説明

平面型放電管

【課題】放電特性に影響を与えることなく放電空間に対する吸排気効率を向上させることができる平面型放電管を提供する。
【解決手段】容器本体12の底壁12a外面において、容器本体12の側壁12bに対応する部位には突部32を設けることにより、容器本体12の側壁の他の部位よりも肉厚となる肉厚部Nを設けた。そして、この肉厚部Nを利用して放電距離d1以上の外径を有するチップ管16を挿入可能とした吸排気口30を設けるようにした。このため、チップ管16を放電空間15に挿入可能となるように形成するようにした場合に比べて、チップ管16の外径(及び内径)を大きくすることができる。また、容器本体12の内底面と蓋体13との間の距離にかかわらずチップ管16を密閉容器11に取り付けることができる。従って、平面型放電管10の放電特性に影響を与えることなく、チップ管16を密閉容器11に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型放電管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の平面型放電管としては次のような構成が知られている。即ち、図8(a)に示すように、平面型放電管51は、互いに所定間隔をおいて対向配置された一対のガラス基板52,52を備えている。両ガラス基板52,52の外面にはそれぞれ透明電極53,53が敷設されており、同じく両内面にはそれぞれ蛍光体54,54が塗布されている。両ガラス基板52,52はそれぞれの内面の周縁部においてガラス接着剤55により互いに接合されている。また、両ガラス基板52,52の内面の周縁部間がガラス接着剤55により封止されることにより、両ガラス基板52,52間には密閉された放電空間56が形成されている。この放電空間56内にはアルゴン及びネオン等の不活性ガス(放電ガス)が封入されている。そして、平面型放電管51の両透明電極53,53間に所定の電圧(高周波交流電圧)を印加すると、両透明電極53,53間の誘電体バリア放電により紫外線が発生し、この紫外線により前記蛍光体54が励起発光する。
【0003】
前記放電空間56への放電ガスの封入は次のようにして行われる。即ち、ガラス材により太管部61aと細管部61bとが形成されたチップ管61の細管部61bを、両ガラス基板52,52間の外周に予め形成された排気口62を介して前記放電空間56に挿入し、ガラス接着剤55により気密状に固定する。次に、チップ管61の外端部にゴム製の吸排気管63の一端部を接続し、当該吸排気管63の他端部に連結された真空ポンプ(図示略)を駆動させることにより放電空間56内の空気を外部に吸い出して当該放電空間56内を真空状態とする。この後、吸排気管63の他端部を不活性ガス供給部(図示略)に接続し、チップ管61を介してアルゴン及びネオン等の不活性ガスを放電空間56内に供給する。最後に、チップ管61の細管部61bをバーナで焼き切る。すると、細管部61bの切断開口部はその周囲のガラス接着剤55及び自身を構成するガラス材が溶融することにより密閉され、放電空間56内には不活性ガスが封入される。
【0004】
しかし、前記従来の平面型放電管においては、放電空間56内の空気の排気及び当該放電空間56への放電ガスの供給を行う場合、チップ管61は細管部61bにおいてガラス基板52に固定される。この細管部61bは排気口62を介して放電空間56内に挿入しなくてはならないため、非常に細く(即ち、両ガラス基板52,52間の距離よりも小径となるように)形成されている。従って、排気口62に細管部61bを介して固定されたチップ管61に吸排気管63を接続する際等において、チップ管61が細管部61bにおいて非常に折れやすいという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、従来、チップ管61の両ガラス基板52,52に対する固定部分を2重管構造とした平面型放電管が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。即ち、図8(b)に示すように、内側チップ管71及び外側チップ管72の2種類のチップ管を予め用意する。内側チップ管71の外径は両ガラス基板52,52間の距離よりも小さくなるように形成されており、放電空間56内に挿入可能となっている。外側チップ管72は太管部72a及び当該太管部72aよりも小径の細管部72bを備えている。当該細管部72bの外径は両ガラス基板52,52間の距離よりも大きくなるように形成されており、放電空間56内に挿入不能となっている。放電空間56内に放電ガスを封入する際には、内側チップ管71の内端部を放電空間56に挿入固定した後、当該内側チップ管71の外端側に外側チップ管72の細管部72bを被せるように挿通し、細管部72bを両ガラス基板52,52に対して気密状に固定する。
【0006】
次に、この状態で、外側チップ管72の外端部に吸排気管63の一端部を連結し、当該吸排気管63の他端部に連結された前記真空ポンプの駆動により放電空間56内の空気を外部に吸い出して真空状態とする。次に、吸排気管63の他端部を前記不活性ガス供給部に接続し、内側チップ管71及び外側チップ管72を介してアルゴン及びネオン等の不活性ガスを放電空間56内に供給する。最後に、外側チップ管72の細管部72bをバーナで焼き切る。すると、細管部72bの切断開口部は周囲のガラス接着剤55及び自身を構成するガラス材が溶融することにより密閉され、放電空間56内には不活性ガスが封入される。
【0007】
このように、内側チップ管71を外側チップ管72で覆う2重管構造としたことにより、内側チップ管71及び外側チップ管72は破損しにくくなる。例えば、外側チップ管72へ吸排気管63を接続する際、当該吸排気管63の装着方向へ作用する力は外側チップ管72にのみ作用し、内側チップ管71に作用することはない。また、外側チップ管72は内側チップ管71よりもその外径が大きくされているので、当該内側チップ管71よりも大きな強度を有している。このため、図8(a)に示すように、細管部61bにおいてのみチップ管61を固定するようにした場合に比べて、吸排気管63の取付け時等におけるチップ管、即ち内側チップ管71及び外側チップ管72の破損が低減する。
【特許文献1】特開2002−237258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記従来の平面型放電管においては、次のような問題があった。即ち、平面型放電管51の製造過程において、放電空間56内の空気の外部への吸い出し作業及び同じく不活性ガスの放電空間56内への供給作業は、いずれも内側チップ管71を介して行われる。そして、この内側チップ管71の外径は放電空間56に挿入可能となる程度、即ち両ガラス基板52,52間の距離よりも小さくなるように形成する必要があった。このため、内側チップ管71の外径の増大には限界があった。ここで、両ガラス基板52,52間の距離を増大させれば、それに応じて内側チップ管71の外径を大きくすることは可能である。しかし、両ガラス基板52,52間の距離は、平面型放電管51の放電特性に大きく影響し、予め設定された距離(放電距離)だけ確保する必要がある。従って、当該放電距離をむやみに増大させることもできない。このように、内側チップ管71の外径は両ガラス基板52,52間の放電距離に左右されていた。
【0009】
近年では、平面型放電管51の需要は増大傾向にあり、それに伴って当該平面型放電管51の製造効率のいっそうの向上が要望されている。平面型放電管51の製造効率を向上させるためには、例えば放電空間56に対する空気及び放電ガスの吸排気効率を向上することが考えられる。この放電空間56に対する空気及び放電ガスの吸排気効率は内側チップ管71の内径に大きく依存する。即ち、内側チップ管71の内径が大きくなるほど流路面積は大きくなり、空気及び放電ガスはそれぞれ当該内側チップ管71を流通しやすくなる。しかし、前述したように内側チップ管71の外径は両ガラス基板52,52間に挿入可能な程度に設定しなければならないため、内側チップ管71の外径、ひいては内径の増大には限界があり、放電空間56に対する空気及び放電ガスの吸排気効率の向上にも限界があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、放電特性に影響を与えることなく放電空間に対する吸排気効率を向上させることができる平面型放電管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、誘電体により扁平箱体状に形成された密閉容器の内部に放電空間を密閉して形成し、当該密閉容器の互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する密閉容器の側壁を介して前記放電空間に連通したチップ管を使用して前記放電空間内の空気と放電ガスとを置換するようにした平面型放電管において、前記両誘電体平板のうち少なくとも一方の誘電体平板における前記側壁に対応する外周縁部には当該誘電体平板の他の部位よりも肉厚を大きくした肉厚部を設け、前記側壁において前記肉厚部に対応する部位には当該肉厚部を利用して両誘電体平板間の距離以上の外径を有するチップ管を挿入可能とした吸排気口を設け、当該吸排気口に前記チップ管を固定するようにしたことを要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の平面型放電管において、前記両誘電体平板のうち少なくとも一方の外面に突部を形成することにより前記肉厚部を設けるようにしたことを要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の平面型放電管において、前記両誘電体平板の外面にはそれぞれ電極を敷設して当該両電極間に所定の電圧を印加することにより前記放電空間内に放電を発生させるようにし、前記両誘電体平板のうちのいずれか一方における外面を前記放電により発生した光を取り出す発光面とし、前記突部は前記発光面を備えた誘電体平板とは反対側に配置された誘電体平板の外面に形成するようにしたことを要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の平面型放電管において、前記両誘電体平板を四角板状に形成すると共に前記密閉容器の少なくとも1つの隅角部には前記誘電体平板の対角線に対して直交する方向に延びる面取り部を形成し、前記両誘電体平板のうち少なくとも一方の外面における前記面取り部に対応する部位には前記突部を形成すると共に当該突部を利用して前記吸排気口を形成し、前記吸排気口に挿入固定されたチップ管の外端部が前記面取り部と当該面取り部の両隣に位置する密閉容器の両側面を含む仮想平面とに囲まれた領域から突出しないように、当該チップ管を設けるようにしたことを要旨とする。
【0015】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、密閉容器の吸排気口には両誘電体平板間の距離以上の外径を有するチップ管が挿入固定される。このため、チップ管を両誘電体平板間(即ち、放電空間)に挿入可能となるように形成するようにした場合に比べて、チップ管の外径、ひいては内径を大きくすることができる。従って、放電空間に対する空気及び放電ガスの吸排気効率を向上させることができ、平面型放電管の製造効率も向上する。また、両誘電体平板間の距離によらず、チップ管を取り付けることができるので、平面型放電管の放電特性に影響を与えることもない。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、前記両誘電体平板のうち少なくとも一方の外面に突部を形成することにより前記肉厚部が設けられる。このため、密閉容器の構成が複雑になることはなく、簡単に肉厚部を形成することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、突部は発光面を備えた誘電体平板とは反対側に配置された誘電体平板の外面に形成される。このため、発光面を備えた誘電体平板の外面に前記突部を設けるようにした場合に比べて、平面型放電管の外観性が向上する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、吸排気口に挿入固定されたチップ管の外端部が面取り部と当該面取り部の両隣に位置する密閉容器の両側面を含む仮想平面とに囲まれた領域から突出しないように、当該チップ管は設けられる。このため、例えば平面型放電管の運搬時におけるチップ管の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放電特性に影響を与えることなく放電空間に対する吸排気効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明を例えば移動車両用の天井灯として使用される平面蛍光ランプ等の平面型放電管に具体化した第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、平面型放電管10は扁平箱体状の密閉容器11を備えており、当該密閉容器11は一方面(図1における上面)が開口した扁平直方体状の容器本体12及び当該容器本体12の開口部を閉塞する平板状の蓋体13を備えている。さらに、容器本体12は、蓋体13に所定距離をおいて対向配置された底壁12aと、当該底壁12aの蓋体13側の側面に立設された四角枠状の側壁12bとからなる。容器本体12及び蓋体13はそれぞれ透明ガラス等の誘電体により形成されており、当該蓋体13はガラス接着剤(低融点ガラスフリット)14により貼り合わせられた状態で焼成することにより容器本体12の開口端面に固定されている。
【0022】
<放電空間>
図3に示すように、容器本体12の内底面(底壁12aの蓋体13側側面)と蓋体13の内面とは互いに平行をなしており、当該容器本体12の内底面と蓋体13の内面とは予め設定された放電距離d1だけ離間している。また、容器本体12、蓋体13及びガラス接着剤14により、密閉された放電空間15が形成されている。この放電空間15内には前記側壁12bを介してチップ管16(図3では、チップ管16の外端部が封止された状態を示す。)が連通しており、当該チップ管16を使用してキセノンガス(Xe)等の不活性ガス(放電ガス)又はキセノンガスを含む混合ガスが封入されている。放電空間15内の放電ガスのガス圧は大気圧よりも低く設定されている。尚、前記チップ管16の密閉容器11に対する取付け構造については、後に詳述する。
【0023】
<誘電体リブ>
図3及び図4に示すように、放電空間15内において、容器本体12の内底面には複数(本実施形態では5つ)の誘電体リブ17が突設されている。各誘電体リブ17はそれぞれ透明ガラス等の誘電体により長尺状に形成されており、当該各誘電体リブ17は放電空間15内において互いに平行をなすように、且つ所定間隔毎に配置されている。蓋体13がガラス接着剤14を介して蓋体13に固定された状態において、各誘電体リブ17の先端面は、その全長に亘って蓋体13の内面に当接している。これにより容器本体12の内底面と蓋体13の内面との間隔が一定に保持されている。また、図4に示すように、各誘電体リブ17はその先端(蓋体13側)へ向かうほど肉薄となるテーパ状に形成されている。即ち、各誘電体リブ17の先端面の面積は当該誘電体リブ17の基端面の面積よりも小さくなっている。
【0024】
<透明電極>
図4に示すように、蓋体13の外面(図3における上面)は発光面(光を取り出す面)Sとされており、当該発光面Sには薄膜状の透明電極21が設けられている。一方、発光面Sとされない容器本体12の外面(図3における下面)には薄膜状の透明電極22が設けられている。両透明電極21,22は例えば酸化インジウムスズ(ITO:Indium tin oxide)により形成されている。
【0025】
また、透明電極21,22の外面にはそれぞれ導電体23,24が敷設されている。導電体23,24は例えばペースト状の銀を透明電極21,22の外面に塗布して、焼成することにより形成されている。導電体23はコの字状に形成されており透明電極21の外周縁に沿うように設けられている。導電体24は誘電体リブ17の延びる方向に対して平行をなす直線状に形成されており、透明電極22の中央のほぼ全長に亘って設けられている。導電体23の隅角部及び導電体24の端部には、それぞれリード線25,26の一端が半田付けにより接続されており、両リード線25,26の他端はそれぞれ交流電源(図示略)に接続されている。さらに、放電空間15内において、容器本体12の内底面には蛍光体膜27が形成されており、当該蛍光体膜27は例えば赤,緑,青の3色が混合されたものが使用されている。
【0026】
さて、前述のように構成された平面型放電管10において、両透明電極21,22間に両導電体23,24を介して高電圧(例えば1〜3kV)を印加すると、両透明電極21,22間の放電(誘電体バリヤ放電)により紫外線が発生する。この紫外線は蛍光体膜27によって可視光に変換されて照明光となり、発光面Sから外部に放射される。ここで、蛍光体膜27は赤,緑,青の3色が混合されたものが使用されているので、発光面Sからは白色光が照射される。また、各誘電体リブ17は蓋体13へ向かうにつれて細くなるテーパ状に形成されているので、蓋体13の発光面Sにおける有効照射面積が確保され、良好な発光状態が得られる。さらに、容器本体12の底壁12a及び蓋体13がそれぞれ各誘電体リブ17によって支持されることにより、放電空間15内のガス圧と大気圧との圧力差に対する密閉容器11の剛性が確保される。このため、放電空間15内のガス圧と大気圧との内外圧力差による容器本体12の底壁12a及び蓋体13の内方への撓みが抑制され、両透明電極21,22間の距離は一定に保たれる。その結果、安定した放電が得られる。
【0027】
<吸排気口>
次に、チップ管16の密閉容器11に対する取付構造について詳述する。即ち、図1及び図2に示すように、容器本体12と蓋体13との間には吸排気口30が形成されており、当該吸排気口30にはチップ管16が挿入固定されている。この吸排気口30は、容器本体12の側壁12bにおいて誘電体リブ17の延びる方向に対して直交する壁の中央に形成された収容凹部31と、蓋体13とから構成されている。
【0028】
収容凹部31について詳述すると、容器本体12の底面(底壁12aの外面)において、側壁12bを構成する4つの長尺状の壁のうち誘電体リブ17の延びる方向に対して直交する壁の中央に対応する部位には突部32が形成されている。底壁12aにおいて、当該突部32が形成されている部位は、当該底壁12aの他の部位よりも肉厚が大きい肉厚部Nとされている。そして、容器本体12の側壁12bにおいて前記肉厚部Nに対応する部位には当該肉厚部Nを利用して収容凹部31が形成されている。
【0029】
図3に示すように、収容凹部31の深さd2、即ち収容凹部31の内底面から容器本体12の開口端面(側壁12bの蓋体13側の側面)までの距離は、容器本体12の内底面(底壁12aの内面)と蓋体13の内面との間の距離である放電距離d1よりも大きくなっている。肉厚部N(即ち、突部32)を利用して収容凹部31を形成することにより、当該収容凹部31の深さd2を放電距離d1よりも大きくすることができる。
【0030】
そして、当該収容凹部31と蓋体13とから構成される吸排気口30には、底壁12aと蓋体13との間の距離である放電距離d1以上の外径d3を有するチップ管16が挿入可能となっている。即ち、放電距離d1よりも大きく且つ収容凹部31の深さd2よりも小さい外径d3を有するチップ管16が使用可能となっている(d1<d3<d2)。また、図1及び図2に示すように、収容凹部31の互いに対向する一対の内面には、それぞれ当該収容凹部31の底部(底壁12a)に向かうにつれて徐々に近接するテーパ面31a,31bが形成されている。このように形成された収容凹部31(正確には、吸排気口30)にはチップ管16が外方から挿入され、ガラス接着剤14により固定されている。このとき、チップ管16の軸線は誘電体リブ17の延びる方向と平行をなしている。
【0031】
<放電ガスの封入>
図2に示すように、平面型放電管10の製造過程において、放電空間15内の空気を放電ガスに置換する際には、ガラス接着剤14を塗布したチップ管16を吸排気口30に外方から挿入し、この状態で焼成することにより当該チップ管16を吸排気口30に気密状に固定する。そして、吸排気口30に固定されたチップ管16の外端部に吸排気管33(図1参照)の一端部を連結し、当該吸排気管33の他端部に連結された真空ポンプ(図示略)の駆動により放電空間15内の空気を外部に吸い出して真空状態とする。次に、吸排気管33の他端部を不活性ガス供給部(図示略)に接続し、チップ管16を介して放電ガスを放電空間15内に供給する。この後、チップ管16の途中をバーナで焼き切る。すると、図3に示すように、チップ管16の切断開口部は周囲のガラス接着剤14及び自身を構成するガラス材が溶融することにより密閉され、放電空間15内には不活性ガスが封入される。
【0032】
放電空間15に対する空気及び放電ガスの吸排気効率はチップ管16の内径に大きく依存する。即ち、チップ管16の内径が大きくなるほど流路面積は大きくなり、空気及び放電ガスはそれぞれ当該放電空間15を流通しやすくなる。このような前提のもと、本実施形態のチップ管16の外径d3は、容器本体12の内底面と蓋体13の内面との間の放電距離d1よりも大きく設定されている。このため、チップ管16の外径d3を放電空間15内に挿入可能な程度に設定するようにした場合に比べて、放電空間15に対する空気及び放電ガスの吸排気効率が向上する。ひいては、平面型放電管10の製造効率も向上する。
【0033】
さらに、チップ管16は吸排気口30に挿入した状態で固定されている。チップ管16は容器本体12(正確には、収容凹部31)及び蓋体13により支持されており、これにより当該チップ管16の支持強度が確保される。例えばチップ管16を密閉容器11の側面(側壁12bの外面)に突き合わせた状態で固定することも考えられる。しかし、この場合、チップ管16は、当該チップ管16と密閉容器11の側面との間のガラス接着剤14によってのみ支持されることとなり、支持強度が不十分となるおそれがある。
【0034】
<実施形態の効果>
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)容器本体12の底面(底壁12aの外面)において、当該容器本体12の側壁12bに対応する部位には突部32を設けることにより、当該容器本体12の側壁12bの他の部位よりも肉厚が大きくなる肉厚部Nを設けた。そして、当該肉厚部Nを利用して容器本体12の内底面と蓋体13との間の放電距離d1以上の外径d3を有するチップ管16を挿入可能とした吸排気口30を設けるようにした。このため、チップ管を容器本体12の内底面と蓋体13との間に挿入可能となるように形成するようにした場合に比べて、チップ管16の外径、ひいては内径を大きくすることができる。従って、放電空間15に対する空気及び放電ガスの吸排気効率を向上させることができ、ひいては平面型放電管10の製造効率も向上する。また、従来に比べてチップ管16を太くすることができるので、当該チップ管16の強度も確保することができる。従って、平面型放電管10の製造過程においてチップ管16の外端部に吸排気管33を接続する際においても折れにくくなる。即ち、チップ管16は破損しにくくなる。
【0035】
(2)また、放電距離d1以上の外径d3を有するチップ管16を挿入可能とした吸排気口30を設けるようにした。このため、容器本体12の内底面と蓋体13との間の距離(即ち、放電距離d1)をチップ管16の外径に合わせて増大させたり、逆にチップ管16の外径を前記放電距離d1に合わせて縮径させたりする必要がなく、当該放電距離d1によらず、チップ管16を取り付けることができる。従って、平面型放電管10の放電特性に影響を与えることなく、放電空間15に対する空気及び放電ガスの吸排気効率を向上させることができる。
【0036】
(3)容器本体12の底面(底壁12aの外面)に突部32を形成することにより当該底壁12aの他の部位よりも肉厚が大きくなる肉厚部Nを設けるようにした。このため、密閉容器11の構成が複雑になることはなく、簡単に肉厚部を形成することができる。
【0037】
(4)突部32は発光面Sを備えた蓋体13とは反対側に配置された容器本体12の底面(底壁12aの外面)に形成するようにした。このため、突部32を蓋体13の表面(例えば発光面Sの周囲)に形成するようにした場合に比べて、平面型放電管10の外観性を向上させることができる。本実施形態のように、平面型放電管10を移動車両用の天井灯として使用する場合、当該平面型放電管10は発光面Sが車室内を向くように配置されるときが多い。そのような設置状態においては、発光面Sと反対側に位置する容器本体12の底面(底壁12aの外面)に突部32を設けることが好ましい。
【0038】
(5)吸排気口30に単一のチップ管16を挿入固定するだけである。このため、チップ管16の吸排気口30への取付け構造を2重管構造とするようにした従来と異なり、部品点数を低減させることができる。また、チップ管16を吸排気口30へ取り付ける際の工数も低減されるので、平面型放電管10の生産性も向上する。チップ管の密閉容器11への取付け構造を、例えば内側チップ管及び外側チップ管の2重管構造とした場合には、それぞれのチップ管の密閉容器11に対する固定作業が必要となる。
【0039】
(6)吸排気口30にチップ管16を外方から挿入した状態で固定するようにした。このため、チップ管16はガラス接着剤14だけでなく吸排気口30の内面によっても支持される。従って、チップ管16を例えば容器本体12の側面に突き合わせ状態でガラス接着剤14により固定するようにした場合と異なり、チップ管16の支持強度を確保することができる。
【0040】
(7)誘電体リブ17の延びる方向とチップ管16の軸線とが平行になるように、即ち、誘電体リブ17の延びる方向とチップ管16による吸排気方向とが同じになるように、チップ管16を配置するようにした。誘電体リブ17の延びる方向とチップ管16の軸線とが互いに直交するようにチップ管16を配置するようにした場合に比べて、吸排気時における放電空間15内の空気及び放電ガスの流れが各誘電体リブ17によって妨げられにくく、放電空間15に対する空気及び放電ガスの吸排気を、いっそう円滑に行うことができる。
【0041】
(8)容器本体12の側壁12bに収容凹部31を形成し、当該収容凹部31と蓋体13とによって吸排気口30を構成するようにした。このため、例えば一対の誘電体平板の互いに対向する周縁部をガラス接着剤14により封止するようにした場合に比べて、収容凹部31の形成作業が簡単になる。
【0042】
(9)収容凹部31の内面には蓋体13側へ向かうにつれて拡開するテーパ面31a,31bを形成するようにした。このため、チップ管16は収容凹部31の底部において安定して保持される。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図5及び図6(a)〜(c)に基づいて説明する。本実施形態は、密閉容器11における吸排気口の配置の点で前記第1実施形態と異なる。従って、前記第1実施形態と同一の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
図5及び図6(a)に示すように、密閉容器11(容器本体12及び蓋体13)の4つの隅角部のうちの1つには面取り部41が形成されている。この面取り部41は、側壁12bの一部を構成し、容器本体12(正確には、底壁12a)の対角線に対して直交する方向に延びるように形成されている。また、図6(b),(c)に示すように、容器本体12の底面(底壁12aの外面)において、面取り部41に対応する隅角部には突部42が形成されている。当該突部42は下面視台形状(図6(c)参照)に形成されている。容器本体12の底壁12aにおいて、突部42が形成された隅角部は当該底壁12aの他の部位よりも肉厚が大きくなっている。
【0045】
図5に示すように、容器本体12の面取り部41には収容凹部43が形成されており、当該収容凹部43の深さd2、即ち容器本体12の開口端面と当該収容凹部43の内底面との間の距離は、容器本体12の内底面と蓋体13の内面との間の距離である放電距離d1よりも大きくされている。収容凹部43と蓋体13とから構成される吸排気口44にはチップ管16が外方から挿入固定されている。
【0046】
図6(a)に示すように、チップ管16は、その外端部が面取り部41(正確には、その外面)と、当該面取り部41の両隣に位置する容器本体12の側壁12bの外面を含む一対の仮想平面Sx,Sy(図6(a),(c)に二点鎖線で示す。)に囲まれる領域からはみ出さないように設けられている。従って、本実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(6),(8)に記載の効果に加えて、平面型放電管10を運搬する際におけるチップ管16の破損を低減させることができる。例えば、密閉容器11の側面が壁等の物体に接触しても、チップ管16の外端部は密閉容器11の当該側面から突出することがないので、当該チップ管16が前記物体に接触することが回避される。このため、チップ管16の破損を抑制することができる。
【0047】
(別の実施形態)
尚、前記各実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
・第1実施形態では、吸排気口30を密閉容器11の側壁(側壁12b)の中央に設けたが、当該側壁12bのいずれの箇所に設けてもよい。このようにしても、第1実施形態における(1)〜(9)に記載の効果を得ることができる。
【0048】
・第1本実施形態では、容器本体12の底面(底壁12aの外面)に突部32を形成するようにしたが、図7(a)に示すように、蓋体13の表面(即ち、発光面S)に突部32を形成し、当該突部32を利用して吸排気口30(収容凹部31)を形成するようにしてもよい。このようにしても、前記第1実施形態の(1)〜(3)、(5)〜(8)と同様の効果を得ることができる。また、図7(b)に示すように、容器本体12の底面及び蓋体13の表面の双方に突部32a,32bを設け、両突部32a,32bを利用して吸排気口30(収容凹部31)を形成するようにしてもよい。このようにすれば、突部32a,32bの容器本体12の底面及び蓋体13の表面からの突出高さは、前記第1実施形態における突部32の容器本体12の底面からの突出高さよりも低くなる。即ち、突部32a,32bの容器本体12の底面及び蓋体13の表面からの突出高さを極力低く抑えることができる。
【0049】
・第1及び第2実施形態では、平面型放電管10を、キセノンが放電時に発生する真空紫外線を蛍光体膜27に照射して可視光を得る照明用ランプとして使用したが、次のようにしてもよい。即ち、蛍光体膜を省略して、キセノンが放電時に発生する真空紫外線を得る紫外線ランプとして平面型放電管10を使用するようにしてもよい。
【0050】
・第2実施形態において、誘電体リブ17の延びる方向がチップ管16の軸線方向と同じになるように、各誘電体リブ17を配置するようにしてもよい。このようにすれば、第1実施形態の(7)と同様の効果を得ることができる。
【0051】
・第1及び第2実施形態では、チップ管16の外径d3を放電距離d1よりも大きくするようにしたが、当該放電距離d1と同じにしてもよい。このようにしても、チップ管16を放電空間15内に挿入するために、当該チップ管16の外径を放電距離d1よりも小さくするようにした場合に比べて、放電空間15に対する空気及び放電ガスの吸排気効率は向上する。
【0052】
・第1及び第2実施形態において、複数の吸排気口30,44を設けるようにしてもよい。第2実施形態において、複数の吸排気口44を設ける場合には、各吸排気口44は極力、密閉容器11の隅角部に設けるようにすることが好ましい。
【0053】
・第1及び第2実施形態では、密閉容器11を、一方面が開口した容器本体12及び蓋体13から構成し、さらに、容器本体12は底壁12aと側壁12bとから構成するようにしたが、次のようにしてもよい。即ち、互いに対向する一対の誘電体平板(ガラス基板)の互いに対向する外周縁間をガラス接着剤により封止することにより、密閉容器11を構成する。この場合、両ガラス基板の互いに対向する面とガラス接着剤とから放電空間が形成される。
【0054】
・本実施形態では、移動車両用の天井灯として使用される平面蛍光ランプとして平面型放電管10を使用するようにしたが、例えば液晶表示装置のバックライト及び住宅用の照明用ランプとして使用するようにしてもよい。
【0055】
<別の技術的思想>
・前記放電空間には所定方向へ延びる単数又は複数の誘電体リブを配置し、当該誘電体リブにより前記両誘電体平板をそれぞれ支持するようにし、前記チップ管の軸線が誘電体リブの延びる方向と平行になるように当該チップ管を配置するようにした請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の平面型放電管。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施形態における平面型放電管の分解斜視図。
【図2】第1実施形態における平面型放電管の正面図。
【図3】図2における1−1線断面図。
【図4】図3における2−2線断面図。
【図5】第2実施形態における平面型放電管の要部分解斜視図。
【図6】(a)は第2実施形態における容器本体の平面図、(b)は第2実施形態における容器本体の要部正面図、(c)は第2実施形態における容器本体の要部底面図。
【図7】(a)は別の実施形態における平面型放電管の要部正面図、(b)は別の実施形態における平面型放電管の要部正面図。
【図8】(a),(b)はそれぞれ従来の平面型放電管の要部正断面図。
【符号の説明】
【0057】
10…平面型放電管、11…密閉容器、12…容器本体、
12a…誘電体平板を構成する底壁、12b…側壁、13…誘電体平板を構成する蓋体、15…放電空間、16…チップ管、30,44…吸排気口、
32,32a,32b,42…突部、41…面取り部、d1…放電距離、d3…外径、
N…肉厚部、S…発光面、Sx,Sy…仮想平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体により扁平箱体状に形成された密閉容器の内部に放電空間を密閉して形成し、当該密閉容器の互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する密閉容器の側壁を介して前記放電空間に連通したチップ管を使用して前記放電空間内の空気と放電ガスとを置換するようにした平面型放電管において、
前記両誘電体平板のうち少なくとも一方の誘電体平板における前記側壁に対応する外周縁部には当該誘電体平板の他の部位よりも肉厚を大きくした肉厚部を設け、
前記側壁において前記肉厚部に対応する部位には当該肉厚部を利用して両誘電体平板間の距離以上の外径を有するチップ管を挿入可能とした吸排気口を設け、当該吸排気口に前記チップ管を固定するようにした平面型放電管。
【請求項2】
請求項1に記載の平面型放電管において、
前記両誘電体平板のうち少なくとも一方の外面に突部を形成することにより前記肉厚部を設けるようにした平面型放電管。
【請求項3】
請求項2に記載の平面型放電管において、
前記両誘電体平板の外面にはそれぞれ電極を敷設して当該両電極間に所定の電圧を印加することにより前記放電空間内に放電を発生させるようにし、
前記両誘電体平板のうちのいずれか一方における外面を前記放電により発生した光を取り出す発光面とし、
前記突部は前記発光面を備えた誘電体平板とは反対側に配置された誘電体平板の外面に形成するようにした平面型放電管。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の平面型放電管において、
前記両誘電体平板を四角板状に形成すると共に前記密閉容器の少なくとも1つの隅角部には前記誘電体平板の対角線に対して直交する方向に延びる面取り部を形成し、
前記両誘電体平板のうち少なくとも一方の外面における前記面取り部に対応する部位には前記突部を形成すると共に当該突部を利用して前記吸排気口を形成し、
前記吸排気口に挿入固定されたチップ管の外端部が前記面取り部と当該面取り部の両隣に位置する密閉容器の両側面を含む仮想平面とに囲まれた領域から突出しないように、当該チップ管を設けるようにした平面型放電管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−80041(P2006−80041A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265978(P2004−265978)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【出願人】(000114927)ヤマト電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】