説明

底盤インバート用型枠およびそれを用いた底盤インバートの施工方法

【課題】 底盤インバートの施工を容易に行いうるようにする。
【解決手段】 マンホール底部に流路勾配を有する底盤インバートを造る際し、流路部分の型枠として、直線状の第1形態ロッド10と曲線状の第2形態ロッド30と接続ピース20とからなるものを用いる。流路の曲がりに応じて、第2形態ロッド30を所要角度に切断し、それを第1形態ロッド10、10と仮連接状態とし、仮連接部に接続ピース20を差し込んで固定する。その後、モルタルを流し込み、硬化した後に、型枠全体を取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設のマンホール工事における底盤インバートの施工技術に関し、詳しくは、底盤インバート用の型枠および底盤インバートの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道施設におけるマンホール工事では、下水の円滑な流れを確保しマンホール内を清浄な状態に確保すべく、自然な流路に沿った形状を有する底盤インバートを設けることが必要となる。従来、この底盤インバートの施工では、マンホール本体を所定の位置に据え付けた後、マンホール内に所望の形状に木製型枠を組み、モルタルを流し込んで底盤インバートを造ることが一般に行なわれていた。
【0003】
狭いマンホール内でのこの種の作業は困難であり、また熟練した職人を必要とすることから、格別の技術を有しない者でも、容易にまた安全に施工できる方法として、特許文献1(特開平7−76850号公報)には、樹脂成形品からなる底盤インバート用型枠を用いる施工方法が記載されている。施工に際して、図9aに示すような、流路部分の型枠となるロッド50を用いる。ロッド50は端部にセンターピース51を備えており、直線状の流路部分では、図9bに示すように、該ロッド50のセンターピース51の端面同士を衝接させた状態で、粘着テープ等の適宜の手段で互いのセンターピース51、51で連結し、型枠として組み立てる。曲線をなす流路部分では、図9cに示すように、折曲角の1/2の角度でセンターピース51の一部52を中心点を通るようにして切除し、それを他方の側に取り付けることにより、センターピース51の端面を中心線に対して折曲角の1/2の角度を持った斜面とする。そのようにしたセンターピース51の端面同士を衝接させることにより、任意の角度に折曲した型枠が組み立てられる。
【0004】
そして、該型枠のロッド50の他端側53をマンホール(不図示)に接続される配管位置に合わせてセットした後、モルタルを流し、該モルタルが固まった後に該型枠を除去して流路勾配を有する底盤インバートを造る。樹脂成形品からなる前記ロッド50の底面は滑らかな凹凸のない曲面となっており、形成される底盤インバートの流路面はそのままで滑らかな面を持つ流路となる。
【特許文献1】特開平7−76850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の底盤インバートの施工方法は、端面にセンターピース51を持つロッド50を用いることにより、流路部分の型枠を容易に作ることができ、また、滑らかな直線および曲線状の流路を持つ底盤インバートを得ることができる。しかし、マンホール内に狭い現場環境で、センターピースの端面同士を衝接させた後、粘着テープ等の手段で両者を一体に連結する作業は必ずしも容易でない。また、湾曲した流路のための型枠とする場合に、その角度の1/2でセンターピース51の一部52を切除し、それを反対側に貼り付けて傾斜した端面とする作業も、それを正確に行うことは、特に技術を充分に修得していない者にとっては容易でない。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、底盤インバートの施工を、専門の技術を習得していない者であっても、狭いマンホール内で容易かつ確実に行うことができる、より改良された底盤インバート用型枠およびそれを用いた底盤インバートの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による、マンホール底部に流路勾配を有する底盤インバートを造る際に用いられる樹脂成形品からなる底盤インバート用型枠は、基本的に、流路部分の型枠となる2個以上のロッドとロッド同士を連結するための連結ピースとからなり、各ロッドは上部に開口しかつ流路方向に対する横断面が同一形状である凹溝を有しており、連結ピースはロッドの端面同士を突き合わせた姿勢としたときに双方のロッドの凹溝を跨ぐようにして凹溝内に摩擦係合状態で差し込むことのできる形状であることを特徴とする。
【0008】
ロッドは凹溝の方向が直線状である第1形態ロッドのみで構成される場合もあり、第1形態ロッドと曲線状である第2形態ロッドの組み合わせで構成される場合もある。さらに、凹溝がY字状である第3形態ロッドをさらに組み合わせで構成される場合もある。底盤インバートを施工しようとするマンホールに接続される配管位置に合わせて適宜の組み合わせを選択する。
【0009】
また、本発明によるマンホール内に流路勾配を有する底盤インバートを造る施工方法は、上記の底盤インバート用型枠を構成するロッドをマンホールに接続される配管位置に合わせて片持ち状態で配置する工程、片持ち状態で配置したロッドを直接または他のロッドを介してそれぞれの端面同士が衝接した仮連接状態とする工程、各ロッドの仮連接部に底盤インバート用型枠を構成する接続ピースを挿入して底盤インバート用型枠を組み立てる工程、マンホール内にモルタルを流し込む工程、該モルタルが固まった後に底盤インバート用型枠を除去する工程、とからなることを特徴とする。
【0010】
本発明の施工方法によれば、底盤インバート用型枠を組み立てるに際して、ロッド同士を端面同士が衝接した仮連接状態とし、仮連接部における双方のロッドの凹溝に跨るようにして接続ピースを挿入するだけでよく、その作業はきわめて容易でありマンホール内の狭い空間内であっても、確実に行うことができる。
【0011】
底盤インバートを施工しようとするマンホールに接続される2つの配管の位置が直線上すなわち180度の対向した位置にある場合には、凹溝の方向が直線状である第1形態ロッド同士を対向させて、その端面同士を衝接させた仮連接状態とし、そこに接続ピースを挿入すれば底盤インバート用型枠を組み立ては終了する。2つの配管の位置が角度αで交叉している場合には、2本の前記第1形態ロッドと凹溝の方向が曲線状である第2形態ロッドとを組み合わせて用いる。その際に、第2形態ロッドを、2本の第1形態ロッドの交叉角度αに応じた円弧角に切断して長さを調整し、端面同士をそれぞれ衝接させて仮連接状体とした後、それぞれの箇所に接続ピースを挿入する。上記の切断は第2形態ロッドの軸線に直交する方向に1つの垂直面として切断すればよく、きわめて容易である。マンホールに3つの配管が接続されるような場合には、凹溝がY字状である第3形態ロッドを、前記第1形態ロッドと必要な場合には第2形態ロッドと共に用いれば、所望の底盤インバート用型枠を組み立てることができる。
【0012】
本発明において、各ロッドおよび連結ピース、すなわち本発明の底盤インバート用型枠に用いられる樹脂成形品としては、加工性,作業性等の面から、例えば発泡ポリスチレン,発泡ポリエチレン,発泡ポリプロピレン又はそれらの共重合発泡体の成形品あるいは発泡ポリメチルメタクリレートの成形品等を用いることが好ましいが、これに限定されるものではなく塩化ビニールその他のインジェクション成形品であってもかまわない。樹脂成形品であればよく、非発泡樹脂成形品であっても発泡樹脂成形品であってもよい。軽量であること、接続ピースを挿入するときに多少の変形が容易であること等の理由から、発泡樹脂成形品であることは特に好ましい。また、ロッドの凹溝の流路方向に対する横断面を下方から上方に向かってテーパー状に広がった形状とし、連結ピースの横断面もロッドの凹溝の横断面と同様な断面形状とすることは好ましく、これにより連結ピースを凹溝内へ差し込みやすくなることから、連結ピースによるロッド同士の連結作業が容易かつ確実となる。
【0013】
一般に、マンホール内の底盤インバートでは、流路部分の上端面からマンホールへ壁面までの表面は10〜15%の登り勾配とされ、底盤インバートの表面領域に滞留する恐れのある雨水等を積極的に流路部分に誘導するようになっている。そのような底盤インバートを容易に構築できるように、本発明によるロッドの好ましい態様では、ロッドの外側壁部に長手方向に延びる段差部が形成され、該段差部の底面は10〜15%の登り勾配を持つようにされる。モルタルを打設した後、ロット段差部の登り勾配に合わせてモルタル表面をコテ撫ですることにより、所望の傾斜を持った底盤インバートを容易に造ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による底盤インバート用型枠を用いることにより、狭いマンホール内の空間であっても、格別の熟練を要することなく、底盤インバートを容易にかつ確実に造ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図面を参照しながら実施の形態により説明する。図1は本発明による底盤インバート用型枠を構成する部材である直線状の第1形態ロッド10と接続ピース20を示す斜視図であり、図2は曲線状の第2形態ロッド30を示す斜視図である。図3は上記の底盤インバート用型枠を用いて底盤インバートを造るときの施工途中の状態を説明する斜視図であり、図4は図3の平面図である。図5はモルタルを流し込んだ後での図4におけるA−A線での断面図であり、図6は底盤インバート用型枠を取り除いた後での同じ場所を示す断面図である。
【0016】
この例において、底盤インバート用型枠を構成する第1形態ロッド10は発泡樹脂製品であり、所要長さに直線状をなす。図5によく示すように、第1形態ロッド10の断面形状は全体として半径rの円形であり、その上方側は所定高さ位置で水平方向に切除されている。該切除面11から下方に向けて、上方を開放した所定深さの凹溝12が全長にわたり同一断面形状で形成されている。好ましくは、該凹溝12の流路方向における横断面は下方から上方に向かってテーパー状に広がった形状とされる。
【0017】
第1形態ロッド10の左右の外側壁部には長手方向の全長に延びる段差部13、13が形成されており、その底面14、14は、好ましくは10〜15%の登り勾配とされる。第1形態ロッド10の半径rは、図3に示すように、施工現場でマンホール40に接続する配管41の内径と実質的に同じとされ、切除面11の高さも、構築しようとする底盤インバートの流路位置に応じて、適宜設定される。
【0018】
接続ピース20も発泡樹脂製品であり所要の厚みを有する。後記するように、接続ピース20は、ロッドの端面同士を突き合わせた姿勢としたときに双方のロッドの凹溝を跨ぐようにして凹溝内に摩擦係合状態で差し込むことのできる形状であればよいが、この例では、接続ピース20は、第1形態ロッド10に形成した凹溝12と同じ断面形状である。すなわち下方から上方に向かってテーパー状に拡開している拡開部21と、その上端から同じ幅で一体に立ち上がる部分22とで構成されている。なお、立ち上がり部分22は差し込み作業等を容易にするために設けているが省略可能である。
【0019】
第2形態ロッド30は、全体が曲線状であることを除いて、他の構成は実質的に第1形態ロッド10と同じ形態であり、図2において、第1形態ロッド10と同じ機能を奏する部分には同じ符号を付している。第2形態ロッド30において、その曲率半径をどの程度とするか、製品としての当初の開き角度αをどの程度とするかは、施工現場の状況に応じて適宜設定されるが、図2に示す第2形態ロッド30では、開き角αは90度としている。
【0020】
施工に際しては、先ず、マンホール40に接続される配管41、41の寸法に合った第1形態ロッド10を2本、第2形態ロッド30、接続ピース20を2個、用意する。図1〜図6に示す例では、2つの配管41、41は90度の角度で傾斜しており、図2に示す第2形態ロッド30も開き角90度のものなので、そのまま用いることができる。2本の第1形態ロッド10をマンホール40の直径等に合わせて適宜長さに切断し、その一方端を配管41内に挿入して片持ち状態とする。
【0021】
90度で交叉する2本の配管41の端面と端面との間に第2形態ロッド30の両端面を衝接させた姿勢で配置し、仮連接した状態とする。必要な場合には、マンホール40内に支持柱等の適宜の支持部材を配置して仮連接を安定した姿勢とする。その状態で、各仮連接部に接続ピース20をそれぞれ挿入する(その状態が図3、図4に示される)。接続ピース20の挿入により、各ロッド同士の接続は安定したものとなり、底盤インバート用型枠が完成する。その後、支持部材等を配置したときには、それらをすべて除去する。
【0022】
次に、マンホール40内にモルタルを流し込む。もし、流し込むモルタルによる浮力で形成した底盤インバート用型枠が浮き上がることが予測される場合には、型枠を上部から適宜の手段で押さえ込むようにする。流し込んだモルタル42が第1形態ロッド10および第2形態ロッド30の側壁面に形成した段差部13、13の底面14、14の位置近傍まで達したときに、底盤インバート面43のコテ撫でを行う。段差部13、13の底面14、14は前記したように10〜15%の登り勾配となっており、底面14を基準面として表面のコテ撫でを行うことにより、図5に示すような均一な登り勾配を持つ底盤インバート面43を容易に形成することができる。
【0023】
流し込んだモルタル42が固まった後、接続ピース20を抜き出し、第2形態ロッド30および第1形態ロッド10を順次取り外すことにより、図6に示すように、90度に滑らかに折曲した流路45を備えた底盤インバートが完成する。第1形態ロッド10および第2形態ロッド30の底面は滑らかな円弧面であり、流路45の表面も凹凸のない滑らかな面となる。なお、流し込んだモルタル42の傾斜した表面形成が容易な場合には、段差部13、13の底面14、14に登り勾配を付けることは省略してもよく、段差部13、13そのものも省略してもよい。
【0024】
図7、図8は、本発明により施工される底盤インバートの他の例を説明するための、前記図4に相当する図である。図7では、2本の配管41、41の交叉角度βは約30度であり、この場合には、図2に示すように、第2形態ロッド30を開き角β=30度で切断したものを用いる。図8の場合は、交叉角度βは約15度であり、この場合には、開き角β=15度で切断した第2形態ロッド30ものを用いる。
【0025】
このように、マンホール40に取り付ける配管41、41の交叉角度がどのような角度であっても、その角度に合わせて第2形態ロッド30を軸線に垂直な面で切断すればよくその作業はきわめて容易である。そして、底盤インバート用型枠の組み付けは、切断後の第2形態ロッド30を前記のように第1形態ロッド10、10と仮連接状態とし、仮連接部に接続ピース20を差し込んでいくだけでよいので、狭いマンホール内であっても容易にかつ安定して行うことができる。
【0026】
なお、図示しないが、マンホール40に3本の配管41が接続されるような場合には、凹溝12がY次状をなす第3形態ロッドを、前記第1形態ロッド10と第2形態ロッド30と共に組み合わせて用いるようにする。そして、型枠に組み付けるに際しては、それらロッド同士の端面間のすべての仮連接部に、上記と同じようにして接続ピース20を差し込んで一体化する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による底盤インバート用型枠を構成する部材である直線状の第1形態ロッドと接続ピースを示す斜視図。
【図2】曲線状の第2形態ロッドを示す斜視図。
【図3】本発明による底盤インバート用型枠を用いて底盤インバートを造るときの施工途中の状態を説明する斜視図。
【図4】図3の平面図。
【図5】モルタルを流し込んだ後での図4におけるA−A線での断面図。
【図6】底盤インバート用型枠を取り除いた後での断面図。
【図7】本発明により施工される底盤インバートの他の例を説明するための、図4に相当する図。
【図8】本発明により施工される底盤インバートのさらに他の例を説明するための、図4に相当する図。
【図9】従来の底盤インバート用型枠を説明する図。
【符号の説明】
【0028】
10…第1形態ロッド、20…接続ピース、30…第2形態ロッド、11…切除面、12…凹溝、13…段差部、14…段差部の底面、40…マンホール、41…配管、42…モルタル、43…底盤インサートの表面、45…流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール底部に流路勾配を有する底盤インバートを造る際に用いられる樹脂成形品からなる底盤インバート用型枠であって、流路部分の型枠となる2個以上のロッドとロッド同士を連結するための連結ピースとからなり、各ロッドは上部に開口しかつ流路方向に対する横断面が同一形状である凹溝を有しており、連結ピースはロッドの端面同士を突き合わせた姿勢としたときに双方のロッドの凹溝を跨ぐようにして凹溝内に摩擦係合状態で差し込むことのできる形状であることを特徴とする底盤インバート用型枠。
【請求項2】
ロッドは少なくとも凹溝の方向が直線状である第1形態ロッドと曲線状である第2形態ロッドの組み合わせで構成されることを特徴とする請求項1に記載の底盤インバート用型枠。
【請求項3】
凹溝がY字状である第3形態ロッドをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の底盤インバート用型枠。
【請求項4】
ロッドの凹溝の流路方向に対する横断面は下方から上方に向かってテーパー状に広がった形状であり、連結ピースの横断面はロッドの凹溝の横断面と同様な断面形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の底盤インバート用型枠。
【請求項5】
ロッドの外側壁部には長手方向に延びる段差部が形成されており、該段差部の底面は10〜15%の登り勾配とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の底盤インバート用型枠。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の底盤インバート用型枠を構成するいずれかのロッドをマンホールに接続される配管位置に合わせて片持ち状態で配置する工程、
片持ち状態で配置したロッド同士を直接または他のロッドを介してそれぞれの端面同士が衝接した仮連接状態とする工程、
各ロッドの仮連接部に底盤インバート用型枠を構成する接続ピースを挿入して底盤インバート用型枠を組み立てる工程、
マンホール内にモルタルを流し込む工程、
該モルタルが固まった後に底盤インバート用型枠を除去する工程、
とからなることを特徴とするマンホール内に流路勾配を有する底盤インバートを造る施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate