説明

床構造

【課題】 床下地の僅かな段差が目立ってしまうという従来技術の課題を、厚さやコストの問題を発生させることなく解決することができる床構造を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 床構造Aは、複数の矩形の下地パネル1の端縁面を突き付けた状態で敷き並べて構成された床下地A1と、長手方向と短手方向の両方向に所定間隔の線条溝が形成された軟質シート状の仕上材2を線条溝の方向と下地パネル間の継ぎ目の方向が一致するように敷設して構成された床仕上A2とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質で薄手のシート状の仕上材を用いた場合であっても、床下地の僅かな段差の影響を目立たなくすることができる床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物、特に住宅の床には、クッションフロアなどと呼ばれる、ポリ塩化ビニール等の合成樹脂からなる、軟質で薄手(厚さが1.5mmから3mm程度)の長尺シート状の仕上材を用いることがあった。
【0003】
このような仕上材は、耐水性に優れているので、トイレや洗面所などの水廻りに使用されることが多かったが、例えばペットを室内飼いする住宅において、ペットが滑りにくいという点や、通常のフローリング仕上げの床における継ぎ目からペットの汚物や飲食物が浸入しやすいという問題が解消できるという点が好まれて、リビングルームに使用される比率が増加しつつあり、このような場合、フローリング材を模した木目柄のものが好まれる。
【0004】
一方、床下地としては、コンクリートやモルタルなど湿式工法による場合もあるが、構造用合板やパーティクルボードなどの下地パネルを敷き詰めた乾式工法により構成されることもある。
【0005】
しかし、軟質のシート状の仕上材は、一般に厚みが小さく、接着剤等を用いて床下地なりに全面的に貼着されるため、床下地に段差があった場合には、たとえそれが0.3mm程度で、機能的に問題が全くないわずかなものであったとしても、光源と居住者等の位置関係によっては、仕上材の表面上の筋状の陰影が目に付いてしまい、居住者に悪い印象を与えてしまう(施工不良と認識されてしまう)ことがあった。
【0006】
特に、下地パネルを敷き並べる乾式工法により床下地が構成される場合は、下地パネル間の継ぎ目に段差が生じやすいが、そもそも下地パネルは厚みに対して0.5mmから1mm程度の製造誤差を許容していることなどからも、わずか0.3mm程度の段差を解消することは困難であった。
【0007】
このような問題は、例えば洗面所やトイレのように比較的小さな空間においては、使用する下地パネルの枚数が少なく(すなわち下地パネル間の継ぎ目自体が少なく)、上方向から小さな視角度で床面を見下ろすことが多いので、さほど顕著ではない。
【0008】
ところが、例えばリビングルームのように比較的大きな空間では、使用する下地パネルの枚数が多くなり(すなわち下地パネルの継ぎ目が多くなり)、また、大きな視角度で床面を見る(床面に近い高さから遠方の床をするように見る)こともあり、問題が顕著であった。
【0009】
特許文献1には、基材の下部にアタックチックポリプロピレン(APP)層を形成した軟質床材の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平2−15639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記床材によれば、APP層のみが床下地材に応じて変形し床材の表面には不陸が影響を及ぼさない、とされている。しかし、新たな層を加えることによって、床材全体としての厚さが増してなるべく薄い仕上材にしたいという要望に応えられないという問題や、付加的なコストが発生してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、このような床下地の僅かな段差が目立ってしまうという従来技術の課題を、厚さやコストの問題を発生させることなく解決することができる床構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
出願人は、実験によって、例えばクローリング調の柄(長手方向に導管を模した短い筋状の溝や印刷による木目柄が通った短冊状の板を長手方向について若干ずらして配列した柄)のCFの場合、その柄の方向に沿った下地パネルの継ぎ目の段差については表面の凹凸が目立たないことを確認した。これは、フローリングの継ぎ目を模した直線的な溝や木目柄が、下地パネル間の継ぎ目と平行となるようにCFを敷き詰めることで、段差部での陰影が目立たなくなるためである。
【0014】
また、木目柄と直交方向については、木目柄や線状溝がない(線条溝があったとしても、連続的でなく、間隔も大きい)ため、下地パネルの段差が目立ってしまうことも確認した。
【0015】
一方、構造用合板等の下地パネルは矩形、板状の製品のため、リビングルームのように広い面積について床下地として敷き詰めた場合は、長辺・短辺二方向の継ぎ目が生じるので、ニ方向の継ぎ目の双方を目立たなくすることは難しい。
【0016】
そこで、出願人は、木目柄方向とこれに直交する方向の両方について線条溝を形成し、更にその方向と下地パネル間の継ぎ目の方向を一致させることで上記問題の解決を図った。
【0017】
すなわち、上記従来技術を解決する為の本発明に係る床構造の構成は、複数の矩形の下地パネルの端縁面を突き付けた状態で敷き並べて構成された床下地と、長手方向と短手方向の両方向に所定間隔の線条溝が形成された軟質シート状の仕上材を線条溝の方向と下地パネル間の継ぎ目の方向が一致するように敷設して構成された床仕上と、からなることを特徴としている。
【0018】
上記構成において、仕上材の線条溝のピッチが下地材パネルの寸法に対応したものであり、線条溝が下地パネル間の継ぎ目に重なるように仕上材が敷設されたものであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、長手方向と短手方向の両方向に所定間隔の線条溝が形成された軟質シート状の仕上材を、線条溝の方向と下地パネル間の継ぎ目方向)が一致するように敷設することで、床下地の僅かな段差による陰影を目立たなくすることができる。
【0020】
また、仕上材の線条溝のピッチを下地パネルの寸法に対応させ、且つ下地パネル間の継ぎ目の位置と一致するように敷設することで、床下地の僅かな段差による陰影を更に目立たなくすることができる。
【0021】
このように、厚さを増すことも大きなコストをかけることもなく、仕上材の線条溝の方向やピッチを下地パネルの継ぎ目方向や寸法に対応させるだけで、段差の問題の解消を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】床構造の構成を示す斜視図である。
【図2】床下地の構成を示す斜視図である。
【図3】床仕上を構成する仕上材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図を参照しながら本発明に係る床構造の一実施形態を説明する。本実施形態の床構造Aは、図1に示すように、複数の下地パネル1からなる床下地A1と、連設された仕上材2からなる床仕上A2とで構成されている。
【0024】
下地パネル1は、図2に示すように、長さ1800mm×幅900mm×厚さ12mmの矩形状の構造用合板及びこれを半分のサイズに加工したものからなり、千鳥状に端縁面を突き付けた状態で敷き並べられ、根太あるいは床スラブ等に対し接着剤やビスなどで固着されて床下地A1を構成している。
【0025】
図3に示す仕上材2は、いわゆるクッションフロア(内部に発泡層を有する塩化ビニル系素材からなる軟質、長尺のシート状床材)であり、フローリング調の色柄を有している。幅は下地パネル1の寸法に対応した1800mm(下地パネル1の幅の2倍)であり、表面の長手方向には、フリーリング材の長手方向の継ぎ目を模した、幅を18等分する一直線状の縦線条溝5が形成されている。すなわち、長手方向の一直線状の縦線条溝5の間隔が下地パネル1の幅(すなわち下地パネル1の長手方向の継ぎ目3の間隔)の9分の1となるように設定されている。また、短手方向についても、900mmのピッチ(長さの2分の1、すなわち千鳥状に配置された下地パネル1の短手方向の継ぎ目4の間隔)で一直線状の横線条溝6が、更にその中間部には雁行状の横線条溝7が、フローリング材の短手方向の継ぎ目を模して形成されている。また、広葉樹の導管を模した短い筋状の溝が長手方向に形成されている。
【0026】
仕上材2は2列の下地パネル1に対応して、短手方向の一直線状の横線条溝6の一部が下地パネル1の短手方向の継ぎ目4に、長手方向の一直線状の縦線条溝5の一部が下地パネル1の長手方向の継ぎ目3に、夫々重なるように敷設され、接着剤にて貼着されている。
【0027】
このように構成することで、下地パネル1間の継ぎ目3、4に僅かな段差があったとしても、段差の直上に仕上材2の一直線状の線条溝5、6が存在するので、この段差を目立たなくすることができる。
【0028】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、下地パネル1の配置は二方向の継ぎ目が十字に交わる格子状(いわゆる芋目地状)であってもよい。また、仕上材2の線条溝についても、長手方向の一直線状の縦線条溝5の間隔を下地パネル1の幅の整数分の1とし、短手方向の一直線状の横線条溝6の間隔を下地パネル1の長さの整数分の1として製作すれば、下地パネル1の配置が千鳥状であっても芋目地状であっても、両方向の一直線状の線条溝5、6が下地パネル1間の継ぎ目3、4に重なるように敷設することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、壁面や天井面のボードの継ぎ目の段差に起因する問題の解消に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
A 床構造
A1 床下地
A2 床仕上
1 下地パネル
2 仕上材
3 長手方向の継ぎ手
4 短手方向の継ぎ手
5 一直線状の縦線条溝
6 一直線状の横線条溝
7 雁行状の横線条溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の矩形の下地パネルの端縁面を突き付けた状態で敷き並べて構成された床下地と、長手方向と短手方向の両方向に所定間隔の線条溝が形成された軟質シート状の仕上材を線条溝の方向と下地パネル間の継ぎ目の方向が一致するように敷設して構成された床仕上と、からなることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記仕上材の線条溝のピッチが前記下地材パネルの寸法に対応したものであり、前記線条溝が前記下地パネル間の継ぎ目と重なるように前記仕上材が敷設されたことを特徴とする請求項1に記載した床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−196136(P2011−196136A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65834(P2010−65834)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】