説明

平面コイル、およびこれを備えるコイルモジュール、およびこれを備える非接触式電力伝送装置の受電装置、およびこれを備える非接触式電力伝送装置

【課題】渦電流損失を抑制することのできる平面コイル、およびこれを備えるコイルモジュール、およびこれを備える非接触式電力伝送装置の受電装置、およびこれを備える非接触式電力伝送装置を提供する
【解決手段】2次側コイルは、断面長方形の平角線43A,43Bを導電線とし平面状に巻回されてなる平面コイルであり、平角線43A,43Bは、その上面46A,46Bに平角線43A,43Bの延伸方向に延びる複数の切り込み45が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面長方形の平角線を導電線とし平面状に巻回されてなる平面コイル、およびこれを備えるコイルモジュール、およびこれを備える非接触式電力伝送装置の受電装置、およびこれを備える非接触式電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電装置と受電装置とを電気的に非接触の状態とし、両装置間で電力の伝送を可能とする非接触式電力伝送装置が提案されている。この非接触式電力伝送装置の電力伝送は、送電装置および受電装置の双方に設けられたコイルの電磁誘導作用を利用して行われている。
【0003】
ところで、非接触式電力伝送装置の多くは小型化が要求されるため、送電装置および受電装置に設けられるコイルとして一般に平面コイルが用いられている。例えば、こうした平面コイルとして、特許文献1には、導電線の断面の形状が円形である丸線を複数本並列に整列させ、これを平面状に巻回するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−16235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、導電線として丸線を用いて平面コイルを形成すると、導電線間の隙間の面積が大きくなるため、平面コイルの断面積に占める導電線の断面積の割合、すなわち占積率が低下する。その結果、導電線、ひいては平面コイルが発熱する。この点、導電線の断面の形状が正方形である角線を用いて平面コイルを形成した場合には、丸線を用いて平面コイルを形成した場合と比較して、導電線間の隙間の面積を減少させることができるため占積率を増加させることが可能になる。しかしながら、例えば複数の角線を並列に巻回することで平面コイルを形成する場合に、角線が個々に分離して捻れしまうことがあるため、その生産性が低下したり、丸線を用いた場合よりかえって導電線の占積率が低下したりしてしまうことになりかねない。
【0006】
そこで、角線よりも断面積が大きい導電線である平角線を用いれば、角線よりも少ない本数で同じ占積率を有する平面コイルを形成することができる。すなわち、上述した生産性が低下することを抑制することができる。しかし、このように導電線として平角線を採用した場合には、導電線に磁束が通過することにより大きな渦電流が発生し易く、これが熱エネルギとして消費されることで渦電流損失が比較的大きくなる傾向がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、渦電流損失を抑制することのできる平面コイル、およびこれを備えるコイルモジュール、およびこれを備える非接触式電力伝送装置の受電装置、およびこれを備える非接触式電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
・本発明の平面コイルは、断面長方形の平角線を導電線としてこれを平面状に巻回してなる平面コイルにおいて、前記導電線は、その上面および下面のうち少なくとも一方にその延伸方向に延びる複数の切り込みが形成されてなることを特徴とする。
【0009】
・この平面コイルにおいては、前記導電線を並行に整列させてそれらの端部を電気的に接続した集合導電線を平面状に巻回してなることが好ましい。
・この平面コイルにおいては、前記集合導電線は、外周側の前記導電線と内周側の前記導電線の位置が前記平面コイルの周方向の途中で入れ替わるよう巻回されてなることが好ましい。
【0010】
・この平面コイルにおいては、単一の前記導電線が前記平面コイルの周方向の途中で折り返されてなることが好ましい。
・この平面コイルにおいては、第1のコイルとこれに直列に接続される第2のコイルとを含み、前記第1のコイルと前記第2のコイルとが積層されてなることが好ましい。
【0011】
・この平面コイルにおいては、前記第1のコイルと前記第2のコイルとはその巻回方向が逆向きに設定されてなることが好ましい。
・本発明のコイルモジュールは、上述した平面コイルの前記上面および前記下面の少なくとも一方に漏れ磁束を低減するための磁性体が設けられていることを特徴とする。
【0012】
・本発明の非接触式電力伝送装置の受電装置は、送電装置から伝送される電力を受電コイルモジュールにより受ける非接触式電力伝送装置の受電装置であり、前記受電コイルモジュールとして、上述したコイルモジュールが設けられていることを特徴とする。
【0013】
・本発明の非接触式電力伝送装置は、送電装置および受電装置を備え、前記受電装置として、上述した受電装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、渦電流損失を抑制することのできる平面コイル、およびこれを備えるコイルモジュール、およびこれを備える非接触式電力伝送装置の受電装置、およびこれを備える非接触式電力伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の非接触式電力伝送装置について、その断面構造を示す断面図。
【図2】2次側コイルの斜視構造を示す斜視図。
【図3】図2の領域Xの拡大斜視構造を示す斜視図。
【図4】(a)は従来の平角線の斜視構造を示す斜視図、(b)は本実施形態で用いられる平角線の斜視構造を示す斜視図。
【図5】比較例の非接触式電力伝送装置について、2次側コイルの等価回路を示す模式図。
【図6】本実施形態の非接触式電力伝送装置について、2次側コイルの等価回路を示す模式図。
【図7】本発明のその他の実施形態にかかる非接触式電力伝送装置について、2次側コイルの斜視構造を示す斜視図。
【図8】同実施形態の非接触式電力伝送装置について、平面コイルの平面構造を示す平面図。
【図9】同実施形態の非接触式電力伝送装置について、平面コイルの平面構造を示す平面図。
【図10】同実施形態の非接触式電力伝送装置について、平角線の斜視構造を示す斜視図。
【図11】同実施形態の非接触式電力伝送装置について、平角線の斜視構造を示す斜視図。
【図12】同実施形態の非接触式電力伝送装置について、平角線の斜視構造を示す斜視図。
【図13】同実施形態の非接触式電力伝送装置について、平角線の斜視構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明にかかる非接触式電力伝送装置の全体構成について説明する。
非接触式電力伝送装置には、2次電池22を有する受電装置20と、受電装置20に電力を伝送する送電装置10とを備えている。図1では、受電装置20として携帯電話を例示している。
【0017】
送電装置10には、受電装置20に電力および信号を伝送する1次側コイルモジュール30と、1次側コイルモジュール30をはじめとする各種の構成要素を収容するハウジング11とが設けられている。ハウジング11には、受電装置20を載せるための搭載面11Aが形成されている。
【0018】
1次側コイルモジュール30において、電力が供給されることにより磁束を発生する1次側コイル31には、同1次側コイル31に発生する磁束の漏れを抑制する磁性体32が組み付けられている。この磁性体32は、1次側コイル31の底面に対向する底壁部分32Aと、1次側コイル31の外周を取り囲む周壁部分32Bとを有する。これら底壁部分32Aおよび周壁部分32Bはフェライト材料により形成されている。
【0019】
受電装置20には、送電装置10から伝送される電力および信号を受ける2次側コイルモジュール40と、2次側コイルモジュール40および2次電池22をはじめとする各種の構成要素を収容するハウジング21とが設けられている。なお、2次側コイルモジュール40は「受電コイルモジュール」に相当する。
【0020】
2次側コイルモジュール40において、1次側コイル31に発生する磁束と鎖交することにより誘導電流が発生する2次側コイル41には、1次側コイル31に発生する磁束の漏れを抑制する磁性体42が組み付けられている。
【0021】
磁性体42には、2次側コイル41の底面が接触する接触面42Aが設けられている。磁性体42の外径は、2次側コイル41の外径よりも大きく設定されている。磁性体42としては、アモルファス材料により形成されたシート状のものが用いられている。
【0022】
次に、非接触式電力伝送装置の給電態様について説明する。
受電装置20が送電装置10の搭載面11Aに搭載されているとき、送電装置10の1次側コイルモジュール30と受電装置20の2次側コイルモジュール40とが対向する状態となる。そして、この状態において、1次側コイル31に交流電流が供給されることにより、1次側コイル31に高周波の交番磁束が発生する。そして、この交番磁束が2次側コイル41に鎖交することにより2次側コイル41において交番電力が発生する。この交番電力は、整流回路(図示略)により平滑化および整流されて2次電池22に供給される。
【0023】
図2を参照して、2次側コイル41の詳細な構成について説明する。以下では、2次側コイル41において、その中心線Cに直交する方向を「径方向」とする。また、径方向において中心線Cに向かう方向を「内方」とし、径方向において中心線Cから離れる方向を「外方」とする。さらに、2次側コイル41が内方から外方に向けて巻回される方向を巻回方向とする。
【0024】
2次側コイル41は、2本の導電線、具体的には断面長方形状の平角線43A,43Bを並行に整列させてそれらの端部51Aと端部51Bおよび端部61Aと端部61Bとを電気的に接続した集合導電線43を平面状に巻回することにより形成される平面コイルである。すなわち、2次側コイル41は、集合導電線43が巻回された第1のコイル50と、この第1のコイル50と直列に接続されるとともに第1のコイル50に積層される第2のコイル60と、第1のコイル50と第2のコイル60との境界に位置する連続部分44とを有している。第1のコイル50と第2のコイル60とはその巻回方向が逆向きに設定されている。すなわち、2次側コイル41の巻回方法はいわゆるアルファ巻きとなっている。
【0025】
連続部分44には、第1のコイル50における外周側の平角線43Aと第1のコイル50における内周側の平角線43Bの位置が、2次側コイル41の周方向において入れ替わる折り返し部44Aが設けられている。すなわち、こうした折り返し部44Aが形成されているため、第2のコイル60においては、平角線43Aが内周側に位置し、平角線43Bが外周側に位置する。
【0026】
図3を参照して、集合導電線43の形状について詳細に説明する。
集合導電線43を構成する平角線43A,43Bとしては、上面46A,46Bおよび下面47A,47Bを有するとともに断面の形状が長方形である銅線が用いられている。これら平角線43A,43Bは、その上面46A,46B、下面47A,47B、および側面がエナメル層(図示略)によって被覆されるとともに、さらにこのエナメル層は自己融着性を有した融着層(図示略)によって被覆されている。そのため、平角線43Aおよび平角線43Bはこの融着層により自己融着されている。
【0027】
平角線43A,43Bの上面46A,46Bには、集合導電線43の延伸方向に延びる複数の切り込み45が形成されている。この切り込み45の対向する切り込み面48A,48Bも、上面46A,46Bと同様にエナメル層によって被覆されている。このため、切り込み面48Aと切り込み面48Bとは電気的に絶縁状態となっている。
【0028】
また、切り込み45は、下面47A,47Bにまで達していない。すなわち、切り込み45は上面46A,46Bおよび下面47A,47Bを貫通していない。
図4を参照して、集合導電線43に発生する渦電流について説明する。
【0029】
図4(a)に示されるように、従来一般の平角線71A,71Bにより構成される集合導電線71の上面72A,72Bおよび下面73A,73Bには上述した切り込みは形成されていない。そのため、1次側コイル31に発生した磁束Bが集合導電線71を通過することにより広範囲にわたり渦電流W1が発生する。
【0030】
その一方、図4(b)に示されるように、1次側コイル31に発生した磁束Bが集合導電線43を通過すると、渦電流W2が発生する。ここで、集合導電線43には、切り込み45が設けられているため、この切り込み45を跨ぐ渦電流の発生が抑制され、渦電流W2が発生する部位が小さくなる。すなわち、集合導電線43において渦電流W2の流れる部位の電気抵抗が大きくなるため、この渦電流W2は、図4(a)に示される切り込みが形成されていない集合導電線71と比較すると小さくなる。
【0031】
次に、図5を参照して、「比較コイル41X」、すなわち、本実施形態の非接触式電力伝送装置の2次側コイル41から折り返し部44Aが省略された構成の2次側コイルに発生する誘導電流について説明する。なお、以下の比較コイル41Xの説明において、本実施形態の2次側コイル41と共通する構成については同一の符号を付している。また、比較コイル41Xの構成を簡略化して説明を行うため、集合導電線43のターン数を2ターンから1ターンに変更している。
【0032】
1次側コイル31に発生した磁束Bが比較コイル41Xの中心付近を通過することにより、集合導電線43には、電流IAが流れる。その一方、1次側コイル31に発生した磁束Bcが集合導電線43の間、すなわち、平角線43Aと平角線43Bとの間を通過することにより、これら平角線43A,43Bには誘導電流iaが流れようとする。この誘導電流iaは、第1のコイル50および第2のコイル60を周回するループ電流となって電流IAの流れを妨げる。その結果、こうしたループ電流の発生に起因する電力伝送損失の増大が避けられないものとなる。
【0033】
次に、図6を参照して、2次側コイル41に発生する誘導電流について説明する。なお、2次側コイル41の構成を簡略化して説明を行うため、図5と同様に集合導電線43のターン数を2ターンから1ターンに変更している。
【0034】
1次側コイル31に発生した磁束Bが2次側コイル41の中心付近を通過することにより、集合導電線43には、電流IAが流れる。その一方、1次側コイル31からの磁束Bcが集合導電線43の間、すなわち、平角線43Aと平角線43Bとの間を通過することにより、これら平角線43A,43Bには誘導電流iaが流れようとする。
【0035】
ここで、第1のコイル50に着目すると、誘導電流iaは連続部分44の折り返し部44Aに向けて流れ、その一方、第2のコイル60に着目すると、誘導電流iaは連続部分44の折り返し部44Aに向けて流れようとする。すなわち、第1のコイル50の誘導電流iaと第2のコイル60の誘導電流iaの流れの向きが逆になるため、これら相殺されることとなる。そのため、2次側コイル41においては、こうしたループ電流は発生しないか、比較コイル41Xに流れるループ電流と比較して相対的に極めて小さなループ電流しか流れないこととなる。その結果、こうしたループ電流の発生に起因する電力伝送損失の増大が抑制することができ、2次電池22に多くの電力を供給することができるようになる。
(実施形態の効果)
本実施形態の非接触式電力伝送装置によれば以下の効果が得られる。
【0036】
(1)2次側コイル41は、断面長方形の平角線43A,43Bを導電線とし平面状に巻回してなる平面コイルであり、平角線43A,43Bは、その上面46A,46Bに平角線43A,43Bの延伸方向に延びる複数の切り込み45が形成されている。
【0037】
この構成によれば、導電線として平角線43A,43Bを採用しているため、例えば丸線を平面状に巻回した平面コイルと比較して導電線間に存在する隙間の面積が小さくなる。このため、平面コイルの断面積に占める導電線の断面積の割合、すなわち占積率を増加させることができ、2次側コイル41が発熱することを抑制することができる。
【0038】
また、こうした導電線として平角線43A,43Bを採用した平面コイルにあっては、磁束が通過する際に導電線に大きな渦電流が発生し易く、これが熱エネルギとして消費されることで渦電流損失が比較的大きくなる傾向がある。この点、平角線43A,43Bの上面46A,46Bにその延伸方向に延びる切り込み45を複数形成することにより、これら切り込み45を跨ぐ渦電流の発生を抑制するようにしているため、渦電流の発生する部位が小さくなる。したがって、こうした切り込み45を有していない場合と比較して、渦電流の発生を抑制することができるようになり、上述したような渦電流損失の低減を図ることができる。
【0039】
さらに、この平角線43A,43Bは、切り込み45が形成されていない部分によってその形状が維持されるため、例えば複数の丸線や角線を並列に巻回して2次側コイル41を形成する場合とは異なり、その形成時において平角線43A,43Bが個々に分離して規則正しい整列巻きとならなくなったり、角線を用いた場合における個々の導電線が捻れたりすることがないため、2次側コイル41における高い生産性効率を維持することができる。
【0040】
(2)2次側コイル41は、平角線43A,43Bを並行に整列させてそれらの端部51Aと端部51Bおよび端部61Aと端部61Bとを電気的に接続した集合導電線43を平面状に巻回している。したがって、2次側コイル41の厚みが増大することを抑えつつ、同2次側コイル41に必要とされる巻き数を確保することができる。
【0041】
(3)集合導電線43は、端部51Aと端部51Bにおける外周側の平角線43Aと平角線43Bの位置が端部61Aと端部61Bにおいて入れ替わるように、平角線43Aと平角線43Bの位置が2次側コイル41の周方向の途中で入れ替わるよう巻回されている。
【0042】
集合導電線43を構成する平角線43A,43Bの間を磁束が通過すると、この磁束により平角線43A,43Bには誘導電流が発生しようとする。この点、本実施形態によれば、外周側の平角線43Aと内周側の平角線43Bの位置が集合導電線43の端部51A,51Bと端部61A,61Bとで入れ替わるため、こうした誘導電流が2次側コイル41の平角線43A,43Bを周回するループ電流の発生、さらにはこうしたループ電流の発生に起因する電力伝送損失の増大を抑制することができるようになる。
【0043】
(4)2次側コイル41は、第1のコイル50とこれに直列に接続される第2のコイル60とを含み、第1のコイル50と第2のコイル60とが積層されている。したがって、2次側コイル41の径方向の厚みが増大することを抑えつつ、2次側コイル41に必要とされる巻き数を確保することができる。
【0044】
(5)第1のコイル50と第2のコイル60とはその巻回方向が逆向きに設定されている。したがって、2次側コイル41は、集合導電線43の巻回方法が異なる、いわゆるアルファ巻きとなるため、集合導電線43の各端部51A,51Bおよび61A,61Bを2次側コイル41の内径部から引き出す必要がなくなる。したがって、このように平角線43A,43Bの各端部51A,51Bおよび端部61A,61Bを2次側コイル41の内径部から引き出すことに起因して2次側コイル41の厚みが増大することを抑制することができる。
【0045】
(6)2次側コイル41には、漏れ磁束を低減するための磁性体42が設けられている。したがって、2次側コイルモジュール40における漏れ磁束を低減することができ、こうした漏れ磁束の増大に伴う電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は、上記実施形態の内容に限られるものではなく、例えば以下のように変更することもできる。また、以下の変形例は上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0047】
・図7に示されるように、2次側コイル41において、第1のコイル50と第2のコイル60との境界部分である連続部分44から折り返し部44Aを省略することができる。このとき、第1のコイル50および第2のコイル60ともに、平角線43Aが外周側に位置し、平角線43Bが内周側に位置する。こうした構成であっても、上記(1)、(2)および(4)〜(6)に準じた効果を奏することができる。
【0048】
・各平角線43A,43Bを周回するループ電流を抑制するため、換言すれば、平角線43A,43Bに流れようとする誘導電流を効果的に相殺するためには、上記実施形態のように、2次側コイル41を構成する集合導電線43の中心である連続部分44で平角線43Aと平角線43Bの位置を入れ替えることが好ましい。しかし、平角線43Aと平角線43Bの位置は、第1のコイル50または第2のコイル60の途中において入れ替えることもできる。
【0049】
・2次側コイル41は、単一の平角線43Aを平面状に巻回するとともに、平角線43Aを2次側コイル41の周方向の途中で折り返すことにより形成してもよい。平角線43Aは、上面46Aに複数の切り込み45を有し集合導電線43に準じた構成であるため、上記(3)に準じた効果を奏することができる。また、この場合には、複数の切り込み45は、単一の平角線43Aの上面46Aおよび下面47Aのうち少なくとも一方に平角線43Aの全周にわたり形成されていることが好ましい。なお、折り返すとは、平角線43Aの上面46Aと下面47Aとが入れ替えられるように折り返されることを意味する。
【0050】
・図8に示されるように、切り込み81を有する1本の平角線80を巻回することにより2次側コイル90を構成することができる。
・図9に示されるように、切り込み103を有するとともに、並行する2本の平角線101A,101Bにより構成される集合導電線101を巻回し、1層のみで2次側コイル110を構成することができる。このときには、平角線101A,101Bの周方向における中間部分102において2次側コイル110の周方向における内周と外周が入れ替わる。こうした構成であっても、上述したようなループ電流の発生を抑制することができる。
【0051】
・図10に示されるように、平角線121Aと平角線121Bとにより構成される集合導電線121の上面122A,122Bと下面123A,123Bの両方に切り込み124を設けることができる。
【0052】
・図11に示されるように、切り込み132を有する平角線131Aと切り込み133を有する平角線131Bを縦方向に並行して積層した集合導電線131を巻回することにより2次側コイルを形成することができる。
【0053】
・図12に示されるように、切り込み142は、必ずしも平角線141の全周に渡って形成されている必要はない。すなわち、平角線の上面143および下面144の少なくとも一部に形成されていればよい。また、切り込み142は、平角線141が延びる方向と平行でなくてもよく、同方向と直交しない程度に所定角度傾斜していてもよい。
【0054】
・図13に示されるように、切り込み152Aを、平角線151の端部151Aから端部151Bの途中まで形成するとともに、切り込み152Bを、平角線151の端部151Bから端部151Aの途中まで形成することができる。
【0055】
・上記実施形態では、2次側コイルモジュール40の磁性体42としてシート状のものが用いられているが、1次側コイルモジュール30の磁性体32と同じ形状の磁性体を用いることもできる。
【0056】
・平角線43A,43Bはアルミ線またはプリント配線基板のアルミ箔パターンや銅箔パターンであってもよい。
・集合導電線43を構成する平角線の本数は3本以上とするこができる。
【0057】
・第1のコイル50と第2のコイル60の集合導電線43の巻回方向をそれぞれ反対の方向に変更することもできる。
・上記実施形態では、1次側コイルモジュール30から送信された電力および信号を2次側コイルモジュール40により受ける構成が用いられているが、これを次のように変更することもできる。すなわち、電力を受けるための第1の2次側コイルモジュール40Aと、信号を受けるための第2の2次側コイルモジュール40Bとを設けることもできる。この場合、送電装置10においては、各2次側コイルモジュール40A,40Bのそれぞれに対応する2つの1次側コイルモジュール30A,30Bが設けられる。
【0058】
・上記実施形態にて示した受電装置20は、携帯電話の他、それ以外の携帯情報端末、ポータブルオーディオプレーヤー、ICレコーダー、デジタルカメラ、電動歯ブラシ、およびシェーバー等々、非接触式電力伝送が行われる各種電気機器に用いることもできる。この場合には、送電装置10の大きさがこれらの受電装置に対応した大きさに変更される。
【符号の説明】
【0059】
10…送電装置、20…受電装置、40…2次側コイルモジュール(受電コイルモジュール)、41…2次側コイル(平面コイル)、42…磁性体、43…集合導電線、43A…平角線(導電線)、43B…平角線(導電線)、45…切り込み、46A…上面、46B…上面、47A…下面、47B…下面、50…第1のコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面長方形の平角線を導電線としてこれを平面状に巻回してなる平面コイルにおいて、
前記導電線は、その上面および下面のうち少なくとも一方にその延伸方向に延びる複数の切り込みが形成されてなる
ことを特徴とする平面コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の平面コイルにおいて、
前記導電線を並行に整列させてそれらの端部を電気的に接続した集合導電線を平面状に巻回してなる
ことを特徴とする平面コイル。
【請求項3】
請求項2に記載の平面コイルにおいて、
前記集合導電線は、外周側の前記導電線と内周側の前記導電線の位置が前記平面コイルの周方向の途中で入れ替わるよう巻回されてなる
ことを特徴とする平面コイル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の平面コイルにおいて、
単一の前記導電線が前記平面コイルの周方向の途中で折り返されてなる
ことを特徴とする平面コイル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の平面コイルとして第1のコイルとこれに直列に接続される第2のコイルとを含み、前記第1のコイルと前記第2のコイルとが積層されてなる
ことを特徴とする平面コイル。
【請求項6】
請求項5に記載の平面コイルにおいて、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとはその巻回方向が逆向きに設定されてなる
ことを特徴とする平面コイル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の平面コイルの前記上面および前記下面の少なくとも一方に漏れ磁束を低減するための磁性体が設けられてなる
を特徴とするコイルモジュール。
【請求項8】
送電装置から伝送される電力を受電コイルモジュールにより受ける非接触式電力伝送装置の受電装置において、
前記受電コイルモジュールとして請求項7に記載のコイルモジュールが設けられる
を特徴とする非接触式電力伝送装置の受電装置。
【請求項9】
送電装置および受電装置を備える非接触式電力伝送装置において、
前記受電装置として請求項8に記載の受電装置が設けられる
ことを特徴とする非接触式電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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