説明

床材

【課題】上板部に発生する衝撃の吸収性能が向上し、転倒時の怪我や、物を落した場合の衝撃による上板部の割れを防止できる押出成形によって得られる合成樹脂製の床材を提供することを目的としている。
【解決手段】押出成形によって得られ、上板部と下板部との間に押出方向に連続するリブを備えた合成樹脂製の床材であって、前記リブの上板部側から下板部側までのリブ厚み方向の中心に沿う線の長さが、上板部と下板部との間隔より長いことを特徴する床材ことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形によって得られる合成樹脂製の床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家屋の外壁面から側方に突き出た形態に形成されるバルコニー、ベランダ、テラス等の床面を構築するのに、図6に示すようなデッキ材と称される押出成形によって得られる合成樹脂製の床材100が用いられている(特許文献1参照)。
図6に示すように、この床材100は、上板部110と下板部120との間を中空にするとともに、上板部110にかかる荷重を、上板部110と下板部120との間に所定間隔に設けた押出方向に連続する偏平なリブ130によって受けることによって床材全体を薄肉化させて、軽量化を図るようにしている。
【0003】
しかし、従来の上記床材100は、リブ130が上板部110及び下板部120に対し垂直に設けられている。
したがって、上板部110、特に上板部110のリブ130の直上で発生する衝撃を吸収しにくく、万一、床材100上で転んだ人が、リブ130の直上部分に頭を打ちつけた場合、大怪我をする恐れがある。また、リブ130上に物を落した場合は衝撃で上板部110が割れるという問題がある。
なお、図6中、200は床材100を受ける根太、300は、床材100を根太200に固定するビス400を隠すキャップ部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−336905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、上板部に発生する衝撃の吸収性能が向上し、転倒時の怪我や、物を落した場合の衝撃による上板部の割れを防止できる押出成形によって得られる合成樹脂製の床材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる床材は、押出成形によって得られ、上板部と下板部との間に押出方向に連続するリブを備えた合成樹脂製の床材であって、前記リブの上板部側から下板部側までのリブ厚み方向の中心に沿う線の長さが、上板部と下板部との間隔より長いことを特徴する床材ことを特徴としている。
【0007】
本発明において、床材を構成する合成樹脂としては、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS(アクリトニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、上記合成樹脂に必要に応じて、必要に応じて熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、充填剤等を添加してもよい。
【0008】
上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メ
ルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー
、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブ
チル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三
塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム− 亜鉛系安定剤、バリウム− 亜鉛系安定剤、バリウム− カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
上記の安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化ア
マニ豆油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エス
テル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
上記の滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤等が挙げられる。上記の内部滑剤は、成形加
工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記の内部滑
剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステア
リルステアレート、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビ
スアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記の外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用さ
れる。上記の外部滑剤としては特に限定されず、例えば、モンタン酸系ワックス、パラフィン系ワックス、ポリオレフイン系ワックス、エステル系ワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記の加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子10万〜200万のア
ルキルアクリレート/ アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記の酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げら
れる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記の光安定剤として
は特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、べンゾフェノン系、べンゾトリアゾ
ール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定
剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染
料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フ
ェロシアン化物系、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。しかし、赤外線を吸
収しにくいという観点から、有機系の黒色顔料が望ましい。これらは単独で用いてもよく
、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記充填材としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、木粉などが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる床材は、以上のように、リブの上板部側から下板部側までのリブ幅方向の中心を結ぶ線分の長さを、上板部と下板部との間隔より長くしたので、床材自体に弾力性を持たせることができ、転倒時の衝撃をやわらげることができる。また、リブ上に物を落した場合でもその衝撃力を吸収・分散させることで床材自体の破壊を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる床材の第1の実施の形態をあらわす斜視図である。
【図2】本発明にかかる床材の第2の実施の形態をあらわす断面図である。
【図3】本発明にかかる床材の第3の実施の形態をあらわす断面図である。
【図4】本発明にかかる床材の第4の実施の形態をあらわす断面図である。
【図5】本発明にかかる床材の第5の実施の形態をあらわす断面図である。
【図6】従来の床材の1例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる床材の第1の実施の形態をあらわしている。
【0019】
図1に示すように、この床材Aは、PVC、PP、PE、ABS等の熱可塑性樹脂を押出成形することによって製造され、本体部1aと、固定部2と、カバー部3とを備えている。
本体部1aは、上板部11と、下板部12と、2つの側板部10と、4つのリブ13とを備えている。
【0020】
上板部11と、下板部12と、2つの側板部13とは、成形時の押出方向からみて偏平な矩形をした筒状の中空体を形成している。
そして、上板部11、下板部12及び2つの側板部13は、その肉厚が、1.5〜2.5mmで、上板部11と下板部12の間隔が、25〜35mm、上板部11及び下板部12の幅(押出方向に直交する方向)が200〜350mmとなっている。
【0021】
4つリブ13は、その肉厚が1.0〜2.5mmの平板状をしていて、押出方向からみて折れ線形状をなすように配置されている。
すなわち、床材Aの幅方向の両側に配置されるリブ13は、幅方向の一端が下板部12と側板部13とのコーナーに一体化され、他端が上板部11の下面に一体化されている。
【0022】
他方、床材Aの幅方向の中央側に配置されるリブ13は、幅方向の一端が上板部11側で幅方向の両側に配置されるリブ13の他端と突き合った状態で上板部11の下面に一体化され、他端が、もう一方の中央部側に配置されるリブ13の他端と突き合った状態で下板部12の上面に一体化されている。
また、各リブ13は、上板部11から下板部12に到るその厚み方向の中心を結ぶ線分の長さが、上板部11と下板部12の間隔の約1.6倍になっている。
【0023】
固定部2は、押出方向からみて略L字形をしていて、本体部1aの幅方向の一方でL字の短辺側が下板部12の端から延出するように設けられ、L字の長辺側が側板部10に平行に立ち上がるように設けられ、その上端が上板部11の厚さ分だけ上板部11の上面より低くなっている。
カバー部3は、固定部2と点対称形状に設けられている。すなわち、本体部1aの幅方向の他方でL字の短辺側が上板部11の端から延出するように設けられ、L字の長辺側が側板部10に平行に吊り下がるように設けられ、その下端が下板部12の厚さ分だけ下板部12の下面より上側になっている。
【0024】
そして、この床材Aは、図示していないが、根太等の下地上に下板部12が受けられるように配置し、固定部2のL字の短辺をビス等によって、下地に固定し、同形状の別の床材Aのカバー部3のL字の長辺が固定された床材Aの固定部2のL字の長辺部と側板部10と間に挿入し、カバー部3のL字の短辺によってビスが隠れるようになるように、下地上に配置し、同様にして固定部2を下地に固定することを繰り返し、バルコニー、ベランダ、テラス等の床を構築することができる。
【0025】
このようにして得られる床は、床材Aのリブ13が、上板部11から下板部12に到るその厚み方向の中心を結ぶ線分の長さが、上板部11と下板部12の間隔の約1.6倍になっていて、各リブ13の上板部11との固定位置(一体化位置)と、下板部12との固定位置とが垂直方向
に並んでいない、すなわち、床材Aの幅方向にずれているので、床材A自体に弾力性を持たせることができ、転倒時の衝撃をやわらげることができる。また、リブ13上に物を落した場合でもその衝撃力を吸収・分散させることで床材A自体の破壊を防ぐことができる。
【0026】
図2は、本発明にかかる床材の第2の実施の形態をあらわしている。
図2に示すように、この床材Bは、以下に述べる構成以外は、上記第1の実施の形態の床材Aと同様になっている。
【0027】
この床材Bは、平板状の4つのリブ13に代えて、本体部1bが、等ピッチに配置された3つの第1リブ14と、2つの第2リブ15を備えている。
第1リブ14は、押出方向からみて略8の字形をしていて、8の字の上端が上板部11の下面に一体化され、8の字の下端が下板部12の上面に一体化されている。
【0028】
すなわち、第1リブ14は、その厚み方向の中心を結ぶ線が湾曲しているとともに、上板部11から下板部12に到る線の長さが上板部11と下板部12の間隔の約π/2倍になっている。
第2リブ15は、押出方向からみて略3の字形をしていて、3の字の上端が、上板部11と側板部10とのコーナーに、3の字の下端が、下板部12と側板部10とのコーナーに一体化されている。すなわち、第2リブ15もその厚み方向の中心を結ぶ線が湾曲しているとともに、上板部11から下板部12に到る線の長さが上板部11と下板部12の間隔の約π/2倍になっている。
【0029】
そして、この床材Bは、第1リブ14及び第2リブ15がそれぞれ、その厚み方向の中心を結ぶ線が湾曲していて上板部11から下板部12に到る線の長さが上板部11と下板部12の間隔の約π/2倍と長くなっているので、床材B自体に弾力性を持たせることができ、転倒時の衝撃をやわらげることができる。また、第1リブ14上に物を落した場合でもその衝撃力を吸収・分散させることで床材B自体の破壊を防ぐことができる。
【0030】
図3は、本発明にかかる床材の第3の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この床材Cは、平板状の4つのリブ13に代えて、本体部1cが、押出方向からみて1/6の円弧状をしている4つのリブ16を備えている以外は、上記床材Aと同様になっている。
【0031】
詳しく説明すると、床材Cの幅方向両側に配置されるリブ16は、それぞれ、上端が上板部11と側板部10とのコーナーに、下端が、上板部11と側板部10とのコーナーに一体化されている。
一方、中間位置に配置される2つのリブ16は、隣接する両端側のリブ16と円弧の外側が対面するように、上端が上板部11に、下端が下板部12にそれぞれ一体化されている。
なお、リブ16は、押出方向からみて1/6の円弧状をしているので、その厚み方向の中心を結ぶ線が湾曲していて上板部11から下板部12に到る線の長さが上板部11と下板部12の間隔の約1.1倍となっている。
【0032】
図4は、本発明にかかる床材の第4の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この床材Dは、平板状の4つのリブ13に代えて、本体部1dが、押出方向からみて1/6の円弧状をしている8つのリブ17を備えている以外は、上記床材Aと同様になっている。
【0033】
詳しく説明すると、床材Dの幅方向両側に配置されるリブ17は、それぞれ、上端が上板部11と側板部10とのコーナーに、下端が、上板部11と側板部10とのコーナーに一体化されている。
一方、中間位置に配置される6つのリブ17は、2つずつ対となっている。そして、対となった2つのリブ17は、それぞれ円弧の内側を対向させ、上端同士及び下端同士を付き合わせた状態で、上端が上板部11に、下端が下板部12にそれぞれ一体化されている。
なお、リブ17は、押出方向からみて1/6の円弧状をしているので、その厚み方向の中心を結ぶ線が湾曲していて上板部11から下板部12に到る線の長さが上板部11と下板部12の間隔の約1.1倍となっている。
【0034】
図5は、本発明にかかる床材の第5の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この床材Eは、平板状の4つのリブ13に代えて本体部1eが、押出方向からみて半円弧を上下反転させて一体化したようなSの字形をした3つのリブ18を備えている以外は、上記床材Aと同様になっている。
なお、リブ18は、押出方向からみて半円弧を上下反転させて一体化したようなSの字形をしているので、その厚み方向の中心を結ぶ線が湾曲していて上板部11から下板部12に到る線の長さが上板部11と下板部12の間隔の約π/2倍になっている。
【0035】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。上記の実施の形態では、リブの配置ピッチが等ピッチであったが、上板部の幅方向の中央部に密に配置するなど等ピッチでなくても構わない。
また、上記第2の実施の形態では、略3の字形(8の字を2つ割りにした形)をした2つの第2リブ15を本体部1bの幅方向の両側に備えていたが、側板部10によって十分な強度を備える場合は、第2リブ15を設けなくても構わない。
【符号の説明】
【0036】
A,B,C,D,E 床材
1a,1b,1c,1d,1e 本体部
11 上板部
12 下板部
13,14,15,16,17,18 リブ
2 固定部
3 カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形によって得られ、上板部と下板部との間に押出方向に連続するリブを備えた合成樹脂製の床材であって、
前記リブの上板部側から下板部側までのリブ厚み方向の中心を結ぶ線の長さが、上板部と下板部との間隔より長いことを特徴する床材。
【請求項2】
リブ厚み方向の中心を結ぶ線の長さが、上板部と下板部との間隔の1.1〜1.6倍である請求項1に記載の床材。
【請求項3】
リブが平板状をしているとともに、リブの上板部側と、リブの下板部側とが床材の幅方向にずれている請求項1または請求項2に記載の床材。
【請求項4】
リブ厚み方向の中心を結ぶ線が湾曲している請求項1または請求項2に記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−270486(P2010−270486A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122660(P2009−122660)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】