾何学的構造は、効果的で改良された生産工程を可能にする。例えば、浅い溝の深さの案内溝は、機械加工により、または他のアブレーション工程によって、容易にかつ精密に製作され得る。案内溝の製造の後行われる硬化工程、またはコーティング工程でさえ、容易かつ効果的に行われ得る。特に、従来の技術と比べて明らかに小さくなっている溝の深さ/溝幅の比率により、良い品質の溝壁のコーティングが成功している。従来の技術と比べて明らかに小さくなっている溝の深さ/溝幅の比率により、編成シリンダの全表面をコーティングして、硬化することが可能である。
【0022】
さらにまた、それは、動作中高い摩擦負荷にさらされる溝壁のその領域に、硬化またはコーティングを集中させることが可能である。特に、針溝の完全な領域、すなわち、その底をもコーティングし、そして、その硬度を増すことが可能である。
【0023】
新規な編成装置の編成工具は、一以上のフットを有する完全なシャンクを備えるのが好ましい。そのフットの近くには、少なくとも一つの凹所がある。この凹所は、長さがその深さの倍数である細長いへこみの形を有するのが好ましい。このようにして、フットとシャンクとの間に領域が定められ、当該領域は、ある程度の弾力、場合によりねじりの弾力をも示し、そして、いずれにせよ、編成工具のひびおよび破損などの故障発生度を下げる。
【0024】
本発明の編成装置の有利な実施態様のさらなる詳細は、図面、明細書の記載または請求項の要旨である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の編成装置の原理の概略詳細を示す図である。
【図2】図1の編成装置の詳細の概略断面図である。
【図3】図1の編成装置の他の縮尺による図である。
【図4】他の縮尺による針床の詳細を示す断面図である。
【図5】部分的に硬化させた溝壁を有する針床の変形実施態様を示す図である。
【図6】編成工具の側面図である。
【図7】図6の編成工具の詳細の概略側面図である。
【図8】針床の部分の概略を示す図である。
【図9】図8の針床の案内溝の領域を断面により示す図である。
【図10】背に凹所を有する編成工具の側面図である。
【図11】平坦な側面に凹所を有する編成工具の側面図である。
【図12】図11の編成工具の詳細を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、編成工具と、複数の案内溝13、14、15、その他を有する針床12とから成る丸編機11の実施例による編機10を示す。図1は、各案内溝13、14、15、その他に配置される編成工具の代わりに、例えば、べら型針として構成される1本の針16を示す。
【0027】
この例では、針床12は、例えば、中空のシリンダの基本形を有する編成シリンダ17である。図1の各々は、図2と同様に、この編成シリンダの詳細を示す。当該シリンダは、完全に1つの部材、すなわち、継目や接合個所のない一体成形品から成るのが好ましい。しかしながら、編成シリンダ17または、そうでない場合、針床12(横編機の例えばダイヤル、シンカリングまたは針床のような)を分割することも可能であり、その場合個々の部分は、一個に、継目や接合個所なく設置される。
【0028】
継目や接合個所のない構成は、特に図2および図3から明らかである。この実施例に示されるように、各案内溝14は、2つの平坦な面50、51により半径方向に範囲を定められ、当該面は溝壁18、19の境界を定める。平坦な面50、51は、互いに面し、互いの距離は、案内溝14の幅24を定める。溝壁18、19は基体20の一体成形構成部品である、当該基体は、本実施態様において、環状の中空のシリンダとして構成され、内側の周囲表面21から延び、当該表面は、外側の周囲表面22の放射状に外向きの面(案内溝14、15により分割されている)まで、外気に放射状に自由にさらされている。外側の周囲表面22は、2つの平坦な面50、51につながる案内溝14の底23とともに、溝壁18、19の表面により、そして、溝壁18、19の平坦な面50、51により、構成される。溝壁18、19と内側の周囲の表面21間との間に継目や接合個所は、それが何であれ表面等を分けるものは、そこにはない(すなわち、底面20の完全な半径方向の全一性が与えられる)。
【0029】
加えて、案内溝14は、好ましくは、平面として構成される底23を有する。底23と溝壁18、19の平坦な面50、51との間に、分割接合個所、継目等はない。同様に、底23と内側の周囲の表面21との間の接合個所や継目はない。底23と内側の周囲の表面21との間の部材は連続的であるように設けられている。結果として、針床12、ここでは編成シリンダ17の形をとる、は一体である。
【0030】
例えば、案内溝14を用いて以下説明されるように、案内溝は特別な寸法比率をもつ。図4に示される溝幅24は、図4にも示されている隣接する溝壁18の厚み25よりわずかに小さいのが好ましい。すべての溝壁18、19、その他は、そろった厚みを有するのが好ましい。加えて、すべての案内溝14、15、その他は、溝の深さ26と同様、そろった溝幅24を有するのが好ましい。溝の深さ26は、溝幅24の3/4から多くても5倍の範囲にあることが好ましい。溝の深さ26は、溝幅24の2〜3倍の範囲が好ましい。好ましい場合において、溝の深さと溝幅の比率は2.6である。図3から明らかなように、これは、対応して、編成工具16のシャンク28の幅および高さに当てはまる。シャンク28は、最小限の許容誤差を残すように、案内溝15に装着されるのが好ましい。このため、案内溝15およびシャンク18は、当該許容誤差を除いて、整合する横断面をもつ。
【0031】
当該寸法比率は、特に溝壁18、19の平坦な面50、51に、摩耗を最小にするコーティング29の適用を可能にする。溝壁18、19の表側はコーティング工程のために自由に利用できる。摩耗を最小にするコーティングは、金属かセラミックの硬い物質層、例えばDLC(ダイヤモンド状炭素)、TiNのまたはTiC層または他の摩擦を最小にする、あるいは摩耗を最小にする層でよい。好ましくは、この層は案内溝の深さ全体にわたり異なる厚みを有する。例えば、層厚は、溝壁18、19の各平坦な面50、51の終端で最も厚く、当該端部は、底23から最も遠く離れている。
【0032】
当該寸法比率は、PVD(物理的蒸着法)またはCVD(化学気相成長)工程によって、針床12のコーティングを施すことを可能にし、ここで、コーティングは、案内溝13、14内において、特に達成され得る。これは、従来の技術で使われているような、より深い幾何学的構造の溝の場合、いかなる適切なコーティングをも定常的には受け付けない、E18あるいはそれより微細な細微度の場合でも当てはまる。
【0033】
図5に示されるように、針床12または編成シリンダ17の溝壁18、19、その他の外側の領域は選択的に硬化できる。例えば、溝壁18、19の平坦な面50、51の端部、当該端部はそれぞれの底23から最も遠く離れているが、を硬化する熱間加工は、特に溝壁18、19の実質的な歪みなしに、成功している。平坦な面50、51は、編成工具16の往復動作の間、摩耗しやすい。本発明の編成システムでは、この摩耗は、平坦な面50、51をそれぞれコーティングおよび硬化することによって、かなり減らすことができ、そして、従って、長期間にわたり高い精度によって動作する編成システムとなる。境界29、30は、図5に概略的に示され、そこでは硬化した部材は、より少なく硬化されるかまたは硬化されていない部材に隣接する。
【0034】
コーティング29は、その硬化と同様に、底23から少し離れた溝壁の領域またはエッジ48、49に特に限定されてもよい。そこは、編成工具に作用する特に横向きあるいはねじりの力が働き、当該力は、例えば、カムアッセンブリによって、編成工具のフットに、傾ける力として伝達される。エッジ48、49の硬化またはコーティングは、その場所で特に生じているいかなる摩耗も防止し、そして減少させられたシャンク高さH(図6)にもかかわらず、編成工具16を良好に案内することを確実にする。
【0035】
図6は、編成工具、すなわち、この実施例の針16を示す。この編成工具は、一端にフック31を備えた細長い直線のシャンク28を有する完全なシャンク工具である。当該フックは、回転可能に支持された閉止要素32を伴っていてもよい。フック31および閉止要素、べら32は、溝の深さ26の方向にシャンク高さHより小さな計測された高さ34を有する編目形成部33に属する。編目形成部から延びて、このシャンク高さHは、シャンク28の全長にわたりほとんど一定である。
【0036】
図3に示されるように、フット35は、シャンク28から延び、それは編成シリンダ17の半径方向において、見たとき長方形の横断面を有するのが好ましい。フットの少なくとも一つの側、好ましくは当該フットの両側には、凹所36、37が備わる。それらは、直接フット35に隣接する。図7に示すように、凹所36、37は互いに同じで、フット35について対称形であることが好ましい。凹所36、37は、フット方向39においてより、長さ方向38において、実質的に長いことが好ましい。好ましくは、長さ方向38において測定される長さは、フット方向39において測定される凹所36、37の深さの、2倍から多くて10倍から20倍を超える。加えて、各凹所36、37は、それぞれ針上側42およびフット・エッジ43、44の方へ向かう直線の底部および丸い移行領域を有するのが好ましい。
【0037】
追加のこのような凹所45、46、57、52、その他をシャンク28の全長に分布させることができる。これらの凹所は、重量および振動を減少させるためにあえて設けてもよい。それらは、また、残留物として残されてもよい。例えば、針16には元々はいくつかのフットがあり、当該フットの各々に対応する凹所36、37、45、46、47、52が側面に並んでいた場合で、そして、編成シリンダの針をカムアッセンブリの異なるカムに割り当てるため、普通みられるように、個々のこのようなフットが取り去られた場合である。
【0038】
図9は、本発明の編成装置10の針床12の詳細を示す。編成工具16と針床12との間の接触面を、そして、したがって摩擦を減らすために、図9の針床12は凹所53を有する。この凹所は、例えば底23に、または、それに代えて、案内溝13の溝壁18、19に設けられてもよい。凹所53は、溝壁18、19と平行する、平坦な底部58を有するくぼみ57の形態か、または案内溝の底23に対してオフセットされていてもよい。その場合、くぼみ57は、長方形の断面形を有する。その狭い平坦な側で、くぼみ57の底部58から延びる移行領域は、参照符号60により示される角度をもつか、または参照符号61により示される半径によって、湾曲していてもよい。凹所53の長さは、編成工具16が、編目形成が進行中、常に案内溝13、14、15の少なくとも2つの点55に対して当接し、したがって確実に案内されるように寸法取りされる。凹所53の深さは、1/10ミリメートルから1/100ミリメートル台の値でよい。凹所53の深さは、0.02mmから0.25mmでよい。
【0039】
図9の右面の凹所53により示されるように、凹所53の底部58は凹面でもよい。この場合、くぼみ57は、円筒形の断面を有する。案内溝13、14、15を製造するとき、この形を有するくぼみ57は、丸鋸切削工具を用いて単純かつ、したがって経済的な方法で製造され得る。図9の案内溝13は、異なる構成の底部をもつ、2つの間隔を置いた別々のくぼみ57を有する。凸状に成形された底(上記の説明を参照)の隣に、図9の左側に示されるくぼみ57の底部58は、案内溝13の底と平行してオフセットされた平らな表面部を有する。くぼみ57の底部58のこの平らな表面部は、案内溝13の底23を終端とする半径を有する。図9に示されるように、案内溝13、14、15はいくつかの凹所53を有することができる。2つ以上の凹所53を有してもよい。凹所53は、縁が当接点55に接し、編成工具16は、編目を構成する工程の間、当該当接点に対して当接する。
【0040】
図10は、本発明の編成装置10の編成工具16を示し、編成工具16の背部56は、少なくとも一つの凹所53を、図10の実施例では2つの凹所53を、有する。凹所53のこれまでの記載は、すでに導入された参照符号を用いて、同様に編成工具16の凹所に当てはまり、それは凹所が編成工具16の背部56(図10)か、または平坦な側62(図11および図12)に設けられるかどうかにかかわらない。凹所53は、くぼみ57として構成されてもよく、背部56、それは凹所53を有し、編目形成工程の間の、少なくとも2つの当接点55で、案内溝13、14、15の底23と相互に作用するように編成工具に設けられる。くぼみのような凹所53が編成工具16の平坦な側62に設けられる場合、平坦な側62は、少なくとも2つの当接面(点)55を有し、当該編成工具16の当接表面は、編目構成工程の間、案内溝13、14、15の平坦な側50、51に当接する。
【0041】
新しい編成システムは動作中多くの長所をもたらす。溝の深さ26の減少と、通常の針のそれに比較し減少したシャンク高さHにより、編成シリンダ17の質量慣性モーメントの減少が達成される。特に、編成シリンダの往復前後回転のより長い段階を伴う編成模様の製品の場合、これは、速度の面で長所になる。加えて、編成シリンダ17の製造が実質的に簡単になる。案内溝13、14、15は高い精度で、平行な側面は切削によるアブレーションにより製作され得る。案内溝13、14、15の溝壁18、19および底23の、全体あるいは選択的な硬化または/あるいはコーティングが可能である。加えて、特にそのフット35の領域における、針16の新しい幾何学的構成は、確かなねじりの反発力を与えるので、フット領域の針折れは、シャンク28の大きな長手方向の剛性にもかかわらず、減少され得る。
【0042】
本発明の編成装置10は、針床12と編成工具16とを備え、針床12は、溝壁18、19の構成からみて接合個所および継目がないように、同じく針床12の基体20を通して溝の底23に垂直であるように、構成される。個々の案内溝13、14、15の深さ26は溝幅24の3倍未満が好ましい。結果的に、特に極めて微細に針分割される場合、得られる溝壁18、19は、強く、安定で丈夫であり、硬化またはコーティング処理を受け得る。編成装置の全体重量の減少、より小さな摩擦表面および、よりしっかりした構成は、特に往復動作モードで、より大きな編成速度とより大きな回転加速による動作を可能にし、そして潤滑油およびエネルギー全体の節約となる。
【符号の説明】
【0043】
10 編機
11 丸編機
12 針床
12、14、15 案内溝
16 針、編成工具
17 編成シリンダ
18 第1の溝壁
19 第2の溝壁
20 基体
21 内側の周囲表面
22 外側の周囲表面、側面、
23 底
24 溝幅
25 溝壁18の厚み
26 溝の深さ
28 シャンク
29、30 境界
31 フック
32 閉止要素、べら
33 編目成形部
34 高さ
35 フット
36 第1の凹所
37 第2の凹所
38 長さ方向
39 フット方向
40 底部
41 底部
42 針上側
43 フット上側エッジ
44 フット下側エッジ
45、46、47、52 凹部
48、49 エッジ
50、51 溝壁18、19の平坦な面
53 凹部
55 当接点
56 針の背部
57 くぼみ
58 凹部およびくぼみの底部
62 編成工具の平坦な面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側の周囲表面(22)に設けられた案内溝(13、14、15)を有する基体(20)を備えた針床(12)であって、当該各案内溝(14)は、2つの溝壁(18、19)および溝底(23)の2つの平坦な面(50、51)により境界を定められ、当該溝壁(18、19)は、継ぎ目なく当該底面本体(20)に接続され、そして同一材料で接合個所なく作られ、
当該案内溝(14)は、当該溝壁(18)の当該平坦な面(50)から当該溝壁(19)の当該平坦な面(51)まで測定される溝幅(24)と、底(23)から当該溝壁(18、19)と平行に、外周囲の表面(22)まで延びて測定される溝の深さ(26)とを有する溝断面を有し、当該溝の深さ(26)は、当該溝幅(24)の少なくとも3/4、そして多くて5倍の大きさをもつものと、
長さ方向において、移動可能なように、当該案内溝(14)に配置され、当該案内溝(14)から延びるフット(35)を備えたシャンク(28)を有する編成工具(16)と、
からなる、特に丸編機(11)である、編機(10)。
【請求項2】
前記シャンク(28)は、許容誤差を除き前記溝断面に合うシャンク横断面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項3】
前記シャンク横断面は、前記編成工具(16)が突き出た状態において、前記案内溝(14)に残る全ての長さにわたり一定である、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項4】
前記フット(35)に隣接して、少なくとも一つの凹所(36)が、針上側(42)に備えられている、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項5】
前記凹所(36)は、前記編成工具(16)の長さ方向(38)において計測される長さを有し、当該長さは、当該長さに垂直に測定される深さと同程度か、最大で当該深さの20倍である、ことを特徴とする請求項4に記載の編機。
【請求項6】
前記編成工具(16)の前記針上側(42)の前記凹所(36)から少し離れて、同種の追加の凹所(37、45、46、47、52)が設けられる、ことを特徴とする請求項5に記載の編機。
【請求項7】
前記溝壁(18、19)は、前記溝幅(24)と少なくとも同程度、最大1.5倍、好ましくは1.2倍の厚み(25)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項8】
前記案内溝(14)は、その前記溝壁(18、19)の前記平坦な面(50、51)と、その前記底(23)にコーティングを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項9】
前記溝の深さ(26)は前記溝幅(24)の3倍未満であるか、および/または前記溝の深さ(26)は前記溝幅(24)の2倍より大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項10】
前記溝の深さ(26)は前記溝幅(24)より2.62倍大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項11】
前記案内溝(13、14、15)の前記底(23)は少なくとも一つの凹所(53)、および/または前記案内溝(13、14、15)の前記平坦な面(50、51)は少なくとも一つの凹所(53)、および/または前記編成工具(16)の背部(56)は少なくとも一つの凹所(53)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項12】
前記編成工具(16)の平坦な側(62)は少なくとも一つの凹所(63)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の編機。
【請求項13】
前記凹所(53)は、凹曲度に従うかまたは平坦な形の底部(58)を有する、ことを特徴とする請求項11に記載の編機。
【請求項14】
前記凹所(53)の底部(58)は、前記案内溝(13、14、15)の前記平坦な面(50、51)の前記底部(23)に対してオフセットされている、ことを特徴とする請求項11に記載の編機。
【請求項15】
前記凹所(53)の底部(58)は、前記背部(56)または平坦な側(62)に対してオフセットされている、ことを特徴とする請求項11に記載の編機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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