説明

幼畜用代用乳組成物の製造方法

【課題】 植物性油脂を多く含有しているにも拘わらず、抗固結性に優れ、水又は温水への溶解性に優れ且つ乳化安定性に優れた顆粒状を呈する幼畜のための代用乳用粉末油脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 乳蛋白質原料を30〜60重量%、油脂原料中の植物性油脂の含有量が40〜70重量%である粉末油脂を10〜60重量%、及びその他糖類、ミネラル、ビタミン類及び乳化剤からなる代用乳用原料に水を噴霧しながら流動層造粒することによって、植物性油脂を使用しているにも拘わらず、顆粒状を呈し、抗固結性に優れ、水又は温水への溶解性に優れ且つ乳化安定性及び抗固結性に優れた幼畜のための代用乳組成物が得られる。
【添付図】図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、幼畜のための代用乳組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、子牛、子豚、子山羊、その他の幼動物に給与される代用乳組成物及びその製造法に関するものであり、保管時に固結をせず、流動性に優れ、水又は温水に投入したときの溶解性に優れ且つ溶解後の脂肪球径が小さくて乳化安定性も良好な幼畜のための顆粒状の代用乳組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子牛、子豚、子山羊等の幼畜類の生産やその他の幼動物の飼育に当っては、母乳の代替に人工的に造られた代用乳組成物を給与して飼育することが広く行われている。
この代用乳組成物は、脱脂粉乳、乾燥ホエー、ホエー蛋白質濃縮物(WPC)等の乳成分を主原料とし、これに油脂類、糖類、穀類、ミネラル、ビタミン、抗生物質などを配合した粉末或いは顆粒状の固形物であり、実際に使用する際には、水又は温水に溶解或いは乳化分散させて給与されている。
【0003】
そうして、この代用乳組成物は、油脂原料として50〜90%の油脂をカゼインナトリウムと、必要によりデキストリンやコーンシロップなどの糖質基材、乳化剤及びその他の助剤、及び安定剤などでコーティングした粉末油脂を単に混合する、或いは油脂以外の原料に液体油脂を噴霧して製造されている。
このような代用乳組成物は、粉末油脂を単に混合したものは、水や温水に溶解したときに分散性が悪い。また液体油脂を噴霧して製造されるものの場合、水や温水に溶解したときしばしば油脂が分離したり、難溶性の浮遊物を生じることが有る。又、夏場の高温条件下では、保管中の温度差により油脂の融解、固結を繰り返すため、油脂が沁み出したり、粉体が固結する問題が発生する。更には、使用時に水又は温湯に溶解する際、泡立て器や簡単なミキサー等の機械で溶解することによって初めて乳化されるため、脂肪球径が大きく、そのため乳化安定性に劣るという欠点を有している。これらの欠点は油脂原料として植物油脂を使用した際に特に顕著に表れている。
【0004】
即ち、乳蛋白含量が高く且つ油脂原料中の植物性油脂の含有量が高いにもかかわらず、水又は温水に対する溶解性に優れ、且つ抗固結性に優れ、更には脂肪球径が小さく、その結果乳化安定性に優れた幼畜のための代用乳組成物は未だ知られていない。
【特許文献1】特開2003−189799
【特許文献2】特開平04−30747
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乳蛋白含量が高く且つ植物性油脂を多く含有しているにも拘わらず、抗固結性に優れ、水又は温水への溶解性に優れ且つ乳化安定性に優れた顆粒状を呈する幼畜のための代用乳組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、乳蛋白質原料を30〜60重量%、油脂原料中の植物性油脂の含有量が40〜70重量%である粉末油脂を10〜60重量%、及びその他糖類、ミネラル、ビタミン類及び乳化剤等からなる代用乳用原料混合物に水を噴霧しながら流動層造粒することによって、乳蛋白含量が高く且つ植物性油脂を多く使用しているにも拘わらず、顆粒状を呈し、抗固結性に優れ、水又は温水への溶解性に優れ且つ乳化安定性に優れた幼畜のための代用乳組成物が得られることを見出し、この知見に基いて本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の幼畜用代用乳組成物は、従来の方法のように油脂原料をカゼインナトリウム、糖質基材、乳化剤、その他の物などでコーティングして得た粉末油脂を他の原料と単に混合したものとは異なり、水や温水に溶解した時の分散、溶解性にすぐれている。
また、従来の方法のように油脂で代用乳用原料をコーティングしたものと異なり、保管中に温度の上下がある環境の下で油脂が融解、固結を繰り返すことによって、油脂が沁み出したり、粉体が固結するという問題は殆ど生起しない。又、本発明の幼畜用代用乳組成物は、油脂原料として植物油脂の使用割合が高いにも拘わらず、脂肪球径が小さく、そのため使用に当って、水又は温湯に溶解したとき溶解性に優れており、且つ乳化安定性にも極めて優れている。更に、本発明によって得られる幼畜用代用乳組成物は、顆粒状を呈しており、流動性に優れ、又吸湿・固化し難いという優れた特徴を持っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するに当っては、代用乳用原料の一つである蛋白質原料としては一般に幼畜のための代用乳に用いられる粗蛋白質含量が高い乳蛋白原料、例えば脱脂粉乳、ホエー蛋白質濃縮物(WPC)、乾燥ホエーなどが上げられる。本発明においてはその使用量は、幼畜用代用乳組成物中30〜60重量%である。
【0009】
本発明における幼畜用代用乳組成物は粉末油脂を10〜60重量%、好ましくは30〜60%含み且つその粉末油脂の成分の内植物性油脂を40〜70重量%含むものが有利に用いられる。
植物性油脂としては、大豆油、菜種油、サフラワー油、コーンオイル、パーム油、パーム核油、やし油、それらの分画油等の油脂原料の内の1種又は2種以上であればよく、特に融点が28℃〜45℃となるよう2種以上のものを混合・調製したものが一層好ましく用いられる。この目的のためには、パーム油、パーム核油、やし油、それらの分画油を適宜選択することが有利である。
【0010】
本発明の幼畜用代用乳組成物はその他に、幼畜用代用乳に通常用いられる代用乳用原料として脱脂粉乳、ホエー蛋白質濃縮物(WPC)、乾燥ホエー、糖質、ミネラル、ビタミン類及び賦形材、乳化剤等が用いられ、その使用量も通常のものと変わりはない。
【0011】
本発明の幼畜用代用乳組成物は、従来一般に使用され、又一般に公知である幼畜用代用乳が有していない優れた性質を有している。
即ち、油脂原料をカゼインナトリウム、糖質基材、乳化剤、その他の物などでコーティングして得た粉末油脂を他の原料と単に混合した粉状のものと異なり、水や温水に溶解した時に水中への分散性が悪く、溶け残りが生じるという問題はほとんどない。また代用乳用原料を油脂でコーティングしたものと異なり、保管中の温度差による油脂の融解、固結の繰り返しによって、油脂が沁み出したり、粉体が固結するという問題は殆ど生起しない。
それは、本発明の幼畜用代用乳組成物が顆粒状を呈しているためでも有り、又、一部の代用乳原料が油脂原料でコーティングされたものではないからである。
【0012】
従来一般に使用され、或いは一般に公知である幼畜用代用乳が有しておらず、本発明の幼畜用代用乳組成物が有しているいまひとつの優れた性質は、油脂原料として植物油脂の使用割合が高いにも拘わらず、脂肪球径が小さく、そのため使用に当って、水又は温湯に溶解したときの乳化安定性にも極めて優れていることである。
本発明の幼畜用代用乳組成物は、乳蛋白質原料を30〜60重量%、油脂原料中の植物性油脂の含有量が40〜70重量%である粉末油脂を10〜60重量%を含んでいる。
【0013】
本発明において用いられる粉末油脂は、一般に市販乃至通常の方法によって製造されたものが用いられる。例えば、植物性油脂をカゼイン、糖類、多糖類(デキストリン、ガム類)、及び乳化剤を水に溶解し、乳化し、次いでホモジナイザーによって均質化処理し、これを噴霧乾燥して調製されたものである。乳化溶液は通常噴霧乾燥前に高圧ホモジナイザーによって高い圧力をかけられるため乳化溶液中の脂肪球は微細化している。このため、噴霧乾燥によって得られる粉末油脂は、水又は温水に溶解した際の脂肪球径が小さくなっている。したがって、粉末油脂を使用した本発明の代用乳組成物は、水又は温湯に溶解したときの脂肪球径は小さく、乳化安定性にも極めて優れるのである。
【0014】
造粒に当って使用される水の使用量は、代用乳用原料に対して3〜15重量%程度であり、常温乃至30〜60℃程度の温湯でよい。
かくして得られる本発明の幼畜用代用乳組成物は、レーザー回折粒度分布測定器によって測定した50%径(メジアン径)が100〜500μmとなり、サラサラとした流動性の高い性状を有している。
【0015】
かくすることによって、油脂原料が他の成分をコーティングするのではなく、原料成分全体が混ぜんとして顆粒状を形成するのである。これによって、水又は温湯に溶解したとき分散、溶解性に優れ、油脂原料として植物油脂の使用割合が高いにも拘わらず、保管中に油脂が沁み出したり、粉体が固結するという問題は殆ど生起せず、また使用に当って、水又は温湯に溶解したときの脂肪球径が小さく、乳化安定性にも極めて優れている。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の実施例を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
下記の表1に示す代用乳用粉末油脂組成物配合を準備した。植物性油脂として、パーム油、パーム核油の2種類の油脂を使用し、その他に粗レシチンおよびHLBが9〜11の乳化剤1種類を使用した。
【0017】
【表1】

【0018】
上記のパーム油37.5重量部、パーム核油10重量部を60℃に加熱して溶かしたのち良く混和し、レシチン1.25重量部、乳化剤1.25重量部を加え、レシチンと乳化剤を含む植物性油脂混合物を調製した。さらに、溶解後の脂肪球や油脂分離を観察するために、上記植物性油脂混合物の重量に対して0.02重量%の赤色脂溶性色素を添加しておいた。
一方、上記の脱脂粉乳50重量部を60℃の温水100重量部に混合溶解し、さらに上に調製した60℃の植物性混合油脂組成物を加え、60℃に保持しながらモーター攪拌機にて均一になるまで混合し、混合乳化溶液を調製した。この混合乳化溶液の脂肪球の球径を光学顕微鏡を用いて測定したところ、10μm〜50μmと比較的大きなものであった。
【0019】
得られた混合乳化溶液を高圧ホモジナイザー15MR−8TA(APV GAULIN Inc)によって200kg/cm2の圧力をかけ、均質化処理(ホモジナイズ)を行った。この均質化処理した混合乳化液の脂肪球の球径を光学顕微鏡を用いて測定したところ、1μm〜5μmと非常に小さく、均質化処理によって乳化液中の脂肪球が微細化されたことが確認された。
均質化処理した混合乳化液は、ニロ社製(デンマーク)スプレードライヤーモバイル・マイナー(Niro Co.Ltd. Mobile Minor)を用いて180℃の熱風にて噴霧乾燥処理を行った。
【0020】
噴霧乾燥後に得られた粉体はバットに薄く広げ、室温で一晩放冷し、粗蛋白質含有率が15.5%、脂肪含有率が49%である粉末油脂組成物を製造した。
得られた粉末油脂組成物50gを40℃の温水300gに溶解して、油脂含有7%の乳化溶液を調製した。この乳化溶液の脂肪球の球径を光学顕微鏡を用いて測定したところ、最も大きいもので10μmであり、ほとんどの脂肪球が2〜5μmであった。このことから、スプレードライで粉末油脂化した油脂は、溶解後も脂肪球径は小さく、乳化安定性にも極めて優れていた。
【0021】
上記方法によって得られた粉末油脂組成物を用いて、表2に示す代用乳組成物配合を用意した。
【0022】
【表2】

【0023】
表2に示した各原料を万能混合機にて均一になるまで十分混合し、粗蛋白質含有率25%、脂肪含有率21%の混合粉末を調製した。
調製した混合粉末6kgを、流動層造粒機(MGD−0.5、株式会社大川原製作所製)に投入し、90℃の熱風で混合粉末を流動させながら、常温(約25℃)の水を50g/秒の噴霧速度で噴霧し造粒を行った。噴霧した水の総量は450g、すなわち混合粉末の重量に対して7.5%となるまで噴霧した。水噴霧終了後、10分間追加乾燥した後流動層から排出した。
得られた造粒物はバットに薄く広げ、4℃の冷蔵庫にて1時間冷却した後、目開き1.4mmのふるいにて篩分し、篩下したものを代用乳組成物(A)とした。
【0024】
代用乳組成物(A)の粒度をレーザー回折式粒度分布測定器(マスターサイザー2000、シスメックス株式会社製)にて測定したところ、50%径(メジアン径)は154μmであり、サラサラな顆粒状を呈していた。
又、得られた代用乳組成物(A)300gを、ビーカーに入れた40℃の温湯1.8リットルに投入し、右回転5回、左回転5回攪拌した。攪拌から1分間放置後、ビーカー中の溶解液を目開き0.5mmの篩に全て通し、篩上の溶け残った残渣を確認したところ、残渣はほとんど確認されなかった。このことから、流動層で造粒した代用乳組成物は、温湯への分散性が極めて良好であることが確認された。
【0025】
上で得られた代用乳組成物(A)50gを40℃の温水300gに溶解して、油脂含有率3%の代用乳溶液を調製した。この代用乳溶液の脂肪球の球径を光学顕微鏡を用いて測定したところ、最も大きいもので10μmであり、ほとんどの脂肪球が2〜5μmであった。このことから、流動層で造粒した代用乳組成物を水に溶解した場合にも、代用乳組成物を調製する際に使用した粉末油脂と同様に脂肪球径が小さくなることが確認された。
【0026】
上で得られた代用乳組成物(A)30gを40℃の温水180gに溶解し、油脂含有率3%の乳化溶液を調製し、直ちに200mlメスシリンダーに入れ、上部に分離する油脂の厚みを2時間後に確認したところ、2時間経過後もほとんど分離が確認されなかった。このことから、流動層で造粒した代用乳組成物(A)を温湯に溶解した場合にも、代用乳組成物(A)を調製する際に使用した粉末油脂と同様に乳化安定性が良好であることが確認された。
【0027】
上で得られた代用乳組成物(A)50gを、縦250mm、横150mmのビニール袋に包み、恒温槽にて35℃で4時間、5℃で4時間放置し、この温度サイクルを合計3回繰り返した。その後ビニール袋から代用乳組成物(A)を静かにとりだして固結状況を確認したところ、固結は全く確認されず、サラサラの顆粒状態を保持したままであった。
【0028】
実施例3
表2に示した代用乳原料混合粉末6kgを上と同様であるが噴霧した水の総量を300g(混合粉末の重量に対して5%)に変更した条件で製造し、同様に冷却、篩分を行った代用乳組成物は、レーザー回折式粒度分布測定器での50%径(メジアン径)が120μmのサラサラした顆粒状を呈した。また、この代用乳組成物を上と同様の方法で評価したところ、代用乳組成物(A)と同様の評価となることが確認された。
【0029】
実施例4
表2に示した代用乳原料混合粉末6kgを実施例2と同様であるが噴霧した水の総量を840g(混合粉末の重量に対して14%)に変更した条件で製造し、上と同様に冷却、篩分を行った代用乳組成物は、レーザー回折式粒度分布測定器での50%径(メジアン径)が191μmのサラサラした顆粒状を呈した。また、この代用乳組成物を実施例2と同様の方法で評価したところ、いずれの評価項目に関しても代用乳組成物(A)と同様良好な評価となることが確認された。
実施例5
実施例1に示した代用乳組成物と同様の成分(粗蛋白質含有量が25%、油脂含有量が21%)となるように、下記の表3に示す代用乳組成物配合を用意した。
【0030】
【表3】

【0031】
上記のパーム油15.8重量部、パーム核油42重量部を60℃に加熱して溶かしたのち良く混和し、レシチン0.5重量部、乳化剤0.5重量部を加え、レシチンと乳化剤を含む植物性油脂混合物を調製した。さらに、溶解後の脂肪球や油脂分離を観察するために、上記植物性油脂混合物の重量に対して0.02重量%の赤色脂溶性色素を添加した。
【0032】
一方、上記表3の残りの成分、すなわち脱脂粉乳63重量部、濃縮ホエー蛋白質11重量部、乾燥ホエー2重量部、ビタミン・ミネラル・糖類3重量部を攪拌造粒機(FM−VG−10、株式会社パウレック製)を用いて均一に混合し、攪拌しながら上記(2)で調製した60℃の液状の植物性油脂混合物を噴霧し、造粒を行った。その後、流動層(NFLO−1、フロイント産業株式会社製)にて70℃の熱風で3分間乾燥処理した後、バットに薄く広げ、4℃の冷蔵庫で1時間冷却した。
【0033】
冷却後の造粒物は、目開き1.4mmのふるいにて篩分し、篩下したものを代用乳組成物(B)とした。この代用乳組成物は、レーザー回折粒度分布測定器での50%径(メジアン径)が200μmであり、非常にシットリした凝集性の強い性状を呈した。
【0034】
また、実施例1において水を使用し造粒を行わない場合、すなわち表2に示した粉末油脂を含む代用乳組成物配合を万能混合機で均一に混合したのみであるものを代用乳組成物(C)とした。この代用乳組成物は、レーザー回折粒度分布測定器での50%径(メジアン径)が80μmであり、粉状を呈するものであった。
【0035】
代用乳組成物(B)および代用乳組成物(C)について、実施例1と同様の方法で温湯への溶解性・分散性を確認し、又、同様の方法で溶解後の脂肪球径を調査した。また、これらの代用乳組成物について実施例1と同様の方法で溶解後の乳化安定性を観察し、実施例1と同様の方法で代用乳組成物の固結性を調査した。これらの結果を、実施例1で示した代用乳組成物(A)の結果と共に、表4に示す。又、図面にこれらの試験結果を写真で示した。
【0036】
【表4】

【0037】
表4に示した如く、代用乳組成物(B)は温湯への分散・溶解性は優れているものの、シットリした性状であり、温度変化によって容易に固結することがわかった。これは、液体油脂を噴霧しているために顆粒表面を油脂がコーティングした状態になっているため、温度変化によって油脂が融解、凝固を繰り返すことにより顆粒同士を接着し、固結するものと考察される。
【0038】
又、代用乳組成物(B)は、脂肪球径が大きく乳化安定性に劣る結果となった。油脂を微細に乳化させるためには乳化液に十分な機械的せん断力を与える必要があるが、代用乳組成物(B)を溶解する場合は、温湯と混合する際の攪拌力のみがせん断力として乳化液に与えられるため、脂肪球径が比較的大きいと考えられる。一方他の2つの代用乳組成物(A)および(C)は、粉末油脂を使用しているために脂肪球径が小さいと考えられる。すなわち、粉末油脂製造時にあらかじめ高圧ホモジナイザーによって乳化液に200kg/cm2のせん断力を与え脂肪球を微細化しているために脂肪球径が小さいと考えられる。
【0039】
又、代用乳組成物(C)は、脂肪球径が小さく、乳化安定性は良好であり、固結性も非常に低いことが確認された。しかし、分散・溶解性に関しては、ママコ状の残渣が篩上に多く残り、その他の代用乳組成物と比べて劣る結果となった。この原因は、代用乳組成物の粒度が非常に小さく粉状であることから、温湯に溶解する際の水中への分散性が劣るためであると考えられる。
【0040】
以上の物性評価試験の結果、代用乳組成物(A)、(B)、および(C)を総合的に比較すると、代用乳組成物(A)が、分散・溶解性、脂肪球径、乳化安定性、固結性、全てにおいて優れる性状を示す結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の代用乳組成物及び比較サンプルの外観を示す顕微鏡写真である。
【図2】本発明の代用乳組成物及び比較サンプルの分散・溶解性試験を示す写真である。
【図3】本発明の代用乳組成物及び比較サンプルの溶解後の脂肪球を示す顕微鏡写真である。
【図4】本発明の代用乳組成物及び比較サンプルの乳化安定性を示す写真である。
【図5】本発明の代用乳組成物及び比較サンプルの固結性を比較した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳蛋白質原料を30〜60重量%、油脂原料中の植物性油脂の含有量が40〜70重量%である粉末油脂を10〜60重量%、及びその他糖類、ミネラル、ビタミン類及び乳化剤からなる代用乳用原料混合物に水を噴霧しながら流動層造粒機により流動層造粒することを特徴とする顆粒状を呈し、保管時に固結をせず、流動性に優れ、水又は温水に投入したときの溶解性に優れ且つ溶解後の脂肪球径が小さくて乳化安定性も良好な幼畜用代用乳組成物の製造方法。
【請求項2】
植物性油脂が、パーム油、パーム核油、やし油、それらの分画油の内の1種又は2種以上であり、融点が28℃〜45℃である請求項1に記載の幼畜用代用乳組成物の製造方法。
【請求項3】
噴霧する水の量が代用乳用原料に対して3〜15重量%である請求項1又は請求項2の何れかに記載の幼畜用代用乳組成物の製造方法。
【請求項4】
レーザー回折粒度測定器による50%径(メジアン径)が100〜500μmである請求項1、請求項2又は請求項3の何れかに記載の幼畜用代用乳組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−94710(P2006−94710A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281081(P2004−281081)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【出願人】(591220746)株式会社科学飼料研究所 (11)
【Fターム(参考)】