説明

床材

【課題】合成樹脂をその表面の外層に用いても蓄熱を抑えることができると共に、利用者に安らぎ感を与えると言った良好な外観を有する床材を提供する。
【解決手段】表面部分が遮熱性顔料を含む合成樹脂により形成されているため、床材Pの表面温度上昇を抑制することができ、床材P上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができると共に、床材Pに天然木様の外観を付与することができ、外観上好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に露出する表面部分が合成樹脂製の床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、遊歩道や公園施設、休憩スペース等において設置されるベンチやテーブル、八ツ橋、ボードウォークの他、競技場の観覧席、或いは住宅のベランダやテラスのデッキ等に用いられる合成樹脂製の床材については、例えば、20質量%〜80質量%の木粉を含有した合成樹脂からなる硬質板状体11と、該硬質板状体11の一面に積層された樹脂発泡体1とからなる床材であって、前記樹脂発泡体1は、シート状の連続発泡層2の少なくとも一面に凸状に形成された発泡倍率の高い複数の高発泡部3を備え、該高発泡部3の全表面は前記連続発泡層2と共に発泡倍率の低い低発泡層4により被覆され、且つ、前記低発泡層4により被覆された相隣接する前記高発泡部3…間に凹部41が形成されることにより凹凸が形成されている床材が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載のような従来の床材は、屋外で用いられ日光が照射された際、合成樹脂の熱伝導率が低いために、一度床材に蓄熱されると中々放熱されず、夏場においては表面温度が約60℃程度まで上昇し、床材上を素足で歩行したり、床材を素手で触ると、火傷をする恐れがあった。
【0004】
それを解決するために、日射を反射して蓄熱を抑制する方法として、特許文献2には、日射反射率の高い顔料を分散した押出成型したことを特徴とする赤外線反射機能を有する樹脂成型物が開示され、その一例として樹脂デッキが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−166335号公報
【特許文献2】特開2004−115556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のような従来の樹脂デッキでは、日射を反射して蓄熱を抑制できる効果は高いが、表面の模様が単調となり、遊歩道や公園施設、休憩スペース等に設置した場合、外観上好ましいとは言えないものであった。
【0007】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、合成樹脂をその表面部分に用いても蓄熱を抑えることができると共に、利用者に安らぎ感を与えると言った良好な外観を有する床材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る床材は、表面部分が遮熱性顔料を含む合成樹脂により形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る床材は、合成樹脂を含む材料からなる内層の外側に合成樹脂層が形成され、該合成樹脂層の表面部分に遮熱性顔料が含まれていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る床材は、芯材の外側に合成樹脂層が形成され、該合成樹脂層の表面部分に遮熱性顔料が含まれていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る床材は、前記芯材の前記表面には複数の縦リブが長手方向に沿って形成されると共に、該縦リブが形成された前記表面が合成樹脂により被覆され、前記被覆合成樹脂により縦リブが隠蔽され、且つ前記縦リブ間に形成された溝部に被覆合成樹脂が充填され、前記被覆合成樹脂よりなる合成樹脂層の表面部分、又は被覆合成樹脂の外側に形成された合成樹脂からなる外層の表面部分に、遮熱性顔料が含まれていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表面部分が遮熱性顔料を含む合成樹脂により形成されているため、遮熱性顔料により床材の表面温度上昇を抑制することができ、床材上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができると共に、床材に天然木様の外観を付与することができ、外観上好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、合成樹脂を含む材料からなる内層の外側に合成樹脂層が形成され、該合成樹脂層の表面部分に遮熱性顔料が含まれているため、外層のみに遮熱性顔料を含有させて表面温度上昇を抑制できるので、遮熱性顔料の使用量を低減することができる。
【0014】
また、本発明によれば、芯材の外側に合成樹脂層が形成され、該合成樹脂層の表面部分に遮熱性顔料が含まれていることを特徴とするため、前記芯材に金属を使用した場合は、合成樹脂よりも熱伝導性の高い金属を伝わって放熱されるので、例え表面に蓄熱されたとしても、効率的に放熱することができる。
【0015】
また、本発明によれば、前記芯材の前記表面には複数の縦リブが長手方向に沿って形成されると共に、該縦リブが形成された前記表面が合成樹脂により被覆され、前記被覆合成樹脂により縦リブが隠蔽され、且つ前記縦リブ間に形成された溝部に被覆合成樹脂が充填され、前記被覆合成樹脂よりなる合成樹脂層の表面部分、又は被覆合成樹脂の外側に形成された合成樹脂からなる外層の表面部分に、遮熱性顔料が含まれているため、縦リブによって芯材の表面積は増大することから、芯材の表面に被覆された合成樹脂に蓄熱される熱を縦リブによって更に効率よく放熱することができ、床材上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る床材の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る床材の実施の一形態を示す縦断面図及び要部拡大図である。
【図3】図2に示す実施形態における突部の変形実施例を示す拡大縦断面図である。
【図4】図2に示す実施形態における突部の別の変形実施例を示す拡大縦断面図である。
【図5】図2に示す実施形態の変形実施例を示す縦断面図である。
【図6】図2に示す実施形態の別の変形実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る床材の実施の別の形態示す縦断面図である。
【図8】図7に示す実施形態の変形実施例を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係る床材の実施の更に別の形態示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
Pは床材であって、横長の断面略矩形の形状となされ、金属製の芯材1の表面全周に亘り遮熱性顔料が配合された合成樹脂からなる被覆合成樹脂21が被覆され、この被覆合成樹脂21によって形成された合成樹脂層2の表面部分に遮熱性顔料が含まれている。
【0018】
前記遮熱性顔料としては、黒色顔料として、赤外線を吸収するカーボンブラックに代えて、例えば、赤外線領域の光の吸収率が低く反射率の高い有機系の黒色系顔料が混入された顔料であって、各種色目の遮熱性顔料を樹種別の色目に調合することにより、スギ、ナラ、マツ等各樹木の色を呈するように調整できるようになされ、前記遮熱性顔料が熱可塑性合成樹脂に配合されて、外層2に樹木の色目が表現されて成形されるのに加えて、木粉が配合されて外観及び触感において木質感を高めるようになされている。
【0019】
芯材1は、横長の断面略矩形の形状となされ、長手方向に沿って3個の横長の断面略矩形の中空部11が並列に形成され、該中空部11間は上下方向に設けられた2個の縦壁12によって仕切られている。そして、芯材1の上側の表面13には複数の縦リブ3が長手方向に沿って形成されると共に、該縦リブ3が形成された前記表面13が被覆合成樹脂21により被覆され、該被覆合成樹脂21により縦リブ3が隠蔽され、且つこの被覆合成樹脂21が縦リブ3間に形成された溝部4に充填されている。
【0020】
なお、遮熱性顔料は被覆合成樹脂21に配合されているため、被覆合成樹脂21の全体に分散されることとなり、遮熱性顔料が被覆合成樹脂21全体に分散された状態でもよいが、遮熱を効果的に発揮させるには、被覆合成樹脂21によって形成される合成樹脂層2の表面部分に多く分散させるようにするのが好ましいため、被覆合成樹脂21の外側に、遮熱性顔料を多く含む合成樹脂により外層を形成するようにしてもよい。
【0021】
本形態においては、遮熱性顔料と、前記縦リブ3による表面積の増大と、空気の流通が可能な中空部11とにより、芯材1を被覆している被覆合成樹脂21からなる合成樹脂層2に蓄熱される熱が効果的に冷却される。
【0022】
また、前記縦リブ3の先端には横方向に左右両側に向けて突部31が形成されている。該突部31によって、前記溝部4が蟻溝状になり、すなわち溝部4は入口の幅が奥部の幅よりも狭くなり、そこに被覆合成樹脂21が充填されるので、充填された被覆合成樹脂21は突部31によって外方に抜け難くなり、芯材1の表面全周に被覆された被覆合成樹脂21が芯材1から剥がれ難くなされている。
【0023】
前記突部31は、縦リブ3の先端に横方向に左右両側に向けて形成されているが、この形態に限定されるものではなく、図3に示す如く、縦リブ3の中央部に形成してもよいし、図4に示す如く、縦リブ3の先端に横方向に片方のみ形成してもよい。要は、溝部4に充填される被覆合成樹脂21に対して、引っ掛りとなるように形成されればよく、突部31の形状や形成される位置については適宜設定すればよい。
【0024】
さらに、芯材1の左右の側面14の下端部には蟻溝状の凹部5が長手方向に沿って形成されており、当該凹部5にも被覆合成樹脂21が充填されているため、芯材1の表面全周に亘り被覆されている被覆合成樹脂21がより剥がれ難くなされている。
【0025】
また、芯材1については、図1,2に示す如く、上側の表面13のみに縦リブ3が形成されているものに限定されるものではなく、図5に示す如く、左右の側面14のうち少なくとも1面にも縦リブ3が形成されていてもよいし、図6に示す如く、芯材1の下面15にも縦リブ3が形成されていてもよい。かように縦リブ3を形成する面を増やすことによって、更に放熱効果を向上させることができる。
【0026】
更には、芯材1は断面略矩形のもののみならず、図7に示す如く、断面略円形状であってもよく、その場合、縦リブ3は略円形の芯材1の中心点に対して放射状に全周に亘って形成されてもよいし、図8に示す如く、芯材1の必要な部分のみに形成されてもよい。
【0027】
なお、図面に示す形態においては、芯材1の全周に亘り被覆合成樹脂21が被覆されて、全周に合成樹脂層2が形成されているが、必ずしも芯材1の全周に被覆合成樹脂21が被覆されている必要はなく、例えば図1に示す如き床材Pとして本発明を用いる場合、表面13及び両側面14を被覆合成樹脂21で被覆し、下面15は被覆しないようにしてもよい。かようにすれば、外側からは見えない床材Pの下側の面は被覆合成樹脂21により被覆されないため、外観を損なうことなく、且つ芯材1の下面15からの更なる放熱効果が発現され、好ましい。
【0028】
更には、図2及び図5に示す形態においては、芯材1の両側面14の下端部に設けられている凹部5を、側面14の中央部或いは上端部に設けて、芯材1の表面13から側面14中央部或いは上端部の凹部5にかけて被覆合成樹脂21を被覆すれば、芯材1の側面14が露出する部分が形成されるため、更なる放熱効果が期待できる。つまり、床材Pの用いられる場所や用途によって、芯材1の被覆が必要な面に被覆合成樹脂21を被覆すればよい。
【0029】
本発明に係る床材Pは、その外形によって様々な用途に用いることができる。例えば、横長の断面略矩形であれば床材や壁材等に適用でき、断面略正方形状であれば柱材等に適用でき、断面略円形状であれば柱材や手摺材等に適用できる。中でも図1,2に示す如く、床材Pを横長の断面略矩形に形成して、下地材N上に並列に複数配置して床として用いれば、外層2をその表面に用いても蓄熱を抑えることができるので、床材上を素足で歩行してもやけどする恐れを低減できると共に、金属製の芯材1を用いても、傘や杖等で突いたりされた際の不快な金属音を低減することができ、好ましい。
【0030】
芯材1の材質については、金属製であれば特に限定されるものではないが、中でも熱伝導性が高く、且つ軽量であるアルミ合金製型材が好適に用いられる。アルミ合金製型材を用いて芯材1を形成することによって、芯材1を被覆している被覆合成樹脂21に蓄熱された熱を高い熱伝導率を有するアルミ合金製型材によって放熱させることができるので、床材P上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができ、好ましい。
【0031】
そして、芯材1を被覆している被覆合成樹脂21は、遮熱性顔料以外に、合成樹脂分のみから形成されてもよいし、フィラー等の添加剤が配合され形成されてもよい。外層2の種類は特に限定されるものではなく、例えばポリオレフィン系樹脂が用いられ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物等、或いはそれらの2種以上の混合物等から適宜選択して使用することができる。中でも、床材等の人工木として要求される剛性や表面硬度、線膨張係数が小さく寸法安定性が良い点、耐候性等の面で、ポリエチレン樹脂が好適に用いられる。
【0032】
フィラーとしては、タンカル、タルク、マイカ、シリカ、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、ガラスまたはガラス繊維、クレー、木粉、炭素繊維、モンモリロナイト、フライアッシュの群の中から少なくとも1種類以上選択すればよいが、木粉をフィラーとして用いると、合成樹脂で形成しているにもかかわらず、木質感を備えるものとなり、強度を満足すると共に風合いの面でも好ましい。
【0033】
また芯材1を被覆して合成樹脂層2を形成する被覆合成樹脂21は、必要に応じて発泡させても良い。発泡の手法としては、従来の公知の手法がいずれも利用できる。一般的には、熱分解や化学反応によってガスを発生する化学発泡と、低沸点の液体に熱をかけて気化させる物理発泡とに分類でき、化学発泡剤としては無機系の重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、軽金属、アジド化合物等、また有機発泡剤としてアゾ系、ニトロソ系、ヒドラジド系等が、任意の組合せで使用できる。また、特に2倍を越える高発泡倍率での発泡には主に物理発泡が用いられ、発泡剤としては炭酸ガスや脂肪族炭化水素が主に用いられる。また、物理発泡に際しても発泡体のセル形状を整えるため化学発泡剤を併用することが多い。
【0034】
また被覆合成樹脂21には、必要に応じて例えば熱安定剤、酸中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料又は染料等の着色剤、充填剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、脱水剤、艶調整剤等を添加してもよい。
【0035】
また本発明においては、金属製の芯材1を用いることなく、図9(イ)に示す如く、合成樹脂製の中空形状の内層6の外側に遮熱性顔料を含む木粉入り合成樹脂層2を配置し構成してもよいし、図9(ロ)に示す如く、前記内層6が中実形状であってもよい。この実施形態のおいては、内層6と合成樹脂層2とを押出成型機により2層同時押出して形成される。
【0036】
さらに本発明においては、金属製の芯材1の外側に、複数の被覆合成樹脂21を多層状に形成し、その表面部分に遮熱性顔料を含むようにしてもよい。要は、床材Pの表面部分が遮熱性顔料を含む合成樹脂により形成されていればよく、被覆合成樹脂21が多層の場合には、少なくともその最外層に遮熱性顔料を分散させておけばよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、表面部分が遮熱性顔料を含む合成樹脂により形成されているため、床材の表面温度上昇を抑制することができ、床材上を素足で歩行したり素手で触ったりした際、火傷をする恐れを低減することができると共に、床材に天然木様の外観を付与することができ、外観上好ましい床材や柱材としての用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 芯材
11 中空部
12 縦壁
13 表面
14 側面
15 下面
2 合成樹脂層
21 被覆合成樹脂
3 縦リブ
31 突部
4 溝部
5 凹部
6 内層
P 床材
N 下地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部分が遮熱性顔料を含む合成樹脂により形成されていることを特徴とする床材。
【請求項2】
合成樹脂を含む材料からなる内層の外側に合成樹脂層が形成され、該合成樹脂層の表面部分に遮熱性顔料が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の床材。
【請求項3】
芯材の外側に合成樹脂層が形成され、該合成樹脂層の表面部分に遮熱性顔料が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の床材。
【請求項4】
前記芯材の前記表面には複数の縦リブが長手方向に沿って形成されると共に、該縦リブが形成された前記表面が合成樹脂により被覆され、前記被覆合成樹脂により縦リブが隠蔽され、且つ前記縦リブ間に形成された溝部に被覆合成樹脂が充填され、前記被覆合成樹脂よりなる合成樹脂層の表面部分、又は被覆合成樹脂の外側に形成された合成樹脂からなる外層の表面部分に、遮熱性顔料が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−252366(P2011−252366A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128599(P2010−128599)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】