説明

平版印刷版供給装置

【課題】 簡単な構成で、平版印刷版及び合紙の積層束から平版印刷版と合紙とを確実に1組ずつ取り出すことの可能な平版印刷版供給装置を得る。
【解決手段】 ピックアップローラ42は、円柱状の軸部42Aの外周にブロック輪43が取り付けられて構成されている。ブロック輪43は、輪状とされ、ピックアップローラ42の外周に沿って等間隔に配置された複数のブロック43Aを備えている。ブロック43Aは略直方体状とされ、ピックアップローラ42の軸方向に沿って中空43Bが形成されている。ブロック43Aは、弾性変形可能とされており、ピックアップローラ42から平版印刷版20への押圧力により弾性変形してつぶれ、平版印刷版20と、平版印刷版20の先端角部を含んだ接触領域N1で接触される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版供給装置に関し、さらに詳しくは、平版印刷版と合紙とを交互に積層した積層束から、平版印刷版と合紙とを1組枚ずつ供給する平版印刷版供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版には、その画像記録面に保護用の合紙が密着され、さらにこれらが厚み方向に複数積層されて平版印刷版の版束が構成されることが多い。そして、平版印刷版に露光装置等で画像記録する場合には、この版束から平版印刷版を1枚ずつ取り出して露光装置に供給する必要がある。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の画像記録材料枚葉装置では、枚葉搬送部のカセットに印刷版と合紙とが交互に積層されて収容されており、吸盤が合紙の上から合紙と平版印刷版とを吸着して上昇し、カセットから持ち出すようになっている。持ち出された後、合紙がファンによって吸引された印刷版から分離される。しかし、この構成では、印刷版を供給するために吸盤を使用しているため構成が複雑になり、コストも高くなるおそれがある。
【0004】
これに対し、特許文献2には、合紙はローラで送り出し、平版印刷版はバキュームパッドで送り出す構成が記載されている。しかしながら、この構成では、平版印刷版又は合紙を1枚ずつ取り出すために、合紙を取り出した後でないと次の平版印刷版を取り出すことができず、供給に時間を要する。しかも、平版印刷版と合紙とで別々の取り出し機構が必要になるため、部品点数が増大し、装置の大型化や高コストを招くおそれがある。
【0005】
そこで、ローラで1組の平版印刷版と合紙とを搬送する(重送)方法が考えられるが、平版印刷版間への空気の流入により、平版印刷版のみが合紙と分離されて搬送されたり(単送)、2組の合紙と平版印刷版が搬送されてしまったり(多重送)してしまう。
【特許文献1】特開2003−182904号公報
【特許文献2】特開昭60−202028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、簡単な構成で、平版印刷版及び合紙の積層束から平版印刷版と合紙を確実に1組ずつ取り出すことの可能な平版印刷版供給装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の平版印刷版供給装置は、平版印刷版と合紙とが交互に積層された積層束を押圧しつつ回転することで摩擦により最上部の平版印刷版と合紙とを重送する搬送ローラを有し、この搬送ローラの外周に、押圧することにより弾性変形し、弾性変形前よりも平版印刷版との接触領域が広くなる凸部を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の平版印刷版供給装置では、搬送ローラが積層束を押圧しつつ回転して平版印刷版と合紙を搬送する。このため、平版印刷版の供給時間が短縮される。
【0009】
ところで、空気中の水分量と合紙の含水分量とに差が生じると合紙にシワが発生し、このシワにより、積層された平版印刷版間に空気が入り込んで、合紙と平版印刷版との間の摩擦力が低減する。そうすると、空気が多く入り込んだ隙間を境にして上方の平版印刷版が搬送されてしまうため、2枚の平版印刷版が搬送される多重送や合紙と分離されて平版印刷版のみが搬送される単送が生じてしまい、1組の平版印刷版と合紙を搬送することができない。
【0010】
また、合紙のシワを伸ばすために積層束への押圧力を大きくすると、平版印刷版の先端が撓んで先端部分から平版印刷版間に空気が入り、上記と同様の結果となってしまう。
【0011】
そこで、本発明では、搬送ローラの外周部に弾性変形可能な凸部を設ける。この凸部は、搬送ローラが平版印刷版を押圧する際に弾性変形し、弾性変形前よりも平版印刷版との接触領域が広くなる。したがって、搬送ローラは広い領域で平版印刷版と接触される。この接触により、接触している広い領域の平版印刷版と合紙との間に介在している空気を抜くことができ、単送や多重送を防止することができる。
【0012】
また、搬送ローラと平版印刷版との接触領域が広いので、平版印刷版への荷重が分散されて、平版印刷版の撓みを少なくすることができ、空気の流入も防ぐことができる。
【0013】
なお、本発明の平版印刷版供給装置は、請求項2に記載のように、前記凸部に中空が形成されていることを特徴とすることもできる。
【0014】
このように凸部に中空を形成することにより、硬度が高く耐久性に優れているが、弾性変形しにくい材料を用いた場合でも、容易に変形させることができ、広い接触領域を確保することができる。
【0015】
請求項3に記載の平版印刷版供給装置は、前記凸部が、前記搬送ローラの軸方向又は周方向に所定の間隔で設けられたことを特徴とする。
【0016】
このように凸部を配置することにより、凸部と凸部との間に空間が形成され、個々の凸部が弾性変形し易くなる。
【0017】
請求項4に記載の平版印刷版供給装置は、平版印刷版と合紙とが交互に積層された積層束を押圧しつつ回転することで摩擦により最上部の平版印刷版と合紙とを重送する搬送ローラを有し、この搬送ローラの外周部はゴム層とされ、このゴム層のゴム硬度が20度以上40度以下であることを特徴とするものである。
【0018】
一般的に、搬送ローラとして用いられるゴムの硬度は50度程度である。この硬度では、平版印刷版との接触部の変形が小さく、上記と同様に空気の流入による単送、多重送の問題が生じてしまう。
【0019】
そこで、請求項4の発明では、ゴム層を構成するゴムの硬度を20度以上40度以下とする。この範囲であれば、ゴムの変形により平版印刷版との接触領域を広くすることができ、接触した広い領域で平版印刷版と合紙との間に介在している空気を抜くことができ、単送や多重送を防止することができる。
【0020】
なお、請求項1乃至請求項4の平版印刷版供給装置は、請求項5に記載のように、前記平版印刷版を押圧することにより弾性変形した部分が平版印刷版の角部に接触する位置に、前記搬送ローラを配置するのが好ましい。
【0021】
平版印刷版と合紙との間への空気の流入は、搬送方向先端側から起こりやすい。そこで、上記のように、平版印刷版の角部が、押圧により弾性変形された部分と接触される位置に、搬送ローラを配置する。これにより、この接触部分の空気を抜くことができると共に、搬送方向先端側からの空気の流入も回避でき、単送や多重送をより確実に防止することができる。
【0022】
請求項6に記載の平版印刷版供給装置は、平版印刷版と合紙とが交互に積層された積層束を押圧しつつ回転することで最上部の平版印刷版と合紙とを重送する搬送ローラを有し、この搬送ローラの外周部に平版印刷版に粘着する粘着層を形成したことを特徴とするものである。
【0023】
本発明の平版印刷版供給装置では、搬送ローラが積層束を押圧しつつ回転して平版印刷版と合紙を搬送する。このため、平版印刷版の供給時間が短縮される。搬送ローラの外周部に形成された粘着層は、平版印刷版と粘着されるため、小さい荷重で平版印刷版を搬送することができる。したがって、搬送のために押圧力を大きくする必要がなく、押圧力を大きくした場合の平版印刷版端部の撓みによる空気の流入を回避し、単送、多重送を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記構成としたので、簡単な構成で、平版印刷版及び合紙の積層束から平版印刷版と合紙を確実に1組ずつ取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態の平版印刷版供給装置12の全体構成が示されている。また、図2には、この平版印刷版供給装置12の載置部14及び送り出し部16が、載置部14に版束18を載置した状態で示されている。
【0026】
図3に示すように、平版印刷版20はアルミニウムなどで板状に形成された支持体の一面に感光剤が塗布されて感光剤面20Eが構成されており、この感光剤面20Eを保護する合紙22と平版印刷版20とが交互に積層されて、版束18が構成されている。なお、図3に示した状態のものは、感光剤面20Eが上を向くように積層されており、最上の平版印刷版20の感光剤面20Eを保護する合紙22は既に除去されている。
【0027】
図1に示すように、平版印刷版供給装置12は台部26を備えており、この台部26上に、載置部14及び送り出し部16が配置されている。台部26にはキャスター28が取り付けられており、平版印刷版供給装置12全体を移動させて、たとえば露光装置の平版印刷版挿入部等へ着脱させることができる。
【0028】
図2に示すように、載置部14は、扁平な四角形の載置トレイ30を有しており、載置トレイ30内には、2つの側端ガイド板32と、1つの後端ガイド板34が配置されている。側端ガイド板32は図示しないスライド機構によって矢印W方向にスライドし、平版印刷版20のサイズに合わせて版束18、すなわち、複数枚の平版印刷版20と合紙22の側面を位置揃えする。同様に、後端ガイド板34も図示しないスライド機構によって矢印F方向(及びその反対方向)にスライドし、版束18の後端を位置揃えする。
【0029】
載置部14には、載置された版束18の周囲を覆うように、複数のカバー36が設けられている。版束18の搬送方向下流側の端部を覆うカバー36Aは、露光装置等に装着されると図示しない押圧部材によって上方に押圧されて、図1に示すように、ヒンジ38を中心に回動し、跳ね上がるようになっている。
【0030】
図2に示すように、載置部14の上方には、平版印刷版20の幅方向に沿ってホルダー40が掛け渡されている。ホルダー40には、載置部14に載置された版束18の上方に位置するように、ピックアップローラ42が回転可能に取り付けられており、駆動モータ44の駆動力が無端ベルト46を介して作用し、平版印刷版20(又は合紙22)を搬送する方向へ回転(順転)する(以下この方向の回転を「順転」といい矢印Jで示す)。なお、平版印刷版20の送り出し方向を矢印Fで(以下「搬送方向F」という)、これと直交する方向(平版印刷版20の幅方向)を矢印Wで(以下「幅方向W」という)それぞれ示す。
【0031】
ホルダー40は、その幅方向両端で、且つ搬送方向下流側に設けられた支軸48を中心に回動可能とされている。ホルダー40の側方に設けられた駆動ユニット50からの回動駆動力で、ピックアップローラ42が版束18に所定押圧力を作用させて接触する搬送位置と、版束18から離間した離間位置との間を回動する。
【0032】
載置トレイ30の底部は、搬送方向上流側に設けられた図示しないヒンジによって揺動する載置板52とされている。載置板52に版束18が載置された状態で、載置板52が図示しない付勢部材で上方に付勢され、最上の平版印刷版20が確実にピックアップローラ42に接触する。ピックアップローラ42からの版束18への押圧力は、1組の平版印刷版20と合紙22とを重送させる大きさに制御されている。
【0033】
ピックアップローラ42は、図4に示すように、円柱状の軸部42Aの外周部にブロック輪43が取り付けられて構成されている。ブロック輪43は、輪状とされ、ピックアップローラ42の周方向に沿って等間隔に配置された複数のブロック43Aを備えている。ブロック輪43は、ピックアップローラ42の軸方向の一端から他端にかけて等間隔で並べられている。個々のブロック43Aは、略直方体状でゴム製とされ、弾性変形可能とされている。ブロック43Aには、ピックアップローラ42の軸方向に沿って中空43Bが貫通している。この中空43Bは必ずしも必要はないが、中空を形成することにより、硬度が高く耐久性に優れているが、弾性変形しにくい材料を用いた場合でも、小さな押圧力でブロック43Aを容易に弾性変形させることができる。
【0034】
図5(A)に示すように、ピックアップローラ42は、版束18の先端部分に配置されている。そして、最上部に位置する平版印刷版20と接触するブロック43Aは、図5(B)に示すように、ピックアップローラ42からの押圧力により弾性変形してつぶれ、最上の平版印刷版20の先端角部と平版印刷版20の先端角部を含んだ接触領域N1で接触される。
【0035】
図1に示すように、載置部14よりも搬送方向下流には、搬送方向Fに所定間隔を空けて2枚のガイドプレート54、56が配置されている。平版印刷版20は、これらのガイドプレート54、56に支持されつつ搬送される。
【0036】
ガイドプレート54、56の間には、合紙分離装置58が配置されている。合紙分離装置58は、搬送方向Fに沿って順に配置された、搬送ローラユニット60及びリタードローラユニット62を有している。これらはいずれも、図2に示すように、幅方向Wに沿って掛け渡された回転可能なシャフト64と、このシャフト64に所定間隔をあけて固定された複数のゴムローラ66とで構成されている。駆動モータ61からの駆動力を受けて回転すると、搬送ローラユニット60のゴムローラ66が矢印R1方向に回転(順転)し、リタードローラユニット62のゴムローラ66は矢印R1と逆方向の矢印R2方向に回転(逆転)する。
【0037】
リタードローラユニット62は、その一端側に設けられた駆動ユニット68により、搬送中の合紙22に接触する位置と、合紙22から離間する位置との間を移動する。接触位置では、合紙22への接触状態でリタードローラユニット62が逆転するので、合紙22を平版印刷版20から分離できる。また、搬送ローラユニット60のゴムローラ66との間で合紙22をニップできるように、リタードローラユニット62のゴムローラ66が搬送ローラユニット60のゴムローラ66に接触する。
【0038】
搬送ローラユニット60の上方には、ニップローラ70が幅方向に沿って回転可能に掛け渡されている。ニップローラ70はその自重によって、搬送ローラユニット60のゴムローラ66との間で平版印刷版20及び合紙22をニップ可能に接触している。
【0039】
搬送ローラユニット60及びリタードローラユニット62の下方には、それぞれ合紙搬送ローラユニット72A、72Bが配置されている。合紙搬送ローラユニット72A、72Bも搬送ローラユニット60やリタードローラユニット62と同様にシャフト64とゴムローラ66とで構成されており、合紙搬送ローラユニット72A、72Bのゴムローラ66間で、合紙22をニップすることができるようになっている。合紙搬送ローラユニット72A、72Bのゴムローラ66の間に合紙22をニップした状態で回転することで、ニップされた合紙22を搬送ベルト74に沿って下方へと搬送することができる。
【0040】
合紙搬送ローラユニット72A、72Bの下方には、合紙22が集積される集積箱76が設けられている。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0042】
上記の構成とされた平版印刷版供給装置12によって、露光装置に平版印刷版20を供給する場合、まず、載置部14に版束18を載置する。このとき、版束18の後端18Bが後端ガイド板34に、側端が側端ガイド板32にそれぞれ接触して位置揃えされる。
【0043】
平版印刷版供給装置12を露光装置の所定位置に装着すると、図1に示すように、カバー36Aが上方に回動して、版束18の一部(前端部近傍)が露出する。ピックアップローラ42が版束18へ接触される前は、図5(A)に示すように、空気と合紙22との含水分量の差により最上部の平版印刷版20の下側の合紙22にシワが生じ、平版印刷版20と合紙22との間に空気Eが入り込んでいることがある。ところが、駆動ユニット50によってホルダー40が駆動されて、ピックアップローラ42が版束18に接触されると、図5(B)に示すように、ピックアップローラ42から版束18への押圧力によりブロック43Aは弾性変形してつぶれ、弾性変形前よりも広い接触領域N1で平版印刷版20と接触される。この接触領域N1において、最上部の平版印刷版20が下側へ押されるので、平版印刷版20と合紙22との間に介在している空気Eは抜ける。また、ピックアップローラ42と平版印刷版20との接触領域が広いので、平版印刷版20への押圧力が分散されて、平版印刷版20の撓みを少なくすることができ、空気の流入も防ぐことができる。さらに、平版印刷版20の先端角部を含む接触領域N1で接触されているので、先端角部からの空気の流入を防止することができる。この状態でピックアップローラ42が矢印J方向へ回転すると、図5(C)に示すように、1組の平版印刷版20と合紙22とが搬送方向Fへ重送される。
【0044】
上記構成のピックアップローラ42によれば、平版印刷版20と合紙22との間に空気が介在していることに起因する単送や多重送を防止することができる。
【0045】
また、合紙分離装置58での、平版印刷版20からの合紙22の分離は、以下のようにして行なわれる。図示しないセンサにより平版印刷版20と合紙22の搬送開始が検知されると、搬送ローラユニット60及びリタードローラユニット62が回転し、リタードローラユニット62が上昇する。そして、リタードローラユニット62のゴムローラ66が逆転しつつ合紙22に接触することで、合紙22には、搬送ローラユニット60からの搬送方向の力と、リタードローラユニット62からの搬送方向と反対方向の力とが作用するので、平版印刷版20から分離できる。そして、合紙22は中間部分が折れ曲がった状態で搬送ローラユニット60とリタードローラユニット62のゴムローラ66に挟持されて下方へ搬送され、集積箱76に集積される。平版印刷版20は搬送方向Fへさらに搬送され、露光装置へと送られる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の平版印刷版供給装置は、ピックアップローラの構成以外は第1実施形態と同様であるため、ピックアップローラの構成についてのみ説明する。
【0047】
本実施形態のピックアップローラ90は、図6に示すように、円柱状の軸部42Aの外周部に、一定の厚みを有する軟性ゴム層92を備えて構成されている。軟性ゴム層92は、硬度が30度のゴムで構成されている。図7(A)に示すように、ピックアップローラ90は、版束18の先端部分に配置されている。そして、最上部に位置する平版印刷版20と接触する軟性ゴム層92は、図7(B)に示すように、ピックアップローラ90からの押圧力により弾性変形してつぶれ、最上の平版印刷版20の先端角部と接触される。図7に示すように、平版印刷版20と接触する軟性ゴム層92は、ピックアップローラ90から平版印刷版20への押圧力により弾性変形してつぶれ、平版印刷版20の先端角部を含んだ接触領域N2で接触される。
【0048】
なお、本実施形態では軟性ゴム像92を硬度が30度のゴムで構成したが、必ずしも硬度は30度である必要はなく、20度以上40度以下であればよい。
【0049】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0050】
ピックアップローラ90が版束18へ接触される前は、図7(A)に示すように、最上部の平版印刷版20の下側の合紙22にシワが生じており、平版印刷版20と合紙22との間に空気Eが入り込んでいることがある。ところが、第1実施形態と同様にしてホルダー40が駆動されて、ピックアップローラ90が版束18に接触されると、図7(B)に示すように、軟性ゴム層92の下部は、ピックアップローラ90から版束18への押圧力により弾性変形してつぶれ、弾性変形前よりも広い接触領域N2で平版印刷版20と接触される。この接触領域N2において、最上部の平版印刷版20が下側へ押されるので、平版印刷版20と合紙22との間に介在している空気Eは抜ける。また、ピックアップローラ90と平版印刷版20との接触領域が広いので、平版印刷版20への押圧力が分散されて、平版印刷版20の撓みを少なくすることができ、空気の流入も防ぐことができる。さらに、平版印刷版20の先端角部を含む接触領域N2で接触されているので、先端角部からの空気の流入を防止することができる。この状態でピックアップローラ90が矢印J方向へ回転すると、図7(C)に示すように、1組の平版印刷版20と合紙22とが搬送方向Fへ重送される。
【0051】
上記構成のピックアップローラ90によれば、第1実施形態と同様に、平版印刷版20と合紙22との間に空気が介在していることに起因する単送や多重送を防止することができる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の平版印刷版供給装置も、ピックアップローラの構成以外は第1実施形態と同様であるため、ピックアップローラの構成についてのみ説明する。
【0053】
本実施形態のピックアップローラ94は、図8に示すように、円柱状の軸部42Aの外周部に、一定の厚みを有する粘着ゴム層96を備えて構成されている。粘着ゴム層96は、粘着力を有するゴムで構成されている。粘着力を有するゴムとしては、ブチルゴムなどを使用することができる。図9(A)に示すように、ピックアップローラ94は、版束18の先端部分に配置されている。そして、粘着ゴム層96は、図9(B)に示すように、最上部に位置する平版印刷版20と平版印刷版20の先端角部を含んだ接触領域N3で接触される。
【0054】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0055】
第1実施形態と同様にしてホルダー40が駆動されて、ピックアップローラ90が版束18に接触されると、図9(B)に示すように、粘着ゴム層96の下部は、平版印刷版20と、接触領域N3で接触される。接触領域N3では、粘着ゴム層96と平版印刷版20とが剥離可能に粘着される。この粘着により、最上部の平版印刷版20と合紙22とを小さい押圧力で搬送することができる。このように押圧力を小さくすることができれば、平版印刷版20の撓みを少なくすることもでき、撓みによる平版印刷版20間への空気の流入も防ぐことができる。さらに、平版印刷版20の先端角部を含む接触領域N3で接触することにより、先端角部からの空気の流入を防止することができる。この状態でピックアップローラ94が矢印J方向へ回転すると、図9(C)に示すように、最上部の平版印刷版20と合紙22が搬送方向Fへ重送される。
【0056】
上記構成のピックアップローラ94によれば、第1、第2実施形態と同様に、平版印刷版20と合紙22との間に空気が介在することに起因する単送や多重送を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態の平版印刷版供給装置を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の平版印刷版供給装置の載置部及び送り出し部を示す斜視図である。
【図3】本発明第1実施形態の平版印刷版供給装置にセットされる版束を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態のピックアップローラの一部の斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態のピックアップローラと平版印刷版及び合紙との関係の、(A)はピックアップローラと平版印刷版とが未接触の状態、(B)はピックアップローラと平版印刷版とが接触した状態、(C)はピックアップローラにより最上部の平版印刷版と合紙とが重送されている状態、を示す側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態のピックアップローラの一部の斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態のピックアップローラと平版印刷版及び合紙との関係の、(A)はピックアップローラと平版印刷版とが未接触の状態、(B)はピックアップローラと平版印刷版とが接触した状態、(C)はピックアップローラにより最上部の平版印刷版と合紙とが重送されている状態、を示す側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態のピックアップローラの一部の斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態のピックアップローラと平版印刷版及び合紙との関係の、(A)はピックアップローラと平版印刷版とが未接触の状態、(B)はピックアップローラと平版印刷版とが接触した状態、(C)はピックアップローラにより最上部の平版印刷版と合紙とが重送されている状態、を示す側面図である。
【符号の説明】
【0058】
12 平版印刷版供給装置
18 版束
20 平版印刷版
22 合紙
42 ピックアップローラ(搬送ローラ)
43A ブロック(凸部)
43B 中空
90 ピックアップローラ(搬送ローラ)
92 軟性ゴム層(外周)
94 ピックアップローラ(搬送ローラ)
96 粘着ゴム層(接触部)
N1 接触領域
N2 接触領域
N3 接触領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版印刷版と合紙とが交互に積層された積層束を押圧しつつ回転することで最上部の平版印刷版と合紙とを重送する搬送ローラを有し、
この搬送ローラの外周部に、押圧することにより弾性変形し、弾性変形前よりも平版印刷版との接触領域が広くなる凸部を設けたことを特徴とする平版印刷版供給装置。
【請求項2】
前記凸部には中空が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版供給装置。
【請求項3】
前記凸部が、前記搬送ローラの軸方向又は周方向に所定の間隔で設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の平版印刷版供給装置。
【請求項4】
平版印刷版と合紙とが交互に積層された積層束を押圧しつつ回転することで最上部の平版印刷版と合紙とを重送する搬送ローラを有し、
この搬送ローラの外周部はゴム層とされ、このゴム層のゴム硬度が20度以上40度以下であることを特徴とする平版印刷版供給装置。
【請求項5】
前記平版印刷版を押圧することにより弾性変形した部分が平版印刷版の角部に接触する位置に、前記搬送ローラを配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版供給装置。
【請求項6】
平版印刷版と合紙とが交互に積層された積層束を押圧しつつ回転することで最上部の平版印刷版と合紙とを重送する搬送ローラを有し、
この搬送ローラの外周部に平版印刷版に粘着する粘着層を形成したことを特徴とする平版印刷版供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−82887(P2006−82887A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266627(P2004−266627)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】