説明

広角指向性アンテナ

【課題】薄型板状アンテナにおいて指向性を主面に垂直な方向から主面内方向まで広角度とすること。
【解決手段】誘電体基板10の主面である第1面11に形成され、その第1面に垂直な方向に指向性を有するアンテナ素子20と、第1面に平行な第2面12において、アンテナ素子の少なくとも下方領域を含む領域において面状に形成されたグランド層30とにより構成されるアンテナ領域を有する。アンテナ領域と誘電体基板の側面との間におけるグランド層が形成されていない領域に設けられ、主面に平行な方向に指向性を有する一対の第1導体線41と第2導体線42とからなるダイポールアンテナとを有する。これにより、指向性を主面に垂直な方向、及び、主面に平行な方向に拡大させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状のアンテナであっても、指向特性を基板の主面に垂直な方向から主面に平行な方向までを含む広角度とした広角指向性アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
指向性の広角化を実現する手法として、下記特許文献1に開示の技術が知られている。同公報では、それぞれ異なる方向に指向するように角度を異ならせて配置した複数のホーンアンテナを備えたアンテナモジュールが提案されている。このようなアンテナモジュールでは、例えば、高いアンテナ利得が求められる方向には狭いビーム幅が、広範囲の検知領域が求められる方向には広いビーム幅がそれぞれ必要となる。そこで、複数のアンテナについて、高いアンテナ利得よりも広範囲の検知領域が求められる方向に配したアンテナは、開口面を小さくすることによりビーム幅を広くし、広範囲の検知領域よりも高いアンテナ利得が求められる方向に配したアンテナは、開口面を大きくすることによりビーム幅を狭くしている。
【0003】
また、下記特許文献2に開示の技術は、漏れ波アンテナの上に、スロットを有した誘電体板を設けたり、パッチアンテナ又はダイポールアンテナを有した誘電体板を設けることで、指向性を制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49691号公報
【特許文献2】特開2007−81825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の開示の技術では、±90度以上にも指向性を形成できるが、アンテナが立体的になり、奥行き方向の長さが大きくなってしまうため、小型の平面アンテナのような薄型構造では実現できない。また、特許文献2に開示の技術では、誘電体基板上に形成されているため、±90度を越えて指向性利得を得ることは困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、薄型の面状アンテナにおいても、主面に垂直な方向から主面に平行な方向まで、さらには、主面に平行な方向よりも、主面の正面に対して反対側の反垂直方向にも指向性の主軸が向けられる広角度範囲に渡る指向性を得ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本第1の発明は、誘電体基板と導体とを有する広角指向性アンテナにおいて、誘電体基板の主面である第1面に形成され、主として第1面に垂直な方向に指向性を有するアンテナ素子と、第1面に平行な第2面において、アンテナ素子の少なくとも下方領域を含む領域において面状に形成されたグランド層とにより構成されるアンテナ領域と、アンテナ領域と誘電体基板の側面との間におけるグランド層が形成されていない領域に設けられ、主として主面に平行な方向に指向性を有する一対の第1導体線と第2導体線とから成るダイポールアンテナと、を有し、指向性を主面に垂直な方向、及び、主面に平行な方向に拡大させたことを特徴とする。
【0008】
主として主面に平行な方向に指向性を有するとは、指向性が最大となる主軸が主面に平行となる場合の他、主軸の方位ベクトルが、第1導体線と第2導体線との誘電体基板の厚さ方向の間隔に依存した主面に垂直な成分を有していても良いことを意味する。すなわち、主面に平行な方向に対して、主面に垂直の方向(前方、後方の方向を含む)に、第1導体線と第2導体線の上記間隔に比例した角度だけ傾斜していても良い。本発明の広角指向性アンテナは、電磁波を放射するアンテナでも、電磁波を受波するアンテナであっても良い。アンテナ素子の構成や形状は任意である。パッチアンテナや、特許文献2に開示の漏れ波アンテナであっても良い。アンテナ素子は、誘電体基板の主面に垂直な方向に主軸を有する指向性を持つアンテナ素子であれば任意である。また、ダイポールアンテナは、ダイポール機能を有するものであれば、その形状は任意である。
【0009】
本発明において、第1導体線と第2導体線とは、誘電体基板の側面の方向に伸びた給電/受電線部と、給電/受電線部に連続して屈曲の向きが相互に反対となるようにL字形状に屈曲されて、アンテナとして機能するダイポール線部とを有するものとしても良い。第1導体線と第2導体線とは、誘電体基板の異なる面に形成されていても、同一面に形成さていても良い。
【0010】
また、ダイポール線部に平行に、ダイポール線部から離れた位置に、外部回路に接続されない線状の導体からなる指向性制御線が形成されていても良い。指向性制御線は、第1導体線のダイポール線部と同一面に形成されていても、第2導体線のダイポール線部と同一面に形成されていても良いし、それらのダイポール線部とは異なる面に形成されていても良い。指向性制御線には、電磁波を誘導する導波器、電磁波を反射する反射器などの機能を有した線路を用いることができる。指向性制御線が用いられる場合において、主として主面に平行な方向に指向性を有するとは、指向性が最大となる主軸が主面に平行となる場合の他、主軸の方位ベクトルが、第1導体線のダイポール線部と第2導体線のダイポール線部との中点から、指向性制御線の中点に向かうベクトルの、誘電体基板の厚さ方向の成分に依存した主面に垂直な成分を有していても良いことを意味する。
【0011】
また、給電/受電線部はレッヘル線路としても良い。レッヘル線路は平行線路の一種である。
また、誘電体基板は多層構造であって、第1面に平行で、第1面及び第2面とは異なる第3面に形成され、グランド層の第3面上の正射影位置に形成された面状の第2グランド層を有していても良い。
また、第2導体線は第2グランド層に接続されていても良い。
さらに、第2導体線は第3面上に形成され、第2グランド層に接続されていても良い。 また、第1導体線は、第1面に形成されていても良い。
また、第1導体線は第1面に形成され、第2導体線はグランド層に接続されていても良い。
【0012】
また、誘電体基板は多層構造であって、第1導体線は、第1面に平行で、第1面及び第2面とは異なる第4面に形成されていても良い。
また、誘電体基板は多層構造であって、第1導体線及び第2導体線は、第1面に平行で、第1面及び第2面とは異なる第3面に形成され、給電/受電線部はコプレーナ線路を構成するようにしても良い。
また、誘電体基板は、単層又は多層構造であって、指向性制御線は、導波器又は反射器であって、誘電体基板の最上面、又は、最下面に形成されているようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
アンテナ素子により誘電体基板の主面に垂直な方向に主軸を有した指向性を形成することができる。また、第1導体線の有するダイポール線部、及び第2導体線の有するダイポール線部により、誘電体基板の主面に平行な方向に主軸を有した指向性を形成することができる。この結果、アンテナ素子とダイポールアンテナとを切り換えることで、主軸が誘電体基板の主面に垂直な方向に向いた指向性と、主軸が主面に平行な方向を向いた指向性との間で、切り換え制御することができる。さらに、アンテナ素子とダイポールアンテナによる送電又は受電電力比を連続的又は段階的に調整することにより、主軸を誘電体基板の主面に垂直な方向から、主面に平行な方向までの広い範囲で、連続的又は段階的に指向性を制御することができる。このようにして、本発明は、薄型板状のアンテナであっても、主軸の範囲として90度の広い範囲の指向性を実現することができる。この結果、薄型のアンテナで広い範囲への電波の放射、受信の可能なアンテナとすることができるため、車両の周囲を監視するレーダなどに搭載した場合に、搭載する位置の自由度が向上する。
【0014】
また、導波器又は反射器などの指向性制御線を、誘電体基板の各面の何れかに設けることで、ダイポール線部と指向性制御線との位置関係により、指向性が最も強くなる主軸を誘電体基板の主面に平行の方向から、垂直な方向(正負両方)に傾斜させることができる。特に、誘電体基板の主面の前方とは反対側に主軸を傾斜させた場合には、指向性の範囲をより広く拡大することができる。また、ダイポール線部と指向性制御線とを、異なる面に形成することで、誘電体基板の実効的な誘電率を大きくすることができる結果、アンテナをより小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の具体的な実施例1に係る広角指向性アンテナの構成図。
【図2】実施例1の広角指向性アンテナの指向性を示した特性図。
【図3】本発明の具体的な実施例2に係る広角指向性アンテナの構成図。
【図4】本発明の具体的な実施例3に係る広角指向性アンテナの構成図。
【図5】本発明の具体的な実施例4に係る広角指向性アンテナの構成図。
【図6】実施例4の広角指向性アンテナの指向性を示した特性図。
【図7】本発明の具体的な実施例5に係る広角指向性アンテナの構成図。
【図8】実施例5の広角指向性アンテナの指向性を示した特性図。
【図9】本発明の具体的な実施例6に係る広角指向性アンテナの構成図。
【図10】本発明の具体的な実施例7に係る広角指向性アンテナの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
本実施例は、本発明の最も簡単な構造の例である。実施例1に係る広角指向性アンテナ1の構成を図1に示す。直方体薄板形状の誘電体基板10は、主面(表面)である第1面11と、誘電体基板10の裏面であって、第1面に平行な第2面12とを有している。第1面11には矩形形状のパッチアンテナとして機能する薄膜導体から成るアンテナ素子20が形成されている。アンテナ素子20の1辺は、管内波長λ/2である。また、第2面12の一部の領域には、矩形面状の薄膜導体から成るグランド層30が形成されている。グランド層30は、アンテナ素子20の第2面12への正射影を内部に包含する大きさ及び位置に形成されている。そして、アンテナ素子20とグランド層30は外部の信号源50に接続されている。アンテナ素子20とグランド層30とでパッチアンテナ(アンテナ領域)が構成され、信号源50から供給された信号により、電磁波が空間に放射される。なお、本アンテナ1を受信アンテナとする場合には、信号源50は、外部の受信回路である。
【0018】
また、第1面11には、薄膜導体から成る第1導体線41が形成されており、第2面12には、グランド層30の側辺30aに接続する薄膜導体から成る第2導体線42が形成されている。グランド層30の側辺30aと第2面12の側辺12aとの間には、グランド層30が形成されていない領域が存在する。第2導体線42は、第2面12のこの領域において形成されている。そして、第2導体線42は、グランド層30の側辺30aから第2面12の側辺12aに向かい、P2点において、側辺12aに平行にL字形状に屈曲している。グランド層30の側辺30aから屈曲点P2までが、第2導体線42の給電/受電線部421となる。給電/受電線部421の長さは、管内波長λ/4以上の長さを有している。また、屈曲P2点において折り曲げられ、側辺12aに平行な線部分が、ダイポール線部422を構成している。
【0019】
また、第1面11には、信号源50に接続される第1導体線41が形成されており、その第1導体線41は、第2面12のグランド層30が形成されていない領域の上部において、屈曲点P1において、L字状に第1面11の側辺11aに平行に屈曲されている。側辺11aと12aは、誘電体基板10の側面16の長方形における一対の長辺である。信号源50から屈曲点P1までが、第1導体線41の給電/受電線部411となり、側辺11aに平行な部分が第1導体線41のダイポール線部412となる。グランド層30が形成されていない領域及びその上部における第1導体線41の給電/受電線部411と第2導体線42の給電/受電線部421は平行である。この平行の意味は、第1面11と第2面12の面上の同一位置において、誘電体基板10の厚さ方向に間隔を有した平行である場合と、面内方向において間隔を有した平行である場合と、その両者を有した場合を含むものである。ダイポール線部412、422は、それぞれ、管内波長λ/4であり、一対のダイポール線部412、422が、ダイポールアンテナを構成する。、ダイポール線部412、422は、アンテナ素子20の中心Qから管内波長λ以上、離れている。
【0020】
また、第1面11には、ダイポール線部412から第1面11の側辺11a方向に管内波長λ/4以上だけ離れた位置に、ダイポール線部412に平行に、薄膜導体で形成された線状の指向性制御線である導波器60が形成されている。導波器60の長さは、管内波長λ/2より短い。また、ダイポール線部412、422の全長の中心点と導波器60の長さの中点とを結ぶ線分は、ダイポール線部412、422及び導波器60に垂直である。
【0021】
この構成のアンテナ1は、図2に示す指向性を有している。アンテナ素子20とグランド層30とで構成されるパッチアンテナは、誘電体基板10の主面である第1面11に垂直な方向(z軸)に電力が最大となる主軸が向く指向性を有している。また、一対のダイポール線部412、422で構成されるダイポールアンテナは、第1面11の面内方向(x軸)に主軸が向く指向性を有している。このことから、本アンテナ1において、パッチアンテナにのみに給電/受電すれば、主として誘電体基板10の主面に垂直な方向の指向性を得ることができ、ダイポールアンテナのみに給電/受電すれば、主として主面内方向の指向性を得ることができる。また、パッチアンテナとダイポールアンテナとの給電/受電の電力比を調整することにより、誘電体基板10の主面に垂直な方向(z軸)から、主面内方向(x軸)に指向性の主軸を連続して変化させることができる。このような実施例のアンテナ1によると、薄い板状アンテナで、面内方向の指向性成分も得ることができるので、非常に薄型の広角指向性アンテナを実現することができる。
【0022】
本実施例において、導波器60は、ダイポールアンテナの指向性の主軸を、誘電体基板10の主面に垂直な上方向(+z軸方向)にx軸からの角度θだけ変位させるものである。したがって、指向性は面内方向から多少だけ上向きの方向に指向性の主軸がθだけ傾くことになる。また、導波器60を誘電体基板10の第2面12に設けると、指向性は面内方向から多少だけ下向きの方向(−z軸方向)に指向性の主軸を傾斜させることができる。さらに、この導波器60に代えて、長さが管内波長λ/2以上の薄膜導体からなる指向性制御線である反射器としても良い。反射器を図2の導波器60の位置に設けると、ダイポールアンテナの指向性の主軸は、誘電体基板10の主面に垂直な下方向(−z軸方向)に変位する。逆に、反射器を面内方向の位置関係を図2と同一にして、第2面12に設けた場合には、ダイポールアンテナの指向性の主軸を、誘電体基板10の主面に垂直な上方向(+z軸方向)に変位させることができる。一対のダイポール線部412、422に対する導波器60や反射器の距離や、誘電体基板10の厚さを調整することにより、誘電体基板10の主面内方向の指向性を、垂直方向に傾斜させる傾斜角を調整することができる。また、導波器60と反射器とを同時に用いることで、さらに、大きく指向性の主軸の方位を変化させることができる。このようにして、所望の指向性を得ることができる。
【0023】
なお、本発明においては、導波器60や反射器は、指向性を主軸を誘電体基板10の主面内方向から垂直な方向に若干傾斜させる機能を有するものであるので、必ずしも必須のものではない。
【実施例2】
【0024】
次に、実施例2のアンテナ2の構成を図3に示す。実施例1と同一の機能を有する部分には、同一の符号が付されている。本実施例では誘電体基板10が第1層101と第2層102の2層構造に構成されている。第1層101の上面である主面が第1面11であり、第2層102の下面が第2面12である。第1層101の第1面11にアンテナ素子20と第1導体線41の給電/受電線部411とダイポール線部412が形成されている。第2層102の第2面12にはグランド層30が形成されている。そして、第1層102と第2層102との界面である第3層13に、グランド層30の第3層13上への正射影と同一形状同一位置に第2グランド層32が形成され、その第2グランド層32の側辺32aに接続して、第2導体線42の給電/受電線部421とダイポール線部422とが形成されている。また、第1層101の第1面11には、ダイポール線部412から波長λ/4以上だけ離れた位置に、線状の導体線から成り、長さが管内波長λ/2より短い導波器60がダイポール線部412、422に平行に形成されている。本実施例のアンテナ2は、実施例1の誘電体基板10の第2面に、下面にグランド層30の形成された誘電体板(第2層102)を接合したものに等しい。グランド層30と第2グランド層32は、誘電体基板10に形成されたビアホールにより導通され、共に信号源50のグランドに接続されている。この構成においても、実施例1と同一の変形例が適用できる。また、実施例1と同一の作用効果を奏する。
【実施例3】
【0025】
実施例2において、第2グランド層32と第2導体線42とが形成される面を、図4に示すように、グランド層30が形成される面と、入れ換えても良い。すなわち、図4の場合には、第1層101の上面である主面が第1面11であり、第1層101と第2層102との界面が第2面12であり、第2層102の下面が第3面13となる。第1層101の第1面11にアンテナ素子20と第1導体線41の給電/受電線部411とダイポール線部412が形成されている。第1層102と第2層103の界面である第2面12にはグランド層30が形成されている。そして、第2層102の下面である第3面13に、グランド層30の第3層13上への正射影と同一形状同一位置に第2グランド層32と、その第2グランド層32の側辺32aに接続して、第2導体線42の給電/受電線部421とダイポール線部422とが形成されている。また、第1層101の第1面11には、ダイポール線部412から波長λ/4以上だけ離れた位置に、線状の導体線から成り、長さが管内波長λ/2より短い導波器60がダイポール線部412、422に平行に形成されている。本実施例のアンテナ2は、実施例1の誘電体基板10の中段の第2面にグランド層30を設けたものに等しい。グランド層30と第2グランド層32は誘電体基板10に形成されたビアホールにより導通しており、共に信号源50のグランドに接続されている。この構成においても、実施例1と同一の作用効果を奏し、同一の変形例が適用できる。また、導波器60に代えて、反射器を設けても良いのは前実施例と同様である。
【実施例4】
【0026】
次に、実施例4のアンテナ2の構成を図5に示す。実施例1、2、3と同一の機能を有する部分には、同一の符号が付されている。本実施例は誘電体基板10を3層構造にして、実施例3の第2層102の下にもう一つの第3層103を形成したものと、第1導体線41の形成面が異なることを除き、同一である。第1層101の上面である主面が第1面11であり、第1層101と第2層102との界面が第2面12であり、第2層102と第3層103との界面が第3面13であり、第3層103の下面が第4面14となる。第1層101の第1面11にはアンテナ素子20のみが形成されている。第1層102と第2層103の界面である第2面12にはグランド層30が形成されている。第2層102と第3層103との界面である第3面13には、グランド層30の第3層13上への正射影と同一形状同一位置に第2グランド層32が形成され、その第2グランド層32の側辺32aに接続して、第2導体線42の給電/受電線部421とダイポール線部422とが形成されている。
【0027】
また、第3層103の下面である第4面14には、第1導体線41の給電/受電線部411とダイポール線部412が形成されている。さらに、第4面14には、ダイポール線部412から波長λ/4以上だけ離れた位置に、線状の導体線から成り、長さが管内波長λ/2より短い導波器60がダイポール線部412、422に平行に形成されている。そして、グランド層30と第2グランド層32は誘電体基板10に形成されたビアホールにより導通しており、それらは信号源50のグランドに接続されている。また、誘電体基板10は、アンテナ素子20の直下に、第1面11から第4面14に貫通するスルーホール22が形成されている。そして、アンテナ素子20と信号源50は、スルーホール22の中をグランド層30及び第2グランド層32と絶縁分離された状態で貫通する信号線21により接続されている。
【0028】
本実施例のアンテナ4は、実施例3の構造に、第4層103を設けて、第4面14に第1導体線41を形成し、アンテナ素子20に対する給電/受電は、第4面14の側からスルーホール22の中の信号線21により行うようにしたものである。また、第1導体線41と第2導体線42の有する一対のダイポール線部421、422のアンテナ素子20から見た上下関係は、実施例3とは逆であり、導波器60は、アンテナ素子20の形成されていない第4面14に形成されている。したがって、本実施例での指向性の主軸は、主面内方向(x軸)から、主面に垂直な第1面11から第4面14に向かう方向(−z軸方向)に傾斜する。指向性特性は、図6に示すものとなる。この実施例においても、導波器60に代えて、反射器を設けても良いのは前実施例と同様である。
【実施例5】
【0029】
実施例4では、導波器60は、アンテナ素子20が設けられた誘電体基板10の上面の主面である第1面11とは反対側にある下面である第4面14に形成されている。これに対して、実施例5のアンテナ5では、図7に示されているように、導波器60をアンテナ素子20の形成された第1面11に形成している。これにより、本実施例での指向性の主軸は、主面内方向(x軸)から、主面に垂直な第4面14から第1面11に向かう方向(+z軸方向)にθだけ傾斜する。指向性特性は、図8に示すものとなる。この実施例においても、導波器60に代えて、反射器を設けても良いのは前実施例と同様である。
【実施例6】
【0030】
本実施例のアンテナ6は、実施例5において、導波器60に代えて、アンテナ素子20の形成された第1面11に反射器62を設けたものである。図9に示されているように、反射器62は線状の薄膜導体で形成されており、長さは、管内波長λ/2より長い。また、反射器62はダイポール線部412と422の全長の中点と、長さ方向において同一位置に形成されている。また、反射器62は、グランド層30の側辺30aとダイポール線部412、422との間に形成されている。この実施例では、反射器62により電磁波が反射されることから、本実施例での指向性の主軸は、主面内方向(x軸)から、主面に垂直な第1面11から第4面14に向かう方向(−z軸方向)にθだけ傾斜する。指向性特性は、図6に示すものと同様なものとなる。
【実施例7】
【0031】
次に、実施例7のアンテナ7の構成を図10に示す。上記実施例と同一の機能を有する部分には、同一の符号が付されている。 本実施例は、第1導体線41、第2導体線42、グランド層30、第2グランド層32の上限関係が実施例4の関係とは異なる。また、本実施例は、電体基板10を3層構造にして、実施例2の図3に示す構成に第3層103を設けた構造に近いものである。第1層101の上面である主面が第1面11であり、第1層101と第2層102との界面が第3面13であり、第2層102と第3層103との界面が第2面12であり、第3層103の下面が第4面14となる。第1層101の第1面11にはアンテナ素子20と、第1導体線41の給電/受電線部411とダイポール線部412が形成されている。第1層102と第2層103の界面である第3面13には第2グランド層32と、その第2グランド層32の側辺32aに接続して、第2導体線42の給電/受電線部421とダイポール線部422とが形成されている。第2層102と第3層103との界面である第2面12には、グランド層30が形成されている。第2グランド層32は、グランド層30の第3層13上への正射影と同一形状同一位置に形成されている。
【0032】
また、第3層103の下面である第4面14には、第1導体線41の給電/受電線部411の一部も形成されている。さらに、第4面14には、ダイポール線部412から波長λ/4以上だけ離れた位置に、線状の導体線から成り、長さが管内波長λ/2より短い導波器60がダイポール線部412、422に平行に形成されている。そして、グランド層30と第2グランド層32はビアホールにより導通しており、それらは信号源50のグランドに接続されている。また、誘電体基板10は、アンテナ素子20の直下と、アンテナ素子20の形成されていない領域とに、第1面11から第4面14に貫通するスルーホール22、23とが形成されている。そして、アンテナ素子20と信号源50は、スルーホール22の中を、グランド層30及び第2グランド層32と絶縁分離された状態で貫通する信号線21により接続されている。また、スルーホール23の中には、第1導体線41の給電/受電線部411が、グランド層30及び第2グランド層32と絶縁分離された状態で、貫通しており、第4面14の側から、第1導体線41のダイポール線部412に、給電されるように構成されている。
【0033】
また、第1導体線41と第2導体線42の有する一対のダイポール線部421、422のアンテナ素子20から見た上下関係は、実施例4とは逆であり、導波器60は、アンテナ素子20の形成されていない第4面14に形成されている。したがって、本実施例での指向性の主軸は、主面内方向(x軸)から、主面に垂直な第1面11から第4面14に向かう方向(−z軸方向)にθだけ傾斜する。指向性特性は、図6に示すものと同様な特性となる。この実施例においても、導波器60に代えて、反射器を設けても良いのは前実施例と同様である。その他の変形例は、前述の全ての実施例で記載した変形例が適用可能である。
【0034】
[変形例]
誘電体基板が多層構造であって、グランド層30に第2導体線42が接続されれていない実施例2−7において、第2グランド層32を設ける代わりに、第2導体線42をその部分に延長したものであっても良い。また、これらの実施例において、第1導体線41と第2導体線42とは、同一面上に形成しても良い。この場合には、給電/受電線411、421は平行とり、ダイポール線部412、422が互いに逆向きとなる。このようにダイポール線部412、422に対して、コプレーナ線路で給電、受電しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、薄型の板状の広角指向性アンテナとすることができる。例えば、車両の4隅に設けて、車両の周囲の障害物を監視するレーダのアンテナに用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
10…誘電体基板
20…アンテナ素子
41…第1導体線
42…第2導体線
30…グランド層
32…第2グランド層
411、421…給電/受電線
412、422…ダイポール線部
60…導波器
11…第1面
12…第2面
13…第3面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と導体とを有する広角指向性アンテナにおいて、
前記誘電体基板の主面である第1面に形成され、主として第1面に垂直な方向に指向性を有するアンテナ素子と、前記第1面に平行な第2面において、前記アンテナ素子の少なくとも下方領域を含む領域において面状に形成されたグランド層とにより構成されるアンテナ領域と、
前記アンテナ領域と前記誘電体基板の側面との間における前記グランド層が形成されていない領域に設けられ、主として前記主面に平行な方向に指向性を有する一対の第1導体線と第2導体線とから成るダイポールアンテナと、
を有し、
指向性を前記主面に垂直な方向、及び、主面に平行な方向に拡大させたことを特徴とする広角指向性アンテナ。
【請求項2】
前記第1導体線と前記第2導体線とは、前記誘電体基板の前記側面の方向に伸びた給電/受電線部と、給電/受電線部に連続して屈曲の向きが相互に反対となるようにL字形状に屈曲されて、アンテナとして機能するダイポール線部とを有することを特徴とする請求項1に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項3】
前記ダイポール線部に平行に、前記ダイポール線部から離れた位置に、外部回路に接続されない線状の導体からなる指向性制御線が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項4】
前記給電/受電線部はレッヘル線路としたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項5】
前記誘電体基板は多層構造であって、前記第1面に平行で、前記第1面及び前記第2面とは異なる第3面に形成され、前記グランド層の前記第3面上の正射影位置に形成さた面状の第2グランド層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項6】
前記第2導体線は前記グランド層に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項7】
前記第2導体線は前記第3面上に形成され、前記第2グランド層に接続されていることを特徴とする請求項5記載の広角指向性アンテナ。
【請求項8】
前記第1導体線は、前記第1面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項9】
前記誘電体基板は多層構造であって、前記第1導体線は、前記第1面に平行で、前記第1面及び前記第2面とは異なる第4面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項10】
前記誘電体基板は多層構造であって、前記第1導体線及び前記第2導体線は、前記第1面に平行で、前記第1面及び前記第2面とは異なる第3面に形成され、前記給電/受電線部はコプレーナ線路を構成することを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか1項に記載の広角指向性アンテナ。
【請求項11】
前記誘電体基板は、単層又は多層構造であって、前記指向性制御線は、導波器又は反射器として機能し、前記誘電体基板の最上面、又は、最下面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の広角指向性アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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