説明

床構築用構造体およびそれを用いた床

【課題】 床部分に、コンクリートを用いることなく、現場搬入が容易であって施工も簡単にすることが可能な床構築用構造体を提案する。
【解決手段】 左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である台形の4枚の板材を、各斜辺で互いに90度となる角度で接合して、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成する。または、左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である5個の台形をその斜辺部で順に連接させた形状の金属板を、各斜辺でそれぞれ同方向に90度に折曲して、両外側の台形部を互いに重複させて、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成する。こうして形成された四角錐形状の筒からなる床構築用構造体を上下反転させながら交互に締結させていくことで、平面の広がりを有する床が構築される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構築用構造体およびそれを用いた床に関し、詳しくは多層階の建築物における床部分の構築の工期短縮化と軽量化を実現する床構築用構造体およびそれを用いた床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層建築物では、床部分を構築するには、先ず柱組をし、その後に梁組をし、さらにその上にコンクリートを打つ床組をすることが一般的な工法であった。例えば、図7および図8に示されるように、2階建ての建物を建築する場合は、H形鋼、角形鋼管からなる4本の柱31〜34を立て、その間に梁35〜39を架け渡し、それらの間に、デッキプレート40を乗せてから、その上にコンクリート41を流し込んでいた。
【0003】
このようにコンクリートを使用すると、養生期間が必要であり、それが工期の短縮化の限界となっていた。また、コンクリートを使用するとその重量に耐えられるように、建築物全体を堅牢な構造にするため、その分、材料費が嵩むという問題があった。そこで、現場での施工期間を短縮するため、特許文献1の記載の工法のように、予めコンクリートブロックにより、床スラブパネルを作成しておき、それを現場に搬入して、組み立てることが提案されている。
【特許文献1】特開平06−129030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、床スラブパネルを用いた工法では、現場での養生期間が不要となった分、工期の短縮が可能となるものの、コンクリートを用いているため床自体の重量を軽減することは出来ず、また、重量のある床スラブパネルを現場に搬入する作業が大がかりになるという問題があった。そこで、本発明は、床部分に、コンクリートを用いることなく、現場搬入が容易であって施工も簡単にすることが可能な床構築用構造体およびそれを用いた床を提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の床構築用構造体は、左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である台形の4枚の板材を、各斜辺で互いに90度となる角度で接合して、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成したことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の床構築用構造体は、左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である5個の台形をその斜辺部で順に連接させた形状の金属板を、各斜辺でそれぞれ同方向に90度に折曲して、両外側の台形部を互いに重複させて、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の床構築用構造体は、左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である4個の台形をその斜辺部で順に連接させた形状の金属板を、各斜辺でそれぞれ同方向に90度に折曲して、両外側の斜辺を溶接して、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成したことを特徴とする。
【0008】
なお、前記床構築用構造体において、台形をした面の適箇所に連結用の締結部材を挿通する孔を形成することが好ましい。同じく、前記床構築用構造体において、台形をした面の適箇所に配管を挿通する孔を形成することが好ましい。
【0009】
また、本発明の床は、前記床構築用構造体を互いに上下反転させながら台形面を当接して締結部材を用いて締結することにより縦横方向に連結して構築されたことを特徴とする。なお、ここで、締結部材として、ボルトとナットまたはリベットを用いることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように本発明によれば、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成された床構築用構造体を上下反転しながら連結していくことで、構造的に強固な床が構築される。その結果、コンクリートからなる床に比べて工期の短縮化と軽量化が可能となる。また、建築物が、耐用年数が経過して解体される場合は、床部分を構成する床構築用構造体のリサイクルが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る床構築用構造体の1面を示す平面図であり、図2は図1の面を4面組み立てて構成された床構築用構造体の斜視図である。これらの図に示されるように、床構築用構造体1は、左右対称であって下辺の長さ2aが上辺の長さaの2倍の長さをした台形に形成された鉄板等の金属板2を4枚用い、その斜辺部分を溶接により接合して、頂部が切除された4角錐の形状をした筒型に形成される。
【0012】
また、台形をした金属板2の中心部分には、配管を挿通するためと床構築用構造体1を軽量化するための孔3が穿設され、さらに、上部の左右方向中心には、ボルトを挿通するための孔4が穿設され、同様に、下部には、左右方向に二分したそれぞれの中心部分には、ボルトを挿通するための孔5,6が穿設されている。なお、これらの孔のうち、床部分に配管が不要な現場に用いられる床構築用構造体1については、孔3は省略することも可能である。また、金属板2の代わりに木板を用いることも可能であるが、その場合は、接合部分を臍継手として、さらに接着剤により結合する。また、図示しないが、床構築用構造体1の内側に、台形状のリブを内接して、補強することも可能である。
【0013】
図3は、他の方法により構成される床構築用構造体の展開図を示す。図1および図2に示された床構築用構造体1は、比較的厚い金属板を用いた場合であるが、比較的薄い金属板を用いた場合は、折曲により構成することも可能である。図3は、比較的薄い金属板上に、左右対称であって下辺の長さが上辺の長さの2倍の長さをした4個の台形7〜10をその斜辺部分を連接させて罫書き、切断したものである。図中の破線部分を90度折曲して、両端の台形7,10の外側の斜辺部分を互いに突き合わせて溶接することで、図2と同形の床構築用構造体が構成される。各台形7〜10には、図1と同様に、配管を挿通するための孔と、ボルトを挿通するための孔が穿設されている。
【0014】
図4は、さらに他の方法により構成される床構築用構造体の展開図を示す。これは、図3の場合と同様に、比較的薄い金属板を用いものであり、左右対称であって下辺の長さが上辺の長さの2倍の長さをした5個の台形11〜15をその斜辺部分を連接させて罫書き、切断したものである。図中の破線部分を90度折曲して、両端の台形11,15を互いに重合することで、図2と同形の床構築用構造体が構成される。各台形11〜15には、図1と同様に、配管を挿通するための孔と、ボルトを挿通するための孔が穿設されている。この床構築用構造体は、前述の床構築用構造体の場合と異なって、溶接工程が不要となり、その分、コストダウンが可能である。
【0015】
また、図示しないが、上述した3種類の床構築用構造体の、上端と下端の正方形をした開口部に、開口部と平行に縁を突出させて、その突出部に、床板または天井板を取り付けるためのねじ孔を形成しておくことが好ましい。なお、これら上述した3種類の床構築用構造体は、いずれも積み重ねることが可能であるため、保管、輸送の際に、嵩張らず取り扱いが容易である。
【0016】
次に、前述した床構築用構造体を用いて、多層建築物における床部分を構築する場合について説明する。図5は上述した床構築用構造体1を用いて構築された床部分の平面図であり、図6は図5の縦断面図である。上述したように、床構築用構造体1の側面を構成する台形部は、上辺の長さと下辺の長さが1対2の関係にあるため、上端に形成される正方形の開口部に対して、下端に形成される正方形の開口部は、辺の長さで2倍、面積で4倍となる。
【0017】
その結果、床構築用構造体1を互いに上下反転しながら押し当てて、ボルト挿通孔4〜6にボルトを挿通してナットを締結していくと、平面上では、それら開口部が、幾何学的に大小の正方形を組み合わせた連続パターンとなり、縦横方向に広がりを有する床が形成され、しかも構造的にも、各床構築用構造体1が互いに密接して連結されるため充分な強度を有する床となる。なお、図5では、説明の都合上、上端の開口部のみを図示して、大きい開口部の内側下部に見える小さい開口部を省略している。
【0018】
また、構築された床の外周部は、断面が三角形で高さが床構築用構造体1と同じに形成された連結部材17〜20により、柱21〜24に接続される。こうして床が構築されると、その上にゴム板25を介して、鉄板26を敷設して床面が完成する。このとき、前述したように床構築用構造体1の開口部に、突出部が設けられてそこにねじ孔が形成されていれば、そのねじ孔を利用して床板を固着することが可能である。また、床構築用構造体1に形成されている孔3を利用して、床下の配管が可能となる。また、構築された床が最上段の場合は、その上に屋根となる部材を葺設して屋根が完成される。なお、図5および図6では、締結部材として、ボルトとナットを用いたがリベットを用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、多層建築物における床以外に、軽荷重の橋、跨線橋、歩道橋等にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る床構築用構造体の1面を示す平面図である。
【図2】図1の面を4面組み立てて構成された床構築用構造体の斜視図である。
【図3】他の方法により構成される床構築用構造体の展開図を示す。
【図4】さらに他の方法により構成される床構築用構造体の展開図を示す。
【図5】床構築用構造体を用いて構築された床部分の平面図である。
【図6】図6は図5の縦断面図である。
【図7】従来例を示す側面図である。
【図8】従来例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 床構築用構造体
2 金属板
3〜6 孔
7〜15 台形
17〜20 連結部材
21〜24 柱
25 ゴム板
26 鉄板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である台形の4枚の板材を、各斜辺で互いに90度となる角度で接合して、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成したことを特徴とする床構築用構造体。
【請求項2】
左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である5個の台形をその斜辺部で順に連接させた形状の金属板を、各斜辺でそれぞれ同方向に90度に折曲して、両外側の台形部を互いに重複させて、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成したことを特徴とする床構築用構造体。
【請求項3】
左右対称でかつ下辺の長さが上辺の長さの2倍である4個の台形をその斜辺部で順に連接させた形状の金属板を、各斜辺でそれぞれ同方向に90度に折曲して、両外側の斜辺を溶接して、頂部が切除された四角錐の形状の筒に形成したことを特徴とする床構築用構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の床構築用構造体において、
台形をした面の適箇所に連結用の締結部材を挿通する孔を形成したことを特徴とする床構築用構造体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の床構築用構造体において、
台形をした面の適箇所に配管を挿通する孔を形成したことを特徴とする床構築用構造体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の床構築用構造体を互いに上下反転させながら台形面を当接して締結部材を用いて締結することにより縦横方向に連結して構築されたことを特徴とする床。
【請求項7】
請求項6に記載の床において、
締結部材として、ボルトとナットまたはリベットを用いたことを特徴とする床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−169856(P2006−169856A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365310(P2004−365310)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(503340704)