説明

床フレーム高さ調整ナットの埋設方法および床フレーム高さ調整ナット保持具

【課題】ユニット式建物の建物ユニットが据え付けられる布基礎の所定位置に床フレーム高さ調整ナットを正確に埋設することのできる床フレーム高さ調整ナットの埋設方法を提供する。
【解決手段】互いに対向する二つの型枠7,7の間に床フレーム高さ調整ナット4を鉛直に保持する治具として、二つの型枠7,7の間に配置されるナット支持部材2と、ナット支持部材2の両端部2a,2bを型枠7の上端部に固定する一対の固定具3,3とを備え、固定具3がナット支持部材2の両端部2a,2bに取り外し可能に設けられた治具を用いて、布基礎の所定位置に床フレーム高さ調整ナット4を埋設する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物の建物ユニットが据え付けられる布基礎の所定位置に建物ユニットの床フレーム高さを調整するための床フレーム高さ調整ナットを埋設する床フレーム高さ調整ナットの埋設方法とこれに使用される床フレーム高さ調整ナット保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
各建物ユニットが方形状に形成された床フレームの四隅に柱を立設して直方体形状に形成されたユニット式建物は、通常、現場でコンクリート打ちされた布基礎の上面に建物ユニットを据え付けて構築される。しかし、布基礎上に設置された建物ユニットの水平度が許容範囲から外れていたり、あるいは布基礎上に隣接して設置された二つの建物ユニットの間に高さ方向の組合せ誤差が生じていたりすると、ユニット同士をボルトなどによって接合することができなくなるなどの不都合が生じることがある。
【0003】
そこで、ユニット式建物の建物ユニットを布基礎上に据え付けてユニット式建物を構築する際には、布基礎の所定位置に有底円筒状の床フレーム高さ調整ナットとシース管とを埋設しておき、建物ユニットから下方に突出するアンカー部材をシース管に挿入するとともに、建物ユニットの床フレーム高さを床フレーム高さ調整ナットに螺合する床フレーム高さ調整ボルトにより調整した後、シース管にグラウト材を充填して建物ユニットを布基礎上に据え付けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−81141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、布基礎の所定位置に床フレーム高さ調整ナットを埋設するときに、従来においては、床フレーム高さ調整ナットの埋設位置を目視により確認しながら床フレーム高さ調整ナットを手作業により1個ずつ布基礎に埋設しているため、床フレーム高さ調整ナットの埋設位置精度が低いという問題があった。
なお、特許文献1にはシース管と床フレーム高さ調整ナットを布基礎の所定位置に埋設するための治具が開示されているが、床フレーム高さ調整ナットの埋設位置がシース管の埋設位置から遠く離れている場合(例えば床フレーム高さ調整ナットの埋設位置が布基礎の基礎梁中間部や独立基礎にある場合)には、特許文献1に開示された治具を用いて床フレーム高さ調整ナットを布基礎の所定位置に埋設することは不可能である。
本発明は、上述した問題点に着目してなされたものであって、ユニット式建物の建物ユニットが据え付けられる布基礎の所定位置に床フレーム高さ調整ナットを正確に埋設することのできる床フレーム高さ調整ナットの埋設方法と床フレーム高さ調整ナット保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る床フレーム高さ調整ナットの埋設方法は、ユニット式建物の建物ユニットが据え付けられる布基礎の所定位置に前記建物ユニットの床フレーム高さを調整するための床フレーム高さ調整ナットを埋設する方法であって、前記布基礎のコンクリート打設空間を形成する複数の型枠のうち互いに対向する二つの型枠の間に前記床フレーム高さ調整ナットを鉛直に保持する治具として、前記二つの型枠の間に配置されるナット支持部材と、該ナット支持部材の両端部を前記型枠の上端部に固定する一対の固定具とを備え、前記固定具が前記ナット支持部材の両端部に取り外し可能に設けられた治具を用い、前記ナット支持部材により前記床フレーム高さ調整ナットを前記二つの型枠の間に鉛直に支持した後、前記コンクリート打設空間にコンクリートを打設して前記床フレーム高さ調整ナットを前記布基礎の所定位置に埋設するようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る床フレーム高さ調整ナット保持具は、ユニット式建物の建物ユニットが据え付けられる布基礎の所定位置に前記建物ユニットの床フレーム高さを調整するための床フレーム高さ調整ナットを埋設するときに使用される床フレーム高さ調整ナット保持具であって、前記布基礎のコンクリート打設空間を形成する複数の型枠のうち互いに対向する二つの型枠の間に前記床フレーム高さ調整ナットを鉛直に支持するナット支持部材と、該ナット支持部材の両端部を前記型枠の上端部に固定する一対の固定具とを備え、前記固定具が前記ナット支持部材の両端部に取り外し可能に設けられていることを特徴とする。
本発明に係る床フレーム高さ調整ナット保持具において、前記ナット支持部材は、前記床フレーム高さ調整ナットに螺合する床フレーム高さ調整ボルトを介して前記床フレーム高さ調整ナットを鉛直に支持するための複数のボルト挿入孔を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、床フレーム高さ調整ナットを布基礎の所定位置に埋設するときに床フレーム高さ調整ナットの埋設位置を目視により確認しながら床フレーム高さ調整ナットを手作業により1個ずつ埋設しなくて済むので、床フレーム高さ調整ナットを布基礎の所定位置に正確に埋設することができる。
また、固定具を共通のパーツとして使用できるので、多種類の床フレーム高さ調整ナット保持具を用意することなく床フレーム高さ調整ナットを布基礎の所定位置に埋設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る床フレーム高さ調整ナット保持具を示す図である。
【図2】図1に示される床フレーム高さ調整ナット保持具を用いて床フレーム高さ調整ナットを布基礎の所定位置に埋設する方法の一例を示す図である。
【図3】図1に示されるナット支持部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明に係る床フレーム高さ調整ナットの埋設方法と床フレーム高さ調整ナット保持具について説明する。
図1は、本発明に係る床フレーム高さ調整ナットの埋設方法に用いられる床フレーム高さ調整ナット保持具の一例を示す図である。この図1に示される床フレーム高さ調整ナット保持具1は厚さが140mmの布基礎中間部に床フレーム高さ調整ナット4を埋設するときに使用されるものであって、ナット支持部材2と一対の固定具3,3とを備えている。
【0011】
ナット支持部材2は布基礎のコンクリート打設空間を形成する複数の型枠7のうち互いに対向する二つの型枠7,7の間に床フレーム高さ調整ナット4を鉛直に支持するものであり、長方形状に形成された金属板の長手方向両端部をL字状に折り曲げて形成されている。
また、ナット支持部材2は床フレーム高さ調整ナット4と螺合する床フレーム高さ調整ボルト5が挿入される複数のボルト挿入孔6を有しており、これらのボルト挿入孔6は床フレーム高さ調整ボルト5の雄ねじ部外径より大きく且つ床フレーム高さ調整ナット4の外径より小さい直径で形成されている。
【0012】
固定具3は型枠7の上端部にナット支持部材2の両端部2a,2bを固定するものであり、それぞれ取付け用ねじ8によりナット支持部材2の両端部2a,2bに取り外し可能に設けられている。
また、固定具3はコ字状に折り曲げられた金属板9を有しており、ナット支持部材2の両端部2a,2bは金属板9に形成されたスリット10を挿通して金属板9の上面側に配置されている。さらに、固定具3は型枠7の上端部に金属板9を固定するための固定ねじ11を有しており、この固定ねじ11は金属板9に形成された折曲片部9a,9bのうち型枠7の外側に配置される折曲片部9aに形成されたネジ孔に折曲片部9bに向けて螺挿されている。
【0013】
また、固定具3は金属板9の折曲片部9a,9bのうち型枠7の内側に配置される折曲片部9bとの間で型枠7の上端部を締付ける型枠締付板12を有しており、この型枠締付板12は固定ねじ11の先端部に設けられている。
図2は図1に示した床フレーム高さ調整ナット保持具1を用いて床フレーム高さ調整ナット4を布基礎の所定位置に埋設する方法を説明するための図であって、図1に示した床フレーム高さ調整ナット保持具1を使用して床フレーム高さ調整ナット4を布基礎の所定位置に埋設するには、図2の(a)に示されるように、ナット支持部材2の両端部2a,2bを一対の固定具3,3により型枠7の上端部に固定した後、ナット支持部材2のボルト挿入孔6に床フレーム高さ調整ボルト5を上方より挿入する。
【0014】
次に、ナット支持部材2のボルト挿入孔6に挿入された床フレーム高さ調整ボルト5のねじ部に床フレーム高さ調整ナット4を螺嵌した後、図2の(b)に示されるように、型枠7により形成されたコンクリート打設空間にコンクリート13を所定位置まで打設する。そして、コンクリート打設空間に打設されたコンクリート13が固化したならば、ナット支持部材2のボルト挿入孔6から床フレーム高さ調整ボルト5を取り外し、さらに、フレーム高さ調整ナット保持具1を型枠7の上端部から取り外すと、図2の(c)に示されるように、床フレーム高さ調整ナット4が布基礎の所定位置に埋設される。
【0015】
上述のように、床フレーム高さ調整ナット4を布基礎の所定位置に埋設するときに、互いに対向する二つの型枠7,7の間に床フレーム高さ調整ナット4を鉛直に保持する治具として、図1に示したフレーム高さ調整ナット保持具1を用いると、床フレーム高さ調整ナット4の埋設位置を目視により確認しながら床フレーム高さ調整ナット4を手作業により1個ずつ埋設しなくて済む。したがって、床フレーム高さ調整ナット4を布基礎の所定位置に正確に埋設することができる。
【0016】
また、床フレーム高さ調整ナット4を布基礎の所定位置に埋設するときに、互いに対向する二つの型枠7,7の間に床フレーム高さ調整ナット4を鉛直に保持する治具として、図1に示した治具1、すなわち型枠7の上端部にナット支持部材2を固定する一対の固定具3,3がナット支持部材2の両端部2a,2bに取り外し可能に設けられた治具1を用いることにより、固定具3を共通のパーツとして使用でき、たとえば、厚さが220mmの布基礎中間部に床フレーム高さ調整ナット4を埋設する場合には、図3(a)に示されるものをナット支持部材2として用いることができ、床フレーム高さ調整ナット4を内部独立基礎の所定位置に埋設する場合には、図3(b)に示されるものをナット支持部材2として用いることができる。また、床フレーム高さ調整ナット4を外部独立基礎の所定位置に埋設する場合には、図3(c)に示されるものをナット支持部材2として用いることができ、従って、多種類の床フレーム高さ調整ナット保持具を用意することなく床フレーム高さ調整ナット4を布基礎の所定位置に埋設することができる。
【0017】
さらに、互いに対向する二つの型枠7,7の間に床フレーム高さ調整ナット4を鉛直に保持する治具として、ナット支持部材2に形成されたボルト挿入孔6の直径が床フレーム高さ調整ボルト5の雄ねじ部外径より大きく且つ床フレーム高さ調整ナット4の外径より小さいものを用いることにより、布基礎のコンクリート打設空間にコンクリートを打設したときにナット支持部材2により保持された床フレーム高さ調整ナット4の上端部がボルト挿入孔6からナット支持部材2の上面側に浮き上がってしまうことがないので、布基礎の所定位置に床フレーム高さ調整ナット4を一定の深さで正確に埋設することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 床フレーム高さ調整ナット保持具
2 ナット支持部材
3 固定具
4 床フレーム高さ調整ナット
5 床フレーム高さ調整ボルト
6 ボルト挿入孔
7 型枠
8 取付け用ねじ
9 金属板
9a,9b 折曲片部
10 スリット
11 固定ねじ
12 型枠締付板
13 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット式建物の建物ユニットが据え付けられる布基礎の所定位置に前記建物ユニットの床フレーム高さを調整するための床フレーム高さ調整ナットを埋設する方法であって、
前記布基礎のコンクリート打設空間を形成する複数の型枠のうち互いに対向する二つの型枠の間に前記床フレーム高さ調整ナットを鉛直に保持する治具として、前記二つの型枠の間に配置されるナット支持部材と、該ナット支持部材の両端部を前記型枠の上端部に固定する一対の固定具とを備え、前記固定具が前記ナット支持部材の両端部に取り外し可能に設けられた治具を用い、
前記ナット支持部材により前記床フレーム高さ調整ナットを前記二つの型枠の間に鉛直に支持した後、前記コンクリート打設空間にコンクリートを打設して前記床フレーム高さ調整ナットを前記布基礎の所定位置に埋設するようにしたことを特徴とする床フレーム高さ調整ナットの埋設方法。
【請求項2】
ユニット式建物の建物ユニットが据え付けられる布基礎の所定位置に前記建物ユニットの床フレーム高さを調整するための床フレーム高さ調整ナットを埋設するときに使用される床フレーム高さ調整ナット保持具であって、
前記布基礎のコンクリート打設空間を形成する複数の型枠のうち互いに対向する二つの型枠の間に前記床フレーム高さ調整ナットを鉛直に保持するナット支持部材と、
該ナット支持部材の両端部を前記型枠の上端部に固定する一対の固定具とを備え、
前記固定具が前記ナット支持部材の両端部に取り外し可能に設けられていることを特徴とする床フレーム高さ調整ナット保持具。
【請求項3】
請求項2記載の床フレーム高さ調整ナット保持具であって、前記ナット支持部材が、前記床フレーム高さ調整ナットに螺合する床フレーム高さ調整ボルトを介して前記床フレーム高さ調整ナットを鉛直に支持するための複数のボルト挿入孔を有することを特徴とする床フレーム高さ調整ナット保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−168781(P2010−168781A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11397(P2009−11397)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【出願人】(000128038)株式会社エヌ・エス・ピー (33)