説明

床暖房構造体

【課題】本発明は、過剰な温度上昇に対しても、蓄熱層が変形せず、かつ、薄型であり、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる床暖房構造体を提供する。
【解決手段】潜熱蓄熱材を含有する蓄熱層の上に、厚みが20μm以上5mm以下、耐熱温度が100℃以上である耐熱層が積層され、さらにその上に面状発熱層、床材層が積層されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等における床暖房用として用いられる床暖房構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅環境に対する高まりを背景に、電熱線や温水管等を床に設置した床暖房システムを備えた住宅が増加している。
床暖房システムでは、例えば、電熱線などで発熱した熱が床下へ逃げるのを防止するため、断熱材等を設置し、熱を床下へ逃さず、熱効率を向上させている。この場合、断熱材に、ある程度厚みを付けることにより、熱効率をより向上させることができる。
【0003】
このような床暖房システムにおいて、近年、蓄熱材を含有した蓄熱体(蓄熱シート)を導入する方法が検討されている。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等)
蓄熱材を含有した蓄熱体を導入した場合、発熱した熱を蓄熱体に蓄えることができるため、断熱材を使用しなくても、熱効率を向上させることが可能である。そのため、床暖房構造の薄型化が可能であり、かつ、床下への熱の逃げを抑制し、熱効率を向上させることができる。
【0004】
特に、リフォームにおける床暖房システムの設置においては、薄型であることが大きな利点となる。すなわち、既存の床にそのまま設置したとしても居住空間が圧迫されず、さらに、従来のような既存の床構造、配線、配管等の修復や再施工が不要となるため、工期短縮とコスト削減を図ることができる。
さらに、潜熱蓄熱材を含有した蓄熱体を導入した場合、床暖房の電源を停止させたとしても、潜熱蓄熱体に蓄えられた熱によって、室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができるため、省エネルギー化を図ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−343864号公報
【特許文献2】特開2003−294323号公報
【特許文献3】特開2003−021349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような電熱線などを利用した床暖房システムには、通常、温度の過剰な上昇等に対して、温度制御システム等の安全防止策が備え付けれている。
しかし、温度制御システム等がなんらかの原因で故障した場合、温度の過剰な上昇によって、蓄熱体が変形したり、場合によっては燃焼するという問題が発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討をした結果、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱層の上に、厚みが20μm以上5mm以下、耐熱温度が100℃以上である耐熱層が積層され、さらにその上に面状発熱層、床材層が積層された床暖房構造体が、過剰な温度上昇に対しても、蓄熱層が変形せず、かつ、薄型であり、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の特徴を含むものである。
1.潜熱蓄熱材を含有する蓄熱層の上に、厚みが20μm以上5mm以下、耐熱温度が100℃以上である耐熱層が積層され、
さらにその上に面状発熱層、床材層が積層されたことを特徴とする床暖房構造体。
2.耐熱層が、金属層、ガラス層、耐熱樹脂層から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする1.に記載の床暖房構造体。
3.耐熱層が、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層との積層体であることを特徴とする1.または2.に記載の床暖房構造体。
4.金属層が、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする2.または3.に記載の床暖房構造体。
5.ガラス層が、ガラス繊維質層であることを特徴とする2.から4.のいずれかに記載の床暖房構造体。
6.耐熱樹脂層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる一種以上の合成樹脂を含むことを特徴とする2.から5.のいずれかに記載の床暖房構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床暖房構造体は、過剰な温度上昇に対しても、蓄熱層が変形せず、かつ、薄型であり、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる。
さらに、本発明の床暖房構造体は、工期短縮とコスト削減を図ることができ、居住空間を圧迫することもなく、戸建て住宅をはじめ、アパート、マンション等の幅広い既存の床構造に対応した床暖房として適用可能であり、特にリフォーム用の簡易式の薄型床暖房構造体として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の床暖房構造体は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱層の上に、厚みが20μm以上5mm以下、耐熱温度が100℃以上である耐熱層が積層され、さらにその上に面状発熱層、床材層が積層されたことを特徴とする。
【0012】
<蓄熱層>
本発明の蓄熱層は、潜熱蓄熱材が含有されるものである。潜熱蓄熱材としては、例えば、無機潜熱蓄熱材、有機潜熱蓄熱材等が挙げられる。
【0013】
無機潜熱蓄熱材としては、例えば、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、リン酸水素ナトリウム12水和物、チオ硫酸ナトリウム5水和物、塩化カルシウム6水和物等の水和塩等が挙げられる。
【0014】
有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド、ポリエーテル化合物等が挙げられ、これらの潜熱蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
本発明では、特に有機潜熱蓄熱材を好適に用いることができる。有機潜熱蓄熱材は、沸点が高く揮発しにくいため、蓄熱層成形時における体積変化(肉痩せ)がほとんど無く、また長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。さらに、有機潜熱蓄熱材を用いた場合、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、例えば相変化温度の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。
【0016】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−テトラデカン(融点8℃)、ペンタデカン(融点10℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
【0017】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
【0018】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、オクタデカン酸(融点70℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
【0019】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
【0020】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0021】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0022】
本発明では潜熱蓄熱材として、特に、実用温度領域である25℃〜40℃に相変化温度(融点)を有する脂肪族炭化水素、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステルが、潜熱量が高く、化学的安定に優れ、好ましい。
【0023】
さらに潜熱蓄熱材としては、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、さらには、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましい。中でも、炭素数15〜22の長鎖脂肪酸エステル、炭素数15〜22の脂肪族炭化水素を使用することが好ましく、このような潜熱蓄熱材は、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度(融点)を有するため、様々な用途に使用しやすい。
【0024】
本発明では、融点の異なる2種以上の潜熱蓄熱材を用いることにより、適用温度領域の広い蓄熱層を得ることができる。
【0025】
また、2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合して使用する場合は、相溶化剤を用いることが好ましい。相溶化剤を用いることにより、有機潜熱蓄熱材どうしの相溶性を向上させることができる。
相溶化剤としては、例えば、脂肪酸トリグリセリド、親水親油バランス(HLB)が1以上10未満(好ましくは1以上5以下)の非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合し用いることができる。
【0026】
相溶化剤と潜熱蓄熱材の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、相溶化剤0.1重量部から20重量部(好ましくは0.5重量部から10重量部)程度とすればよい。
【0027】
さらに蓄熱層には、粘性調整剤、熱伝導性物質等を混合して用いることができる。
【0028】
粘性調整剤としては、例えば、粘土鉱物等が挙げられ、特に、有機処理された層状の粘土鉱物を用いることが好ましい。
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物を混合することにより、有機処理された層状の粘土鉱物の層間に潜熱蓄熱材が入り込み、潜熱蓄熱材が有機処理された層状の粘土鉱物の層間に保持されやすい構造となる。
【0029】
このような有機処理された層状の粘土鉱物と潜熱蓄熱材を混合することにより、結果として、潜熱蓄熱材の粘度を上昇させ、蓄熱層内に潜熱蓄熱材を担持し、より安定して担持され、保持し続けることができる。
【0030】
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時の粘度は、0.5〜20.0Pa・s程度とすればよい。なお、粘度は、B型回転粘度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RHで測定した値である。
また、潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時のTI値は、4.0〜9.0程度とすればよい。なお、TI値は、B型回転粘度計を用い、下記式1により求められる値である。
TI値=η1/η2 (式1)
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0031】
有機処理された層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
【0032】
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
【0033】
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、
ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)
ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)
エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)
等が挙げられる。
【0034】
有機処理された層状粘土鉱物と潜熱蓄熱材の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、0.5重量部から50重量部(好ましくは1重量部から30重量部、より好ましくは3重量部から15重量部)程度とすればよい。
【0035】
本発明では、このような潜熱蓄熱材をカプセル化したものを何らかの方法で固定化したり、または、潜熱蓄熱材を多孔体に充填して蓄熱層を形成することもできるし、潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入し蓄熱層を形成することもできる。
【0036】
潜熱蓄熱材をカプセル化する方法としては、例えば、特願2005−134852、特願2006−95924等に記載の方法等が挙げられる。
【0037】
カプセル化した蓄熱性カプセルを、蓄熱層として用いる場合、何らかの方法で固定して用いればよい。例えば、蓄熱性カプセルをそのままフィルムに封入することもできるし、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーの成形物を蓄熱層としてもよいし、各種材料に浸漬法、減圧・加圧注入法等により蓄熱性カプセルを含浸させて蓄熱層としてもよし、あるいはこれらの方法を組み合わせて蓄熱層を製造してもよい。
【0038】
例えば、蓄熱性カプセルをそのまままフィルムに封入する方法としては、蓄熱性カプセルを水等の溶媒に分散させたものや蓄熱性カプセルの固体微粉末をフィルムに封入すればよい。
ここでフィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の有機材料等から選ばれる1種または2種以上、
アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上、
等を主成分とするフィルムを用いることができる。
【0039】
これらのうち、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等の有機材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上を含むフィルムを使用した場合、蓄熱性カプセルの固定化と、蓄熱層と耐熱層の積層を同時に行うことができる。
【0040】
また、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーを形成する方法としては、公知のものを使用すればよい。
このような結合剤としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型樹脂、NAD型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機結合剤、
ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等の無機結合剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0041】
本発明では、特に有機結合剤を用いることが好ましく、有機結合剤のうち1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプがより好ましい。2液タイプを使用することにより、速やかに反応が進行し、高強度の成形物が形成され、かつ、蓄熱性カプセルが均一に分散した成形物が得られやすいため好ましい。
【0042】
2液タイプとしては、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等の架橋反応を利用したもの等が挙げられる。特に、ヒドロキシル基とイソシアネート基の架橋反応を利用したものが、速やかに反応が進行し、かつ、蓄熱性カプセルがより均一に分散した成形物が得られやすいため好ましい。
【0043】
また、スラリーには、結合剤の他に、溶剤、顔料、骨材、粘性調整剤、緩衝剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、難燃剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、脱水剤等の各種添加剤を混練することもできる。
【0044】
このような成形物の形成においては、このようなスラリーを、公知の方法でシート化し形成してもよいし、あるいは、前述したフィルムにスラリー封入し形成してもよい。
【0045】
また、浸漬法、減圧・加圧注入法等により含浸させる方法においては、下記に示す材料に蓄熱性カプセルを含浸させればよい。
材料としては、例えば、コンクリート、石膏ボード、モルタル、スレート板等の無機材料、
ガラス繊維、パルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維材料、
アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機材料、
松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、その他、紙、合成紙、セラミックペーパー等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0046】
蓄熱層における蓄熱性カプセルの含有量としては、蓄熱層の全体量に対し、10重量%以上、さらには20重量%以上70重量%以下であることが好ましい。このような範囲であることにより、優れた蓄熱性を有することができる。
【0047】
潜熱蓄熱材を多孔体に充填したものとしては、多孔体に潜熱蓄熱材が担持・保持されているものであれば、特に限定されない。
【0048】
多孔体の形状も、潜熱蓄熱材が担持・保持できれば、特に限定されず、例えば、粒子凝集型多孔体、スポンジ型多孔体、3次元編目構造型多孔体等の形状を有するもの等が挙げられる。本発明では、特に、潜熱蓄熱材がより担持・保持されやすい点から、3次元編目構造型多孔体が好ましい。
【0049】
また多孔体としては、無機多孔体、有機多孔体等特に限定されず用いることができるが、潜熱蓄熱材をより担持・保持しやすい点から有機多孔体が好適に用いられる。さらに、有機多孔体は潜熱蓄熱材の相変化(特に、液体から固体への変化)による体積収縮に起因する蓄熱層の割れや形状変化も防ぐことができる。
【0050】
このような有機多孔体を形成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・ベオバ樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型、NAD型、水可溶型、水分散型、無溶剤型等、または、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0051】
さらに本発明では、上記樹脂成分のうち、1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプのほうが好ましい。例えば、反応性官能基を含有する化合物と該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を含有する化合物からなる2液タイプが好適に用いられる。
【0052】
このような、反応性官能基の組み合わせとしては、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等が挙げられる。
【0053】
さらに、反応性官能基の組み合わせとしては、特に、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物とアミノ基を含有する化合物等の組み合わせが好ましく、特にヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物の組み合わせが好ましい。このような、組み合わせでは、温和な条件下で架橋反応が進行しやすく、また、架橋密度等の調節も容易であるため好ましい。
【0054】
例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を用いる場合は、NCO/OH比率で通常0.1〜1.8、好ましくは0.2〜1.5、さらに好ましくは0.3〜1.3となる範囲内で設定すればよい。
このようなNCO/OH比率の範囲内であることにより、多孔体の強度を強靭なものとすることができ、潜熱蓄熱材の漏れのない均一な緻密な架橋構造を得ることができる。
NCO/OH比率が0.1より小さい場合は、架橋率が低くなり、硬化性、耐久性、強度等において十分な物性を確保することができない場合があり、また潜熱蓄熱材が漏れ易くなる。NCO/OH比率が1.8よりも大きい場合は、未反応のイソシアネートが残存し、多孔体の各種物性に悪影響を与え、多孔体が変形しやすくなり、潜熱蓄熱材が漏れやすくなる。
【0055】
多孔体の製造は、上記成分を用いて、公知の方法で製造すればよい。例えば、特願2005−322930、特願2006−280575等に記載の方法等が挙げられる。
【0056】
本発明多孔体中の潜熱蓄熱材含有率(充填率)は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65重量%以上である。
【0057】
潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入する方法では、例えば、上述したフィルムを用いて、潜熱蓄熱材を封入すればよい。
【0058】
本発明の蓄熱層は、上述した潜熱蓄熱材、あるいは、潜熱蓄熱材をカプセル化したもの、潜熱蓄熱材を多孔体に充填したもの、潜熱蓄熱材をフィルムに封入したものであり、このような蓄熱層の厚さは、特に限定されないが、通常1mm〜20mm、さらには2mm〜15mm程度が好ましい。
<耐熱層>
【0059】
本発明では、蓄熱層と面状発熱層の間に、耐熱層を積層することを特徴とする。
耐熱層としては、厚みが20μm以上5mm以下、耐熱温度が100℃以上であれば特に限定されないが、ガラス層、金属層、耐熱樹脂層等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を適用することができる。
厚みが20μmより小さければ耐熱性に劣る場合があり、5mmより大きければ、熱が効率よく伝わらない場合があり、また床暖房構造が、かさ高いものとなってしまう。
耐熱温度が100℃未満であれば、電熱線などの過剰な温度上昇等に対して、蓄熱層が変形するおそれがある。
なお、本発明でいう耐熱温度とは、耐熱層が変形しない上限温度のことをいう。つまり、耐熱温度より高くなると耐熱層が変形する可能性がある。
【0060】
ガラス層としては、例えば、ガラス板、または、ガラス繊維が、網目状、斑点状、あるいは、ランダムに配列されたガラス繊維質層等が挙げられる。
【0061】
金属層としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上を含むものが挙げられる。
【0062】
耐熱樹脂層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の合成樹脂のうち1種または2種以上を板状、フィルム状に形成したもの等が挙げられる。
【0063】
このような耐熱層を積層することによって、温度の過剰な上昇に伴う、蓄熱層の変形や燃焼を抑えることができる。さらに、蓄熱層の変形に伴う潜熱蓄熱材の漏れを防止することができる。
また、このような耐熱層には、床面全面に均一に温度を暖める均熱効果もある。特に金属層のような熱伝導率の高い層を積層することによって、より優れた均熱効果を発揮することができる。
また、熱伝導率の低いガラス層、耐熱樹脂層を積層することにより、急激な温度上昇を防止することもできる。
本発明では、耐熱性に加えて、均熱効果、急激な温度上昇防止効果も考慮し、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層した耐熱層、さらには、金属層とガラス層を積層した耐熱層を好適に適用することができる。また、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を2層さらには3層以上で積層してもよい。
<面状発熱層>
【0064】
本発明の面状発熱層は、特に限定されず、公知の面状発熱体を使用することができる。
面状発熱体としては、例えば、ニクロム線を蛇行させて絶縁体表面に配置したもの、電気抵抗発熱体と電極を積層したもの、PTC面状発熱体等が挙げられる。
【0065】
電気抵抗発熱体は、電気抵抗値が1×10Ω・cm以下(好ましくは、1×102Ω・cm以下)であれば、特に限定されるものではないが、樹脂成分と導電性粉末からなるものが好ましい。電気抵抗発熱体の電気抵抗値が1×10Ω・cmより大きい場合は、消費電力量が大きくなるため好ましくない。
【0066】
樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム等、あるいはこれらを複合した樹脂等が挙げられる。
本発明では、特に、柔軟性を有する樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、合成ゴム等が好ましく用いられる。
【0067】
導電性粉末としては、グラファイト粉末、鱗片状黒鉛、薄片状黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素粉末、グラファイト化された繊維、グラファイトを担持させた繊維等の炭素繊維、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、白金、パラジウム、鉄等の金属微粒子、これらの金属微粒子等の導電性成分を繊維表面に担持させた導電性繊維、また金属微粒子をマイカ、雲母、タルク、酸化チタン等の粉末の表面に担持させた導電性粉末、また、フッ素ドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、導電性酸化亜鉛等の導電性酸化物等を使用することができる。
【0068】
電気抵抗発熱体は、上記導電性粉末を上記樹脂中に均一に分散するように混合し、公知の方法で、フィルム状、シート状に形成することにより、製造することができる。
導電性粉末の混合量は、特に限定されないが、電気抵抗発熱体の電気抵抗値を1×10Ω・cm以下に調整できるように混合すればよく、樹脂成分の固形分100重量部に対して、10重量部以上300重量部以下(好ましくは30重量部以上100重量部以下)であることが好ましい。
【0069】
また、電気抵抗値が1×10Ω・cm以下にできる範囲であれば、樹脂成分以外に、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、防腐剤、抗菌剤、変性剤、紫外線吸収剤、硬化剤、硬化触媒、増膜助剤、溶媒等の添加剤を加えることもできる。
【0070】
電気抵抗発熱体の厚さは、3mm以下であることが好ましい。3mmより厚くなると、柔軟性が低下し、また、電気抵抗発熱体に温度ムラが生じやすくなるため、均一な温度に成り難くなる場合がある。
【0071】
電極としては、電気抵抗値が電気抵抗発熱体よりも低いものであれば特に限定されないが、好ましくは、金属微粒子からなる電極および/またはそれら金属微粒子を混合したペーストを用いることができる。金属微粒子としては、特に限定されないが、銀、銅、金、白金等を用いることができる。
【0072】
電極は、公知の方法で、電気抵抗発熱体に積層することができる。例えば、スプレー、ローラー、刷毛塗り、ディップコーティング、スパッタ、蒸着、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等で積層することができる。
【0073】
PTC面状発熱体は、PTC(Positive Temperature Coefficient;正の温度係数)特性を利用したもので、例えばポリエステルフイルムやPETフイルム等の樹脂フィルムに、PTC特性を示す特殊発熱インクを印刷することにより形成することができる。特殊発熱インクの材料としては、イットリウム、アンチモン、ランタンなどの希土類元素を微量ドープして半導体化したチタン酸バリウム系セラミックが用いられる。
このようなPTC面状発熱体は、PTC特性によって、通電すると素早く昇温し、所定温度に達し、自ら温度を制御、維持することができるため、センサー・コントローラー等を使用しなくてもよい。
【0074】
また、このPTC面状発熱体は、前記特殊発熱インクによる印刷方式であるため、薄型に形成でき、従って軽量化及び薄型化を図ることができる。更に、このPTC面状発熱体は、電源を入れてから所定温度になるまでは抵抗値が低く、昇温に要する消費電力を抑えることができ、さらに所定温度に達すると自己制御機能により消費電力を抑えることができるため、効率的に暖房できる。
<床材層>
【0075】
本発明の床材層としては、塩化ビニル、ポリオレフィン等の樹脂タイル及び樹脂シート、一枚板、フローリング材、合板、パーティクルボード、コルクタイル等の木質材料、繊維質材料、磁器タイル等のセラミックス材料、大理石、御影石、テラゾー等の石材料、モルタル等のコンクリート材料、ゴムやリノリウム等の天然樹脂タイル及び天然樹脂シート等を使用することができる。また畳、カーペット、じゅうたん等も床材層として使用することができる。本発明では、特に、耐熱性を有するものが、より好ましい。
床材層の厚さは、通常1〜20mm、好ましくは2〜15mm程度であればよい。
【0076】
本発明の床暖房構造体は、新築やリフォーム等いずれの場合においても使用することができるが、本発明では特にリフォームの場合に好適に使用できる。
本発明床暖房構造体の形成方法は、特に限定されず、公知の方法により、蓄熱層、耐熱層、面状発熱層、床材層を積層すればよい。
【0077】
積層方法としては、例えば、予め、蓄熱層、耐熱層、面状発熱層、床材層からなる床暖房パネルを作製しておき、基材(コンクリート、モルタル等)や既存のフローリングの上に積層する方法、基材や既存のフローリングの上に、蓄熱層、耐熱層、面状発熱層、床材層を順に積層する方法等が挙げられる。
具体的には、上述した製造方法により得られた蓄熱層の上に、耐熱層、面状発熱層、床材層を順に公知の接着剤や接着テープ等で貼着し床暖房パネルを作製し、基材や既存のフローリングの上に公知の接着剤や接着テープを介して積層する方法等が挙げられる。
また、必要に応じ、面状発熱層と、床材層との間にも、耐熱層を積層することによって、急激な温度上昇の伴う、床材層の変形や燃焼を抑えることもできる。
【0078】
本発明では、耐熱層として、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層したものを使用した場合、少なくとも、蓄熱層側に、ガラス層または耐熱樹脂層が積層されるように耐熱層を積層することが好ましい。
【0079】
床暖房構造体の厚さは、本発明では特に25mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下であることが好ましい。25mm以下と薄膜化、軽量化することにより、簡便に施工することができ、特にリフォームにおいては、施工後、居住空間が圧迫されることがなく快適な居住空間を維持することができる。
また、本発明床暖房構造体は、優れた蓄熱性能を有し、厚さが25mmと薄くても、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の、室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる。したがって、消費電力量を抑え、かつ、快適な居住環境を維持することができる。
【0080】
本発明では、さらに断熱層を積層することもできる。
断熱層を積層することにより、外部の温度変化を緩和するとともに、面状発熱層で発熱した熱を外部に逃し難く、効率良く、床面を暖めることができる。
【0081】
断熱層を積層する箇所としては、特に限定されないが、基材や既存のフローリングと蓄熱層の間が好ましい。また、新たに断熱層を積層することもできるが、既に存在する断熱層を用いてもよい。
【0082】
断熱層としては、特に限定されないが、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満(より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下)の断熱性を有するものであることが好ましい。熱伝導率が0.1W/(m・K)未満であることにより、優れた断熱性を有する。
【0083】
このような断熱層としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。また、市販の断熱層を使用してもよい。
【0084】
断熱層の厚さは、通常1mm以上30mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
合板(300×180mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱層1、耐熱層1、面状発熱層、床材層を順に重ね合わせ、試験体を作製した。
蓄熱層1・耐熱層1積層体:表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、潜熱蓄熱材、ヒドロキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を温度35℃で均一に混合し、反応促進剤を加え、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層1(100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム))を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された多孔体(蓄熱層1)とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。この際、多孔体からの潜熱蓄熱材の漏れは、ほどんどみられなかった。
面状発熱層:シリコンゴム中にニクロム線を蛇行させたシリコンラバーヒーター(300×180mm、厚さ2mm)
床材層:耐熱フローリング(300×180mm、厚さ12mm)
図1に示すように、内寸が300×180×200mmとなるように、側面及び上面に厚さ25mmのポリスチレンフォームを設置し、底面には試験体の床材層側が内側となるように設置し、試験体ボックスを作製した。
さらに、床表面温度、空間温度(ボックス内温度)を測定するため、図1に示すように、床材表面の中心、床材表面の中心から高さ100mmの位置にそれぞれ熱電対を設置した。また、図1に示すように、床表面には表面温度を一定にするため、床表面に温度調節装置(温度調節器、変圧器)を取り付けた。
この試験体ボックスを恒温器の中に設置し、次の実験を行った。
恒温器中の温度を10℃に設定し、15時間放置した。その後恒温器中の温度を10℃に設定したまま、面状発熱層を180分加熱した。なお床表面は、温度調節装置(温度調節器、変圧器)により、30℃一定になるように設定した。
(床暖房性能評価)
床暖房性能評価として、面状発熱層の加熱後60分後の各部位の温度を測定した。また、180分加熱した後、加熱を停止し、停止60分後の各部位の温度を測定した。結果は、表3に示した。
(加熱試験)
温度調節器を取り外し、面状発熱層を6時間加熱し続け、6時間後の蓄熱層の状態を目視にて観察した。評価は次の通りである。その結果は、表3に示した。
◎:異常がみられなかった。
○:ほとんど異常がみられなかった。
△:蓄熱層の変形がみられた。
×:蓄熱層が燃焼した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
(実施例2)
蓄熱層1の代わりに蓄熱層2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、実施例1と同様の実験を行った。結果は、表3に示した。
蓄熱層2・耐熱層1積層体:表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、潜熱蓄熱材、有機処理された層状粘土鉱物、ヒドロキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を温度35℃で均一に混合し、反応促進剤を加え、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層1を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で120分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された多孔体(蓄熱層2)とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。この際、多孔体からの潜熱蓄熱材の漏れは、ほどんどみられなかった。
【0090】
(実施例3)
蓄熱層1の代わりに蓄熱層3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、実施例1と同様の実験を行った。結果は、表3に示した。
蓄熱層3・耐熱層1積層体:表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、潜熱蓄熱材、界面活性剤、ヒドロキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を温度35℃で混合し、潜熱蓄熱材をコロイド状(平均粒子径180μm)に分散させ、反応促進剤を加え、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層1を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で120分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された多孔体(蓄熱層3)とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。この際、多孔体からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
【0091】
(実施例4)
蓄熱層1の代わりに蓄熱層4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、実施例1と同様の実験を行った。結果は、表3に示した。
蓄熱層4・耐熱層1積層体:表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、潜熱蓄熱材、界面活性剤、有機処理された層状粘土鉱物、ヒドロキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を温度35℃で混合し、潜熱蓄熱材をコロイド状(平均粒子径600μm)に分散させ、反応促進剤を加え、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層1を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された多孔体(蓄熱層4)とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。この際、多孔体からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
【0092】
(実施例5)
蓄熱層1の代わりに蓄熱層5を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、実施例1と同様の実験を行った。結果は、表3に示した。
蓄熱層5・耐熱層1積層体:表1に示す潜熱蓄熱材60重量部と、ステアリルアクリレート40重量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート3重量部を均一に混合し、さらに、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、過流酸アンモニウム1重量部、水100重量部を加え、重合槽で混合し、プレ乳化液を作製した。次に重合槽内を脱気し、窒素雰囲気下、80℃で、3時間乳化重合を行った。重合後、重合槽を室温(25℃)まで冷却し、蓄熱性カプセル(平均粒径1.8μm)を得た。
このカプセルを水層から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、25℃の乾燥器中で3時間乾燥し、分級(100メッシュ)を行い、固形粉末状の蓄熱性カプセルを得た。この時、水層からの分離が簡便であり、粉砕時にはカプセルから潜熱蓄熱材が漏れ出すことがなく、得られたカプセルは、ほぼ100メッシュ以下のサイズで回収できた。
次に、得られた蓄熱性カプセル60重量部、表1に示すヒドロキシル基含有化合物33重量部、表1に示すイソシアネート基含有化合物7重量部を温度40℃で混合し、表1に示す反応促進剤0.1重量部を加えて、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層1を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で120分硬化させ、脱型して、蓄熱性カプセルを含有する蓄熱層5とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。この際、蓄熱性カプセルは、カプセル壁が粉砕することなく、簡便に蓄熱層が製造できた。
【0093】
(実施例6)
耐熱層として、耐熱層1の代わりに、耐熱層2(100μmのアルミ蒸着フィルム(ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリエチレン))を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、実施例1と同様の実験を行った。結果は、表3に示した。
なお、耐熱層は、ポリエチレン側が蓄熱層側へ、ポリエチレンテレフタレート側が面状発熱層側となるように積層した。
【0094】
(実施例7)
耐熱層として、耐熱層1の代わりに、耐熱層3(100μmのアルミ張りクロス(アルミニウム/ガラス繊維質層))を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、実施例1と同様の実験を行った。結果は、表3に示した。
なお、耐熱層3は、ガラス繊維質層側が蓄熱層側へ、アルミニウム側が面状発熱層側となるように積層した。
【0095】
(実施例8)
合板(300×180mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱層1・耐熱層1積層体、耐熱層3、面状発熱層、床材層を順に重ね合わせ、試験体を作製した。なお、蓄熱層1・耐熱層1積層体は蓄熱層1側が合板となるように、耐熱層3はアルミニウム側が面状発熱層側となるように積層した。
作製した試験体を用いて、実施例1と同様の実験を行った。結果は、表3に示した。
【0096】
(比較例1)
合板(300×180mm、厚さ5mm)の上に、面状発熱層、床材層を順に重ね合わせ、床材を作製した以外は、実施例1と同様の方法で試験を行った。結果は表3に示した。
【0097】
(比較例2)
蓄熱層1の代わりに5mmのポリウレタンフォームを用いた以外は、実施例1と同様の方法で試験を行った。結果は表3に示した。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施例1で使用した試験体ボックスの断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1:蓄熱層1
2:耐熱層
3:面状発熱層
4:床材層
5:合板
6:ポリスチレンフォーム
7:熱電対
8:温度調節装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱材を含有する蓄熱層の上に、厚みが20μm以上5mm以下、耐熱温度が100℃以上である耐熱層が積層され、
さらにその上に面状発熱層、床材層が積層されたことを特徴とする床暖房構造体。
【請求項2】
耐熱層が、金属層、ガラス層、耐熱樹脂層から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の床暖房構造体。
【請求項3】
耐熱層が、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層との積層体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床暖房構造体。
【請求項4】
金属層が、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の床暖房構造体。
【請求項5】
ガラス層が、ガラス繊維質層であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の床暖房構造体。
【請求項6】
耐熱樹脂層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる一種以上の合成樹脂を含むことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の床暖房構造体。



【図1】
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