説明

床暖房構造体

【課題】複雑な温度制御装置を導入することなく、長時間床面温度を所定の温度付近に保つことができ、省エネにも大きな効果を発揮する床暖房構造体を提供する。
【解決手段】蓄熱層1の上側に、耐熱層2、面状発熱体3、床材層4を順に積層して床暖房構造体を構成するとともに、温度制御のための温度センサー7を、蓄熱層1の下側に設置した。これにより、蓄熱層1に十分蓄熱される前に温度センサー7が、温度上昇を検知することがなくなり、熱を蓄熱層1に十分蓄えることを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱体を有する床暖房システムにおいては、温度センサー等の温度制御装置が備わっており、床面温度が所定の温度付近にてほぼ一定に保たれるようになっている。
即ち、所定の温度に達するまでは発熱体により発熱し(電源ON)、所定の温度に達すると発熱を止め(電源OFF)、また所定の温度まで下がると発熱する(電源ON)というサイクルを繰り返すことによって、床面温度が所定の温度付近にてほぼ一定に保たれる。
【0003】
このような床暖房システムは、発熱体の上に床材層が積層された構造となっているものが多く、温度センサーにより検知される温度と体感温度との誤差をできるだけ小さくするため、温度センサーの設置場所は、床材層付近、または、発熱体付近に設置されることが多い。
【0004】
近年、発熱体を有する床暖房システムにおいては、蓄熱体を有するものが登場している(例えば、特許文献1、2)。これは、発熱体からの熱を一部蓄熱体に蓄えることによって、電源をOFFした後でも、所定の温度付近で長時間維持できることが可能となるものである。このような蓄熱式の床暖房システムを用いれば、電源ON−OFFサイクルを少なくすることができ、また深夜電力による蓄熱も利用できるため、結果として消費電力を抑えることができ、省エネ効果に大きな役割を果たすことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3138959号
【特許文献2】特許第3620461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2のような床暖房システムでは、温度センサー及び発熱体が床部付近に配置されているため(例えば特許文献1図1、特許文献2図5)、発熱体からの熱が蓄熱体に十分蓄えられる前に、温度センサーが検知して電源ON−OFF温度制御装置が作動し、十分に蓄熱効果を発揮できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、鋭意検討をした結果、蓄熱層の上側に、面状発熱体、床材層が順に積層された床暖房構造体の、蓄熱層の下側に、温度制御のための温度センサーを設置することによって、複雑な温度制御装置を導入することなく、長時間床面温度を所定の温度付近に保つことができるとともに、電源ON−OFFサイクルを減らすことができ、蓄熱層による蓄熱効果が十分発揮でき、省エネルギー化に大きな効果を有することを見いだし、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.蓄熱層の上側に、面状発熱体、床材層が順に積層された床暖房構造体であって、
温度制御のための温度センサーが、蓄熱層の下側に設置されてなることを特徴とする床暖房構造体。
2.蓄熱層と面状発熱体との間に、耐熱層が積層されてなる1.に記載の床暖房構造体。
3.蓄熱層の厚さが、1mm以上20mm以下であることを特徴とする1.から2.に記載の床暖房構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床暖房構造体は、複雑な温度制御装置を導入しなくても、温度制御が可能であり、かつ、蓄熱効果による省エネ効果を最大限発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
<床暖房構造体>
本発明の床暖房構造体は、蓄熱層の上側に、面状発熱体、床材層が順に積層されており、温度制御のための温度センサーが、蓄熱層の下側に設置されてなるものである。
また、温度センサーには、面状発熱層による発熱を制御するための温度制御装置が接続されており、温度センサーで検出された温度が温度制御装置に伝えられ、面状発熱層による発熱を制御(電源ON−OFF)できる仕組みとなっている。
温度センサー及び温度制御装置は、公知のものを使用すればよく、また、温度制御装置は、床材層の上側また壁面等、操作しやすい箇所にあればよい。
温度センサー及び面状発熱体の両方が、蓄熱層の上側にある場合は、即効性はあるものの、蓄熱層に熱が十分蓄えられないまま温度制御プログラムが作動し、蓄熱効果が十分に発揮できない。面状発熱体が、蓄熱層の下側、あるいは蓄熱層内部にある場合は、即効性に欠ける。
【0012】
<蓄熱層>
本発明の蓄熱層は、潜熱蓄熱材が含有されたものであり、潜熱蓄熱材としては、例えば、無機潜熱蓄熱材、有機潜熱蓄熱材等が挙げられる。
【0013】
無機潜熱蓄熱材としては、例えば、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、リン酸水素ナトリウム12水和物、チオ硫酸ナトリウム5水和物、塩化カルシウム6水和物等の水和塩等、有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド、ポリエーテル化合物等が挙げられ、これらの潜熱蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
本発明では、特に有機潜熱蓄熱材を好適に用いることができる。有機潜熱蓄熱材は、沸点が高く揮発しにくいため、蓄熱層成形時における体積変化(肉痩せ)がほとんど無く、また長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。さらに、有機潜熱蓄熱材を用いた場合、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、例えば相変化温度の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。
【0015】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−テトラデカン(融点8℃)、ペンタデカン(融点10℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
【0016】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
【0017】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、オクタデカン酸(融点70℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
【0018】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
【0019】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
本発明では潜熱蓄熱材として、特に、実用温度領域である25℃〜55℃に相変化温度(融点)を有する脂肪族炭化水素、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステルが、潜熱量が高く、化学的安定に優れ、好ましい。
【0022】
さらに潜熱蓄熱材としては、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、さらには、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましい。中でも、炭素数15〜22の長鎖脂肪酸エステル、炭素数15〜22の脂肪族炭化水素を使用することが好ましく、このような潜熱蓄熱材は、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度(融点)を有するため、様々な用途に使用しやすい。
【0023】
本発明では、融点の異なる2種以上の潜熱蓄熱材を用いることにより、適用温度領域の広い蓄熱層を得ることができる。
【0024】
さらに蓄熱層には、潜熱蓄熱材に、相溶化剤、粘性調整剤、熱伝導性物質等を混合して用いることができる。
相溶化剤は、2種以上の潜熱蓄熱材、特に、2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合して使用する場合に有効であり、潜熱蓄熱材どうしの相溶性を向上させることができる。
【0025】
本発明では、潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入し蓄熱層を得る方法、潜熱蓄熱材をカプセル化したものを固定化して蓄熱層を得る方法、潜熱蓄熱材を多孔体に充填して蓄熱層を得る方法、潜熱蓄熱材をゲル化・固形化させて蓄熱層を得る方法等により、蓄熱層を得ることができる。
【0026】
潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入する方法では、例えば、フィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の有機材料等から選ばれる1種または2種以上、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上、等を主成分とするフィルムを用いることができる。このようなフィルムを用いて潜熱蓄熱材を封入すればよい。
【0027】
潜熱蓄熱材をカプセル化する方法では、例えば、特開2006−063314、特開2007−119715等に記載の方法等により、潜熱蓄熱材をカプセル化すればよい。
【0028】
カプセル化した蓄熱性カプセルを、蓄熱層として用いる場合、何らかの方法で固定して用いればよいが、例えば、蓄熱性カプセルをそのままフィルムに封入することもできるし、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーの成形物を蓄熱層としてもよいし、各種材料に浸漬法、減圧・加圧注入法等により蓄熱性カプセルを含浸させて蓄熱層としてもよし、あるいはこれらの方法を組み合わせて蓄熱層を製造してもよい。
【0029】
例えば、蓄熱性カプセルをそのまままフィルムに封入する方法としては、蓄熱性カプセルを水等の溶媒に分散させたものや蓄熱性カプセルの固体微粉末を上記フィルムに封入すればよい。
【0030】
また、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーを形成する方法としては、公知のものを使用すればよい。
このような結合剤としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型樹脂、NAD型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機結合剤、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等の無機結合剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。このような結合剤を用いて、公知の方法でシート化し蓄熱層を得てもよいし、あるいは、上記フィルムにスラリー封入して蓄熱層を得てもよい。
また、スラリーには、結合剤の他に、溶剤、顔料、骨材、粘性調整剤、緩衝剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、難燃剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、脱水剤等の各種添加剤を混練することもできる。
【0031】
また、浸漬法、減圧・加圧注入法等により含浸させる方法においては、下記に示す材料に蓄熱性カプセルを含浸させればよい。
材料としては、例えば、コンクリート、石膏ボード、モルタル、スレート板等の無機材料、ガラス繊維、パルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維材料、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機材料、松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、その他、紙、合成紙、セラミックペーパー等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0032】
潜熱蓄熱材を多孔体に充填したものとしては、多孔体に潜熱蓄熱材が担持・保持されているものであれば、特に限定されない。
【0033】
多孔体の形状も、潜熱蓄熱材が担持・保持できれば、特に限定されず、例えば、粒子凝集型多孔体、スポンジ型多孔体、3次元編目構造型多孔体等の形状を有するもの等が挙げられる。本発明では、特に、潜熱蓄熱材がより担持・保持されやすい点から、3次元編目構造型多孔体が好ましい。
【0034】
また多孔体としては、無機多孔体、有機多孔体等特に限定されず用いることができるが、潜熱蓄熱材をより担持・保持しやすい点から有機多孔体が好適に用いられる。さらに、有機多孔体は潜熱蓄熱材の相変化(特に、液体から固体への変化)による体積収縮に起因する蓄熱層の割れや形状変化も防ぐことができる。
【0035】
多孔体としては、公知の方法で製造すればよいが、例えば、特願2005−322930、特願2006−280575等に記載の方法等が挙げられる。
【0036】
潜熱蓄熱材をゲル化・固形化させる方法では、例えば、高分子樹脂と潜熱蓄熱材を混合することによって、潜熱蓄熱材をゲル化・固形化させることが可能である。
このような高分子樹脂としては、潜熱蓄熱材と相溶しゲル化・固形化できるものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム等、あアクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型樹脂、NAD型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等が挙げられる。
本発明では、特に、水酸基価を含有する高分子樹脂にて、潜熱蓄熱材をゲル化・固形化させることが好ましい。このような高分子樹脂は、潜熱蓄熱材との相溶性に優れ、ゲル化・固形化を簡便に行うことができる。高分子樹脂と潜熱蓄熱材の混合比率は、高分子樹脂(固形分)100重量部に対し、潜熱蓄熱材が200重量部以上1500重量部以下程度であることが好ましい。
【0037】
本発明の蓄熱層は、上述した潜熱蓄熱材、あるいは、潜熱蓄熱材をカプセル化したもの、潜熱蓄熱材を多孔体に充填したもの、潜熱蓄熱材をフィルムに封入したもの、潜熱蓄熱材をゲル化・固形化させたもの等である。蓄熱層における潜熱蓄熱材含有率は、40重量%以上、さらには50重量%以上であることが好ましい。
【0038】
<面状発熱体>
本発明の面状発熱体は、特に限定されず、公知の面状発熱体を使用することができる。面状発熱体としては、例えば、ニクロム線を蛇行させて絶縁体表面に配置したもの、電気抵抗発熱体と電極を積層したもの、PTC面状発熱体等が挙げられる。
【0039】
電気抵抗発熱体は、電気抵抗値が1×10Ω・cm以下(好ましくは、1×10Ω・cm以下)であれば、特に限定されるものではないが、樹脂成分と導電性粉末からなるものが好ましい。電気抵抗発熱体の電気抵抗値が1×10Ω・cmより大きい場合は、消費電力量が大きくなるため好ましくない。
【0040】
樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム等、あアクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型樹脂、NAD型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機結合剤るいはこれらを複合した樹脂等が挙げられる。
本発明では、特に、柔軟性を有する樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、合成ゴム等が好ましく用いられる。
【0041】
導電性粉末としては、グラファイト粉末、鱗片状黒鉛、薄片状黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素粉末、グラファイト化された繊維、グラファイトを担持させた繊維等の炭素繊維、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、白金、パラジウム、鉄等の金属微粒子、これらの金属微粒子等の導電性成分を繊維表面に担持させた導電性繊維、また金属微粒子をマイカ、雲母、タルク、酸化チタン等の粉末の表面に担持させた導電性粉末、また、フッ素ドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、導電性酸化亜鉛等の導電性酸化物等を使用することができる。
【0042】
電気抵抗発熱体は、上記導電性粉末を上記樹脂中に均一に分散するように混合し、公知の方法で、フィルム状、シート状に形成することにより、製造することができる。
導電性粉末の混合量は、特に限定されないが、電気抵抗発熱体の電気抵抗値を1×10Ω・cm以下に調整できるように混合すればよく、樹脂成分の固形分100重量部に対して、10重量部以上300重量部以下(好ましくは30重量部以上100重量部以下)であることが好ましい。
【0043】
また、電気抵抗値が1×10Ω・cm以下にできる範囲であれば、樹脂成分以外に、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、防腐剤、抗菌剤、変性剤、紫外線吸収剤、硬化剤、硬化触媒、増膜助剤、溶媒等の添加剤を加えることもできる。
【0044】
電気抵抗発熱体の厚さは、3mm以下であることが好ましい。3mmより厚くなると、柔軟性が低下し、また、電気抵抗発熱体に温度ムラが生じやすくなるため、均一な温度に成り難くなる場合がある。
【0045】
電極としては、電気抵抗値が電気抵抗発熱体よりも低いものであれば特に限定されないが、好ましくは、金属微粒子からなる電極および/またはそれら金属微粒子を混合したペーストを用いることができる。金属微粒子としては、特に限定されないが、銀、銅、金、白金等を用いることができる。
【0046】
電極は、公知の方法で、電気抵抗発熱体に積層することができる。例えば、スプレー、ローラー、刷毛塗り、ディップコーティング、スパッタ、蒸着、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等で積層することができる。
【0047】
PTC面状発熱体は、PTC(Positive Temperature Coefficient;正の温度係数)特性を利用したもので、例えばポリエステルフイルムやPETフイルム等の樹脂フィルムに、PTC特性を示す特殊発熱インクを印刷することにより形成することができる。特殊発熱インクの材料としては、イットリウム、アンチモン、ランタンなどの希土類元素を微量ドープして半導体化したチタン酸バリウム系セラミックが用いられる。
このようなPTC面状発熱体は、PTC特性によって、通電すると素早く昇温し、所定温度に達し、自ら温度を制御、維持することができるため、センサー・コントローラー等を使用しなくてもよい。
【0048】
また、このPTC面状発熱体は、前記特殊発熱インクによる印刷方式であるため、薄型に形成でき、従って軽量化及び薄型化を図ることができる。更に、このPTC面状発熱体は、電源を入れてから所定温度になるまでは抵抗値が低く、昇温に要する消費電力を抑えることができ、さらに所定温度に達すると自己制御機能により消費電力を抑えることができるため、効率的に暖房できる。
【0049】
<床材層>
本発明の床材層としては、塩化ビニル、ポリオレフィン等の樹脂タイル及び樹脂シート、一枚板、フローリング材、合板、パーティクルボード、コルクタイル等の木質材料、繊維質材料、磁器タイル等のセラミックス材料、大理石、御影石、テラゾー等の石材料、モルタル等のコンクリート材料、ゴムやリノリウム等の天然樹脂タイル及び天然樹脂シート等を使用することができる。また畳、カーペット、じゅうたん等も床材層として使用することができる。本発明では、特に、耐熱性を有するものが、より好ましい。
【0050】
<床暖房構造体の形成方法>
本発明の床暖房構造体を形成する方法としては、例えば、予め、温度センサー、蓄熱層、面状発熱層、床材層からなる床暖房パネルを作製しておき、基材(コンクリート、モルタル等)や既存のフローリングの上に積層する方法、基材や既存のフローリングの上に、温度センサー、蓄熱層、面状発熱層、床材層を順に積層する方法等が挙げられる。
具体的には、上述した製造方法により得られた蓄熱層の上側に面状発熱層を、また、蓄熱層の下側に温度センサーを設置し、さらに、面状発熱層の上側に床材層を公知の接着剤や接着テープ等で貼着して、床暖房パネルを作製し、基材や既存のフローリングの上に公知の接着剤や接着テープを介して積層する方法等が挙げられる。
なお、面状発熱層による発熱を制御するための温度制御装置は、温度センサー及び面状発熱層と接続されており、温度センサーで検出された温度が温度制御装置に伝えられ、面状発熱層による発熱を制御できる仕組みとなっており、温度御装置は、床材層の上側また壁面等、操作しやすい箇所にあればよい。
【0051】
床暖房構造体の厚さとしては、蓄熱層の厚さが、通常1mm〜20mm、さらには2mm〜15mm程度、面状発熱体の厚さが、通常5mm以下、さらには3mm以下程度程度、床材層の厚さが、通常1〜20mm、好ましくは2〜15mm程度であればよい。蓄熱層が厚すぎる場合は、蓄熱層に熱が蓄えられるまでの時間が必要となり、即効性に欠ける場合があり、また、過剰な消費電力も必要となる場合がある。
【0052】
床暖房構造体全体の厚さは、通常40mm以下、本発明では特に25mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下であることが好ましい。床暖房構造体を薄膜化することによって、軽量化でき、簡便に施工することができるとともに、特にリフォームにおいては、施工後、居住空間が圧迫されることがなく快適な居住空間を維持することができる。
また、本発明床暖房構造体は、優れた蓄熱性能を有するため、薄膜でも床暖房運転時の床下への熱の移動を抑制し、また、床暖房停止後の、室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる。したがって、消費電力量を抑え、かつ、快適な居住環境を維持することができる。
【0053】
<耐熱層>
本発明の床暖房構造体は、耐熱層を積層することもでき、特に、蓄熱層と面状発熱体の間に積層することが好ましい。
耐熱層を積層することにより、電熱線などの過剰な温度上昇等に対して、蓄熱層の変形等を抑えることができる。
耐熱層としては、例えば、耐熱温度が100℃以上のガラス層、金属層、耐熱樹脂層等が挙げられる。本発明では薄型であることを考慮し、耐熱層の厚みは、5mm以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう耐熱温度とは、耐熱層が変形しない上限温度のことをいう。つまり、耐熱温度より高くなると耐熱層が変形する可能性がある。
【0054】
ガラス層としては、例えば、ガラス板、または、ガラス繊維が、網目状、斑点状、あるいは、ランダムに配列されたガラス繊維質層等が挙げられる。
【0055】
金属層としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上を含むものが挙げられる。
【0056】
耐熱樹脂層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の合成樹脂のうち1種または2種以上を板状、フィルム状に形成したもの等が挙げられる。
【0057】
このような耐熱層を積層することによって、温度の過剰な上昇に伴う、蓄熱層の変形や燃焼を抑えることができる。さらに、蓄熱層の変形に伴う潜熱蓄熱材の漏れを防止することができる。
また、このような耐熱層には、床面全面を均一の温度にする均熱効果もあり、例えば、床面の一部に面状発熱体を積層した場合の局所的な温度上昇を、床面全面に広げることができる。特に金属層のような熱伝導率の高い層を積層することによって、より優れた均熱効果を発揮することができる。
また、熱伝導率の低いガラス層、耐熱樹脂層を積層することにより、急激な温度上昇を防止することもできる。
本発明では、耐熱性に加えて、均熱効果、急激な温度上昇防止効果も考慮し、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層した耐熱層、さらには、金属層とガラス層を積層した耐熱層を好適に適用することができる。また、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を2層さらには3層以上で積層してもよい。
【0058】
本発明では、耐熱層として、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層したものを使用した場合、少なくとも、蓄熱層側に、ガラス層または耐熱樹脂層が積層されるように耐熱層を積層することが好ましい。
【0059】
耐熱層を積層する方法としては、特に限定されないが、予め蓄熱層と耐熱層を積層したものを上述の方法で積層する方法、蓄熱層を積層した後に耐熱層を積層する方法、予め面状発熱体と耐熱層を積層したものを上述の方法で積層する方法等が挙げられる。
耐熱層は、少なくとも面状発熱体を積層する箇所において積層されていればよく、蓄熱層全面に積層してもよい。
【0060】
<断熱層>
本発明では、さらに断熱層を積層することもできる。
断熱層を積層することにより、外部の温度変化を緩和するとともに、面状発熱体で発熱した熱を外部に逃し難く、効率良く、床面を暖めることができる。
【0061】
断熱層を積層する箇所としては、特に限定されないが、基材や既存のフローリングと蓄熱層の間が好ましい。また、新たに断熱層を積層することもできるが、既に存在する断熱層を用いてもよい。
【0062】
断熱層としては、特に限定されないが、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満(より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下)の断熱性を有するものであることが好ましい。熱伝導率が0.1W/(m・K)未満であることにより、優れた断熱性を有する。
【0063】
このような断熱層としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。また、市販の断熱層を使用してもよい。
【0064】
断熱層の厚さは、通常1mm以上30mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
合板(300×180mm、厚さ5mm)の上に、温度センサー、蓄熱層/耐熱層、面状発熱層、床材層を順に重ね合わせ、試験体を作製した。
蓄熱層/耐熱層:ステアリン酸メチル(相変化温度38℃、潜熱220kJ/kg)80重量部、ポリエステルポリオール(2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000、固形分100%)15.8重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(NCO%17.4%、固形分100%)4.2重量部を温度35℃で均一に混合し、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層(ガラス層/アルミ層、厚さ100μm)を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、ステアリン酸メチル(蓄熱材)が充填された蓄熱層(厚さ5mm)と耐熱層の積層体(蓄熱層/ガラス層/アルミ層)を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。
面状発熱層:シリコンゴム中にニクロム線を蛇行させたシリコンラバーヒーター(300×180mm、厚さ2mm)
床材層:耐熱フローリング(300×180mm、厚さ12mm)
【0066】
(床暖房性能評価)
図1に示すように、内寸が300×180×200mmとなるように、側面及び上面・底面に厚さ25mmのポリスチレンフォームを設置し、底面には試験体の床材層側が内側となるように設置し、試験体ボックスを作製した。
さらに、床表面温度を測定するため、図1に示すように、床材表面の中心に熱電対を設置した。また、図1に示すように、床表面に温度制御装置(温度調節器変圧器)を取り付け、温度センサー及び面状発熱体と接続した。
この試験体ボックスを恒温器の中に設置し、次の実験を行った。
恒温器中の温度を10℃に設定し、15時間放置した。その後恒温器中の温度を10℃に設定したまま、面状発熱層を加熱した。この際、温度制御装置により、温度センサーにより検地した温度が、38℃を上回ると電源OFF、33℃を下回ると電源ONとなるように設定した。
床暖房性能評価として、床表面温度(熱電対により測定)の変化を測定し図4に示した。測定は6時間行った。
【0067】
(比較例1)
図2に示すように、温度センサーの位置以外は、実施例1と同様の方法で、試験体を作製し、床暖房性能評価を行った。結果は、図4に示した。このような床暖房構造では、十分な蓄熱性能が発揮できず、電源ON−OFFサイクルが短く、省エネ効果が十分発揮できなかった。
【0068】
(比較例2)
図3に示すように、合板(300×180mm、厚さ5mm)の上に、面状発熱層、温度センサー、蓄熱層/耐熱層、床材層を順に重ね合わせた以外は、実施例1と同様の方法で、試験体を作製し、床暖房性能評価を行った。結果は、図4に示した。このような床暖房構造では、床表面における立ち上がりからの温度上昇が緩やかとなり、即効性に欠けてしまった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1で使用した試験体ボックスの断面図である。
【図2】比較例1で使用した試験体ボックスの断面図である。
【図3】比較例2で使用した試験体ボックスの断面図である。
【図4】実施例1、比較例1及び比較例2の床表面の温度変化グラフである。
【符号の説明】
【0070】
1:蓄熱層
2:耐熱層
3:面状発熱層
4:床材層
5:合板
6:ポリスチレンフォーム
7:温度センサー
8:温度制御装置
9:熱電対



【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱層の上側に、面状発熱体、床材層が順に積層された床暖房構造体であって、
温度制御のための温度センサーが、蓄熱層の下側に設置されてなることを特徴とする床暖房構造体。
【請求項2】
蓄熱層と面状発熱体との間に、耐熱層が積層されてなる請求項1に記載の床暖房構造体。
【請求項3】
蓄熱層の厚さが、1mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床暖房構造体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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