説明

座位状態における支持具

【課題】人が椅子に座ると、上半身の体重が骨盤に作用し、この力によって、腰周りの筋肉群が緊張し、骨盤と太ももを左右に広げさせるが、長時間座った姿勢でいることにより、骨盤と腰周りの筋肉群に疲労が蓄積され、腰痛や骨盤がゆがむ原因にもなる。 本発明は、骨盤と腰周りの筋肉群の負担を軽減し、骨盤のゆがみや腰痛等を予防することができる座位状態における支持具を提供することを目的とする。
【解決手段】当該座位状態における支持具は、椅子に座る人の太ももを、左右に分離された支持具で、左右の太ももを挟み込むように太ももに密着して配置し、左右の支持具の間隔を、骨盤の矯正の度合いに応じて、簡単に調整できることを特徴とする。また、上記の支持具を、椅子のシート又は座布団と一体にして用いることで、デザイン性及び使いやすさに優れる座位状態における支持具を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨盤のゆがみを矯正し、腰痛防止及び腰周りにかかる負担を軽減させる座位状態における支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が椅子に座ると、上半身の体重が骨盤に作用し、この力によって、腰周りの筋肉群が緊張し、骨盤と太ももを左右に広げさせるが、長時間座った姿勢でいることにより、骨盤と腰周りの筋肉群に疲労が蓄積され、腰痛や骨盤がゆがむ原因になる。
【0003】
この結果、背骨が骨盤部位とともに左右方向いずれかにねじれ、体全体のゆがみを招くことになる。
【0004】
また、腰痛や骨盤のゆがみは、椅子に座る時、正しい姿勢を維持しづらくして、さらに姿勢を悪くし、猫背等の軸芯の傾斜をもたらし、視力や集中力低下、内臓の圧迫、体の抵抗力の低下、生活習慣病等を引き起こす原因ともある。
【0005】
従来、腰痛や骨盤のゆがみを治療するという意味から、整体や、骨盤及び腰周りの治療に関する技術、骨盤をゴムベルトで巻く方法などがあり、椅子に関しては、背もたれの角度やシートの尻部を凹形などに変化させ(例えば、特許文献1及び特許文献2)、骨盤を矯正する方法が提案されている。
【0006】
しかし、人の体格は千差万別であり、それぞれに合う椅子やシート(または座布団)を作ることは複雑で高価になりすぎる欠点がる。
【0007】
また、骨盤のゆがみの度合いも千差万別であり、その上、骨盤の矯正は少量ずつ時間をかけて行う必要があり、多少弾力性はあるとしても、決まった形の中に一度に骨盤を拘束して矯正しようとすると、かえってさらなる痛みと、違う形のゆがみを発生させる原因ともなる。
【0008】
【特許文献1】特開2008−126025号公報
【特許文献2】特開2010−4967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の技術が有していた問題を解決しようとするものであり、利用者の体形や骨盤のゆがみの大小にかかわらず広範囲の人が使用でき、又、支持具の間隔を、骨盤矯正の度合いに応じて簡単に調整できるようにして、骨盤を矯正するのに時間をかけて少量ずつ行うことでができる座位状態における支持具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、人が椅子に座った状態の時に骨盤の広がりを抑えるため、左右の太ももを、左右に分離された支持具1で太ももの外側から挟み込んで骨盤を固定することを特徴とするものであり、この場合、太ももが広がろうとする力は、太ももの下部支持具3に作用する鉛直力により、支持具1と椅子のシート11(又は座布団10)との間に生じる摩擦力によって抵抗して、クッション材を静止させるものである。
【0011】
上記本発明おいて、左右の支持具は互いに分離していることから、椅子のシート11(又は座布団10)の表面の材質によっては、個別の支持具だけでは滑りやすく静止しない場合が考えら、本発明の支持具について、ひも等の連結部材で左右の支持具を結合して、個別の支持具だけでは滑りやすい椅子のシート11(又は座布団10)にも使用して骨盤を固定することができることを特徴とする。
【0012】
上記本発明の支持具について、左右の支持具1を、連結シート7で結合して、左右の支持具が外側に広がらず、間隔を一定に保つことも可能であり、この連結シート7の上面と支持具1の下面に、面ファスナ、スナップボタン等の固定具12が取り付けられ、連結する位置を自由に調節して、治療にもっとも有効な位置を随時選択して、骨盤の矯正を少量ずつ、時間をかけて行うことができ、この連結シートの替わりに椅子のシート11(又は座布団10)を利用して、椅子の一部又は座布団の一部として使用することにより、美的なデザイン性及び使いやすさに優れることを特徴とする。
【0013】
以上の内容を技術的な特定事項としてまとめると、以下のようになる。
【0014】
すなわち、本発明では、太ももが座面に接触した状態で人が椅子に着座した座位状態において、前記人の骨盤の広がりを抑えるために前記太ももの外開き方向への移動を抑制する座位状態における支持具であって、前記太ももと前記座面との間に挟み込まれて前記太ももの自重が作用することになる下部支持部と、柔軟性を有し、前記太ももの外側面に密着して前記太ももの外開き方向への移動を抑制するよう前記下部支持部の一側位置から上方に突出する側方支持部とを備えているようにした。
【0015】
これによれば、人が椅子に座った状態の時に骨盤の広がりを抑えるために、太ももを左右から挟み込むように、支持具を太ももに密着させて配置して、左右両側の太ももが左右両側方に広がらないように支持することが可能となり、左右どちらか片側のみが必要であれば、必要とする側のみの支持具を使用し、左右両方とも必要な場合は、左右両方の支持具を使用すればよい。
【0016】
また、前記発明において、左右一対のもので構成され、左右両側位置の各下部支持部は、それら両下部支持部同士を連結するための連結部材を備えているようにすることもできる。
【0017】
これによれば、支持具を載置する椅子のシート(又は座布団)の表面が滑りやすく、支持具が静止しにくい場合でも左右支持具間の距離を一定に保つことができるようになる。
【0018】
この場合、前記連結部材は、前記左右両側位置の下部支持部間の間隔を変更調整可能に構成されているようにしてもよい。
【0019】
これによれば、利用者の体形や骨盤のゆがみの大小にかかわらず広範囲の人が使用でき、又、支持具の間隔を、骨盤矯正の度合いに応じて簡単に調整できるようにして、骨盤を矯正するのに時間をかけて少量ずつ行うことでができるようになる。
【0020】
さらに、前記発明において、前記座面に載置される連結シートを備え、前記連結シートの上面及び下部支持部の下面には、両者を着脱可能に連結する連結部が設けられているようにすることもできる。
【0021】
これによれば、連結する位置を自由に調節して、治療にもっとも有効な位置を随時選択して、骨盤の矯正を少量ずつ、時間をかけて行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
上述したように、本発明の座位状態における支持具は、利用者の体形や骨盤のゆがみの大小にかかわらず使用できるとともに、支持具の間隔を、骨盤矯正の度合いに応じて簡単に調整できるようにして、骨盤の矯正を一度に行うのではなく、少量ずつ時間をかけて、矯正に伴う痛みや新たなゆがみを発生しないようにするのに効果的である。
【0023】
本発明の構造は単純で小規模であることから経済性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態における支持具の使用状態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態における支持具の使用状態を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態における支持具を斜め上から見た斜視図である。
【図4】第1実施形態の支持具の断面説明図である。
【図5】第2実施形態の支持具の断面説明図である。
【図6】第3実施形態の支持具の断面説明図である。
【図7】第4実施形態の支持具の断面説明図である。
【図8】第5実施形態の支持具の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態における支持具の概要図を示し、図1は横方向から見た側面図を、図2は前方向から見た正面図を、図3は斜め上から見た斜視図である。
【0027】
図1〜図3に示す支持具は、人が椅子に座った状態の時に骨盤の広がりを抑えるために、太ももを左右から挟み込むように太ももに密着させて配置される。
【0028】
これにより、左右両側の太ももが左右両側方に広がらないように、両太ももを支持するようになっている。
【0029】
この支持具1は、所定の柔軟性を有するクッション材により形成されている。
【0030】
形成材料としては、例えば、ウレタン、ポリスチレン等を発砲した発砲プラスチック材、ポリエステル等の樹脂材、ゴムスポンジ、あるいは、織布または不織布の中にそばがら、小豆等の充填材を入れて成型したもの等がある。
【0031】
支持具1は、その下部(例えば後述の下部支持部3)が、太ももの下に、それぞれの太もものほぼ中心まで回り込んでおり、この部分に作用する太ももからの鉛直力による摩擦力によって、太ももが開こうとする力に対抗して、支持具1が外側に動かないようにしている。
【0032】
図4は第1実施形態の支持具1の断面説明図であり、支持具1と、支持具1下部の椅子のシート11(又は座布団10)との間の摩擦力が十分期待できる時の具体例(例えば、支持具1が発泡プラスチック材で、シート11又は座布団10が不織布の場合等)である。
【0033】
支持具1は、太ももの外側に位置する厚肉の側面支持部2と太もも下部を支える下部支持部3から構成されており、下部支持部3の上面から側面支持部2にかけて凹曲面31となるように形成されている。
【0034】
この凹曲面31により、太ももの側部及び下部を受けて支持されるようになっている。
【0035】
そして、支持具1が、例えば発砲プラスチック材で形成されているため、適度な弾力を有し、これにより、太もも下部に回り込んでいる太もも下部支持部3からの摩擦力を、側面支持部2に伝えることができるようになる。

【0036】
このような支持具1の場合は、左右どちらか片側のみが必要であれば、必要とする側のみの支持具1を使用し、左右両方とも必要な場合は、左右両方の支持具1を使用すればよい。
【0037】
つまり、支持具1は、骨盤を正常な位置に保とうするものであるので、正常でない側(開こうとする側)の脚部の太ももにだけ用いるだけでも効果が期待できるからである。
【0038】
従って、本支持具1は、片側だけの1つのもの、両側で一対のもの、あるいは、前後2つ以上ずつのもので使用される。
【0039】
図5は、第2実施形態の支持具1の断面説明図であり、図4の支持具1の下(必要なら側面にも)に、薄い板材4が貼り付けてある。
【0040】
薄い板材4の形成材料としては、例えば、主材料である鉄板等の金属板、もしくは、ポリエステル等の樹脂材板等の下面に、摩擦力を増強するために、ゴムスポンジ、ウレタン等の発砲プラスチックの薄層を接着したものなどがある。
【0041】
これにより、より確実に支持具1の横滑りを防止すると共に、使用者の太ももを適切な位置に保持することができる。
【0042】
すなわち、支持具1の剛性(特に太もも下部の下部支持部3)を高めて、太もも下部に回り込んでいる太もも下部支持部3からの摩擦力を、側方支持部2に確実に伝えることができるようにしたものである。
【0043】
図6は、第3実施形態の支持具1の断面説明図であり、図5の第2実施形態の支持具1における下部支持部3を省略した構造で、側面支持部2と薄い板材4のみで構成され、経済性を図っている。
【0044】
この場合でも、太ももが左右外側に広がらないように支持して、骨盤の固定に寄与し得る。
【0045】
図7は、第4実施形態の支持具1の断面説明図であり、支持具1と支持具1下部の椅子のシート11(又は座布団10)との間の摩擦が十分期待できない場合の具体例(例えば、表面がツルツルの皮革等)である。
【0046】
この場合は、左右両側の支持具1、1を連結材で互いに連結して、太ももが開こうとする力に対抗して、両側の支持具が外側に動かないようにしている。
【0047】
具体的には、左右の支持具1、1の下部に連結材(ひも、帯等)5を接着するなどして連結し、この連結材を左右太ももの中央付近で連結部(面ファスナ、スナップボタン等)6で結合して、左右の支持具1、1の間隔を一定に保つように構成されている。
【0048】
しかも、連結部6により、左右の連結材5,5を着脱可能にして、左右の支持具1,1の間隔を変更し得るようにしている。
【0049】
すなわち、連結部6は、例えば面ファスナ、スナップボタン等の左右の支持具1の離間距離を調節可能な部材で構成されているため、治療にもっとも有効な位置(両支持具1,1の間隔)を随時選択して、骨盤の矯正を少量ずつ、時間をかけて行うことができる。
【0050】
図8は、第5実施形態の支持具の断面説明図であり、図5又は図6の支持具1の底部に2つの支持具を連結させるための結合部材である連結シート7を有している。
【0051】
支持具1下面と連結シート7上面には面ファスナ、スナップボタン等の固定具12が取り付けられており、連結する位置を自由に調節して、治療にもっとも有効な位置を随時選択して、骨盤の矯正を少量ずつ、時間をかけて行うことができる。
【0052】
この第5実施形態の支持具1は、椅子のシートの一部又は座布団の一部として使用することができ、る。
【0053】
これにより、美的なデザイン性及び使いやすさに優れた座位状態における支持具1を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 支持具
2 側方支持部
3 下部支持部
4 薄い板材(金属板、樹脂材板等)
5 連結材(ひも、帯等)
6 連結部(面ファスナ、スナップボタン等)
7 連結シート
8 右側の太もも
9 左側の太もも
10 座布団
11 椅子
12 固定具
31 凹曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太ももが座面に接触した状態で人が椅子に着座した座位状態において、前記人の骨盤の広がりを抑えるために前記太ももの外開き方向への移動を抑制する座位状態における支持具であって、前記太ももと前記座面との間に挟み込まれて前記太ももの自重が作用することになる下部支持部と、柔軟性を有し、前記太ももの外側面に密着して前記太ももの外開き方向への移動を抑制するよう前記下部支持部の一側位置から上方に突出する側方支持部とを備えていることを特徴とする座位状態における支持具。
【請求項2】
請求項1に記載の座位状態における支持具であって、左右一対のもので構成され、左右両側位置の各下部支持部は、それら両下部支持部同士を連結するための連結部材を備えている、座位状態における支持具。
【請求項3】
請求項 2に記載の座位状態における支持具であって、前記連結部材は、前記左右両側位置の下部支持部間の間隔を変更調整可能に構成されている、座位状態における支持具。
【請求項4】
請求項1に記載の座位状態における支持具であって、前記座面に載置される連結シートを備え、前記連結シートの上面及び下部支持部の下面には、両者を着脱可能に連結する連結部が設けられている、座位状態における支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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