説明

幼児用便器

【課題】排泄物を衛生的に受け止め、使い捨ての汚物処理シートを容易に装着できる幼児用便器を提供する。
【解決手段】幼児用便器11は、中央開口Sを有し、幼児の臀部を支持可能な便座部21、および便座部の内側縁から中央開口Sの外周に沿って垂下する内側壁部22を有する便座本体13と、底壁部14a、底壁部の外周から立ち上がり上縁が共通する仮想平面に略一致するよう形成されて便座本体の内側壁部22の内側に挿し込まれる周壁部14b、および周壁部の上縁よりも下方の周壁部外周面から外方へ突出する持ち手24を有し、中央開口Sを通過する幼児の排泄物を受け入れる中桶14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児の体格に適合する幼児用便器および幼児用便座本体に関する。
【背景技術】
【0002】
便座と、便座の中央開口に取り付けられる中桶(容器、ポットともいう)を備えた幼児用便器としては従来多数知られている。例えば、特表2008−523928号公報(特許文献1)に記載されるおまるは、おまる便座の底面のすぐ下に便受ポットを配置するものである。特開2000−314171号公報(特許文献2)に記載される簡易便器は、便器本体と、便器本体の内部へ水平方向に前進して挿し込まれる内容器とを備える。内容器の前方には飛散防止のため突出部が一体形成されている。そして幼児が突出部と向きあって便器本体にまたがって座り排便および排尿する。
【0003】
実公昭60−36160号公報(特許文献3)に記載される幼児用便器は、便座の内周部にポットを着脱自在に嵌め込んでいる。そしてポットには持ち手および持ち手の根元部から立ち上がる突出部が一体形成されている。特開平11−222904号公報(特許文献4)に記載される子供用便器は、内部に中空部を有する支え台と、中央に子供の排泄物が通過する大きい孔が形成されて支え台の上縁に取り付けられる便座(座台)と、便座(座台)の内周縁と係合して支え台に収納されて子供の排泄物を受け止める容器と、容器の前部に上からスライディング結合される小便遮断片を備える。
【0004】
実開昭62−145598号公報(特許文献5)に記載される乳幼児用おまるは、前方にアヒルの頭部に模して形成されたハンドルを有する便座体と、便座体に落とし込み方式で着脱自在に取り付けられる中桶とを備える。特開2010−264109号公報(特許文献6)に記載されるポータブルトイレは、ポータブルトイレ本体と、ポータブルトイレ本体の中央凹部に取り付けられるポータブルトイレ容器と、ポータブルトイレ容器の中に取り付けられる使い捨ての排便シートと、ポータブルトイレ本体の上縁に載置されて、排便シートの周縁部を挟み込む便座とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−523928号公報
【特許文献2】特開2000−314171号公報
【特許文献3】実公昭60−36160号公報
【特許文献4】特開平11−222904号公報
【特許文献5】実開昭62−145598号公報
【特許文献6】特開2010−264109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のような幼児用便器にあっては、以下に説明するような問題を生ずる。つまり、特許文献1のおまるは、便座の開口よりも大きな便受ポットが便座の下に単に置かれているにすぎず便座と嵌合しないため、便座の開口が排泄物で汚れてしまい、衛生面で改善の余地がある。特許文献2の簡易便器は、内容器に形成された凹部が取っ手として機能するところ、この取っ手は内容器を手前にスライドさせて便器本体から外すためのものであって、この取っ手を掴んで内容器を運搬することはできない。また内容器が和式便器の如き形状で横置きにされ、内容器の前部が便座よりも前方に突出して大きく広がることから、容器内部のうち排泄物によって汚れる面積が大きすぎて洗浄が面倒である。さらに内容器の前部に突出部が一体形成されているため、内容器の内周面に使い捨ての汚物シートを好適に被せることができず、排泄物がこびりついた内容器の洗浄が面倒である。
【0007】
特許文献3の幼児用便器は、幼児の股がポットの前端部に当たってしまう。また便座の上方からポットを挿し込み、ポットの上縁を便座の内側縁に係合させるため、ポットの上縁が便座の内側縁よりも外側に大きく広がる形状にされ、ポットの上縁が便座の上面で段差を形成してしまう。したがって、幼児にとって座り心地が悪い。さらにポットの前部に突出部が一体形成されているため、ポットの内周面に使い捨ての汚物シートを被せることができず、排泄物がこびりついたポットの洗浄が面倒である。
【0008】
特許文献4の子供用便器は、子供の排泄物を受け止める容器に持ち手が形成されていないため、便座(座台)および支え台から容器を取り出す作業が不便である。また便座の上方から容器を挿し込むため、容器の上縁が便座の上面で段差を形成してしまう。したがって、幼児にとって座り心地が悪い。
【0009】
特許文献5の乳幼児用おまるは、便座の上方から中桶を落とし込む方式であるため中桶に持ち手がなく、便座体から中桶を取り出す作業が不便である。特許文献6のポータブルトイレは、ポータブルトイレ容器に持ち手がないため、ポータブルトイレ本体からポータブルトイレ容器を取り出す作業が不便である。このように従来の幼児用便器は、いくつかの点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は、上述の実情に鑑み、幼児の排泄物を衛生的に受け止め、便座が汚れ難く、さらに便座の座り心地が良く、中桶の汚れる面積を小さくして中桶を効率的に洗浄することができ、しかも袋状の使い捨てシートを中桶の内側面に容易に装着することが可能で、便座から中桶(容器、ポット)を容易に取り出して運搬することができる、幼児用便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため本発明による幼児用便器は、中央に開口を有し幼児の臀部を支持可能な便座部、および便座部の内側縁から中央開口の外周に沿って垂下する内側壁部を有する便座本体と、底壁部、底壁部の外周から立ち上がり上縁が共通する仮想平面に略一致するよう形成されて便座本体の内側壁部の内側に挿し込まれる周壁部、および周壁部の上縁よりも下方の周壁部外周面から外方へ突出する持ち手を有し、中央開口を通過する幼児の排泄物を受け入れる中桶とを備える。
【0012】
かかる本発明によれば、上縁が共通する仮想平面に略一致するよう形成されて便座本体の内側壁部の内側に挿し込まれる周壁部を有する中桶を備えることから、便座本体の内側壁部が排泄物で汚れることがなく、便座本体の中央開口を通過して落下する幼児の排泄物を衛生的に受け止めることができる。そして便座部に段差が生じず座り心地が良い。また中桶を便座本体よりも小さくすることができ、中桶内部のうち排泄物で汚れる面積が小さくなって中桶の洗浄が軽減される。さらに袋状の使い捨てシートの上縁を折り返し、この折り返し部を中桶の内側壁部の上縁に係止させ、中桶の内側面を使い捨てシートによって全て覆うことができる。しかも下方へ垂下する内側壁部の内側に、上方へ立ち上がる周壁部の上縁が挿し込まれることから、シートの折り返し部がめくれ上がることがない。また便座本体を持ち上げて持ち手を握れば中桶を容易に取り出し運搬することができる。
【0013】
便座本体は幼児用便器のみに用いられるものであってもよいが、好ましい実施形態として便座本体は大人用洋式便器の便座の上に載置可能である。かかる実施形態によれば便座本体が単独で大人用洋式便器の上に載置して使用することができ、幼児用便座本体として利用できる。
【0014】
1実施形態として中桶には脚部等の転倒防止用の部材が取り付けられ、便座本体は中桶に支持されるものであってもよい。好ましい実施形態として中桶を下方から支持する底壁部と、底壁部から立ち上がり中桶を包囲する内周壁部と、内周壁部の上縁近傍に設けられて便座本体を下方から支持する便座本体支持部とを有する便器本体をさらに備える。かかる実施形態によれば便器本体が便座本体を介して幼児を支持することができる。便器本体は少なくとも便座本体を支持するものであればよく、その形状は特に問わない。例えば便器本体は複数本のフレームで構成される枠体であってもよいし、あるいは丸みを帯びた形状であって中桶を内部に収納する外桶であってもよい。
【0015】
本発明は、金隠しや前立てと称し幼児の排尿時に小便の飛散を防止する壁部材を備えなくてもよいが、中桶の周壁部と便座本体の内側壁部との間に配置されて便座本体の便座部よりも上方へ突出する金隠しをさらに備えてもよい。かかる実施形態によれば、便座部よりも上方へ突出する金隠しによって幼児の小便が便座部の前方へ飛び散ることを防止することができる。
【0016】
金隠しは便座本体の内側壁部に固定されてもよく、あるいは中桶の周壁部の外周面に固定されてもよい。好ましくは、金隠しは、下側部分が中桶の周壁部の外周面に着脱可能に取り付けられ、上側部分が中桶の周壁部の上縁よりも上方へ突出する。かかる実施形態によれば、金隠しの下側部分周壁部の外周面に取り付けられることから、金隠しの下側部分が排泄物で汚れることがなく、金隠しの下側部分を衛生的に保つことができる。また金隠しを中桶から取り外し中桶のみあるいは金隠しのみを効率的に洗浄、掃除することができる。
【0017】
中桶は幼児の排泄物を直接受け入れることができるが、直接受け入れることがないよう中桶の内側面の少なくとも一部を使い捨てのシートで覆ってもよい。これにより中桶に排泄物がこびりつくことを防止できる。好ましくは、開口部と底部を有する袋体であり、開口部が折り返されて、中桶の周壁部の上縁と便座本体の内側壁部の間に挟み込まれ、中桶の周壁部の内周面および底壁部の上面を覆う汚物処理シートをさらに備える。かかる実施形態によれば、汚物処理シートが中桶の内側面の全部を覆い、しかも汚物処理シートが中桶と便座本体の間に挟み込まれることから、汚物処理シートがめくれないよう中桶に装着される。したがって、中桶に排泄物がこびりつくことを確実に防止できる。汚物処理シートはビニールなど遮水性の素材で形成されてもよいし、紙など水溶性の素材で形成されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明は、便座本体の中央開口を通過して落下する幼児の排泄物を衛生的に受け止めることができる。さらに便座部の上面に段差が生じず、座り心地がよい。また、便座本体を取り外して中桶を容易に取り出すことができる。また、中桶の汚れる面積を小さくして中桶を効率的に洗浄することができる。しかも袋状の使い捨てシートを中桶の内側面に容易に装着することができる。さらに、便座本体から中桶を分離して取り出し容易かつ衛生的に運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例になる幼児用便器を示す平面図である。
【図2】同実施例の幼児用便器を示す側面図である。
【図3】図1のIII−IIIで切断し矢印の方向からみた状態を示す縦断面図である。
【図4】同実施例の幼児用便器を示す背面図である。
【図5】同実施例の組立途中の状態を示す断面図である。
【図6】同実施例の組立途中の状態を示す断面図である。
【図7】同実施例の組立途中の状態を示す断面図である。
【図8】同実施例に汚物処理シートを装着した組立完成状態を示す断面図である。
【図9】汚物処理シートを示す斜視図である。
【図10】汚物処理シートの上縁を折り返した状態を示す斜視図である。
【図11】同実施例の便座本体、中桶、および金隠しを取り出して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施例になる幼児用便器を示す平面図であり、図2は同実施例の幼児用便器を示す側面図であり、図3は図1のIII−IIIで切断し矢印の方向からみた状態を示す縦断面図であり、図4は同実施例の幼児用便器を示す背面図である。おまるとも称される本実施例の幼児用便器11は、便器本体12と、便器本体12の上部に取り付けられる便座本体13と、便器本体12の内部に収納される中桶14と、中桶14の前部に取り付けられた金隠し15とを備える。これらの便器本体12、便座本体13、中桶14、および金隠し15は、ポリプロピレン・ABS樹脂等のプラスチィック製部材からなり、幼児用便器11は、これらの組み立て体である。
【0022】
便器本体12は、外周面が丸みを帯びた外桶であって外側および内側に壁を有する二重構造である。内側の壁は凹部を構成する。すなわち、便器本体12は、その中央部に底壁部25bと、底壁部25bから立ち上がる内周壁部25と、内周壁部25の上縁近傍に設けられる便座本体支持部である段差28を有する。内周壁部25は下向きに窪んだ凹部の側壁となり、底壁部25bはこの凹部の底壁となる。また凹部が中桶14を収納するため、内周壁部25は中桶14を包囲し、底壁部25bは平坦面であって中桶を下方から支持する。便器本体12の上縁から底壁部25bまでの凹部深さ、すなわち内周壁部25の高さ、は、中桶14の高さ寸法と略一致する。便器本体12の上部には、便座本体14が着脱可能に取り付けられる。これにより、便器本体12は便座本体13を下方から支持する。
【0023】
便座本体13は、便座本体13の中央に形成された中央開口Sを包囲する便座部21と、便座部21の内側縁から中央開口Sの外周に沿って垂下する内側壁部22と、便座部21の外側縁から垂下する外側壁部27とを有する。外側壁部27は便座本体13の全周に亘って形成され、便器本体12の外周に形成された段差部28と係合する。段差部28は略上方に立ち上がる便器本体12の外側の壁に形成され、外側壁部27の厚みと略同一寸法の幅を有する上向きの平面の段差であり、外側壁部27の下縁と接触する。これにより便座本体13は便器本体12にずれないよう支持される。
【0024】
便座部21は、図1に示すように平面視O字状であり中央開口Sの全周を包囲する。また図示しない変形例として便座部の前部が切り欠かれた平面視C字状であってもよい。便座部21は、幅方向両側部に水平面21hをそれぞれ有し、前部に水平面21fを有し、幅方向両側部から前部までが共通する水平面にされ、後部がこの水平面よりも隆起する。つまり便座部21の後部には、上方に隆起した隆起部26が形成される。隆起部26は中央開口Sの外周に沿うよう円弧状に湾曲して幅方向に延びる。そして幅方向両端部が便座部21の両側部の水平面21hと滑らかに連続する。隆起部26は中央開口Sから離れた位置で隆起形状にされ、隆起部26のうち中央開口Sと接する内側縁は水平に延び、便座部21の前部の水平面21fと、便座部21の両側部の水平面21hと同じ高さ位置に形成される。
【0025】
幼児が幼児用便器11にまたがって腰を下ろすと、便座部21の水平面21hは幼児の臀部および太腿部を支持する。また隆起部26は幼児の臀部を中央開口Sに位置決めする。
【0026】
内側壁部22は、便座部21と一体結合し、便座部内側縁の全周に亘って設けられる。内側壁部22は、中央開口Sの全周を包囲する両端開口の筒状体であり、外側壁部27よりもさらに下方へ垂下する形状にされる。図3に示すように、内側壁部22の内側には中桶14が挿し込まれる。
【0027】
便座本体13の前部には、便座部21の内側縁から立ち上がるドーム部23が設けられる。ドーム部23は後述する金隠し15を覆うものであって、便座部21および内側壁部22と一体結合する。便座本体13は単独で大人用洋式便器の便座の上に載置可能である。このときドーム部23は、金隠しとして機能する。
【0028】
中桶14は、底壁部14a、底壁部14aの外周から全周に亘って立ち上がる周壁部14bと、周壁部外周面から外方へ突出する持ち手24とを有する容器であり、便座本体13の中央開口Sを通過する幼児の排泄物を受け入れる。底壁部14aは平坦な板材であり、底壁部14aの外縁に周壁部14bの下縁が一体結合する。周壁部14bの上縁は、一部において上方へ突出し、他の一部において下方に切り欠いた形状ではなく、共通する仮想平面に略一致する。そして周壁部14bの上縁は、便座本体13の下方から、便座本体13の内側壁部22の内側になる中央開口Sに挿し込まれる。
【0029】
持ち手24は周壁部14bの上縁よりも下方の周壁部外周面から突出し、水平方向に延びる根元部24cと、根元部24cの先端で分岐して上方および下方へそれぞれ延びる上方分岐部24uと、下方分岐部24dとで構成される。上方分岐部24uおよび下方分岐部24dは、上下方向に共通して延びる1本の棒状部分になる。したがって持ち手24は大人の手で握り易い形状である。持ち手24は周壁部14bと一体結合する。
【0030】
周壁部14bの上縁は、高さが揃うよう水平に形成され、便座本体13の中央開口Sに挿し込まれた状態で、便座部21の内側縁に沿って延びる。なお図1および図3に示すように、周壁部14bの上縁と便座部21の内側縁との間には僅かな隙間が介在してもよい。
【0031】
便器本体12は、便座本体13を下方から支持するとともに、便器本体の凹部に中桶14を収容する。これにより便座本体13と中桶14の高さ関係が既定され、上方へ立ち上がる中桶14の周壁部14bの上縁が下方へ垂下する便座本体13の内側壁部22と重なる。そして周壁部14bの上縁の高さ位置と便座部21の高さ位置は略一致するが、厳密にいえば周壁部14bの上縁は便座部21の水平面21h,21fよりも僅かに下方に配置される。
【0032】
幼児が便座部21にまたがって座り排便および排尿すると、排泄物が落下して便座本体13の中央開口Sを通過し、中桶14の内部に受け入れられる。
【0033】
金隠し15は、中桶14の前方に着脱可能に取り付けられる部材であり、図1に示す平面視において略半円形状である。金隠し15の下半部は、金隠しの下側部分を含み、平面視において略半円弧の断面形状であって周壁部14bの外周面に沿うよう接触する。金隠し15の上半部は、金隠しの上側部分を含み、周壁部14bの上縁および便座部21から立ち上がり、図3に示すように上方に向かうにつれて中央開口Sの前方領域に被さるドーム形状に形成される。そして半球を2等分した形状に略等しい金隠し15の上半部は、図4に示すように略半円形状の開口を形成する。幼児が便座部21にまたがって座り金隠し15の上半部と向き合うと、幼児の腹部から鼠蹊部までが金隠し15に覆われる。
【0034】
便器本体12、便座本体13、中桶14、および金隠し15は図3に示すように組み立てられて幼児用便器11を構成する。そして中桶14の持ち手24の根元部24cは、便座本体13の内側壁22の下縁と当接する。
【0035】
次に幼児用便器11の組立手順につき説明する。
【0036】
幼児用便器11は図5〜図8の断面図に示す順で、組み立てられていく。まず中桶14の内側面には、図5に示すように上部開口と底部を有する袋体である汚物処理シート31が被せられる。汚物処理シート31は図9の斜視図に示す形状であり、図10の斜視図に示すように上部開口を外方に折り返され、この折り返し部分32が周壁部14bの上縁を覆うように、中桶14に装着される。汚物処理シート31は中桶14の周壁部14bの内周面および底壁部14aの上面を覆う。
【0037】
ここで付言すると、汚物処理シート31は水溶性の紙製である。したがって幼児用便器11の使用によって汚物処理シート31上に幼児の排泄物が放出されると、持ち手24を握り幼児用便器11から中桶14を取り出し、持ち手24を握ったまま中桶14を運搬し、排泄物を汚物処理シート31とともに大人用便器に投入するとよい。
【0038】
これにより幼児の排泄物を住宅に備え付けられた大人用水洗便器に流して簡単に処理することができ、しかも中桶14には幼児の排泄物がこびりつかず、中桶14の洗浄を軽減することができる。なお幼児用便器11は汚物処理シートを装着しなくても使用が可能である。
【0039】
汚物処理シート31は1回のみ使用される使い捨てであり、幼児用便器11の使用後に新しいきれいな汚物処理シート31を中桶14の内側面に再び被せるとよい。
【0040】
汚物処理シート31が防水性のフィルム素材で形成される場合、幼児の排泄物を大人用水洗便器に流して処理することができないが、中桶14を衛生的に保つことができるという利点がある。
【0041】
説明を幼児用便器11の組立手順に戻すと、次に中桶14には、図6に示すように金隠し15が取り付けられる。金隠し15の下縁は持ち手24の根元部24cと当接する。また金隠し15の内側面には、水平方向に延びる突条15dが形成されており、突条15dが中桶14の上縁と係合する。これにより金隠し15は中桶14の前部に取り付けられる。
【0042】
次に中桶14および金隠し15は、図7に示すように便器本体12の凹部に収納される。なお図には示さなかったが、中桶14の底壁部14aと凹部の底壁部25bに、互いに係合する位置決め手段を設けておいてもよい。これにより、中桶14は底壁部25b上で容易に位置決めされる。
【0043】
次に便器本体12には、図8に示すように便座本体13が取り付けられる。
【0044】
便器本体12の上方から便座本体13を被せると、中桶14の周壁部14bの上縁は、便座本体13の内側壁部22の下方から、内側壁部22の内側に上向きに挿し込まれる。これにより、汚物処理シート31の折り返し部32が内側壁部22に押し下げられ、折り返し部32のめくれ上がりが防止される。また、便座本体13の内側壁部22の下縁は持ち手24の根元部24cの上側と当接する。また金隠し15の下縁も持ち手24の根元部24cの上側と当接する。これにより中桶14は内側壁部22の内側に安定して保持される。そして内側壁部22の下縁および金隠し15の下縁は、中桶14の周壁部14bの上縁と、根元部24cと、上方分岐部24uによって囲まれた領域に位置する。便座本体13の取り付けによって、中桶14は便座本体13の中央開口Sに位置決めされる。また金隠し15は中桶14の前部に位置決めされる。
【0045】
また金隠し15の上半部は前方から便座本体13のドーム部23に覆われ、金隠し15の下半部は前方から便座本体13の内側壁部22に覆われる。ドーム部23および内側壁部22が金隠し15を中桶14に向けて付勢することにより、金隠し15と中桶14との密着度が良くなる。金隠し15と中桶14の間に介在する汚物処理シートの折り返し部32は、金隠し15と中桶14の隙間を埋めるよう機能する。
【0046】
便器本体12によって支持される便座本体13および中桶14は、中桶14の周壁部14bの上縁が便座部21から突出しないような高さ位置にされる。すなわち中桶14の上縁は、全周に亘り、便座部21の水平面21f,21hと略同じ高さ位置になる。そして、周壁部14bの外周面は隙間を介して内側壁部22の内周面に沿う。
【0047】
汚物処理シート31の折り返し部分32は中桶14の周壁部14bの上縁と便座本体13の内側壁部22の間に挟み込まれ、これにより汚物処理シート31は中桶14に固定される。また内側壁部22と中桶14の間に介在する汚物処理シートの折り返し部32は、内側壁部22と周壁部14bの隙間を埋めるよう機能する。
【0048】
これまでに説明した手順で幼児用便器11の組立が完成する。中桶14内の排泄物を処分するために幼児用便器11を分解する場合は、上述した手順と逆の手順を行うと良い。
【0049】
ところで本実施例の幼児用便器11によれば、中桶14が便座本体13の内側壁部22の内側に挿し込まれる周壁部14bを有することから、便座本体13の内側壁部22が排泄物で汚れることがなく、便座本体13の中央開口Sを通過して落下する幼児の排泄物を衛生的に受け止めることができる。また便座本体13の内側壁部22が排泄物で汚れないため便座本体13の洗浄が軽減される。また中桶14が便座本体13の内側壁部22と当接する持ち手24を有することから、中桶14は中央開口Sに安定して保持される。さらに持ち手24を握って便器本体12から中桶14を容易に取り出し、持ち手24を握ったまま中桶14を容易かつ衛生的に運搬することができる。しかも便座本体13は単独で大人用洋式便器の上に載置して使用することができ、幼児用便座本体として利用できる。
【0050】
また本実施例によれば、中桶14の周壁部14bの上縁は、共通する仮想平面に略一致するよう水平に形成されることから、汚物処理シート31の折り返し部32を容易に係止させることができる。
【0051】
そして、中桶14の周壁部14bが便座本体13の中央開口Sに挿し込まれた状態で、周壁部14bの上縁の高さ位置が便座部21の水平面21f,21hの高さ位置と略一致することから、便座本体13の内側壁部22が排泄物で汚れることがなく、便座本体13が衛生的に保たれる。理解を容易にするため、中桶14の周壁部14bと便座本体13の内側壁部22の位置関係を、図11の縦断面図に示す。
【0052】
厳密にいえば、周壁部14bの上縁の高さ位置は、便座部21の水平面21f,21hの高さ位置おりも僅かに低くされる、具体的には2〜9mm低い。これにより、便座部21には段差が生じず、幼児にとって座り心地が向上する。
【0053】
また本実施例によれば、幼児用便器11が中桶14の周壁部14bに取り付けられて便座本体13の便座部21よりも上方へ突出する金隠し15をさらに備えることから、幼児の小便が便座部21の前方へ飛び散ることを防止することができる。しかも金隠し15は、中桶14の周壁部14bの外周面に着脱可能に取り付けられることから、金隠し15の下半部を衛生的に保つことができる。また金隠し15を中桶14から取り外し中桶14のみあるいは金隠し15のみを効率的に洗浄、掃除することができる。
【0054】
また本実施例によれば、中桶14に汚物処理シート31を装着することにより、中桶14に排泄物がこびりつくことを防止することができる。そして、中桶14を効率良く洗浄、掃除することができる。
【0055】
本実施例では、汚物処理シート31に代えて、底壁部14aの上面のみを覆うシートを中桶14の内部に敷いてもよい。かかる変形例であっても、底壁部14aに排泄物がこびりつくことを防止することが可能となり、中桶14内の排泄物を住宅に備え付けられた大人用水洗便器に簡単に投入して処理することができる。あるいは、汚物処理シート31に代えて、底壁部14aの上面に幼児用おむつあるいはペットシートを広げてセットしてもよい。
【0056】
図示しない他の実施例として、中桶14の内部空間を前方と後方に区切る区切り壁を設けてもよい。これにより、中桶14の前方空間に小便を受け入れ、中桶14の後方空間に大便を受け入れることが可能となり、中桶内側面の汚れ面積を一層小さくすることができる。
【0057】
図示しないさらに他の実施例として、便器本体12の内部に使い捨てシートを貯蔵しておき、幼児用便器11を使用するたびに使い捨てシートを便器本体12から引き出して中桶14の内周面を覆うとよい。例えば便器本体12の底壁部25bおよび中桶14の底壁部14aに貫通孔をそれぞれ設け、底壁部25bの貫通孔と底壁部14aの貫通孔が共通する貫通孔を構成するようにする。底壁部25bよりも下方の便器本体12内に、直列的に連続して1つ1つが切り離し可能な袋状の使い捨てシートの綴りを、収容しておく。そして、上述した使い捨てシートをこれらの共通貫通孔から上方へ引っ張り出して広げ、中桶14の内周面に被せてもよい。これにより中桶14の内周面を新しい使い捨てシートで速やかに効率よく覆うことができる。
【0058】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。図示しない変形例として、便器本体は複数本のフレームで構成される枠体であってもよい。あるいは便器本体に代えて、中桶に転倒防止用の脚部を設け、中桶の周壁部の外周に突起を形成し、かかる突起が内側壁部の下縁と係合することによって、便座本体を支持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明になる幼児用便器は、育児器具において有利に利用される。
【符号の説明】
【0060】
11 幼児用便器、12 便器本体、13 便座本体、14 中桶、14a 底壁部、14b 周壁部、15 金隠し、21 便座部、21h,21f 水平面、22 内側壁部、23 ドーム部、24 持ち手、25 内周壁部、25b 底壁部、26 隆起部、27 外周壁、28 段差部、31 汚物処理シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口を有し幼児の臀部を支持可能な便座部、および前記便座部の内側縁から前記中央開口の外周に沿って垂下する内側壁部を有する便座本体と、
底壁部、前記底壁部の外周から立ち上がり上縁が共通する仮想平面に略一致するよう形成されて前記便座本体の内側壁部の内側に挿し込まれる周壁部、および前記周壁部の上縁よりも下方の周壁部外周面から外方へ突出する持ち手を有し、前記中央開口を通過する幼児の排泄物を受け入れる中桶とを備える、幼児用便器。
【請求項2】
前記便座本体は大人用洋式便器の便座の上に載置可能である、請求項1に記載の幼児用便器。
【請求項3】
前記中桶を下方から支持する底壁部と、前記底壁部から立ち上がり前記中桶を包囲する内周壁部と、前記内周壁部の上縁近傍に設けられて前記便座本体を下方から支持する便座本体支持部とを有する便器本体をさらに備える、請求項1または2に記載の幼児用便器。
【請求項4】
前記中桶の周壁部と便座本体の内側壁部との間に取り付けられて前記便座本体の便座部よりも上方へ突出する金隠しをさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の幼児用便器。
【請求項5】
前記金隠しは、下側部分が前記中桶の周壁部の外周面に着脱可能に取り付けられ、上側部分が前記中桶の周壁部の上縁よりも上方へ突出する、請求項4に記載の幼児用便器。
【請求項6】
上部開口と底部を有する袋体であり、前記開口部が折り返されて、前記中桶の周壁部の上縁と前記便座本体の内側壁部の間に挟み込まれ、前記上部開口よりも底部側が前記中桶の周壁部の内周面および底壁部の上面を覆う汚物処理シートをさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の幼児用便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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