説明

床材

【課題】下地塗装した床材の表面を表面特性付与剤を配合した上塗り鏡面塗料で仕上げ塗装し、光沢ムラがなくかつアレルゲン活動度低下等の表面特性が付与された光沢ムラのない床材を提供する。
【解決手段】下地基板4に下塗り鏡面塗料を塗布して下塗り鏡面塗装層2を設けるとともに、該下塗り鏡面塗装層2の上に表面特性付与剤5を配合した上塗り鏡面塗料を塗布してなる床材において、上記上塗り鏡面塗料を塗布した後の床材仕上がり光沢度に対して、上記下塗り鏡面塗装層2の光沢度を低くしたことを特徴とする床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は床材に関するものであり、詳しくは、下地基板の表面に鏡面塗装を施してなる木質床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質系の床材は掃除等の手入れが容易であり、また生活の洋風化が進むとともに、集合住宅を中心にフローリング材としてその使用が急速に拡大している。しかし、世界的に木材資源の枯渇化が進んで無垢の木材の入手が困難となり、その価格も高騰しつつあるなかで、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等、種々の木質基材に表面化粧を施して仕上げされた複合床材が普及している。
【0003】
一方、近年ダニの死骸やフン、ハウスダストといったアレルゲンによるシックハウス症候群や、花粉アレルゲン等の各種のアレルゲンによる花粉症等の症状が社会的な問題となり、上記各種のアレルゲンによる発症を防ぐため、例えば、花粉アレルゲンの活動を抑制する特殊加工剤を極薄くコーティングし、花粉症等の予防対策が講じられたカーテンが開発されている。
【0004】
また、住宅分野においては、床材の表面を鏡面仕上げするとともに、鏡面仕上げ塗料にアレルゲンの活動を抑制する特殊加工剤を配合して塗装された床材が知られている。上記アレルゲン対策を施した床材は、例えば、風に運ばれて室内に入ったり、ヒトの着衣と共に持ち込まれ、床に落ちた花粉等のアレルゲンの活動を抑制するため、室内での手軽な花粉症予防対策とすることができる。
【0005】
一方、特開2004−90319号公報には、基材上に耐摩剤を含有する耐摩耗樹脂層を設けた化粧材について、耐摩耗樹脂層上に、艶消剤を含有する艶消樹脂層を、耐摩耗樹脂層の粗面を平滑化する平滑化樹脂層を介して積層した後、更に艶消樹脂層上に部分的に艶向上樹脂層を積層してなる化粧材が開示されている。
【0006】
また、平滑化樹脂層中には体質顔料を含有させるとよく、さらに、基材と耐摩耗樹脂層間に、ベタ柄層、柄層を設けると意匠性がより向上すると述べられている。加えて、柄層の柄模様に、艶向上樹脂層の形成模様を位置同調させると意匠性がより向上するとともに、耐摩耗性、他の接触物を傷付けない耐傷付き性と共に、グロスマット(表面艶変化模様)による意匠感にも優れた化粧材とすることができると、その効果が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−90319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記、例えば、花粉症対策が講じられた床材においては、鏡面仕上げ用の塗料は透明な下塗り塗膜の上に重ね塗りして塗布されるのであるが、表面に特性を付与する薬剤が配合されている関係で鏡面の光沢度が、単一組成の透明下塗り塗膜の光沢度より低下し、そのため床材表面の所々で光沢に差異が生じて光沢ムラが発生するという問題がある。
【0009】
一方、上記特許文献1に記載の化粧材においては、グロスマットによる、例えば木目導管柄の擬似立体感を表現した意匠性に優れたものであり、床材としても使用可能であるが、表面塗膜に、例えば花粉アレルゲン等の活動を抑制する等の表面特性を付与することの記載はみられない。
【0010】
本願発明は上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は床材を鏡面仕上げして意匠性に優れたものとするとともに、床材表面に花粉アレルゲンやダニの死骸、フン、ハウスダストといった各種アレルゲンの活動抑制効果を発揮させる等の表面特性を付与した床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る床材は、下地基板に下塗り鏡面塗料を塗布して下塗り鏡面塗装層を設けるとともに、該下塗り鏡面塗装層の上に表面特性付与剤を配合した上塗り鏡面塗料を塗布してなる床材において、上記上塗り鏡面塗料を塗布した後の床材仕上がり光沢度に対して、上記下塗り鏡面塗装層の光沢度を低くしたことを特徴とする。
【0012】
上記下地基板としては、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、木質プラスチックボード(WPB)等種々の木質基材をあげることができる。中でも厚手の化粧合板が強度に優れていることや、入手が容易であり、また加工性も良好であることから好適に用いられる。
【0013】
下地基板に下塗りされる下塗り鏡面塗料としては、透明な樹脂層を形成する熱硬化性樹脂からなる塗料が用いられる。上記熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂の単独あるいは、これらの2種類以上の混合系で用いることができる。
【0014】
ポリエステル樹脂としては、熱硬化性のものとして無水マレイン酸のような不飽和二塩基酸および無水フタル酸のような飽和二塩基酸とグリコール類とを縮合反応させて合成され、分子内に不飽和結合とエステル結合を有するものである。また通常、この樹脂には架橋剤としてスチレンモノマー、アクリルモノマー等が配合されていて、いわゆる、不飽和ポリエステル樹脂と称されるものを用いるが、その形態は特に限定されるものではない。
【0015】
ビニルエステル樹脂としては、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂あるいはノボラック型ビニルエステル樹脂あるいはその両方を混合して用いることができる。ここで、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と酸との付加反応物であって、いずれも両末端のみに反応性不飽和基を有するものである。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型等の各種のものを用いることができる。また通常、このビニルエステル樹脂には架橋剤としてスチレンモノマー、アクリルモノマー等が配合されているものであるが、その形態を特に限定されるものではない。
【0016】
熱硬化型アクリル樹脂としては、通常熱硬化型として、メチルメタアクリレートモノマーあるいは、多官能のアクリルモノマーあるいはプレポリマー、あるいはポリマーのそれぞれ2種以上の混合物で構成されたアクリルシロップと称されるものを用いるが、その形態を特に限定されるものではない。
【0017】
表面特性付与剤を配合して用いる上塗り鏡面塗料としては、上記下塗り鏡面塗料と同様に、透明な樹脂層を形成する塗料、すなわち、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂の単独あるいは、これらの2種類以上の混合系からなる塗料が用いられる。
【0018】
上記表面特性付与剤としては、例えば、ハウスダストや花粉アレルゲン等各種アレルゲンの活動を抑制する特殊加工剤、耐摩耗剤等をあげることができる。
【発明の効果】
【0019】
本願請求項1記載の発明にかかる床材においては、下塗り鏡面塗装層の光沢度が、上塗り鏡面塗装層とこの上塗り鏡面塗装層を透過して見える下塗り鏡面塗装層とを含めての床材仕上がり光沢度よりも低くされているため、光沢に差異が生じることがなく、床材表面に光沢ムラが発生することを防ぐ。そして、落ち着いた透明感のある意匠性に優れた床材を得ることができる。
【0020】
例えば、花粉アレルゲン等の活動を抑制する特殊加工剤を配合して上塗り鏡面塗装を行えば、床材には床上に落ちた花粉あるいは、ハウスダスト等のアレルゲンの活動を抑制する表面特性が付与されるため、花粉シーズンでは室内での手軽な花粉症予防対策とすることができる。
【0021】
さらに、花粉アレルゲンの活動を抑制する特殊加工剤を極薄くコーティングしたカーテンと共に用いることにより室内での花粉症等の予防対策をより確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の床材を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明にかかる床材の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、厚手の合板の表面を化粧シートで化粧してなる化粧合板を下地基板4として用い、その上に下塗り鏡面塗装層2と上塗り鏡面塗装層1を設けた本願発明の床材を模式的に示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、下地基板4として用いられた化粧合板の表面には木目模様等の柄の意匠性を向上させるための着色化粧用下塗り塗料がベタ塗りされ、化粧用下塗り層3が設けられている。そして、上記化粧用下塗り層3の上に下塗り鏡面塗料を塗布して下塗り鏡面塗装層2を設け、さらに表面特性付与剤5を配合した上塗り鏡面塗料を塗布して上塗り鏡面塗装層1を設ける。
【0025】
ここで、床材仕上がり光沢度は、上塗り鏡面塗装層1とこの上塗り鏡面塗装層1を透過して見える下塗り鏡面塗装層2を含めての光沢度であり、本願発明の床材においては、上記下塗り鏡面塗装層2の光沢度をこの床材仕上がり光沢度よりも低くしている。
【0026】
上記した光沢度は、日本工業規格(JIS)に定められた方法によって測定し、例えば、上塗り鏡面塗装層1の光沢度を40〜60とし、下塗り鏡面塗装層2の光沢度を20〜60に設定するとともに、下塗り鏡面塗装層2の光沢度を低くすることによって光沢に差が生じることがなく、また下地からの乱反射を防いで床材表面における光沢ムラの発生をなくすことができる。
【0027】
上記上塗り鏡面塗装層1の光沢度と下塗り鏡面塗装層2の光沢度は上記数値範囲で下塗り鏡面塗装層2の光沢度を低くすることによって所望の床材仕上がり光沢度が得られ、表面には光沢ムラがなく、落ち着いた透明感のある意匠性に優れた床材を得ることができる。
【0028】
このとき、例えば、上塗り鏡面塗料に表面特性付与剤5としてアレルゲンの活動を抑制する特殊加工剤を配合して上塗り鏡面塗装層1を形成すれば、室外から風によって運び込まれた花粉、ヒトの着衣と共に持ち込まれて床に落ちた花粉あるいは、ハウスダスト等のアレルゲンの活動を抑制するため、花粉シーズンにおいては室内での手軽な花粉症予防対策とすることができる。
【0029】
なお、上記した実施形態は、下地基板として厚手の化粧合板を用いた例について述べたが、化粧合板に限られず、パーティクルボードや中密度繊維板(MDF)等の木質ボードを用いてもよい。このように本願発明に係る床材は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0030】
1 上塗り鏡面塗装層
2 下塗り鏡面塗装層
3 化粧用下塗り層
4 下地基板
5 表面特性付与剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板に下塗り鏡面塗料を塗布して下塗り鏡面塗装層を設けるとともに、該下塗り鏡面塗装層の上に表面特性付与剤を配合した上塗り鏡面塗料を塗布してなる床材において、上記上塗り鏡面塗料を塗布した後の床材仕上がり光沢度に対して、上記下塗り鏡面塗装層の光沢度を低くしたことを特徴とする床材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−1877(P2012−1877A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134661(P2010−134661)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】