説明

広い開放された履き口を有するベルト付シューズ

【課題】 開口部が大きく脱ぎ履きに手間がかからず、またベルトが甲部へ確実に密着し馴染んで、歩行時、容易に脱げることなく軽快に歩行でき、トウスプリングをつけたことで段差でのつまずき防止と歩行時のけりあげが楽になる、さらにまた、日本人特有の幅広甲高をすらっとシャープに見せる効果がある、きわめて履き心地良好な靴の提供。
【解決手段】 甲部にベルト裏側と噛合するフック群部材を少なくともその一部分に有し、靴ベロを開放すると靴ベロのない広い開放された履き口になる履き口からつま先にむけての縦長の開口部を有するシューズ本体部と、足の甲部分を上から支えると共に開口部を閉じる働きがある靴ベロと、長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材を有し、開口部を閉じた靴ベロの上から甲部を固定するベルトとからなる、ベルト付シューズであって、前記甲部が幅広甲高でつま先の納まる部分にゆとりがあり、かつ、トウスプリングをつけたことを特徴とする広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱ぎ履きが容易であり、しかも、履き心地も良好な靴に関し、詳しくは、お年寄りなどまだまだ自分の力で靴を履いたり脱いだりできる方々をはじめ、リウマチ等で足趾に変形があり、市販の靴を履くことができない方々にも安心して着脱でき、散歩や買い物に出かけられるような脱ぎ履きが容易であり、しかも、履き心地も良好な靴に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国における高齢者等用靴の歴史は浅く、非特許文献1によれば、老人靴の必要条件として、(1)軽い靴、少なくとも重量は300グラム(片足)以内、(2)絶対に滑らない靴、(3)つま先が普通の靴より上がっていること、(4)足の温度を保つこと、(5)足の内側を柔らかい素材で覆い、老人の足を保護すること、(6)踵が後方に出ていること、いわゆる踵に安定感を持たすため、(7)着脱が容易なこと、(8)半ブーツ形式をとること、(9)つま先は丸く、ゆったりしていること、(10)アッパー(靴の甲)は足の甲をよく固定することが紹介されている。
【0003】
また、非特許文献2においては、老人靴を選ぶ際の注意点として、(1)本底はやわらかい素材で返り(屈曲部がしなうこと)が良く、接地面積が広くて滑りにくい工夫がされていること、(2)くるぶし上方の骨を保護し安定を良くするために、ブーツであることが望ましい、(3)趾先がおさまる部分はゆったりとしていて、決して締め付けていないこと、(4)つまずかないように爪先は太くて丸くて、反っており、捨て寸が最小限であること、(5)足当たりがやわらかく、靴に足が密着し固定するよう素材がソフトで、つくりがしっかりしていること、(6)ヒールは2〜3センチほどの高さで、ヒールが平らなウェッジ・ヒール(ソール)が良く、ふつうのヒールの場合は前面が斜めか丸くカットされていること、(7)汗や脂の分泌が少なくなり、冷えやすくなるので、通気性よりも保温を重視する、特に趾先の冷えはこたえるため、爪先部の保温を配慮したものが良い、(8)時間、距離とも、若い頃ほど歩かないので、軽い靴が良い、(9)うつむいたり、しゃがんだりの、心臓を圧迫する動作や、手先を使うことは苦手になってくるので、楽に脱ぎ履きできること、そのため調節具は、操作の簡単なホック、マジック・テープ、ファスナーなどが望ましい、なお、紐靴の場合は、結びやすいよう紐が比較的太く、紐を踏みつけて転ぶ恐れがあるので、結び目が長く垂れない長さであることが紹介されている。
【0004】
おしゃれ心を求める豊かさの視点を付加すると、これらの条件の取捨選択はいっそう困難である。たとえば、履物は履きやすくすると歩行の際に脱げやすくなり、また歩行の際に脱げにくくすると、それを足に着脱する時に、時間を要し着脱が簡単にできない。健康な人であっても、履物の着脱は、しばしば忙しいときなどには、煩わしく、時間を要して着脱を行っている。特に、身体の不自由な人にとっては、日常の生活において、従来の履物ではその着脱に健康な人以上に時間を要し、その取扱いに苦労している。たとえば開閉に手の力をかりて行なう場合には、身体が不自由であるがために、前屈しにくい人や手足の自由度の少ない人にとっては、最も苦しい身体の動作を強いられ、着脱のための容易な操作は到底得ることができない。
補装具等の装着や、リューマチ等で、足趾に変形があり、市販されている靴が着用困難な方々が多数おられる。そのような方々が、外見だけでも見栄え良くしたい等、健康・介護用商品におしゃれ心を求める豊かさが浸透しつつあり、種類、デザインなどの豊富化が求められている。
【0005】
【非特許文献1】石塚忠雄著「靴の科学」、株式会社講談社、1991年2月20日発行の106〜109頁
【非特許文献2】日本靴総合研究会編「新・健康にいい靴選び」、チクマ秀版社、1992年12月29日発行の110〜114
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
靴を履く際に開口部が狭いと、足の巾の広い部分がつかえることは経験則から明らかであるが、一方で、開口部の大きさのみが履きやすさに起因する訳ではなく、足の先端部に力をかけることができる構造がある必要がある。足の先端部に力をかけることができる構造により足の先端部に力をかけることを可能とすることで、履きやすさを実現している。
また、靴を脱ぐ際には、開口部が広いほど脱ぎやすいことはいえても、反面、開口部が広くなりすぎると靴を履きにくいというデメリットが生じる。従って、開口部が適度に開くことが好ましい。靴のもっとも基本的な機能である履きやすさを備え、かつ、脱ぎやすさの観点からも有利な効果を奏すること、さらには良好な履き心地が大切である。
そこで本発明は、前記した従来の問題点を解消しようとするものであって、開口部が大きく脱ぎ履きに手間がかからず、またベルトが甲部へ確実に密着し馴染んで、歩行時、容易に脱げることなく軽快に歩行でき、トウスプリングをつけたことで段差でのつまずき防止と歩行時のけりあげが楽になる、さらにまた、日本人特有の幅広甲高をすらっとシャープに見せる効果がある、きわめて履き心地良好な靴の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)ないし(7)の広い開放された履き口を有するベルト付シューズを要旨とする。
(1)甲部にベルト裏側と噛合するフック群部材を少なくともその一部分に有し、靴ベロを開放すると靴ベロのない広い開放された履き口になる履き口からつま先にむけての縦長の開口部を有するシューズ本体部と、足の甲部分を上から支えると共に開口部を閉じる働きがある靴ベロと、長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材を有し、開口部を閉じた靴ベロの上から甲部を固定するベルトとからなる、ベルト付シューズであって、前記甲部が幅広甲高でつま先の納まる部分にゆとりがあり、かつ、トウスプリングをつけたことを特徴とする広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
(2)前記甲部の開口部は先端がMP関節ないしは中節骨のところまで届く切り込みで構成されていることを特徴とする(1)の広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
(3)上記ベルトが少なくとも持ち手がゴム製であることを特徴とする(1)または(2)の広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
(4)上記ベルトが弾性帯であることを特徴とする(1)または(2)の広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
(5)上記ベルトを二本ベルトとしてフック群部材生地に幅をもたせて、フック機能で重合する重なりが幅広になるようにしたことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかの広い開放された履き口を有するベルト付シュー。
(6)上記ベルトを幅広の一本ベルトとしてフック群部材生地に幅をもたせて、フック機能で重合する重なりが幅広になるようにしたことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかの広い開放された履き口を有するベルト付シュー。
(7)踵を覆う甲部の外側上部に指が充分に入るループを設けたことを特徴とする(1)ないし(6)のいずれかの広い開放された履き口を有するベルト付シュー。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、開口部が大きく脱ぎ履きに手間がかからず、またベルトが甲部へ確実に密着し馴染んで、歩行時、容易に脱げることなく軽快に歩行でき、トウスプリングをつけたことで段差でのつまずき防止と歩行時のけりあげが楽になる、さらにまた、日本人特有の幅広甲高をすらっとシャープに見せる効果がある、きわめて履き心地良好な靴を提供することができる。
【0009】
すなわち、本発明の甲部に履き口からつま先にむけての縦長の開口部を有する構成で、開口部が適度に開くことで、靴のもっとも基本的な機能である履きやすさを備え、かつ、脱ぎやすさの観点からも有利な効果を奏する。
甲部が幅広甲高でつま先の納まる部分にゆとりがあり、かつ、トウスプリングをつけたことで、つま先がおさまる部分はゆったりとしていて足の先端部に力をかけることができる構造があるといえるので脱ぎ履きが容易であり、つま先をやや反らせることで、スプリング(バネ)のように返りがよく、先端が地面や階段に引っかからないのでつまずきにくい、歩行時のけりあげが楽になる、さらにまた、日本人特有の幅広甲高をすらっとシャープに見せる効果があり、健常者用の靴と同様の意匠を採用可能であり、靴の外側部から見ると通常のベルト付きの靴に見えるため、非常にファッション性が高く、高齢者等に快活なイメージを与えることができる。
【0010】
また、靴を履く際に開口部が狭いと、足の巾の広い部分がつかえることは経験則から明らかであるが、一方で、開口部の大きさのみが履きやすさに起因する訳ではなく、足の先端部に力をかけることができる構造がある必要がある。足の先端部に力をかけることができる構造により足の先端部に力をかけることを可能とすることで、履きやすさを実現している。また、靴を脱ぐ際には、開口部が広いほど脱ぎやすいことはいえても、反面、開口部が広くなりすぎると靴を履きにくいというデメリットが生じる。従って、開口部が適度に開くことが好ましい。靴のもっとも基本的な機能である履きやすさを備え、かつ、脱ぎやすさの観点からも有利な効果を奏すること、さらには良好な履き心地が大切であり、前記甲部の開口部は先端がMP関節ないしは中節骨のところまで届く切り込みで構成されていることで、つま先がおさまる部分はゆったりとしていて足の先端部に力をかけることができる構造と合わさって、履きやすさと脱ぎやすさを実現している。
【0011】
長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材を有し、開口部を閉じた靴ベロの上から甲部を固定するベルトの構成で、本発明の靴は、装着したとき高い密着感を得ることができ、その安定感が高いことから快適な履き心地を提供することができる。また、調整はベルトの甲部と噛合するフック群部材のみの作業であるため高齢者等でも簡易に行うことができ、ベルトのゴム弾性で引っ張ったりゆるめたりするだけで簡単にサイズが調整できるので、片手で身体を支持し安定した状態で靴の着脱を行なうことができる。また、甲部を覆う甲皮が大きく、足の甲部分を上から支えると共に開口部を閉じる働きがある靴ベロの上から甲部を固定することで装着したときの安定感が高いことから快適な履き心地を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
甲部表全体の素材は特に限定されない。靴ベロ、ベルト、ヒールループなどの素材も甲材と同じ布材を使用することができるし、変えてもよい。特にベルトの先にゴム素材を付けて、ベルトをつまみやすく、滑りにくくすることが出来る。
【0013】
甲部の少なくとも一部分に設ける、ベルト裏側と噛合するフック群部材、およびベルトの長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材は、フック群部材生地を用いる。甲部の少なくとも一部分に設けるとは、ベルト裏側と噛合するフック群部材として機能する面であり、フック機能で重合する重なりが幅広になるようにもうけることが好ましい。
フック群部材生地は、面ファスナーともいい、多数のループ群部材(面ファスナーA面)と、フック群部材(面ファスナーB面)とより構成されており、市販品である。「ベルクロ」(ベルクロ社の登録商標)、「マジックテープ」(クラレ社の商標登録)が例示される。前記ループ群部材は、例えば基板の表面に軟質で多数のループ群を植設したものであり、フック群部材は、基板の表面に硬質で多数のフック群を突設したものであるが、種々の態様の製品が販売されている。甲部の必要箇所(ベルトとフック機能で重合する重なりの箇所)、および、ベルトの裏側端部にフック群部材生地を縫着することにより取付られる(図9にベルクロ止めステッチが明示されている)。全開する靴ベロおよびベルトが靴本体にしっかりと止まり甲部分がフィットした状態で完成する。
【0014】
本発明の広い開放された履き口を有するベルト付シューズの本体部の特徴は、(あ)甲部の幅広甲高、(い)甲部の縦長の開口部、(う)トウスプリングである。
(あ)甲部の幅広甲高について、十分なトウボックスを確保し、3Eという足囲のゆったりした木型を用いる。トウボックスはつま先の甲の厚みのことである。甲部が幅広甲高でつま先の納まる部分にゆとりがあることで、つま先がおさまる部分はゆったりとしていて足の先端部に力をかけることができる構造であると言うことが出来、脱ぎ履きが容易である。そればかりか、歩いているときもつま先回りを快適に保つ。
履きやすさには、足の先端部に力をかけることができる構造がある必要がある。例えば、サンダル、或いは、下駄では開口部が広くつま先を進入させやすいのみならず、それに加え進入させた甲部ないしはつま先部に力をかけることができる構造となっている。足の先端部に力をかけることができる構造により足の先端部に力をかけることを可能とすることで、履きやすさを実現している。
また、十分なトウボックスを確保し、圧迫をさけ、一日を通してつま先回りを快適に保つ。とくに足趾(あしゆび)の屈曲した頂点や靴底に当たった趾の先端が傷つきやすいので、靴の先端の高さに気をつけ、趾先をゆったりとる。歩いているとき、足は靴の中で1cmほど前後運動をしている。足が前に行ったとき、指が靴に当たるようだとつま先を痛める。我慢しているようだと足が変形しかねない。つま先の高さが確保されていることが大切である。また、3Eという足囲のゆったりした木型を用いると、足のはれやむくみに対応できる。靴を選ぶ第一ステップは、自分の足を良く知ることであり、測るところは、足の長さだけでなく、足周り(足囲)の2箇所である。足囲の測り方は、指のつけ根の骨の出っ張りの周囲を測る。
【0015】
(い)甲部の縦長の開口部について、大きく開く甲の設計がはきやすい、はかせやすいにとって重要である。靴を履く際に開口部が狭いと、足の巾の広い部分がつかえるが、開口部が広くなりすぎると靴を履きにくいというデメリットが生じる。靴を脱ぐ際には、開口部が広いほど脱ぎやすいことはいえても、靴の履きやすさということから、開口部が適度に開くことが好ましい。靴のもっとも基本的な機能である履きやすさを備え、かつ、脱ぎやすさの観点からも有利な効果を奏することが大切である。
ここで、靴を脱ぐ際には、経験則上、MP関節を支点にかかとを上下するから、少なくともMP関節以前までに開口部が開くと脱ぎやすいことが把握できる。そうすると、MP関節ないしは中節骨のところまで切り込みがあると、一定の効果を奏することがわかる。本発明の靴ベロを開放すると靴ベロのない広い開放された履き口になる履き口からつま先にむけての縦長の開口部は、靴のもっとも基本的な機能である履きやすさを備え、かつ、脱ぎやすさの観点からも有利な効果を奏する開口部が適度に開いたものである。
【0016】
(う)トウスプリングをもたせた点について、トウスプリングとはつま先上がり、つま先の反り返り、つま先の部分を上げ角度をつけることということができる。つまずかないために適切なトウスプリングをつける。つま先をやや反らせることで、スプリング(バネ)のように返りがよく、先端が地面や階段に引っかからないのでつまずきにくい。また、段差でのつまずき防止と歩行時のけりあげが楽になる。さらにまた、日本人特有の幅広甲高をすらっとシャープに見せる効果がある。
【0017】
本発明の広い開放された履き口を有するベルト付シューズは、足の甲部分を上から支えると共に開口部を閉じる働きがある靴ベロを有している。靴ベロを開放すると靴ベロのない広い開放された履き口になる履き口からつま先にむけての縦長の開口部を閉じる働きがある。一般に、ベロは甲部分中央にある部位で、人(履手)の足の甲部分を上から支えると共に、砂等の靴内部への侵入を防止する働きがある。本発明の靴ベロは、人(履手)の足の甲部分を上から支えると共に開口部を下から閉じる働きがある靴ベロの態様(A)と、人(履手)の足の甲部分を上から支えると共に開口部を上から覆って閉じる働きがある靴ベロの態様(B)とがある。甲のベロ(砂除)がAの内甲の中に納まるのが通常だが、Bのように外甲側が外甲の上になっても機能的であり、デザインになっている。
【0018】
本発明の広い開放された履き口を有するベルト付シューズは、長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材を有し、開口部を閉じた靴ベロの上から甲部を固定するベルトを有している。長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材を有し、開口部を閉じた靴ベロの上から甲部を固定するベルトの構成で、本発明の靴は、装着したとき高い密着感を得ることができ、その安定感が高いことから快適な履き心地を提供することができる。
ベルトは、持ち手にゴムで構成することで着脱しやすさを実現する。および/または、ベルトにゴムを入れることで(すなわち、ベルトが弾性帯であることで)、ベルトが締めやすくなり、しっかりフィットして歩きやすさを実現する。特にベルトの先にゴム素材を付けて、ベルトをつまみやすく、滑りにくくすることが出来る。締め具合の調整はベルトの甲部と噛合するフック群部材のみの作業であるため高齢者等でも簡易に行うことができ、ベルトのゴム弾性で引っ張ったりゆるめたりするだけで簡単にサイズが調整できるので、片手で身体を支持し安定した状態で靴の着脱を行なうことができる。一本ベルトではワンタッチで操作が可能である。また、大きく開く甲の設計と合わさって、履きやすい、履かせやすいにも寄与する。
二本ベルトタイプと一本ベルトタイプが好ましい態様として例示される。二本ベルトとしてフック群部材生地に幅をもたせて、または幅広の一本ベルトとしてフック機能で重合する重なりが幅広になるようにしたことを特徴とする。そうすることで、二本ベルトまたはワイドベルトで甲を幅広にしっかり固定でき、しっかりフィットして歩きやすい。すなわち、甲部を覆うベルト幅が広く、人(履手)の足の甲部分を上から支えると共に靴の開口部を閉じる働きがある靴ベロの上から甲部を幅広に固定することで装着したときの安定感が高いことから快適な履き心地を提供することができる。
【0019】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明のベルト付シューズ左足の左側側面図、図2はその背面図である。一実施例であり、細部の構成は本実施例に限定されるものではない。
本実施例の広い開放された履き口を有するベルト付シューズは、シューズ本体部Aと 靴ベロBとベルトCとで構成されており、シューズ本体部Aの全体的な特徴は、(1)甲部に履き口からつま先にむけての縦長の開口部、(2)トウスプリング、(3)トウボックス、(4)3Eにある。シューズ本体部Aの甲部は、幅広甲高であり、トウボックス6および足囲(3E)7で、つま先の納まる部分にゆとりがあること、トウスプリング5をつけている態様が示されている。上記の(2)について、トウスプリングとはつま先上がりのことであり、先端が地面や階段に引っかからないのでつまずきにくい。また、日本人特有の幅広甲高をすらっとシャープに見せる効果がある。上記の(3)、(4)について、十分なトウボックスを確保し、3Eという足囲のゆったりした木型を用いる。トウボックスはつま先の甲の厚みのことである。甲部が幅広甲高でつま先の納まる部分にゆとりがあることで、つま先がおさまる部分はゆったりとしていて足の先端部に力をかけることができる構造である。
また、踵を覆う甲部の外側上部に指が充分に入るループD(ヒールループとも言う。)が設けられており、装着時、高齢者や障害者が容易に手の指を挿入してシューズの踵部を引き上げることにより装着を容易にしている。指が入るつまみループDは、靴を履いたり、履かせたり、脱いだり、脱がせたりするのに便利である。
【0021】
図2に示す、踵を覆う甲部に組み込まれた反射材Eは夜ライトが当たると光って安全対策に役立つ。
【0022】
図3に示すカップインソールFは本発明のベルト付シューズ用のものであり、横アーチ16、縦アーチ17、衝撃吸収構造18を特徴としている。開帳足、外反母趾に対応できる付属品である。これらを使用したりして、靴底に足裏面をフィットさせると共に、歩行時足に加わる衝撃を吸収し、装着者の疲労を緩和することができる。
【0023】
図4に示すスペア中敷きFは、本発明のベルト付シューズ用のものであり、2〜3mmのEVA(エチレン酢酸ビニール共重合樹脂)でできており、衝撃吸収材として、および/または、足囲調整用としてセットしてある。
【0024】
図5は、シューズ本体部Aの全体的な特徴点として挙げた上記の(1)甲部に履き口からつま先にむけての縦長の開口部を説明する図面、すなわち本発明の靴ベロを開放すると靴ベロのない広い開放された履き口になる履き口からつま先にむけての縦長の開口部を有するシューズ本体部を説明する図面である。図中、1はシューズの甲部、2はシューズの履き口、3は甲部の開口部、4は甲部表に縫着したフック群部材、11はベルト裏に縫着したフック群部材、12はベルトの持ち手、13はベルトのゴム部分、14は2本のベルト、Bは靴ベロをそれぞれ指している。
上記の(1)について、甲部1の縦長の開口部3は、先端がMP関節ないしは中節骨のところまで届く切り込みで構成されている。このような大きく開く甲の設計ははきやすさ、はかせやすさを実現している。先端がMP関節ないしは中節骨のところまで届く切り込みで構成されている開口部3は、靴のもっとも基本的な機能である履きやすさを備え、かつ、脱ぎやすさの観点からも有利な効果を奏する形状と大きさを有している。このように、ベロを全開すると、甲部が足のMP関節ないしは中節骨のところまで、通常足囲を測る部分で足の巾の一番広いところまで、開くことができるので、非常に履きやすく、また、靴の着脱の際に、靴べらを用いたり、また足から靴をもぎ取るような労力は使わないで済む。
【0025】
以上の説明は、自力でシューズを脱ぎ履きする過程を説明したが、自力で脱ぎ履きができない高齢者や障害者に対しては、介添え者が上記過程を代行して行う。
また、高齢者および障害者を対象にして説明したが、年令や性別に関係なく広く適用することができる。
【0026】
図5に示された本発明のベルト付シューズは、二本ベルトタイプの態様であり、長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材11を有する2本のベルト14を有している。ベルト14は、持ち手12をゴムで構成することで着脱しやすさを実現する。および/または、ベルトにゴム13を入れることで、ベルトが締めやすくなり、しっかりフィットして歩きやすさを実現する。特にベルトの先にゴム素材を付けて、ベルトをつまみやすく、滑りにくくすることが出来る。さらに、ロゴ(AYUMI、出願人の登録商標)を凸で入れる(図7参照)ことで、さらにその効果を高めることが出来る。締め具合の調整はベルト14の甲部と噛合するフック群部材11のみの作業であるため高齢者等でも簡易に行うことができ、ベルトのゴム弾性(12及び/または13)で引っ張ったりゆるめたりするだけで簡単にサイズが調整できるので、片手で身体を支持し安定した状態で靴の着脱を行なうことができる。
【0027】
図6には、本発明のベルト付シューズのアウトソールを説明する図面(a)と、そのA−Aの断面図(b)とを示す。アウトソールは靴底の一番下の部分、地面に触れるところを言う。本発明では、EVAとゴムの組み合わせの特徴ある設計である。図中、8はシューズの底部、9はシューズの底部(アウトソール)のEVA部分、10はシューズの底部(アウトソール)のゴム部分を指している。アウトソールは耐久性に優れたゴムを用いるのが一般的であるが、EVAは軽量であり、爪先部はEVA素材とすることで、つまずきにくい設計となっている。断面図(b)に示されるように、接地面を広くした構造としている。
【0028】
図7には、ベルトを二本ベルトとしてフック機能で重合する重なりが幅広になるようにした態様を説明する図面が示されている。図中、2はシューズの履き口を指している。長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材を有し、開口部を閉じた靴ベロBの上から甲部を固定するベルト14の構成で、本発明の二本ベルトの靴は、装着したとき高い密着感を得ることができ、その安定感が高いことから快適な履き心地を提供することができる。ベルトが二本あることから、フック群部材に幅をもたせることができ、フック機能で重合する重なりが幅広になるようにしたことで、二本ベルトで幅広に甲をしっかり固定でき、しっかりフィットして歩きやすいからである。
【0029】
図8には、ベルトを幅広の一本ベルトとしてフック機能で重合する重なりが幅広になるようにした態様を説明する図面が示されている。
幅広の一本ベルトとしてフック機能で重合する重なりが幅広になるようにしたことを特徴とする。そうすることで、ワイドベルトで甲をしっかり固定でき、しっかりフィットして歩きやすい。また、一本ベルトではワンタッチで操作が可能である。すなわち、甲部を覆うベルト幅が広く、人(履手)の足の甲部分を上から支えると共に靴の開口部を閉じる働きがある靴ベロの上から、甲部を幅広に固定することで装着したときの安定感が高いことから快適な履き心地を提供することができる。
【0030】
図9に、本発明の靴ベロの二つの態様を示す。靴ベロは、人(履手)の足の甲部分を上
から支えると共に開口部を下から閉じる働きがある靴ベロの態様(A)と、人(履手)の
足の甲部分を上から支えると共に開口部を上から覆って閉じる働きがある靴ベロの態様
(B)とがある。甲のベロ(砂除)がAの内甲の中に納まるのが通常だが、Bのように外
甲側が外甲の上になっても機能的であり、デザインになっている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
前部が大きく開くので足の挿入が容易であり、しかも締め付けが1操作で行えるので、
高齢者でも容易に着用することができる。面ファスナーの噛合させる位置を選択できる自由度が大きく、しかも、ベロが全開すると開口部となるので、足の形状の如何を問わず着用することができる。非常にファッション性が高く、男女別々の木型を用い、男女別のデザイン(男らしく、女らしく)を採用し、色によってはフォーマルらしく、またはカジュアルにも変形が可能な靴であり、健康・介護用商品に求めるおしゃれ心を満足する豊かさがる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例のベルト付シューズ左足の左側側面図である。
【図2】本発明の一実施例のベルト付シューズ左足の背面図である。
【図3】本発明のベルト付シューズ用のカップインソールを説明する図面である。
【図4】本発明のベルト付シューズ用のスペア中敷きを説明する図面である。
【図5】本発明の靴ベロを開放すると靴ベロのない広い開放された履き口になる履き口からつま先にむけての縦長の開口部を有するシューズ本体部を説明する図面である。
【図6】(a)は本発明のベルト付シューズのアウトソールを説明する図面である。(b)はA−Aの断面図である。
【図7】ベルトを二本ベルトとしてフック機能で重合する重なりが幅広になるようにした態様を説明する図面である。
【図8】ベルトを幅広の一本ベルトとしてフック機能で重合する重なりが幅広になるようにした態様を説明する図面である。
【図9】甲のベロ(砂除)が、内甲の中に納まる態様(Aタイプ)と外甲側が外甲の上になる態様(Bタイプ)を説明する図面である。
【符号の説明】
【0033】
A シューズ本体部
1 シューズの甲部
2 シューズの履き口
3 甲部の開口部
4 甲部表に縫着したフック群部材
5 トウスプリング
6 トウボックス
7 足囲(3E)
8 シューズの底部
9 シューズの底部(アウトソール)のEVA部分
10 シューズの底部(アウトソール)のゴム部分
B 靴ベロ
C ベルト
11 ベルト裏に縫着したフック群部材
12 ベルトの持ち手
13 ベルトのゴム部分
14 2本のベルト
15 1本(ワイドタイプ)のベルト
D ループ
E 反射材
F カップインソール
16 横アーチ
17 縦アーチ
18 衝撃吸収構造
G スペア中敷き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲部にベルト裏側と噛合するフック群部材を少なくともその一部分に有し、靴ベロを開放すると靴ベロのない広い開放された履き口になる履き口からつま先にむけての縦長の開口部を有するシューズ本体部と、足の甲部分を上から支えると共に開口部を閉じる働きがある靴ベロと、長手方向の裏側に甲部と噛合するフック群部材を有し、開口部を閉じた靴ベロの上から甲部を固定するベルトとからなる、ベルト付シューズであって、前記甲部が幅広甲高でつま先の納まる部分にゆとりがあり、かつ、トウスプリングをつけたことを特徴とする広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
【請求項2】
前記甲部の開口部は先端がMP関節ないしは中節骨のところまで届く切り込みで構成されていることを特徴とする請求項1の広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
【請求項3】
上記ベルトが少なくとも持ち手がゴム製であることを特徴とする請求項1または2の広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
【請求項4】
上記ベルトが弾性帯であることを特徴とする請求項1または2の広い開放された履き口を有するベルト付シューズ。
【請求項5】
上記ベルトを二本ベルトとしてフック群部材生地に幅をもたせて、フック機能で重合する重なりが幅広になるようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの広い開放された履き口を有するベルト付シュー。
【請求項6】
上記ベルトを幅広の一本ベルトとしてフック群部材生地に幅をもたせて、フック機能で重合する重なりが幅広になるようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの広い開放された履き口を有するベルト付シュー。
【請求項7】
踵を覆う甲部の外側上部に指が充分に入るループを設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの広い開放された履き口を有するベルト付シュー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−188312(P2008−188312A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27414(P2007−27414)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(595019474)徳武産業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】