説明

座席の保護カバー

【課題】 上記問題に鑑み、本発明は2〜3週間という短い使用期間中にVOCを分解できる自動車の内装部品の保護カバーを提供することを目的とする。
【解決手段】 保護シート(10)の基材(11)の内側の表面にVOC分解物質(12)とVOC吸着物質(13)を担持した担体(14)がコーティングされている。同じものを外側の表面にもコーティングすることができる。基材は、例えば、ポリエチレン樹脂に、VOC分解物質は、例えば、酸化チタンに、VOC吸着物質は、例えば、アパタイトに、担体は、例えば、アルミナゾル、とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の出荷時に、内装部品等に汚損、破損を防ぐために被覆される保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は工場の生産時、出荷時、搬送時、に作業者が、内部に入り、作業、あるいは、運転がおこなわれる。そこで、この段階で、内装部品、特に座席、は汚損、破損等がされないように保護カバーで被覆されることが多い。
一方、内装部品は有機材料で形成されるものが多く、車室内では揮発性有機化合物(以下、VOCという)が発生する。このVOCは新車のときに発生量が多く、除々に大気中に放散していくので、その濃度は時間の経過とともに低下していくものと考えられている。
【0003】
ところが、上記のように出荷時に保護カバーで被覆されていると大気中へのVOCの放散が妨げられる。その結果、VOCの濃度が高い状態が維持されてしまう。納車の直前に保護カバーは除去されるが、直前までVOCの濃度が高い状態が維持されていたことによって、納車されてもしばらくの間は、VOCが残ることになる。そこで、納車時にVOCが残りにくいような保護カバーの開発が望まれている。
【0004】
所謂光触媒を表面に担持したVOCを分解可能なシートがいろいろ開発されている。例えば、特許文献1、2等に記載のものがある。このような光触媒のようなVOC分解物質を含むシートを保護カバーに適用する場合には以下のような点が要求される。
【0005】
特に、座席を被覆することを考えると、外側は作業者が上に乗ったり、触ったりする場合に、保護カバーが引きずられて、破けたりすることは好ましくない、したがって、保護カバーの外面は摩擦係数が小さい方がよく、保護カバーの内面は摩擦係数が大きいほうが良い。
【0006】
光触媒をシート材に担持させる際に光触媒ができるだけ表面に近いところにあるようにすることが望ましい。光触媒を担持させたシートの場合には、光触媒の作用により基材が分解されるのを抑制するべく、わざわざ難分解物質をコーティングして、光触媒の作用を抑えるものもある。しかし、保護カバーは2〜3週間で使い捨てされるものであるので、そのようなことする必要は全くない。
【0007】
そして、保護カバーは座席のような複雑な形状のものを被覆するので、充分な柔軟性を有していることが必要であり、そして、2〜3週間で使い捨てされるものであるので充分に廉価でなければならない。
【0008】
これらの要求に対して、上記の特許文献1,2に記載のシート材は、いずれも、2〜3週間で使い捨てされることを想定して作られたものではなく、例えば、特許文献1のものは障子紙を想定しており、上記の諸点を満たしておらず、自動車の内装部品の保護カバーに使用することは到底できないものである。
【0009】
【特許文献1】特開2003−024796号公報
【特許文献2】特開2003−225572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題に鑑み、本発明は自動車の内装部品を被覆するために使用され、被覆中にVOCを分解し、使用後は除去される保護カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、自動車の生産から納車までの間に内装部品が汚損、破損されるのを防ぐために、内装部品に被覆され、納車後には除去される保護カバーであって、
基材の内表面、または、内表面と外表面に、揮発性有機化合物分解する分解物質をコーティングして成り、
基材は保護対象の内装部品をその形状に略沿って被覆できるように薄く形成されており、
前記分解物質が表面部分に多く存在し、内側には少なく存在するように、前記解物質は薄くコーティングされている、ことを特徴とする保護カバーが提供される。
このように構成された保護カバーは容易に内装部品を被覆でき、使用中にVOCを効率よく分解でき、自動車が納車された時には、VOCがほとんどなくなっているようにすることができる。
【0012】
前記分解物質に、揮発性有機化合物を吸着する吸着物質を混合して、コーティングすることもできる。このようにすることにより、より効率的にVOCを分解することができる。
【0013】
好ましくは、前記分解物質、又は、前記分解物質と前記吸着物質は担体に担持され、該前記分解物質、又は、前記分解物質と前記吸着物質を担持した担体が、保護カバーの基材の内表面、または、内表面と外表面にコーティングされている。
【0014】
揮発性有機化合物の分解物質は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化セリウム、バナジウム酸ビスマス、アルマイト、フタロシアニン、活性酸素包摂セラミック、及び、フィトンチッド、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とするのが好ましい。
【0015】
揮発性有機化合物の吸着物質は、アパタイト、ゼオライト、セラミック、活性炭、セピオライト、シリカ、アルミナ、モレキュラーシーブ、ハロサイト、活性白土、酸化亜鉛、多孔質有機物、多孔質無機物、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とするのが好ましい。
【0016】
揮発性有機化合物の分解物質、または、吸着物質を担持する担体は、アルミナゾル、シリカゾル、リン酸ナトリウム、セラミック繊維、ガラス繊維、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリアクリルアミド、クラスターデキストリン、澱粉、セルロース誘導体、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とするのが好ましい。
【0017】
保護カバーの基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、生分解性樹脂、紙、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とするのが好ましい。
【0018】
保護カバーは製造後、使用されるまでの間は、前記分解物質が活性しない場所で保管されることが望ましい。このようにすることにより、内装部品に被覆された時点から最大限のVOC処理効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自動車の生産から納車までの間に内装部品に被覆され、納車後には除去される保護カバーの基材の内表面、または、内表面と外表面にコーティングされた揮発性有機化合物分解する分解物質によりを納車時にはVOCがほとんどなくなるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を座席の被覆に使用される保護カバーを例にとって説明する。
図1において、1は自動車用の座席を示し、シートクッション1a、シートバック1b、ヘッドレスト1cから成る。この座席1が保護シート10で被覆される。
保護シート10の二重線表示をした部分の内側表面にVOCを分解するVOC分解物質とVOCを吸着するVOC吸着物質がコーティングされている。
【0021】
詳細には、担体材料にVOC分解物質とVOC吸着物質を担持せしめ、このVOC分解物質とVOC吸着物質を担持した担体材料を保護シート10の基材にコーティングして形成されている。
図2は上記を説明するために、保護シート10を拡大し、適宜誇張して示した断面図であって、基材11の内側の表面にVOC分解物質12とVOC吸着物質13を担持した担体14がコーティングされている。
【0022】
基材11は、ポリエチレン樹脂(高密度、低密度を含む)、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、生分解性樹脂(ポリ乳酸等)、紙(セルロース系)から、一つまたは複数を選択的に使用して形成される。そして保護カバー10が座席1を、その形状に略沿って被覆できるように、柔軟であるように、できるだけ薄く形成される。基材11の形状はフィルム、不織布、布帛(織物、編み物)等のいずれでもよく、また、それらの組み合わせでも良い。
【0023】
VOC分解物質12は、酸化チタン(窒素ドープ型、炭素ドープ型、金属イオンドープ型、リン酸チタニア系を含む)、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化セリウム、バナジウム酸ビスマス(銀担持型を含む)、アルマイト、フタロシアニン(金属錯体を含む)、活性酸素包摂セラミック、フィトンチッド(イソプレン類)から、一つまたは複数を選択して使用することが好ましい。
【0024】
VOC吸着物質13は、アパタイト(リン酸カルシウム等)、ゼオライト、セラミック、活性炭、セピオライト、シリカ、アルミナ、モレキュラーシーブ、ハロサイト、活性白土、酸化亜鉛、多孔質有機物(フラーレン等)、多孔質無機物から、一つまたは複数を選択して使用することが好ましい。
【0025】
担体14としては、アルミナゾル、シリカゾル、リン酸ナトリウム、セラミック繊維、ガラス繊維、ポリビニルアルコール(変性ポリビニルアルコールを含む)、ラテックス、ポリアクリルアミド、クラスターデキストリン、澱粉、セルロース誘導体、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂から、一つまたは複数を選択して使用することが好ましい。
【0026】
VOC分解物質12、VOC吸着物質13の粒子を適宜液体化した担体14内に分散させ、これを基材11の内側の表面に塗布するが、粒子は担体内で沈殿する傾向がある。沈殿した粒子は分解、吸着の作用をおこなわず無駄になるので、粒子をできるだけ露出させた方がよい。そのために、担体14の厚さは薄い方がよく、必要最小限の厚さとされ、その結果、保護カバーとしての柔軟性も損なわれない。
【0027】
なお、保護カバー10を製造してから、実際に座席の被覆に使用するまでの期間は、VOC分解物質、VOC吸着物質が活性化しないように保管をすることが望ましい。例えばVOCを分解する材料として光触媒を用いた場合、暗所に保管をする。
【0028】
なお、従来の光触媒等を利用したシート等では、基材11を成形する際に耐候性を向上すべく添加剤を使用することがあったが、本発明が利用される保護カバー10は短期間(2〜3週間程度)しか使用されないので、短期間に大きな効果が得られた方がよい。このためVOCを分解する材料が、カバーそのものを分解してもよく、したがって対候剤等の添加量を少量にすることができる。これはコストダウンにつながり、価格が重視される保護カバーの製造において大きなメリットとなる。
【0029】
上記のように構成された保護カバー10を座席1に被覆すると、座席1のシートクッション1aの座り面、シートバック1bの背もたれ面に存在していたVOCが直接的に接触することにより、また、上記の面から放散、浮遊したVOCが接触することにより、座席から発生するVOCを分解される。したがって、納車に際して保護カバー10を除去したときにはVOCがほとんど残っておらず、ユーザーに不快感を与えることを防止できる。
なお、保護カバー10を簡単に取り外すことができるようにミシン目を入れておくとよい。
【0030】
図3は、上記の実施の形態の変形例であって、基材11の内側のみならず外側の表面にもVOC分解物質12、VOC吸着物質13を担体14に担持させたものをコーティングしたものである。このようにすることにより、保護カバー10を被覆する前に車室内に放散したVOCをも分解、吸着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記実施の形態は座席保護カバーを例にしたが、車室内空間を構成している自動車内装部品、例えば、コンソールボックス、アシストグリップ、ドアトリム、ピラーガーニッシュ、ステアリングホイール、オーバーヘッドモジュール、インストゥルメンタルパネル、レジスタ、センタークラスタ、ヒーターコントロール、シフトレバー、ドアグラブ、カップホルダー、デッキボードなどを被覆するための保護カバーにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】自動車の座席を被覆している保護カバーを示す図である。
【図2】本発明の保護カバーの実施の形態の断面図である。
【図3】本発明の保護カバーの変形例の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 保護カバー
11 基材
12 VOC分解物質
13 VOC吸着物質
14 担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の生産から納車までの間に内装部品が汚損、破損されるのを防ぐために、内装部品に被覆され、納車後には除去される保護カバーであって、
保護対象の内装部品をその形状に略沿って被覆できるように薄くシート状に形成された基材を有し、
該基材の少なくとも一方の面に、主層を成す担体層に揮発性有機化合物処理粒子が分散担持された揮発性有機化合物処理層を有する、ことを特徴とする保護カバー。
【請求項2】
前記揮発性有機化合物処理層の、基材に接する側の揮発性有機化合物処理粒子の分散密度が、その反対側である表面側の揮発性有機化合物処理粒子の分散密度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
前記揮発性有機化合物処理粒子が、揮発性有機化合物を分解する分解物質と揮発性有機化合物を吸着する吸着物質の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の保護カバー。
【請求項4】
前記分解物質が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化セリウム、バナジウム酸ビスマス、アルマイト、フタロシアニン、活性酸素包摂セラミック、及び、フィトンチッド、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とされている、ことを特徴とする請求項1から3の一つに記載の保護カバー。
【請求項5】
前記吸着物質が、アパタイト、ゼオライト、セラミック、活性炭、セピオライト、シリカ、アルミナ、モレキュラーシーブ、ハロサイト、活性白土、酸化亜鉛、多孔質有機物、多孔質無機物、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とされている、ことを特徴とする請求項2から3の一つに記載の保護カバー。
【請求項6】
前記担体層が、アルミナゾル、シリカゾル、リン酸ナトリウム、セラミック繊維、ガラス繊維、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリアクリルアミド、クラスターデキストリン、澱粉、セルロース誘導体、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とされている、ことを特徴とする請求項1から3の一つに記載の保護カバー。
【請求項7】
保護カバーの基材が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、生分解性樹脂、紙、から成る群から選ばれた、少なくとも一種とされている、ことを特徴とする請求項1から3の一つに記載の保護カバー。
【請求項8】
保護カバーは製造後、使用されるまでの間は、前記揮発性有機化合物処理粒子が活性しない場所で保管される、ことを特徴とする請求項1から3の一つに記載の保護カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−15698(P2007−15698A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196060(P2005−196060)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】