説明

平組み組織組成用の筬及び平組装置

【課題】組糸の本数の増やすことによる平組装置の大型化を抑制するとともに、組糸の本数の増減にともなう平組装置の大小の区別をなくす。
【解決手段】上端が開放され、複数の組糸Bが筬通しされる複数の下筬目40を有する下筬4と、下端が開放された複数の上筬目50を有する上筬5とを備えた筬1とする。下筬4と上筬5とは、下筬目40と上筬目50が上下方向で連通するように配置するとともに、上筬5が組糸Bの筬通し方向と交差する方向に移動可能となるように支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平組み組織組成用の筬及び平組装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する先行技術文献情報として、例えば、次の非特許文献1がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】繊維学会誌, Vol.60, No.5, P.110〜P.115 (2004)(P.112〜113,3.1,図6参照)
【0004】
非特許文献1には、平組物地を組成する装置として、ホーンギア方式の組成装置が開示されている。この組成装置は、円周上に並べられた複数のホーンギアの回転により、ホーンギアと同数のスピンドルを軌道に沿って隣り合うホーンギアに移動させながらスピンドルに支持されたボビンから組糸を繰り出すとともに、交錯させて平組み組織を組成するようにしたものである。
【0005】
平組物地の幅は、組糸の本数を増減することで大小調整するが、非特許文献1の平組装置において、大幅の平組物地を組成するために組糸の本数を増やす場合、この組糸の本数に応じてスピンドル及びホーンギアの個数を増やすことになるため、円周長がホーンギアの個数に応じて延長される。そのため、この円周長の延長に応じてホーンギアを並べる円の径が大きくなり、この円の径に応じて平組装置が大型化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、組糸の本数の増やすことによる平組装置の大型化を抑制すること、組糸の本数の増減にともなう平組装置の大小の区別をなくすこと、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、次の構成を少なくとも具備する。
【0008】
平組み組織組成用の筬であって、前記筬は、上端が開放され、複数の組糸が筬通しされる複数の下筬目を有する下筬と、下端が開放された複数の上筬目を有する上筬とを備え、前記下筬と前記上筬とは、前記下筬目と前記上筬目が上下方向で連通するように配置するとともに、前記下筬又は前記上筬が前記組糸の筬通し方向と交差する方向に移動可能、あるいは前記下筬と前記上筬の双方が前記筬通し方向と交差する方向、かつ互いに逆方向に移動可能に備えられていることを特徴とする。
【0009】
前記平組み組織組成用の筬を備えた平組装置であって、前記下筬目に筬通しされた前記組糸を、該下筬目と前記上筬目とにわたって移動させる移動部を備え、前記移動部は、前記下筬目に筬通しされた前記組糸を1本置きに支持するとともに、該組糸を前記上筬目に移動させ、かつ該上筬目への移動状態を保持する第1移動部と、該第1移動部で支持されない前記組糸を支持するとともに、該組糸を前記上筬目に移動させ、かつ該上筬目への移動状態を保持する第2移動部とを備え、前記第1移動部と前記第2移動部による前記下筬と前記上筬にわたる前記組糸の移動と、該組糸を前記上筬に保持した状態における前記下筬又は前記上筬の移動、あるいは前記組糸を前記上筬に保持した状態における前記下筬と前記上筬の双方の逆方向への移動とにより、前記組糸を第1下筬目と第2下筬目とに順次位置換えしながら交錯させて平組み組織を組成するようにされていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】平組装置の一実施形態を示す正面図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】図1の(3)−(3)線断面図。
【図4】図1の(4)−(4)線断面図。
【図5】組糸のすべてが上筬に移動した状態の断面図。
【図6】図1の平面図。
【図7】平組み組織の組成方法の一実施形態を示す工程図で、第1工程(a)〜第4工程(d1、d2)を示す。
【図8】同、工程図で、第5工程(e)〜第8工程(h1、h2)を示す。
【図9】同、工程図で、第9工程(i)〜第15工程(n)を示す。
【図10】同、工程図で、第16工程(o)〜第21工程(u1、u2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図6は、本発明にかかる平組装置Aの概略構成図である。平組装置Aは、組糸Bが筬通しされる筬1と、組糸Bを上下に移動させる移動部2とを備えている。筬1及び移動部2は、移動自在なフレーム(図示せず)に設置されている。このフレームには、組成された平組物地bを巻取る布巻3や組糸Bが巻回されたボビン(図示せず)等が設置されている。
【0013】
筬1は、長手方向が上下方向であるとともに、上端が開放され、複数の組糸Bが筬通しされる複数の下筬目40が図面上左右方向に並列状に配された下筬4と、長手方向が上下方向であるとともに、下端が開放された複数の上筬目50が図面上左右方向に並列状に配された上筬5とを備えており、下筬4と上筬5とを下筬目40及び上筬目50の開放部41、51同士が上下方向で対向するように配置することにより、上下方向を長手方向とする複数の筬目10が形成されている。この筬1は、前述のフレームに対して筬目10の配列方向を組糸Bの軸方向と直交する方向として設置されている(図1において左右方向)。
【0014】
下筬4は、前述のフレームに固定状に設置され、上筬5は、筬目10の配列方向と平行に移動可能に配置されている。
【0015】
下筬4は、前述のフレームに対して筬目10の配列方向と平行となるように固定される固定板C1に、ボルト・ナットDにより着脱可能に支持されている。
【0016】
上筬5は、前述のフレームに対して筬目10の配列方向と平行に移動可能に支持されたガイド部C2に、ボルト・ナットDにより着脱可能に支持されており、上筬5を取外すことによって、下筬4の開放部41を露出させるようになっている。すなわち、下筬4の開放部41を露出させることにより、下筬4に対する組糸Bの筬通しを開放部41から行うことができるため、この筬通しの容易性及び迅速性を向上させることができる。
【0017】
ガイド部Cを移動可能に支持する構成としては、例えば、ガイド部Cをスライド可能に吊り下げるように支持するレール等が挙げられる(図示せず)。
【0018】
下筬目40は、板ばね状の複数の薄板42を配列することにより形成されている。薄板42は、上筬5の移動方向に変形及び変形復帰するように配列され、薄板42の下端部を枠部43に固定している。
【0019】
上筬目50は、板ばね状の複数の薄板52を配列することにより形成されている。薄板52は、上筬5の移動方向に変形及び変形から復帰するように配列され、薄板52の上端部を枠部53に固定している。薄板52の下端部と薄板42の上端部とは、突き合わされるようにされ、開放部41、51の間に隙間がない連続した筬目10になっている。
【0020】
本実施形態の上筬5の移動量は、下筬目40の2目分ないし1目分に規制されている。この上筬5の移動は、手動によって移動させる形態でもよいし、モータやシリンダ等の駆動部(図示せず)の駆動によって移動させる形態(図示せず)でもよい。
【0021】
図示では、手動によって上筬5を移動させる形態であり、上筬5の移動量を下筬目40の2目分ないし1目分の移動量に規制する規制部Sが設けられている。この規制部Sは、移動する上筬5に接触してそれ以上の移動を規制するものであり、前述のフレームに固定され、上筬5を下筬目50の2目分の移動量に規制する第1規制部S1と、第1規制部S1と上筬5の枠部53の側部との間に抜き差し可能に介在して、上筬5を下筬目50の1目分の移動量に規制する第2規制部S2とから構成されている。すなわち、上筬5の移動量を下筬目50の2目分とする場合には、第2規制部S2を介在させず、上筬5の移動量を下筬目50の1目分とする場合には、第2規制部S2を介在させることにより、上筬5の移動量を切替えることができる。
【0022】
本実施形態では、上筬5を移動させる形態で例示したが、下筬4を移動させる形態としてもよいし(図示せず)、下筬4及び上筬5を互いに逆方向に移動させる形態としてもよい(図示せず)。
【0023】
前述の駆動部の駆動によって上筬5を移動させる形態の場合、この駆動部の駆動量を検出し、検出した駆動量が、あらかじめ設定された、上筬5の下筬目40の2目分又は1目分の移動量に対応する駆動量である場合に、駆動部の駆動を停止させる制御を行うことで、上筬5の移動を規制することができる。
【0024】
上筬5の移動量を規制する構成については、例示した構成に限らず、下筬目40の2目分ないし1目分の移動量に規制することができる構成であればよい。
【0025】
本実施形態の下筬目40は、組糸Bを支持する第1下筬目4Aと、組糸Bを第1下筬目4Aよりも下方で支持する第2下筬目4Bとを有しており、第1下筬目4Aと第2下筬目4Bとが交互に配置されている。
【0026】
このような下筬目40に組糸Bが筬通しされた状態では、第1下筬目4Aに筬通しされた組糸Bと、第2下筬目4Bに筬通しされた組糸Bとの間に、上筬5の移動方向と平行な開口部Eが形成される。
【0027】
本実施形態の移動部2は、第1下筬目4Aに筬通しされた組糸Bを上筬目40に移動させる第1移動部2Aと、第1下筬目4Aに筬通しされた組糸B及び第2下筬目4Bに筬通しされた組糸Bを上筬目40に移動させる第2移動部2Bとを備えている。
【0028】
第1移動部2Aは、長手方向が開口部Eの開口方向の長さよりも長い板状に形成されたものである。この第1移動部2Aは、開口部Eに対して長手方向が開口部Eの開口方向と平行に抜き挿し動作するとともに、挿入状態において上下動するように支持されている。第2移動部2Bは、長手方向を第1移動部2Aと同長とする板状に形成されたものであり、第2下筬目4Bに筬通しされた組糸Bの下方において、第2移動部2Bの長手方向を第1移動部2Aの長手方向と平行となるように配置され、この平行状態で上下動するように支持されている。
【0029】
第1移動部2Aの上下動の範囲は、下降状態において組糸Bが第1下筬目4Aに筬通しされており、上昇状態において組糸Bを上筬目50に移動させることができる範囲である。第2移動部2Bの上下動の範囲は、下降状態において組糸Bが第1下筬目4A及び第2下筬目4Bに筬通しされており、上昇状態において組糸Bを上筬目50に移動させることができる範囲である。第2移動部2Bの上昇時には、この上昇を阻害しないように第1移動部2Aが開口部Eから抜き取られるようになっている。
【0030】
開口部Eに対する第1移動部2Aを抜き挿しは、モータやシリンダ等の駆動部(図示せず)の駆動によって抜き挿しする形態(図示せず)としてもよいし、手動によって抜き差しする形態(図示せず)としてもよい。また、第1移動部2Aの上下動は、モータやシリンダ等の駆動部(図示せず)の駆動によって上下動する形態(図示せず)としてもよいし、手動によって上下動する形態(図示せず)としてもよい。第1移動部2Aを前述の駆動部により上下動させる形態の場合、前述の第1移動部2Aを抜き挿しさせる駆動部ごと上下動させるようにするとよい(図示せず)。第2移動部2Bの上下動は、モータやシリンダ等の駆動部(図示せず)の駆動によって上下動する形態(図示せず)としてもよいし、手動によって上下動する形態(図示せず)としてもよい。
【0031】
第1移動部2Aの抜き挿し動作及び上下動と、第2移動部2Bの上下動とが前述の駆動部で行われる形態の場合、これら抜き挿し動作及び上下動を、あらかじめ設定された動作順で動作するように制御してもよいし、スイッチ操作等により動作を切替えて行うようにしてもよい。
【0032】
移動部2の形態は、例示したような板状の第1移動部2A及び第2移動部2Bに限らず、織機に用いられる綜絖を移動部2として使用することができる(図示せず)。この移動部2の場合、組糸Bを綜絖通しし、綜絖通しされた奇数の組糸Bを上筬目50に移動させる綜絖を第1移動部2Aとし、偶数の奇数の組糸Bを上筬目50に移動させる綜絖を第2移動部2Bとする。このような移動部2の場合、下筬目40には、例示したような高低差を有する第1下筬目4Aと第2下筬目4Bを形成する必要がない。
【0033】
すなわち、高低差を有する第1下筬目4Aと第2下筬目4Bが存在しない下筬目40を備えた下筬4を用いた筬1は、織物を織成する織機の筬と同様の形態となり、この織機の筬として使用することができる。そして、前述の織機に筬1を使用するとともに、この織機の綜絖を移動部2として使用することにより、織物を織成する織機を平組装置Aとして使用することができる(図示せず)。また、下筬4及び上筬5を囲むように支持する枠体を備え、この枠体に上筬5を移動可能に支持する前述のレール、移動規制部S等を備えた筬1にしてもよい(図示せず)。このような筬1であれば、前述のフレームに対する着脱や織機に対する着脱を容易にできる。また、前述の枠体を前述の織機に備えられた框に装着可能な形態にすることにより、前述の織機に対する着脱をより容易にすることができる。
【0034】
次に、平組装置Aによる平組み組織の組成方法を説明する。図7(a1、a2)〜図10(u1、u2)は、平組装置Aによる平組み組織の組成方法の1サイクルを模式的に示す工程図であり、本工程を1サイクルとして、このサイクルを繰り返し行って平組み組織を組成する。また、本工程図では、4本の組糸Bを組成するように示しているが、平組装置Aは、さらに多くの組糸Bを使用することができる。また、本工程図では、各組糸Bの符号を図7(a)において左側からB1、B2、B3、B4とする。図7(a)に示す組成開始当初では、奇数の組糸B1、B3が第1下筬目4Aに筬通しされ、偶数の組糸B2、B4が第2下筬目4Bに筬通しされている。
【0035】
第1工程(図7a1、a2):組糸B1〜B4を下筬4に筬通しする。このとき、組糸B1〜B4は、ボビンFと布巻3とにわたって張った状態で筬通しされる。
第2工程(図7b)第1移動部2Aの上昇。第1下筬目4Aの組糸B1、B3(奇数の組糸)を上筬目50に移動させ、この移動状態を保持する。
第3工程(図7c1):上筬5の移動。上筬5を図面上右方向に下筬目40の2目分移動させる。
第4工程(図7d1、d2):第1移動部2Aの下降。組糸B1、B3を第1下筬目4Aに移動させる。このとき、組糸B1が組糸B2の右隣の第1下筬目4Aに、組糸B3が組糸B4の右隣の第1下筬目4Aに夫々移動しており、組糸B1が組糸B2に上方から交差し、組糸B3が組糸B4に上方から交差して、組糸B1と組糸B2との位置及び組糸B3が組糸B4との位置が入れ替わった状態となる。
【0036】
第5工程(図8e):第2移動部2Bの上昇。組糸B1〜B4(全ての組糸)を上筬目50に移動させ、この移動状態を保持する。
第6工程(図8f):上筬5の移動。上筬5を左方向に下筬目40の1目分移動させる。
第7工程(図8g):第2移動部2Bの下降。組糸B1〜B4(全ての組糸)を下筬目40に移動させる。
第8工程(図8h1、h2):上筬5の移動。上筬5を左方向に下筬目40の1目分移動させる。このとき、組糸B1、B3が第2下筬目4Bに、組糸B2、B4が第1下筬目4Aに夫々入れ替わった状態で、上筬5の左端の上筬目50が左端の第1下筬目4Aに対向した第1工程と同じ状態になる。すなわち、組糸B1が組糸B2に、組糸B3が組糸B4に交錯することにより2個の平組み組織が組成される。また、このとき、筬1を境として、ボビンF側と布巻3側とに同様の平組み組織を組成することができる。
【0037】
第1工程〜第8工程により、2個の平組み組織の組成が終了する。以下、第9工程〜第14工程に基づいて3個目の平組み組織の組成方法を説明する。
【0038】
第9工程(図9i):第1移動部2Aの上昇。第1下筬目4Aの組糸B2、B4(偶数の組糸)を上筬目50に移動させ、この移動状態を保持する。
第10工程(図9j1、j2):上筬5の移動。上筬5を左方向に下筬目40の2目分移動させて、組糸B4を組糸B1に対して上方から交錯させる。
第11工程(図9k):第1移動部2Aの下降。組糸B2、B4を第1下筬目4Aに移動させる。
第12工程(図9l):第2移動部2Bの上昇。組糸B1〜B4を上筬目50に移動させ、この移動状態を保持する。
第13工程:(図9m):上筬5の移動。上筬5を右方向に下筬目40の1目分移動させる。
第14工程(図9(n)):第2移動部2Bの下降。組糸B2、B4を第2下筬目4Bに、組糸B1、B3を第1下筬目4Aに移動させる。このとき、組糸B4が組糸B1に対して上方から交錯することにより、3個目の平組み組織が組成されている(図9j2参照)
【0039】
第9工程〜第14工程によって3個目の平組み組織が組成されるが、第14工程の状態において組糸B2、B4の間に1目の第1下筬目4Aが、B1、B3の間に1目の第2下筬目4Aが夫々介在している。そのため、第15工程〜第21工程において、組糸B1〜B4を前述した組成開始当初の状態に戻すようにして、次のサイクルを行える状態にする。
【0040】
第15工程(図10o):組糸B2の上昇。最も左端の組糸B2のみを上筬目50に移動させるとともに、この移動状態を保持する。この組糸B2の移動及び保持は、第2移動部2Bが第2下筬目4Bに筬通しされた組糸Bをすべて移動させるものであるため、手動によって行う。なお、最も左端に位置する組糸Bのみを上筬目50に移動させるための第3移動部(図示せず)を設け、この第3移動部によって移動及び保持させるようにしてもよい。
【0041】
第16工程(図10p):上筬5の移動。上筬5を右方向に下筬目40の1目分移動させる。
第17工程(図10q):組糸B2の下降。第13工程で上筬目50に移動させた組糸B2を第1下筬目4Aに移動させる。
第18工程(図10r):上筬5の移動。上筬5を右方向に下筬目40の1目分移動させる。
第19工程(図10s):組糸B3の移動。最も右端の組糸B3のみを上筬目50に移動させるとともに、この移動状態を保持する。この組糸B3の移動及び保持は、第1移動部2Aが第1下筬目4Aに筬通しされた組糸Bをすべて移動させるものであるため、手動によって行う。なお、最も右端に位置する組糸Bのみを上筬目50に移動させるための第4移動部(図示せず)を設け、この第4移動部によって移動及び保持させるようにしてもよい。
【0042】
第20工程(図10t):上筬5の移動。上筬5を左方向に下筬目40の1目分移動させる。
第21工程(図10u1、u2):組糸B3の下降。第17工程で上筬目50に移動させた組糸B3を第2下筬目4Bに移動させる。
【0043】
第21工程が終了することにより、組糸B1〜B4は下筬目40に対して、当初の組糸B1の位置に組糸B2が、当初の組糸B2の位置に組糸B4が、当初の組糸B3の位置に組糸B1が、当初の組糸B4の位置に組糸B3が、夫々筬通しされた状態となるように位置換えされるとともに、左側から組糸B1、B2、B3、B4に呼び換えられて、前述した組成開始当初と同様の、次のサイクルの組成開始状態となる。
【0044】
なお、平組装置Aを用いた組成方法は、平組み組織を組成できる組成方法であれば例示した工程による組成方法に限らない。
【0045】
本実施形態の平組装置Aによれば、第1工程〜第21工程を1サイクルとし、このサイクルを繰り返し行って、組糸B1〜B4を順次交錯させることにより、平組み組織を組成することができる。
【0046】
また、筬1が、通常の織機に用いられる筬が経糸を筬通しする形態と同様の形態で、組糸Bを筬通しする構成であるため、幅広の平組物地を組成することができる平組装置Aを、前述の通常用いられる織機程度の大きさに抑えることができる。したがって、幅広な平組物地を組成することができる平組装置Aの大型化を抑制することができる。
【0047】
さらに、平組装置Aは、目的の平組物地の幅にかかわらず、基本的に前述のフレームに対して同じ大きさの筬1及び移動部2によって構成することができる。すなわち、平組装置Aの簡素化が図れるため、平組装置Aの製作コストを削減することができ、平組装置Aを安価に提供することができる。しかも、幅が狭い平組物地から幅が広い平組物地まで、一つの平組装置Aですべて組成することができる。しかも、筬1を境として、ボビンF側と布巻3側とに同様の平組み組織を組成することができるため、平組物地の組成を迅速、かつ効率よく行うことができる。
【0048】
組糸B1〜B4の交錯工程ごとに、ボビンFの位置を組糸B1〜B4が左から番号順になるように入れ換えて、ボビンF側では平組み組織が組成されないようにしてもよい(図6ではボビンの位置を入れ換えて布巻3側で平組み組織を組成するようにしている)。
【0049】
なお、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0050】
A:平組装置 B:組糸 b:平組物地 1:筬 2:移動部 b:平組物地
4:下筬 5:上筬 10:筬目 40:下筬目 50:上筬目 41:開放部
51:開放部 2A:第1移動部 2B:第2移動部 4A:第1下筬目
4B:第2下筬目 E:開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平組み組織組成用の筬であって、前記筬は、上端が開放され、複数の組糸が筬通しされる複数の下筬目を有する下筬と、下端が開放された複数の上筬目を有する上筬とを備え、前記下筬と前記上筬は、前記下筬目と前記上筬目が上下方向で連通するように配置するとともに、前記下筬又は前記上筬が前記組糸の筬通し方向と交差する方向に移動可能、あるいは前記下筬と前記上筬の双方が前記筬通し方向と交差する方向、かつ互いに逆方向に移動可能に備えられていることを特徴とする平組み組織組成用の筬。
【請求項2】
前記下筬目は、前記組糸を支持する第1下筬目と、前記組糸を前記第1下筬目よりも下方で支持する第2下筬目とを有し、前記第1下筬目と前記第2下筬目とが交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の平組み組織組成用の筬。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載の平組み組織組成用の筬を備えた平組装置であって、前記下筬目に筬通しされた前記組糸を、該下筬目と前記上筬目とにわたって移動させる移動部を備え、
前記移動部は、前記下筬目に筬通しされた前記組糸を1本置きに支持するとともに、該組糸を前記上筬目に移動させ、かつ該上筬目への移動状態を保持する第1移動部と、該第1移動部で支持されない前記組糸を支持するとともに、該組糸を前記上筬目に移動させ、かつ該上筬目への移動状態を保持する第2移動部とを備え、
前記第1移動部と前記第2移動部による前記下筬と前記上筬にわたる前記組糸の移動と、該組糸を前記上筬に保持した状態における前記下筬又は前記上筬の移動、あるいは前記組糸を前記上筬に保持した状態における前記下筬と前記上筬の双方の逆方向への移動とにより、前記組糸を第1下筬目と第2下筬目とに順次位置換えしながら交錯させて組み組織を組成するようにされていることを特徴とする平組装置。
【請求項4】
前記請求項2記載の平組み組織組成用の筬を備えた平組装置であって、前記下筬目に筬通しされた前記組糸を、該下筬目と前記上筬目とにわたって移動させる移動部を備え、
前記移動部は、前記第1下筬目に支持された前記組糸を支持するとともに、該組糸を前記上筬目に移動させ、かつ該上筬目への移動状態を保持する第1移動部と、前記第1下筬目及び前記第2下筬目に支持された前記組糸を支持するとともに、該組糸を前記上筬目に移動させ、かつ該上筬目への移動状態を保持する第2移動部とを備え、
前記第1移動部は、前記組糸を上筬目に移動させる状態において、前記第1下筬目に支持された前記組糸と前記第2下筬目に支持された前記組糸の間に位置し、前記第2移動部が前記組糸を上筬目に移動させるときには、前記第1下筬目に支持された前記組糸と前記第2下筬目に支持された前記組糸の間から抜き取り可能としてなり、
前記第1移動部と前記第2移動部による前記下筬と前記上筬にわたる前記組糸の移動と、該組糸を前記上筬に保持した状態における前記下筬又は前記上筬の移動、あるいは前記組糸を前記上筬に保持した状態における前記下筬と前記上筬の双方の逆方向への移動とにより、前記組糸を第1下筬目と第2下筬目とに順次位置換えしながら交錯させて組み組織を組成するようにされていることを特徴とする平組装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−32597(P2011−32597A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179373(P2009−179373)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000126090)株式会社ひなや (4)
【Fターム(参考)】