説明

平面蛍光ランプおよび平面蛍光ランプの製造方法

【課題】 排気管を用いて製造される平面蛍光ランプにおいて、排気管の封着不良を抑制する。
【解決手段】
本発明の平面蛍光ランプは、穴部111を有し、穴部111に排気部3が形成された面状の放電容器1からなる。放電容器1の内部には放電媒体が封入され、内面には蛍光体層41、42が形成されている。放電容器1の外部には外部電極51、52が配設されている。そして、放電容器1の穴部111付近は、蛍光体層41、42が除去されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイのバックライトや一般照明などに用いられる平面蛍光ランプおよび平面蛍光ランプの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平面蛍光ランプとして、例えば特開2005−32722号公報に記載のランプのように、二枚の基板を合わせるとともにスペーサを設けるなどして内部に複数の放電空間を形成し、その容器の内面には蛍光体層が形成され、内部には希ガスや水銀を封入し、基板の外表面の両端部には外部電極が形成された構成が知られている。
【0003】
上記のような平面蛍光ランプの内部を排気し、希ガスや水銀等の放電媒体を導入する方法としては、例えば、特開平11−191372号公報に開示された方法が知られている。すなわち、排気管を用いて排気およびガス導入を行う方法である。この方法では、ランプの一部に穴をあけて排気管を接続し、内部を排気し、ガス等を封入したのちに、排気管をバーナで焼き切って排気管を封着することで、ランプを気密にしている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−32722号公報
【特許文献2】特開平11−191372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排気管を用いてランプの内部を排気・ガス封入したランプにおいて、ランプがリークする等の不具合が発生することがあった。この原因について発明者等が検討を行った結果、排気管を封着する際に、排気管内部に蛍光体が付着していたことにより、排気部が封着不良の状態であったことが原因であることがわかった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みたもので、その目的は排気管を用いて製造される平面蛍光ランプにおいて、排気管の封着不良を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の平面蛍光ランプは、表面に穴部を有し、前記穴部に排気部が形成された面状の放電容器と、前記放電容器の内部に封入された放電媒体と、前記放電容器の内面に形成された蛍光体層と、前記放電容器の内部又は外部に配設された電極とを具備する平面蛍光ランプにおいて、前記放電容器の前記穴部付近に、前記蛍光体層が存在しない領域が形成されていることを特徴とする。
【0008】
放電容器は、ソーダガラス、石英ガラス等、光透過性に優れた材料を用いることができる。容器の放電空間の体積は、用途によって様々可能であるが、例えば9000mm〜800000mmであり、主に光を放出する前面と対面する背面とを有する平面形状をしている。その際、容器は一枚のガラスから構成されても、複数の基板、例えば2枚の基板を張り合わせて構成されてもよい。なお、比較的大型の平面蛍光ランプである場合には、自重でガラスがひずまないために、および放電空間を複数に分割するために、対向するガラス間に板などを複数設ける構成にするのが望ましい。また、放電空間を複数に分割した場合において、それらの放電空間が一部で連通する構成としても良い。
【0009】
穴部は放電容器の表面に形成されている。形成場所は、放電容器の前面側でも背面側でも問題ない。ただし、ランプの前面側に形成する場合は、容器の端部に形成するのが望ましい。穴部の形状は円形であるのが望ましいが、楕円、四角形等、形状に限定されない。大きさについては、1〜5mm程度であるのが、製造工程上望ましい。
【0010】
排気部は、排気およびガス封入工程の際には管状であって、その後封着されることによって残った排気管の跡であり、穴部を包囲するように形成されている。構成は、放電容器と一体構成でも、接合して一体化する構成であっても良いし、その取り付け構造もどのようなものであっても良い。なお、接合して一体化する場合、放電容器と同じ材料で構成するのが望ましい。
【0011】
放電媒体は、例えば、水銀および希ガスを使用することができる。希ガスは、キセノン、クリプトン、アルゴン、ネオン、ヘリウムから選択された少なくとも一種のガス、または2種以上の混合ガスとして封入することができる。
【0012】
希ガスを混合して封入する場合、それぞれの特性を考慮して封入するのが望ましい。例えば、ネオンは主として発光効率及びランプの始動電圧を下げる作用をし、アルゴンは主として発光の立ち上がりを早める作用をするので、封入比を変化させることで所望の特性を得ることができる。なお、ガス圧に関しては、種々の特性を考慮して、1〜700torr、好適には20〜100torrであるのが良い。
【0013】
蛍光体層は、一般照明に用いられる白色蛍光体、冷陰極蛍光ランプやプラズマディスプレイパネルに使用されているRGBの複数種の蛍光体等を使用できる。形成場所は前面側のみとしたり、背面側のみとしたりしても良い。また、粒径や層の厚さを変えて形成することもできる。例えば、前面側は光の透過効率を高めるために、平均粒径を約2.5μm以上、厚さを5〜15μm、背面側は光の反射効率を高めるために、平均粒径を約2.5μm以下、厚さを30〜100μmとするのがよい。
【0014】
なお、穴部付近には、蛍光体層が存在しない領域が形成されている。ここで、「穴部付近の蛍光体層が存在しない領域」とは、穴部が形成された容器の内面およびその面に対面している容器の内面において、その穴部と少なくとも同じ大きさの領域、蛍光体層が形成されていないことを意味する。その際、完全に蛍光体層が存在しない場合のみに限られず、発明の目的を達成できる範囲で蛍光体層が存在することが許容される。蛍光体層の不存在領域の範囲は、好適には、穴部の外縁から2mm以上、さらに好適には、穴部の外縁から9mm以上、穴部が形成された面の内面および穴部に対面している面の内面において蛍光体層が形成されていないことが望ましい。また、穴の形状とほぼ同形の、例えば、穴が円形であれば、円形の不存在領域が形成されるのが望ましい。なお、その領域の途中に放電容器の放電空間を完全に分割するスペーサが存在するときは、スペーサを越えて蛍光体層が存在しない領域を形成する必要はない。
【0015】
電極は、導電性を有するものであれば使用可能であり、アルミニウムからなる導電性テープを導電性の接着剤によって表面に貼り付けて形成したり、銀などの金属粉と溶剤とバインダーを混合させてなる導電性ペーストをスクリーン印刷によって表面に形成したり、スズ、インジウム、ビスマス、鉛、亜鉛、銀などからなる半田を超音波振動を加えながら表面に形成したりすることができる。なお、配設場所は、発光面側でも背面側でもよく、また、外部電極に限らず、内部電極であっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排気管を用いて製造される平面蛍光ランプにおいて、排気管の封着不良を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明による第1の実施の形態の平面蛍光ランプについて図面を参照して説明する。図1は、本発明による平面蛍光ランプの第1の実施の形態を示す全体図である。図2は、図1におけるX−X’の断面図、図3は、図1におけるY−Y’の断面図である。
【0018】
平面蛍光ランプの主要部を形成する放電容器1は、ソーダガラスからなる前面基板11と背面基板12とからなり、それぞれの基板の周辺部分にシール剤としてフリットガラス21を形成することによって気密に接合されている。
【0019】
前面基板11は板状であって、ランプにおける発光面となる基板である。その表面の端縁部には円形の穴部111が形成されている。穴部111が形成された前面基板11の表面には、その穴を包囲するようにソーダガラスからなる排気部3が一体的に取着されている。なお、前面基板11と排気部3の接続は、それらの接続部分の周辺をフリットガラス22で塗り固めることにより、行っている。
【0020】
背面基板12は波状部121と枠部122とで構成されている。波状部121は、山と谷とが交互に複数形成された波型の形状をしている。波状部121の山の稜線は、一方の枠部122の端部から他方の枠部122の端部まで連続して形成されている。すなわち、背面基板12に前面基板11を配置した状態では、前面基板11と波状部121の山部分とがほぼ接触するとともに、背面基板12と個々の波状部121で包囲された放電空間が放電容器1の内部に複数形成される。
【0021】
放電容器1の放電空間には、水銀とネオン、アルゴンの混合ガスが封入されている。
【0022】
前面基板11と背面基板12の放電空間側の面には、青色蛍光体(BaMgAl1017:Eu)、緑色蛍光体(LaPO:Ce,Tb)、赤色蛍光体(Y:Eu)を含む、いわゆる三波長蛍光体からなる蛍光体層41、42が形成されている。なお、本発明の特徴として、図2および図3からわかるように、穴部111付近の前面基板11および背面基板12には、蛍光体層41、42が形成されていない領域が存在している。
【0023】
前面基板11の外表面の両端部には、波状部121の山及び谷をほぼ垂直に横断する方向に、帯状の外部電極51、52が形成されている。外部電極51、52としては、半田電極が形成されている。
【0024】
次に、本実施の形態の平面蛍光ランプの製造方法、特に排気部3の形成までの工程について、図4を用いて説明する。
【0025】
まず、一端を封着する前の排気部3である排気管31が取り付けられた前面基板11と波型に成形された背面基板12の放電空間側のそれぞれの全面に、スプレー塗布法やスクリーン印刷法などにより、均一に蛍光体層41、42を形成する(a)。次に、穴部111付近に形成された前面基板11上の蛍光体層41を、ブラシやハケ等で払い除く機械的な方法や吸引、溶解などの方法により、除去する(b1)。また、張り合わせた際に、穴部111付近に近接する背面基板12上の蛍光体層42も同様に除去する(b2)。
【0026】
そして、フリットガラス22を前面基板11と背面基板12の外周に形成し、2枚の基板を張り合わせたのち、排気管31に排気・ガス導入装置6を接続する(c)。その後、排気・ガス導入装置6によって放電容器1内部を排気し、水銀および希ガスを封入する。なお、上述したように本実施の形態の平面蛍光ランプは、個々の放電空間がそれぞれ独立する構成になっているが、排気工程では、前面基板11と背面基板12との接点付近の微小な隙間を介して、全ての放電空間の排気が可能となっている。最後に、排気管31を加熱し、ガラスを内側方向に縮径させて封着し、不要な部分を切り離すことで排気部3が形成され、平面蛍光ランプは気密封着される(d)。
【0027】
なお、本発明の他の製造方法の形態として、穴部111付近には蛍光体層41、42が形成されないように蛍光体層41、42の形成工程を行い、蛍光体除去工程を省略しても良い。
【0028】
平面蛍光ランプの寸法、材料等の一仕様を示す。なお、以下の試験は特に言及しない限りこの仕様に基づいて行なっている。
【0029】
放電容器1:602mm×333mm×5mm、穴部111の半径:1.0mm、波状部121によって形成された個々の放電空間の長さ:590mm、幅:6.6mm、高さ:2.4mm、放電容器1全体の放電空間:約233640mm
放電媒体 水銀:100mmHg、ネオン:アルゴン=9:1、50torr、
蛍光体層41 粒径:4〜7μm、層の厚さ:20μm、
蛍光体層42 粒径:2〜4μm、層の厚さ:100μm、
蛍光体層の除去範囲:前面基板11の穴部111の中心から10mmの範囲とその範囲に対面する背面基板12の同範囲
図5は、蛍光体の除去範囲を変えたときのランプの封止工程良品率を示す図、図6は図5をグラフ化した図である。ここで、蛍光体の除去範囲は、前面基板11上における穴部111の中心からの除去範囲である。
【0030】
結果から、穴部付近の蛍光体層41、42を除去しなかった場合は、ランプの封止工程における良品率が半分以下であり、限りなく低い。これに対して、蛍光体の除去範囲を1mmとした場合、すなわち、背面基板12の穴部111と対面する部分において穴部111と同じ大きさだけ蛍光体層42を除去した場合では、70%超える良品率となっている。さらに、2mm、3mm・・・10mmと前面基板11および背面基板12に形成された蛍光体層41、42の除去範囲を広げていくと、良品率はさらに改善されることがわかる。
【0031】
上記のように、蛍光体層の除去範囲によって、ランプの封止工程における良品率が大きく変わった原因について、次のように推測される。
【0032】
図7(a)に示すように、穴部111付近の前面基板11および背面基板12に蛍光体層41、42が形成されている場合において、排気・ガス封入装置7で放電容器1の内部を排気すると、(b)のように、穴部111周辺の基板表面に付着していた蛍光体層51、52の一部を剥がして吸い上げてしまう。特に穴部111と対面する背面基板12部分において蛍光体の剥がれが多くなる。これは、平面蛍光ランプは冷陰極蛍光ランプなどと比較して放電空間が数十倍、例えば50倍程度大きいことに関係する。すなわち、体積の大きい放電容器1の内部を十分に排気するためには、必然的に排気・ガス封入装置7による排気時の吸引力が大きくなってしまったことが原因であると考えられる。
【0033】
吸い上げられた蛍光体層41、42は、その多くは排気・ガス封入装置7に吸引されるが、その一部が排気管31の封着予定箇所の内面に付着することがある。このような封着予定箇所に蛍光体が付着した状態で、封着予定箇所を封着すると、(c)のように、加熱軟化して内側方向に縮められた排気管31のガラスの中に蛍光体が入り込んでしまう。そのため、(d)のように、封着終了後の排気管31は蛍光体を含んだ状態で排気部3が形成される。この蛍光体を含んだ排気部3は、内部ガスのリーク等が発生しやすい封着不良の状態であり、平面蛍光ランプの短寿命化の原因となってしまう。
【0034】
上記のような封着不良発生のメカニズムに鑑み、排気管31が蛍光体を含んだ状態の排気部3が形成されないようにすることが重要である。そこで、一方法として、排気工程前に穴部111付近に蛍光体層41、42が存在しないように平面蛍光ランプを構成することを想到した。そのための条件としては、図5、6の結果などから、少なくとも排気工程時に背面基板12の穴部111と対面する部分において穴部111と同じ大きさだけ蛍光体層42が存在しないように構成するのが望ましい。また、好適には、穴部111の外縁から2mm以上、さらに好適には、穴部111の外縁から9mm以上、前面基板11および背面基板12において、排気工程時に蛍光体層41、42が存在しないことが望ましい。
【0035】
なお、本実施の形態では、前面基板11および背面基板12の蛍光体層41、42を除去しても、除去した部分は発光面上の極一部の端部範囲であるため、特性上、ほとんど影響はない。また、除去範囲は外部電極51、52であるので、紫外線が蛍光体層41、42で吸収されずに放射され、他の部材を劣化させることもない。
【0036】
したがって、本実施の形態では、穴部111付近の蛍光体層41、42を除去、具体的には前面基板11および背面基板12の内面において、少なくとも穴部111の大きさ以上、蛍光体層41、42を除去することにより、ランプの排気工程時の排気部3の封着不良率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による平面蛍光ランプの第1の実施の形態を示す全体図。
【図2】図1におけるX−X’の断面図。
【図3】図1におけるY−Y’の断面図。
【図4】本実施の形態の平面蛍光ランプの製造方法の説明図。
【図5】蛍光体の除去範囲を変えたときのランプの封止工程良品率を示す図。
【図6】図6は図5をグラフ化した図。
【図7】封着不良発生のメカニズムの説明図。
【符号の説明】
【0038】
1 放電容器
11前面基板
111 穴部
12 背面基板
121 波状部
122 枠部
21、22 フリットガラス
3 排気部
31 排気管
41、42 蛍光体層
51、52 外部電極
6 排気・ガス導入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴部を有し、前記穴部に排気部が形成された面状の放電容器と、
前記放電容器の内部に封入された放電媒体と、
前記放電容器の内面に形成された蛍光体層と、
前記放電容器の内部又は外部に配設された電極とを具備する平面蛍光ランプにおいて、
前記放電容器の前記穴部付近に、前記蛍光体層が存在しない領域が形成されていることを特徴とする平面蛍光ランプ。
【請求項2】
前記穴部が形成された前記放電容器の内面およびその面に対面する前記放電容器の内面において、少なくとも前記穴部の大きさ以上、前記蛍光体層が存在しない領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の平面蛍光ランプ。
【請求項3】
前記蛍光体層が存在しない領域の形状は、前記穴部の形状とほぼ同形であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の平面蛍光ランプ。
【請求項4】
穴部を有する放電容器の前記穴部に形成された排気管により、前記放電容器の内部を排気したのち、放電媒体を内部に封入する工程と、
前記排気管を封着して前記放電容器を気密にする工程とを具備する平面蛍光ランプの製造方法において、
前記放電容器内部の排気工程時に、前記穴部付近に蛍光体層が存在していないことを特徴とする平面蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
穴部を有する放電容器の内面に蛍光体層を形成する工程と、
前記放電容器の前記穴部に形成された排気管により、前記放電容器の内部を排気したのち、放電媒体を内部に封入する工程と、
前記排気管を封着して前記放電容器を気密にする工程とを具備する平面蛍光ランプの製造方法において、
前記放電容器内部の排気工程前に、前記穴部付近の前記蛍光体層を除去する工程を具備することを特徴とする平面蛍光ランプの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−242345(P2007−242345A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61084(P2006−61084)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】