説明

広告部材およびこれを用いた電飾看板

【課題】限られた大きさの光源に対して、広告情報の輝度のみならず彩度を大幅に向上させて、視認性を改善することができる広告部材、およびそれを用いて構成された電飾看板を提供する。
【解決手段】第1の発明は、一方面に多数の略三角柱が略平行に配設されるとともに他面が略平滑面となされたプリズム様シートの略平滑面に、文字、図形等の広告情報が印刷により直接形成されてなる広告部材である。第2の発明は、少なくとも光源と拡散板とを具備する光源ユニットに対して、請求項1記載の広告部材がその印刷面を該拡散板に対向させるように配置されてなる電飾看板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電飾看板用の広告部材、およびそれを用いて構成された電飾看板に関する。
【背景技術】
【0002】
電飾看板の基本構造は、特許文献1に示すように、蛍光管などの光源を反射ケース内に数本配列し、ケース表面に設けられた広告パネルを拡散板を介して照射するものである。
【0003】
また、液晶表示のバックライトシステムにおいて輝度向上のために用いられるプリズムシートを広告看板に応用した例として、広告を表示した光透過フィルムの光源側にプリズムシートを配置して明るさ(輝度)を向上させる構造が提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
また、文字、色彩、模様を印刷したフィルムにおいてその広告文字、図形の表面を立体視用プリズムシートで被覆して表示を立体化する構造が知られている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2003−330394号公報、段落[0002]、第1〜12行
【特許文献2】特開2005−215181号公報、請求項12、段落[0055]、図6
【特許文献3】特開2007−207752号公報、請求項7、段落[0021]、[0060]
【特許文献4】実用新案登録第3105476号公報、請求項4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電飾看板は、広告パネルを拡散板を介して蛍光管で照射するというだけの構造のものであるので、広告パネルの輝度は光源である蛍光管の照射強度に依存するものであり、高輝度を得ようとすれば、例えば蛍光管の本数を増加するなどの設備面からの対応が必要であった。
【0006】
これに対して特許文献2および3の構造では、広告を表示した光透過フィルムの光源側にプリズムシートを配置しているので、プリズムシートの集光機能により広告表示の輝度向上に一定の効果が認められるものではあった。
【0007】
特許文献4の構造では、立体視用プリズムシートが広告表示の出光側に配置されているが、これは広告表示を光源によって照射するものではなく、広告表示の輝度を向上する効果は期待できるものではない。因みに、立体視用プリズムシートに関する詳細な説明がないため、その構造が不明であり、明細書の図4(b)および立体視効果を発現するとの記載からはレンチキュラーレンズシートを指すと考えられるものであった。
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑み、照射強度が限られた既存の光源に対して、広告情報の輝度を向上させるのみならず、彩度、即ち、色の鮮映さをも大きく向上させて、視認性を大幅に改善することができる広告部材、およびそれを用いて構成された電飾看板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1のものは、一方面に多数の略三角柱が略平行に配設されるとともに他面が略平滑面となされた光学的に無色透明なプリズム様シートの略平滑面に直接、文字、図形等の広告情報が光線透過可能に印刷形成されてなる広告部材である。
【0010】
本発明の第2のものは、少なくとも光源と拡散板とを具備する光源ユニットに対して、前記広告部材がその印刷面を該拡散板に対向させるように配置されてなる電飾看板である。
【0011】
なお、前記電飾看板において、前記広告部材と前記拡散板とが再剥離性の粘着剤層を介して積層されてなる態様が好ましく例示される。
【0012】
特許請求の範囲および明細書を通して、前後関係については、図1を基準とし、図1の左方すなわち電飾看板の表側(出光側)を前方とし、その逆方向を後方とする。
【0013】
第1の発明において、プリズム様シートの「略三角柱」とは、通常の三角柱のほか、三角柱の各頂部が集光性能を損わない範囲で横断面凸弧状に丸められたもの、および/または、三角柱間の谷部が集光性能を損わない範囲で横断面凹弧状に丸められたものであってもよいことを意味する。三角柱の頂部や谷部が丸められたものは、視野角が広くなる点で好ましい。
【0014】
プリズム様シートの「略平滑面」とは、プリズム様シートの他面が通常の平滑面であってもよいし、広告情報の形成に支障のない範囲で微細な凹凸面であってもよいことを意味する。
【0015】
多数の略三角柱が「略平行」に配設されるとは、視認性に影響しない範囲で略三角柱同士がほぼ平行であればよいことを意味する。
【0016】
プリズム様シートの材質は無色透明な有機材もしくは無機材であれば特に限定されない。無色透明な有機材としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が例示される。無色透明な無機材の代表例はガラスである。成形加工性、印刷適性、ハンドリング性等を考慮すれば、有機材から形成されるものが好ましい。
【0017】
また、略三角柱は基材シートと一体的に形成されてさえいればよく、単層構造、多層構造いずれでも構わない。多層の場合、各層を構成する材料の異同は問わない。略三角柱の形成方法としては、例えば、賦形ロールを利用する押出賦形、賦形金型を利用するプレス賦形、賦形型に重合性液状樹脂を注型して重合硬化させる重合賦形等が代表的に挙げられる。
【0018】
略三角柱の2つの斜面のなす角度、即ち、頂角は30〜150°、好ましくは約60〜120°の範囲である。30°未満では略三角柱の形成が困難であり、150°を超えると集光能力が低下する恐れがある。
【0019】
プリズム様シートの厚さは50μm以上、好ましくは90〜300μmである。この厚さが50μm未満であると、略三角柱の賦形が困難となったり、広告部材としたあとのハンドリング性に支障を生じたりすることがある。また、隣接する略三角柱同士は互いに隙間なく接していることが好ましく、かつ、頂部と頂部の間隔(谷部と谷部の間隔)、即ち、ピッチは小さい方が好ましい。具体的には、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が最も好ましい。ピッチが大きいと、三角柱の形状が視認できるようになって広告表示の品質が低下するからである。
【0020】
略三角柱の頂点と底部の距離は、略三角柱のピッチや頂角の大きさによって決定され、例えば、頂角が90°でピッチが100μmの場合は50μmとなる。
【0021】
プリズム様シートの略平滑面に広告情報を直接形成するための手段としては、汎用の印刷手段が適宜採用されればよく、特に限定されるものではない。印刷に先立ち、プリズム様シートの略平滑面にコロナ放電処理等の前処理を施すことも任意である。なお、印刷用のインクは光線を透過する必要があり、この条件を満たす限り、インクの選択にも何ら制約はない。
【0022】
第2発明による電飾看板は、少なくとも光源と拡散板とを具備する光源ユニットに対して、上記構成の広告部材がその印刷面を該拡散板に対向させるように配置されてなるものである。
【0023】
光源としては、発光ダイオードや蛍光管等が用いられる。光源は、拡散板の後方直下に配置される直下方式であってもよく、側方に置かれるエッジライト方式であってもよいが、後者は光源ユニットの厚さを小さくできる点で好ましい。なお、エッジライト方式の場合、光線の向きを拡散板の方向に導くために導光板が必要である。
【0024】
拡散板は、光線を拡散して、直下型光源の場合は光源自体の存在を、エッジライト方式で導光板がある場合はその印刷ドットパターンの形状が使用者に視認されないようにするものである。拡散板には従来公知の光拡散剤練込タイプまたはランダム凹凸加工タイプがある。このシートの厚さは限定されないが、通常10μm以上、好ましくは20〜300μmである。この厚さが10μm未満であると、十分な拡散性が得られないことがある。拡散板を構成する樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレートなどが例示される。光拡散剤としては、従来公知のものが適用でき、たとえば酸化チタン、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ・アルミナなどが例示される。光拡散剤の配合量は、透明な樹脂100重量部に対し、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。
【0025】
エッジライト方式の場合に用いられる導光板は、ガラス、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレートなどの無色透明性の良好な材料からなり、その後面に、光源からの光を出光面のどの位置からも均一に出光するよう乱反射を起こさせる印刷ドットパターンを施したものである。導光板の厚さその他は限定されない。
【0026】
光源ユニットの最後方には、通常、反射フィルムが配置されて、後方側に進む反射光や迷光等を反射して、光の有効利用がなされるようになっている。
【0027】
反射フィルムとしては、白色顔料を混入した樹脂板、発泡樹脂板、金属蒸着樹脂板、金属板など、光線を遮蔽する作用のあるフィルムであれば、制限なく適用できる。
【0028】
電飾看板は一面に開口部を有する箱型のハウジング内に上記光源ユニットと、光源を駆動する電材部品と、ハウジングの開口部に設けられる広告部材とから構成される。本発明においては広告部材の印刷面を拡散板に対向させて積層するために、該印刷面に再剥離性の粘着剤層を設ける。
【0029】
再剥離性の粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの粘着剤層の形成方法については、従来公知の方法が制限なく採用されればよい。また、粘着剤層形成後の広告部材を保管するため、粘着剤層表面をセパレータと呼ばれる離型処理表面を有する材料で仮接着しておくことが好ましい。
【0030】
そして、広告部材を再剥離性の粘着剤層を介して拡散板に積層する際には、上記セパレータを剥がしながら、両者の界面に空気を巻き込まないように貼り合わせることが肝要である。これは、気泡の存在により表示の品質が損なわれるためである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の電飾看板では、プリズム様シートがプリズム面を広告情報である印刷面に対して出光側すなわち反光源側に配置されているので、従来技術であるプリズム様シートが広告情報の光源側に配置されている電飾看板に比べ、高い輝度のみならず格段に彩度(色の鮮映さ)の向上が認められ、表示効果に優れたものとなる。
【0032】
また、広告部材は再剥離性の粘着剤層を介して拡散板に積層されるので、その着脱が極めて簡便であり、交換時の作業性が一段と向上するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
つぎに、本発明を具体的に説明するために、電飾看板の水平断面図である図1、図2に基づいて本発明の実施例を示す。
【0034】
電飾看板(1)のハウジング(2)(730mm×1030mm)内の後部内面に反射フィルム(11)が貼付され、その前方に導光板(3)が配置され、導光板(3)の左右両側に光源として発光ダイオード(4)が紙面に対して法線方向に直列状に配置されている(駆動源は図示せず)。導光板(3)の前方には拡散板(5)が配置されている。拡散板(5)の前方すなわちハウジング(2)の前端には本発明による広告部材(6)が配置されている。導光板(3)は、厚さ3mmのものであって、ポリカーボネート樹脂製であり、後面に乱反射用ドット印刷(図示せず)が施されている。反射フィルム(11)は、厚さ100μmのものであって、白色顔料(酸化チタン)20重量%を練り込んだ発泡ポリエステル樹脂製である。拡散板(5)は、厚さ3mmのものであって、炭酸カルシウム10重量%を練り込んだアクリル樹脂製である。
【0035】
広告部材(6)は、プリズム様シート(8)の略平滑面に文字や図形等の広告情報(9)が印刷により直接形成されたものであり、アクリル系の再剥離性の粘着剤層(10)を介して拡散板(5)に積層されている。プリズム様シート(8)は、厚さ150μmのものであって、ポリカーボネート樹脂からなるシートの一方面に多数の略三角柱(7)(2つの斜面のなす角度:90°、頂部間のピッチ100μm)が略平行に配設されるとともに他方の面が略平滑面となされたものである。
【0036】
上記構成の電飾看板を用いて広告を表示したところ、プリズム様シートが広告情報の光源側に配置されている従来の電飾看板に比べ、高い輝度に加えて彩度(色の鮮映さ)の格段の向上が認められた。
【0037】
これは、次のような理由によるものではないかと推察される。
【0038】
即ち、光源から照射される無色の光は印刷層を通過することで着色し、大半はプリズムで集光されることで輝度が向上する。このとき、一部の光はプリズム部分を通過することなく反転して後方部の拡散板等で再帰反射し、印刷層を繰り返し通過することになって彩度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例の電飾看板の中間省略水平断面図である。
【図2】実施例の電飾看板の前端部の拡大水平断面図である。
【符号の説明】
【0040】
(1) 電飾看板
(2) ハウジング
(3) 導光板
(4) 発光ダイオード(光源)
(5) 拡散板
(6) 広告部材
(7) 略三角柱
(8) プリズム様シート
(9) 広告情報
(10) 粘着剤層
(11) 反射フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面に多数の略三角柱が略平行に配設されるとともに他面が略平滑面となされた光学的に無色透明なプリズム様シートの略平滑面に直接、文字、図形等の広告情報が光線透過可能に印刷形成されてなる広告部材。
【請求項2】
少なくとも光源と拡散板とを具備する光源ユニットに対して、請求項1記載の広告部材がその印刷面を該拡散板に対向させるように配置されてなる電飾看板。
【請求項3】
広告部材と拡散板とが再剥離性の粘着剤層を介して積層されてなる請求項2記載の電飾看板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−103851(P2009−103851A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274662(P2007−274662)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】