説明

座椅子

【課題】 クッション性を有すると共に焼却しても環境に従来よりも悪影響を与えにくい座椅子を提供しようとするもの。
【解決手段】 座部1と背面部2とを有すると共に、少なくとも前記座部1は、主として天然繊維3により形態性が付与されたクッション材が表被材5に収容された構造を有する。主として天然繊維により形態性が付与されたクッション材が表被材に収容された構造によりクッション性を得るようにしたので、クッション材としてシアンガス等の有害ガスを発生するウレタンフォームを使用する必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家庭や各種旅館、福祉施設や健康ランドその他で使用される座椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般家庭や各種旅館、福祉施設や健康ランドその他で座椅子が広く愛用されている。
【0003】
この座椅子として、金属製枠体を芯材として、ある程度の厚さにカットしたウレタンフォームシートによりサンドイッチ構造となるように積層体を形成し、前記積層体を表装具となる生地で包被したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、前記のようにウレタンフォームによってクッション性を付与するようにすると、最終廃棄時に焼却処理する際にウレタンフォームからシアンガス等の有害ガスが発生するという環境上の問題があった。
【特許文献1】特開2002―262955号公報(第2頁〔0005〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は、クッション性を有すると共に焼却しても環境に従来よりも悪影響を与えにくい座椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の座椅子は、座部と背面部とを有すると共に、少なくとも前記座部は、主として天然繊維により形態性が付与されたクッション材が表被材に収容された構造を有することを特徴とする。
【0007】
この座椅子では、主として天然繊維により形態性が付与されたクッション材が表被材に収容された構造によりクッション性を得るようにしたので、クッション材としてシアンガス等の有害ガスを発生するウレタンフォームを使用する必要はない。すなわち、天然繊維によってバネ性を付与してクッション性を発現させることができる。
【0008】
ここで前記天然繊維として、例えば椰子の実の繊維や藁、カヤ、竹などを用いることができる。なお、座部だけではなく背面部も前記のような構造とすると背中の方にも柔らかいクッション性が付与されて気持ちがよい。
【0009】
(2)少なくとも前記座部は主として天然繊維からなる塊状集絡体が複数個接着せしめられて形態性が付与されたクッション材が表被材に収容された構造を有することとしてもよい。なお、前記塊状集絡体は天然繊維を所定量まとめて丸めることにより形成することができる。また前記塊状集絡体の形状は、球状その他として好適に実施することができる。
【0010】
このように構成すると、前記クッション材は、主として天然繊維からなる塊状集絡体が複数個接着せしめられた構造によって座部(や背面部)としての形態保持性を付与することができ、天然繊維によって塊状集絡体を形成することによりバネ性を付与してクッション性を発現させることができる。
【0011】
また、天然繊維を塊状集絡体とすることにより、ただ単にそのまま充填するよりも密度や目付がまだらとなることを抑制することができ、反発弾性(バネ性)を付与することができ、部位別に硬度を調整を行うことができる。すなわち、天然繊維の塊状集絡体の充填個数を単位面積当たりで増減させたり、塊状集絡体自体の密度を変化させることにより、部位別に硬度を調整することができる。
【0012】
ここで、前記塊状集絡体の大きさや密度を部位によって段階的に変化させて形成したこととしてもよい。このように構成すると、座椅子の座部(や背面部)の個別・具体的な形状に合わせて天然繊維を無駄なく効率的に使用してロスを低減させることができる。
【0013】
また、記塊状集絡体は外周に接着剤が付着されてなることとしてもよい。このように構成すると、塊状に形成した集絡体が再びばらけてくることを防止する形態安定性を付与することができ、座椅子製造時の取り扱い性がよいものとなる。なお、接着剤として天然のラテックスなどを用いることできる。
【0014】
(3) 前記クッション材は座部や背面部の外周形状を有する型内に複数個の塊状集絡体が配置・充填されて外面に接着剤が付着された状態でプレス・乾燥されたものであることとしてもよい。
【0015】
前記クッション材は、例えば座部や背面部の外周形状に相当する型を用いたモールド成型により形態性を付与することができる。このように構成すると製造工程を簡略化することができる。なお、前記型内の隙間の箇所などの容積が小さな所には塊状集絡体ではなく天然繊維自体を併せて配置・充填してもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0017】
クッション材としてシアンガス等の有害ガスを発生するウレタンフォームを使用する必要はないので、焼却しても環境に従来よりも悪影響を与えにくい座椅子を提供することができる。また、天然繊維によってバネ性と形態保持性を付与することができるので、クッション性を有する座椅子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、この実施形態の座椅子は座部1と背面部2とを有すると共に、前記座部1と背面部2は内蔵された連結機構(図示せず)により相互を所望の角度に調節・固定できるように取り付けられている。
【0020】
そして、前記座部1と背面部2とは、天然繊維3(椰子の実の繊維を用いた)からなる塊状集絡体4が複数個接着せしめられて形態性が付与されたクッション材が表被材5(カバー)に収容された構造を有する。
【0021】
前記塊状集絡体4は、天然繊維3(椰子の実の繊維)を所定量まとめて直径約10cm程度の球状となるように手で丸めることにより形成した。前記塊状集絡体4は、その大きさを段階的に変化させて複数個形成した。そして、前記各塊状集絡体4の外周に接着剤6(天然ゴムと水からなるラテックス、図中において点々で示す)を吹き付け・散布して付着させ乾燥・固化させた。前記天然繊維3として、椰子の実の繊維の他に藁、カヤ、竹などを用いることもできる。
【0022】
前記クッション材は、座部1や背面部2の外周形状に相当する型(図示せず)を用いたモールド成型により形態性を付与した。具体的には、次のようにしてクッション材を成型した。座部1や背面部2の外周形状を有する型(金型)内に、その型形状に併せて複数個の塊状集絡体4を並べて配置・充填した。前記型内の隙間の箇所などの容積が小さな所には、塊状集絡体4ではなく天然繊維3(椰子の実の繊維)自体も併せて配置・充填した。そして、前記塊状集絡体4等の外面に接着剤6(天然ゴムと水からなるラテックス)を付着させた状態で、前記金型を乾燥機によりプレス・乾燥した。なお図2に示すように、前記クッション材には上記連結機構から延在する枠体の嵌合用溝7が形成されるようにしている。
【0023】
このようにして形態性が付与された座部1のクッション材と背面部2のクッション材は、それぞれ連結機構を固定して表被材5(カバー)内に収容してファスナー(図示せず)を閉じ、座椅子を得た。
【0024】
次に、この実施形態の座椅子の使用状態を説明する。
【0025】
この座椅子は、天然繊維3(椰子の実の繊維)からなる塊状集絡体4が複数個接着せしめられて形態性が付与されたクッション材が表被材5(カバー)に収容された構造によりクッション性を得るようにしたので、クッション材としてシアンガス等の有害ガスを発生するウレタンフォームを使用する必要はなく、焼却しても環境に従来よりも悪影響を与えにくいという利点がある。
【0026】
すなわち、天然繊維3(椰子の実の繊維)によって塊状集絡体4を形成することによりバネ性を付与してクッション性を発現させることができ、また前記クッション材は天然繊維3(椰子の実の繊維)からなる塊状集絡体4が複数個接着せしめられた構造によって座部1や背面部2としての形態保持性を付与することができる。ここで、クッション材として天然椰子の実の繊維をほぼ100%使用すると、通気性や放湿性に優れ、夏場のムレを緩和して快適なものとすることができる。
【0027】
また、天然繊維を塊状集絡体とすることにより、ただ単にそのまま充填するよりも密度や目付がまだらとなることを抑制することができ、反発弾性(バネ性)を付与することができ、部位別に硬度を調整を行うことができる。すなわち、天然繊維の塊状集絡体の充填個数を単位面積当たりで増減させたり、塊状集絡体自体の密度を変化させることにより、部位別に硬度を調整することができる。
【0028】
例えば、座部の側部に充填する天然繊維の塊状集絡体の個数を他の部位に対して増加させて盛り上がりを形成することができ、座部の腿と接触する部位に充填する天然繊維の塊状集絡体の個数を他の部位に対して減少させ硬度を低くして座り心地を良くすることができ、座部と背面部の境界部を他の部位よりも天然繊維の塊状集絡体自体の密度を低くし座椅子として形成される程度の強度とすることによりコストの低減を図ることができ、ヘッドレスト部(図示せず)を設けてその硬度を他の部位よりも硬く調整することができる。
【0029】
また、前記塊状集絡体4は外周に接着剤6(天然ゴムと水からなるラテックス)が付着されてなるので、塊状に形成した集絡体が再びばらけてくることを防止する形態安定性を付与することができ、座椅子製造時の取り扱い性がよいものとなるという利点がある。前記接着剤6も天然素材のラテックスを使用すると、より環境に優しいものとすることができる。
【0030】
さらに、前記クッション材は座部1や背面部2の外周形状を有する型内に複数個の塊状集絡体4が配置・充填されて外面に接着剤6(天然ゴムと水からなるラテックス)が付着された状態でプレス・乾燥されたものであり、製造工程を簡略化することができるという利点がある。ここで、前記塊状集絡体4の大きさは段階的に変化させて形成しており、座椅子の座部1や背面部2の個別・具体的な形状に合わせて天然繊維3(椰子の実の繊維)を無駄なく効率的に使用してロスを低減させることができるという利点がある。
【0031】
そしてモールド成型とすることにより、座った際の体重による圧力の分散効果を得ることができ、座り心地が非常に快適なものとすることができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0032】
クッション性を有し焼却しても環境に悪影響を与えにくいことによって種々の座椅子その他の用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の座椅子の実施形態であり一部を破断して示す全体斜視図。
【図2】図1の座椅子の座部のクッション材の構造を説明するA―A線断面図。
【符号の説明】
【0034】
1 座部
2 背面部
3 天然繊維
4 塊状集絡体
5 表被材
6 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部(1)と背面部(2)とを有すると共に、少なくとも前記座部(1)は、主として天然繊維(3)により形態性が付与されたクッション材が表被材(5)に収容された構造を有することを特徴とする座椅子。
【請求項2】
少なくとも前記座部(1)は主として天然繊維(3)からなる塊状集絡体(4)が複数個接着せしめられて形態性が付与されたクッション材が表被材(5)に収容された構造を有する請求項1記載の座椅子。
【請求項3】
前記クッション材は座部(1)や背面部(2)の外周形状を有する型内に複数個の塊状集絡体(4)が配置・充填されて外面に接着剤(6)が付着された状態でプレス・乾燥されたものである請求項2記載の座椅子。


【図1】
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【図2】
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