説明

平面状アンテナ

【課題】透明度を確保して美観を保つことができると共に、整合器等を用いることなく広帯域化を図ることができる平面状アンテナを提供する。
【解決手段】透明な合成樹脂等によりフィルム状のアンテナ基板11を形成し、その上面に導電性パターンからなるアンテナ素子12を設ける。このアンテナ素子12は、例えば金属線を格子状に形成したもので、金属線の線幅を例えば1mm以下の微細な線で構成し、十分な透明度を確保する。上記格子状金属線の間隔は、UHFのTV放送波帯の中心周波数において、例えば約0.02波長に設定する。また、アンテナ素子12には、1つの辺の中央部から他方の辺に向かって細長いスリット13を形成する。そして、アンテナ素子12には、スリット13の開放端側の両側に給電点14a、14bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば窓ガラス等に貼り付けて使用する平面状アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にTV放送やラジオ放送などの放送波は、比較的広い周波数帯域で放送が行なわれており、これらを受信するアンテナとしては広帯域のアンテナを用いる必要がある。
また、従来、手軽にTV放送やラジオ放送を受信するために例えば住宅の窓ガラスや自動車の窓ガラスに貼って使用するフィルムアンテナがある。このフィルムアンテナは、アンテナ素子としてループ型やモノポール型が一般に使用されている。
【0003】
しかし、これらのループ型やモノポール型のアンテナ素子を用いたフィルムアンテナは、周波数帯域が狭く、広帯域な整合器等が別に必要であり、かつ、整合器の損失によりアンテナ特性が大きく劣化するという問題があった。
【0004】
また、従来、アンテナの広帯域化を図るためにアンテナ素子を板状に形成する板状アンテナ(プレートアンテナ)が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上記従来の板状アンテナは、図5に示すように矩形状に形成されたプリント基板1の一方の面に銅箔2をプリントし、この銅箔2の1つの辺の中央部から他方の辺に向かって細長のスリット3を形成したものである。このスリット3は対応する銅箔2の辺の長さより所定長さ短く設定し、スリット3の開放端側における銅箔2の部分に給電点4を設けて給電している。
【特許文献1】特開2002−246821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように構成された板状アンテナによれば、広帯域化を図ることができる。しかし、上記板状アンテナをそのままフィルムアンテナとすると銅箔2による不透明部分が大きく、美観を劣化させるだけでなく、自動車の窓ガラスに貼り付けて使用した場合は、走行安全性を著しく悪化させる等の問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、透明度を確保して美観を保つことができると共に、整合器等を用いることなく広帯域化を図ることができ、自動車の窓ガラスに貼り付けて使用した場合も走行安全性を確保することができる平面状アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る平面状アンテナは、アンテナ基板と、前記アンテナ基板上において、1つの辺のほぼ中央部から対向する他方の辺に向かって所定長さのスリットを形成し、該スリットの開放端側の近傍に給電点を設けてなる平面状のアンテナ素子とを具備し、前記平面状のアンテナ素子を金属線等の導電性のパターンにより形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンテナ基板を透明な部材を用いて構成することにより、透明度を確保して美観を保つことができ、また、整合器等を用いることなく広帯域化を図ることができる。従って、上記平面状アンテナを自動車の窓ガラスに貼り付けて使用した場合でも、視界の障害となることが無く、走行安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明をUHF帯TV放送受信用の平面状アンテナ10に実施した場合の構成例を示す正面図である。図1において、11は例えばポリイミド等の透明な合成樹脂材(絶縁材)を用いて矩形状に形成された柔軟性を有するフィルム状のアンテナ基板である。このアンテナ基板11の上面には、平面状のアンテナ素子12が設けられる。このアンテナ素子12は、例えば金属線等の導電性のパターンにより形成したもので、このパターンの形状は例えば格子形状等に形成される。この第1実施形態では、パターンの形状を例えば四角形の格子形状に形成している。また、上記アンテナ基板11は、アンテナ素子12より少し大きく形成される。
【0011】
上記アンテナ素子12は、例えばアンテナ基板11の上面に金属線を蒸着又は貼り付け、もしくはアンテナ基板11の上面に銅箔を貼り付けてフォトエッチングにより導電性のパターン例えば格子状の金属線を形成する。また、アンテナ素子12は、金属線の線幅が例えば1mm以下の微細な線で構成され、アンテナ基板11と合わせても十分な透明度が確保されている。上記格子状金属線の間隔は、UHFのTV放送波帯の中心周波数において、例えば約0.02波長(λ)に選択される。すなわち、アンテナ素子12は、格子状金属線の間隔が使用周波数に対して十分に小さい値に設定される。上記アンテナ素子12は、ほぼ正方形に形成されるもので、例えば幅W及び高さHがそれぞれ約0.4波長に設定される。
【0012】
また、上記アンテナ素子12には、1つの辺の中央部から対向する他方の辺に向かって、例えば下辺の中央部から上辺に向かって細長いスリット13が形成される。このスリット13は、長さLが約0.37波長、幅dが約0.006波長に設定される。
【0013】
更に、アンテナ素子12には、スリット13の開放端側の両側に給電点14a、14bが設けられる。この給電点14a、14bは、例えば上記アンテナ基板11上に貼り付けた銅箔をエッチングしてアンテナ素子12を形成する際に、銅箔の一部を残すことによって形成される。
【0014】
そして、上記給電点14a、14bに同軸線路15が半田付け等によって接続される。このとき例えば一方の給電点14aに同軸線路15の中心線が接続され、他方の給電点14bに同軸線路15の外導線が接続される。
【0015】
上記平面状アンテナ10は、アンテナ素子12を構成する格子状金属線の間隔を使用周波数に対して十分に小さい値に設定しているので、格子状であっても板状アンテナと同様の広帯域特性をほぼ再現でき、整合器等を用いることなく広帯域化を図ることができる。
【0016】
また、上記平面状アンテナ10は、アンテナ素子12を形成する金属線の線幅を例えば1mm以下の微細な値に設定しているので、アンテナ基板11と合わせても十分な透明度を確保して美観を保つことができる。
【0017】
従って、上記平面状アンテナ10を自動車の窓ガラスに貼り付けて使用した場合でも、視界の障害となることが無く、走行安全性を確保することができる。また、平面状アンテナ10には、突起等も無いので美観を損ねることも無い。
【0018】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る平面状アンテナ10について説明する。
この第2実施形態に係る平面状アンテナ10は、図2に示すようにアンテナ素子12Aの導電性パターンを六角形の格子形状、すなわちハニカム状に形成した場合の例を示したものである。その他の構成は、第1実施形態に係る平面状アンテナ10と同様の構成であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0019】
上記第2実施形態に係る平面状アンテナ10においても、第1実施形態の場合と同様に、透明度を確保して美観を保つことができると共に、整合器等を用いることなく広帯域化を図ることができる。
【0020】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る平面状アンテナ10について説明する。
この第3実施形態に係る平面状アンテナ10は、図3に示すようにアンテナ素子12Bの導電性パターンを四角形の格子形状に形成すると共に、各格子部の対角に付加金属線16を設けたものである。この場合、アンテナ素子12Bは、スリット13の左右の領域をそれぞれほぼ中央部で上下に区分し、すなわち、全体で4つの領域に区分し、各領域に設けられる付加金属線16が連続的に接続されてループ形状となるように該付加金属線16の向きを設定している。その他の構成は、第1実施形態に係る平面状アンテナ10と同様の構成であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
上記第3実施形態に係る平面状アンテナ10では、例えば付加金属線16を設けることにより、アンテナ素子12Bの導電性パターンがループ形状となるようにしているので、アンテナ素子12Bに誘起した電流がループに沿って効率的に流れるようになり、第1実施形態の場合に比較して更に広帯域化を図ることができる。また、この第3実施形態に係る平面状アンテナ10においても、上記実施形態と同様に透明度を確保して美観を保つことができる。
【0022】
(使用例)
次に本発明に係る平面状アンテナ10の使用例について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る平面状アンテナ10を自動車21の側部後方の窓ガラス22に貼り付けて使用した場合の例を示したものである。なお、上記図4において、23は自動車の後部ドア、24は後部ドアガラスである。
【0023】
上記平面状アンテナ10は、アンテナ素子12を格子状に形成して十分な透明度を確保しているので、自動車の窓ガラス22に貼り付けて使用した場合でも、視界の障害となることが無く、走行安全性を確保することができる。また、平面状アンテナ10には、突起等も無いので美観を損ねることも無い。また、上記平面状アンテナ10は、自動車のどのガラス面に貼り付けても視界の障害となることが無く、走行安全性を確保することができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、アンテナ素子12を四角形、あるいは六角形の格子状に形成した場合について示したが、その他の多角形又は円形、楕円形、菱形等の形状、もしくはそれらを組み合わせた格子形状としても良い。
【0025】
また、上記実施形態では、アンテナ基板11を透明な絶縁材により形成した場合について示したが、特に透明性が要求されない場所で使用する場合にはアンテナ基板11を半透明あるいは不透明な絶縁材により構成しても良い。
【0026】
また、上記実施形態では、平板状のアンテナ基板11にアンテナ素子12(12A、12B)を設けた場合について説明したが、その他、例えば円筒状に形成したアンテナ基板11にアンテナ素子12(12A、12B)を設けても良い。
【0027】
また、例えばスロットアンテナ、パッチアンテナ等の方式や、ダイボールアンテナあるいは八木式アンテナ等において、アンテナ素子として上記実施形態で示した格子状のアンテナ素子12(12A、12B)を使用することも可能である。
【0028】
また、上記実施形態では、アンテナ素子12の格子間隔を均等に設定した場合について説明したが、その他、例えば給電点14a、14bに近い部分の格子間隔を小さく、また、給電点14a、14bから離れると格子間隔を大きくするというように、1つのアンテナ素子12(12A、12B)の中で格子間隔を変化させても良い。
【0029】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る平面状アンテナの構成を示す正面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る平面状アンテナの構成を示す正面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る平面状アンテナの構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る平面状アンテナを自動車の窓ガラスに貼り付けて使用する場合の例を示す図である。
【図5】従来の板状アンテナの構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…平面状アンテナ、11…アンテナ基板、12、12A、12B…アンテナ素子、13…スリット、14a、14b…給電点、15…同軸線路、16…付加金属線、21…自動車、22…側部後方の窓ガラス、23…自動車の後部ドア、24…後部ドアの窓ガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ基板と、前記アンテナ基板上において、1つの辺のほぼ中央部から対向する他方の辺に向かって所定長さのスリットを形成し、該スリットの開放端側の近傍に給電点を設けてなる平面状のアンテナ素子とを具備し、前記平面状のアンテナ素子は金属線等の導電性のパターンにより形成したことを特徴とする平面状アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−174050(P2006−174050A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363236(P2004−363236)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】