説明

座席装置および人体支持具装置

【課題】複数の人の体温を簡易な方法で検知でき、異常を早期に発見することができる座席装置を提供する。
【解決手段】本発明の座席装置1は、複数の座席2と、座席2の前方にあたる位置に設けられ、座席2に着座した乗客M1の体温を検出する焦電型の赤外線センサー3と、赤外線センサー3からの出力信号が入力される制御部と、制御部からの制御信号に基づいて乗客M1の体温および乗客M1に関する情報を表示する表示部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席装置および人体支持具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旅客の大量輸送手段として用いられる航空機、船舶、鉄道等の交通機関において、客室内の各座席の状況を把握し、管理するシステムが下記の特許文献1,2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、航空機の座席におけるシートベルトの装着の有無、座席の使用状況等の情報を管理する「座席の着座監視システム」が開示されている。この着座監視システムでは、荷重検出センサーと体温検出センサーとにより座席上の荷重負荷体が人であるか、物であるかが識別され、中央制御装置により制御される座席使用状況表示手段に識別結果が表示される。
【0004】
特許文献2には、座席の姿勢、テレビ、音響機器等の付帯設備の使用状況等の情報の統合的な管理を行い、各座席と乗務員室との間で情報連絡を行えるようにした「座席装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−85491号公報
【特許文献2】特開平6−255592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、地球規模での人の往来が活発になり、旅客の大量輸送手段として用いられる航空機、船舶、鉄道等の交通機関において、特に感染性の発熱を伴う疾病に罹患した乗客を早期に発見し、必要な保安上の対応を取ることが社会的に要求されている。
【0007】
ところが、上記の特許文献1,2に開示された技術は、この要求に応えられるものではない。
特許文献1に記載の着座監視システムは、体温検出センサーを備えているが、この体温検出センサーは座席上の荷重負荷体が人であるか、物であるかを識別するものであり、乗客の体温を測定するものではない。したがって、乗務員等がこのシステムを用いて乗客の体温を把握することはできない。また、特許文献2に記載の座席装置は、シートバック、レッグレスト、シートベルト等の安全上の規則に関連する設備の状況を統合的に管理、制御するものであり、乗客の体温を管理するものではない。
【0008】
中でも航空機や船舶は長距離、長時間の移動に利用されることが多く、乗客が客室等の閉空間に拘束される時間が長い。そのため、移動中に乗客の体調が変化することが十分に考えられるが、乗務員は乗客の体調変化に気付きにくい。一方、旅客にストレスを感じさせることなく体温を測定するには、赤外線による非接触の体温測定が好適である。ところが、通常用いられる赤外線検出器は装置が大型で大掛かりであるため、設置場所に制約があり、空港や港の出入国や税関のゲートで往来する人の体温を測定する場合が多い。この方法では発見が遅くなり、例えば隔離が必要な感染症に罹患した旅客がいた場合、感染を広げてしまう虞がある。
【0009】
以上、航空機や船舶等の交通機関の場合を例に挙げて説明したが、病院等の医療機関においても同様の問題がある。すなわち、複数の患者が入院している場合、医師や看護師が個々の患者の体温変化を早期に把握し、迅速な対応を取るためのシステムが求められている。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、例えば航空機、船舶等の交通機関において複数の人の体温を簡易な方法で検知でき、異常を早期に発見することができる座席装置を提供することを目的とする。また、例えば病院等の医療機関において複数の人の体温を簡易な方法で検知でき、異常を早期に発見することができる人体支持具装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の座席装置は、複数の座席と、前記座席の前方にあたる位置に設けられ、前記座席に着座した被検出者の体温を検出する焦電型の赤外線検出器と、前記赤外線検出器からの出力信号が入力される制御部と、前記制御部からの制御信号に基づいて前記被検出者の体温および前記被検出者に関する情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。ここで、「被検出者に関する情報」とは、例えば着座した座席の位置、被検出者の氏名、年齢、性別等の個人情報などを指す。
【0012】
本発明の座席装置においては、座席の前方に焦電型の赤外線検出器が設けられ、座席に着座した複数の被検出者の体温が赤外線検出器により座席毎に検出される。赤外線検出器からの出力信号は制御部に入力され、制御部からの制御信号に基づいて被検出者の体温および被検出者に関する情報が表示部に表示される。よって、管理者は、表示部を見ることによって、座席毎に被検出者の体温とその被検出者に関する情報を逐次把握できる。その結果、管理者は疾病等の異常を早期に発見できる。また、焦電型の赤外線検出器が人体から発せられる赤外線を非接触で検出するため、被検出者がストレスを感じることが少ない。さらに、焦電型の赤外線検出器は小型で冷却が不要であるため、簡易な装置を構成することができる。
【0013】
本発明の座席装置において、前記赤外線検出器は、前記座席に着座した被検出者の顔の体温を検出可能な位置に配置され、前記被検出者の顔を赤外線画像として撮像可能であることが望ましい。
この構成によれば、赤外線画像に基づいて被検出者の顔の体温分布を知ることができ、管理者は被検出者の様子を知ることができる。そのため、被検出者の容態をより正確に把握することができる。
【0014】
本発明の座席装置において、前記赤外線検出器の検出波長範囲は8〜12μmであることが望ましい。
この構成によれば、赤外線検出器の検出温度範囲が34〜42℃程度となるため、被検出者の体温を測定するのに好適である。
【0015】
本発明の座席装置において、被検出者を特定するパラメーターを少なくとも含むパラメーターを設定するためのパラメーター設定部を備え、前記表示部が、前記パラメーター設定部により前記パラメーターが設定された際に特定の被検出者の体温および前記特定の被検出者に関する情報を表示する構成としてもよい。
この構成によれば、管理者が選択した被検出者に絞って、その被検出者の体温や情報を得ることができる。よって、被検出者の容態の把握をより効率的に行うことができる。
【0016】
本発明の座席装置において、前記パラメーター設定部にて、前記パラメーターとして前記体温の閾値を設定可能であり、前記表示部が、前記閾値を超える被検出者の体温を表示する構成としてもよい。
この構成によれば、パラメーターとして特定の体温の閾値を設定することによって、特に疾病に罹患した可能性の高い被検出者に絞って容態の把握を行うことができる。
【0017】
本発明の座席装置において、前記表示部が携帯機器に搭載され、前記制御部からの制御信号が無線通信により前記表示部に送信される構成としてもよい。
この構成によれば、管理者が表示部の設置箇所に留まる場合に限らず、表示部の設置箇所から離れた場合であっても、表示部が搭載された携帯機器を携帯することにより、被検出者の体温を把握することができる。
【0018】
本発明の座席装置において、前記被検出者の体温および前記被検出者に関する情報を記憶する記憶部を備えることが望ましい。
この構成によれば、記憶部に記憶された被検出者の体温や情報を後で読み出すことができ、被検出者の追跡調査等に利用することができる。
【0019】
本発明の座席装置において、前記赤外線検出器は、前席の背もたれの後面、もしくは自席の前方に位置する構造物の後面に配置されることが望ましい。
この構成によれば、赤外線検出器の設置場所を新たに設けることなく、既存の背もたれや構造物を利用して赤外線検出器を適切な位置に設置でき、簡易な装置を構成することができる。
【0020】
本発明の人体支持具装置は、複数の人体支持具と、前記人体支持具の支持面に対向する位置に設けられ、前記人体支持具に支持された被検出者の体温を検出する焦電型の赤外線検出器と、前記赤外線検出器からの出力信号が入力される制御部と、前記制御部からの制御信号に基づいて前記被検出者の体温および前記被検出者に関する情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の人体支持具装置においては、人体支持具の支持面に対向する位置に焦電型の赤外線検出器が設けられ、人体支持具に支持された複数の被検出者の体温が赤外線検出器により人体支持具毎に検出される。赤外線検出器からの出力信号は制御部に入力され、制御部からの制御信号に基づいて被検出者の体温および被検出者に関する情報が表示部に表示される。したがって、管理者は、表示部を見ることによって、人体支持具毎に被検出者の体温とその被検出者に関する情報を逐次把握できる。その結果、管理者は疾病等の異常を早期に発見することができる。また、焦電型の赤外線検出器が人体から発せられる赤外線を非接触で検出するため、被検出者がストレスを感じることが少ない。さらに、焦電型の赤外線検出器は小型で冷却が不要であるため、簡易な装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態の座席装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の座席装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の座席装置における表示部の一表示例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態の座席装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態の人体支持具装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態の座席装置について、図1〜図3を用いて説明する。本実施形態の座席装置は航空機に用いられる座席装置の一例である。
図1〜図3においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によっては寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0024】
本実施形態の座席装置1は、図1に示すように、複数の座席2と、各座席2に着座した乗客M1(被検出者)の体温を検出する赤外線センサー3(赤外線検出器)と、を備えている。赤外線センサー3は、個々の座席2の背もたれ4の後面4aに埋め込まれており、後席に着座した乗客M1の顔の位置にほぼ対応する高さに設置されている。ただし、赤外線センサー3の位置は自動的に微調整できる構成となっており、赤外線センサー3が検出する視野を微調整することができる。なお、図1では、前後方向に配列された2つの座席2のみを図示しているが、実際には前後方向および左右方向に多数の座席が配列されている。
【0025】
赤外線センサー3は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体、ニオブ酸リチウム等の半導体、ポリフッ化ポリビニリデン等の強誘電率樹脂等、誘電率が大きい材料が用いられ、この種の材料の温度変化が生じた際に電荷を生じる現象、いわゆる焦電効果を利用した焦電型赤外線センサーである。赤外線センサー3は、乗客M1の人体から発せられる赤外線を受けた際に上記の材料に分極が生じて赤外線量に応じた電荷が発生し、その電荷量を検出することにより体温の測定を行う。
【0026】
本実施形態の赤外線センサー3は、乗客M1の人体の1点の体温を測定するものではなく、顔の体温分布を赤外線画像として撮像できるタイプのものである。赤外線センサー3の検出波長範囲は8〜12μmであることが望ましい。赤外線センサー3の検出波長範囲である8〜12μmは、検出温度範囲では34〜42℃程度に相当する。よって、この検出波長範囲を有する赤外線センサーであれば、人間の体温を測定するのに好適である。
【0027】
本実施形態の座席装置1は、上述した座席2と赤外線センサー3以外のシステム構成として、図2に示すように、入力インターフェイス5、通信部6、制御部7、パラメーター設定部8、複数の表示部9、複数の携帯表示部10、を備えている。入力インターフェイス5は、複数の赤外線センサー3からの出力信号が入力されるものである。通信部6は、入力インターフェイス5を介して入力された赤外線センサー3からの出力信号をA/D変換するものである。
【0028】
パラメーター設定部8は、乗務員が特定の乗客M1の体温を把握する際に必要な各種のパラメーターを設定するものである。パラメーターとしては、例えば座席の位置(座席番号)、乗客の氏名、年齢、性別、表示体温、測定の感度や分解能、体温の閾値、赤外線センサー3の位置等が挙げられる。制御部7は、赤外線センサー3からの出力信号とパラメーター設定部8によって設定されたパラメーターとに基づいて、後述する表示部9および携帯表示部10を制御するための制御信号を生成し、表示部9および携帯表示部10に出力する。
【0029】
表示部9は、例えば客室乗務員室、操縦室等の壁面に設置されたディスプレイで構成されている。表示部9は、制御部7からの制御信号に基づいて、乗客M1の体温および乗客M1に関する情報を含む各種情報を表示する。乗客に関する情報としては、例えば座席の位置(座席番号)、乗客の氏名、顔のサーモ画像(赤外線画像)等が挙げられる。表示部は、上記の情報の他、座席のレイアウト、体温表示のカーソル等も表示する。
【0030】
携帯表示部10は、例えば客室乗務員が携帯する任意の携帯機器に搭載されたディスプレイで構成されている。したがって、制御部7からの制御信号は無線通信により携帯表示部10に送信される。携帯表示部10は、表示部9と同様、制御部7からの制御信号に基づいて、乗客M1の体温および乗客M1に関する情報を含む各種の情報を表示する。携帯表示部10の表示項目は表示部9の表示項目と一致していてもよいし、異なっていてもよい。一般的に携帯表示部10は表示部9に比べて小さいため、携帯表示部10は、表示部9の表示項目のうち、例えば座席の位置(座席番号)、乗客の氏名、乗客の体温のみを表示する構成であってもよい。
【0031】
図3は、表示部9の一表示例を示す図である。本例では、表示部9は2つの画面を有しており、左側の画面は客室全体の座席のレイアウトを示す座席レイアウト表示画面9aであり、右側の画面は乗務員が選択した特定の乗客M1の体温と各種情報を示す個別情報表示画面9bである。図3では、座席レイアウト表示画面9aと個別情報表示画面9bの双方に既に情報が表示されている。座席レイアウト表示画面9aと個別情報表示画面9bとは本例のように空間的に分かれている構成でもよいし、表示部9全体がいずれか一方の画面に時間的に切り替わる構成でもよい。
【0032】
本例では、例えばパラメーター設定部8で体温の閾値として「37.0℃」が設定されているものとする。この場合、制御部7は、各座席2の赤外線センサー3が体温を検出した複数の乗客M1のうち、37.0℃以上の体温を持つ乗客M1のみを抽出し、表示部9に制御信号を送信する。すると、表示部9の座席レイアウト表示画面9aにおいて、37.0℃以上の体温を持つ乗客M1の座席を示すランプが点灯し、37.0℃未満の体温を持つ乗客M1の座席を示すランプは消灯する。例えば座席番号が15−Kの座席と20−Cの座席のランプが点灯したとする。乗務員は、座席レイアウト表示画面9aを見れば、座席番号が15−Kの座席および20−Cの座席に着座している2名の乗客M1の体温が37.0℃以上であることを把握することができる。
【0033】
次に、乗務員は、体温が37.0℃以上である乗客M1のうち、座席番号が15−Kの乗客を特に監視したいと考えた場合、パラメーター設定部8においてパラメーターの座席番号を「15−K」と設定する。このとき、個別情報表示画面9bに、乗客M1の顔のサーモ画像S(赤外線画像)が表示され、「座席No.:15−K、体温:37.2℃」というように、座席番号と体温とが表示される。乗務員は個別情報表示画面9bを見れば、座席番号が15−Kの乗客M1の体温が実際には37.2℃であることを把握することができる。それと同時に、顔のサーモ画像Sが表示されているため、乗務員は、例えば乗客M1が頻繁に身体を動かしているか、じっと静止したままでいるか等の身体の動き、あるいは顔の一部のみが発熱しているか、顔に加えて首や手までも発熱しているか等の発熱の状況を把握することができる。
【0034】
以上述べたように、本実施形態の座席装置1によれば、乗務員は、表示部9を見ることによって、座席毎に乗客M1の体温とその乗客M1に関する詳細な情報を逐次把握できるため、発熱した乗客とその状況を早期に把握することができる。さらに、本実施形態の座席装置1は携帯表示部10を備えているため、乗務員が乗務員室の外、すなわち表示部9から離れた場所にいるときも、発熱した乗客とその状況を把握することができる。これにより、乗務員は必要な処置を早急に講じることができ、発熱を伴う感染症のリスクを水際で封じ込めることができる。このように、本実施形態の座席装置1は安全、安心な旅客輸送に資することができる。
【0035】
また、焦電型の赤外線センサー3は人体から発せられる赤外線を非接触で検出することができ、乗客M1は座席2に着座しているだけで体温の測定が逐次行われている。したがって、乗客M1は、体温を測定しているという感覚を殆ど感じることがなく、ストレスを感じることが殆どない。さらに、焦電型の赤外線センサー3は小型で冷却が不要であるため、座席2の背もたれ4に容易に組み込むことができ、簡易な装置を構成することができる。
【0036】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態の座席装置について、図4を用いて説明する。
本実施形態の座席装置は、第1実施形態と同様、航空機に用いられる座席装置の一例である。
【0037】
第1実施形態の座席装置1は、航空機のエコノミークラスでの使用を想定しており、図1に示すように、座席2の背もたれ4の後面4aに赤外線センサー3が設置され、後席の乗客M1から発せられる赤外線を赤外線センサー3が検知する構成となっていた。ところが、航空機の座席のクラスによっては、座席の背もたれの後面に赤外線センサーが設置されていたとしても、後席の乗客から発せられる赤外線を赤外線センサーが検知できないことがある。本実施形態では、このような場合に対応した例を挙げる。
【0038】
本実施形態の座席装置11は、航空機のビジネスクラスやファーストクラスでの使用を想定している。本実施形態の座席装置11は、図4に示すように、個々の座席12がカプセル状の構造物13の内部に収容され、独立したコンパートメントタイプの座席となっている。赤外線センサー14は、前席の構造物13の後面13aに埋め込まれており、後席に着座した乗客(被検出者)の顔の位置にほぼ対応する高さに設置されている。また、最前列の座席については、赤外線センサー14は、前方の壁面15に埋め込まれている。この構成においても、赤外線センサー14は乗客の顔のサーモ画像(赤外線画像)を捉えることができる。その他のシステム構成は第1実施形態と同様である。
【0039】
本実施形態においても、乗客の体温を簡易な方法で検知でき、発熱を伴う感染症等の異常を早期に発見可能な座席装置を提供できる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施形態は、第1実施形態、第2実施形態と異なり、病院で用いられる人体支持具装置の一例である。
【0041】
本実施形態の人体支持具装置16は、図5に示すように、ベッド17(人体支持具)と赤外線センサー18とを備えている。本実施形態の人体支持具装置16は、例えば病院の入院病棟での使用を想定しており、図5では1つのベッド17のみを図示するが、病室内に複数のベッドが配置されている。赤外線センサー18は、ベッド17の人体支持面17aに対向する病室の天井19に設置されている。また、赤外線センサー18は、病室の天井19において、患者M2(被検出者)がベッド17上に寝たときに顔のほぼ上方にあたる位置に設置されている。赤外線センサー18は、各ベッド17に対して1個設置されている。
【0042】
その他のシステム構成は第1実施形態と同様である。例えば各ベッド17には、病室番号とベッド17の位置に応じて、201−A,201−B,…,205−C,205−D,…というように、ベッド17を特定する番号が割り振られている。パラメーター設定部、制御部、表示部等はナースステーションに設置され、医師や看護師が携帯表示部を携帯している。医師や看護師は、ナースステーションの表示部もしくは携帯表示部を見れば、各病室のベッド17毎に患者の体温を瞬時に把握することができる。また、医師や看護師は、例えば201−A等のベッド番号を選択することにより、特定の患者M2のサーモ画像を見て、患者M2の発熱の状況などの詳しい容態を把握することができる。
【0043】
従来、患者の体温を把握する場合、看護師が所定時間おきに病室を巡回し、患者に検温を依頼する方法が一般的であった。したがって、看護師が巡回した時点での体温は把握できたとしても、次回の巡回までの間に体温が変化した場合、体温変化を把握できない場合がある。その点、本実施形態の人体支持具装置16によれば、患者M2の体温を逐次把握でき、特に注意すべき患者M2の詳細な状況を知ることができるため、必要な対応を早急に講じることができる。また、本実施形態の人体支持具装置16では、体温計を用いる必要がなく、赤外線センサー18を用いた非接触の方法で体温を測定するため、患者M2に負担を掛けることなく、二次感染の発生を抑えることができる。
【0044】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記第1実施形態で例示した図2のシステム構成に加えて、乗客の体温および乗客に関する各種情報を記憶する記憶部を備えていてもよい。記憶部を備えた場合、記憶部に記憶された乗客の体温や情報を後で読み出すことができ、乗客の追跡調査等に利用することができる。その他、具体的なシステム構成やパラメーターの項目等については、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,11…座席装置、2,12…座席、3,14,18…赤外線センサー(赤外線検出器)、4…背もたれ、7…制御部、9…表示部、10…携帯表示部、13…構造物、15…壁面、16…人体支持具装置、17…ベッド(人体支持具)、M1…乗客(被検出者)、M2…患者(被検出者)、S…サーモ画像(赤外線画像)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席と、
前記座席の前方にあたる位置に設けられ、前記座席に着座した被検出者の体温を検出する焦電型の赤外線検出器と、
前記赤外線検出器からの出力信号が入力される制御部と、
前記制御部からの制御信号に基づいて前記被検出者の体温および前記被検出者に関する情報を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする座席装置。
【請求項2】
前記赤外線検出器が、前記座席に着座した被検出者の顔の体温を検出可能な位置に配置され、前記被検出者の顔を赤外線画像として撮像可能であることを特徴とする請求項1に記載の座席装置。
【請求項3】
前記赤外線検出器の検出波長範囲が8〜12μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の座席装置。
【請求項4】
被検出者を特定するパラメーターを少なくとも含むパラメーターを設定するためのパラメーター設定部を備え、
前記表示部が、前記パラメーター設定部により前記パラメーターが設定された際に特定の被検出者の体温および前記特定の被検出者に関する情報を表示することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の座席装置。
【請求項5】
前記パラメーター設定部において、前記パラメーターとして前記体温の閾値を設定可能であり、
前記表示部が、前記閾値を超える被検出者の体温を表示することを特徴とする請求項4に記載の座席装置。
【請求項6】
前記表示部が携帯機器に搭載され、
前記制御部からの制御信号が無線通信により前記表示部に送信されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の座席装置。
【請求項7】
前記被検出者の体温および前記被検出者に関する情報を記憶する記憶部を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の座席装置。
【請求項8】
前記赤外線検出器が、前席の背もたれの後面、もしくは自席の前方に位置する構造物の後面に配置されたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の座席装置。
【請求項9】
複数の人体支持具と、
前記人体支持具の支持面に対向する位置に設けられ、前記人体支持具に支持された被検出者の体温を検出する焦電型の赤外線検出器と、
前記赤外線検出器からの出力信号が入力される制御部と、
前記制御部からの制御信号に基づいて前記被検出者の体温および前記被検出者に関する情報を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする人体支持具装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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