説明

広範囲定濃度粒子発生システム

粒子発生システムは、エアロゾル発生器と、排気希釈器と、エアロゾル希釈器と、を備えている。排気希釈器は発生したエアロゾルを受け付けて、当該エアロゾルを所望の初期濃度に希釈する。エアロゾル希釈器は当該エアロゾルを所望の初期濃度の0〜100%の範囲の濃度に更に希釈する。エアロゾル希釈器はエアロゾルを希釈するためにミニサイクロンを備えている。粒子発生システムは計測器を校正するために様々な濃度の単分散又は多分散エアロゾルを供給するように構成されていてもよい。本システムは初期濃度の0〜100%の範囲で定濃度を提供することができる。ミニサイクロンにより本システムがコンパクトになり、本システムは持ち運び可能であってもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子発生システム及び粒子計測器を校正することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子計測器は、大気中、特定の環境下及び燃焼機関内等の粒子状物質レベル(量及び数)を検出するために広く適用されている。これらの計測器が正確に機能することを確実にするために、様々な定濃度のエアロゾルによる頻繁な校正が極めて必要である。
【0003】
これまで、噴霧器やプロパンバーナ等のエアロゾル発生器は、粒子を発生させるために広く使用されてきた。同様に、様々な濃度に粒子を希釈するために多様なタイプの希釈器が適用されてきた。しかしながら、希釈比の幅は狭く、0〜100%の幅の濃度は出せなかった。
【0004】
これらエアロゾル発生器と希釈器の2つの技術を組み合わせることにより、校正用エアロゾルが粒子計測器を校正するために利用できる。エアロゾル発生器と希釈器は別個のユニットにあるので、これらユニットは所望の濃度のエアロゾルを発生するために正しく組み立てられなければならない。セットアップには多くのバリエイションが含まれ、当該セットアップの作業は時間がかかり非効率的である。結果として、校正された計測器により大きな不確実性がもたらされる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改良された粒子発生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明には、計測器を校正するために、既知の濃度の単分散又は多分散エアロゾルを発生させることが含まれる。好ましい実施態様においては、未処理のエアロゾルを希釈することにより未処理のエアロゾルの0〜100%の範囲で正確なエアロゾル濃度が利用できる。
【0007】
本発明に従って、広範囲定濃度粒子発生システムが、既知の特性を有する校正用エアロゾルを提供する。一面において、本発明は、エアロゾル発生器と、排気希釈器と、エアロゾル希釈器とを、単一のシステムに統合することを含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明を実施するための代表的な手法においては、排気希釈器が所望の初期濃度にエアロゾルを希釈する。エアロゾル希釈器は当該エアロゾルを更に初期濃度の0〜100%の範囲の濃度に希釈する。本発明によれば、エアロゾル希釈器のミニサイクロンはエアロゾルを混合するために使用され、排気希釈器とエアロゾル発生器から得られた未処理のエアロゾルを希釈する。当該サイクロンは粒子の損失を低減し、エアロゾル希釈器は正確な希釈比をもたらすので、所望の粒度範囲と同じ粒度分布における正確な濃度が、初期エアロゾル濃度の0〜100%の範囲で得られる。この特定の手法において、加えてサイクロンは大きな粒径の粒子を取り除く。そして結果として、このことが校正された計測器を誤作動から守る。従来型の混合用トンネルの代わりにミニサイクロンを使用することによって、希釈器の実際のサイズを小さくすることが可能となる。PIDループは、一定の希釈比と濃度が求められるとき、エアロゾル希釈器の希釈比を一定に制御する。
【0009】
エアロゾル発生器はほとんどの環境下で多分散エアロゾルを発生する。エアロゾル発生器で発生したエアロゾルを微分型静電分級器(DMA)等の粒度計測器に供給することにより、初期濃度の0〜100%の単分散エアロゾルが利用可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1及び図2に示すように、好ましい実施形態において、広範囲定濃度粒子発生システムは、エアロゾル発生器10と、エアロゾル調節ユニット12と、中和装置14と、高性能微粒子フィルタ(HEPA)16と、排気希釈器18と、エアロゾル希釈器20と、制御システム22と、を備えている。当該システムはまた、適当な吸引源、無粒子圧縮空気等も備えている。図1及び図2は、それぞれ多分散及び単分散エアロゾルのシステムのフロー概略図を示す。
【0011】
図1において、エアロゾル発生器10は、液体溶剤を圧縮空気と霧化させるか、又は、プロパン若しくはディーゼル燃料をバーナで燃焼させるか、又は、その他の手段によって、エアロゾルを発生する。使用される発生器の種類は、校正対象の計測器やそれらの用途によって決定される。例えば、計測器が粒子の数密度を測定する凝縮型粒子計数器である場合は、発生器としては噴霧器が好適である。
【0012】
エアロゾルが調節ユニット12に流入した後、水又は液滴又は蒸気は除去される。そして、エアロゾルは中和装置14に進入する。排気希釈器18で必要とされる流れがエアロゾル発生器10で発生する流れより少ない場合は、ニードル弁15を調節することによって、余分な流れがHEPAフィルタ16(ここでエアロゾル中の粒子は除去される。)から排出され得る。ある環境下では、発生器10が排気希釈器18にとって充分な流れを発生していない場合、流れはHEPAフィルタ16(ここで大気中の粒子は除去される。)を通って排気器18に吸い込まれる。HEPAフィルタ16の吸気口が開いている状態では、エアロゾルの流れの圧力は安定化される。
【0013】
中和装置14では、エアロゾルはボルツマン平衡になるように帯電される。結果として、粒子の静電荷によって引き起こされる粒子の損失が低減される。エアロゾルは排気希釈器18で所望の濃度に希釈される。排気器18からの一部の流れはエアロゾル希釈器20に進入する。エアロゾルの大部分は排出される。
【0014】
エアロゾル希釈器20での希釈比が1:1の場合、排気希釈器18からのエアロゾルの濃度は計測器24(校正済み)で測定される。この数値は、エアロゾルの初期濃度としてコンピュータ22に記録され保存される。当該コンピュータから所望の割合の濃度を入力することにより、コンピュータと制御ソフトウェア中のPIDループがエアロゾル希釈器20を所望の希釈比に制御する。100%濃度はエアロゾルの希釈を行わないことを意味し、0%濃度は計測器24(校正済み)へ流入するエアロゾルが無いことを意味する。
【0015】
図2において、中和装置14から流出してきたエアロゾルの流れは、排気希釈器18に直接接続される代わりに微分型静電分級器(DMA)26に接続される。DMA26は、一定の電圧で作動することにより単分散の粒子を出力することができる。単分散エアロゾルは排気希釈器18に流入し、排気希釈器18は、DMA26からのエアロゾルが所望より高いか又は低い間は、DMA26からの流れを排出するか又は補うように機能する。これらの顕著な違いを除いては、単分散エアロゾルに対するシステムの運転は、多分散エアロゾルに対するシステムの運転と同じである。
【0016】
図3は、排気希釈器18のフロー概略図をより詳細に示す。当該フロー概略図は、排気装置30と、オリフィス32と、圧力調整器34と、圧力計36と、HEPAフィルタ38と、を備えており、更に、無粒子圧縮空気及び副流路も備えている。
【0017】
排気装置30は無粒子圧縮空気によって運転される。圧縮空気が排気装置30を通って流れると、排気装置30の吸気口側に真空が発生する。当該真空は、中和装置14又はDMA26から当該排気装置へのエアロゾルの流れを吸い込む。エアロゾルは当該排気装置中で直ちに無粒子圧縮空気と均一に混合される。排気装置30からの混合物の大部分は排出され、混合物のごく一部がエアロゾル希釈器に流入する。
【0018】
特定のサイズのオリフィス32により、圧縮空気の圧力を調節することにより異なる希釈比が得られる。ほとんどの環境下で、圧縮空気の圧力が大きくなるほど希釈比が高くなる。言い換えれば、圧縮空気の圧力が低くなるほど希釈比が低くなる。
【0019】
オリフィス32のサイズは、排気装置30での希釈比を調節する他の主要な要因である。オリフィスのサイズが大きいほど、小さな希釈比が得られる。言い換えれば、より高いエアロゾルの濃度が得られる。オリフィスのサイズが小さいほど、大きな希釈比と低いエアロゾル濃度が得られる。
【0020】
多分散エアロゾルが要求される場合は、排気希釈器30はエアロゾルを中和装置14から直接受け取る。中和装置の上流にあるHEPAフィルタ16及びニードル弁15(図1)は、余分な流れを排出するか又は吸い込むことにより、排気希釈器への流れの適正量を確保し得るので、HEPAフィルタ38は栓40で閉じるべきである。
【0021】
単分散エアロゾルが要求される場合は、中和装置14からのエアロゾルは微分型静電分級器(DMA)26へ進入する(図2)。MDA26は一定のカラム電圧で作動することによって単一のサイズの粒子を選択する。カラム電圧は特定の粒子サイズと結びついている。加えてMDA26は一定の空気流を出力する。この流れは排気希釈器18に必要とされるよりも多いか又は少なくてもよい。
【0022】
引き続いて図3を参照すると、排気希釈器のHEPAフィルタ38に接続されている栓40を外すことにより、排気希釈器への流れが自動的に調節され得る。例えば、DMAが排気希釈器に充分な流れを供給できないとき、HEPAフィルタ38によって濾過された大気が進入してDMAからのエアロゾルと混ざり合う。すなわち、DMAが排気希釈器に必要とされるよりより多量の流れを供給する場合、DMAからの余分な流れはHEPAフィルタ38を通って排出される。結果として、排気希釈器での希釈比の調節はDMAの性能に影響を与えない。
【0023】
図4は、エアロゾル希釈器のフロー概略図をより詳細に示す。これは、マスフローコントローラ60と、マスフローコントローラ62と、ミニサイクロン64と、吸引ポンプ66と、を備えている。
【0024】
排気希釈器からのエアロゾルはエアロゾル希釈器20に進入し、ミニサイクロン64で無粒子圧縮空気と均一に混ざり合う。2.5μmより大きい粒子はサイクロン64で取り除かれて、サイクロン64は計測器(校正済み)を大きなサイズの粒子により引き起こされる誤作動から守る。希釈空気の流量と総流量は2つのマスフローコントローラ60、62によって制御される。コンピュータのソフトウェアとハードウェアは、所望の希釈比又はエアロゾル濃度を得るために、これらの流量を制御する。既知の流量のエアロゾルが計測器24(校正済み)へ進入する。余分な流れは吸引ポンプ66によって排出される。
【0025】
以下の方程式は希釈比と濃度の演算を示す。
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、Qtotalflowrateはフローコントローラを通過した総流量であり、Qinstrumentは計測器(校正済み)への確定された流量であり、Qdilutionairは希釈空気の流量であり、Crawは排気希釈器からのエアロゾル濃度であり、Drはエアロゾル希釈器での希釈比であり、Cは所望の濃度であり、pは0〜100%の割合の濃度である。上記の流量は全て標準状態又は同じ規定状態におけるものである。
【0028】
100%濃度にするためには、希釈空気の流れは0である。結果として、排気希釈器からの未処理のエアロゾルはサイクロンへ進入する。0%濃度のエアロゾルを計測器(校正済み)に取り込ませるには、上記方程式においてQdilutionairがQtotalflowrate+Qinstrumentと同じか大きくなくてはならない。結果として、エアロゾルはエアロゾル希釈器に進入しない。
【0029】
エアロゾルが定濃度であることが要求される場合は、エアロゾル希釈器での希釈比は一定でなくてはならない。PIDループ(図1及び図2)は希釈比を一定に制御するために構築されている。希釈比の設定値又は濃度の割合を実際の値と比較することにより、PIDループが希釈空気の流量を調節する。結果として、一定の希釈比が維持される。
【0030】
図5は、70でエアロゾル希釈器の他の設計例を示す。臨界流量オリフィス72とマスフローメータ74が図4に示されたマスフローコントローラ62と置き換わっている。これは総流量制御においてマスフローコントローラと同じ機能をもたらす。臨界流量オリフィス72のサイズを変えることにより、異なる総流量が得られる。
【0031】
本発明の実施形態が図示され記述されたが、これらの実施形態が本発明のあらゆる可能な形態を図示し記述することは意図されていない。むしろ、本明細書において使用された用語は、限定よりむしろ説明のための用語であり、本発明の本質と要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に従って校正のための多分散エアロゾルを供給する広範囲定濃度粒子発生システムのフロー概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態に従って校正のための単分散エアロゾルを供給する広範囲定濃度粒子発生システムのフロー概略図を示す。
【図3】図3は、排気希釈器を示す。
【図4】図4は、エアロゾル希釈器を示す。
【図5】図5は、エアロゾル希釈器の他の設計例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生器と、
前記エアロゾルを受け付けて当該エアロゾルを所望の初期濃度に希釈する排気希釈器と、
希釈されたエアロゾルを受け付けて当該エアロゾルを前記所望の初期濃度の0〜100%の範囲の濃度に更に希釈するエアロゾル希釈器と、を備えていて、
前記エアロゾル希釈器は、前記エアロゾルを希釈するためのミニサイクロンを備えている粒子発生システム。
【請求項2】
更に、前記エアロゾル発生器と前記排気希釈器との間にあり、発生したエアロゾルから蒸気を除去する調節ユニットを備えている請求項1記載のシステム。
【請求項3】
更に、前記エアロゾル発生器と前記排気希釈器との間にあり、前記エアロゾルをボルツマン平衡になるよう帯電させる中和装置を備えている請求項1記載のシステム。
【請求項4】
更に、前記排気希釈器が必要とする流れに応じて、前記エアロゾル発生器からの流れがそのフィルタから排出され得るか、又は、流れがそのフィルタを通って前記排気希釈器に引き込まれ得るように、大気と前記排気希釈器との間の流れを調整する高性能微粒子フィルタを備えている請求項1記載のシステム。
【請求項5】
更に、エアロゾル希釈器に対して希釈比を制御するPIDループを備えている請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記PIDループは、前記希釈比を一定に制御する請求項5記載のシステム。
【請求項7】
更に、前記エアロゾル発生器から発生した前記エアロゾルを受け付けて、前記排気希釈器により受け付けられるための単分散エアロゾルを生産する粒度計測器を備えている請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記粒度計測器は、微分型静電分級器である請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記エアロゾル発生器は、前記排気希釈器により受け付けられる多分散エアロゾルを発生する請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記エアロゾル希釈器が、更に、
粒子を含まない前記エアロゾルを希釈するために前記ミニサイクロンに接続する第1のマスフローコントローラと、
吸引ポンプと、
前記ミニサイクロンを前記吸引ポンプに接続する第2のマスフローコントローラと、
前記第2のマスフローコントローラと前記ミニサイクロンとの間にあり、計測器に接続するための排気口と、を備えている請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記エアロゾル希釈器が、更に、
粒子を含まない前記エアロゾルを希釈するために前記ミニサイクロンに接続する第1のマスフローコントローラと、
吸引ポンプと、
前記ミニサイクロンと前記吸引ポンプとの間にあるマスフローメータ及び臨界流量オリフィスと、
前記第2のマスフローコントローラと前記ミニサイクロンとの間にあり、計測器に接続するための排気口と、を備えている請求項1記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−503507(P2009−503507A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523943(P2008−523943)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/027666
【国際公開番号】WO2007/015803
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】