説明

幹細胞からの肥満細胞の生産のための方法

インビトロで多能性幹細胞から肥満細胞を生成する方法が提供される。iPS細胞および/またはヒト胚性幹細胞などの多能性細胞の肥満細胞への分化のための方法が開示される。得られた肥満細胞は、薬剤開発や研究のために細胞をスクリーニングすることを始めとするいろいろな目的のために使用することが可能である。本発明による培養培地に含まれてもよい成長因子は、幹細胞因子(SCF)、FLT−3リガンド、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−3(IL−3)、および/またはインターロイキン−6(IL−6)を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本出願は、2008年5月2日に出願された米国仮特許出願第61/050,086号に対する優先権を主張し、この出願の全開示は、断りなしにその全体を本明細書において特に参照として援用される。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、一般に分子生物学の分野に関する。より詳しくは、本発明は、肥満細胞の多能性細胞からの培養と生産のための方法に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
肥満細胞は、体中の粘膜組織および結合組織で見られる細胞である。肥満細胞は、ヒスタミンとヘパリンが豊富な多くの顆粒を含み、アレルギー反応における重要な役割を果たす。肥満細胞はまた、創傷治癒や病原体に対する防御などの保護機能にも関与する。成熟肥満細胞は、IgEモノマーと結合することができる高親和性受容体(FcεR1)を発現する。このIgEへの抗原の結合は、肥満細胞脱顆粒と肥満細胞活性化を誘発し、局所性または全身性の即時型過敏反応をもたらす。
【0004】
肥満細胞は、特定の炎症性疾患およびガンに関与する場合がある。例えば、肥満細胞は、神経炎症プロセスとガンに関与する炎症誘発性サイトカインを分泌することができる。肥満細胞は、また、腺ガンなどの特定の腫瘍を囲む間質に蓄積されることもできて、腫瘍のためになる分子を分泌する(Contiら、2007:非特許文献1)。
【0005】
肥満細胞の分離は、広範囲の組織での比較的に低い量と分布のために困難である。十分な数と高純度でヒト肥満細胞を得ることが困難なため、以前の研究は、主にラット腹膜肥満細胞またはマウス骨髄由来培養肥満細胞などのげっ歯類の肥満細胞を使うことに依存していた;しかし、肥満細胞が異種性であり、種の間には多くの違いがあるので、げっ歯類細胞は理想的ではない。
【0006】
それにもかかわらず、肥満細胞は研究のために経済的に貴重であって重要なツールである。肥満細胞は、薬物毒性、ヒスタミンまたは顆粒の放出反応、および免疫関連反応(例えば、化合物に対するアレルギー関連または免疫関連の反応)を試験するのに使用されうる。肥満細胞は、抗ヒスタミン剤や非アレルギー化合物などの両方のアレルギー薬を含む推定の生物学的活性化合物の薬物スクリーニングと前臨床試験を含む目的のために役立つことができる。肥満細胞の便利な供給源は、また、特に肥満細胞の生態、構造、および/または機能についての研究に関心のある研究室にとって有用であろう。
【0007】
以前、肥満細胞は、複能造血性の臍帯血細胞から培養された。Schernthanerら(2001)は、新生物形成細胞によるCD2抗原の発現に関するデータを提示している(非特許文献2)。未熟な「非新生物」肥満細胞上でのCD2の発現を分析するために、Schernthanerらは、幹細胞因子とIL−6を含む細胞培養培地を使って、CD34+臍帯血細胞由来の肥満細胞を培養している。同様に、Lappalainenら(2007)は、いろいろな時点で複能性造血細胞を幹細胞因子と特定のサイトカインで培養することによって、ヒト末梢血由来CD34+細胞から肥満細胞を生成した(非特許文献3)。Schernthanerらの様に、複能性造血前駆細胞が使用された。
【0008】
複能性細胞を使用するアプローチが、多能性細胞などの他の細胞タイプからの肥満細胞を培養する方法に使用されうるか、または取り込まれうるか、あるいはどのように使用されうるか、または取り込まれうるかは、現在明らかでない。特に、複能性造血(CD34+)前駆細胞の生物学的プロファイルは、多能性細胞とは異なり、そして、肥満細胞を多能性細胞から分化する方法の必要性が存在する。多能性細胞と対照的に、臍帯血と他の造血前駆細胞は、制限された拡大増殖性を有する。したがって、例えば、臍帯血のさらなる量は、肥満細胞の継続的な産生のために必要とされる。対照的に、多能性細胞または細胞株の拡大増殖性は、理論的に無限である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Conti et al., Ann. Clin. Lab. Sci., 37(4):315−322, 2007.
【非特許文献2】Schernthaner et al., Blood, 98:3784−3792, 2001.
【非特許文献3】Lappalainen et al., Clin. Experim. Allergy, 37:1404−1414, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
幹細胞のいろいろな細胞株への分化は、予測できない技術であり、そして、幹細胞がどのように産生されて、維持されるかという複数要因が、細胞を分化させるその後の試みに影響を及ぼす場合がある。例えば、他の細胞タイプ(例えば、臍帯血)と比べて、多能性細胞の応答は、広く変動する場合がある。複数要因は、複能性細胞からの肥満細胞の生成に影響を及ぼすことさえある。例えば、前駆細胞の供給源、使われる方法論、発生する肥満細胞の数、それらの成熟の程度、および様々な刺激に対するそれらの表現型と応答性は、大いに異なる(Kambeら、2000;Dahlら、2002;Wangら、2006)。このように、肥満細胞への多能性細胞の培養と分化のための方法に対する明確な必要性が存在し、そして、そのような方法は、研究のこれらの分野の学問を有益に促進するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、多能性細胞(例えば、ヒト胚性幹「hESC」細胞、ヒトiPS細胞)を肥満細胞に分化するための方法を提供することによって、従来技術における制約を克服する。これらの方法は、未分化状態で維持されることができ、少なくとも原則として、細胞のほとんど無限の供給源を提供することができる細胞供給源(すなわち、多能性細胞)から肥満細胞の生産を可能にする。したがって、特定の実施形態では、そして、上記のように、これらのアプローチは、複能性細胞を利用して、肥満細胞の生成のために繰り返し採取された細胞(例えば、末梢血または臍帯血)を必要とする場合がある先のプロトコルよりもかなりの利点を提供する。
【0012】
特定の態様では、多能性細胞は、造血前駆細胞または造血幹細胞(例えば、マウス胚線維芽細胞またはOP9細胞での培養)に分化を誘導するための条件下で培養されうる。生成する細胞は、次に巨核球と肥満細胞前駆体に分化を促進するための条件下で培養されうる。生成する前駆体は、肥満細胞へのさらなる分化を促進するための条件下で培養(例えば、幹細胞因子とIL−6を含む培地での培養)されうる。下記の実施例で示すように、肥満細胞の90%以上の収率が、本発明の方法によって達成することが可能である。上記を達成するための組成物と分化培地が、さらに提供される。
【0013】
本発明の1つの態様は、インビトロで多能性細胞を培養することによって肥満細胞を調製する方法に関するものであり、以下の工程:(a)造血前駆体または巨核球への細胞の分化を促進する条件下で多能性細胞を培養して、造血前駆体または巨核球を含む第1細胞集団を提供する工程;および(b)肥満細胞への分化を促進する条件下で第1細胞集団を培養して、肥満細胞を含む第2細胞集団を提供する工程;から成り、ここで、工程(a)の培養工程は、フィーダー層としてマウス胎仔の肝臓由来間質細胞との共培養を使用しない。特定の実施形態では、第2細胞集団は、トリプターゼ陽性肥満細胞から成る;これらの肥満細胞は、トリプターゼ陽性でキマーゼ陰性の肥満細胞またはトリプターゼ陽性でキマーゼ陽性の肥満細胞であってもよい。多能性細胞は、ヒトiPS細胞またはヒト胚性幹細胞(hESC)(例えば、H1細胞)であってよい。多能性細胞は、MEF上で維持されうる。特定の実施形態では、多能性細胞は、TPOを含む培地で培養される。多能性細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー細胞またはOP9細胞上でさらに培養されてもよい。特定の実施形態では、フィーダー細胞は、ネズミ胎仔の肝臓由来間質細胞ではない。
【0014】
工程(a)は、特定の条件下で多能性細胞を培養する工程を含みうる。工程(a)は、以下の連続した工程:(1)少なくとも1つの成長因子を含む第1の特定培地で複数の多能性細胞を培養または維持すること;(2)BMP4、VEGF、IL3、Flt3リガンド、およびGMCSFが本質的に含まれない第2の特定培地で細胞をインキュベーションすること;(3)複数の細胞を増殖させる、またはその分化を促進するのに十分な量のBMP4とVEGFを含む第3の特定培地で細胞を培養する工程;および(4)複数の細胞を増殖させる、またはその分化を促進するのに十分な量のIL3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第4の特定培地で細胞を培養する工程;を含み、複数の前記多能性細胞が、造血前駆体細胞に分化されることを特徴とする。少なくとも細胞のいくつかは、少なくとも部分的に分離されるか、あるいは工程(2)の前に実質的に個別化される。工程1は、好ましくは、約20%の酸素で実施される;工程(2)、(3)、および/または(4)は、約5〜20%の酸素で実施されてもよい。細胞は、酵素(例えば、トリプシンまたはTRYPLE)を使って、実質的に個別化されてもよい。細胞は、前記個別化の後でROCK阻害剤およびトリプシン阻害剤と接触させることが可能である。特定の実施形態では、ROCK阻害剤は、HA−100、H−1152、およびY−27632からなるリストから選択される。他の実施形態では、工程(a)は、多能性細胞が胚様体(EB)に分化する工程を含みうる。その方法は、約20%、約20%未満、約5%〜20%、または約5%の酸素の気圧で細胞を培養することが可能である:特定の実施形態では、細胞収率は、約5%の酸素で細胞を培養することにより改善されうる。
【0015】
工程(a)は、多能性細胞を、FLT−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−3(IL−3)、およびインターロイキン−6(IL−6)の少なくとも1つ、2つ、3つまたは全てを含む第1培地で培養する工程を含みうる。特定の実施形態では、この培養工程とその後の分化工程は、約20%の酸素で実施されうる。第1培地は、幹細胞因子を含みうる。FL3、幹細胞因子、TPO、IL−3、およびIL−6は、外因的に加えられてもよく、および/または組み換え型であってもよい。特定の実施形態では、第1培地は、約10〜100ng/mlのFL3、約10〜100ng/mlの幹細胞因子、約10〜100ng/mlのTPO、約10〜100ng/mlのIL−3、および約10〜100ng/mlのIL−6(これらは、外因的に添加されるか、あるいは組み換え型である)を含む。
【0016】
特定の実施形態では、工程(a)の後で、複数の多能性細胞は、巨核球または肥満細胞のどちらかに分化し、ここで、肥満細胞は、CD117とCD45に対して陽性であるが、CD34に対しては陰性である。工程(b)は、幹細胞因子を含む培地で細胞を培養する工程を含みうる。培地は、インターロイキン−6(IL−6)をさらに含んでもよい。特定の実施形態では、培地は約10〜100ng/mlの幹細胞因子と約10〜100ng/mlのIL−6を含む。工程(a)および/または工程(b)の少なくとも1つの培養は、無血清培地を使用して実行されうる。方法は、MACSまたはFACSを使用して肥満細胞を精製する工程をさらに含みうる。特定の実施形態では、工程(a)は、多能性細胞の造血細胞への分化に好都合である条件下で細胞を培養する工程を含み、そこでは、得られた造血細胞が肥満細胞への分化に好都合である条件下で培養される。特定の実施形態では、工程(a)は、多能性細胞の造血細胞への分化に好都合である条件下で細胞を培養し、次いで、巨核球への分化に好都合である条件下で造血細胞を培養し、ここで、得られた細胞は、肥満細胞への分化に好都合である条件下で培養される。
【0017】
本明細書で使用されるように、「多能性細胞」という用語は、天然に現存するか、または胚盤胞に由来する両方の幹細胞を含み、そして、いろいろな既存のhESC細胞株のみならず、幹細胞に脱分化するか、または幹細胞のような状態に戻るように誘発された細胞を含む(参照:例えば、Nakagawaら、2008;Yuら、2007)。
【0018】
特許請求の範囲および/または明細書中の用語「含む“comprising”」と共に使われるとき、「1つ“a”」または「1つ “an”」という用語の使用は、「1つ」を意味しうるが、それはまた、「1つ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたはそれより多い」の意味と一致する。
【0019】
本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行されることができ、そして、その逆もあると予期される。さらにまた、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するのに使用できる。
【0020】
本出願を通して、「約」という用語は、値を測定するために用いる装置、方法における誤差に固有の変動、または試験対象間に存在する変動を値が含むことを示すために使用される。
【0021】
特許請求の範囲の「または」という用語の使用は、代替物だけを指すことを明確に示していない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物だけおよび「および/または」を指す定義を支持する。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲(複数を含む)で使用する場合、単語「含む(comprising)」(および「comprise」や「comprises」などのcomprisingの任意の形態)、「有する(having)」(および「have」や「has」などのhavingの任意の形態)、「含む(including)」(および「includes」や「include」などのincludingの任意の形態)、または「含有する(containing)」(および「contains」や「contain」などのcontainingの任意の形態)は、包括的または非制限的であり、挙げられていない追加の要素または方法工程を排除するものではない。
【0023】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者にとって明らかであるので、詳細な説明および特定の例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、実例として挙げられるだけであることを理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、ここに提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせたこれらの1つ以上の図面を参照してよりよく理解されうる。
【図1A】図1Aは、hESC由来肥満細胞およびCD34+由来顆肥満細胞の脱顆粒を示す。
【図1B】図1Bは、hESC由来肥満細胞およびCD34+由来顆肥満細胞の脱顆粒を示す。
【図1C】図1Cは、hESC由来肥満細胞およびCD34+由来顆肥満細胞の脱顆粒を示す。
【図2A】図2Aは、hESC由来肥満細胞およびCD34+由来顆肥満細胞のサイトカイン産生を示す。IL−8(図2A)とGM−CSF(図2B)が示される。
【図2B】図2Bは、hESC由来肥満細胞およびCD34+由来顆肥満細胞のサイトカイン産生を示す。IL−8(図2A)とGM−CSF(図2B)が示される。
【図3A】図3Aは、ヒト肥満細胞(HuMC)でのカルシウム流入を示す。結果は、CD34+由来顆肥満細胞(図3A)およびhESC由来肥満細胞(図3B)に対して示される。
【図3B】図3Bは、ヒト肥満細胞(HuMC)でのカルシウム流入を示す。結果は、CD34+由来顆肥満細胞(図3A)およびhESC由来肥満細胞(図3B)に対して示される。
【図4】図4は、hESC由来肥満細胞およびCD34+由来肥満細胞のタンパク質リン酸化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示的な実施形態の説明
本発明は、多能性細胞を肥満細胞に分化させる方法を提供する。多能性細胞は、複能性細胞とは異なり、ヒト胚性幹「ES」細胞およびヒトiPS細胞を含む。ここに提供される方法と組成物は、未分化状態で維持されることができて、少なくとも原則として、ほとんど無期限に培養されることができる細胞源(すなわち、多能性細胞)から肥満細胞の産生を可能とする。したがって、特定の実施形態では、そして、上記のように、これらのアプローチは、末梢血または臍帯血などの細胞の繰り返し採取を必要とする多能性細胞を利用して、先のプロトコルよりもかなりの利点を提供する。
【0026】
多能性幹細胞を肥満細胞に分化させる方法は、一般的に、多能性幹細胞の調製と維持で始まる。例えば、既存の多能性幹細胞株は、フィーダー細胞(例えば、マウス胚線維芽細胞)を使って未分化状態で培養され、維持されうるか、あるいは、細胞は特定培地(例えば、TeSR培地)を使用して未分化状態で維持されてもよい。あるいはまた、多能性細胞は、本発明で使用するために新しく得ることが可能である。多能性細胞は、次に、例えば、補充されたトロンボポエチンの存在下または非存在下に、OP9間質細胞上での培養によって造血前駆細胞に分化しうる。多能性細胞が造血前駆細胞への分化を促進するための条件下(例えば、マウス胚線維芽細胞またはOP9細胞上の培養、胚様体の形成、またはフィブロネクチン、コラーゲンIV、または他のマトリックスを利用しうる特定の分化条件)で培養されたあと、得られた細胞は、次に、巨核球への分化を促進するための条件下で培養されうる。巨核球の分化は、成長因子(例えば、FLT−3リガンド、幹細胞因子、トロンボポエチン、インターロイキン−3、およびインターロイキン−6)のいろいろな組み合わせを含んでいる培地で培養することによって誘導されうる。巨核球への分化を促進する工程は、本発明のいろいろな実施形態で除外される場合がある(すなわち、多能性幹細胞由来の造血前駆細胞は、例えば、幹細胞因子を含む肥満細胞分化培地で培養することにより、肥満細胞に直接分化されうる)ことが想定される。
【0027】
本発明者は、多能性幹細胞から分化した造血前駆細胞が、それから、例えば、幹細胞因子、IL−3、およびIL−6を含む培地での培養により肥満細胞に分化しうるという驚くべき発見をした。以下の例で示すように、肥満細胞の90%以上の収率は、本明細書に開示された方法によって達成されうる。多能性幹細胞の培養と分化とに関連した現在の不確実性を考えると、これらの結果は驚くべきものである。さらに、これらの方法は、始めの細胞集団から産生される肥満細胞の増加した割合だけでなく、さらなる組織サンプルを得る必要性の減少の両方から、先に使用された方法より実質的な利点(例えば、臍帯血から分化する肥満細胞)を提供する。上記を達成するための組成物と分化培地が、以下に記載され、そして、当業者に理解されるように、様々な変更がこれらのプロトコルに対してなされてもよい。
【0028】
興味あることに、本発明者らは、多能性細胞が分化の前にOP9間質細胞上で培養されるとき、「シングルポジティブ」肥満細胞(すなわち、トリプターゼ陽性でキマーゼ陰性の肥満細胞)が生産されうることを発見した。シングルポジティブ肥満細胞は、ダブルポジティブ肥満細胞(すなわち、トリプターゼ陽性で、キマーゼ陽性の肥満細胞)とは区別される。
【0029】
ヒト肥満細胞は、それらの中性プロテアーゼ組成に基づき、2つの表現型に分類される。1つは皮膚と腸粘膜下組織で優勢である、トリプターゼ陽性でキマーゼ陽性のMCTC細胞であり、そして、他方は、肺と腸粘膜で優勢なトリプターゼ陽性でキマーゼ陰性MCT細胞である。複数の機能的な違いが、両方の細胞タイプの間に存在する。皮膚と肺組織から分散した肥満細胞は、いろいろな非免疫性の分泌促進物質へのそれらの応答において異なると報告された。より詳しくは、皮膚肥満細胞(主にMCTC)は、化合物48:80とサブスタンスPと反応するが、肺肥満細胞(主にMCT)は、反応しない。MCTCとMCT細胞は、それらの細胞質顆粒の超微形態学で区別可能であることも証明された。MCTC細胞は、不完全な渦巻き型または結晶状物質(結晶は、MCTCに対して、ずっと特異的である)のある顆粒を有し、そして、MCT細胞は、粒子または不連続な渦巻き型(不連続な渦巻き型は、ずっと特異的である)を含む顆粒を有する。
【0030】
したがって、hESCまたはiPS細胞からのシングルポジティブ肥満細胞またはMCTの生成は、特に喘息を含む肺に存在する肥満細胞に関与する疾患、慢性閉塞性肺疾患の肺機能、血管浮腫、アレルギー性鼻炎と結膜炎、じん麻疹、およびアナフィラキシーを調べるのに役立つ可能性がある。hESCまたはiPS細胞からのダブルポジティブな肥満細胞またはMCTCの生成は、皮膚または腸粘膜下組織でのヒスタミン放出に関係する疾患を調べることに役立つ可能性がある。いろいろな実施形態では、肥満細胞は、抗アレルギー化合物の評価のために使うことが可能である;例えば、肥満細胞は、抗アレルギー化合物と共に存在し得て、1つ以上の応答(例えば、脱顆粒、その他)が測定されうる。したがって、これらのアプローチは、肥満細胞の脱顆粒またはヒスタミン放出を阻害する肥満細胞安定剤などの、特に推定抗ヒスタミン剤の同定または評価に役立つ可能性がある。
【0031】
I.多能性幹細胞の調製および維持
本発明で使われる胚性幹細胞は、当業者に公知のいろいろな方法を使用して、未分化状態で培養、維持されうる。例えば、ヒト胚性幹細胞を培養する方法は、未分化状態で幹細胞を維持するために、線維芽細胞フィーダー細胞または線維芽細胞フィーダー細胞に曝露された培地を利用しうる。本発明によって分化する多能性細胞は、フィーダー細胞(例えば、マウス胚線維芽細胞または「MEF」、その他)または例えば、米国特許出願公開第2006/0084168号およびLudwigら(2006a、2006b)などに記載されているTeSR培地などの、無フィーダーもしくは特定の培養系を使用して、未分化状態で最初に培養されることが可能である。
【0032】
無フィーダー培養系と培地は、ヒト胚性幹細胞を培養して、維持するのに用いることが可能である。これらのアプローチは、マウス線維芽細胞「フィーダー層」を必要とすることなく、ヒト胚性幹細胞を培養して、維持することを可能とする。以下に記載するようにいろいろな修正が、希望されるように経費その他を削減するためにこれらの方法になされうる。
【0033】
本明細書で使用されるように、「多能性幹細胞」は、3つの胚葉のどれかに分化する可能性がある幹細胞を指す:内胚葉(例えば、内部胃壁、消化管、肺)、中胚葉(例えば、筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)または外胚葉(例えば、表皮組織または神経系)。胎盤などの胚体外組織を除いては、多能性幹細胞は、本質的に任意の胎児また大人の細胞タイプに分化することができる。ヒト胚性幹細胞(hESC)またはiPS細胞は、本発明で使用されうる多能性幹細胞の例である。特定の実施形態では、多能性幹細胞は、新生物でないかまたはガンでないと定義されうる;それにもかかわらず、本発明者らは、いろいろな奇形腫細胞または細胞株などの特定の新生物またはガン由来細胞は、本明細書に記述された方法により肥満細胞に分化しうることが予期される。
【0034】
実質的に任意のヒト胚性幹細胞株は、例えば、肥満細胞への分化に本発明で使用されうると期待される。例えば、ヒト胚性幹細胞株H1、H9、hES2、hES3、hES4、hES5、hES6、BG01、BG02、BG03、HSF1、HSF6、H1、H7、H9、H13B、および/またはH14、その他は、肥満細胞に分化しうる。その後利用できるようになる幹細胞株もまた、本発明で使用されうることが期待される。ヒト胚性幹細胞株またはヒトiPS細胞は、本発明で好ましく使われるが、哺乳類、マウス、霊長類、その他などの他の胚性幹細胞株が、本明細書に開示された方法によって、肥満細胞に分化されうることが期待される。
【0035】
ヒト胚性幹細胞に加えて、iPS細胞またはiPSCとも称される誘導された多能性細胞は、本発明のいろいろな実施形態で肥満細胞に培養および/または分化されうる。iPS細胞は、幹細胞のように作用する初期化線維芽細胞である(Takahashiら、2007;Takahashiら、2007;Nakagawaら、2008;Zhouら、2009;米国特許出願公開第2009/0081784号)。例えば、(Oct4、Sox2、Klf4、およびc−Myc)または(Oct−4、Sox2、NanogおよびLin28)などの遺伝物質の導入により、iPS細胞は生成しうる。特定の実施形態では、Oct4とSox2だけが、ヒト線維芽細胞(Huangfuら、2008)からiPS細胞を生成するために使用されうるのであって、c−MycはiPS細胞(Nakagawaら、2008)を生成するのに必要とされない可能性がある。あるいはまた、iPS細胞は、例えば、Zhouら、2009で記述されているように、膜透過性初期化タンパク質への曝露により発生しうるのであって、そのようなiPS細胞は、また、「タンパク質−誘導多能性幹細胞」(piPSC)と称してもよい。本明細書で使用されるように、「多能性幹細胞」という用語は、天然に現存するか、または胚盤胞に由来する両方の細胞と、そして幹細胞に脱分化するか、または幹細胞様の状態に戻るように誘導された細胞をも含む(Nakagawaら、2008;Yuら、2007;Zhouら、2009)。肥満細胞に分化しうるiPS細胞は、例えば、iPS6.1、iPS6.6、iPS、iPS5.6、iPS5.12、iPS5.2.15、iPSiPS5.2.24、iPS5.2.20、iPS6.2.1、および/またはiPS5/3−4.3を含む。
【0036】
A.TeSR培地を含むアプローチ
TeSR1培地とも称されるTeSR培地は、未分化のヒト胚性幹細胞を培養するのに用いることが可能な特定培地である。TeSRは、bFGF、LiCl、γ−アミノ酪酸(GABA)、ピペコリン酸およびTGFβを含み、そして、TeSRを利用する種々の方法は、例えば、米国特許出願公開第2006/0084168号およびLudwigら(2006a;2006b)で先に記述されており、それらは、放棄されることなくその全体が引用により取り込まれる。
【0037】
TeSR培地は、一般的に無機塩、微量金属、エネルギー基質、脂質、アミノ酸、ビタミン、成長因子およびタンパク質、ならびに他の成分を含む。TeSR1培地のための完全な製剤は、以下の表1に示される。
【0038】
【表1】

上記製剤中の特定成分はまた、例えば、研究のためのTeSRの使用を容易にするために、または金を節約するために置換されてもよい。例えば、培地mTeSR1は、本発明で使うことが可能であり、以下のようにTeSR1と異なる:ウシ血清アルブミン(BSA)は、ヒト血清アルブミンの代用となり、そして、クローン化ミノカサゴの塩基性線維芽細胞成長因子(zbFGF)は、bFGFの代用となる。TeSR1は、例えば、Ludwigら(2006)に記述され、そして、それは放棄されることなく、その全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0039】
B.マトリックス成分
いろいろなマトリックス成分は、ヒト胚性幹細胞を培養して、維持するめに使用されうる。例えば、コラーゲンIV、フィブロネクチン、ラミニン、およびビトロネクチンは、組み合わされて、胚細胞の培養と維持のための固体支持体を提供するために、Ludwigら(2006)(これは、引用によりその全体が取り込まれる)に記述されているように、使用されうる。ポリ−L−リジンまたはCellStart(商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)が、マトリックス成分としても使用されてよい。
【0040】
Matrigel(商標)は、ヒト胚性幹細胞の細胞培養と維持のための基質を提供するためにも使用されうる。Matrigel(商標)は、マウス腫瘍細胞によって分泌されるゼラチン状のタンパク質混合物であり、BD Biosciences(New Jersey,USA)から商業的に入手可能である。この混合物は、多くの組織で見つかる複雑な細胞外環境に類似していて、細胞培養のための基質として、細胞生物学者によって使用される。ヒト胚性幹細胞培養と維持のための方法は、例えば、Ludwigら(2006)に記述されており、これは、引用によりその全体が本明細書に取り込まれる。当業者に公知のヒト胚性幹細胞の培養と維持のためのさらなる方法が、本発明で使用されうることが理解される。
【0041】
II.造血細胞への分化
いろいろな方法が、多能性細胞の造血CD34+幹細胞への分化を促進するために、本発明で使用することが可能である。例えば、多能性細胞は、OP9細胞またはマウス胚線維芽細胞上で培養されうる。あるいはまた、造血前駆細胞は、特定培地(例えば、以下に記載される1つ以上の成長因子とフィブロネクチンなどのマトリックス成分とを含む)を使用して、多能性幹細胞から培養されうる、あるいは、造血細胞は、胚様体の形成を経由して多能性細胞から発生しうる。トリパーゼ陽性でキマーゼ陰性の肥満細胞を生産する事が望まれる特定の実施形態では、ネズミ胎仔肝臓由来の間質細胞は、使用しないのが望ましい。その理由は、これがトリパーゼ陽性でキマーゼ陽性の肥満細胞への分化を促進するか、またはもたらす場合があるからである。
【0042】
ヒトESCからの造血前駆細胞の分化のための1つの方法は、フィーダー細胞(例えば、マウス胚線維芽細胞(MEF)フィーダー層またはマウス間質細胞株OP9など)上で、ESCを培養する工程を含み、そして、それはCD34+への強力な分化を誘導する。簡潔に言うと、ESCは、成長因子の存在下、MEF上で増殖することが可能であり、そして、MEFは基質とおそらくいくらかの栄養を細胞に提供する。対照的に、OP9細胞の使用は、CD34+分化を誘導するために余分の成長因子を必要としない。これらのプロセスが起こるメカニズムは、完全には理解されていない。このアプローチは、また、特定の成長因子と血清(Wang、2007)を組み合わせて使用されてもよい。MEFはまた、ヒトESCを培養して、維持するためにしばしば使用される。以下のプロトコルなどのマウス胚線維芽細胞上での培養を利用する方法は、FBSの代わりにKnockout(商標)血清置換を含むために修正される場合がある。
【0043】
例えば、以下のプロトコルは、造血細胞への多能性細胞の分化のために使用されうる。H1細胞は、MEF上に決まって維持され、そして、1×10細胞/ウェル(1ウェルは9.6cmである)で、αMEM+20%特定FBS+100ng/mlのTPO中、ほとんどコンフルエントなOP9間質細胞へ継代されうる。細胞は、2日目と4日目に、新鮮な培地で培養されうる。7日目に、細胞はコラゲナーゼIVを使って新鮮なOP9細胞上に1:3に分割されうる。細胞は、8日目と10日目に、新鮮な培地で培養されうる。11日目に、細胞はコラゲナーゼIVを使って新鮮なOP9細胞上に1:1に分割し、続いて単細胞を得るためにトリプシン/EDTA処理し、そして、培地をαMEM+10%特定FBS+100ng/mlのTPOに変更しうる。14日目から16日目までは、毎日、この培地をさらに1ml添加することにより、細胞は培養されうる。ある実施形態では、OP9細胞に関わる分化のための方法は、Gaurら(2006)に記述されているように実施することが可能であり、その全体は引用することにより具体的に取り込まれる。
【0044】
ヒト胚性幹細胞からの造血前駆細胞を産生するための別のアプローチは、分化を誘導するために、「胚様体」(EB)または増殖細胞の集団の形成に関わる。EBへのヒトESCのインビトロでの凝集は、内胚葉、外胚葉、および中胚葉起源を意味する複数の組織タイプへの、ヒトESCの自発的で無作為な分化を可能とする。3次元EBの形成は、このように、造血細胞フラクションを生成するのに用いることができる。多能性細胞は、以下のプロトコルによって胚様体(EB)に分化しうる:多能性細胞は、約37℃で約20分間、約2mg/mlのディスパーゼ溶液を使用して、コンフルエンスまで培養し、増殖表面から取ることが可能である。細胞は、ディスパーゼを除去するために1回洗浄され、そして、85%のIMDM、15%のFBS、1%のNEAA、およびβ−メルカプトエタノールからなる「EB形成培地」中に再懸濁されうる。懸濁液中の細胞を、Costarの低接着性プレートに加え、そこでは、それらは、日数を経て胚様体を形成することができ、そして、半分の培地を1日おきに変えて培養することができる。約12日目に、EBは培養物から取り除かれて、コラゲナーゼIV、続いてトリプシン/EDTAで分離されうる。それからトリプシンは、血清含有培地で中和されて、そして、細胞懸濁液は任意の残留凝集塊をさらに破壊するために22G針を通過させてもよい。この点で、細胞は100μフィルター、そして、それから30μフィルターを通過させてもよい。EBから得られるCD34+造血前駆細胞は、それから、巨核球(例えば、MK#3分化培地を使用して)とそれから肥満細胞(例えば、SCFとIL6を含む肥満細胞分化培地を使用して)への分化を経由する肥満細胞に分化されうる。
【0045】
以下の特定EB分化プロトコルが、使用されてもよい。Matrigelコートプレート上で無フィーダー成長に適応した未分化hESCとiPSCは、37℃で6分間、TrypLE(商標)処理を用いて、コンフルエンスで回収されうる。ウェル中のTRYPLEは、約80%のIMDM、約20%のBIT9500、約1%のNEAA、約1mMのL−グルタミン、および約0.1mMのメルカプトエタノール、約0.75%のBSA、約50μg/mlのアスコルビン酸を含むEB基礎培地を用いて、約0.25mg/mlの大豆トリプシン阻害剤および約1μMのRoCK阻害剤(H1152)で中和されうる。細胞懸濁液は、Costarの低接着性プレートに播種、培養され、そこで、12〜24時間の間に、胚様体を形成することができる。その翌日に、細胞EBは、細胞を重力または温和な遠心分離により沈降させることによって、各ウェルから回収することが可能である。それから、上澄みは廃棄されてもよく、そして、EBは、分化の最初の約4〜5日間、骨形成因子(BMP−4)と血管内皮増殖因子(VEGF)(約25ng/ml)が添加されたEB−基礎培地に置かれることができる。細胞は、1日おきに、新鮮な培地で半分が培養されうる。EB培養物は、約5日目に採取することが可能であり、TrypLEを使って部分的な分離に付すことが可能である。細胞はそれから、洗浄してTrypLEを除き、次の7日間、Flt−3リガンド(Flt−3L)、インターロイキン−3(IL−3)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)が添加されたEB基礎培地である第2のEB−分化培地に切り替えられてもよい。EB培養物は、次の7日間、1日おきに半分が培養されうる。細胞は、EBの分化の約12〜13日間後に、採取されうる。凝集塊は、個別化された細胞を生成するためにTrypLEを使って消化された。単細胞懸濁液は、CD43、CD45、CD34、CD31の存在に対して染色され、そして、発現レベルが、フローサイトメトリーで定量化されうる。EB生成のための他の方法は、例えば、Luら2007およびKennedyら2007で利用されている方法を含む。
【0046】
他の実施形態では、造血前駆細胞は、特定培地を使用して多能性幹細胞から培養されうる。特定培地を使用して、造血CD34+幹細胞への多能性細胞の分化のための方法は、例えば、米国特許出願番号61/015,813に記載されており、これは、放棄されることなくその全体が引用により取り込まれる。これらの方法は、本発明で使用することが可能であると期待される。
【0047】
例えば、特定培地は、造血CD34+分化を誘導するのに用いることが可能である。特定培地は、成長因子BMP−4、VEGF、bFGF、およびマトリックス成分(例えば、フィブロネクチンなど)を含んでもよい。培地に存在するタンパク質の全てまたは本質的にすべてが、すべてヒトのものである特定培養培地が、使われてもよい。本明細書で使用されるアプローチは、単細胞をプレートに付着させるためにROCK阻害剤HA100とH1152を含むことによって、単細胞アッセイ(コロニーベースの系からの)において利用されうる;例えば、これらのアッセイでは、他の(コロニーベースの系)パラメータを別に変えることなく、3日間TeSR中で培養することが可能である。これらのアプローチは、例えば、ロボット・オートメーションを用いて自動化が可能である。米国特許出願番号61/015,813に記載されているように、特定培養培地は、約5ng/mlから約200ng/ml、または約50ng/mlの量のBMP−4、約5ng/mlから約200ng/ml、または約50ng/mlの量のVEGF、および、約5ng/mlから約200ng/ml、または約50ng/mlの量のbFGFを含みうる。
【0048】
III.巨核球分化
本発明は、多能性細胞の巨核球への分化のための方法を提供し、そこでは、巨核球へのサイドポピュレーション細胞は、それから、肥満細胞への分化を誘導するための条件下でその後培養されうる。例えば、以下のパラダイムは、多能性細胞の肥満細胞への分化を誘導するのに用いることが可能である。多能性細胞は、第1分化プロトコルに付されて、例えば、造血前駆細胞への多能性細胞の分化を開始しうる。次に、造血細胞は、巨核球と肥満細胞への多能性細胞の分化を促進する条件下での培養細胞であってよい。巨核球分化を促進するのに有用な同じ成長因子のいくつかは、肥満細胞分化にとっても重要である。最後に、肥満細胞の初期には小さい集団は、肥満細胞への分化をさらに促進する条件下で培養され、そして拡大されうる。特定の実施形態では、巨核球への分化を促進する条件下で造血前駆細胞を培養する工程は、除外される場合があり、そして、造血前駆細胞は、肥満細胞に分化を促進する条件下で培養されてもよい。
【0049】
体内において、巨核球は血髄に存在し、突起またはプロ血小板から血小板を作り出し、それは細胞上で形成される。ヒトの体の巨核球細胞は、骨髄細胞のごくわずかな部分を表すだけであるが、特定の病気に応じて最高10倍まで数が増える場合がある。体内において、巨核球は、一般的に、以下の通りに造血細胞から分化する:ヘマサイトクラスト(hemacytoclasts)は、巨核芽球に分化し、そして、次に、巨核芽球は、プロ巨核球に分化し、そして、次に、プロ巨核球は、巨核球に分化する。
【0050】
いろいろな培地と方法が、多能性細胞を巨核球に分化させるために使用することができる。例えば、米国特許出願公開2007/0077654(これは、放棄されることなく、引用することによりその全体が取り込まれる)に記載されているように、多能性細胞を巨核球に分化させるための方法と培地が、本発明で使用されてもよい。
【0051】
成長因子は、巨核球分化培地に優先的に含まれる。例えば、巨核球分化培地は、FLT−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−3(IL−3)、およびインターロイキン−6(IL−6)の1つ、2つ、3つ、4つ、または全てを含みうる。特定の実施形態では、SCFだけが、巨核球分化培地に含まれうる。他の実施形態では、SCFが、IL−3および/またはIL−6の一方または両方と組み合わされて使用されてもよい。いろいろな実施形態では、FLT−3リガンドおよび/またはTPOは、本発明の巨核球分化培地から除外されてもよい。
【0052】
血清は巨核球分化培地から除外されうることが予期される。どんな理論にも束縛されるものではないが、血清の排除は、血清のバッチまたはロット間の内容物の変化が排除されるために、増加した一貫性をもたらす可能性があることが予想される。その上、血清の除外は、形態学的に、インビボで肥満細胞により一貫して似ているように見える肥満細胞の産生をもたらす可能性がある。上記のように、特定の実施形態では、Knockout(商標)血清置換は、血清の代用となりうる。本発明者は、血清の代わりとなるBIT9500(ウシ血清アルブミン、インスリン、およびトランスフェリン)を用いて、多能性細胞が本発明に従って肥満細胞(例えば、CD117/45+とCD34陰性)に分化することができることを具体的に予想している。
【0053】
巨核球分化は、多能性細胞から分化したCD34+幹細胞を使用して、以下の通りに実行されうる。CD34+細胞を含む全細胞懸濁液は、回収され、遠心分離され、そしてMK#3分化培地(80%Stemline II、20%BIT9500、L−glut、β−ME、Penstrep、FL3 100ng/ml、SCF 100ng/ml、TPO 100ng/ml、IL3 10ng/ml、およびIL6 10ng/mlを含む)に約2週間、置かれうる。細胞は、新鮮な培地への少なくとも部分的な変更を4日置きにしながら培養されうる。2週の終わりに、細胞はCD34、CD117とCD45の発現に対して分析されうる。以下の例に示されるように、このアプローチは、CD45とCD117の両方の細胞による発現に基づいて、そしてCD34発現の欠如に基づいて、肥満細胞の約25%をもたらすことができる。
【0054】
IV.肥満細胞分化
いろいろなアプローチが、多能性細胞を肥満細胞へ分化させるための本発明に従って、使用されうる。特定の実施形態では、多能性前駆細胞は、造血細胞に最初に分化し、そして、その後、造血細胞は、肥満細胞に分化する。本発明は、また、多能性細胞由来の造血前駆細胞または多能性細胞由来の巨核球細胞の肥満細胞への分化用培地(「肥満細胞分化培地」)を提供する。
【0055】
肥満細胞分化培地は、好ましくは、幹細胞因子(SCF)を含む。いろいろな実施形態では、肥満細胞分化培地は、SCFとIL−6の両方を含む。他のサイトカイン類は、肥満細胞分化を促進する分化培地に含ませることが可能であり、例えば、IL−3、IL−4、IL−9および/またはIL−10を含む。
【0056】
実施例で示されるように、他の成長因子を含まない、SCFとIL−6を含む肥満細胞分化培地は、多能性由来細胞を培養するために使用されて、細胞培養集団で肥満細胞の約90%以上の収率をもたらした。これらの肥満細胞は、例えば、CD117(+)、CD45(+)、トリプターゼ、およびFcεRI(+)発現を測定することによって特定された。下記の実施例1で記述されるように、得られた細胞集団の残存部分は、マクロファージのように思われる。
【0057】
肥満細胞の分化培地での培養細胞は、様々な期間に実行されうる。例えば、巨核球分化を促進する条件下で以前に培養された細胞は、その後、約5日間から9週間、約5日間から4週間以上、約5日間から約3週間、約1週間から約3週間、約1〜2週間、もしくは約7、8、9、10、11、12、13、14日間、またはその中で派生しうる任意の範囲の期間、肥満細胞分化培地で培養されうる。多能性細胞由来の造血前駆細胞が、肥満細胞分化培地で直接分化されるならば、そのときには、細胞は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週もしくはそれより長く、またはその中で派生しうる任意の範囲の期間、培養することが可能である。
【0058】
特定の実施形態では、次のプロトコルを肥満細胞への多能性由来細胞の分化を促進するために使用してもよい。細胞は、肥満細胞分化培地(90%RPMI、10%特定FBS、1%L−glut+BME、1%非必須アミノ酸、1%Penstrep、およびSCFとIL6のそれぞれ100ng/ml)に添加し、1〜2週間またはそれより長く培養することが可能である。
【0059】
様々な実施形態では、肥満細胞への臍帯血や末梢血の分化のための方法は、また、本発明と組み合わせて使用されてもよい。例えば、Schernthanerら(2001)は、様々な時点でIL−6または(IL−4、IL−6、およびIL−10)を組み合わせてSCFを使用して、肥満細胞に臍帯血前駆細胞を分化するための方法を記述する。Lappalainenら(2007)は、添加されるSCFと他のサイトカイン類(IL−3、IL−6、IL−9、およびIL−4、)を用いて様々な期間、培養することによる末梢血の肥満細胞への分化のための方法を提供する。これらの方法のいずれかが本発明で成功して使用しうることが予想される。
【0060】
V.分化培地
特定および非特定の培地(すなわち、血清などの1つ以上の動物性産物を含む)の両方を含む様々な培地が、肥満細胞に多能性細胞を分化するのに本発明と共に使用することが可能である。数工程が、そのプロセスに関与しうる。例えば、多能性細胞は、維持されて、次に、造血前駆細胞への分化を促進する条件下で培養されうる;そして、造血前駆細胞は、肥満細胞への分化を促進する条件下で培養されうる。あるいはまた、多能性細胞は、維持されて、それから、造血前駆細胞への分化を促進する条件下で培養され得て、それは、次に、巨核球への分化を促進する条件下で培養され、最終的に巨核球は肥満細胞への分化を促進する条件下で培養できる。
【0061】
ある実施形態では、血清は本発明の培地(すなわち、「無血清」培地)とプロトコルから除かれてもよい。どんな理論にも束縛されるものではないが、血清の排除は、血清のバッチまたはロット間の内容物の変化が排除されるために、増加した一貫性をもたらす可能性があることが予想される。その上、血清の除外は、形態学的にインビボでの肥満細胞により一貫して類似しているように見える肥満細胞の産生をもたらす可能性がある。
【0062】
様々な実施形態では、血清をKnockout(商標)血清代替物またはStemPro(商標)hESC SFMで置き換えられてもよい。Knockout(商標)血清代替物(SR)とStemPro(商標)hESC SFMは、非分化ES細胞を増殖、維持させるために最適化された特定の無血清処方物であり、そして、Invitrogen(Carlsbad,CA)から入手可能である。Knockout(商標)SRまたはStemPro(商標)hESC SFMは、FBSと取り替えることが可能である。例えば、Knockout(商標)SRは、不活性マウス胚線維芽細胞(参照:例えば、Ezashiら、2005)上で、未分化D3 ES細胞コロニーの増殖を支持するために使用されうる。他の実施形態では、血清は本発明の培地組成物から除かれてもよい。例えば、ある実施形態では、FBSは、肥満細胞分化を誘導するための培養条件から除かれてもよい。
【0063】
A.成長因子
いろいろな成長因子が当該分野で公知であり、本発明で使用されてもよい。特定の実施形態では、本発明の肥満細胞分化培地などの分化培地は、成長因子FLT−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−3(IL−3)、およびインターロイキン−6(IL−6)の1つ、2つ、または全てを含むことが可能である。
【0064】
成長因子の組み合わせは、肥満細胞に分化の前に、造血および/または巨核球系統への前駆細胞の分化を促進するために使用されうる。例えば、TPOから成る培地を含むマウス胚線維芽細胞培養システムを使用して、血清の有無にかかわらず、多能性細胞の造血前駆細胞への分化を開始するために使用されうる。下記のように、成長因子のいろいろな組み合わせが、巨核球および/または肥満細胞に分化を誘導するために培地に含まれてよい。
【0065】
特定の実施形態では、成長因子は、分化培地に外因的に加えられる組み換え型成長因子である。分化培地に含まれる成長因子(複数を含む)は、組み換え型ヒト成長因子であってもよい。あるいはまた、成長因子(複数を含む)は、非ヒト成長因子(例えば、哺乳類、その他)またはヒトおよび非ヒト成長因子の組み合わせてもよい。特定の実施形態では、非ヒト成長因子が、例えば、類似したヒト成長因子と比較して、非ヒト成長因子の使用を伴う経費節減がある場合に有利に使用されうる。
【0066】
1.幹細胞因子
幹細胞因子(SCF)は、CD117(c−Kit)と結合するサイトカインである。SCFは、「KITリガンド」、「c−kitリガンド」または「スチール因子」としても知られている。SCFは、2つの形態で存在する:細胞表面に結合したSCFと可溶性(または遊離の)SCF。可溶性SCFは、メタロプロテアーゼによる表面に結合したSCFの切断によりインビボで一般的に産生される。SCFは、造血前駆細胞や他の造血前駆細胞の生存、増殖、および分化にとって重要である。インビボで、SCFは、赤血球シリーズで最も初期の赤血球前駆体であるBFU−E(赤芽球バースト形成単位)細胞をCFU−E(赤芽球コロニー形成単位)に変えることができる。
【0067】
特定の実施形態では、SCFは、約5〜約500ng/ml、25〜約500ng/ml、約25〜約200ng/ml、約50から約150ng/ml、約25から約200ng/ml、約75から約300ng/ml、またはその中で派生する任意の範囲の濃度で、本発明の培養培地に含まれる。特定の実施形態では、SCFは、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100ng/mlの濃度で、特定培養培地に含まれる。
【0068】
2.IL−6
インターロイキン−6(IL−6)は、炎症誘発性サイトカインである。インビボで、IL−6はT細胞とマクロファージにより分泌されて、炎症につながる外傷または他の組織の損傷に対する免疫反応を刺激する。IL−6は、また、特定のバクテリアに対する応答で役割を果たすこともでき、そして、骨芽細胞は、インビボでIL−6を分泌して破骨細胞形成を刺激する。ヒトでは、多くの血管の中膜の平滑筋細胞は、炎症誘発性サイトカインとしてIL−6を生産することができ、そして、IL−6は、熱のインビボでの重要なメディエーターである。
【0069】
特定の実施形態では、IL−6は、約5〜約500ng/ml、25〜約500ng/ml、約25〜約200ng/ml、約50〜約150ng/ml、約25〜約200ng/ml、約75〜約300ng/ml、またはその中で派生する任意の範囲の濃度で、本発明の培養培地に含まれる。特定の実施形態では、IL−6は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100ng/mlの濃度で、特定培養培地に含まれる。
【0070】
3.IL−3
インターロイキン−3(IL−3)は、複能性造血細胞の生存、増殖、および分化に関与する造血成長因子である。ヒトを含む5つの哺乳類の種において、IL−3をコードする遺伝子を分離し、発現させて成熟組み換え型タンパク質を生成した。ヒトIL−3遺伝子は、2つの保存的システイン残基と2つの潜在的なN−結合型グリコシル化部位を有する133個のアミノ酸のタンパク質をコードする(Wagemakerら、1990)。
【0071】
特定の実施形態では、IL−3は、約5〜約500ng/ml、25〜約500ng/ml、約25〜約200ng/ml、約50〜約150ng/ml、約25〜約200ng/ml、約75〜約300ng/ml、またはその中で派生する任意の範囲の濃度で、本発明の培養培地に含まれる。特定の実施形態では、IL−3は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100ng/mlの濃度で、特定培養培地に含まれる。
【0072】
4.FLT−3リガンド
FLT−3リガンド(FLT3リガンドとも称される)は、FLT3に対する内因性リガンドである。FLT3は、未成熟造血前駆細胞によって発現される受容体チロシンキナーゼである。FLT3のためのリガンドは、膜貫通型または可溶性のタンパク質であって、造血および骨髄間質細胞を含むいろいろな細胞によって発現される;他の成長因子と組み合わされて、FLT−3リガンドは、幹細胞、骨髄系およびリンパ系の前駆細胞、樹状細胞およびナチュラルキラー細胞の増殖と進化を刺激することができる。受容体の活性化は、造血細胞での増殖、生存および他のプロセスを制御する様々な信号伝達経路に関与していることが知られている種々の重要なアダプタータンパク質のチロシンリン酸化をもたらす。FLT3とFLT3に影響を及ぼす突然変異は、白血病の予後と治療などの病理学的疾患において重要でもある(Drexlerら、2004)。
【0073】
特定の実施形態では、FLT−3リガンドは、約5〜約500ng/ml、25〜約500ng/ml、約25〜約200ng/ml、約50〜約150ng/ml、約25〜約200ng/ml、約75〜約300ng/ml、またはその中で派生する任意の範囲の濃度で、本発明の培養培地に含まれる。特定の実施形態では、FLT−3リガンドは、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100ng/mlの濃度で、特定培養培地に含まれる。特定の実施形態では、FLT−3リガンドの包含は、多能性細胞の培養において、最初の〜1−3週間、培地に含まれ、その後、それは、分化に対して有害な影響を与えることなく系から取り除くことができる。
【0074】
5.トロンボポエチン
トロンボポエチン(TPO)は、肝臓と腎臓によってインビボで主に産生される糖タンパク質ホルモンであり、骨髄による血小板の産生を制御する。TPOは、インビボで巨核球(多数の血小板に断片化する骨髄細胞)の生成と分化を刺激することができる。特定の実施形態では、TPOの包含は、多能性細胞の培養において、最初の約〜1−3週間、培地に含まれ、その後、それは、分化に対して有害な影響を与えることなく系から取り除くことができる。
【0075】
特定の実施形態では、TPOは、約5〜約500ng/ml、25〜約500ng/ml、約25〜約200ng/ml、約50〜約150ng/ml、約25〜約200ng/ml、約75〜約300ng/ml、またはその中で派生する任意の範囲の濃度で、本発明の培養培地に含まれる。特定の実施形態では、TPOは、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100ng/mlの濃度で、特定培養培地に含まれる。
【0076】
6.他の成長因子
上にリストアップされた成長因子に加えて、IL−3、IL−4、IL−9、IL−10、および/またはエリスロポイエチン(EPO)の1つ以上が、肥満細胞分化培地などの分化培地に含まれてもよい。他の成長因子(複数を含む)は、約5〜約500ng/ml、25〜約500ng/ml、約25〜約200ng/ml、約50〜約150ng/ml、約25〜約200ng/ml、約75〜約300ng/ml、またはその中で派生する任意の範囲の濃度で、本発明の培養培地に含まれてよい。特定の実施形態では、TPOは、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100ng/mlの濃度で、特定培養培地に含まれる。
【0077】
B.他の成分
本発明の分化培養培地は、また、栄養分、アミノ酸、抗生物質、緩衝剤などのさらなる成分も含んでよい。いろいろな実施形態では、分化培養培地は、1つ以上のビタミン、鉱物、塩、脂質、アミノ酸、または他の成分を含んでもよい。特定の実施形態では、本発明の培養培地は、非必須アミノ酸、L−グルタミン、Pen−step、およびモノチオグリセロールを含んでもよい。
【0078】
ウシ胎仔血清(FBS)などの血清は、本発明に従って、例えば、約10%から約30%のおよその濃度で培地に含まれてよい。特定の実施形態では、例えば、多能性細胞の維持のために、約20%の血清が培地に含まれる。
【0079】
Stemline II(商標)は、例えば、約70%〜約90%の濃度で本発明の培地に含まれてよい。Stemline(商標)II造血幹細胞拡大培養培地は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能である。この製剤は、臍帯血CD34+細胞から拡大培養された細胞、および末梢血(PBPC)生成物からの4−HCでパージされたCD34+細胞の数を増加させるために用いることができる。Stemline(商標)II造血幹細胞拡大培養培地は、抗生物質とサイトカインを含まない特許製剤である。
【0080】
BIT9500(StemCell Technologies Inc.,Vancouver,Canada)は、また、例えば、約10%〜約30%のおよその量で、または約20%の量で、本発明の培養培地に含まれてもよい。BIT9500は、IscoveのMDM中にウシ血清アルブミン、インスリンおよびトランスフェリン(BIT)の事前テスト済みのバッチを含む。BIT9500は、50mg/mLのウシ血清アルブミン(NaHCO3で緩衝化)、50μg/mLrhのインスリン、1mg/mLのヒトトランスフェリン(鉄で飽和した)を含む。特定の実施形態では、KOSRは、特定培地が必要とされない実施形態においてBIT9500の代わりとなりうる。KOSRは、商業的に入手可能(例えば、Gibco/Invitrogenのカタログ番号10828から)であり、以前にWO98/30679に記述された非特定培地である。
【0081】
BITの使用は、先に述べたように、HITと置き換えることが可能である;血清アルブミンなどの成分が、ヒトの成分(例えば、ヒト血清アルブミン)であることを除いては、HITはBITについて記述された組成物を含む。しかし、本発明によって分化される肥満細胞への適用の多くが、研究目的に関連するので、BITは、ヒトの成分が必要とされないときは、HITに対するそれほど高価でない代替物となりうる。
【0082】
C.肥満細胞生成のための特定方法
肥満細胞は、血清などの動物性製品を利用しない特定条件を使って、hESCまたはiPS細胞から分化しうる。特に、本発明者は、特定の成長因子が、特に特定の条件下で維持された多能性細胞の分化にとって重要であることを発見した。特定の実施形態では、多能性細胞は、造血前駆細胞への分化を促進するために、いくつかの特定培地に順番に曝露されうる。最初の特定培地(例えば、TeSR培地で)における本質的に未分化状態の多能性細胞の培養と維持の後、細胞はBMP4、VEGF、IL3、Flt3リガンド、またはGMCSFを含まない、または本質的に含まない第2の特定培地に曝露されうる。細胞は、それから、造血分化を促進するために、BMP4、VEGF、IL3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第3の特定培地に曝露されうる;あるいはまた、細胞はBMP4とVEGFを含む第3の特定培地に、続いてIL3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第4の培地へ曝露されうる。本発明者は、BMP4とVEGFを含む第3の特定培地への連続した曝露、続いてのIL3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第4の培地への曝露は、驚くべきことに、造血前駆細胞の生成の相当な増加をもたらすことができることを発見した。本発明者は、また、低酸素条件(例えば、約20%未満の気圧、または約5%Oへの曝露)、細胞の再凝集(例えば、トリプシンまたはTrypLE(商標)を用いて)、および胚様体形成における特定範囲の細胞を用いる凝集塊の形成(例えば、凝集塊につき約200〜1000個の細胞)は、造血前駆細胞への分化をさらに促進することができる。
【0083】
特定の実施形態において、以下の方法は、特定条件下でhESCまたはiPS細胞を肥満細胞に分化させるのに用いることが可能である。最初に、Matrigel(商標)コートのプレート上での無フィーダー増殖に適応した未分化hESCとiPSCは、トリプシンまたはTRYPLE処理(例えば、37℃で約5〜15分または約6分間のTrypLE(商標)Express)を用いて、コンフルエンスで採取されうる。トリプシンまたはTrypLE(商標)による処理は、大幅に細胞を個別化するために、または単細胞もしくは約2〜10個の細胞を含む集団に細胞を分離するように作用しうる。TrypLEは、それから、20%のBIT9500(Stem Cell Technologies)、1%のNEAA、1mMのL−グルタミン、および0.1mMのメルカプトエタノール、0.75%のBSA、50ug/mlアスコルビン酸が添加されたIMDMを含むEB基礎培地を使用して中和されうる。EB形成を容易にするために、細胞は、トリプシンまたはTRYPLE処置後に、Rho結合キナーゼ(ROCK)阻害剤(例えば、約1μMのH1152)とトリプシン阻害剤(例えば、約0.25mg/mlの大豆トリプシン阻害剤)が添加されたEB基礎培地に再懸濁されうる。細胞生存率は、測定することが可能であり、得られた細胞懸濁液は、約1〜3日間(例えば、約24時間)、低接着性プレートに播種して培養されうる。
【0084】
上で使用されうるROCK阻害剤は、HA−100(1−(5−イソキノリンスルホニル)ピペラジン塩酸塩)、Y−27632(N−(4−ピリジル)−N’−(2,4,6−トリクロロフェニル)尿素 、3−(4−ピリジル)−1H−インドール)、およびH−1152((S)−(+)−2−メチル−1−[(4−メチル−5−イソキノリニル)スルホニル]ホモピペラジン)、H−7、イソH−7、H−8、H−9、H−89、HA−1004、およびHA−1077を含む。ROCK阻害剤は、例えば、約1〜15μM、5〜15μM、1〜30μM、5〜30μM、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30μM、またはその中で派生する任意の範囲の濃度でES細胞成長培地中に存在してもよい。特定の実施形態では、HA−100またはY−27632は、ES細胞成長培地中に約10〜20μMで存在する。
【0085】
細胞EBは、それから各ウェルから回収し、そして、細胞懸濁液は、遠心分離されうる。細胞は、EB分化の最初の約3〜5日間(例えば、約4日間)、25ng/mlの骨形成因子(BMP−4)25ng/mlと25ng/mlの血管内皮増殖因子(VEGF)が添加されたEB基礎培地であるEB−分化培地に再懸濁されうる。細胞は、1日おきに、半分が新しい培地で培養されうる。BMP−4とVEGFの様々な量が、培地に含まれうる(例えば、約10〜50ng/mlのBMP4;約10〜50ng/mlのVEGF)。
【0086】
EB培養物は、5日目に採取され、そしてTrypLE(商標)またはトリプシンを使って、部分的な分離に付すことが可能である。細胞は、それから、洗浄してTrypLE(商標)またはトリプシンを除き、25ng/mlのFlt−3リガンド(Flt−3L)、10ng/mlのインターロイキン−3(IL−3)、10ng/mlの顆粒球マクロファージ、およびコロニー刺激因子(GM−CSF)が添加されたEB基礎培地である第2のEB−分化培地に、次の約5〜10日間(例えば、約7日間)、切り替えてよい。EB培養は、半分が別の日に培養され、そして、細胞は次の約5〜10日間(例えば、約7日間)、培養された。細胞は、EB分化の約12〜13日後に、採取されうる;凝集塊は、TrypLE(商標)またはトリプシンを使って消化して個別化された細胞を生成することが可能である。単細胞懸濁液は、CD43、CD45、CD34、CD31および/またはCD31の存在に対して染色され、そして、発現レベルは、フローサイトメトリーで定量化されうる。IL3、Flt3リガンド、およびGMCSFの様々な量が、培地(例えば、5〜25ng/mlのIL3、約10〜50ng/mlのFlt3リガンド、および約5〜25ng/mlのGMCSF)に含まれてもよい。
【0087】
個別的細胞は、それから、MK3培地(例えば、約10〜21日間または約2週間)を含む新しい低接着性プレートに播種されて培養しうる。MK3培地は、約20%のBIT9500、約1%のL−グルタミン、約0.1mMのβメルカプトエタノール、Flt−3リガンド(Flt−3L)、幹細胞因子(SCF)、およびトロンボポチエン(TPO)の各々の約100ng/mlが添加されたIMDM培地を、インターロイキン−3(IL−3)とインターロイキン−6(IL−6)の各々の約10ng/mlと一緒に含む。細胞は、4日おきに、新しい培地で半分が培養されうる。細胞は、それから約10〜21日(例えば、約2週間)の終わりに回集され、そして、CD34、Cd117およびCD45の発現は、フローサイトメトリーによって定量化することが可能である。
【0088】
肥満細胞は、それから以下の方法によって富化されうる。MK3培地での2週間の拡大培養の後で、細胞は回収されて、100ng/mlの幹細胞因子(SCF)とインターロイキン−3(IL−6)が添加されたStemPro(商標)培地を含む肥満細胞培地に置かれうる。細胞は、肥満細胞培地(例えば、さらに1〜5週間、または、約2〜3週から)で拡大培養されうる。このプロセスの間、細胞は、半分が新しい培地(例えば、4日おきに)で培養されうる。CD34、Cd117およびCD45陽性のパーセンテージは、フローサイトメトリーによって定量化することが可能である。下記の実施例で示されるように、これらの方法は、トリパーゼのために染色するCD117(+)CD45(+)CD34(−)肥満細胞を生成するために使用されうる。
【0089】
VI.肥満細胞の分離
多能性細胞からの肥満細胞の調製後、肥満細胞を精製することは、望ましい場合がある。FACSなどのフローサイト メトリー、または磁気細胞分離法を用いる細胞の分離方法が、造血細胞を異種細胞集団から分離するのに用いることが可能である。
【0090】
A.磁気細胞分離法(MACS)
肥満細胞は、磁気細胞分離法(MACS)を用いて分化hESCから分離されうる。MACSは、一般的に、カラム上に細胞を分離するために磁気ビーズと組み合わせて、抗−CD117抗体などの抗体を利用する。おそらくFACSと関係している細胞のレーザー照射のために、MACSは、特定の実施形態では、細胞に対してより穏やかである可能性があり、FACSと比較して細胞生存率と完全性に有利に影響を及ぼす可能性がある。
【0091】
いろいろなMACS製品が市販されており、MACS MicroBeads(商標)カラムまたはAutoMACS(商標)(Miltenyi Biotec,CA,USA)が含まれ、そして、それらは、メーカーの取り扱い説明書に従って使用されうる。PBS/0.5%BSA(EDTAの有無にかかわらず)は、細胞分離のための緩衝剤として使用されうる。いくつかの実験では、Dead Cell Removal Kit(Miltenyi Biotec)が、CD117+/CD45+細胞の分離の前に死んだ細胞を除くのに使用されてもよい。繰り返されたMACSカラムは、必要に応じて使われてもよい。
【0092】
B.FACS
蛍光活性化細胞選別(FACS)は、また、肥満細胞を分離するのに用いることが可能である。FACSは、細胞によって示される程度または蛍光(例えば、結合抗−CD117または蛍光タグを含む抗−CD45抗体による)を利用して、細胞を分離する。このように、FACSは、CD117+/CD45+肥満細胞を異種の細胞集団から分離するのに使用されうる。
【0093】
以下のプロトコルは、FACSを実行して造血細胞を定量化するために用いることが可能である。細胞は、1%のFBSまたは0.5%のBSAを含むPBS中で調製され、モノクローナル抗体(mAbs)の組み合わせにより4℃で15〜30分間、標識されうる。特異抗体に対する1:50の希釈、およびIgGコントロールのための1:200の希釈が、使用されうる。サンプルは、FACSCalisbur(Becton Dickson)によって分析することが可能である。
【0094】
VII.肥満細胞の同定
いろいろな方法が、細胞表面マーカーの識別および/または肥満細胞の生物学的機能の評価を含む肥満細胞の識別のために使うことが可能である。例えば、肥満細胞は、特定の細胞表面マーカーの発現によって特徴づけられる。本明細書で使用される「肥満細胞」という用語は、CD117(また、「c−kit」とも称される)、FcεRI、トリプターゼ、およびCD45発現に対して陽性の試験結果を示し、その一方で、CD34発現に対しては陰性の試験結果を示す細胞を指す。当業者に理解されるように、これらの細胞表面マーカーは、免疫学的試験(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、その他)を含む方法を使用して評価されることができる。いろいろな実施形態では、本発明は、CD45+、CD117+、トリプターゼ+、およびCD34(−)である肥満細胞に多能性細胞を分化させるための方法を提供する。FcεRIは、肥満細胞の成熟に従って、肥満細胞上で発現されたり、あるいは発現されない場合がある。より詳しくは、FcεRIは、より成熟した肥満細胞で一般的に発現される。特定の実施形態では、肥満細胞は、胚肥満細胞、未熟な肥満細胞、成熟した肥満細胞、および/または肥満細胞様細胞(すなわち、CD45+、CD117+、トリプターゼ+、CD34(−)であるが、肥満細胞の1つ以上の典型的特徴が欠如している細胞)に分化されうる。多能性細胞は、トリプターゼ陽性でキマーゼ陰性の肥満細胞またはトリプターゼ陽性でキマーゼ陽性の肥満細胞に、本明細書に開示された方法によって分化させることが可能である。
【0095】
成熟した肥満細胞は、高親和性受容体FcεRIの細胞表面発現によって識別されうる。FcεRIは、免疫グロブリンE(IgE)のFc領域を識別して、結合する。IgE分子に対するFcεRIの非常に高い親和性は、一般的にIgEでコートされている肥満細胞をもたらす。IgEは、B細胞(免疫系の抗体産生細胞)によって産生される。
【0096】
肥満細胞は、生物学的機能の評価によって、さらに特徴づけられることができる。例えば、肥満細胞は、ヒスタミン放出、顆粒のための異調染色(例えば、トルイジンブルーを用いて)、キマーゼおよび/またはカテプシンGの検出を評価することによって識別し、特徴づけることが可能である。分泌顆粒でのヘパリン、ヒスタミン、トリプターゼ、キマーゼ、およびカテプシンGの発現は、評価することが可能であり、そして、それは肥満細胞の同一性を示しうる。肥満細胞は、また、IgE−抗−IgE、化合物48/80、サブスタンスP、および/またはアナフィラトキシンC3aによる刺激に応じて敏感にヒスタミンを放出するそれらの能力によっても特徴づけられる。
【0097】
VIII.バイオリアクターとロボット自動化
hESCまたはiPSCなどの前駆細胞からの肥満細胞の生産のための1つ以上の工程は、自動化されてもよい。ロボットまたは他の自動化を用いるプロセスを自動化することは、細胞の生産、培養、および分化のためのより効率的で経済的な方法を可能にすることができる。例えば、ロボット自動化は、ヒト胚性幹細胞の培養、継代、培地の添加、分化培地の添加、分化培地での培養、およびと細胞タイプの分離(例えば、磁気分離またはFACSを用いて)の1つ以上と共に利用されてもよい。
【0098】
本発明に従って、バイオリアクターは、また、細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞、CD34+細胞、造血細胞、その他)を培養、維持、および/または分化させるために、本発明と共に使用されうる。バイオリアクターは、増加した細胞量を生産するために、プロセスの「拡大」を可能とする利点を提供する。様々なバイオリアクターは、回分培養バイオリアクター、流加培養バイオリアクター、連続培養バイオリアクター(例えば、連続攪拌槽型反応器モデル)、および/またはケモスタットを含み、本発明で使用されうる。
【0099】
特定の実施形態では、Tecan Cellerity(商標)システムが、本発明で使われてもよい。hESCは、造血前駆細胞に分化を誘導するために、平らなプレートを使用してロボット上で培養されうる。細胞の分離が一旦起こると、スピナーフラスコまたはバイオリアクターは、多数の細胞を生成させるのに用いることが可能である。
【0100】
本発明での使用が具体的に想起されるロボット自動化は、例えば、Tecan(CA、USA)から得ることが可能である。自働装置は、サンプル間での繰越しを最小にするためのキャップ・ピアシング・プローブとディスポーザブルチップなどの液体処理ツールを含んでもよい。いろいろな実施形態では、自働装置は、細胞(例えば、hESCの維持または成長、造血前駆細胞へのhESCの分化、および/またはシングルポジティブもしくはダブルポジティブな肥満細胞、その他への造血細胞の分化の過程)を培養するために、1つ以上のバイオリアクターと共に利用されてもよい。
【実施例】
【0101】
IX.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例で開示された技術は、本発明の実施に際してうまく機能する、本発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましいモードを構成すると考えることができることを当業者は理解すべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態でなされうること、そして、同じまたは類似の結果をさらに得ることができることを理解すべきである。
【0102】
実施例1
ヒト胚性幹細胞由来の肥満細胞
ヒト胚性幹細胞に由来する肥満細胞は、ヒト胚性幹細胞から以前に特徴づけられなかった細胞タイプである。我々の肥満細胞には、比較的かなりの数まで増殖される可能性と精製される能力がある。これと対照的に、人体からの肥満細胞は、多くは見つけられなくて、それらは分離が難しい組織に存在する。
【0103】
肥満細胞の生成は、以下の3つの分化プロトコルを使って実行された:
H1細胞はMEF上に決まって維持されて、そして、1×10個の細胞/ウェル(1ウェルは、9.6cmである)で、αMEM+20%特定FBS+100ng/mlのTPO中、ほとんどコンフルエントなOP9間質細胞に継代された。細胞は、2日目と4日目に、新しい培地で培養された。7日目に、細胞はコラゲナーゼIVを使って、新しいOP9細胞へ1:3に分割された。細胞は、8日目と10日目に、新しい培地で培養された。11日目に、細胞は、コラゲナーゼIV、続いてトリプシン/EDTAを用いて、新しいOP9細胞へ1:1に分割されて単細胞を得て、そして、培地がαMEM+10%特定FBS+100ng/mlのTPOに変えられた。細胞は、14〜16日目にかけて毎日、この培地をさらに1ml添加して培養された。
【0104】
16日目に、懸濁液中のすべての細胞を、回収し、遠心分離し、MK#3分化培地(80%のStemline II、20%のBIT9500、L−glut、β−ME、Penstrep、FLT−3 100ng/ml、SCF 100ng/ml、TPO 100ng/ml、IL3 10ng/ml、およびIL6 10ng/ml)に約2週間、置いた。細胞は、4日おきに少なくとも新しい培地に部分的に変更して、培養された。2週の終わりに、細胞はCD34、CD117、およびCD45の発現についてアッセイされた。細胞の約25%は、CD45とCD117の両方を発現して、CD34を欠いたが、これは肥満細胞と一致したプロファイルである。
【0105】
細胞は、それから、肥満細胞分化培地(90%のRPMI、10%特定FBS、1%のL−glut+BME 1%の非必須アミノ酸、1%のPenstrep、およびSCFとIL6の各100ng/ml)に添加された。細胞は、上記のマーカーに対して毎週アッセイされ、そして、もう12日後に、細胞はCD117とCD45に対して93%陽性であり、その一方で、CD34に対しては陰性であった。この時に、細胞の形態をチェックするためにWright染色がされ、そして、その形態は、肥満細胞(好塩基性染色/黒紫色顆粒)と一致していた。トリプターゼは、肥満細胞顆粒に存在して、肥満細胞に特有であるので、トリプターゼを検出する染色もこの時にされた。明るい染色が観察されて、そして、細胞染色陽性のパーセンテージは、CD117/CD45+集団(約90%)と一致した。細胞は数週間後にFcεR1の発現について試験され、そして、発現はIL4の培地への添加によって刺激されることができ、IgEの培地への添加によってさらに刺激されることができた。結果は、集団の残りの10%の細胞がマクロファージであることを示す。肥満細胞は、化学的化合物48/80とサブスタンスPに対する応答と同様に、免疫学的(IgE−NP/BSA−NP)刺激に応じて顆粒(β−ヘキソサミニダーゼで測定されるように)を放出することができた。本発明者は、細胞が用量依存的に応答すると想定し、そして、研究が用量応答関係を評価するために進行中である。
【0106】
得られた細胞のさらなる特性化は、ヒスタミン放出、顆粒のための異調染色(トルイジンブルー)、キマーゼおよびカテプシンGの存在、および高親和性受容体FcεR1の発現を含む細胞の特徴を評価することによって実行されうる。
【0107】
実施例2
hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞
実施例1で記述される方法によって生成されたhESC由来肥満細胞の特質は、Jensenら、2008に開示された方法によって生成されたCD34+由来肥満細胞と比較された。これらのテスト結果は、hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞間の特徴における多少の変動(例えば、特定のマーカーに対する染色または発現レベルにおける変動)が観察されたが、hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞の両方は、機能的な肥満細胞であることが証明されたことを示す。
【0108】
hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞の両方は、顆粒のマーカーであるトルイジンブルーに対して染色された。さらに、hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞の両方は、c−kit陽性であることが観察され、hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞の両方は、FcεR1を発現するのが観察された。hES細胞由来肥満細胞は、平均して、CD34+由来肥満細胞より低いレベルでFcεR1を発現するのが観察されたが、しかし、FcεR1発現における多少の変動がバッチ間で観察された。
【0109】
脱顆粒もまた評価された。細胞は、サイトカインの無いSTEMPRO培地を使用して一晩中飢えさせた。次に、細胞をビオチン化ヒトIgE(100ng/ml)と一晩中インキュベートした。細胞は、それから、SCFの存在下および非存在下でストレプトアビジンを用いて30分間、脱顆粒のために誘発された。脱顆粒は、それから、β−ヘキソサミニダーゼの放出により測定された。図1A−Cで示すように、hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞の両方は、用量依存的な方法で脱顆粒するが、hES細胞由来肥満細胞は、全体的な低いレベルで脱顆粒するように見えた。
【0110】
サイトカイン産生が評価された。細胞をビオチン化ヒトIgE(100ng/ml)と一晩中インキュベートした。細胞は、それから、SCFの存在下でストレプトアビジンを用いて6時間、サイトカイン生成のために誘発された。サイトカイン放出は、ELISAで測定された。図2A−Bで示すように、hESC由来肥満細胞とCD34+由来肥満細胞の両方は、IL−8とGMCSFの生成を示したが、しかし、いくぶん増加したCM−CSFと減少したIL−8の生産が、CD34+由来肥満細胞と比較して、hESC由来肥満細胞で観察された。
【0111】
カルシウム流入が、さらに評価された。細胞は、サイトカインの無いSTEMPRO培地を使用して一晩中飢えさせ、細胞はビオチン化ヒトIgE(100ng/ml)と一晩中インキュベートされた。細胞は、Fura2で負荷され、細胞は賦活化されて蛍光が測定された。図3A−Bで示すように、hESC由来肥満細胞は、CD−34+由来肥満細胞と比較して、減少したカルシウム流入を示した。
【0112】
LATリン酸化は、また、肥満細胞でも測定された。細胞は、サイトカインを含まないSTEMPRO培地で一晩中飢えさせた。細胞は、ビオチン化ヒトIgE(100ng/ml)と一晩中インキュベートされて、そして細胞は、ストレプトアビジン(100ng/ml)および/またはSCF(30ng/ml)で2分間、誘発された。タンパク質リン酸化は、いくつかの標的でテストされ、それは、p−Kit、p−AKT、p−Btk、pERK1/2、pp38、pLAT、pNTAI(LAT2)、および総Sykが測定されたのを含み、その結果は図4に示される。LATリン酸化は、肥満細胞では観察されなかった。この結果は、H1細胞を使うことによる可能性がある。最初のキマーゼ染色実験は、確定的でなかったが、さらなる実験が進行中である。
【0113】
実施例3
hESC由来肥満細胞の生成のための特定方法
hESC由来肥満細胞は、EB形成と以降の分化のための以下のプロトコルを使って生産された:
工程1:Matrigelでコートしたプレート上で無フィーダー増殖に適した未分化hESCとiPSCは、37℃で6分間のTrypLE処理を使って、コンフルエンスで回収された。ウェル中のTryple Eは、20%のBIT9500(Stem Cell Technologies)、1%のNEAA、1mMのL−グルタミン、および0.1mMのメルカプトエタノール(すべて、Invitrogen,Carlsbad,CAから)、0.75%のBSA、50ug/mlアスコルビン酸が添加されたIMDMを含むEB基礎培地を使用して中和された。EB形成を容易にするために、細胞はトリプシン処理後1μMのRock阻害剤(H1152)、大豆トリプシン阻害剤(0.25mg/ml)が添加されたEB基礎培地に再懸濁された。細胞生存率が測定され、そして、得られた細胞懸濁液は、低い接着性プレート上に播種し、24時間培養された。
【0114】
工程2:その翌日に、細胞EBは、各ウェルから回収し、細胞懸濁液を遠心分離した。細胞は、EB分化の最初の4日間、25ng/mlの骨形成因子(BMP−4)25ng/mlと血管内皮増殖因子(VEGF)25ng/mlが添加されたEB基礎培地であるEB−分化培地に再懸濁された。細胞は、1日おきに新しい培地で半分が培養された。
【0115】
工程3:EB培養物は、5日目に回収され、TrypLEを使って部分的な解離に付した。細胞は、洗浄してTrypLEを除き、25ng/mlのFlt−3リガンド(Flt−3L)、10ng/mlのインターロイキン−3(IL−3)、10ng/mlの顆粒球マクロファージ、コロニー刺激因子(GM−CSF)が添加されたEB基礎培地である第2のEB−分化培地に、次の7日間、切り替えた。EB培養は、他の日に半分が培養され、細胞は、次の7日間、培養された。細胞は、EB分化の12〜13日後に回収された;凝集塊は、個別化された細胞を生成するためにTrypLEを使って消化された。単細胞懸濁液は、CD43、CD45、CD34、CD31の存在に対して染色され、そして、発現レベルが、フローサイトメトリーで定量化された。
【0116】
工程4:個別的細胞は、次の2週間、MK3培地を含む新規な低接着性プレートに播種して培養された。MK#3培地は、20%のBIT9500、1%のL−グルタミン、0.1mMのβメルカプトエタノール、100ng/mlのFlt−3リガンド(Flt−3L)、幹細胞因子(SCF);およびトロンボポチエン(TPO)が添加されたIMDM培地を、10ng/mlのインターロイキン−3(IL−3)とインターロイキン−3(IL−6)の10ng/mlと共に含む。細胞は、4日おきに、新しい培地で半分が培養された。細胞は2週の終わりに回収され、そして、CD34、Cd117およびCD45陽性の存在は、フローサイトメトリーによって定量化された。
【0117】
工程5:肥満細胞富化:MK3培地での2週間の拡大培養の後で、細胞は回収され、100ng/mlの幹細胞因子(SCF)とインターロイキン−3(IL−6)が添加されたStemPro培地を含む肥満細胞培地に入れられた。細胞は、さらに2〜3週間、肥満細胞培地で拡大培養された。全プロセスの間、細胞は4日おきに新しい培地で半分が培養された。CD34、Cd117およびCD45陽性のパーセンテージは、フローサイトメトリーによって定量化された。
【0118】
サイトスピン(Cytopspins):トリプターゼ陽性細胞の存在を検出するために、細胞は固定されて、染色された。肥満細胞培地でのH1細胞のフローサイトメトリーの結果、H1細胞は、肥満細胞培地でのCD117(+)/CD45(+)とCD34(−)細胞の存在のために染色された。肥満細胞培地のH1細胞のトリプターゼ染色もまた観察された。
【0119】
実施例4
胚様体(EB)由来肥満細胞
H1 p43細胞は、コンフルエンスになるまで増殖させ、37℃で20分間、2mg/mlでのディスパーゼ溶液を使って増殖表面から除去された。細胞は、ディスパーゼを取り除くために1回、洗浄し、それから、85%のIMDM、15%のFBS、1%のNEAA、およびβ−メルカプトエタノールからなる「EB形成培地」の中に再懸濁された。細胞懸濁液をCostarの低接着性プレートに加え、そこでは、何日も経て胚様体を形成し、1日おきに培地の半分を変えて培養された。12日目に、EBは、培養物から除かれて、コラゲナーゼIVで解離され、そして、トリプシン/EDTA処理された。トリプシンは、血清含有培地で中和され、細胞懸濁液は、さらに任意の残存塊を破壊するために22Gの針を通過させた。この点で、細胞は100μフィルター、そして、30μフィルターを通過させた。
【0120】
細胞は、CD34リガンドを使って、細胞分離の調製に際してMACS緩衝液に再懸濁された。細胞は、磁気ビーズで染色されて、2つの連続した磁気カラムを通過させてCD34+細胞を精製した。細胞の約10%は、CD34を発現した。CD34を発現しない細胞は、捨てられて、そして、CD34を発現する細胞は、巨核球分化培地(MK#3)に入れられ、そして、それは80%のStemline II(Sigma)、20%のBIT9500(StemCell Technologies)、1%のPenstrep、β−MEを含む1%のL−グルタミン、SCF、TPO、およびFL3の各100ng/ml、ならびにIL3とIL6の各10ng/mlからなる。ヘパリンも、また含まれる。細胞は、この培地で12日間、成長させた。
【0121】
12日目に、細胞はMK#3から除去されて、両方とも肥満細胞培地(90%のRPMI、10%のFBS、SCFとIL6の各100ng/ml、およびNEAA、PenstrepとL−glut+β−MEの各1%)とStemPro肥満細胞培地(サプリメント(Gibco)、SCFとIL6の各100ng/ml、およびPenstrepとL−glut+β−MEの各1%を含むStemPro培地)へ移した。StemProは、我々の肥満細胞が無血清条件を使って分化され、そして拡大培養されることができたかどうかを確認するのに用いられた。細胞は2週以上(まだ培養が継続している)、これらの培地で増殖し、CD34、CD117、およびCD45の発現が定期的に試験され、そしてトリプターゼの発現についても試験された。
【0122】
細胞は、トリプターゼ陽性であり、CD34陰性であり、そしてCD45とCD117の両方に陽性であった。これらの結果は、トリプターゼ染色とフローサイトメトリーにより得た。
【0123】
本明細書に開示され、請求される組成物と方法の全ては、本開示を考慮して不当な実験をすることなく、作り出され、実行することができる。本発明の組成物と方法は、好ましい実施形態に関して記述されているけれども、バリエーションが、本発明の思想、精神および範囲から逸脱することなく、組成物と方法および本明細書に記述された方法の工程または工程のシーケンスに適用されうることは当業者に明らかとなろう。より詳しくは、化学的および生理的にともに関連がある特定の薬剤は、同じまたは類似した結果を達成しながら、本明細書に記述された薬剤と置き換えることが可能であることは明白である。当業者に明白なすべてのそのような置換および修正は、添付された特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神、範囲、および思想の範囲内にあるとみなされる。
【0124】
引用文献
以下の引用文献は、それらが本明細書に記述されたものを補充する典型的な手続き上のまたはその他の詳細を提供する程度まで、引用により具体的に本明細書に取り込まれる。
【0125】
【化1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで多能性細胞を培養することによって肥満細胞を調製する方法であって、
a)造血前駆細胞または巨核球への細胞の分化を促進する条件下で多能性細胞を培養し、造血前駆体または巨核球を含む第1細胞集団を提供する工程;および
b)肥満細胞への分化を促進する条件下で前記第1細胞集団を培養して、肥満細胞を含む第2細胞集団を提供する工程;
を含み、工程(a)の培養工程は、フィーダー層としてマウス胎仔の肝臓由来間質細胞との共培養を使用しない、方法。
【請求項2】
前記第2細胞集団が、トリプターゼ陽性の肥満細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多能性細胞が、ヒトiPS細胞またはヒト胚性幹細胞(hESC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多能性細胞が、H1細胞またはiPS細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多能性細胞が、MEF上に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多能性細胞が、TPOを含む培地で培養される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記多能性細胞が、マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞またはOP9細胞上でさらに培養される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(a)が、特定条件下で前記多能性細胞を培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(a)が以下の連続した工程:
1)少なくとも1つの成長因子を含む第1特定培地で複数の前記多能性細胞を培養または維持する工程;
2)BMP4、VEGF、IL3、Flt3リガンド、およびGMCSFを本質的に含まない第2特定培地で前記細胞をインキュベートする工程;
3)複数の前記細胞を増殖させる、またはその分化を促進するのに十分な量のBMP4とVEGFを含む第3特定培地で前記細胞を培養する工程;および
4)複数の前記細胞を増殖させる、またはその分化を促進するのに十分な量のIL3、Flt3リガンド、およびGMCSFを含む第4特定培地で前記細胞を培養する工程;
を含み、複数の前記多能性細胞が、造血前駆体細胞に分化される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(2)の前に、少なくともいくつかの前記細胞が、少なくとも部分的に分離されるか、または実質的に個別化される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、酵素を使用して実質的に個別化される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素が、トリプシンまたはTRYPLEである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記個別化の後に、前記細胞をROCK阻害剤とトリプシン阻害剤に接触させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ROCK阻害剤が、HA−100、H−1152、およびY−27632からなるリストから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、約5〜20%酸素の気圧で前記細胞を培養する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(a)が、前記多能性細胞を胚様体(EB)に分化させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(a)が、FLT−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−3(IL−3)、およびインターロイキン−6(IL−6)の少なくとも1つを含む第1培地で前記多能性細胞を培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1培地が、幹細胞因子を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(a)が、FLT−3リガンド、幹細胞因子、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−3(IL−3)、およびインターロイキン−6(IL−6)のうちの少なくとも2つを含む第1培地で前記多能性細胞を培養する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記工程(a)が、FLT−3リガンド、幹細胞因子、TPO、IL−3、およびIL−6を含む培地で前記多能性細胞を培養する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
FL3、幹細胞因子、TPO、IL−3、およびIL−6が、外因的に添加されて、組み換え型である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1培地が、約10〜100ng/mlのFL3、約10〜100ng/mlの幹細胞因子、約10〜100ng/mlのTPO、約10〜100ng/mlのIL−3、および約10〜100ng/mlのIL−6を含み、これらは外因的に添加されて、組み換え型である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(a)の後、複数の前記多能性細胞が巨核球または肥満細胞のどちらかに分化されて、該肥満細胞はCD117とCD45に対して陽性であるが、CD34に対して陰性である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記工程(b)が、幹細胞因子を含む培地で前記細胞を培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記培地が、インターロイキン−6(IL−6)をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記培地が、約10〜100ng/mlの幹細胞因子と約10〜100ng/mlのIL−6を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記工程(a)および/または前記工程(b)の少なくとも1つの前記培養工程が、無血清培地を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、MACSまたはFACSを使用して、肥満細胞を精製する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記工程(a)が、造血細胞への前記多能性細胞の分化に好都合な条件下で細胞を培養する工程を含み、得られた該造血細胞が、肥満細胞に分化するのに好都合な条件下で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記工程(a)が、造血細胞への前記多能性細胞の分化に好都合な条件下で細胞を培養し、その後、巨核球への分化に好都合な条件下で該造血細胞を培養する工程を含み、得られた該細胞が、肥満細胞に分化するのに好都合な条件下で培養される、請求項1に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−519568(P2011−519568A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507710(P2011−507710)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/042701
【国際公開番号】WO2009/135206
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510003830)セルラー ダイナミクス インターナショナル, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】