説明

平衡試料および2プール動力学に関する相互区画移動係数を得るための自動化法および装置

【課題】血液透析処置のための向上したオンラインのリアルタイム血液透析モニターシステムを提供すること。
【解決手段】血液透析処置のための向上したオンラインのリアルタイム血液透析モニターシステムは、血液透析装置からの使われた透析流出物中の成分成分濃度を時間の関数として測定することにより血液透析処置中に除去される尿素等の成分の速度と量を定量する。多量の使われた透析流出物は試験のために定期的に透析流出物排出ラインから取り出される。尿素濃度時間の分布を分析して、尿素除去、KT/V、URR、SRIおよび標準化タンパク質異化速度(nPCR)指数を決定できる。血液モニターシステムは、好ましくは血液透析処置の開始前の血液との平衡化された透析物試料を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、1992年10月12日に出願され現在は放棄された米国特許出願第07/959,922号の継続出願である1994年5月9日に出願された米国出願第08/239,936号の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
一般的に、本発明は、血液透析処置の有効性をオンライン、リアルタイムでモニターするための血液透析装置およびその方法に関し、より具体的には、血液透析における2プール動力学に関する相互区画移動係数を得るための血液透析装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血液運搬の毒素および代謝の副産物を除去するための血液透析装置による透析器の利用は長年にわたり慣用的なものである。典型的には、そのような透析器は半透膜により隔てられた一対のチャンバーを有する。血液は第1チャンバーを通って灌流されて患者に戻される。透析溶液は同時に第2チャンバーを通って反対方向に循環される。それによって濃度勾配が作られ、血液に運ばれる排出生成物はこの勾配により半透膜を通って透析溶液中に拡散して透析流出液を形成する。
【0004】
血液透析の原理は広く改良されてきた。多数の半透性の中空繊維膜が現在透析器に用いられて全膜表面積を増加させて膜構造物を通る拡散を助けている。この中空繊維膜としては、例えば酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリスルホンおよび再生セルロース等の多様な材料が挙げられる。
【0005】
血液透析による患者の処置の際に最も基本的な考慮すべきことの一つは、処置の妥当性(例えば所与の患者が所与の日に透析すべき時間の長さ)を中心に展開される。不慮により患者を十分に透析することのできないことから多くの医学的な悪影響が生じることがある。現在、平均的な透析患者はわずかに約5年の平均余命を有するだけである。これらの患者が短い平均余命を有する傾向となっている一つの理由は、まったく除去できないか(すなわち中空繊維を通過しないか)または毒性のない量まで十分に減少しない多様な毒素の長期にわたる蓄積の有害な効果である。これらの予想される毒素の多くが何であるかは知られていないが、尿中で除去されることが知られている種、例えば尿素、クレアチン、リン酸、水素イオン等が通常の量を超えて蓄積されると、深刻な医学的な結果に関連する。
【0006】
多くの因子が処置の妥当性に実質的な影響を有し得る。例えば、透析器を再利用することは血液透析の分野では一般的な慣例である。例えば特許文献1に具体的に記載されているように、使用された透析器を清潔にし、消毒し、または無菌とするために利用可能な技術が存在する。しかし、結局は個々の透析器はその透析能力を失うために廃棄されなければならない。現在、透析器の能力を評価することは難しいので、しばしば厳密にモニターされず、透析カートリッジが再処置後に見た目で汚れているか、または繊維束容量か限外濾過速度が一定の限界値以下に下がるときまで廃棄されない。非特許文献1によって報告されているように、外見、繊維束容量、および限外濾過速度が正常な場合でさえ深刻な透析器機能障害が起こり得ることが現在知られている。透析器の能力は透析カートリッジの年数または使用した回数により正確に予測できないことも知られている。
【0007】
透析器の状態にもかかわらず、所与の処置中の各患者の透析の妥当性の一つの尺度は以下の式から計算される:
KT/V≧1.0
Vは、全体の体の水体積にほぼ等しい尿素分布体積である。Vはしばしば身長、体重および性別から各患者について導かれる。Kは1分間あたりに尿素が除去される血液ミリリットル(ml)に用いられる特定の透析器の効果的な尿素クリアランスである。Tは処置時間である。Kは、透析器の容器に包まれた典型的な製品挿入物からしばしば得られるもので、透析器の試料のランダム試験により特定の製造ロットから得られる血流速度に対する尿素クリアランスのグラフを含有する。これらの値を上記等式に代入すると、最小処置時間を所与のKT/V値に対して計算することができる。十分な透析を得るために変更してもよい他のパラメーターとしては血流速度、透析溶液流速、および透析器性能が挙げられる。
【0008】
約0.8以上のKT/V値が、低いレベルの病的状態に関連することは経験的に確定されている。非特許文献2を参照されたい。新しい透析器の使用によっても、特定のロットから選択された装置が、製品挿入物で示された値よりも有意に低いK値を有する危険性が一部にある。したがって、そのような透析器で処置を受ける患者は不十分な透析を受ける危険性におかれている。連続的な使用による透析器能力の明確なしかし定量されない損失のために、不十分な透析の可能性は透析器の再使用の際に高まる。不十分な透析は、患者の循環を利用できないために起こることもある。患者の血液利用ができないために、所望の血流速度が得られず、不十分な透析となり得る。
【0009】
KT/V以外のパラメーターも透析の妥当性を評価するために測定されている。これらのものには尿素減少率(URR)および溶質除去指数(SRI)がある。URRは1−(CBpre/(CBpostと定義される。理想的な透析処置は0.75以上のURRを有するが、不十分な透析処置は0.50未満のURRを有する。不幸にも、URRは透析、限外濾過中の尿素の生成、または除去の2プール的性質を考慮にいれていない。したがって、これらの効果を考慮するURRの一般化されたバージョンとしてSRIが提案されている。SRIは全体の体の貯蓄の一部として処置中に除去される尿素の量と定義される。URRのように、良好な透析処置は0.75を超えるSRI値を有するが、不十分な透析処置は0.50未満のSRIを有する。潜在的に、SRIは、(KT/Vとは異なり)、様式(すなわち、腹腔透析または血液透析)および中断とは無関係に透析処置の妥当性を示し得る。しかし、URRとSRIのいずれも透析妥当性の尺度としてKT/Vのように広く有効付られていない。
【0010】
KT/V、URRおよびSRI指数は尿素除去を表示するもので治療の失敗に関連するように思えるが、これは、尿素が毒性のある代謝物であると言うこととは等しくはない。尿素はそれ自体が毒性がないことを示唆する初期の文献がある。しかし、尿素はタンパク質代謝作用の主要な代謝物であり、処置の妥当性をモニターするのに便利なマーカーとして働く。
【0011】
尿素は60ダルトンの分子量を有するが、他のタンパク質異化物の一部はさらに大きいかもしれない。したがって、緻密なセルロース膜により確立されたKT/Vと病的状態との関係が、血液濾過および高流動血液透析に用いられるさらに隙間のある膜に適用可能であるのか、または天然の腹腔膜に適用可能であるのかが論争の的となっている。
【0012】
尿素動力学模型に関してかなりの一連の文献がある。コンピュータープログラム、プログラム可能な計算機、およびタイムシェアコンピューターサービスが開発されて、透析技術者に尿素動力学をさらに利用可能なものにしている。0.8未満のKT/Vは、栄養学的カウンセリングには扱いにくい低い食事タンパク質摂取に関連性のあることも最近になって示された(Lindsayら、1989年)。しかし、栄養学的カウンセリングと関連して、KT/Vを1.0以上に高めることは食事タンパク質摂取を向上させるのに有効である。低い食事タンパク質摂取は高い病的状態率に関連性があるので、KT/VをモニターすることとnPCRが透析患者の他の臨床的評価に対する有用な補助手段である。
【0013】
伝統的な尿素動力学は多様な測定を伴い、透析技術者により数学的に複雑と思われている。正確な動力学測定に必要とされる多様な測定を表1に要約する。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

これらの測定のそれぞれは有限誤差に関連付けられ、これらの誤差の累積効果は非現実的な尿素動力学パラメーターを導くことがある。
【0016】
先行技術の血液透析装置は、血液透析処置のオンラインでのモニター能力を有していなかった。さらに、先行技術の方法は血液透析患者から血液試料を採取することを必要とした。
【0017】
本発明を考慮するにあたり、本発明を利用することのできる例えばBaxter BioStat 1000(登録商標)尿素モニターは、透析器の透析流出物に接続して透析物の別々の試料の尿素濃度を測定する非侵入的な装置である。これらの濃度から、患者から除去される尿素の量および多様な動力学パラメーター、例えばKT/V(分配体積で割られたクリアランス時間)が計算でき、および計算される。クリアランス(K)を体積(V)から分離するために、平衡試料が透析の開始前に採取される。これは、透析装置を透析バイパスにおき、血流を開始させ、10分以内の限外濾過を伴い、この間、血液中の尿素濃度は透析物中の尿素の濃度と平衡化する。このプロセスは操作者の制御下にあるので、時間および/または限外濾過の総計は少なすぎるか多すぎるかのいずれにすることもできる。この操作がほとんどの透析装置に可能である一方で、平衡試料が得られない幾つかの装置が存在する。
【特許文献1】米国特許第4,695,385号明細書
【非特許文献1】Delmezら、「Severe dialyzer dysfunction during reuse」,Kidney International,(1989),35:244
【非特許文献2】Gotch,L.A.,Sargent,J.A.Kidney International,(1985),28:526−537
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による装置は、前透析平衡試料を得る現在の手動方法を自動化する自動化バイパスおよび平衡機能を提供する。本装置によれば、手動操作に適合しない機械を用いて平衡試料を得ることができる。
【0019】
本発明によれば、患者を血液透析装置に置く前および置いている間の両方において、所望とされ信頼性のある非侵入的なオンラインのリアルタイムでの血液透析処置のモニターが提供される。尿素動力学に基づくときに、その処置は血液試料ではなく流出透析物の濃度および流れの測定を必要とするだろう。この処置は、アウトプットとして治療の妥当性のKT/V、URRおよびSRI指数、尿素除去および標準化タンパク質異化速度(nPCR)を生み、これらは次に食物コンプライアンスおよび処置の妥当性をリアルタイムで評価するために利用することができる。平衡化は透析の開始前に自動的に、確実に達成され、高い信頼性のある処置管理が得られる。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、さらに以下を提供する。
(項目1)代謝物濃度が患者の血液の血漿水の代謝物濃度と同じである平衡化透析物試料を得る方法であって、
透析器への透析物流を停止し、その間、血液ポンプを動かし、患者の血液からの限外濾過を行う工程;
部分的平衡化後、該透析物中の代謝物の濃度を最初に測定して、濃度が測定されている第1試料を得る工程;
特定の時間が経った後に該透析物の代謝物濃度を測定して濃度が測定されている第2試料を得る工程;
第2試料中の代謝物濃度を第1試料中の濃度と比較する工程;および
二つの連続する試料の差異が特定された量よりも少なくなるまでサンプリングを続ける工程、を包含する方法。
(項目2)前記代謝物が尿素である項目1に記載の方法。
(項目3)透析装置による血液透析を受ける患者のための相互区画移動係数を自動的に得る方法であって、
a)透析器への透析物流を停止し、その間、血液ポンプを動かし、患者の血液の限外濾過を行う工程;b)部分的平衡化後、該透析物中の代謝物の濃度を最初に測定して、濃度が測定されている第1試料を得る工程;c)特定の時間が経った後に該透析物の代謝物濃度を測定して濃度が測定されている第2試料を得る工程;d)第2試料中の代謝物濃度を第1試料中の濃度と比較する工程;およびe)二つの連続する試料の差異が特定された量よりも少なくなるまでサンプリングを続ける工程、によって平行思料を得る工程;
血液ポンプおよび透析装置をバイパスで走らせ続け、そして規則的な間隔で平衡化させた試料を採取する工程;
患者血液中の代謝物濃度の該測定値からの変化速度を測定し、その間血液透析処置を止める工程;および
患者血液中の代謝物濃度の該変化速度から細胞外および細胞内体積(RV)の比率を決定する工程、を包含する方法。
(項目4)前記代謝物が尿素である項目3に記載の方法。
(項目5)透析中に時間的な間隔をもって代謝物の血液濃度(Cbew)を測定する工程;および得られた平衡試料および非直線適合技術を用いて血液濃度(Cbew)測定値からのKIを決定する工程、をさらに包含する項目3に記載の方法。
(項目6)透析中に時間的な間隔をもって代謝物の血液濃度(Cbew)を測定する工程;および得られた平衡試料および非直線適合技術を用いる血液濃度(Cbew)測定値から患者の細胞内および細胞外の体積を決定する工程、をさらに包含する項目3に記載の方法。
(項目7)K/Vの比率がいったん知られたらKとVを分離させる前操作平衡試料を得る工程、をさらに包含する項目3に記載の方法。
(項目8)Kの予測値を得るために中間操作平衡試料を得る工程、をさらに包含する項目3に記載の方法。
(項目9)血液透析を受ける患者のために患者の血液に対して透析物の平衡化を行う装置であって、
透析物流を受け取るために透析装置に接続するための第1手段;
装置を透析カートリッジに接続し、該透析装置からの透析物の流れを透析カートリッジに向けさせる第1手段;
透析カートリッジに接続し、該透析カートリッジからの透析物を受け取るための第1手段;
該透析装置に接続させ、透析物の流れを該透析装置に向けさせるための第2手段;および
二つの位置の間で選択的に実現可能なパイパス手段であって、第1の位置は、透析物の流れが該透析器から、該透析カートリッジを通り該透析装置に戻る位置であり、第2の位置は、透析物の流れが該透析カートリッジから止められて該透析装置に戻る位置である、バイパス手段、を有する装置。
(項目10)該バイパス装置が該第2位置にあるときに該透析装置からの透析物の流れを測定するための流れ測定手段をさらに有する項目9に記載の装置。
(項目11)装置を透析装置に設置するための設置手段をさらに有する項目9に記載の装置。
(項目12)該バイパス手段がソレノイドバルブを有する項目9に記載の装置。
【0021】
発明の要約
1994年5月9日に出願の米国出願第08/239,936号の発明(本出願は該出願の一部継続出願である)は改良されたオンラインでのリアルタイム血液透析モニター法および血液透析装置用システムに関する。この血液透析モニターシステムは、時間の関数として、使われた透析流出液中の尿素濃度を測定することにより血液透析処置中に除去される尿素の速度と量を定量する。血液透析装置からの透析流出液ラインは定期的にサンプリングされて、十分な液体流が探知されるときに少量の使われた透析流出液を取り出す。尿素濃度/時間分布を決定、分析して尿素除去、KV/V、URR、および標準化タンパク質異化速度(nPCR)を決定する。血液透析モニターシステムおよび尿素モニターの構成は、血液透析処置の開始前またはその終わりに血液を透析流出液で平衡化するように変えることができる。血液透析モニターシステムは、処置中の血液透析患者の細胞外空間と細胞内空間からの異なる程度の尿素減少を考慮に入れて2プール分析を包含させることもできる。これにより溶質除去指数(SRI)の計算が可能となる。
【0022】
本発明は、血液透析処置を受ける患者に、相互区画移動係数(K1)を得るための方法および装置を提供することにより米国特許出願第08/239,936号の発明に加えるものである。
【0023】
本発明に従えば、攪拌が起こり続けるよう、かつ血液からの限外濾過物が透析器の透析物区画中に入るように血液ポンプが運転されることで、透析物の流れが透析器をバイパスする方法が提供される。最終的に、この分散と対流のために、透析器中の透析物は患者の血漿水濃度に等しい代謝物濃度に達する。この時に、透析物をサンプリングして測定してもよい。この方法は、血液透析処置の前、その間および/またはその後に行われてもよい。そのような濃度が透析前に得られると、「K」と「V」が分離できる。少なくとも1つの濃度が透析後に得られる場合、相互区画移動係数KIが確実に決定できる。
【0024】
もう一つの特長において、本発明は、代謝物濃度が患者血液の血漿水の代謝物濃度と同じである平衡化透析物試料を得る方法をともなう。透析器への透析物の流れが止められ、その間、血液ポンプを動かして、患者の血液からの限外濾過を行う。選択された代謝物(典型的には尿素)の濃度は、部分的な平衡化後に最初に測定して、最初の試料を得て、この試料の濃度を測定する。特定時間が過ぎた後に得られた第2試料中の代謝物濃度を測定する。これらの2測定濃度が比較され、そして2連続試料の差が特定された量以下になるまでサンプリング/測定を続ける。
【0025】
もう一つの特長において、本発明は、透析装置による血液透析を受ける患者のために、相互区画移動係数を自動的に得る方法に関する。平衡化透析試料を上記のように得る方法が最初に行われる。その後、透析装置をバイパスモードにして血液ポンプを運転し続け、そして平衡化された試料が規則的な時間間隔で採取される。血液透析処置が終わった後に、代謝物(典型的には尿素)濃度の変化率が測定値から決定される。患者の細胞外および細胞内容量(RV)の比率が患者血液の代謝物濃度の変化率から決定される。
【0026】
好ましくは、代謝物質の血液濃度(Cbew)が透析中に時々測定される。非直線適合技術を用いて、患者のK1および/または細胞内体積と細胞外体積が、得られた平衡試料および血液濃度(Cbew)測定値から得ることができる。さらに、より好適には、前運転平衡試料を得て、K/Vの比率が知られればKとVとを分離することができる。中間運転平衡を得てKを予測することができる。本発明は定期的なサンプリングの文脈で説明されてきたが、本発明は連続サンプリングを実施する血液透析装置に用いることができる。別々の時間における試料を用いて本発明の方法を実施することができる。
【0027】
さらに別の特徴において、本発明は上記方法を実施するための装置に関する。本装置は透析器の入口と出口および透析装置の透析物ポートの間に接続可能なバイパス装置を包含する。透析装置からの透析物液を選択的に透析器とは離れた別の路に流すためのバルブが提供される。血液ポンプをなおも運転させることにより、正の経膜圧は次に限外濾過物を血液から透析物中へと通らせる。最終的に、継続する分散および高濃度限外濾過物の存在により、透析物の代謝物濃度は血漿水の代謝物濃度に到達する。フローメーターを設けて透析物の流速を得て、その間、それを透析器とは別の路に流す。その結果、使用者は透析物の流速を手で入れる必要はない。
【0028】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、本発明の好適な実施態様の以下の説明を読み、添付の図面を参照することでより明らかとなるだろう。ここで図面は以下の通りである。
【0029】
本発明は好適な実施態様と操作に関連して説明され開示されるが、本発明をこれらの特定の実施態様に限定することを意図するものではない。むしろ、本発明の精神と範囲に入るすべての代わりうる実施態様および改良を包含することを意図するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
好適な実施態様の詳細な説明
図1を参照すると、本発明の血液透析モニターシステムの一実施態様は一般的には参照番号10により示される。そのようなシステムは、BioStat(登録商標)1000の商品名でBaxter Healthcare社から現在市販されている透析装置の一部である。モニター10は入力モジュール12を包含し、これは好適な実施態様において、尿素センサー、または除去される異なる分子または成分を探知する適当なセンサーであってもよい。モジュール12は、所望であれば、多量の透析流出液を断続的にサンプリングする。モジュール12は透析試料体積をライン16を経てセンサー14に連結させる。センサー14は、モニターされる成分濃度に比例するシグナルを発生し、該シグナルをライン20を経て成分シグナル分析器18に連結させる。
【0031】
モジュール12は、透析流出液ライン(図示せず)に好ましくは永続的に連結されるどの種類のサンプリング装置であってもよい。好適な入力モジュール12は、ここで文献の援用として挙げる同時出願の「液体サンプリングモジュール」(”FLUIDSAMPLING MODULE”)と題される1992年10月12日出願の係属出願である米国特許出願第07/960,088号に開示され説明されている。尿素センサー14はこれも援用の文献としてここに挙げる「ヘマトクリットを有する血液試料値の分析するための装置とコントロールキット」(”APPARATUSAND CONTROL KIT FOR ANALYZING BLOOD SAMPLE VALUES INCLUDING HEATOCRIT”)と題される米国特許第4,686,479号に記載されているようなセンサーであってよい。液体試料はアンモニウムイオンに応答して出力を生じるように適合させた電極に関連させたウレアーゼ層を有する尿素センサーに接触させる。ウレアーゼ層は試料中の尿素の一部をアンモニウムイオンに変換し、該イオンは電極に接触して、試料中の尿素濃度に関連した出力を生じる。
【0032】
センサー14はここに例えば例示の目的のために尿素センサーとして説明する。尿素検出に対する他のアプローチがあり、流出透析物ライン中の尿素濃度を測定することができるどの尿素センサーもこの目的のために利用することができる。したがって、本発明は特定タイプの尿素センサーに特有なものではない。しかし、尿素は患者血液の尿毒症に一般的に関連性のある多数の同定可能な成分のただ一つであり、これは血液透析処置の有効性、すなわち毒素除去のマーカーまたは基準として利用することができる。なかでも、そのような他の成分には、例えばクレアチン、尿酸、リン酸塩、カルシウム、ナトリウム、カリウム、グルコース、ベータ2マイクログロブリンがある。必要とされる液体成分を直接または間接的に探知する他の種類のセンサーも本発明の血液透析モニターシステムに用いることができる。
【0033】
尿素センサーの流れ構成に対する他のアプローチも存在する。最も直接的な構成は流出透析物流中への尿素センサーの配置である。もう一つの直接的な構成は液体流からの試料体積を取り、センサーの先に試料体積を流れさせることである。他の構成は以下のものを含む:
1. 流れ注入モードで、センサーの上流に、流出透析物をポンプ移送することでセンサーを新鮮な流入透析物の流れの中にセンサーを置く。
2. 尿素センサーの先に希釈のために所望の比率で流入流と流出流のポンプ移送。
3. キャリヤーバッファー流を尿素センサーの先にポンプ移送しながら流出透析物をこのバッファー流へ注入する流れ注入法。
【0034】
本発明の血液透析モニターシステム10の尿素入力モジュール12および尿素センサー14の一尿素入力/センサーモジュール実施態様は図2の参照番号30により一般的に示される。モジュール30は試料ポート32を包含し、これは、好ましくは放出または透析流出ライン34の一部を形成する。モジュール30は、サンプリングライン38に連結させた接続部36を経て透析流出ライン34に軽く叩いて入れる。
【0035】
モジュール30は自己閉塞ペリスタポンプまたはローラーポンプ40を駆動することにより透析流出物をサンプリングする。ライン38は接続部42および通常は閉鎖されたバルブ44に連結される。接続部42も、保存コイル48を含むライン46に連結される。保存コイル48は最初に透析流出物で充填され、過剰な透析流出物はライン46を通りセパレーター50まで続く。セパレーター50は、透析流出物の滞留を防止し且つライン52を通る電気ショートも防止する空気間隙を含む。
【0036】
保存コイル48がいったん充填されると、ポンプ40が停止され、接続部36からのライン38を閉じる。次に、バルブ44を開け、試料透析物をバルブを通してライン54に流し、次に尿素センサー14に通す。試料透析物を、尿素センサー14および放出セパレーター50の間にライン58により連結された試料ポンプ56により流す。
【0037】
各測定について、試料透析物は、好ましくは尿素センサー14に入力され、セパレーター50に数回どっと流れて良好な試料値を確保する。同時に、試料透析物は尿素センサー14をポンプにより通され、ソース60からの参照液体も、ライン62および第2ポンプ64により尿素センサー14中に送られる。第2ポンプ64は、好ましくは試料ポンプ56上の第2ローラーヘッドであってもよいが、試料ポンプ56と同時に操作するために連結された第2ポンプであってもよい。
【0038】
米国特許第4,686,479号にさらに詳細に示されているように、尿素センサー14は、試料透析物が尿素センサー14中に存在しているかどうかを決定するために空気検出器66を包含する。センサー14は、アンモニウムに特異的な膜(図示せず)を有する電極68を用いる。電極68は、参照電極70に比較された透析物尿素窒素(DUN)を探知する。次に、センサー14により生じたシグナルを、以下に詳細に説明するように、シグナル分析装置18に連結させる。
【0039】
患者の血液透析処置の開始時および望まれるように定期的に、低参照標準および高参照標準の両方がモジュール30で操作されてモジュール30を検定する。モジュール30を低標準により検定するために、バルブ44は閉めたままにし、バルブ72を開けることで、第2ポンプ64はソース74からの低標準液をライン76を経て吸引する。尿素センサー14は、低標準を測定し、これは予想される範囲の値に比較されて、尿素センサー14を正確に検定する。低標準も処置中のシステムの一貫性を試験するために利用することができる。
【0040】
類似の操作を高参照標準を用いて行う。高標準試験を実施するために、高水準バルブ78を除くすべてのバルブを閉める。開いたバルブ78により第2ポンプ64はソース80からの高水準液をライン82を経て吸引する。高標準液は尿素センサー14で測定され、予想される範囲の値と比較されて、尿素センサーも確実に高標準範囲で正確に働くようにする。
【0041】
低標準サイクル試験の終わりに、モジュール30はバルブ44、72および78を閉め、空気バルブ84を一定時間開けることで、試料ポンプ64は空気を、バルブ84、尿素センサー14を通してライン86に引き入れ、そして放出ライン52から出す。各液体セグメント間のこの空気セグメントは、確実に尿素センサー14およびライン54と58が清潔とし、実質的な量の残留液をなくす。
【0042】
図3を参照すると、本発明の血液透析モニターシステム10の操作の模式的実施態様が参照番号90により一般的に示される。システム90は細胞内空間(ICW)92と細胞外空間(ECW)94を包含するものとして模式的に示されており、これらの空間は血液透析患者中の体プールを表わしている。システム90中の血液透析動力学パラメーターが、典型的な透析処置を受ける患者の使われた透析物から計算される。尿素は肝臓で作られ、ECW94の一部として示される。
【0043】
矢印96によって示されるように、残留腎機能が存在する場合、尿素の一部は患者の腎臓によって除去されるかもしれない。しかし、大部分の尿素は、矢印100により示されるように、ECW94中の血液98の最初の接触後の血液透析処置により除去される。尿素も、矢印102により示されるように、ICW 92からECW 94に入る。
【0044】
血液はライン104を通って透析器106に流入することによる血液透析処置中に除去される。透析器106は模式的に透析膜108を有し、該膜を通して尿素は透析物中に分散する。上記のように、透析流出物の試料体積はライン38を通して除去され、次に尿素センサー14により探知される。血液はライン110を経て患者に戻る。
【0045】
定常状態において、血液透析処置中に除去され、尿素センサー14により探知される尿素の全量はECW 94における患者体中の尿素の生成速度に等しい。これにより標準化タンパク質異化速度(nPCR)の計算、または24時間で体質量の1キログラムにつき生じる尿素のグラム数の計算が可能となる。さらに、尿素の濃度時間分布を知ることにより、透析器106のクリアランスについて推定することができ、次に、透析の妥当性の尺度であるクリアランス-時間/体水指数(KT/V)が計算できる。
【0046】
図4は尿素センサー14により検出された典型的な患者の尿素濃度時間の分布を示している。出願人は尿素-濃度時間の分布を初期適合指数曲線112および後期適合指数曲線114に密接につり合わせることができることを発見した。二つの曲線112と114は、30分前と30分後の尿素濃度データを血液透析処置に指数的に適合させたものである。経験的に決定された「変曲」点116は適合曲線112と114との相違を示しており、これは患者のICW92とECW 94からの尿素除去の2プール的性質により起こされる漸次シフトである。
【0047】
血液透析処置で最初に、システム90は患者の血液から、および血液98が密に接触するECW 94から尿素をかなり迅速に除去する。よって、ポイント116前の最初の適合112はかなり急激なスロープである。一定時間(およそ30分間)後、十分な尿素がECW94から除去されて、ICW 92とECW 94との間に尿素勾配が作られる。
【0048】
ポイント116において、ECW94からの尿素除去速度は減少し、ICW 92における細胞からの尿素除去速度は増加する。後者はECW 94およびICW 92間の成長能動差異の結果である。患者の体からの尿素の除去は、(ICW94およびECW 94間の質量移動を調整する)相互区画質量移動領域係数(iMTAC)および(ECW 94および透析流間の質量移動を調整する)透析器質量移動領域係数(dMTAC)に依存する。このiMTACは、典型的にはECW94およびICW 92間の濃度差異を引き起こすdMTACよりも小さい。したがって、ポイント116後の適合曲線114は最初の適合曲線112のスロープよりもさらに平坦なスロープを有する。よって、単一プール分析は、本発明により決定されるような2プール挙動よりもかなり正確性が低いことは明らかである。
【0049】
システム10または30のいずれかによる2プール分析を用いるKT/V、URRおよびSRIの計算は以下の通りである。一つの好ましい実施態様において、血液透析処置の開始前に、本発明の血液透析モニターシステム10または30は、例示の目的のためには、図5に示されているように患者の血液に平衡化される。血液は例えばローラーポンプ118によりライン104を通り透析器106にポンプで運ばれる。透析器106は慣用の透析装置120の一部に接続し、該部分を構成する。
【0050】
平衡化尿素試料分析を得るために、透析物による透析器の最初の充填後、透析物流を透析器106の先で別の路に流すか、または停止し、その間、血液を透析器106にポンプで通す。透析物流は透析器106と透析装置120間に流されることはないが、限外濾過は透析物流がバイパス中にあるときでさえ存在する。血液および透析の尿素濃度が膜で平衡化される5分程度の時間の経過後、平衡試料が得られ、尿素センサー14により探知される。平衡試料は透析処置前の患者血液の尿素濃度を提供する。平衡化濃度は、透析器に典型的な分布、透析物クリアランス(K)および全体水(V)と組み合わせて利用されて、KT/V、URR、nPCRおよび溶質除去指数(SRI)が計算される。
【0051】
平衡化試料を得ないで、血液透析モニターシステム10の第1の好適な実施態様を利用して、以下のステップを図6に示されるように行う:
1. 濃度/時間の分布の二つの指数的回帰がなされ、第一の回帰適合は0分から30分までのセグメントをカバーし、第二の回帰適合は30分間から、ブロック122により示される電流時間までのセグメントをカバーする。
2. 最初(CD1)の30分(CD30)の透析物尿素濃度、電流分(CDi)の透析物尿素濃度および最終(CD2)透析物尿素濃度がこれらの回帰から投影され、ブロック124により示されるように各セグメントについてログ平均透析物濃度を計算する。
3. 次に各セグメントに関する尿素除去をログ平均透析物濃度、透析流出物(QDO)およびセグメント時間の積として計算する。これらの積を合計して、ブロック126により示されるように透析処置に関する投影尿素除去(R)を得る。
4. 七日間にわたる透析処置の典型的な一様ではない間隔のために、所与処置に関する尿素除去はその週の各日に依存する。因子(F)は、クリアランス(K)、尿素分散体積(V)、尿素生成速度(G)、限外濾過速度(Qu)および処置時間(T)の範囲を用いる変数容量尿素動力学的模型から得られた。投影された週ごとの除去(Rwk)はFとRを用いて計算する。
5. 次に、(mg/分での)GをRwkから計算する。
6. Quを全限外濾過と処置時間から計算する。
7. KT/Vに関する「第一予想」(概算)を、ブロック128により示されるように、時間/濃度の分布の指数的回帰から投影されたCD1およびCD2を用いて、式(KT/V)fg=LN(CD1/CD2)を利用して計算する。
8. KおよびQu/Kを(KT/V)fgおよびV(体重のパーセントとして;男性で51%、女性で43%)の概算から計算する。
9. QuT/K(よって新しいKT/V)を次式を用いてブロック130により示されるように計算する:
【0052】
【表3】

10. 新しいKを、工程9で得られたKT/Vから計算する。
11. 工程9−10の反復を、ブロック132により示されているように最終的KT/Vをもたらす収斂が得られるまで続ける。
12. 次に、ブロック134により示されるように、GとVを用いて標準化タンパク質異化速度(nPCR)を計算する。
13. KT/Vの代わりに、URRを1-CD1/CD2として報告することもできる。
【0053】
血液透析モニターシステム10の第二の好適な実施態様を利用して、平衡化試料を最初に得た後に、以下のステップをこれも図6に示されているように行う。透析試料は、ブロック136により示されているように(他に記載されているように)透析処置前に血液で平衡化されている(Cbequil)。
1. 工程1−6を上記のように行う。
7. クリアランス(K)をCbequil、QDOおよびCD1から、ブロック138に示されるように直接に計算する。
8.上記の工程9の式を利用して、ブロック140に示されるようにKT/Vを計算する。
9. 尿素分布(V2)の動力学容量を、KT/V(工程3)からブロック126’により示されたように計算し、K(工程2)をブロック138により示されたように計算する。
10. 溶質還元指数(SRI)は、血液透析により全体の体貯蓄物から除去された溶質(尿素)部分を表わし、ブロック140により示されるように次式から計算する:
SRI=[R−G*T(透析)]/(V1*Cbequil
(式中、V1=V2+限外濾過)
11. 標準化タンパク質異化速度(nPCR)を次にGおよびVを前のように利用してブロック134’に示されているように計算する。
12. KT/Vの代わりに、URRも1-CD1/CD2として報告できる。
【0054】
第一の実施態様は、平衡試料を得ることが不可能であるか、またはそれを得ることが所望であるときに利用することができる。第二の実施態様は、特に、システム10が血液透析装置に一体化されるか、または血液透析装置を自動的に調節できる場合に、平衡試料を得ることが可能であるときに利用することができる。
【0055】
さらに別の実施態様には以下のものがある:
1. 濃度/時間分布もCD1、CD2およびRを投影するために単一指数回帰に適合させることができる。
2. 濃度/時間分布も非直線的回帰(例えば、二指数の合計)に適合することができる。次にこれらの回帰から得られる指数は、血液尿素濃度/時間分布について決定された標準的な2プール尿素動力学を用いて、K、GおよびVを計算するために利用できる。
3. また、血液尿素濃度のために利用されるパーセント尿素減少方法(例えば、KT/V=−LNのタイプの式[Cpost/Cpre-008*時間-限外濾過/重量])を、透析物尿素濃度を用いてKT/Vを計算することもできる。
【0056】
さらに別の実施態様において、ナンバー1と3は単一プール尿素動力学を表わすKT/Vをもたらす一方で、既に記載の好適な実施態様、およびさらなる実施態様数字2は、2プール尿素動力学を表わすKT/Vをもたらす。
【0057】
血液透析モニターシステム10はいかなる一定時間でも試料体積を引き出すことができる。尿素の濃度値は比較的遅い速度で変化するために、ほぼ10分ごとの時間が血液透析処置のために十分であることが経験的に確立されている。この速度変化は十分に遅いので、連続的なサンプリングは必要とされず、間欠的なサンプリングがリアルタイムを表わすのに十分に正確である。よって、5分から10分までの時間ごとの透析流出物のサンプリングがリアルタイムの尿素濃度の分布を提供する。尿素センサー14を利用する便利な試料容量は透析流出物のほぼ2ミリリットル(ml)である。血液透析モニターシステム10は血液透析処置の終わりに平衡化尿素濃度を提供することもできる。
【0058】
本発明の血液透析モニターシステム10の技術のために、3時間から4時間の血液透析処置の約60−90分後、最終的な尿素濃度値を投影することができる。次に、この最終的な投影されたKT/Vの結果があまりに低い場合、この中央処置投影を利用して血液透析処置の問題を処理できる。
【0059】
典型的な患者において、血液透析が始められるとき、患者の血液は100mgの血液中にほぼ70ミリグラムの尿素を含有する。血液透析処置の4時間後、その患者の血液は100mlの血液中にほぼ30mgの尿素を含有するだろう。透析カートリッジ106の透析物側で、透析物は処置の開始後、最初は100mlの透析物中にほぼ25mgの尿素を含有するするだろう。血液透析処置の4時間後、血液濃度はこの血液透析処置中に減少するので、透析物は100mlの透析物中にほぼ5mgから7mgの尿素を含有するだろう。
【0060】
尿素変化は指数的であるために、尿素の約半分が全血液透析処置時間の約1/3で除去される。尿素変化は指数的であるので、血液透析処置時間の最初の部分において、より頻繁にサンプリングするのが便利である。例えば、4時間の血液透析処置中、血液透析モニターシステム10を最初の1時間は5分毎に、そして残りの血液透析処置中は10分毎にサンプリングするように設定することができる。
【0061】
図4について説明されたように、血液透析モニターシステム10の2プール分析は、慣用の1プール分析よりもほぼ12−18%正確であることが経験的に確立されている。この血液モニターシステム10も、血液透析装置120が働いているときだけ透析流出物をモニターするように設定する。一部の先行技術のシステムは、システムアラームによる透析シャットダウン期間を考慮することなく全時計時間を利用する。
【0062】
さらに、「液体サンプリングモジュール」(”FLUID SAMPLING MODULE”)に関する上記関連出願にさらに詳細に記載されているように、血液透析モニターシステム10は、まったくないかまたは非常に低い透析流出物流の時間中に透析流出物のサンプリングを妨げる。まったくないか不安定な流れの時間中のサンプリングは誤差を分析処置に導入することも有りうる。尿素は他の尿毒症の毒素量に関連するので尿素が血液透析処置で利用するのに便利なマーカーであるが、他の周知のマーカーも上記の本発明の血液透析処置に利用できる。
【0063】
典型的には、先行技術の血液透析処置は、典型的には一ヶ月にほぼ一回患者から血液試料を取る(侵入処置)。次に尿素濃度値を最初の血液透析処置値として利用する。最終または後血液透析処置値を血液透析処置の終わりに取られた血液試料から得る。次に、これらの二つの血液からの尿素濃度比率を利用して血液透析処置の効率を決定し、本発明を利用して得られるようには正確ではないKT/V値を提供する。
【0064】
先行技術の分析はさらに不正確であるが、これはICW 92における尿素濃度はECW 94における尿素濃度と等しくなるように試みているものの、かなりの時間のずれが存在するためである。この尿素は血液から迅速に除去されて、血液透析の終わりにICW92とECW 94における尿素濃度の顕著な相違をもたらす。典型的な血液透析処置の終わりで、尿素濃度はICW 92中で約40mg/dlであり、ECW 94中で約30mg/dlとなり得る。よって、ICW92はECW 94の全見掛容量よりも高い全見掛容量を有しているので、約30mg/dlの最終的なECW 94の尿素濃度値は非常に不正確なものとなり得る。単一または1プール分析は、ICW92およびECW 94における最終的な尿素濃度間の相違を考慮に入れていない。1プール分析は、通常はECW 94中の尿素濃度に基づくので、ほぼ30分から90分までの均等化またはリバウンド期間が考慮されない場合、分析は真のKT/Vを過大に評価する。ICW92からECW 94への連続的な分散はECW 94濃度を時間とともにリバウンドまたは増加させる。
【0065】
血液透析モニターシステム10は、透析装置120の一部である透析器106のラインに接続される別個の装置として記載される。本発明の精神または範囲から離れることなく、血液透析モニターシステム10も透析装置120に取り付けるか、または透析装置120と十分に一体化することができる。
【0066】
図7と図8に示される装置を用いる本発明のさらなる特長において、透析装置における複数の前、後、および中間透析平衡試料を得ることが可能となる。図7および図8は例えば商標名BaxterBioStatTM 1000で市販されているような透析装置に接続することができ、そのサンプリング部は既にここで論じられたように図1−6の参照により説明される。そのような平衡試料を得て、試料に関する変数からの値を以下に記載する等式に適用することにより、透析を受ける患者に対して2プール動力学に関する相互区画移動係数(KI)を得て、透析を受ける患者のために処方処置のさらに正確な調整を可能とすることができる。
【0067】
図7と図8の装置の使用により得られる利点は図1−6について見るとさらに容易に明らかである。図1−6に関して記載されるような装置において、透析装置をバイパスモードにおくことで前操作平衡試料を得ることができ、一定時間、例えば5分待つことによりことにより平衡試料を得て、これを用いて全身クリアランス、すなわちKおよび尿素分布の容量、すなわちVの個々の概算を得る。しかし、これを図1−6のシステムで行う際に、多くの困難に直面する。より具体的には、透析装置をバイパスモードにおくには看護婦または患者看護技術者による手動の介在が必要とされることである。さらに、手動の介在はバイパス以外の透析装置を採用するためにも必要とされ、これは多忙な透析装置において、示される多様な警告条件にもかかわらず常に可能となかぎらない。透析装置は小さい十分な透析ループを有しているために、透析物内の血液の平衡化が適当な時間で起こり得ることも予想される。
【0068】
通常、このことは、もし、平衡体積が、添加されるチューブの少量(すなわち、ドイツDTまたはHospal機械等の機械の場合は約150ミリリットルを有する透析器区画の大きさである場合は)起こり得る一方で、ほぼ150ミリリットル以上の大きいかまたはかなり大きい透析ループに直面すると平衡化は5分よりも長くかかることもあり、この時間量は継続する透析処置において許容されないものとなろう。さらに、後操作平衡試料は付加的な手動の介在を必要とし、その結果、それらは処方処置を改良し、および/または有効とする目的に関する付加的な有用な情報を提供するとしても、意図的または不注意に省かれるかもしれない。
【0069】
図1−6に関して記載されるシステムの利用に用いられる方法論に関して、透析物と血液濃度分布は平行するものと思われる。このことは、クリアランスが透析操作にわたって一定であることを意味する。クリアランスが透析器への血液凝固の結果として操作中に遅く変化する可能性は潜在的であるが、よく起こる。これは次にKT/Vを過大に評価させることになる。
【0070】
本発明の装置にしたがって、中間操作クリアランスチェックが実施できることにより、KT/Vが過大評価される可能性を最小化する。図1−図6のシステムが直面するもう一つの問題は、技術者は透析物流を知っており、知られている流速を計算し、そしてKT/Vの計算のために手動でそれを入力することを必要とすることである。次に、使用者は一定時間の流出透析物を集め、および/または機械の流れの検定に頼らなければならない。しかし、機械は透析操作中に異なる流速を有することがわかっている。さらに、透析物流出の集めた試料は必要とされる時間には不便であるので、誤ったデータがしばしば用いられることも起こり得る。
【0071】
これらの問題を避けるために、本発明にしたがって、図7の側面図および図8の上面図に示されているようなバイパスループ装置160が提供される。透析器106と輸送システムとを接続するバイパスループ装置160の付加以外は、このシステムは図1−図6の参照により示され、説明されるものと同じである。
【0072】
より具体的には、示された改良は、例えば、半自動バイパスシステムを包含させて平衡試料の自動化を行うBaxter BioStat 1000(登録商標)尿素モニター等の尿素モニターを用いて行われる。より具体的には、装置は、図9Aおよび図9Bに示されているようにBaxterBioStat 1000(登録商標)尿素モニターに接続されるバルブと流れ検出器からなる。理解されるように、本発明の装置はBaxter BioStat 1000(登録商標)尿素モニターを特に参照することにより説明されるが、その操作を自動化するために他の尿素モニターとともに用いられてもよいことは当業者には容易に自明であろう。使用の際には、操作者がその装置のキーパッドを打つときに、図9Aと図9Bで容易に分かるように、透析流を機械に戻すように指示することによってバルブは開き、透析器をバイパスする。これはこれ以降さらに詳しく説明する。
【0073】
図7と図8に関して、バイパスループ装置160は、Hansonコネクター等の標準な継ぎ手164により透析カートリッジに接続される。ソレノイドバルブはフローメーター166を通る透析物の流れを変えるバイパスバルブ162として機能して、透析器106の血液側を通してポンプで運ばれる血液血漿水で、透析器106中の透析物を平衡化させる。透析器106中の透析物は、上記限外濾過物を血液透析モニターシステム10によりサンプリング可能とさせる接続アーム170により、設定された膜圧に保たれる。図8に更に示されるように、バイパスループ装置106はサドル部材168に取り付けることができ、これを透析モニターシステム10に取り付けて、全ユニットをコンパクトな形に一体化することができる。フローメーター166は透析装置を通る透析物の体積を読むことができ、本発明によるシステムおよび方法の適当な操作に必要な多様な値の計算を可能とする。
【0074】
本発明の方法に従えば、透析装置および透析器106に結合されるバイパスループ装置160は、慣用のソフトウエアの制御下に透析器106および適当な慣用の機械的/電気的な接続部をバイパスさせて、血液を透析器106中の通常よりも少量の透析物プールに平衡化させる。これにより、代謝物の血漿水の(血液と)同じ濃度を有する透析物試料、すなわち「平衡」または「平衡」試料として一般的に知られているものが採取できる。
【0075】
本発明に従えば、平衡試料は多様な方法で用いることができる。最初に、前操作平衡試料を用いて、図1−6により上述したようにKおよびVに関する値を分けることが望ましい。さらに、透析処置後に対応する後操作平衡試料からの、血液尿素窒素(BUN)濃度が血液中で上昇する速度を、患者体内の代謝物の細胞内から細胞外への移動速度に直接に関連付けられる。この速度は、透析効率を向上させための介在の効果または透析処置の変化を予測するために用いられる2プール相互区画移動係数として既にここで記載されたものである。さらに、中間操作平衡試料は透析器クリアランスをチェックするために用いられ、例えば凝固によるクリアランスの遅い変化が確実に起こらないようにすることができる。
【0076】
図1−図6に関して既に記載されたシステムと方法にしたがえば、血液透析モニターシステムの利用者は透析の妥当性を決めるために透析流速(例えば、200ml/分)知ることが重要である。これは、使用者が一定時間、流出透析物を集め、および/または機械の最初の流れ検定に頼ることを必要とする。しかし、前に注意したように、これらの種類の機械はしばしば異なる流速を有し、および/または透析流出流を集めることは不便であるために、誤ったデータがしばしば得られる。よって、フローメーター166の使用によれば、透析物流速を、平衡がなされるどの時間においても決定することが可能となる。
【0077】
図7と8の装置によれば、透析流バイパスはソレノイド値162をバイパス位置に置くことにより作ることができる。このバイパスされた透析物は透析器106から離れて流れることにより、透析器106の透析区画はそこを通る血液で平衡化させられる。したがって、透析操作前、その操作中またはその操作後に平衡試料を操作するために手動の介在は必要とされない。得られる複数の平衡試料を用いて、特定の患者の相互区画移動係数、すなわち(K1)を計算することができ、また透析器106クリアランス(K)の別個の中間操作チェックを行うことができる。さらに、時間により集めた試料または手動操作に頼ることとは反対に、フローメーター166を見ることにより透析物流を装置160から直接的に読むことができる。図1−図6の装置は、平衡化透析物中の代謝物を測定するために図7および図8の装置と組み合わせて用いることができる。
【0078】
図7と図8の装置を用いる本発明の方法によれば、患者の相互区画移動係数K1を得ることが望ましくなる。なぜならば、透析の実施または透析の妥当性を評価することは厳密に必要とされない一方、所与の介在がどのように出力に影響を与えるかについて有用な情報を提供するからである。例えば、より高いKT/VはKまたはTのいずれかを高めることにより得ることができる。既に注意したように時間の増加は職員の増加時間および透析施設の不十分な利用を伴い、通常は増加クリアランス(K)に対する第二オプションとしてなされる。クリアランスは例えば血液流または透析器106の大きさを増加させることにより上げることができる。
【0079】
非常に低い相互区画移動係数(KI)を有する患者の場合、それらの患者はクリアランスのちょうど増加分に十分に反応しない。しかし、KIを知ることにより、使用者/技術者は透析処方に対する所与の介在の効果をさらに正確に確かめることができる。
【0080】
図1−図6の装置に関して記載されたシステム下において、医師または透析看護婦/技術者は、患者に対する最適な治療が得られるまで、KT/Vを測定し、処方を変え、KT/Vを再び測定し、そしてもう一つの処方変化を行う。2プールパラメーター、すなわち患者の相互区画移動係数K1を明確に知ることにより、これは、最適な処方を得るために必要とされる相互作用の数を減少することができる。その結果としての利点は、職員の時間と実験室装置のさらに有効な利用が得られることである。
【0081】
操作の際に、透析器106で透析物を平衡化することが望ましい場合、バイパスソレノイドバルブ162を作動させる。これは透析器106の底からの流れを止め、その流れを中央カラム内のフローメーター166へ迂回させ、次にその流れは透析装置に戻される。フローメーター166の中央カラムを通る流れは透析装置により設定される経膜圧力でシステムを保持する。これにより限外濾過を起こして、透析器106を通って流れる血液による透析器の平衡化を容易にする。さらに別の構築物において、バイパス装置160は異なる大きさの透析カートリッジ106を考慮に入れた自在に伸縮可能な配置で構築することができる。
【0082】
図10と図11は本発明の装置の更に別の実施態様である。この実施態様において、バイパスバルブ/ユニット160を、Hansenタイプ接続部164aで透析流入ラインに接続される。そこから、バイパスバルブ装置160の位置に基づいて、透析物は、バイパスバルブ装置がコネクター164で接続されている透析器106に流れるか、または透析器106をバイパスして、自動化バイパス中に、接続部164で透析装置に接続されているフローメーター166を通させる。ステータスライト205は装置160の位置を示す。バイパスバルブ装置160は、例えば、ロッド上の取付けブロック207を経て透析装置120に取り付けられ、そして透析器クランプ209は透析器106を保持する働きをする。バイパスモードでは、バイパスバルブ装置160からの流れはT接続部201に接続されて透析流を取付けポールで透析装置120に戻す。
【0083】
本発明の装置の二つの実施態様の記載からわかるように、バイパスシステムは二つの主要なコンポーネントからなる。第一のコンポーネントはバイパス装置160であり、第二部分は、例えば、Hansen接続部164と164aを通して多様なユニットに接続された置き換え可能なチューブにより示されるチューブとしてのバイパスチューブセットである。バイパス装置160は、バルブ、流れ検出器166(置き換え可能)、およびそのサドル、ならびにステータスライト205を有する。
【0084】
本発明の方法にしたがえば、透析装置をバイパスモードに置いて、バルブ162を賦活化して、血液ポンプを走らせることで透析物バイパスを作ることにより平衡試料を得ることができる。限外濾過および分散は透析器106の血液区画から透析物区画まで起こるために、設定された平衡時間(tequil)後、透析器106中の透析物濃度は血液の血漿水濃度と同となる。しかし、tequilは必ずしもわかっていないので、測定された濃縮物がわずかに小量(CDelta)だけ異なるまで継続的に透析試料を採取する。次に、最後の二つの試料のうちで高い方が平衡試料であるとみなされる。この操作は、透析の前、透析中、または透析の完了後に行ってもよい。透析中または透析後に行った場合、CDeltaはBUNの低下のために透析の開始前のCDeltaよりも小さい。
【0085】
好ましくは、一つの平衡試料は、尿素分散の体積(V)からクリアランス(K)を分けるために透析の開始時に採取する。最初の測定値と比較するためにKのもう一つの測定値を得ることにより透析器の性能を確実とする透析セッションの中ごろで取ってもよい。透析の完了後、または血液ポンプが透析中ごろで停止される後の特定間隔で一連に取られた3以上の付加的平衡試料により相互区画移動係数(KI)が得られる。通常、サンプリングの間隔は5分ごとであるが、それよりも短い間隔(例えば2分間)を用いて、患者が本装置に居る全時間を減少させることができよう。その後、複数の後透析平衡試料を用いて慣用の方法による非直線適合技術を用いて、次式を適合させる:
Ct=C0+(C−C0)e(-γt)
上記式において、Ctは時間tでの後透析平衡濃度であり、ここでゼロ時間は透析の終わりの時間であり、C0は透析後すぐの(所与の濃度値は有限の平衡時間を必要とし、透析後すぐの平衡時間は存在しないために測定できない)濃度であり、Cは有限時間での濃度であり、そしてγは時間定数である。少なくとも3平衡試料を用いて、γ、C0およびCをこの適合操作から得ることができる。尿素発生速度と残留腎機能はこの式には含まれない。この適合等式の代用形には以下のものがある:
Ct=Ci+(C−C0)e(-γt)
Ct=C0+(C)e(-γt)
これらを用いて、利用可能な平衡試料の数に応じたγを得ることができる。
【0086】
次に、相互区画移動係数を関数(KI=γVcVi/VT)から得ることができる。
【0087】
VcおよびViはそれぞれ細胞内および細胞外容量であり、VTは前透析平衡試料と図1−6により既述のアルゴリズムを用いて得られる。VcおよびViは、比率Vc/Vi=RV(RVは典型的には2/3である)を有するとみなされる。
【0088】
もしくは、図7および図8の装置を用いることにより、前と同じように、血液ポンプを走らせながら透析装置をバイパスにおくことで限外濾過と攪拌を透析器106中で透析物を平衡化し、そして連続的な測定濃度がわずかに少量だけ異なるようになるまでサンプリングを続けることにより平衡試料を得ることでKIを得ることもできる。少なくとも1種類、しかし好ましくは2種類以上の平衡試料(Ct)が透析中、しかし好ましくは透析が終わった後に採取することができる。その後、この方法は、透析が止まっていたときの時間、例えば血液ポンプが止められたときの時間に純粋に基づいて決定された上記の場合とは異なり、後の透析濃度情報をも用いてKIを計算する点において異なる。これはKIのより信頼性のある概算を与える傾向があり、以前の方法よりも好まれるものである。さらに、VcとKIの比率が特定の値を有するとみなされる上記の場合とは異なり、G、K、KRおよびVTに関する現在の値を想定しながら、非直線適合技術が用いられ、測定された濃度に対して代謝物の透析濃度と後透析濃度を比較してKIとKc/Kiに関する最善の値を得ることもできる。これらの値は前透析平衡試料および図1−6により前に説明したアルゴリズムを用いて得られる。
【0089】
より具体的には、以下に示す等式は濃度CcとCI(ここでCcは細胞外区画での濃度であり、Ciは細胞内区画での濃度である)について解決されるために、KIとVc/VIの所与の値について、SSQが最小化される。SSQは、Ccと透析中の等しい測定血液濃度(CBeq)と透析後の平衡濃度(Ceq)との相違の2乗の合計である。CBeqは測定透析物濃度から得られる。
透析中、次式:
【0090】
【表4】

を解くことにより、そして透析後、次式:
【0091】
【表5】

(式中、t=0、Cc=Ci=Cco、SSQは次式により最小化することができる:
【0092】
【表6】

式中、
【0093】
【表7】

は限外濾過等の透析物速度であり、Ceqは後透析平衡濃度である。
【0094】
SSQは多様な無数の技術により最小化してもよく、KIとRVの最適な適合値はそれらの適当な範囲(KIに関して200−1,600ml/分)および(RVに関して0.5−0.9)で特定の増加量でそれぞれ変えられ、SSQは各対の値について計算される。次に、KIとRVの最適値は最小SSQをもたらす一対の値である。この技術の限定は、増加量が小さい場合多くの計算が必要とされることである。例えば、KIが50ml/分の増加量で変えられ、RVが0.05の増加量で変えられる場合、28×8すなわち224であり、SSQの計算を実施しなければならない。さらに、所与の増加量よりも正確なKIとRVの予測値を得ようとする場合、当業者に容易に明らかで公知な、さらに正確な精密な方法を用いる必要がある。そのような方法として、接合勾配法、疑似ニュートン法、ダウンヒル単一法、および直接設定法を挙げることができる。すべてのそのような方法によりパラメーターが予測でき、すなわちKIおよびRVを予測可能な方法で変えて正確な値を決定してもよい。
【0095】
要約すると、本発明は、平衡試料をどのようなタイプの透析装置によっても自動的に得ることを可能とすることで操作者の誤差を避け、「K」の不変性(よって透析器への漸次凝固の欠如)を確かめる装置を提供する。これによって、次に、二つの有用な動力学的パラメーター(すなわち、相互区画移動係数であるKIと細胞内体積に対する細胞外体積の比率であるRV)を上記の方法により得ることができる。さらに、全容量が知られているので、RVを知ることは実際の細胞内および細胞外容量の明確な知識を意味する。
【0096】
KIを知ることは、透析を実施するためにも透析を十分に評価するためにも厳密には必要ではないが、しかし、それが所与の介在が結果にいかに影響を与えるかについて価値のある情報を提供する。例えば、より高いKT/VはKまたはTのいずれかを増加させることにより得ることができる。しかし、時間の増加(これは増加した職員の時間および透析装置の不十分な利用を意味する)は、通常は、例えば血液流、透析物流または透析器の大きさを増加させることにより上げることのできるクリアランス(K)を増加させることにより二次的になされる。しかし、非常に低い相互区画移動係数(KI)を有する患者はクリアランスの増加に対して十分純粋に反応することはない。しかし、患者に対して最適な治療を得るためにKIを知ることによって、使用者は透析の処方に対する所与の介在の効果を確かめることを可能とする。所与の患者に対する2プールパラメーター(すなわち相互区画移動係数)を知ることは最適な透析処方を得るために必要な反復数を減少させるだろう。これにより、職員の時間と実験施設のより効果的な利用がなされる。
【0097】
RVの知識は患者の水和化状態のある症候を示す。一般的に、透析患者は、細胞内体積を膨張させてRVの高い値をもたらす。しかし、RVが低い場合、内在透析的低血圧症の可能性が高まる。RVを知ることはこれを避けることを助ける。さらにより重要であることはRVから得ることのできる細胞内体積の値である。このパラメーターは体細胞質量を示すものである。透析患者が時間を延長して血液透析により保持されるときに、「浪費」つまり筋肉質量の収縮がしばしば存在する。時間とともに細胞内体積を追うことにより、栄養不足が顕著な問題となる前に栄養学的な介在をなすことができる。
【0098】
処置の開始時に発明の装置の使用に関して、以下のステップとディスプレイ順序がスクリーン1で順を追ってなされる。
スクリーン1:平衡試料?
イエス ノー ホーム
「イエス」を選択するとバイパス装置160バルブが自動的に開く。以下のスクリーンは血液ポンプおよび透析装置を正確に調節するように使用者を促すように思える。各スクリーンは2ラインディプレイである。
スクリーン2: 血液流を確立する
なされた ホーム
スクリーン3: UFを確立する
なされた ホーム
スクリーン4: 平衡XX:XX
取り止め
平衡化の順番において、システム中の時計が動き、尿素モニターがその最初の試料を2分間で取り、その操作が透析の開始前に行われる場合、二つの連続する試料が2mg/dl以下になるか、またはBUNの量が落ちたときにその操作が透析処置の後半に行われる場合、一定の割合で小さくなる差以下になるまで2分毎のサンプリングを続ける。尿素モニターは、その平衡試料の結果として最後の2つの試料の高い方を用い、平衡結果を印刷し、バイパス装置160バルブを自動的に閉めて、処置時計を動かし始める。二試料間に濃度の違いが、12分試料の終わりで特定された最小濃度以下に落ちない場合(12分はバイパス装置160バルブとの平衡化のための最大時間である)、尿素モニターは「平衡化、不成功」と印刷し、自動的にバイパス装置160バルブを閉じて、処置時計を動かし始める。通常の性質のセンサーと安全装置を取り入れてバイパス装置160バルブがうまく働かなかったことを利用者に警告する。
【実施例】
【0099】
実施例
実験操作
一つの実例において、20人の血液透析患者を実施可能性の研究に採用した。患者を単一の透析セッションの最初の15分中に調べた。2mlの血液試料を、針を適当に配置した後に患者のアクセス装置から採取した。次に、患者を通常の方法で透析を受けさせた。操作の開始前、バイパス装置16バルブを透析装置120の流入および流出透析物ラインに接続した。装置160バルブは透析器120からの透析物をカートリッジ106に到達しないようにバイパスさせた。透析の開始直後、尿素モニターは平衡化透析物のサンプリングを始めた。測定された尿素濃度が一定となったらすぐに、その濃度を記録し、バイパス装置160バルブを閉じるか、または取り外して、透析セッションをノーマルにして続けた。
【0100】
試験結果
尿素センサーが平衡結果を得るためにかかった平均時間は約4.8分であり、4分から8分までの範囲にあり(手動による方法は7分を標準と設定する)、平均限外濾過速度は17.5ml/分で2.8ml/分から28ml/分の範囲にあった。図12は、「ベックマンCX3分析器」の商品名で知られている市販されている分析器を用いて臨床実験室で測定されたBUNと比較して、バイパスバルブシステムを用いた本発明の改良尿素センサーにより測定される前透析尿素濃度、および血漿水補正実験室結果(測定BUNを0.93で割ったもの)を表の形で示す。平衡結果および血漿水補正結果は、図13のグラフに示されているように、0.978の正確因子を有して、かなりな相関性(r=0.993)と一致(CCC=0.972)がある。機械的な問題も、平衡操作がうまくいかなかったこともなかった。
【0101】
結論
本発明の装置がない場合、先行技術の尿素センサー/モニターは平衡試料の問題に直面した。本発明の装置の利用はこれらの問題を取り除き、使用者に他の臨床的義務に向かわせることにより誤りの可能性を減少させている。
【0102】
本発明を一般的に記載してきたが、同じことが本発明を非限定的な方法で記載されている添付の請求の範囲からよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明の血液透析モニターシステムの一実施態様のブロック図である。
【図2】図2は、図1の血液透析モニターシステムの一部の一実施態様の模式図である。
【図3】図3は、血液透析モニターシステムの液体機能の部分的ブロック図および部分的模式図である。
【図4】図4は、患者の2プール分析を示す典型的な患者の尿素濃度時間の分布である。
【図5】図5は、血液モニターシステムの平衡を示す機能的ブロック図である。
【図6】図6は、本発明の好適な実施態様の好適な実施態様のフローチャートである。
【図7】図7は、透析器に接続された示された本発明による装置の側面図である。
【図8】図8は、透析器に接続され、そして透析装置に取り付けられて示された本発明装置の上部模式図である。
【図9】図9Aと図9Bは、血液透析モニターシステムに関する本発明の装置を示す図5に類似する図であり、通常の流れ条件、および平衡化中でそれぞれ示されている。
【図10】図10は、本発明の装置、および尿素モニター(BioStat1000(登録商標)の名称でBaxter Healthcareから市販されているもの等)、および透析器との相互の実際の接続を示す詳細な図である。
【図11】図11は、図10の装置の拡大図である。
【図12】図12は、本発明の装置を用いる臨床データを示す表である。
【図13】図13は、本発明の装置を用いる血漿水濃度と平衡化DUNとの関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝物濃度が患者の血液の血漿水の代謝物濃度と同じである平衡化透析物試料を得る方法であって、
透析器への透析物流を停止し、その間、血液ポンプを動かし、患者の血液からの限外濾過を行う工程;
部分的平衡化後、該透析物中の代謝物の濃度を最初に測定して、濃度が測定されている第1試料を得る工程;
特定の時間が経った後に該透析物の代謝物濃度を測定して濃度が測定されている第2試料を得る工程;
第2試料中の代謝物濃度を第1試料中の濃度と比較する工程;および
二つの連続する試料の差異が特定された量よりも少なくなるまでサンプリングを続ける工程、を包含する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−90104(P2007−90104A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1866(P2007−1866)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【分割の表示】特願平9−539950の分割
【原出願日】平成9年4月24日(1997.4.24)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】