説明

床下排水配管システム

【課題】従来、屋内側でトイレを合流させると、管路内に負圧が発生して各排水設備の封水破壊を生じていた。また、この負圧発生を低コストで防ぐことが困難であった。
【解決手段】建物の床下において、建物内の各排水設備からの排水を複数の枝管を介して集水ヘッダ1に集水し、該集水ヘッダ1から排水主管4を介して屋外の排水マス5へ排水するにあたり、該集水ヘッダ1に接続される上流側排水主管4aと該屋外の排水マス5に接続される下流側排水主管4bとの間に落差を設け、45度Y継手3を介在させて45度に傾斜した流路および落差を形成し、又は45度Y継手の上流側で45度エルボ継手2個を接続して上下45度に傾斜させて流路および落差を形成し、該45度Y継手3のいずれかの接続部にトイレ汚水を建物基礎Aの屋内側で配管接続し、下流側排水主管4bが建物の基礎Aを貫通して屋外の排水マス5へ至る構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の床下に排水される配管システムに関する。より詳しくは、台所、風呂場、洗濯機、洗面所、手洗い等の屋内排水器具から排出される雑排水や、トイレから排出される汚水等を、建物の床下の配管から建物の基礎を貫通して屋外の排水マスに導き、更に公共マスへ排水する床下排水配管マスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建住宅や小規模集合住宅の屋内等で生じる排水は、台所、風呂場、洗濯機、洗面所、手洗い、トイレ等の屋内排水器具から排水管を介して屋外の排水マスへそれぞれ排水されていた。しかし、このような配管では建物の基礎を貫通する貫通孔をその数だけ開けることとなり基礎の強度低下という問題を抱えたいた。そこで、トイレ、洗面所、洗濯機、浴室、台所などの各種排水器具にて発生した排水を、ヘッダー(5個の90度大曲りY継手を管軸方向に短管を介して接着接続して構成されている)に集めてそこから排水主管を介して屋外の排水マスへ排水され、公共マスへと排水される排水システムが知られている。(特開2002−61247号)
【0003】
また、前記排水器具からの排水を排水枝管を介して集合マスに集水して、排水主管の下流側をバイパス管路付段差接合管路を介して屋外の排水マスへ排水され、公共マスへと排水される排水用床下配管設備が知られている。(特開2003−147826号)
上記特許文献では、一度に流入する排水が合流して管内に負圧を発生させないようにするため、通気弁やバイパス通気管を設けたり、内周面に螺旋状の案内板を形成した継手を介在させたり、排水主管を偏芯して接続したり、特別な継手を使用したり、などして、各排水器具での封水破壊が生じないようにしている。
【0004】
しかしながら、従来の施工では、通気弁やバイパス通気管を設けたり、内周面に螺旋状の案内板を形成した継手を介在させたり、排水主管を偏芯して接続したり、特別な継手を使用したりなどしているので、通気弁や特殊な継手が必要であり、別途にその配管工事をしなければならず、しかも、トイレ汚水の配管は別途にしなければならないなど、工事に手間を要し、施工に時間がかかる、引いてはコストアップに繋がるという不具合が生じていた。
【特許文献1】特開2002−61247号公報
【特許文献2】特開2003−147826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の不具合を解消するため鋭意検討の結果、従来から使用されている継手を用い、屋内側でトイレを合流させても、管路内に負圧を発生させることなく、各排水設備の封水破壊を防止し、施工工事が簡単で少ない時間で工事をおえることが出来、トータルコストを削減できる床下排水配管システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するための本発明の床下配管排水システムは、建物の床下において配管される床下排水配管システムであって、建物内の各排水設備からの排水を複数の枝管を介して集水ヘッダに集水し、該集水ヘッダから排水主管を介して屋外の排水マスへ排水するにあたり、該集水ヘッダに接続される上流側排水主管と該屋外の排水マスに接続される下流側排水主管との間に、45度Y継手を介在させて、45度に傾斜した流路および落差を形成し、該45度Y継手の接続部にトイレ汚水を建物基礎の屋内側で配管接続し、下流側排水主管が建物の基礎を貫通して屋外の排水マスへ排水することを特徴とする床下排水配管システムである。
また、建物の床下において配管される床下排水配管システムであって、建物内の各排水設備からの排水を複数の枝管を介して集水ヘッダに集水し、該集水ヘッダから排水主管を介して屋外の排水マスへ排水するにあたり、該集水ヘッダに接続される上流側排水主管と該屋外の排水マスに接続される下流側排水主管との間に、45度Y継手の上流側で45度エルボ継手2個を接続して上下45度に傾斜させて流路および落差を形成し、45度Y継手を介在させて、該45度Y継手の接続部にトイレ汚水を建物基礎の屋内側で配管接続し、下流側排水主管が建物の基礎を貫通して屋外の排水マスへ排水することを特徴とする床下排水配管システムである。
さらに、建物の屋内および屋外に通気構造を別途に設けることなく排水配管することを特徴とする床下排水配管システムである。
【0007】
本発明に係る集水ヘッダは、特開2003−147826号公報に示す空気アキュムレータの機能をもった集水マスあるいは単に複数の枝管接続部を有する集水マス、または特開2002−61247号公報、特開2006−77528号公報、2006−16779号公報、特開2006−16780号公報に示すヘッダあるいは筒状体の周囲に複数の枝管接続部を有するヘッダのいずれのものでもよい。
【0008】
本発明に係る集水ヘッダ、排水主管、継手等は、硬質塩化ビニル製が望ましく、枝管は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製の可とう管(コルゲート管)が望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床下排水配管システムによれば、45度Y継手を用いることで45度に傾斜した流路と落差を形成でき、エルボ継手を用いるだけでトイレ汚水が簡単に配管でき、建物の基礎Aの近傍の位置で配管できるので建物の基礎Aに沿わせて配管が可能であり、建物の基礎を貫通する貫通孔は一つで良いので建物の基礎を弱体化させる恐れもない。また、45度Y継手の接続方向を工夫するだけで、トイレからの配管に合わせて接続位置を選択することができ、接続工事を簡単にすることができる
また、汎用の45度Y継手やエルボ継手だけを用いて工事ができ、特殊な継手や通気弁を設ける必要もなくなるので工事が簡単で手間がかからず、工事費が安く、施工コストを節約できる。
さらに、トイレ汚水をスムーズに合流して流すことができ、上流側に負圧を発生させることもなく、各排水設備器具の封水破壊も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。
図1乃至図15は、本発明の実施形態に係る床下排水配管システムの配管状態を示す図である。図1乃至図3は実施例1図であり、図1は実施例1のA−A断面図、図2は実施例1の平面図、図3は実施例1のB−B断面図である。図4乃至図6は実施例2の図であり、図4は実施例2のA−A断面図、図5は実施例2の平面図、図6は実施例2のB−B断面図である。図7乃至図9は実施例3の図であり、図7は実施例3のA−A断面図、図8は実施例3の平面図、図9は実施例3のB−B断面図である。図10乃至図12は実施例4の図であり、図10は実施例4のA−A断面図、図11は実施例4の平面図、図12は実施例4のB−B断面図である。図13乃至図15は実施例5の図であり、図13は実施例5のA−A断面図、図14は実施例5の平面図、図15は実施例5のB−B断面図である。
図中、1は複数の枝管接続部と一つの排水主管接続部を有する集水マスであり、2は枝管でオレフィン樹脂製の可とう管(コルゲート管ともいう)であり、3は硬質塩化ビニル製の45度Y継手(下水排水に汎用されているDV継手)である。4は排水主管であり、4aは上流側排水主管、4bは下流側排水主管、5は屋外排水マス、6は屋外排水管、7はトイレからの管路であるトイレ汚水排水管である。
【実施例1】
【0011】
第1の実施形態を図1乃至図3を参照して説明する。
複数の枝管接続部1a,1b,1c,1d,1eと排水主管接続部1fとを有する集水マス1に、建物内の各排水設備(図示しない)からの枝管2がそれぞれ接続され、排水主管接続部1fに上流側排水主管4aが接続されている。上流側排水主管4aの下流は45度エルボ継手を介して45度Y継手3の上流側接続部3aに接続され、45度Y継手3の下流側接続部3bは45度エルボ継手を介して下流側排水主管4bに接続され、下流側排水主管4bが建物の基礎Aを貫通して90度エルボ継手や短管等を介して屋外排水マス5に接続されている。そして、45度Y継手3の枝管接続部3cにトイレからのトイレ汚水排水管7が90度エルボ継手等を介して接続されている。屋外排水マス5には公共マスに通じている屋外排水管6が接続されている。
【0012】
建物の基礎Aの屋内側近傍で、上流側排水主管4aと下流側排水主管4bとに落差を設け、45度Y継手3を上流側接続部3aと下流側接続部3bとが上下に45度の傾斜でかつ枝管接続部3cが水平方向になるように配置し、上流側排水主管4aが45度Y継手3の上流側接続部3aと下流側排水主管4bが45度Y継手3の下流側接続部3bとを45度エルボ継手を介して接続し、45度Y継手3の流路が45度に傾斜してかつ落差をもって接続され、45度Y継手3の枝側接続部3cにトイレからのトイレ汚水排水管7がエルボ継手を介して水平方向に後方側から雑排水の流れに合流するよう配管されている。
従って、トイレ汚水が上流側排水主管4aに逆流することなく、また雑排水とトイレ汚水が合流しても上流側に負圧が発生することなく、屋内の各排水設備器具での封水破壊を防止できると共に、下流側へスムースに流れる。
【実施例2】
【0013】
第2の実施形態を図4乃至図6を参照して説明する。
図に示すように第2の実施形態は45度Y継手の枝側接続部3cが45度上方へ向きになるように配置されて45度エルボ継手を介して上流側排水主管4aと接続され、45度Y継手の下流側接続部3bが下流側排水主管4bと接続され、上流側排水主管4aと下流側排水主管4bとに落差と45度に傾斜する流路を確保している。そして、45度Y継手の上流側接続部3aが複数の90度エルボ継手等を介してトイレ汚水排水管7と接続されている。
45度Y継手の上流側接続部3aと45度Y継手の下流側接続部3bがほぼ水平になるように縦方向に配置して45度Y継手の下流側接続部3bと下流側排水主管4bとの間に使用する45度エルボ継手を省くことによりトイレ汚水排水管7を建物の基礎Aに沿わせて配管する事ができる。他は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0014】
第3の実施形態を図7乃至図9を参照して説明する。
図に示すように第3の実施形態は、45度Y継手の上流側接続部3aが45度エルボ継手を介して上流側排水主管4aと接続され、45度Y継手の下流側接続部3bが45度エルボ継手を介して下流側排水主管4bと接続され、45度Y継手の枝側接続部3cが90度エルボ継手を介してトイレ汚水排水管7と接続されている。このように45度Y継手を配置して配管するとトイレ汚水排水管7を建物の基礎Aに沿わせて配管することができ、また45度Y継手の枝側接続部3cがベタ基礎Aの表面から突出しているのでトイレ汚水排水管をベタ基礎工事の後で施工することもできる。更に90度エルボ継手の首を振ることによりトイレ汚水排水管7の角度を合わせたり、あるいは図の反対側からのトイレ配管にも対応できる。他は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0015】
第4の実施形態を図10乃至図12を参照して説明する。
図に示すように第4の実施形態は、45度Y継手を横方向(水平方向)に配置し、45度Y継手3の上流側で45度エルボ継手2個を接続して上下45度に傾斜させて落差を形成し、該45度エルボ継手の上流側が上流側排水主管4aと接続され、該45度エルボ継手の下流側が45度Y継手3の上流側接続部3aと接続され、45度Y継手3の下流側接続部3bが下流側排水主管4bと接続されている。そして、45度Y継手3の枝側接続部3cが45度エルボ継手を介してトイレ汚水排水管7と接続されている。
なお、45度エルボ継手2個の接続は、両受エルボ2個を短管で接続するか、片受エルボ2個を接続するか、両受エルボ1個と片受エルボ1個を接続してもよい。
トイレ汚水排水管7(図示しない)が建物の基礎Aから離れた方向からきたときは、45度Y継手の枝側接続部3cに直接接続してもよく、また、図の反対の方向からトイレ汚水排水管7(図示しない)がきたときは、45度Y継手を反転させて接続することができる。
このように建物の基礎Aに沿わせて配管することも、建物の基礎Aから離れた位置で配管することも、反対側からの配管にも対応でき、トイレ汚水配管に自由度がある。他は実施例1と同様である。
【実施例5】
【0016】
第5の実施形態を図13乃至図15を参照して説明する。
図に示すように第5の実施形態は、45度Y継手3の枝側接続部3cが45度上方へ向き、45度Y継手3の上流側接続部3aと45度Y継手3の下流側接続部3bがほぼ水平になるように縦方向に配置され、45度Y継手3の上流側で45度エルボ継手2個を接続して上下45度に傾斜させて落差を形成し、該45度エルボ継手の上流側と上流側排水主管4aとが接続され、該45度エルボ継手の下流側と45度Y継手の上流側接続部3aとが接続され、45度Y継手3の下流側接続部3bが下流側排水主管4bと接続されている。そして、45度Y継手3の枝側接続部3cが90度エルボ継手を介してトイレ汚水排水管7と接続されている。他は実施例5と同様である。
【0017】
上記実施例1から5は、屋内側配管及び屋外側配管を同径で説明してるが、これに限定されるものではない。例えば、屋内側配管の口径を呼び径で75mmのパイプを使用し、下流側排水主管4bと接続されるパイプを異径エルボ継手を介在させて屋外側の配管を呼び径で100mmのパイプを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図2のA−A線断面図である。
【図2】本発明に係る床下排水配管システムの第1実施形態を示す平面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】図5のA−A線断面図である。
【図5】本発明に係る床下排水配管システムの第2実施形態を示す平面図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】図8のA−A線断面図である。
【図8】本発明に係る床下排水配管システムの第3実施形態を示す平面図である。
【図9】図8のB−B線断面図である。
【図10】図11のA−A線断面図である。
【図11】本発明に係る床下排水配管システムの第4実施形態を示す平面図である。
【図12】図11のB−B線断面図である。
【図13】図14のA−A線断面図である。
【図14】本発明に係る床下排水配管システムの第5実施形態を示す平面図である。
【図15】図14のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 集水ヘッダ
1a〜e 枝管接続部
1f 排水主管接続部
2 枝管
3 45度Y継手
3a 45度Y継手の上流側接続部
3b 45度Y継手の下流側接続部
3c 45度Y継手の枝側接続部
4 排水主管
4a 上流側排水主管
4b 下流側排水主管
5 屋外排水マス
6 屋外排水管
7 トイレ汚水排水管
A 建物の基礎(コンクリート製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下において配管される床下排水配管システムであって、建物内の各排水設備からの排水を複数の枝管を介して集水ヘッダに集水し、該集水ヘッダから排水主管を介して屋外の排水マスへ排水するにあたり、該集水ヘッダに接続される上流側排水主管と該屋外の排水マスに接続される下流側排水主管との間に、45度Y継手を介在させて、45度に傾斜した流路および落差を形成し、該45度Y継手のいずれかの接続部にトイレ汚水を建物基礎の屋内側で配管接続し、下流側排水主管が建物の基礎を貫通して屋外の排水マスへ排水することを特徴とする床下排水配管システム。
【請求項2】
建物の床下において配管される床下排水配管システムであって、建物内の各排水設備からの排水を複数の枝管を介して集水ヘッダに集水し、該集水ヘッダから排水主管を介して屋外の排水マスへ排水するにあたり、該集水ヘッダに接続される上流側排水主管と該屋外の排水マスに接続される下流側排水主管との間に、45度Y継手の上流側で45度エルボ継手2個を接続して上下45度に傾斜させて流路および落差を形成し、45度Y継手を介在させて、該45度Y継手のいずれかの接続部にトイレ汚水を建物基礎の屋内側で配管接続し、下流側排水主管が建物の基礎を貫通して屋外の排水マスへ排水することを特徴とする床下排水配管システム。
【請求項3】
建物の屋内および屋外に通気構造を別途に設けることなく排水配管することを特徴とする請求項1又は2記載の床下排水配管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−144355(P2008−144355A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329016(P2006−329016)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】