説明

平滑筋細胞増殖のモジュレーション

【課題】 平滑筋細胞増殖を強化し、そして減少した平滑筋細胞増殖に伴う疾患を処置するための製薬学的組成物の提供。
【解決手段】 血管内皮細胞増殖因子(本明細書中ではVEGF−Xと呼ぶ)およびVEGF−Xの配列中に存在するCUBドメインの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑筋細胞増殖のモジュレーション(modulation)、そして特に平滑筋細胞増殖を強化し、そして減少した平滑筋細胞の増殖に付随する疾患を処置するための血管内皮増殖因子の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PDGF/VEGF増殖因子ファミリーは多数の構造的に関連した増殖因子を含む。このファミリーの員は鎖間(inter−chain)ジスルフィド結合により共有的に連結された二量体を形成する保存されたシステイン−リッチ領域であるシステインノット(cysteine knot)(Sun,P.D.1995)を含む(Potgens et al.1994,Andersson et al.1992)。血小板由来増殖因子(PDGF)は繊維芽細胞および平滑筋細胞を含む結合組織細胞に分裂促進的(mitogenic)である(Heldin et al.1999に総説されている)。PDGFは異なるAおよびB鎖のホモ−およびヘテロ二量体から成り、そして2つの受容体チロシンキナーゼであるPDGFR−αおよびPDGFR−βを活性化する。PDGFのmRNAは正常な細胞型の範囲で発現され、そして腫瘍形成および他の疾患プロセスに関与しているかもしれない(Heldin et al.1999)。さらにPDGF−B遺伝子は形質転換性レトロウイルスによってv−sisガン遺伝子として運ばれ(Devare et al.,1983)、過剰発現は発ガン性となり得ることを示している。
【0003】
血管内皮細胞増殖因子は新生血管形成(neovascularisation)および血管透過性(vascular permeability)に関与する(Ferrara & Davis−Smyth,1997,Neufeld et al.,1999に総説されている)。今日まで5種の内因性VEGF(VEGF−A、−B、−C、−Dおよび胎盤増殖因子(PLGF))が記載された。VEGFシグナル発信は受容体チロシンキナーゼのファミリーを介するが(Ferrara & Davis−Smyth,1997,Neufeld et al.,1999)、最近はニューロピリン(neuropilin)−1もVEGF−Aの幾つかのアイソフォームに関する受容体であることが示された(Soker et al.,1998)。
【0004】
VEGF−Aは心臓、胎盤および膵臓を含む幾つかの正常な組織中で発現する(Berse et al.,1992)。VEGF−Aは多くの腫瘍細胞中で過剰に発現し(Takahashi et al.,1995)、そしてVEGF−A作用の阻害は動物モデルにおいて腫瘍の後退を引き起こすことが示された(Kim et al.,1993)。VEGF−Aは不適切な新脈管形成(angiogenesis)が関与する他の疾患プロセスにもかかわっていた(Folkman 1995)。正常組織でのVEGF−B
mRNA発現はVEGF−Aの発現と重複するが、中枢神経系でも検出可能である(Lagercrantz et al,1998)。VEGF−CはVEGF AおよびBよりも低いレベルで発現するが(Lagercrantz et al,1998)、組織の範囲で検出可能である(Lee et al.1996,Fitz et al.,1997)。VEGF−Dは肺、心臓および小腸で強力に発現し、そして幾つかの他の組織で検出可能である(Yamada et al,1997)。
【0005】
ESTデータベースの調査はVEGF/PDGFファミリーの新たな員の同定をもたらした。同定されたポリペプチド配列はN−末端CUBドメインおよびC−末端PDGFドメインを含み、そして血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor)−X(VEGF−X;特許文献1;EMBL受託番号AX
028032)と命名された。最近、同じ配列が公開され、そしてPDGF活性を有することが示され(Li et al.,2000)、そしてPDGF−Cと命名され、そしてこれら2つの名称は互換的に使用することができる。Li et alは、PDGF−CのC−末端PDGFドメインはPDGFR結合および繊維芽細胞増殖の刺激において活性であるが、完全長のPDGF−Cはそのような活性を示さないことが分かった。彼らはCUBドメインがPDGFドメインのインヒビターとして機能するモデルを提案した:活性化は活性なPDGF−Cを放出するためにタンパク質切断を介する。
【0006】
平滑筋細胞は膀胱機能を制御するために尿道および膀胱壁において重要である。平滑筋細胞数の増加は、運動性尿失禁および膀胱機能不全の治療となることが示された(Yokoyama et al.,2000)。治療として使用する細胞数の増加は、平滑筋細胞(筋芽細胞)を尿道および膀胱壁に直接注入することであった。
【0007】
他方では、動脈の平滑筋細胞過形成は様々な疾患を引き起こすことが知られており、そしてこの望ましくない細胞レベルの出来事(event)を遮断する作用物質(agent)はこれらの疾患に薬剤標的化療法(drug targeted therapy)で使用することができるであろう。
【0008】
大動脈の疾患であるアテローム硬化症は心臓疾患および発作の主要な原因である。西洋化した社会ではこれが全死亡のうちの約50%の根本的原因である。アテローム硬化症は大動脈に脂質および繊維状の要素の蓄積を特徴とする進行性の疾患である。血管壁の細胞、特に平滑筋細胞(SMC)の過剰成長はアテローム硬化症の発病の一因となる(Lusis,AJ,2000)。平滑筋細胞の増殖および移動を遮断することができる処置は、内膜過形成(intimal hyperplasia)を防止するために十分であり、そして血管治癒プロセスにも貢献するかもしれない。最近の血管介入的環境では、高い再狭窄率により内膜過形成、血管壁傷害後に生じる慢性的な構造的損傷の重要性が益々知られるようになり、そしてこれは管腔狭窄および血管閉塞を導き得る。内膜過形成は、細胞外結合組織マトリックスの会合した沈着を含む血管平滑筋細胞の異常な移動および増殖と定義されている(Hagen P.O.,et al.1994)。心臓同種移植片動脈硬化症(cardiac allograft arteriosclerosis)は受容体の長期生存を限定する主原因の1つである。これは動脈壁に対する極端な傷害により、吻合の部位で起こり得る増殖性平滑筋細胞からなる内膜の厚化を特徴とする(Suzuki J.et al.2000)。平滑筋細胞の病理学的な過増殖(hyperproliferation)の防止は、治癒しているミクロ動脈吻合(microartherial anastomoses)の内膜過形成および同種移植片の動脈内膜過形成を減らすために使用できた(Robert C,et al.1995)。平滑筋細胞の成長を静止させると、周囲細胞は冠状動脈形成術により誘導される新生内膜過形成を減らすために役立つ。膀胱または腎臓肥大および過形成も糖尿病シストパシー(cystopathy)でよく認識されている。平滑筋細胞の過増殖は、慢性および/または重篤な膀胱出口の閉塞から生じる膀胱および腎臓機能の不可逆的改変を引き起こす可能性もあった(Mumtaz FH,et al 2000)。
【0009】
【特許文献1】国際公開第0037641号パンフレット
【発明の開示】
【0010】
今、驚くべきことには、組換え完全長VEGF−XおよびCUBドメインタンパク質の両方がインビトロでヒトの大動脈平滑筋細胞に分裂促進活性(mitogenic activity)を現すことが判明し、これはCUBドメインがPDGFドメインの潜伏(latency)を維持する役割を越えて機能することを示唆している。したがって平滑筋細胞の増殖を上昇させるVEGF−XおよびCUBドメインは、運動性尿失禁、膀胱機
能不全および平滑筋細胞からなる他の括約筋の機能不全の治療に有利となり得る。VEGF−XおよびCUBドメインは、平滑筋機能を向上させるために骨盤床再構成(pelvic floor reconstruction)に使用することもできる。
【0011】
したがって本発明の第1の観点によれば、インビボまたはインビトロでの平滑筋細胞の増殖を刺激するための薬剤の製造において、VEGF−Xポリペプチドまたはそれらの機能的均等物、誘導体もしくは変異体をコードする核酸分子の使用を提供する。好ましくはVEGF−Xポリペプチドの配列は図1(a)に表す通りである。またインビボまたはインビトロでの平滑筋細胞の増殖を刺激するために、好ましくは図1(a)に表す40から150位のアミノ酸配列またはそれらの機能的均等物、誘導体もしくは変異体から成るVEGF−XのCUBドメインの使用も提供する。前述のポリペプチド、CUBドメインおよび核酸分子は、尿道機能不全、膀胱機能不全、括約筋機能不全または機能的なVEGF−XもしくはCUBドメインタンパク質の減少した発現に伴う他の疾患もしくは状態を処置し、あるいは骨盤床再構成のために薬剤としてまたは薬剤の調製にも使用することができる。本発明のさらなる観点では、インビボもしくはインビトロの組織工学的応用(tissue engineering application)のために、マトリックスに平滑筋細胞を集める(populating)ためにVEGF−XもしくはそれらのCUBドメインの使用を提供する。
【0012】
本発明のDNA分子は有利なことには適当な発現ベクター中に包含させて適当な宿主中でベクターにコードされたVEGF−Xを発現することができる。後に該細胞を形質転換し、そして続いて形質転換した細胞を選択するために、適当な発現ベクター中へクローン化されるDNAの包含は、Sambrook et al.(1989)、モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning,a
Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版に提供されているように当業者には周知である。
【0013】
本発明による発現ベクターには、該DNAフラグメントの発現を行うことができるプロモーター領域のような調節配列に操作可能に連結された本発明による核酸を有するベクターを含む。用語「操作可能に連結された」とは、記載する成分が意図する様式で機能することを可能とする関係にある並置を称する。そのようなベクターは適当な宿主細胞中で形質転換されて本発明によるポリペプチドの発現を提供することができる。
【0014】
そのような発現ベクターはまた平滑筋細胞の増殖を刺激し、そしてまた尿道機能不全、膀胱機能不全または機能的VEGF−Xタンパク質の減少した発現に伴う他の疾患を含む本発明による疾患もしくは状態の処置にも使用することができる。
【0015】
本発明によるポリペプチドは組換え体、合成または自然に存在するものでよいが、好ましくは組換え体である。同様に本発明の核酸配列は組換えまたは例えばPCRクローニングメカニズムを使用するような合成法を使用して生成することができる。
【0016】
さらなる観点によれば、本発明はポリペプチドの可溶性状態のような治療に有効な量の本発明のポリペプチド、または本発明の核酸分子、または該核酸分子を包含するベクターを製薬学的に許容される得る担体もしくは補形剤と組み合わせて含んでなる製薬学的組成物の使用を提供する。そのような担体には限定するわけではないが、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせを含む。本発明の観点による製薬学的組成物は、組織および器官中の平滑筋細胞の増殖を刺激するために使用することができ、あるいは尿道、膀胱もしくは括約筋機能不全または本発明のVEGF−Xポリペプチドの異型の(aberrant)内因的活性に伴う機能不全を処置しまたは防止するために使用することができる。
【0017】
本発明はさらに本発明の前述の組成物の1以上の材料を満たした1以上の容器を含んでなる製薬学的パックおよびキットに関する。本発明のポリペプチドおよび他の化合物は単独または治療用化合物のような他の化合物と一緒に使用することができる。
【0018】
本発明によるタンパク質またはポリペプチド(この用語は本明細書では互換的に使用する)は、本発明による核酸分子によりコードされるすべての可能なアミノ酸変異体(該分子によりコードされ、そして保存的アミノ酸の変化を有するポリペプチドを含む)を含むと本明細書では定義する。保存的なアミノ酸置換とは、タンパク質の機能または発現に影響を及ぼさないタンパク質中の1以上のアミノ酸の置き換えを称する。本発明のタンパク質またはポリペプチドはさらに本明細書において該タンパク質またはポリペプチドに実質的に相同的である自然に存在する対立遺伝子変異体を含む、そのような配列の変異体を含むと定める。これとの関連で実質的な相同性とは、本発明の核酸分子にコードされるタンパク質またはポリペプチドと少なくとも70%、好ましくは80もしくは90%、そして好ましくは95%のアミノ酸相同性を有する配列とみなす。本発明に従いタンパク質またはポリペプチドの「機能的均等物(functional equivalent)」とは、本発明の方法および使用に必要とされるようなVEGF−X活性を現す、上で認識されたすべてのアミノ酸および対立遺伝子変異体を包含する。本発明のタンパク質またはポリペプチドは、組換え体、合成または自然に存在するものでよいが、好ましくは組換え体である。
【0019】
本明細書中に定めるような本発明によるタンパク質またはポリペプチドは、該タンパク質またはポリペプチドの生物前駆体(bioprecursor)も含む。生物前駆体は生物学的プロセスで本発明により必要とされるようなVEGF−X活性を有するタンパク質またはポリペプチドに転換され得る分子である。本発明の核酸またはタンパク質はガンまたはVEGF−Xタンパク質の発現に関係する他の疾患もしくは状態を処置するために、薬剤または薬剤の調製に使用することができる。
【0020】
有利なことには本発明の核酸分子またはタンパク質は、それらの製薬学的に許容され得る担体、希釈剤または補形剤と一緒に製薬学的組成物で提供することができる。
【0021】
本発明はさらにアンチセンス技法の使用によりインビボでVEGF−Xを阻害することを対象とする。アンチセンス技法はアンチセンスDNAまたはRNAの三重−ヘリックス形成を通して遺伝子発現を制御するために使用することができ、その両方法ともポリヌクレオチドのDNAまたはRNAへの結合に基づいている。例えば本発明のタンパク質をコードする5’コード部分または成熟DNA配列を、10から50塩基対の長さのアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計するために使用する。DNAオリゴヌクレオチドは転写に関与する遺伝子の領域に相補的になるように設計し(三重−ヘリックス−Lee et al.Nucl.Acids Res.,6:3073(1979);Cooney et al.,Science,241:456(1988);およびDervan
et al.,Science,251:1360(1991)を参照にされたい)、これによりVEGF−Xの転写および生産を防止する。
【0022】
したがって本発明はアテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成(neointimal hyperplasia)、経皮的経管的冠動脈形成術後(percutaneous transluminal coronary angioplasty)の動脈のステント留置(arterial stenting)により生じる動脈形成術後の再狭窄(postangioplasty restenosis)を処置または防止するための方法も提供し、該方法は該個体に図1(a)に従う核酸分子またはそれらの相補体に高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズす
ることができるアンチセンスポリヌクレオチド分子のような、VEGF−Xポリペプチドをコードする核酸分子に対してアンチセンスなある量のポリヌクレオチド分子を、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる。
【0023】
高ストリンジェンシーの条件は一般に30℃を越える温度、典型的には37℃を越える温度、そして好ましくは45℃を越える温度を含む。ストリンジェントな塩条件は通常は1000mM未満、典型的には500mM未満、そして好ましくは200mM未満である。
【0024】
組成物は例えば全身的または経口経路による投与の経路に従い適合させることができる。好適な全身投与の形態には、注射、典型的には静脈内注射を含む。皮下、筋肉内または腹腔内のような他の注射経路を使用することもできる。
【0025】
全身投与の別の手段には胆汁酸塩またはフシジン酸または他の界面活性剤のような浸透剤を使用した経粘膜的(transmucosal)および経皮的投与を含む。さらに本発明のポリペプチドまたは他の化合物が腸溶性、またはカプセル化製剤に配合され得る場合、経口投与も可能である。これらの化合物の投与は膏薬、ペースト、ゲル等の状態で局所的および/または局在化させることもできる。
【0026】
必要な投薬用量範囲は本発明のペプチドまたは他の化合物、投与の経路の選択、製剤の性質、個体の状態の性質および医師の判断に依存する。しかし適当な投薬用量は0.1〜100mg/kg(個体)の範囲である。しかし必要な投薬用量における広い変動が、利用できる化合物の多様性および種々の投与経路で異なる効力という観点から期待される。
【0027】
例えば経口投与は静脈内注入による投与よりも高い投薬用量が必要となると予想される。これら投薬用量レベルの変動は当該技術分野で十分に理解されているように至適化のための標準的な経験的ルーチンを使用して調整することができる。
【0028】
本明細書で使用する用語「治療に有効な量」とは、望ましい処置法に従い投与した時、所望する治療的効果または応答を現すか、または所望の利益を現す本発明のVEGF−Xまたは他の活性剤(actives)の量を意味する。
【0029】
好適な治療に有効な量は、平滑筋細胞の増殖を刺激する量である。
【0030】
本明細書で使用するように「製薬学的に許容され得る」とは、毒性または安全性の立場から一般にヒトを含む哺乳動物への投与に適することを意味する。
【0031】
本発明では、VEGF−Xタンパク質は典型的には所望の治療効果が達成されるまで十分な期間投与される。本明細書で使用する用語「所望の治療効果が達成されるまで」とは、治療薬(1つまたは複数)が選択された投与スケジュールに従い、媒介される疾患または状態について得ようとする臨床的または医学的効果が医師または研究者により観察される時まで、連続的に投与されることを意味する。本発明の処置法について、化合物は骨量(bone mass)または構造に所望の変化が観察されるまで連続的に投与される。そのような場合、平滑筋細胞の増加を達成することが所望する目的である。疾患状態または状態の危険性を下げる方法について、化合物は望ましくない状態を防ぐために必要である限り連続的して投与される。
【0032】
平滑筋細胞の増殖の2以上の刺激物(stimulant)の組み合わせも本発明の範囲内であると見なす。
【0033】
「ポリヌクレオチド」とは一般にポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシヌクレオチドを称し、これは非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAでよい。「ポリヌクレオチド」には限定するわけではないが一本−および二本−鎖DNA、一本−および二本−鎖領域の混合物であるDNA、一本−および二本−鎖RNA、および一本−および二本−鎖領域の混合物であるRNA、一本−鎖またはより典型的には二本−鎖もしくは一本−および二本−鎖領域の混合であり得るDNAおよびRNAを含んでなるハイブリッド分子を含む。さらに「ポリヌクレオチド」はRNAもしくはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含んでなる三本鎖領域を称する。
【0034】
用語「ポリヌクレオチド」には1以上の修飾された塩基を含むDNAもしくはRNA、および安定性もしくは他の理由から修飾された骨格を持つDNAもしくはRNAを含む。「修飾された」塩基には例えばトリチル化塩基およびイノシンのような通常ではない塩基を含む。種々の修飾をDNAおよびRNAに施すことができ;すなわち「ポリヌクレオチド」は多くは自然に見いだされるようなポリヌクレオチドの化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態、ならびにウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はしばしばオリゴヌクレオチドと呼ばれる比較的短いポリヌクレオチドも包含する。
【0035】
「ポリペプチド」はペプチド結合または修飾ペプチド結合により互いに連結された2以上のアミノ酸を含んでなるペプチドまたはタンパク質、すなわちペプチドイソスター(isostere)を称する。「ポリペプチド」は通常はペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短鎖、および一般にはタンパク質とよばれるより長い鎖の両方を称する。ポリペプチドは20個の遺伝子にコードされるアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。
【0036】
「ポリペプチド」には翻訳後プロセッシングのような自然なプロセスにより、または当該技術分野で周知な化学的修飾技法によるいずれかで修飾されたアミノ酸配列を含む。そのような修飾は基本的なテキストおよびより詳細な小論ならびに分厚い研究論文に十分に記載されている。修飾はペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノもしくはカルボキシ末端を含むポリペプチド中の任意の場所で起こることができる。同じ型の修飾が同じかまたは異なる程度で上記ポリペプチド中の幾つかの部位に存在してよい。また上記ポリペプチドは多くの型の修飾を含むことができる。ポリペプチドはユビキチン化の結果として分岐してもよく、そしてそれらは分岐を含むかまたは含まない環状でもよい。環状、分岐化および分岐化環状ポリペプチドは、翻訳後の自然なプロセスから生じることができ、または合成法により作成することができる。修飾にはアセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有的な架橋結合の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質溶解プロセッシング、リン酸化、プレニレーション、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化(arginylation)のようなトランスファーRNAが媒介するアミノ酸のタンパク質への付加、およびユビキチン化を含む(例えばタンパク質−構造および分子的性質(PROTEIS−STRUCTUREAND MOLECULAR PROPERTIES)、第2版、T.E.Creighton、W.H.フリーマン アンド カンパニー(W.H.Freeman and Company)、ニューヨーク、1993;タンパク質の翻訳後の共有的修飾(POSTTRANSLATIONALCOVALENT MODIFICATION OF PROTEINS)、B.C.Johnson、編集、アカデミック出版、ニューヨーク、1983の中のWold,F.、翻訳後のタンパク質修飾:展望および予測(Post−tr
anslational Protein Modifications;Perspective and Prospects)、第1〜12頁;Selfter et al.,「タンパク質修飾および非タンパク質コファクターに関する分析(Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors)」、Meth Enzymol(1990)182:626−646およびRattan et al.,「タンパク質合成:翻訳後修飾および老化(Protein Synthesis:Post−translational Modification and Aging)」、Ann NYAcad Sci(1992)663:48−62を参照にされたい)。
【0037】
上記の任意の修飾を含んでなるポリペプチドは、本発明に従いタンパク質またはポリペプチドの「誘導体」と記載され得る。
【0038】
さらに本発明はVEGF−Xの生物学的活性のインヒビターを同定するためのスクリーニング法に関する。これらのインヒビターには中和化VEGF−X抗体、アンチセンスVEGF−X配列またはVEGF−Xの生物学的活性と競合する非タンパク質アンタゴニストを含む。適当な抗体は単離されたおよび/または組換え抗原またはその部分(合成ペプチドのような合成分子を含む)のような適切な免疫原に対して、あるいは組換え抗原を発現する宿主細胞に対して生じることができる。さらにトランスフェクトされた細胞のような組換え抗原を発現している細胞は免疫原として、または受容体に結合する抗体の調査に使用することができる(例えばChuntharapai et al.,J.Immunol.,152.−17831−1789(1994)を参照にされたい)。
【0039】
抗体生産細胞、好ましくは脾臓またはリンパ節の細胞は目的の抗原で免疫感作した動物から得ることができる。融合細胞(ハイブリドーマ)は選択的な培養条件を使用して単離し、そして限界希釈によりクローン化することができる。所望する特異性を持つ抗体を生産する細胞は、適当なアッセイ(例えばELISA)により選択することができる。
【0040】
したがって本発明はアテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止するための方法を提供し、この方法は該個体に図1(a)のようなVEGF−Xポリペプチドまたはそれらのエピトープに結合することができるある量の抗体を、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる。
【0041】
本発明における使用に適する抗−VEGF−X抗体は、VEGF−X受容体に対して高い親和性で結合することが特徴である。VEGF−Xに対する抗体は吸息(例えば吸入剤または噴霧または霧状にしたミストとして)により投与することができるであろう。他の投与経路には鼻内、経口、注入および/またはボーラス注射を含む静脈内、皮内、経皮(例えば緩効性ポリマー中)、筋肉内、腹腔内、皮下、局所、硬膜外、口内等の経路を含む。例えば上皮もしくは皮膚粘膜のライニング(linings)を通して吸収を達成するために、他の適当な投与経路も使用することができる。抗体は遺伝子療法により投与することもでき、ここで特定の治療用タンパク質またはペプチドをコードするDNA分子は患者に、例えばベクターを介して投与され、これにより特定のタンパク質またはペプチドをインビボにて治療的レベルで発現または分泌させる。さらに抗−VEGF−X抗体は製薬学的に許容されうる表面活性剤(例えばグリセリド)、補形剤(例えばラクトース)、担体、希釈剤および賦形剤のような生物学的に活性な薬剤の他の成分と一緒に投与することができる。抗−VEGFX抗体を個体に他の治療法または治療薬の前に、同時にまたは順次に予防的にまたは治療的に投与することができる(多剤処方(multiple drug regimens))。他の治療薬と同時に投与する抗−VEGF−X抗体は、同
じかまたは異なる組成物中で投与することができる。抗−VEGF−X抗体は製薬学的に許容されうる非経口賦形剤と共に溶液、懸濁液、乳液または凍結乾燥粉末として配合することができる。
【0042】
治療に有効な量のVEGF−X抗体は、症状および同時処置の性質および程度ならびに所望する効果のような因子に依存して、単回または分割された用量(例えば日、週または月の間隔により分離された一連の用量)で、または徐放性の形態で投与することができる。
【0043】
別の観点ではアゴニストおよびアンタゴニストに関するスクリーニングアッセイを提供し、これには候補化合物が本発明に従いVEGF−XまたはCUBドメインポリペプチドのVEGF−X受容体への結合に及ぼす効果を測定することが含まれる。特にこの方法にはVEGF−X受容体と本発明によるVEGF−XまたはCUBドメインポリペプチドおよび候補化合物とを接触させ、そしてVEGF−X受容体に結合するVEGF−XまたはCUBドメインポリペプチドが候補化合物の存在により上昇または減少するかどうかを測定することが含まれる。このアッセイでは標準的な結合に優るVEGF−XまたはCUBドメインポリペプチドの結合における上昇は、候補化合物がVEGF−XまたはCUBドメインのアゴニストであることを示す。標準に比べてVEGF−XまたはCUBドメインポリペプチドの結合の減少は、化合物がVEGF−XまたはCUBドメインのアンタゴニストであることを示す。
【0044】
本発明は以下の実施例および添付する図面を参考にすることにより、より明確に理解することができ、ここで:
【0045】
図1は(a)はPDGF−CのcDNA配列の説明である。推定されるPDGF−C翻訳産物を配列の上に表し、推定されるシグナル配列には下線を付す。推定されるmRNAスプライシング反応の位置は黒(closed)三角で示す。mRNAスプライシング反応の位置は単離されたBACクローンに関する直接的シークエンシングから、またはEMBLデータベース中の部分的BAC配列との比較(AC0015837に由来するnt.1−374の領域、2000年4月7日に出されたデータ;AC009582に由来するnt.375−571からの領域、2000年4月5日にだされたデータ)のいずれかにより推測した。イタリック体で示すnt.900−957に由来する領域に関してはスプライシング反応について利用できる情報はない。719/720および988/989(白(open)三角)での隠れた(cryptic)スプライシング供与/受容部位は、PCRにより単離した変異体配列から推測した。ポリペプチド配列中の可能性のあるN−連結グリコシル化部位をボックスで囲み、そして(b)は変異体PDGF−Cタンパク質配列であり−ポリペプチド配列は期待されたサイズよりも小さいPCRフラグメントから予測した。この領域を網羅するPCRフラグメントをクローン化し、そしてシークエンシングして隠れたスプライシング供与/受容部位を図1(a)に示した。
【0046】
図2はPDGF−Cドメインとデータベース配列との比較の説明である:
(A)PDGF−CのPDGFドメインを他のヒトPDGFおよびVEGFのPDGFドメインと並べた
(B)PDGF−CのCUBドメインをBMPおよびニューロフィリン(neuropilin)のCUBドメインと並べた;タンパク質は示すようにX.レビス(X.laevis)、マウスまたはニワトリに由来する。
【0047】
すべてのドメインの配列はPFAMAデータベース(Rocchigiani,M.et al,(1998)Genomics 47,204−216)から取り、そしてCLUSTALW整列プログラム(EMBL、ハイデルべルク、ドイツ)を使用して並べた
。表1は図2に示すタンパク質の領域の比較結果をまとめる。これらの比較から、他のデータベース配列に対するCUBドメインの類似性の程度は、PDGFドメインよりも高いことが明らかである。
【0048】
図3はPDGF−CのmRNA発現から得られた結果の説明である:
(A)組織およびガン細胞系のPDGF−C mRNA分布のノーザンブロット分析。β−アクチン cDNAプローブを使用した対照のハイブリダイゼーションは、各レーンに等量のmRNAが存在することを示した。PDGF−CmRNAの位置を示す。
(B)組織およびガン細胞系に由来するcDNAのPCR分析。グリセルアルデヒド−3−ホスフェート デヒドロゲナーゼのcDNAの部分を増幅するために設計したプライマーを使用した対照は、等量の各cDNAが増幅反応に存在することを示した(データは示さず)。
【0049】
図4はPDGF−C(VEGF−X)座のFISHマッピングにより得られた結果の具体的説明である−1例を示す:左パネルはヒト染色体上のFISHシグナルを示し、右はヒトの染色体4を同定するために4’’−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した同じ有糸分裂的図である。また図式的な要約も示す:各ドットは染色体4で検出された二重FISHシグナルを表す。
【0050】
図5はPDGF−C組換えタンパク質の性質の説明である。
(A)グリコシル化および鎖間ジスルフィド形成。ティ.ニー(T.ni)Hi5細胞は完全長のPDGF−Cを発現するバキュロウイルスで感染させた。バキュロウイルスで感染した昆虫細胞培地のサンプルを以下のように処理した:レーン1−酵素バッファー+N−グリコシダーゼF;レーン2−酵素バッファー、N−グリコシダーゼFは加えず;レーン3−還元型;レーン4−非還元型。ウエスタンブロッティング後の検出は導入されたC−末端エピトープタグを検出するために抗His6抗体を使用した。
(B)ヘパリン結合。精製した大腸菌(E.coli)に由来する完全長のMBP融合タンパク質をSDS−PAGEにかけ、そしてゲルをクーマシーブルーで染色した。レーン1−ヘパリンカラムにのせた画分、レーン2カラム洗浄、レーン3−高塩溶出。
(C)完全長およびCUBドメイン−大腸菌(E.coli)中で生産したPDGF−C完全長融合タンパク質(レーン1)およびCUBドメイン(レーン2)のサンプルのクーマシー染色したSDS−PAGE。CUBドメインは不溶性材料のリホールディング(refolding)により生成された;20および25Kdaで両主要バンドが抗−His6抗体を使用したウエスタンブロット実験で検出されるので、25KDa種は非開裂シグナルペプチドを含むと推測される。分子量標準は左にkDaで示す。
【0051】
図6はヒト冠状動脈平滑筋細胞の増殖に対するPDGF−C(VEGF−X)またはPDGF−CUBドメイン効果のグラフ表示である。細胞は示した濃度の大腸菌(E.coli)由来CUBまたは完全長PDGF−Cタンパク質で処理した。
【実施例】
【0052】
材料および方法
VEGF−XのcDNAおよび部分的なゲノムクローニング
既知のVEGF配列(VEGF−A、B、CおよびD)中のPDGF−様ドメインに基づき1つのプロフィールを作り(Lee et al.,1996)、そしてLifeSeq(商標)ヒトESTデータベース(インサイト ゲノミックス社(Incyte Genomics Inc.)、パロアルト、カリフォルニア州、米国)を調査するために使用した。調査ではVEGFファミリーの有力な新規員の部分配列が明らかとなった。cDNA配列を広げるために、5’をMarathon−Readyae胎盤および骨格筋cDNAを使用して行った(クローンテック(Clontech)、パロアルト、カリフ
ォルニア州、米国)。次いで完全なコード配列は標準的なポリメラーゼ連鎖反応法を使用して増幅した(Fritz et al.,1997)。PCRフラグメントをベクターpCR2.1(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、カリフォルニア州、米国)またはpCR2.1−TOPO(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア州、米国)にクローン化した。コード配列を決定するために、多数のクローンを配列決定した;またすべてのサブクローンをDNAシークエンシングにより確認した。部分的なゲノムクローンを得るために、ヒトゲノムのBACライブラリー(ゲノムシステムズ社(Genome Systems Inc.)、セントルイス、ミシガン州、米国)を、PDGF−C cDNA配列から派生したオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。イントロン/エキソン境界を決定するために、BACDNAは既知のcDNA配列に基づく20−merのシークエンシングプライマーを使用して直接配列決定した。BAC DNAはキアゲン(Qiagen)プラスミドmidiキット(キアゲン社、デュッセルドルフ、ドイツ)を使用して調製した。
【0053】
VEGF−X遺伝子の染色体位置推定
染色体マッピング実験は、シーDNAバイオテック社(See DNA Biotech Inc.)(トロント、カナダ)により、すでに記載されたように(Yamada et al.,1997;Gribsteor et al.,1987,Ausabel et al.,1997)、ビオチン化された2.7kbプローブを用いたFISH分析を使用して行った。
【0054】
ノーザンブロットおよびRT−PCRによるVEGF−X mRNA発現の分析
異なるヒト組織(クローンティック ラボラトリーズ;MTN(商標)ブロット、MTN(商標)ブロットIIおよびガン細胞系MTN(商標)ブロット)に由来する2μのpoly(A)+リッチRNAを含むノーザンブロットは、a−[32P]−dCTPランダム−プライミングで標識した(Multiprimeラベリングキット、ロッシュダイアグノスティックス(Roche Diagnostics))293bpの特異的PDGF−Cフラグメント(PDGF−Cの92bpの3’末端コード領域および201bpの3’非翻訳領域を含むPinAIStuIフラグメント)とハイブリダイズさせた。ブロットは68℃で一晩ハイブリダイズさせ、そして高ストリンジェンシーでの最終的な洗浄は68℃で0.1×/0.1% SDSであった。膜は1〜3日間、増感スクリーンを用いてオートラジオグラフィーにかけた。RT−PCR分析に関しては、オリゴヌクレオチドプライマーGTTTGATGAAAGATTTGGGCTTGおよびCTGGTTCAAGATATCGAATAAGGTCTTCCをPDGF−Cに由来する350bpのフラグメントの特異的なPCR増幅について使用した。PCR増幅は、6種の異なるハウスキーピング遺伝子のmRNA発現レベルに対して標準化されたヒトの多数の組織のcDNA(MTC(商標))パネル(クローンテックのヒトMTCパネルIおよびIIならびにヒト腫瘍MTCパネル)について行った。さらにcDNAは異なる腫瘍細胞カルチャーから作成した(Caco−2結腸直腸腺ガン;T−84結腸直腸ガン;MCF−7胸部腺ガン;T−47D胸部管腺ガン;HT1080骨繊維ガン;SaOS−2 骨肉腫;SK−N−MC神経芽腫;HepG2悪性ヘパトーマ;JURKATT−細胞白血病およびTHP−1骨髄単球性白血病)。腫瘍細胞のcDNAの調製については、細胞を均一化し、そして全RNAはRNeasy Miniキット(キアゲン社、ヒルデン、ドイツ)を使用して調製した。1μの全RNAはプライマーとしてoligo(dT)15および50UのExpand(商標)逆転写酵素(ロッシュ ダイアグノスティックス、マンハイム、ドイツ)を使用して逆転写した。PDGF−C−特異的またはグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(G3PDH)−特異的プライマーを用いたPCR反応を1μのこのcDNAについて行った。すべてのcDNAに関して、PDGF−C特異的プライマーを用いたPCR反応は50μの総容量で行った。サンプルは95℃で30秒加熱し、そしてサイクリングは95℃で30秒および68℃で30秒を25、30または
35サイクル行った。ハウスキーピング遺伝子G3PDHの1kbのフラグメントを増幅する特異的プライマーを用いた対照反応も行った。
【0055】
組換えタンパク質の発現、精製および検出
哺乳動物細胞の発現には、完全なコード配列を増幅し、そして検出および精製を援助するためのC−末端Hisペプチドタグを付加するために、ベクターpcDNA6/V5−His(インビトロゲン、リーク、オランダ)にクローン化した。大腸菌(E.coli)発現には、予想される成熟タンパク質のコード領域(Glu23−Gly345)をPCR増幅してC−末端Hisタグを付加し、そして次いでベクターpMAL−p2(ニューイングランドバイオラボス(New England Biolabs)、ベヴァリー、マサチューセッツ州、米国)にクローン化した。生じたMBP融合タンパク質を最初にニッケルキレート樹脂(Ni−NTA)、キアゲン社、デュッセルドルフ、ドイツ)で精製し、そして次にアミロース樹脂(ニューイングランドバイオラボス、ベヴァリー、マサチューセッツ州)で精製した。PDGF−C(Glu23−Val1171)のCUBドメインフラグメントをコードするDNA配列をPCR増幅してN−末端Hisタグを付加し、そして次いで大腸菌(E.coli)中での分泌のためにpET22b(ノバジェン(Novagen)、マジソン、ウィスコンシン州)にクローン化した。CUBドメインタンパク質はペリプラズムからまたは標準的な方法(Fitz et al.,1997)により誘導したカルチャーの無細胞培地のいずれかから調製した。タンパク質は最初に20%飽和の硫酸アンモニウム沈殿により精製した。硫酸アンモニウムを除去するために20mMTris pH8.0,300mM NaClに対して一晩透析した後、タンパク質をさらにニッケルキレート樹脂で上記のように精製した。タンパク質グリコシル化の分析をN−グリコシダーゼF(ロッシュ モレキュラー バオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)、ブリュッセル、ベルギー)を使用して行った。ヘパリンSepharoseカラム(HiTrap、アマーシャム ファルマシアバイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)、ウプサラ、スウェーデン)を製造元の使用説明に従い使用した。細胞に基づくアッセイで使用する前に、タンパク質サンプルをエンドトキシンの混入について市販されているキット(COATEST(商標)エンドトキシン、クロモゲニックス(Chromogenix)社、スウェーデン)を使用して試験した。
【0056】
細胞培養
ヒトの臍静脈内皮細胞(HUVEC)(クローンティックス(Clonetics)、サンディエゴ、カリフォルニア州)をEGM−2成長培地(クローンティックス、サンディエゴ、カリフォルニア州)で維持し、そしてヒト骨格筋細胞(SkMC)(クローンティックス、サンディエゴ、カリフォルニア州)を骨格筋成長培地(クローンティックス、サンディエゴ、カリフォルニア州)中で培養した。HCASM(クローンティックス、サンディエゴ、カリフォルニア州)、ラット心臓の心筋H9c2(アメリカンタイプ セル
コレクション、ロックビル、メリーランド州)、およびヒト新生児の皮膚繊維芽細胞(39−SK)(アメリカン タイプ セル コレクション、ロックビル、メリーランド州)を含む細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)(ハイクローン(HyClone)、ロガン、ユタ州)、6mM Hepes、50I.U./mlのペニシリンおよび50μのストレプトマイシンを補充したダッベッコの改良イーグル培地(DMEM)(ギブコ(Gibco)、ゲチスバーグ、メリーランド州)で維持した。細胞は4〜6継代の間で使用した。ヒトの骨芽細胞(MG63)(アメリカンタイプ セル コレクション、ロックビル、メリーランド州)は、10%FBS、100 U/mlのペニシリンおよび100μのストレプトマイシンを補充したDMEMで維持した。初代軟骨細胞はすでに記載されているように(Masure et al.,1998)ウシの肩から単離した。初代ウシ軟骨細胞は10%FBS、10mM HEPES、0.1mM非必須アミノ酸、20μL−プロリン、50μアスコルビン酸、100μペニシリン、100μストレプトマイシン
および0.25μアンホテリシンBを補充したDMEM(高グルコース)(軟骨細胞成長培地)中で培養した。すべての細胞培養は37℃の加湿インキュベーター中、5%COおよび95%空気の雰囲気下で行った。
【0057】
細胞増殖アッセイ
HUVECを0.05%トリプシン/0.53mMEDTA(ギブコ、ゲチスバーグ、メリーランド州)でトリプシン処理し、そして5,000細胞/ウェルで96−ウェルの組織培養プレートに分配した。細胞接着および単層の形成後(16時間)、細胞を種々の濃度のVEGF−X(示すような0.5%〜2%FBSを含有するDMEM中)で刺激した。ヒト皮膚の繊維芽細胞については、成長培地を種々の濃度のVEGF−Xを含むかまたは含まずに0.1%BSAを含有するDMEMに置き換えた。MG63、ヒトSkMC、H9c2またはHCASMCについては、培地を0.5%FBSを含有するDMEMに置き換えた。ウシ軟骨細胞は10% FBSを補充した高グルコースDMEM培地中、5,000細胞/ウェルで96−ウェルの組織培養プレートにまき、そして72時間付着させた。培地は2日間の処理無し、または有りで2%BSAを含有するDMEMに置き換えた。試験したすべての細胞について、処置を含むインキューベーションの後、培養基を100mlのDMEM(5% FBSおよび3μの[H]−チミジンを含有する)に置き換えた。パルス標識後、細胞をメタノール/酢酸(3:1、容量/容量)で室温にて1時間固定した。細胞は250ml/ウェルの80%メタノールで2回洗浄した。細胞を0.05%トリプシン(100ml/ウェル)で30分間可溶化し、次いで0.5%SDS(100ml/ウェル)でさらに30分間可溶化した。細胞溶解物(180ml)のアリコートを2mlのシンチレーションカクテルと合わせ、そして細胞溶解物の放射活性を液体シンチレーションカウンター(ウァラック(Wallac)1409)を使用して測定した。
【0058】
PDGF−C遺伝子の染色体位置推定およびイントロン/エキソン構造
VEGF−Xは、FISH分析によりヒト染色体4の長腕上、領域q31−q32に位置した(図2)。このプローブに関するハイブリダイゼーション効率は〜70%であった。データベースの調査ではVEGF−X配列を持つ2つのゲノムBACクローンが同定された(EMBL寄託番号AC009582およびAC015837)。これらのBACクローンは染色体4に由来し、FISHデータを支持していた。
【0059】
cDNAの3’部分を含む1つのBACクローンを単離した。このクローンの直接的シークエンシングにより、cDNAのPDGFドメイン領域中のスプライシング反応(splicing event)の位置を推定することができた(図1のnt.1179/1180位)。このスプライシング部位の位置はVEGF−AおよびVEGF−Dに関して保存されている(Heng et al.,1993、Hagen et al.,1994)。図1に示す他のスプライシング部位の位置は、上記のデータベースBACクローンAC009582およびAC015837の配列から推定した。
【0060】
VEGF−XおよびCUBドメインの試験のまとめ
VEGF−XまたはCUBドメインのいずれもヒト皮膚繊維芽細胞、ヒト臍静脈内皮細胞、ウシ軟骨細胞またはヒト骨芽細胞(MG63)の増殖を上昇させなかった。しかし完全長およびCUBドメインコンストラクトの両方がヒトの冠動脈平滑筋細胞の増殖を用量依存的様式で刺激することができた(図6)。最適な刺激濃度は1〜10μの範囲であった。完全長およびCUBドメイン構築物の両方の効果は試験した最高濃度で、対照レベルの4倍であった(図6)。我々はCUBドメインの、ヒト骨格筋細胞またはラット心臓の心筋のような他の筋肉細胞型に対する分裂促進活性を認識しなかった(データは示さず)。第3システインの削除またはセリン残基への変異後、我々はCUBドメインのヒトの冠動脈平滑筋細胞に対する分裂促進活性が最高濃度(10μ)で約半分に減少したことを見
いだした(データは示さず)。
【0061】
【表1】

【0062】
比較は図2に示すタンパク質の領域間であり、Genedocプログラム(http://www.cris.com/〜Ketchup/genedoc.shtml)で算出した。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
以下に本発明の主な特徴と態様を列記する。
【0068】
1.組織および器官中の平滑筋細胞の増殖を刺激するための薬剤の製造における、図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体、あるいは該核酸分子、ベクターまたは該VEGF−Xポリペプチドのいずれかを含んでなる製薬学的組成物の使用。
【0069】
2.尿道機能不全、膀胱機能不全、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための、あるいは骨盤床の再構成のための薬剤の製造における、図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子のいずれか、該核酸を含んでなる発現ベクター、あるいは図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体、あるいは該核酸分子ベクターまたはVEGF−Xポリペプチドのいずれかを含んでなる製薬学的組成物の使用。
【0070】
3.組織および/または器官中の平滑筋細胞の増殖を刺激するための薬剤の製造における、図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−XポリペプチドのCUBドメインまたはその機能的均等物もしくは誘導体、あるいは該CUBドメインまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクターの使用。
【0071】
4.上記CUBドメインが図1(a)に表すアミノ酸配列の40から150位のポリペプチドを含んでなる上記3に記載の使用。
【0072】
5.尿道機能不全、膀胱機能不全、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための、あるいは骨盤床の再構成のための薬剤の製造における、図1(a)に従うVEGF−XポリペプチドのCUBドメイン、または該CUBドメインまたはその機能的均等物もしくは誘導体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、該核酸分子もしくは該CUBドメインを含んでなる製薬学的組成物の使用。
【0073】
6.個体において組織または器官の平滑筋細胞の増殖を刺激するか、または組織修復を刺激する方法であって、該個体にある量の図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−XポリペプチドをコードするVEGF−X核酸分子、または図1(a)のVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体を、平滑筋細胞の増殖を刺激するために十分な濃度で投与することを含んで成る上記方法。
【0074】
7.尿道機能不全、膀胱機能不全、骨盤床再構成、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための方法であって、個体に図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体、該ポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、および任意の該核酸分子または該ポリペプチドを含んでなる製薬学的組成物から選択されるある量の群を投与することを含んでなる上記方法。
【0075】
8.治療に有効な量の図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体、該ポリペプチドを製薬学的に許容されうる担体、希釈剤または補形剤と一緒に含んでなる製薬学的組成物を適用することによる、尿道機能不全、膀胱機能不全を処置するため、または骨盤床再構成のため、括約筋機能不全またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置するための方法。
【0076】
9.個体における組織または器官および組織修復中の平滑筋細胞の増殖を刺激する方法であって、該個体にある量の図1(a)に表すヌクレオチド配列の40から150位の配列を含んでなるVEGF−XポリペプチドのCUBドメインまたはその機能的均等物もしくは誘導体を、平滑筋細胞の増殖を刺激するために十分な濃度で投与することを含んでなる上記方法。
【0077】
10.尿道機能不全、膀胱機能不全、骨盤床再構成、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための方法であって、該個体に図1(a)に表すアミノ酸配列の40から150位の配列を含んでなるCUBドメインまたはその機能的均等物もしくは誘導体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、ならびに該核酸分子および該CUBドメインのいずれかを含んでなる製薬学的組成物から選択されるある量の群を投与することを含んでなる上記方法

【0078】
11.尿道機能不全、膀胱機能不全を処置するため、または骨盤床再構成のため、括約筋機能不全またはCUBドメインポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置するための方法であって、治療に有効な量の図1(a)に表すアミノ酸配列の40から150位のポリペプチドを含んでなるCUBドメインまたはその機能的均等物もしくは誘導体、該CUBドメインおよびそれらの製薬学的に許容され得る担体、希釈剤または補形剤を含んでなる製薬学的組成物を適用することを含んでなる上記方法。
【0079】
12.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止するための薬剤の製造における、図1(a)に従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたはそれらのエピトープに結合することができる抗体の使用。
【0080】
13.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止する方法であって、該個体に図1(a)に従うVEGF−Xポリペプチドをコードする核酸分子またはその相補体に高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができるある量のアンチセンスポリヌクレオチド分子を、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる上記方法。
【0081】
14.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止する方法であって、該個体に図1(a)に従うVEGF−Xポリペプチドのある量のアンタゴニストを、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる上記方法。
【0082】
15.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止する方法であって、該個体に図1(a)に従うVEGF−Xポリペプチドまたはそれらのエピトープに結合することができるある量の抗体を、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる上記方法。
【0083】
16.個体の病理学的状態または病理学的状態に対する罹病性を診断する方法であって:(a)生物学的サンプル中の図1(a)に従うVEGF−Xポリペプチドまたはその受容体中における突然変異の存在または不存在を決定し:そして
(b)VEGF−Xポリペプチドまたはその受容体の発現の程度に基づき、病理学的状態または病理学的状態に対する罹病性を診断する、
ことを含んでなる上記方法。
【0084】
17.平滑筋細胞の増殖を抑制または強化する化合物を同定する方法であって、VEGF−X受容体を発現している細胞を図1(a)に従うVEGF−Xポリペプチドの存在下で該化合物と接触させ、そして該化合物とは接触させられなかった細胞と比べた時、該化合物が該細胞に及ぼす効果をモニタリングすることを含んでなる上記方法。
【0085】
18.図1(a)に従うVEGF−Xポリペプチドのアンタゴニスト、または該ポリペプチドをコードする核酸分子に対するアンチセンス分子、または該VEGF−Xポリペプチドもしくはそのエピトープに結合することができる中和抗体の直接的送達法であって、該アンタゴニスト、アンチセンス分子または抗体を伸張傷害(stretchinjury
)後の新生内膜過形成を制限するために塞栓切除カテーテルのバルーンチップを介して投与することを含んでなる上記方法。
【0086】
19.組織および器官における平滑筋細胞の増殖を刺激するための薬剤の製造における、VEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子、該核酸を含んでなる発現ベクター、VEGF−Xポリペプチドまたはそれらの機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体、あるいは該核酸分子または該VEGF−Xポリペプチドのいずれかを含んでなる製薬学的組成物の使用。
【0087】
20.尿道、膀胱または括約筋の機能不全、あるいはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための、あるいは骨盤床の再構成のための薬剤の製造における、VEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子、該核酸を含んでなる発現ベクター、VEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体、あるいは該核酸分子または該VEGF−Xポリペプチドのいずれかを含んでなる製薬学的組成物の使用。
【0088】
21.組織および/または器官における平滑筋細胞の増殖を刺激するための薬剤の製造における、VEGF−XポリペプチドのCUBドメイン、または該CUBドメインまたはその機能的均等物もしくは誘導体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、該CUBドメイン、核酸分子もしくは発現ベクターのいずれかを含んでなる製薬学的組成物の使用。
【0089】
22.上記CUBドメインが図1(a)に表すアミノ酸配列の40から150位のポリペプチドを含んでなる上記21に記載の使用。
【0090】
23.尿道、膀胱または括約筋の機能不全、あるいはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための、あるいは骨盤床の再構成のための薬剤の製造における、VEGF−XポリペプチドのCUBドメイン、または該CUBドメインもしくはその機能的均等物もしくは誘導体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、該CUBドメイン、核酸分子または発現ベクターのいずれかを含んでなる製薬学的組成物の使用。
【0091】
24.個体において組織または器官の平滑筋細胞の増殖を刺激するか、または組織修復を刺激する方法であって、該個体にある量のVEGF−Xポリペプチドをコードする核酸分子、またはVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体を、平滑筋細胞の増殖を刺激するために十分な濃度で投与することを含んで成る上記方法。
【0092】
25.尿道機能不全、膀胱機能不全、骨盤床再構成、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止する方法であって、該個体にVEGF−Xポリペプチド、該ポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、および該核酸分子または該ポリペプチドのいずれかを含んでなる製薬学的組成物から選択されるある量の群を投与することを含んでなる上記方法。
【0093】
26.治療に有効な量のVEGF−Xポリペプチドまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体、該ポリペプチドを製薬学的に許容されうる担体、希釈剤または補形剤と一緒に含んでなる製薬的組成物を適用することによる、尿道機能不全、膀胱機能不全、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置するため、または骨盤床再構成のための方法。
【0094】
27.個体において組織または器官および組織修復中の平滑筋細胞の増殖を刺激する方法であって、該個体にある量のVEGF−XポリペプチドのCUBドメインまたはその機能的均等物もしくは誘導体を、平滑筋細胞の増殖を刺激するために十分な濃度で投与することを含んで成る上記方法。
【0095】
28.尿道機能不全、膀胱機能不全、骨盤床再構成、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止する方法であって、該個体にCUBドメインまたはその機能的均等物、誘導体もしくは生物前駆体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、および該核酸分子および該CUBドメインのいずれかを含んでなる製薬学的組成物から選択されるある量の群を投与することを含んでなる上記方法。
【0096】
29.治療に効果的な量のCUBドメイン、該CUBドメインポリペプチドまたはその機能的均等物もしくは誘導体および製薬学的に許容されうるそれらの担体、希釈剤または補形剤を含んでなる製薬的組成物のいずれかを適用することを含んでなる、尿道機能不全、膀胱機能不全、括約筋機能不全、またはCUBドメインポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置するため、または骨盤床再構成のための方法。
【0097】
30.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止するための薬剤の製造における、VEGF−Xポリペプチドまたはそのエピトープに結合することができる抗体の使用。
【0098】
31.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止する方法であって、該個体にVEGF−Xポリペプチドをコードする核酸分子に対するある量のアンチセンス分子を、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる上記方法。
【0099】
32.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止する方法であって、該個体にVEGF−Xポリペプチドのある量のアンタゴニストを、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる上記方法。
【0100】
33.アテローム硬化症、動脈吻合またはバルーンカテーテルにより生じる新生内膜過形成、経皮的経管的冠動脈形成術後の動脈のステント留置により生じる動脈形成術後の再狭窄を処置または防止する方法であって、該個体にVEGF−Xポリペプチドまたはそのエピトープに結合することができるある量の抗体を、該障害を処置または防止するために十分な濃度で投与することを含んでなる上記方法。
【0101】
34.個体の病理学的状態または病理学的状態に対する罹病性を診断する方法であって:(a)生物学的サンプル中のVEGF−Xポリペプチドまたはその受容体中における突然変異の存在または不存在を決定し:そして
(b)VEGF−Xポリペプチドまたはその受容体の発現の程度に基づき、病理学的状態または病理学的状態に対する罹病性を診断する、
ことを含んでなる上記方法。
【0102】
35.平滑筋細胞の増殖を抑制または強化する化合物を同定する方法であって、VEGF
−X受容体を発現している細胞をVEGF−Xポリペプチドの存在下で該化合物と接触させ、そして該化合物とは接触させられなかった細胞と比べた時、該化合物が該細胞に及ぼす効果をモニタリングすることを含んでなる上記方法。
【0103】
36.VEGF−Xポリペプチドのアンタゴニスト、または該ポリペプチドをコードする核酸分子に対するアンチセンス分子、または該VEGF−Xポリペプチドもしくはそれらのエピトープに結合することができる中和抗体の直接的送達法であって、該アンタゴニスト、アンチセンス分子または抗体を伸張傷害後の新生内膜過形成を制限するために塞栓切除カテーテルのバルーンチップを介して投与することを含んでなる上記方法。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は(a)はPDGF−CのcDNA配列の説明である。推定されるPDGF−C翻訳産物を配列の上に表し、推定されるシグナル配列には下線を付す。推定されるmRNAスプライシング反応の位置は黒(closed)三角で示す。mRNAスプライシング反応の位置は単離されたBACクローンに関する直接的シークエンシングから、またはEMBLデータベース中の部分的BAC配列との比較(AC0015837に由来するnt.1−374の領域、2000年4月7日に出されたデータ;AC009582に由来するnt.375−571からの領域、2000年4月5日にだされたデータ)のいずれかにより推測した。イタリック体で示すnt.900−957に由来する領域に関してはスプライシング反応について利用できる情報はない。719/720および988/989(白(open)三角)での隠れた(cryptic)スプライシング供与/受容部位は、PCRにより単離した変異体配列から推測した。ポリペプチド配列中の可能性のあるN−連結グリコシル化部位をボックスで囲み、そして(b)は変異体PDGF−Cタンパク質配列であり−ポリペプチド配列は期待されたサイズよりも小さいPCRフラグメントから予測した。この領域を網羅するPCRフラグメントをクローン化し、そしてシークエンシングして隠れたスプライシング供与/受容部位を図1(a)に示した。
【図2】図2はPDGF−Cドメインとデータベース配列との比較の説明である:(A)PDGF−CのPDGFドメインを他のヒトPDGFおよびVEGFのPDGFドメインと並べた(B)PDGF−CのCUBドメインをBMPおよびニューロフィリン(neuropilin)のCUBドメインと並べた;タンパク質は示すようにX.レビス(X.laevis)、マウスまたはニワトリに由来する。すべてのドメインの配列はPFAMAデータベース(Rocchigiani,M.et al,(1998)Genomics 47,204−216)から取り、そしてCLUSTALW整列プログラム(EMBL、ハイデルべルク、ドイツ)を使用して並べた。表1は図2に示すタンパク質の領域の比較結果をまとめる。これらの比較から、他のデータベース配列に対するCUBドメインの類似性の程度は、PDGFドメインよりも高いことが明らかである。
【図3】図3はPDGF−CのmRNA発現から得られた結果の説明である:(A)組織およびガン細胞系のPDGF−C mRNA分布のノーザンブロット分析。β−アクチン cDNAプローブを使用した対照のハイブリダイゼーションは、各レーンに等量のmRNAが存在することを示した。PDGF−C mRNAの位置を示す。(B)組織およびガン細胞系に由来するcDNAのPCR分析。グリセルアルデヒド−3−ホスフェート デヒドロゲナーゼのcDNAの部分を増幅するために設計したプライマーを使用した対照は、等量の各cDNAが増幅反応に存在することを示した(データは示さず)。
【図4】図4はPDGF−C(VEGF−X)座のFISHマッピングにより得られた結果の具体的説明である−1例を示す:左パネルはヒト染色体上のFISHシグナルを示し、右はヒトの染色体4を同定するために4’’−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した同じ有糸分裂的図である。また図式的な要約も示す:各ドットは染色体4で検出された二重FISHシグナルを表す。
【図5】図5はPDGF−C組換えタンパク質の性質の説明である。(A)グリコシル化および鎖間ジスルフィド形成。ティ.ニー(T.ni)Hi5細胞は完全長のPDGF−Cを発現するバキュロウイルスで感染させた。バキュロウイルスで感染した昆虫細胞培地のサンプルを以下のように処理した:レーン1−酵素バッファー+N−グリコシダーゼF;レーン2−酵素バッファー、N−グリコシダーゼFは加えず;レーン3−還元型;レーン4−非還元型。ウエスタンブロッティング後の検出は導入されたC−末端エピトープタグを検出するために抗His6抗体を使用した。(B)ヘパリン結合。精製した大腸菌(E.coli)に由来する完全長のMBP融合タンパク質をSDS−PAGEにかけ、そしてゲルをクーマシーブルーで染色した。レーン1−ヘパリンカラムにのせた画分、レーン2カラム洗浄、レーン3−高塩溶出。(C)完全長およびCUBドメイン−大腸菌(E.coli)中で生産したPDGF−C完全長融合タンパク質(レーン1)およびCUBドメイン(レーン2)のサンプルのクーマシー染色したSDS−PAGE。CUBドメインは不溶性材料のリホールディング(refolding)により生成された;20および25Kdaで両主要バンドが抗−His6抗体を使用したウエスタンブロット実験で検出されるので、25KDa種は非開裂シグナルペプチドを含むと推測される。分子量標準は左にkDaで示す。
【図6】図6はヒト冠状動脈平滑筋細胞の増殖に対するPDGF−C(VEGF−X)またはPDGF−CUBドメイン効果のグラフ表示である。細胞は示した濃度の大腸菌(E.coli)由来CUBまたは完全長PDGF−Cタンパク質で処理した。
【図1A】

【図1A(a)】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道機能不全、膀胱機能不全、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための、あるいは骨盤床の再構成のための薬剤の製造における、
以下に示す図1A
【表1】

のアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたは該ポリペプチドと少なくとも70%のアミノ酸相同性を有するその変異体をコードする核酸分子、該核酸を含んでなる発現ベクター、あるいは上記図1Aに従うアミノ酸配列を含んでなるVEGF−Xポリペプチドまたは該ポリペプチドと少なくとも70%のアミノ酸相同性を有するその変異体、あるいは該核酸分子ベクターまたはVEGF−Xポリペプチドのいずれかを含んでなる製薬学的組成物、の使用。
【請求項2】
尿道機能不全、膀胱機能不全、括約筋機能不全、またはVEGF−Xポリペプチドの異型の内因的活性に伴う機能不全を処置または防止するための、あるいは骨盤床の再構成のための薬剤の製造における、
以下に示す図1A
【表2】

のアミノ酸40から150位から成るCUBドメインポリペプチドまたは該ポリペプチドと少なくとも70%のアミノ酸相同性を有するその変異体をコードする核酸分子、該核酸分子を含んでなる発現ベクター、該核酸分子のいずれかを含んでなる製薬学的組成物または該CUBドメインポリペプチド、の使用。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−91367(P2009−91367A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301062(P2008−301062)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【分割の表示】特願2002−571086(P2002−571086)の分割
【原出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】