説明

床暖房敷設用カ−ペット

【課題】床暖房装置のフローリングの上にカーペットを敷いて床暖房装置を作動させる場合に、カーペットを敷設していない部分のフローリング温度とカーペット敷設部分のフローリング温度との温度差を3.5〜7.5℃の間に保ち、フローリングに割れを生じさせず、ソフトな肌触りがあり、横になったりして快適に寛げる床暖房敷設用カ−ペットを提供する。
【解決手段】表皮層と接着層と裏打ち層からなるカーペットであって、該表皮層はパイル糸と基布からなり、パイル糸に公定水分率が8%以上の繊維を45質量%以上有し、該接着層は樹脂組成物又はゴム組成物ラテックス100質量部に対して、無機材料を50質量部以上含有するバッキング剤からなり、該裏打ち層はビスコース繊維不織布からなり、該カーペット全体の熱伝導率が0.07Kcal/m・h・℃以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床暖房装置に敷設するカーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冬季の暖房装置として炬燵、ホットカーペット、エアコン、ファンヒーターの他に、床暖房装置が普及してきている。一方、日本の住宅において、従来から畳やラグ等のカーペットの上に座ったり横になったりしてソフトな肌触りを楽しみ、快適に寛ぐ家庭は多い。
【0003】
したがって、床暖房装置を設置してもなお暖房による快適さのみならず、フローリングの上に横になったりして快適に寛ぎたいという家庭が多く、床暖房装置のフローリングの上に敷設して用いるラグ等のカーペットが求められている。しかし、床暖房装置のフローリングの上にカーペットを敷いて床暖房装置を作動させる場合に、カーペットを敷設していない部分のフローリング温度とカーペット敷設部分のフローリング温度との温度差がフローリングの伸縮差となりフローリングに割れを生じさせやすくなるとういう問題が発生していた。
【0004】
床暖房装置の上に敷設するカーペットとしては、特許文献1においては、独立気泡の合成樹脂発泡シートに表面から裏面に貫通する多数の気孔を形成したもので下地材を作り、また前記下地材をカーペットの裏打ちにすることにより、軽量でクッション性があり発熱体の熱を良く吸収し、床暖房を快適にする床暖房装置用の上敷下地材及びカーペットについて提案されている。また、特許文献2においては、パイルの見掛け密度が130Kg/m以上250Kg/m以下であり、パイルを構成する繊維の80%以上が8d以下の単糸繊度を有する繊維からなるタフテッドカーペットで、タフテッドカーペットの厚さ方向への熱貫流抵抗値が0.20m/hr・℃/Kcal以下のタフテッドカーペットであって、熱伝導性と肌触りの両方に優れたカーペットについて提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2の技術は、暖房のための熱伝導性、熱に対する耐疲労性、クッション性等を付与する技術であるが、フローリングに割れが生じるとういう問題に対しては不充分であった。
【特許文献1】特開昭58−95134
【特許文献2】特開平11−151153
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、床暖房装置のフローリングの上にカーペットを敷いて床暖房装置を作動させる場合に、カーペットを敷設していない部分のフローリング温度とカーペット敷設部分のフローリング温度との温度差を3.5〜7.5℃の間に保ち、フローリングに割れを生じさせず、ソフトな肌触りがあり、横になったりして快適に寛げる床暖房敷設用カ−ペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、カーペット全体の熱伝導率を0.07Kcal/m・h・℃以上にすることにより床暖房装置のフローリング上にカーペットを敷設しても、カーペットを敷設していない部分との温度差を3.5〜7.5℃の間に保ち、床暖房装置のフローリングに割れを生じさせない床暖房敷設用カ−ペットが得られることを見出し本発明に到達した。本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]表皮層と接着層と裏打ち層からなるカーペットであって、該表皮層はパイル糸と基布からなり、パイル糸に公定水分率が8%以上の繊維を45質量%以上有し、該接着層は樹脂組成物又はゴム組成物ラテックス100質量部に対して、無機材料を50質量部以上含有するバッキング剤からなり、該裏打ち層はビスコース繊維不織布からなり、該カーペット全体の熱伝導率が0.07Kcal/m・h・℃以上であることを特徴とするカーペット。
【0009】
[2]前記無機材料は、炭酸カルシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛、タルクからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる前項1に記載のカーペット。
【発明の効果】
【0010】
[1]の発明では、床暖房装置のフローリングの上にカーペットを敷設して床暖房装置を作動させる場合、床暖房装置の熱源からの熱がフローリングを通してカーペットの裏打ち層に伝わり、裏打ち層のビスコース繊維不織布は熱伝導率が0.45〜0.63Kcal/m・h・℃であるので、上面に隣接する接着層へ熱を効果的に伝えることができる。続いて、表皮層を構成するパイル糸と基布を接着させるための接着層は、樹脂組成物又はゴム組成物ラテックス100質量部に対して、無機材料を50質量部以上含有するバッキング剤からなるので熱を表皮層へ効果的に伝えることができる。次に、表皮層のパイル糸は、公定水分率が8%以上の繊維を45質量%以上有するので、接着層からの熱を効果的に受け取ることができる。さらに、受け取った熱をパイル糸の表面から室内へ放熱することができるので、カーペット全体の熱伝導性を向上させることができ、熱伝導率を0.07Kcal/m・h・℃以上にすることができる。したがって、カーペットを敷設していない部分のフローリング温度とカーペット敷設部分のフローリング温度との温度差を3.5〜7.5℃の間に保ち、フローリングに割れを生じさせない。
【0011】
[2]の発明では、接着層のバッキング剤に充填する炭酸カルシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛、タルクは、熱伝導率が1.20〜1.72Kcal/m・h・℃であるので、接着層の熱伝導性をさらに向上させることができるので、カーペット全体の熱伝導性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明に係るカーペットの一実施形態について、例えば表皮層は基布にパイルを植設したタフテッドカーペット原反を使用した場合を説明する。
【0013】
本発明のカーペットにおける表皮層のパイル糸は、公定水分率が大きい繊維は熱伝導率が良いことから、公定水分率が8%以上の繊維であれば特に限定されず、例えば天然繊維では綿、毛、絹、麻、半合成繊維のビスコース繊維等の繊維を使用することができる。
【0014】
したがって、公定水分率が8%以上の繊維と、公定水分率が8%未満の繊維、例えばポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維などの繊維とを用意し、一般の紡績工程によって両者の混紡糸を得て製織する方法、または、公定水分率が8%以上の繊維を糸として作成し、公定水分率が8%未満の繊維、例えばポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維を糸として作成し撚糸し製織する方法、または公定水分率が8%以上の繊維を単独の糸として、公定水分率が8%未満の繊維を単独の糸としてそれぞれ1本置き、2本置き等の組み合わせる構成で製織する方法等、パイル糸に公定水分率が8%以上の繊維が45質量%以上有するように調整すれば良い。
【0015】
パイル糸に公定水分率が8%以上の繊維を45質量%以上有するので、熱伝導率を0.05〜0.09Kcal/m・h・℃にすることができる。逆に、パイル糸に公定水分率が8%以上の繊維が45質量%未満では、熱伝導率は0.05Kcal/m・h・℃未満になってしまう。
【0016】
また、公定水分率が8%以上の繊維、例えば天然繊維では綿、毛、絹、麻、半合成繊維のビスコース繊維を100%とすると、毛ではコスト高になってしまい、綿、絹、麻では、嵩高(ボリューム)がないものとなってしまうことから、公定水分率が8%未満の繊維例えば、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維などの繊維を混ぜることで、パイル糸のコストを下げるとともにパイル糸の嵩高(ボリューム)を付与することができる。
【0017】
また、パイル形態としては、特に限定されずカットパイルであってもループパイルであっても、さらにカットパイルとループパイルの組合せであっても良く、いずれの形態でも選択できる。
【0018】
本発明のカーペットにおける表皮層の一次基布は、特に限定されるものではない。一次基布に用いる繊維の公定水分率は、カーペットを構成するパイル糸が一次基布に植設され、パイル糸とは反対側の一次基布裏面にパイルステッチを形成するので、接着層から表皮層に伝えられる熱は主に表皮層のパイルステッチから伝わるため、カーペット全体の熱伝導性に大きな影響を与えないので、例えばポリエステル系繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等の熱可塑性繊維、またはこれらの繊維の複合化繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿、麻等の天然繊維、あるいはこれらの混紡したものを使用することができる。また基布の形態としては例えば、織布、編布、不織布等通常使用される基布で良い。
【0019】
本発明のカーペットにおける接着層のバッキング剤は、パイル糸と一次基布とを固定できる樹脂組成物やゴム組成物に、無機材料として炭酸カルシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛、タルクからなる群から選ばれる1種または2種以上を、樹脂組成物又はゴム組成物ラテックス100質量部に対して50質量部以上を含有させる。樹脂組成物やゴム組成物は、パイル糸と一次基布とを固定できる樹脂組成物やゴム組成物であれば特に限定されず、樹脂組成物の樹脂成分としては例えばアクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂が挙げられる。ゴム組成物のゴム成分としては例えばSBR(スチレン−ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、MBR(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム)あるいは天然ゴム等が挙げられる。なお、前記バッキング剤には、分散剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、顔料等を適宜含有させて用いる。
【0020】
接着層のバッキング剤に無機材料を充填するので、接着層の熱伝導率を0.90〜1.38Kcal/m・h・℃とすることができるので、カーペット全体の熱伝導性を向上させることができる。
【0021】
次に、本発明のカーペットにおける接着層の下側に、熱伝導性及びクッション性能と接着層の保護性能を付与すべく、ビスコース繊維不織布からなる裏打ち層を設ける。ビスコース繊維であればビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、キュプラ、リヨセルなどのいずれでも良い。前記ビスコース繊維不織布は、例えばニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等あげられる。ビスコース繊維不織布の熱伝導率は0.45〜0.63Kcal/m・h・℃なのでカーペット全体の熱伝導性を向上させることができる。
【0022】
本発明のカーペットの製造方法としては、前記表皮層の一次基布面に前記バッキング剤を塗布し、続いて該塗布面にビスコース繊維不織布を貼り合わせ、加熱乾燥すれば良い。塗布方法としては例えばロールコーティング法、スプレーコーティング法等があげられる。
【0023】
以上の構成により、カーペット全体の熱伝導率を0.07Kcal/m・h・℃以上にすることができるので、カーペットを敷設していない部分のフローリング温度とカーペット敷設部分のフローリング温度との温度差を3.5〜7.5℃の間に保ち、フローリングに割れを生じさせないとともにソフトな肌触りがあり、横になったりして快適に寛げる床暖房敷設用カ−ペットを得ることができる。
【実施例】
【0024】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに限定されるものではない。
【0025】
なお、熱伝導率測定試験及びカーペット温度上昇測定試験は次の通りである。
【0026】
<熱伝導率測定試験>
JIS A 1412−1989「保温材の熱伝導率測定方法」の5.2平板比較法によって熱伝導率の測定を行った。カーペット接着層の試験試料は、カーペット表皮層と接着層と裏打ち層とが接着積層されているので接着層単体に分離できないため、実施例、比較例のバッキング剤塗布量と同量のバッキング剤を離型シート上にコーティングし、その後加熱乾燥して作成したものを用いた。熱伝導率の測定は、たて20cm、よこ20cmの試験試料を室温20℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内で8日間養生した後に行った。
【0027】
<カーペット温度上昇測定試験>
室温20℃、湿度65%の雰囲気下で、電熱発熱体の上にフローリングを積層した試験装置上にカーペットを載せ、電熱発熱体により加熱してカーペットを載せていない部分のフローリングの表面温度を30℃に制御しながら、加熱開始から60分後までのフローリングとカーペットとの間の温度を温度センサーにて測定し、カーペットを載せていない部分のフローリングの表面温度との差を算出した。電熱発熱体により加熱してフローリングの制御温度を30℃としたのは、床暖房装置のフローリング表面温度が30℃に設定された場合を想定したものである。カーペットを敷設していない部分のフローリング温度とカーペット敷設部分のフローリング温度との温度差が3.5〜7.5℃の場合、フローリングの伸縮差が小さいためフローリングに割れが発生し難いので、温度差が3.5〜7.5℃の間を合格とした。
【0028】
<実施例1>
表1に示すように、公定水分率8.5%の綿50質量%と公定水分率0.4%のポリエステル繊維50質量%とを用意し、両者を混紡する一般の紡績工程によって混紡糸を得た。続いて、混紡糸のパイル形態をループ状にタフティング機(1/8G)でポリプロピレンテープヤーン基布(目付100g/m)に植え込み、パイル目付700g/mのカーペット表皮層を得た。カーペット表皮層の熱伝導率は0.05Kcal/m・h・℃であった。
次いで、接着層のSBR(スチレン−ブタジエン共重合体)ラテックス100質量部に対し炭酸カルシウム60質量部含有したバッキング剤をロールコーティング方法によって塗布し、続いて裏打ち層としてレーヨン繊維からなるニードルパンチ不織布(目付90g/m)を接着貼り合わせ、加熱乾燥を施しカーペットを得た。カーペット接着層の熱伝導率は0.98Kcal/m・h・℃、カーペット裏打ち層の熱伝導率は0.5Kcal/m・h・℃であった。また、カーペット全体の熱伝導率は、0.075Kcal/m・h・℃であった。カーペット温度上昇測定試験では温度差は7.5℃で、合格であった。
【0029】
<比較例1>
実施例1において、公定水分率8.5%の綿35質量%と公定水分率0.4%のポリエステル繊維65質量%とかなるパイル糸とした以外は実施例1と同様にしてカーペットを得た。カーペット表皮層の熱伝導率は0.04Kcal/m・h・℃であった。また、カーペット全体の熱伝導率は、0.05Kcal/m・h・℃であった。カーペット温度上昇測定試験では温度差は8.5℃で、不合格であった。
【0030】
<比較例2>
実施例1において、裏打ち層としてポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布(目付90g/m)とした以外は実施例1と同様にしてカーペットを得た。カーペット裏打ち層の熱伝導率は0.15Kcal/m・h・℃であった。また、カーペット全体の熱伝導率は、0.06Kcal/m・h・℃であった。カーペット温度上昇測定試験では温度差は8.0℃で、不合格であった。
【0031】
<実施例2>
実施例1において、公定水分率8.5%の綿70質量%と公定水分率0.4%のポリエステル繊維30質量%との混紡糸からなるパイル糸とした以外は実施例1と同様にしてカーペットを得た。カーペット表皮層の熱伝導率は0.08Kcal/m・h・℃であった。また、カーペット全体の熱伝導率は、0.10Kcal/m・h・℃であった。カーペット温度上昇測定試験では温度差は6.0℃で、合格であった。
【0032】
<実施例3>
実施例2において、接着層のバッキング剤としてSBR(スチレン−ブタジエン共重合体)ラテックス100質量部に対し無機材料の炭酸カルシウム400質量部含有したバッキング剤をコーティングした以外は実施例2と同様にしてカーペットを得た。カーペット接着層の熱伝導率は1.38Kcal/m・h・℃であった。また、カーペット全体の熱伝導率は、0.15Kcal/m・h・℃であった。カーペット温度上昇測定試験では温度差は3.5℃で、合格であった。
【0033】
<比較例3>
実施例1において、接着層のバッキング剤としてSBR(スチレン−ブタジエン共重合体)ラテックス100質量部に対し無機材料の炭酸カルシウム40質量部含有したバッキング剤をコーティングした以外は実施例1と同様にしてカーペットを得た。カーペット接着層の熱伝導率は0.75Kcal/m・h・℃であった。また、カーペット全体の熱伝導率は、0.06Kcal/m・h・℃であった。カーペット温度上昇測定試験では温度差は8.0℃で、不合格であった。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮層と接着層と裏打ち層からなるカーペットであって、該表皮層はパイル糸と基布からなり、パイル糸に公定水分率が8%以上の繊維を45質量%以上有し、該接着層は樹脂組成物又はゴム組成物ラテックス100質量部に対して、無機材料を50質量部以上含有するバッキング剤からなり、該裏打ち層はビスコース繊維不織布からなり、該カーペット全体の熱伝導率が0.07Kcal/m・h・℃以上であることを特徴とするカーペット。
【請求項2】
前記無機材料は、炭酸カルシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛、タルクからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる請求項1に記載のカーペット。

【公開番号】特開2011−30696(P2011−30696A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178763(P2009−178763)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】