説明

床化粧材およびこの床化粧材の敷設構造

【課題】 床化粧材が受ける風の影響を最小限に抑えて床化粧材が捲れ上がるのを防ぐとともに、雨水等の排水を可能にして、安全性および意匠性の高い優れた床化粧材を提供する。
【解決手段】 床化粧材1には、側面を覆う風除板部材13が設けられている。この風除板部材13は透水性を有し、雨水等を排水することが可能となっている。そして、床面3に複数枚の床化粧材1を敷きつめて床2を構成するにあたっては、風除板部材13を備えた床化粧材本体11を、床2の外周縁部に配置することにより、風除板部材13が床化粧材1の下面側への風の流入を遮り、捲れ上がりを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダやバルコニー、屋上等の床面に敷設して使用する床化粧材およびその敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ベランダやバルコニー、屋上等に床材を敷設してデッキを形成する技術には、従来、係止溝を備えた固定基板を根太上に複数個ねじ止めするとともに、バルコニー等の寸法に合わせて切断した長尺のデッキ材の裏面側の突条を固定基板の係止溝に圧入嵌合するなどの構造が提案されていた。
【0003】
これに対し、近年では、例えば特許文献1に記載されているように、コンクリート等のスラブ上に床材を敷設して床面を覆う構成の床化粧材として、硬質合成樹脂材料を矩形状に成形した部材で、裏面側とスラブ面との間に排水空間を形成するための複数本の脚が一体形成されてなる床化粧材が提案されており、上面に樹脂またはタイル等の表面材を接着固定または一体成形した構造のユニット式床化粧材も実用化されている。
【0004】
このようなユニット式床化粧材は、バルコニーやベランダ等の屋外に敷設した場合、床化粧材の下面側(裏面側)に風が吹き込むと、敷設した床化粧材の全体が捲れ上がってしまうことがあった。そこで、このような捲れ上がりを解消するために、例えば特許文献2に記載されているように、タイルユニットを敷設して床面を形成する際に、その床面周囲の少なくとも一部に透水性開口を有する樹脂製フロアマットを敷設して風の影響を軽減するという、タイルユニットの敷設構造も提案されている。
【0005】
前記従来の床化粧材の敷設構造は、立ち上がり壁で囲まれたバルコニー等の床面に、表面材がタイル等の比較的重い床化粧材を敷設する場合にはある程度有効な手法となる。しかし、立ち上がり壁ではなく、手すりだけが設けられたバルコニーに、このような床化粧材を敷設した場合には、手すりを通り抜けた風が床化粧材の下面側に入り込んで床化粧材の全体が捲れ上がる、吹き上がり現象を起こしてしまうおそれがあった。また、このような問題は、高さがそれほどないパラペットが配設された屋上などに床化粧材を敷設する場合にも発生する可能性があった。
【0006】
また、かかる床化粧材の敷設作業にあたっては、専門の施工業者が作業をする場合もあるが、住宅等の小規模の建物においては専門の施工業者ではなく個人で敷設作業をする場合も考えられるため、その施工性のよさや、メンテナンスや掃除の際の床化粧材の取り外し作業のしやすさ等も配慮する必要があった。
【0007】
そこで、このような問題点を解消するために、特許文献3に記載されたような床化粧材も提案されている。この床化粧材は、図6に示すように、縦断面形が略コ字形の横長の床部材101を床化粧材10の端部に嵌め込んで、床化粧材10の下面に風が吹き込むのを防止するようになっている。また、床部材101には、下部に排水孔102が設けられており、床化粧材10の下部に流入した雨水等を排水孔102から排出できるようになっている。
【特許文献1】実開平5−85929号公報
【特許文献2】特開平7−10191号公報
【特許文献3】特開平10−115074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記床化粧材10は、床部材101に設けられた排水孔102の開口率や風の強さによっては、この排水孔102からも風が浸入しやすくなるおそれがあった。そこで、風の影響が強い場所では、床化粧材の下面側に風が入り込むおそれのあるこのような孔(開口)をできるだけ設けず、かつ、雨水等の排水性も兼ね備えた床化粧材の構造とすることが求められていた。
【0009】
本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、バルコニーやベランダ等の床面をユニット式の床化粧材を敷設して形成するにあたり、その床化粧材が受ける風の影響を最小限に抑えて床化粧材が捲れ上がるのを防いで、安全性および意匠性の高い優れたものとするとともに、雨水等の排水性も確保することのできる床化粧材およびその敷設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を達成するため、本発明は、床面に複数枚の床化粧材本体を敷きつめて床を構成する床化粧材において、前記床化粧材本体の側面には透水性を有する風除板部材が備えられていることを特徴とする。
【0011】
かかる特徴的構成を有する床化粧材によって、風除板部材が床化粧材本体の下面側へ風が吹き込むのを遮るので、捲れ上がったり浮き上がったりするのを防止でき、床化粧材が受ける風の影響を最小限に抑えることが可能になる。また、この風除板部材が透水性を有するので、床化粧材本体の下面側に雨水等が浸入しても、風除板部材を通して排水することができる。
【0012】
また、本発明は、前記床化粧材本体の裏面には複数本の脚部が設けられるとともに、前記風除板部材は床化粧床材本体の側面における少なくとも前記脚部の上端位置から下端位置までの高さ範囲を覆う大きさで形成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、床化粧材を敷設した床面を安定的に保持して、最小限の部材を添設して風による吹き上がり現象を抑えることが可能になる。
【0014】
本発明において、前記風除板部材は、透水性陶板、または陶磁器、ガラス、あるいは廃材等の破砕物に結合材を混練して成形固化させた板状体からなるものであることが好ましい。
【0015】
このような構成により、風除板部材は風を遮るとともに、雨水等の透過を許容することができるので、床化粧材本体の下面側への風の吹き込みの防止と雨水等の排水との両方を兼ね備えた構成となっている。
【0016】
また、本発明は、床面に複数枚の床化粧材本体を敷きつめて床を構成する床化粧材の敷設構造であって、少なくとも一側面に透水性を有する風除板部材が備えられて風の吹き込みを防止する床化粧材本体が、構成される床の外周縁部に配置されて、前記風除板部材が前記床の外周縁を覆うように構成されたことを特徴とする。
【0017】
これにより、隣接して敷設された床化粧材同士の側面に風除板部材が連続して床の外周縁部を覆い、風が吹き付けても側面が塞がれているので、下面側に風が吹き込むことがなくなり、床化粧材の捲れ上がりを防止する。また、床化粧材同士の連結部の隙間などから雨水等が床化粧材の下面側に僅かに入り込むことがあっても、風除板部材を通して床の外部へ雨水等を排水することが可能であり、長期間にわたって安定した床化粧材の敷設構造を維持することができ、風雨による影響を効果的に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように構成される本発明の床化粧材およびその敷設構造によれば、床化粧材を敷設することによって形成した床における風の影響を最小限に抑えて、床化粧材が捲れ上がったり浮き上がったりするのを防ぎ、床化粧材を安定的に保持しつつ、下面側へ浸入した雨水等を排水することも可能となって、耐久性、安全性および意匠性のいずれにも優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る床化粧材およびその敷設構造を実施するための最良の形態について説明する。
【0020】
本発明において、床化粧材1は住宅のベランダやバルコニー、テラスなどの屋外に設けられている床面3や屋上スラブなどに、複数枚を敷設して床2を構成するものである。この床化粧材1には、風の影響による吹き上がり現象を防止するために、風除板部材13が設けられている。かかる構成の床化粧材1および風除板部材13の形態には多数のバリエーションがあるが、そのうちのいくつかについて以下の実施例で示す。
【実施例1】
【0021】
本発明に係る床化粧材の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係るの床化粧材の一例を示す斜視図であり、図2は床化粧材本体の斜視図である。
【0022】
床化粧材1の床化粧材本体11は、例えば合成樹脂製の30cm角の基材11bの上面に表面化粧材11aを一体にした部材で形成されている。表面化粧材11aについては、図示しないが、例えば、合成樹脂材による約10cm角の連続模様で基材11bと一体に成形されたり、前記基材11bの上面に木質化粧材、レンガ、磁器タイル等の表面材を接着したりして形成されるなど、床化粧材1の表面意匠としてどのような形態であってもよい。また、この床化粧材本体11の裏面側には、複数本の脚部12が均等配置されて、基材11bに対して一体的に備えられている。床化粧材本体11には、その一側面または二側面に風除板部材13が設けられている。
【0023】
図示するように、風除板部材13は、床化粧材本体11の側面において、少なくとも脚部12間の隙間を覆うように、脚部12…12の側部に配設されており、床化粧材本体11の側面下半部を覆う大きさの板状体で形成されている。
【0024】
この風除板部材13は、床化粧材本体11の側面を遮蔽するとともに、透水性を有する材質からなる。かかる材質としては、例えば、ポリウレタンやポリエチレンなどの合成樹脂系材料を発泡成形したスポンジ材や、透水性陶板を用いることができる。また、適度な重量があれば風耐力を高めることができるので、風除板部材13の材質として、透水性陶板、陶磁器、陶板、ガラス、本石、ゴム、あるいは樹脂材、またはこれらの材質の廃材等を破砕した破砕物に、エポキシ系樹脂あるいはアクリル系樹脂等の結合材を混練して成形固化させた板状体を用いることも好ましい。
【0025】
かかる風除板部材13は、耐候性を有する接着剤やブチルテープ等の接着テープを用いて、床化粧材本体11の脚部12…12の側部に接着固定されている。風除板部材13は、床化粧材本体11の側面のうち、いずれか一面または隣り合う二面に配設されており、床面3に敷きつめたときの配置場所によって、風除板部材13を一枚備えた床化粧材1と、二枚備えた床化粧材1とを適宜選択して配置すればよい。
【0026】
すなわち、かかる床化粧材1の敷設構造は、図3に例示するような形態であることが好ましく、床面3に複数枚の床化粧材1を敷きつめて床2が構成される。床化粧材1は、図示しない雌雄連結部等で複数枚が互いに連結される。ここで、風除板部材13を一面または二面に備えた床化粧材1は、少なくとも、構成される床2の外周縁部に配置される。これにより、隣接する床化粧材1同士で風除板部材13が側面に連続することになり、その結果、風除板部材13は、床2全体に対してその外周縁を覆うものとなる。床2の内側に配置する床化粧材1には風除板部材13が備えられてなくともよい。
【0027】
また、構成される床2の外周縁部にある床化粧材1の裏面全体に風除板部材13が設けられてもよい。
【0028】
このような敷設構造により、風除板部材13で外周縁が覆われた床2(床化粧材1)は、風が吹き付けてもその側面が風除板部材13により塞がれているので、床2(床化粧材1)の下面側に風が吹き込むことがなくなり、床2(床化粧材1)の捲れ上がりを防止することができる。また、床化粧材1同士の連結部の隙間などから雨水等が下面側に僅かに浸入することがあっても、風除板部材13が透水性を有するので、雨水等は風除板部材13を透過して、床2の外部へ排出される。
【0029】
したがって、床化粧材1が捲れ上がったり浮き上がったりするのを防止することができるとともに、排水性も確保することができる。これにより、床化粧材1を長期間にわたって安定した敷設状態で維持することができ、風の影響により捲れ上がったり吹き上がったりするのを効果的に防止することが可能となって、安全性および意匠性に優れた床2を構成することができる。
【0030】
また、かかる床化粧材1は施工性も良好である。すなわち、床化粧材1にあらかじめ風除板部材13が備えられており、構成する床2の形状や大きさに合わせて、風除板部材13を備えた床化粧材1を床2の外周縁部に配設し、その内側には風除板部材13のない床化粧材を配設すればすむので、敷設作業も容易に行うことができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明に係る床化粧材の実施例2について図面を参照しつつ説明する。図4は本発明の実施例2に係る床化粧材を示す分解斜視図、図5は図4の床化粧材における風除板部材および支持部材を示す斜視図である。
【0032】
なお、以下に説明する実施例2の形態に係る床化粧材1は、床化粧材本体11の構成が前記実施例1とほぼ同様であり、風除板部材13に特徴を有するものであるので、この風除板の構成について詳細に説明し、他の部分については上記実施例1と共通の符号を用いて説明を省略する。
【0033】
この形態においては、床化粧材本体11の一側面に、床化粧材本体11とは別体で形成された支持部材14が添設される。風除板部材13は、この支持部材14に添設されている。
【0034】
図4に例示する床化粧材1の場合、支持部材14は、床化粧材本体11の上面に被さるカバー板部141と、カバー板部141の両端に垂設された略L字状の脚部142、142が側面視略コ字状をなすように一体化されて形成されており、床面3に安定して載置できるように構成されている。
【0035】
風除板部材13は、前記実施例1にて示した材質からなる板状体であり、床化粧材本体11の一側面の全体を覆う大きさで形成されている。そして、風除板部材13は支持部材14の脚部142、142の側面に接着固定されている。
【0036】
これにより、床面3に複数枚の床化粧材1を敷設して床2を構成し、外周縁部に風除板部材13を有する床化粧材1を配置することで、床2の外周縁部を風除板部材13で連続的に塞いだ敷設構造をとることができ、床化粧材1の下面側に風が吹き込むことがなくなり、床化粧材1の捲れ上がりを防止できる。また、風が床化粧材1の下面側に入り込むことがあっても、風除板部材13が外方へ開いて入り込んだ風を逃がすので、床化粧材1が捲れ上がったり浮き上がったりするのを防止できる。
【0037】
この場合、支持部材14に一体とされた風除板部材13は、支持部材14を床化粧材本体11の側面にあらかじめ嵌め込んで固定されていても、また施工現場にて必要数の床化粧材本体11の側面に支持部材14を嵌め込んで固定されてもよい。風除板部材13を備えた支持部材14を施工現場にて必要箇所に固定する場合は、構成する床2の外周縁部と内側とで共通の床化粧材本体11を用いることが可能になり好ましい。
【0038】
以上のように構成されることにより、床化粧材1の風除板部材13は、下面側に風が吹き込むのを遮り、雨水等が床化粧材1の下面側へ浸入したとしても風除板部材13を通して排水することができるので、床化粧材1の捲れ上がりや浮き上がりを防止しつつ排水性を確保することが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、住宅等の建物におけるバルコニーやベランダ等の風の影響を受けやすい床面に敷設して好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明に係るの床化粧材の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の床化粧材における床化粧材本体の斜視図である。
【図3】本発明に係る床化粧材の敷設構造の一例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る床化粧材の実施例2を示す分解斜視図である。
【図5】図4の床化粧材における風除板部材および支持部材を示す斜視図である。
【図6】従来例の床化粧材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 床化粧材
11 床化粧材本体
12 脚部
13 風除板部材
14 支持部材
141 カバー板部
142 脚部
2 床
3 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に複数枚の床化粧材本体を敷きつめて床を構成する床化粧材において、前記床化粧材本体の側面には透水性を有する風除板部材が備えられていることを特徴とする床化粧材。
【請求項2】
前記床化粧材本体の裏面には複数本の脚部が設けられるとともに、前記風除板部材は床化粧床材本体の側面における少なくとも前記脚部の上端位置から下端位置までの高さ範囲を覆う大きさで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の床化粧材。
【請求項3】
前記風除板部材は、透水性陶板、または陶磁器、ガラス、あるいは廃材等の破砕物に結合材を混練して成形固化させた板状体からなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の床化粧材。
【請求項4】
床面に複数枚の床化粧材本体を敷きつめて床を構成する床化粧材の敷設構造であって、少なくとも一側面に透水性を有する風除板部材が備えられて風の吹き込みを防止する床化粧材本体が、構成される床の外周縁部に配置されて、前記風除板部材が前記床の外周縁を覆うように構成されたことを特徴とする床化粧材の敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−291551(P2008−291551A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139274(P2007−139274)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】